(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池用バインダー組成物は、電極における集電体上に形成される電極合材層や、当該電極合材層の更に上(すなわち電極基材の上)やセパレータ基材の上に形成される非水系二次電池用機能層の形成に用いられるものである。そして、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、本発明の非水系二次電池用バインダー組成物を含み、本発明の非水系二次電池用機能層を調製する際の材料として用いられる。また、本発明の非水系二次電池用機能層は、本発明の非水系二次電池機能層用組成物を用いて調製され、例えばセパレータや電極の一部を構成する。そして、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用機能層を備えるものである。
【0018】
(非水系二次電池用バインダー組成物)
本発明の非水系二次電池用バインダー組成物は、水溶性重合体が水中に溶解した組成物であり、当該水溶性重合体が、スルホン酸基含有単量体単位を10質量%以上50質量%以下含み、(メタ)アクリロニトリル単量体単位を20質量%以上含むことを特徴とする。
そして、本発明のバインダー組成物を用いて電極合材層や機能層を形成することで、これらの層に高い遷移金属捕捉能を発揮させることができる。加えて本発明のバインダー組成物中の水溶性重合体は、優れた結着性を有するものであるため、本発明のバインダー組成物は、電極用バインダー組成物および機能層用バインダー組成物の何れとしても良好に使用することができる。一方で、正極から溶出した遷移金属イオンを負極への到達前に確実に捕捉する観点からは、本発明のバインダー組成物は、正極合材層又は機能層の形成に用いることが好ましく、機能層の形成に用いることがより好ましい。即ち、本発明のバインダー組成物は、好ましくは正極用バインダー組成物又は機能層用バインダー組成物であり、より好ましくは機能層用バインダー組成物である。以下では、本発明のバインダー組成物について、当該バインダー組成物を機能層の形成に用いる場合を例に挙げて説明する。
【0019】
<水溶性重合体>
水溶性重合体は、スルホン酸基含有単量体単位を10質量%以上50質量%以下、(メタ)アクリロニトリル単量体単位を20質量%以上含み、任意に、スルホン酸基含有単量体単位および(メタ)アクリロニトリル単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよい。水溶性重合体がこのような単量体組成を有することで、機能層の遷移金属捕捉能が向上する。加えて、このような単量体組成を有する水溶性重合体を含む機能層は、電解液浸漬前の接着性に優れているため粉落ちが十分に抑制されており、また当該機能層は、電池部材(特にセパレータ)に優れた耐熱収縮性を付与することができる。更に水溶性重合体は、水系のバインダー組成物や水系の機能層用組成物中で溶解しているため、水系媒体中で通常粒子状を呈する非水溶性の重合体とは異なり、これらの組成物中でその分子鎖が十分に広がった状態で存在していると考えられる。そのため、機能層が二次電池中に組み込まれた際にも水溶性重合体がその比表面積を十分に確保し得るためと推察されるが、得られる機能層は遷移金属捕捉能を十分に発揮することができる。
【0020】
[スルホン酸基含有単量体単位]
スルホン酸基含有単量体単位を形成し得るスルホン酸基含有単量体としては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、およびこれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩など)が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。そしてこれらの中でも、二次電池のサイクル特性向上の観点から、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩が好ましく、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸ナトリウムがより好ましく、スチレンスルホン酸リチウムが更に好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/メタクリルを意味する。
【0021】
そして、水溶性重合体に含まれる全単量体単位中に占めるスルホン酸基含有単量体単位の割合は、10質量%以上50質量%以下であることが必要であり、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、また、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。スルホン酸基含有単量体単位の含有割合が10質量%未満であると、機能層の遷移金属捕捉能を十分に確保することができず、二次電池のサイクル特性が低下する。一方、スルホン酸基含有単量体単位の含有割合が50質量%超であると、機能層用組成物中において非導電性粒子を凝集させてしまい、機能層の電解液浸漬前における接着性が低下する。
【0022】
[(メタ)アクリロニトリル単量体単位]
(メタ)アクリロニトリル単量体単位を形成し得る(メタ)アクリロニトリル単量体としては、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。そしてこれらの中でも、機能層の遷移金属捕捉能を高めて二次電池のサイクル特性を向上させる観点からは、アクリロニトリルが好ましい。
【0023】
そして、水溶性重合体に含まれる全単量体単位中に占める(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合は、20質量%以上であることが必要であり、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、また、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることが更に好ましい。(メタ)アクリロニトリル単量体単位の含有割合が20質量%未満であると、機能層の遷移金属捕捉能を十分に確保することができず、二次電池のサイクル特性が低下する。また機能層を備える電池部材(特にセパレータ)の耐熱収縮性が損なわれ、特に機能層が多孔膜層として使用される場合に不都合が生じる。一方、(メタ)アクリロニトリル単量体単位の含有割合が50質量%以下であれば、機能層の電解液浸漬前における接着性を確保することができる。
【0024】
[その他の単量体単位]
スルホン酸基含有単量体単位および(メタ)アクリロニトリル単量体単位以外の単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、酸基含有単量体単位(スルホン酸基を含有するものを除く)が挙げられる。なお、その他の単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
[[(メタ)アクリル酸エステル単量体単位]]
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成しうる(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;などが挙げられる。これらの中でも、機能層の電解液浸漬前における接着性を高めつつ、得られる重合体の水溶性を確保する観点から、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が1以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、同炭素数が1以上7以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体がより好ましい。具体的には、ブチルアクリレート(n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート)、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく、ブチルアクリレート、エチルアクリレートがより好ましく、ブチルアクリレートが更に好ましい。
【0026】
そして、水溶性重合体に含まれる全単量体単位中に占める(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合が15質量%以上であれば、機能層の電解液浸漬前における接着性を高めることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合は70質量%以下であることが必要であり、65質量%以下であることが好ましい。
【0027】
[[酸基含有単量体単位]]
酸基含有単量体単位を形成し得る酸基含有単量体としては、スルホン酸基以外の酸基を含有する単量体であれば特に限定されず、カルボン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、および水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0028】
カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、およびこれらの塩(ナトリウム塩、リチウム塩など)が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸が挙げられる。
リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチル、およびこれらの塩(ナトリウム塩、リチウム塩など)が挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、およびこれらの塩(ナトリウム塩、リチウム塩など)が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましく、メタクリル酸が更に好ましい。
【0030】
そして、水溶性重合体に含まれる全単量体単位中に占める酸基含有単量体単位の割合は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましく、また、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが更に好ましい。酸基含有単量体単位の含有割合が0.5質量%以上であれば、水溶性重合体の結着性が向上し、機能層の電解液浸漬前後の双方における接着性を向上させることができる。一方、酸基含有単量体単位の含有割合が15質量%以下であれば、二次電池への持ち込み水分量が低減され、サイクル特性の低下を抑制することができる。
【0031】
[水溶性重合体の調製方法]
水溶性重合体は、上述した単量体を含む単量体組成物を、例えば水などの水系溶媒中で重合することにより、製造し得る。この際、単量体組成物中の各単量体の含有割合は、水溶性重合体中の各繰り返し単位(単量体単位)の含有割合に準じて定めることができる。
そして、重合様式は、特に制限なく、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。また、重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの反応も用いることができる。
また、重合に使用される乳化剤、分散剤、重合開始剤、重合助剤などの添加剤は、一般に用いられるものを使用しうる。これらの添加剤の使用量も、一般に使用される量としうる。重合条件は、重合方法および重合開始剤の種類などに応じて適宜調整しうる。
【0032】
[水溶性重合体の性状]
水溶性重合体の非水系電解液に対する膨潤度は、2倍以上であることが好ましく、2.2倍以上であることがより好ましく、2.5倍以上であることが更に好ましく、また、5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることが更に好ましい。水溶性重合体の非水系電解液に対する膨潤度が2倍以上であれば、水溶性重合体が非水系電解液と良好になじみ、水系の機能層用組成物中における比表面積が大きい状態を、非水系電解液中においても維持することができる。そのため機能層の遷移金属捕捉能が更に高まり、二次電池のサイクル特性を一層向上させることができる。一方、水溶性重合体の非水系電解液に対する膨潤度が5倍以下であれば、水溶性重合体の強度が確保され、機能層の電解液浸漬後における接着性を高めることができる。
【0033】
また、水溶性重合体のガラス転移温度は、−20℃以上であることが好ましく、−10℃以上であることがより好ましく、また、80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。水溶性重合体のガラス転移温度が上述の範囲内であれば、機能層の電解液浸漬前における接着性を高めることができる。
なお、水溶性重合体の「ガラス転移温度」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定する。
【0034】
<非水系二次電池用バインダー組成物の調製方法>
本発明のバインダー組成物の調製方法は特に限定されないが、例えば、水溶性重合体の調製を水系媒体中で実施し、水溶性重合体が水溶液として得られる場合には、水溶性重合体の水溶液をそのまま非水系二次電池用バインダー組成物としてもよいし、水溶性重合体の水溶液に、必要に応じてその他の成分を加えて非水系二次電池用バインダー組成物としてもよい。なお、バインダー組成物は水以外の溶媒を含んでいてもよい。また、その他の成分を含むバインダー組成物の調製は、後述する機能層用組成物の調製と同時に行ってもよい。
ここでその他の成分としては、機能層を用いた二次電池における電池反応に過度に好ましくない影響を及ぼさないものであれば、特に制限は無い。また、前記その他の成分の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
前記その他の成分としては、例えば、粒子状重合体(「粒子状結着材」ともいう。)、濡れ剤、レベリング剤、電解液分解抑制剤、などが挙げられる。
ここで、バインダー組成物は、粒子状重合体を含むことが好ましい。結着材として、水溶性重合体と粒子状重合体を併用することで、機能層に柔軟性を付与することができ、また機能層の電解液浸漬前後の双方における接着性を確保することができる。ここで、粒子状重合体は、通常非水溶性の重合体で、水系媒体中において粒子状で存在する。なお、本発明において、重合体が「非水溶性」であるとは、25℃において、その重合体0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が90質量%以上となることをいう。
【0035】
粒子状重合体としては、特に限定されないが、スチレン−ブタジエン共重合体やアクリロニトリル−ブタジエン共重合体等のジエン系重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有重合体、アクリル系重合体などが挙げられる。これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0036】
ここで、バインダー組成物中の水溶性重合体と粒子状重合体の配合量比は特に限定されない。バインダー組成物は、例えば、水溶性重合体100質量部当たり、粒子状重合体を、好ましくは10質量以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上含有し、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは、70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下含有する。バインダー組成物が上述した範囲内の配合量比で水溶性重合体と粒子状重合体を含めば、機能層の遷移金属捕捉能を十分に確保しつつ、当該機能層の柔軟性並びに電解液浸漬前後の双方における接着性を高めることができる。したがって、二次電池のサイクル特性を一層向上させることができる。
【0037】
(非水系二次電池機能層用組成物)
本発明の機能層用組成物は、少なくとも、上述した水溶性重合体および非導電性粒子を含み、必要に応じて、粒子状重合体などの任意の成分を含有する、水を分散媒としたスラリー組成物である。
そして、本発明の機能層用組成物は、本発明のバインダー組成物を用いて調製され、そして上述した水溶性重合体を含むため、本発明の機能層用組成物を用いれば、高い遷移金属捕捉能を有する機能層を形成することができる。また本発明の機能層用組成物は非導電性粒子を含むため、本発明の機能層用組成物を用いて得られる機能層は、耐熱性や強度に優れる多孔膜層として良好に機能することができる。
【0038】
<非導電性粒子>
ここで、非導電性粒子は、水および二次電池の非水系電解液に溶解せず、それらの中においても、その形状が維持される粒子である。そして、非導電性粒子は、電気化学的にも安定であるため、二次電池の使用環境下で機能層中に安定に存在する。
【0039】
そして、非導電性粒子としては、例えば各種の無機微粒子や有機微粒子を使用することができる。
具体的には、非導電性粒子としては、無機微粒子と、後述する粒子状重合体以外の有機微粒子(即ち、有機微粒子は結着性を有さない)との双方を用いることができるが、通常は無機微粒子が用いられる。なかでも、非導電性粒子の材料としては、非水系二次電池の使用環境下で安定に存在し、電気化学的に安定である材料が好ましい。このような観点から非導電性粒子の材料の好ましい例を挙げると、酸化アルミニウム(アルミナ)、水和アルミニウム酸化物(ベーマイト)、酸化ケイ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化カルシウム、酸化チタン(チタニア)、BaTiO
3、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘土微粒子;などが挙げられる。また、これらの粒子は必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等が施されていてもよい。
上述した非導電性粒子は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。そして非導電性粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ)粒子が好ましい。また非導電性粒子の粒径は、特に限定されることなく、従来使用されている非導電性粒子と同様とすることができる。
【0040】
機能層用組成物中の非導電性粒子と水溶性重合体の配合量比は特に限定されない。機能層用組成物は、例えば、非導電性粒子100質量部当たり、水溶性重合体を、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2質量部以上含有し、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下含有する。機能層用組成物が、非導電性粒子100質量部当たり水溶性重合体を1質量部以上含有すれば、機能層の遷移金属捕捉能が更に高まり、二次電池のサイクル特性が一層向上する。また機能層を備える電池部材(特にセパレータ)の耐熱収縮性が向上する。一方、機能層用組成物が、非導電性粒子100質量部当たり水溶性重合体を10質量部以下含有すれば、機能層のガーレー値が高まり、二次電池のレート特性が向上する。
【0041】
<任意の成分>
機能層用組成物は、上述した水溶性重合体および非導電性粒子以外にも、任意の成分を含んでいてもよい。前記任意の成分は、機能層を用いた二次電池における電池反応に過度に好ましくない影響を及ぼさないものであれば、特に制限は無い。また、前記任意の成分の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
前記任意の成分としては、「非水系二次電池機能層用バインダー組成物」の項で「その他の成分」として上述したものが挙げられる。すなわち、粒子状重合体等の任意の成分(その他の成分)は、バインダー組成物の調製に用いてもよく、バインダー組成物を調製した後、機能層用組成物の調製の際にバインダー組成物と混合してもよい。
そして、機能層用組成物が、前記任意の成分として粒子状重合体を含む場合、機能層用組成物中の非導電性粒子と粒子状重合体の配合量比は特に限定されない。機能層用組成物は、例えば、非導電性粒子100質量部当たり、粒子状重合体を、好ましくは1質量部以上含有し、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下含有する。機能層用組成物が、非導電性粒子100質量部当たり粒子状重合体を1質量部以上含有すれば、機能層の柔軟性および電解液浸漬前後の双方における接着性を高めることができる。一方、機能層用組成物が、非導電性粒子100質量部当たり粒子状重合体を6質量部以下含有すれば、機能層のガーレー値が高まり、二次電池のレート特性が向上する。
【0042】
<非水系二次電池機能層用組成物の調製方法>
機能層用組成物の調製方法は、特に限定はされないが、通常は、非水系二次電池用バインダー組成物と、非導電性粒子と、必要に応じて、分散媒としての水と、任意の成分とを混合して機能層用組成物を調製する。混合方法は特に制限されないが、各成分を効率よく分散させるため、通常は混合装置として分散機を用いて混合を行う。
分散機は、上記成分を均一に分散および混合できる装置が好ましい。例を挙げると、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。また、高い分散シェアを加えることができる観点から、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置も挙げられる。
【0043】
(非水系二次電池用機能層)
本発明の機能層は、上述した非水系二次電池機能層用組成物から形成されたものであり、例えば、上述した機能層用組成物を適切な基材の表面に塗布して塗膜を形成した後、形成した塗膜を乾燥することにより、形成することができる。即ち、本発明の機能層は、上述した機能層用組成物の乾燥物よりなり、通常、上記非導電性粒子と、上記水溶性重合体と、任意に、粒子状重合体などの上記その他の成分(任意の成分)とを含有する。ここで、上述した水溶性重合体および/または粒子状重合体が架橋性の単量体単位を含有する場合には、当該架橋性の単量体単位を含有する重合体は、非水系二次電池機能層用組成物の乾燥時、または、乾燥後に任意に実施される熱処理時に架橋されていてもよい(即ち、非水系二次電池用機能層は、上述した水溶性重合体および/または粒子状重合体の架橋物を含んでいてもよい)。
なお、本発明の機能層に含まれる各成分(水などの分散媒を除く)の存在比は、通常、上述した機能層用組成物中に含まれる各成分の存在比と同様となり、機能層中の各成分の好適な存在比も、上述した機能層用組成物中の各成分の好適な存在比と同様である。
そして、本発明の機能層は、本発明の機能層用組成物から形成されているため、高い遷移金属捕捉能を有し、また耐熱性や強度に優れる多孔膜層として良好に機能する。加えて、本発明の機能層は、二次電池のサイクル特性などの電池特性を高めることができる。
【0044】
<基材>
機能層を形成する基材としては、特に限定されず、例えばセパレータの一部を構成する部材として機能層を使用する場合には、基材としてはセパレータ基材を用いることができ、また、電極の一部を構成する部材として機能層を使用する場合には、基材としては集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材を用いることができる。また、基材上に形成した機能層の用法に特に制限は無く、例えばセパレータ基材等の上に機能層を形成してそのままセパレータ等の電池部材として使用してもよいし、電極基材上に機能層を形成して電極として使用してもよいし、離型基材上に形成した機能層を基材から一度剥離し、他の基材に貼り付けて電池部材として使用してもよい。
しかし、機能層から離型基材を剥がす工程を省略して電池部材の製造効率を高める観点からは、基材としてセパレータ基材又は電極基材を用いることが好ましい。
【0045】
[セパレータ基材]
セパレータ基材としては、特に限定されないが、有機セパレータ基材などの既知のセパレータ基材が挙げられる。有機セパレータ基材は、有機材料からなる多孔性部材であり、有機セパレータ基材の例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などを含む微多孔膜などが挙げられ、強度に優れることからポリエチレン製の微多孔膜が好ましい。なお、有機セパレータ基材の厚さは、任意の厚さとすることができ、通常0.5μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常40μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0046】
[電極基材]
電極基材(正極基材および負極基材)としては、特に限定されないが、集電体上に電極合材層が形成された電極基材が挙げられる。
ここで、集電体、電極合材層中の電極活物質(正極活物質、負極活物質)および電極合材層用結着材(正極合材層用結着材、負極合材層用結着材)、並びに、集電体上への電極合材層の形成方法は、既知のものを用いることができ、例えば特開2013−145763号公報に記載のものが挙げられる。また電極合材層用結着材として、本発明のバインダー組成物に含まれる水溶性重合体を使用してもよい。
【0047】
[離型基材]
機能層を形成する離型基材としては、特に限定されず、既知の離型基材を用いることができる。
【0048】
<非水系二次電池用機能層の形成方法>
上述したセパレータ基材、電極基材などの基材上に機能層を形成する方法としては、以下の方法が挙げられる。
1)機能層用組成物をセパレータ基材又は電極基材の表面に塗布し、次いで乾燥する方法;
2)機能層用組成物にセパレータ基材又は電極基材を浸漬後、これを乾燥する方法;
3)機能層用組成物を、離型基材上に塗布、乾燥して機能層を製造し、得られた機能層をセパレータ基材又は電極基材の表面に転写する方法;
これらの中でも、前記1)の方法が、機能層の膜厚制御をしやすいことから特に好ましい。該1)の方法は、詳細には、機能層用組成物をセパレータ基材又は電極基材上に塗布する工程(塗布工程)、セパレータ基材又は電極基材上に塗布された機能層用組成物を乾燥させて機能層を形成する工程(機能層形成工程)を備える。
【0049】
[塗布工程]
塗布工程において、機能層用組成物を基材上に塗布する方法は、特に制限は無く、例えば、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。
【0050】
[機能層形成工程]
また、機能層形成工程において、基材上の機能層用組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥温度は好ましくは50〜100℃で、乾燥時間は好ましくは5〜30分である。
なお、基材上に形成された機能層の厚さは、適宜調整することができる。
【0051】
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池は、上述した本発明の非水系二次電池用機能層を備えるものである。より具体的には、本発明の非水系二次電池は、正極、負極、セパレータ、および電解液を備え、上述した非水系二次電池用機能層が、電池部材である正極、負極およびセパレータの少なくとも1つに含まれる。
本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用機能層を備えているので、サイクル特性などの電池特性に優れる。
【0052】
<正極、負極およびセパレータ>
本発明の二次電池に用いる正極、負極およびセパレータは、少なくとも一つが機能層を有している。具体的には、機能層を有する正極および負極としては、集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材の上に機能層を設けてなる電極を用いることができる。また、機能層を有するセパレータとしては、セパレータ基材の上に機能層を設けてなるセパレータを用いることができる。なお、電極基材およびセパレータ基材としては、「基材」の項で挙げたものと同様のものを用いることができる。
また、機能層を有さない正極、負極およびセパレータとしては、特に限定されることなく、上述した電極基材よりなる電極および上述したセパレータ基材よりなるセパレータを用いることができる。
【0053】
<電解液>
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、例えば、リチウムイオン二次電池においてはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liが好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0054】
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えばリチウムイオン二次電池においては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類が好ましい。通常、用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができる。また、電解液には、既知の添加剤を添加してもよい。
【0055】
<非水系二次電池の製造方法>
非水系二次電池は、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて、巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することで製造し得る。なお、正極、負極、セパレータのうち、少なくとも一つの部材を機能層付きの部材とする。ここで、電池容器には、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される繰り返し単位(単量体単位)の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
実施例および比較例において、水溶性重合体の非水系電解液に対する膨潤度およびガラス転移温度、機能層の電解液浸漬前および電解液浸漬後における接着性、機能層の遷移金属捕捉能、セパレータの耐熱収縮性、並びにリチウムイオン二次電池のサイクル特性は、下記の方法で測定および評価した。
【0057】
<非水系電解液に対する膨潤度>
直径5cmのアルミ皿に入れた水溶性重合体の水溶液を、恒温恒湿室(25℃、湿度50%)で2日間乾燥させて厚さ1mmのフィルムを得た。このフィルムを1.5cm×1.5cmに切出しバインダーフィルムとし、重量M0を測定した。その後、得られたバインダーフィルムを非水系電解液(溶媒:EC/DEC/ビニレンカーボネート(VC)=68.5/30/1.5(体積比)、電解質:濃度1MのLiPF
6)に60℃、72時間浸漬した。浸漬後のバインダーフィルムの表面の非水系電解液をふき取り重量M1を測定した。そして、下記式に従って、非水系電解液に対する膨潤度を算出した。
非水系電解液に対する膨潤度=M1/M0
<ガラス転移温度>
水溶性重合体の水溶液を、50%湿度、23〜25℃の環境下で3日間乾燥させて、厚さ1mmのフィルムを得た。このフィルムを、120℃の熱風オーブンで1時間乾燥させた。乾燥させたフィルムをサンプルとして、JIS K7121に準じて、測定温度−100℃〜180℃、昇温速度5℃/分にて、示差走査熱量分析計(DSC6220SII、ナノテクノロジー社製)を用いてガラス転移温度(℃)を測定した。
<電解液浸漬前における接着性>
セパレータ(セパレータ基材上に機能層を備える)を、幅10mm×長さ100mmの長方形に切り出し、試験片とした。この試験片を、機能層の表面を下にして、機能層の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。次にセパレータの一端を180°方向に引張り速度10mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。測定を3回行い、その平均値を求めてこれをピール強度P1とし、下記の基準で評価した。ピール強度P1が大きいほど、電解液浸漬前において、機能層とセパレータ基材との間の接着性が優れることを示す。
A:ピール強度P1が180N/m以上
B:ピール強度P1が140N/m以上180N/m未満
C:ピール強度P1が100N/m以上140N/m未満
D:ピール強度P1が100N/m未満
<電解液浸漬後における接着性>
セパレータ(セパレータ基材上に機能層を備える)を、幅10mm×長さ100mmの長方形に切り出し、試験片とした。この試験片を電解液(溶媒:EC/DEC/VC(体積混合比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF
6)に180分間浸漬した。その後電解液から試験片を取り出し、機能層の表面に付着した電解液を拭き取った。その後、機能層の表面を下にして、機能層の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、セパレータの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。測定を3回行い、その平均値を求めてこれをピール強度P2とし、下記の基準で評価した。ピール強度P2が大きいほど、電解液浸漬後において、機能層とセパレータ基材との間の接着性が優れることを示す。
A:ピール強度P2が9.0N/m以上
B:ピール強度P2が8.0N/m以上9.0N/m未満
C:ピール強度P2が6.0N/m以上8.0N/m未満
D:ピール強度P2が6.0N/m未満
<遷移金属捕捉能>
セパレータ(セパレータ基材上に機能層を備える)を面積100cm
2の大きさに切り出し試験片とし、この試験片の重量を測定した。次いで、溶媒(EMC:EC=70:30(質量比))に支持電解質としてのLiPF
6を1モル/リットルの濃度で溶解させて得た電解液に、塩化コバルト(無水)(CoCl
2)、塩化ニッケル(無水)(NiCl
2)、および塩化マンガン(無水)(MnCl
2)を、各金属イオン濃度がそれぞれ20質量ppmとなるように溶解させて測定用電解液を調製した。次に、試験片が入ったガラス容器に上述の測定用電解液10gを入れ、試験片を測定用電解液に浸漬させ、25℃で5日間静置した。その後、試験片を取り出し、DECで試験片を十分に洗浄し、試験片表面に付着したDECを十分に拭き取った後、その試験片の重量を測定した。その後、試験片をテフロン(登録商標)性ビーカーに入れ、硫酸および硝酸(硫酸:硝酸=0.1:2(体積比))を添加し、ホットプレートで加温して、試験片が炭化するまで濃縮した。さらに、硝酸および過塩素酸(硝酸:過塩素酸=2:0.2(体積比))を添加した後、過塩素酸およびフッ化水素酸(過塩素酸:フッ化水素酸=2:0.2(体積比))を添加し、白煙が出るまで濃縮した。次いで、硝酸および超純水(硝酸:超純水=0.5:10(体積比))を添加し、加温した。放冷後、定容し定容溶液とした。この定容溶液を用い、ICP質量分析計(PerkinElmer社製「ELAN DRS II」)で、前記定容溶液中のコバルト量、ニッケル量、およびマンガン量を測定した。そして、前記定容溶液中のコバルト量、ニッケル量、およびマンガン量の合計を前記試験片の重量で割ることで、試験片中の遷移金属濃度(質量ppm)を算出し、下記の基準で評価した。この遷移金属濃度が高いほど、機能層の単位質量あたりの遷移金属捕捉能が高いことを示す。
A:遷移金属濃度が2500質量ppm以上
B:遷移金属濃度が1500質量ppm以上2500質量ppm未満
C:遷移金属濃度が500質量ppm以上1500質量ppm未満
D:遷移金属濃度が500質量ppm未満
<耐熱収縮性>
セパレータ(セパレータ基材上に機能層を備える)を、一辺が12cmの正方形に切り出し、かかる正方形の内部に一辺が10cmの正方形を描いて試験片とした。そして、試験片を150℃の恒温槽に入れて1時間放置した後、内部に描いた正方形の面積変化(={(放置前の正方形の面積−放置後の正方形の面積)/放置前の正方形の面積}×100%)を熱収縮率として求め、下記の基準で評価した。この熱収縮率が小さいほど、機能層を有するセパレータの耐熱収縮性が優れていることを示す。
A:熱収縮率が5%未満
B:熱収縮率が5%以上10%未満
C:熱収縮率が10%以上20%未満
D:熱収縮率が20%以上
<サイクル特性>
製造したリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた後、25℃の環境下において、0.1Cの充電レートで4.4Vまで充電し、0.1Cの放電レートで2.75Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。その後、更に、60℃の環境下で、同様の充放電の操作を繰り返し、1000サイクル後の容量C1を測定した。
そして、サイクル前後での容量維持率ΔC(=(C1/C0)×100%)を算出し、下記の基準で評価した。容量維持率ΔCの値が大きいほど、二次電池が高温サイクル特性に優れ、長寿命であることを示す。
A:容量維持率ΔCが85%以上
B:容量維持率ΔCが80%以上85%未満
C:容量維持率ΔCが75%以上80%未満
D:容量維持率ΔCが75%未満
【0058】
(実施例1)
<非水系二次電池用バインダー組成物の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、スルホン酸基含有単量体としてスチレンスルホン酸リチウム30部、(メタ)アクリロニトリル単量体としてアクリロニトリル35部、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてブチルアクリレート30部、酸基含有単量体としてメタクリル酸5部、反応性界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム1.0部、イオン交換水400部、および重合開始剤として過硫酸カリウム1.0部を入れ、十分に攪拌した後、65℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、非水系二次電池用バインダー組成物(水溶性重合体の水溶液)を得た。このバインダー組成物を用いて、水溶性重合体の非水系電解液に対する膨潤度およびガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
<粒子状重合体の水分散液の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、並びに過硫酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、分散剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、ブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N−メチロールアクリルアミド1部およびアクリルアミド1部を混合して単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、さらに70℃で3時間撹拌して反応を終了し、粒子状重合体であるアクリル系重合体を含む水分散液を調製した。なお、水溶性重合体のガラス転移温度と同様にして測定したアクリル系重合体のガラス転移温度は−40℃であった。
<非水系二次電池機能層用組成物の調製>
非導電性粒子としてのアルミナフィラー(日本軽金属社製、「LS256」)100部に対して、上記水溶性重合体を固形分相当で5部、上記粒子状重合体を固形分相当で2部、ポリエチレングリコール型界面活性剤(サンノプコ社製、「サンノプコ(登録商標)SNウェット366」)0.2部を混合し、機能層用組成物を調製した。なおこの混合により、水溶性重合体と粒子状重合体を含むバインダー組成物が生成しており、換言すれば、得られた機能層用組成物には、水溶性重合体と粒子状重合体を含むバインダー組成物が含有されていることになる。
<機能層および機能層を備えるセパレータの作製>
セパレータ基材として、ポリエチレン製の多孔基材からなる有機セパレータ基材(セルガード社製、厚さ16μm)を用意した。このセパレータ基材上に、上述した機能層用組成物を塗布し、60℃で10分乾燥させた。これにより、セパレータ基材上に厚さ2μmの機能層を備えてなるセパレータを得た。このセパレータを用いて、機能層の電解液浸漬前後それぞれにおける接着性、遷移金属捕捉能、およびセパレータの耐熱収縮性を評価した。結果を表1に示す。
【0059】
<負極の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33部、イタコン酸3.5部、スチレン63.5部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止して、負極合材層用の粒子状結着材(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状結着材を含む水分散液を得た。
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径D50:15.6μm)100部、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部、および、イオン交換水を混合して固形分濃度が68%となるように調整した後、25℃で60分間混合した。次いで、固形分濃度が62%となるようにイオン交換水で調整し、更に25℃で15分間混合した。その後、得られた混合液に、前述の粒子状結着材を含む水分散液を固形分相当で1.5部、およびイオン交換水を入れ、最終固形分濃度が52%となるように調整し、更に10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理し、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
そして、前述のようにして得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥して負極原反を得た。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚さが80μmの負極を得た。
【0060】
<正極の調製>
正極活物質としてのLiCoO
2(体積平均粒子径D50:12μm)を100部、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部、正極合材層用の結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、#7208)を固形分相当で2部と、N−メチルピロリドンとを混合し、全固形分濃度を70%とした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を調製した。
前述のようにして得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥して正極原反を得た。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送し、さらに120℃で2分間加熱処理することにより行った。その後、正極原反をロールプレスで圧延して、正極合材層の厚さが80μmの正極を得た。
【0061】
<リチウムイオン二次電池の製造>
上記で得られたプレス後の正極を49cm×5cmに切り出して正極合材層側の表面が上側になるように置いた。そしてその上に、120cm×5.5cmに切り出したセパレータ(片面に機能層を備えるセパレータ)を、正極の正極合材層側の表面がセパレータの機能層に向かいあうように、かつ、正極がセパレータの長手方向左側に位置するように配置した。さらに、上記で得られたプレス後の負極を、50cm×5.2cmに切り出し、これをセパレータ上に、負極合材層側の表面がセパレータの有機セパレータ基材に向かい合うように、かつ、負極がセパレータの長手方向右側に位置するように配置した。これを捲回機により、セパレータの長手方向の真ん中を中心に捲回し、捲回体を得た。この捲回体を60℃、0.5MPaでプレスし、扁平体とした後、電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:EC/DEC/VC(体積比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF
6)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミ包材外装の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミ包材外装を閉口し、非水系二次電池として放電容量1000mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。
そして、得られた二次電池について、サイクルを評価した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2〜7)
非水系二次電池用バインダー組成物の調製時に、使用する単量体の種類および割合を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー組成物、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例4では、スルホン酸基含有単量体としてスチレンスルホン酸ナトリウムを使用した。
【0063】
(比較例1〜4)
非水系二次電池用バインダー組成物の調製時に、使用する単量体の種類および割合を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー組成物、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、比較例3および4では、非水系二次電池用バインダー組成物の調製において、水溶性重合体でなく、非水溶性の重合体が得られた。また比較例4では、(メタ)アクリル酸エステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレートを使用した。
【0064】
なお、以下に示す表1中、
「LiSS」は、スチレンスルホン酸リチウムを示し、
「NaSS」は、スチレンスルホン酸ナトリウムを示し、
「AN」は、アクリロニトリルを示し、
「BA」は、ブチルアクリレートを示し、
「2−EHA」は、2−エチルへキシルアクリレートを示し、
「MAA」は、メタクリル酸を示し、
「ACL」は、アクリル系重合体を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
上述の表1の実施例1〜7および比較例1〜4より、結着材として、スルホン酸基含有単量体単位を10質量%以上50質量%以下含み、(メタ)アクリロニトリル単量体単位を20質量%以上含む水溶性重合体を用いれば、遷移金属捕捉能に優れ、かつ二次電池に優れたサイクル特性を発揮させる機能層を形成可能であることがわかる。併せて、当該水溶性重合体を用いて得られる機能層は、電解液浸漬前後における接着性に優れ、またこの機能層を備えるセパレータは耐熱収縮性に優れることがわかる。
そして、上述の表1の実施例1〜7より、非水系二次電池用バインダー組成物(水溶性重合体の水溶液)の調製時に、使用する単量体の種類や割合を変更することで、機能層の遷移金属捕捉能、電解液浸漬前後における接着性、セパレータの耐熱収縮性、および二次電池のサイクル特性をより向上させうることが分かる。