(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)が、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位をさらに含有するものである請求項1に記載のニトリルゴム組成物。
前記α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位が、アクリル酸n−ブチル単位またはアクリル酸メトキシエチル単位である請求項2に記載のニトリルゴム組成物。
前記ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)として、単量体組成および/またはヨウ素価の異なる2種類以上のゴムを混合したものを用いる請求項1〜4のいずれかに記載のニトリルゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ニトリルゴム組成物
本発明のニトリルゴム組成物は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を14重量%以上、21重量%未満の割合で含有し、ヨウ素価が120以下であるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対し、充填剤(B)50〜90重量部と、アジピン酸エステル系可塑剤および/またはエーテルエステル系可塑剤(C)0〜29.9重量部とを含有するものである。
【0012】
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)
本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を14重量%以上、21重量%未満の割合で含有し、ヨウ素価が120以下の範囲にあるものである。
本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、たとえば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、および必要に応じて加えられる共重合可能なその他の単量体を共重合することにより得ることができる。
【0013】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されず、たとえば、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0014】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、14重量%以上、21重量%未満であり、好ましくは15〜20.5重量%、より好ましくは16〜20重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物が耐油性に劣るものとなるおそれがあり、逆に多すぎると耐油中硬化性が低下する可能性がある。
【0015】
なお、本発明において、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)として、単量体組成の異なるゴムを組み合わせて用いる場合には、単量体組成の異なるゴムの混合物全体における、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合を上記範囲とすればよい。たとえば、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)として、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合が15重量%であるゴム(α)と、21重量%であるゴム(β)とを50:50(重量比)にて混合して用いる場合には、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)全体のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、18重量%となる。以下、共役ジエン単量体単位、カルボキシル基含有単量体単位などにおいても、同様とする。
【0016】
本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、得られるゴム架橋物がゴム弾性を有するものとするために、共役ジエン単量体単位をも含有することが好ましい。
【0017】
共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。共役ジエン単量体は一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0018】
共役ジエン単量体単位(水素化されている部分も含む)の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは20〜70.9重量%、より好ましくは25〜65重量%、さらに好ましくは30〜60重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、耐熱性や耐化学的安定性を良好に保ちながら、ゴム弾性に優れたものとすることができる。
【0019】
また、本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、得られるゴム架橋物を耐圧縮永久歪み性により優れたものとするという観点より、カルボキシル基含有単量体単位をも含有することが好ましい。
【0020】
カルボキシル基含有単量体単位を形成するカルボキシル基含有単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能であり、かつ、エステル化等されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を1個以上有する単量体であれば特に限定されない。カルボキシル基含有単量体を用いることにより、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)に、カルボキシル基を導入することができる。
【0021】
カルボキシル基含有単量体としては、たとえば、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体などが挙げられる。また、カルボキシル基含有単量体には、これらの単量体のカルボキシル基がカルボン酸塩を形成している単量体も含まれる。さらに、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の無水物も、共重合後に酸無水物基を開裂させてカルボキシル基を形成するので、カルボキシル基含有単量体として用いることができる。
【0022】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
【0023】
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、フマル酸やマレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルマロン酸、テラコン酸などが挙げられる。また、α,β−不飽和多価カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
【0024】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
【0025】
カルボキシル基含有単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著になることから、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体が好ましく、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル単量体がより好ましく、マレイン酸モノアルキルエステルがさらに好ましく、マレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。なお、上記アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、2〜8が好ましい。
【0026】
カルボキシル基含有単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。カルボキシル基含有単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の機械特性および耐圧縮永久歪み性をより良好なものとすることができる。
【0027】
また、本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、得られるゴム架橋物の耐寒性をより高めるという観点より、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位をも含有することが好ましい。
【0028】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アミノアルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸フルオロアルキルエステル単量体などが挙げられる。
これらのなかでも、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体、またはα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましい。
【0029】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル単量体としては、アルキル基として、炭素数が3〜10でアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が3〜8であるアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数が4〜6であるアルキル基を有するものがさらに好ましい。
【0030】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ドデシルなどのアクリル酸アルキルエステル単量体;アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル単量体;アクリル酸メチルシクロペンチル、アクリル酸エチルシクロペンチル、アクリル酸メチルシクロヘキシルなどのアクリル酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−オクチルなどのメタクリル酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル単量体;メタクリル酸メチルシクロペンチル、メタクリル酸エチルシクロペンチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシルなどのメタクリル酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;クロトン酸プロピル、クロトン酸n−ブチル、クロトン酸2−エチルヘキシルなどのクロトン酸アルキルエステル単量体;クロトン酸シクロペンチル、クロトン酸シクロヘキシル、クロトン酸シクロオクチルなどのクロトン酸シクロアルキルエステル単量体;クロトン酸メチルシクロペンチル、クロトン酸メチルシクロヘキシルなどのクロトン酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;などが挙げられる。
【0031】
また、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、アルコキシアルキル基として、炭素数が2〜8でアルコキシアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が2〜6であるアルコキシアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数が2〜4であるアルコキシアルキル基を有するものがさらに好ましい。
【0032】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体の具体例としては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸エトキシドデシル、アクリル酸n−プロポキシエチル、アクリル酸i−プロポキシエチル、アクリル酸n−ブトキシエチル、アクリル酸i−ブトキシエチル、アクリル酸t−ブトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチルなどのアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸エトキシペンチル、メタクリル酸n−プロポキシエチル、メタクリル酸i−プロポキシエチル、メタクリル酸n−ブトキシエチル、メタクリル酸i−ブトキシエチル、メタクリル酸t−ブトキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸メトキシブチルなどのメタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;などが挙げられる。
【0033】
これらα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体のなかでも、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができるという点より、アクリル酸アルキルエステル単量体、アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましく、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸メトキシエチルがより好ましい。また、これらα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0034】
本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)中における、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%であり、より好ましくは15〜55重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の耐寒性をより適切に高めることができる。
【0035】
また、本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、共役ジエン単量体単位、カルボキシル基含有単量体単位、およびα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位に加えて、これらを形成する単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を含有するものであってもよい。このようなその他の単量体としては、前記以外のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体、エチレン、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
【0036】
前記以外のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなどの炭素数2〜12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1〜12のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;などが挙げられる。
【0037】
α−オレフィン単量体としては、炭素数が3〜12のものが好ましく、たとえば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0038】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0039】
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0040】
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、 N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
【0041】
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。その他の単量体の単位の含有量は、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0042】
本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)のヨウ素価は、120以下であり、好ましくは80以下、より好ましくは50以下、特に好ましくは30以下である。ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)のヨウ素価が高すぎると、得られるゴム架橋物の耐熱性および耐オゾン性が低下するおそれがある。なお、本発明において、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)として、ヨウ素価の異なるゴムを組み合わせて用いる場合には、ヨウ素価の異なるゴムの混合物全体における、ヨウ素価を上記範囲とすればよい。
【0043】
本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)のポリマー・ムーニー粘度(ML
1+4、100℃)は、好ましくは10〜200、より好ましくは15〜150、さらに好ましくは15〜100、特に好ましくは30〜70である。ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)のポリマー・ムーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋物の機械特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると、ニトリルゴム組成物の加工性が低下する可能性がある。
【0044】
本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)の製造方法は、特に限定されないが、上述した単量体を共重合し、必要に応じて、得られる共重合体中の炭素−炭素二重結合を水素化することによって製造することができる。重合方法は、特に限定されず公知の乳化重合法や溶液重合法によればよいが、工業的生産性の観点から乳化重合法が好ましい。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤に加えて、通常用いられる重合副資材を使用することができる。
【0045】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸およびリノレン酸等の脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤;などが挙げられる。乳化剤の添加量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0046】
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物が好ましい。重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。重合開始剤の添加量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。
【0047】
乳化重合の媒体には、通常、水が使用される。水の量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部、より好ましくは80〜300重量部である。
【0048】
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じて安定剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
【0049】
また、本発明においては、得られた共重合体について、必要に応じて、共重合体の水素化(水素添加反応)を行ってもよい。水素添加は公知の方法によればよく、乳化重合で得られた共重合体のラテックスを凝固した後、油層で水素添加する油層水素添加法や、得られた共重合体のラテックスをそのまま水素添加する水層水素添加法などが挙げられる。
【0050】
水素添加を油層水素添加法で行う場合、好適には上記乳化重合により調製した共重合体のラテックスを塩析やアルコールによる凝固、濾別および乾燥を経て、有機溶媒に溶解する。次いで水素添加反応(油層水素添加法)を行い、得られた水素化物を大量の水中に注いで凝固、濾別および乾燥を行うことによりニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)を得ることができる。
【0051】
ラテックスの塩析による凝固には、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウムなど公知の凝固剤を使用することができる。また、塩析による凝固に代えて、メタノールなどのアルコールを用いて凝固を行ってもよい。油層水素添加法の溶媒としては、乳化重合により得られた共重合体を溶解する液状有機化合物であれば特に限定されないが、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノンおよびアセトンなどが好ましく使用される。
【0052】
油層水素添加法の触媒としては、公知の選択的水素化触媒であれば限定なく使用でき、パラジウム系触媒およびロジウム系触媒が好ましく、パラジウム系触媒(酢酸パラジウム、塩化パラジウムおよび水酸化パラジウムなど)がより好ましい。これらは2種以上併用してもよいが、その場合はパラジウム系触媒を主たる活性成分とすることが好ましい。これらの触媒は、通常、担体に担持させて使用される。担体としては、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、珪藻土、活性炭などが例示される。触媒使用量は、共重合体に対して好ましくは10〜5000重量ppm、より好ましくは100〜3000重量ppmである。
【0053】
あるいは、水素添加を水層水素添加法で行う場合、好適には上記乳化重合により調製した共重合体のラテックスに、必要に応じて水を加えて希釈し、水素添加反応を行う。水層水素添加法は、水素化触媒存在下の反応系に水素を供給して水素化する水層直接水素添加法と、酸化剤、還元剤および活性剤の存在下で還元して水素化する水層間接水素添加法とが挙げられるが、これらの中でも、水層直接水素添加法が好ましい。
【0054】
水層直接水素添加法において、水層における共重合体の濃度(ラテックス状態での濃度)は、凝集を防止するため40重量%以下であることが好ましい。水素化触媒は、水で分解しにくい化合物であれば特に限定されない。その具体例として、パラジウム触媒では、ギ酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、フタル酸などのカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが挙げられる。これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウムおよびヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムが特に好ましい。水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、重合により得られた共重合体に対し、好ましくは5〜6000重量ppm、より好ましくは10〜4000重量ppmである。
【0055】
水層直接水素添加法においては、水素添加反応終了後、ラテックス中の水素化触媒を除去する。その方法として、たとえば、活性炭、イオン交換樹脂などの吸着剤を添加して攪拌下で水素化触媒を吸着させ、次いでラテックスを濾過または遠心分離する方法を採ることができる。水素化触媒を除去せずにラテックス中に残存させることも可能である。
【0056】
そして、水層直接水素添加法においては、このようにして得られた水素添加反応後のラテックスについて、塩析による凝固、濾別および乾燥などを行なうことにより、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)を得ることができる。この場合における、凝固に続く濾別および乾燥の工程はそれぞれ公知の方法によって行なうことができる。
【0057】
充填剤(B)
また、本発明のニトリルゴム組成物は、上述したニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対して、充填剤(B)を50〜90重量部、好ましくは55〜85重量部、より好ましくは60〜80重量部含有するものである。充填剤(B)の含有量が少なすぎても、また、多すぎても、得られるゴム架橋物は耐油中硬化性に劣るものとなってしまう。
【0058】
充填剤(B)としては、ゴム分野において通常用いられている充填剤であれば何でもよく特に限定されず、有機充填剤および無機充填剤のいずれをも用いることができるが、その配合効果が高いという点より、無機充填剤が好ましい。
【0059】
無機充填剤としては、ゴムの配合用に通常用いられているものであればよく、たとえば、カーボンブラック、シリカ、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウムマグネシウム、酸化チタン、カオリン、パイロフィライト、ベントナイト、タルク、アタパルジャイト、ケイ酸マグネシウムカルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、結晶性アルミノケイ酸塩などが挙げられる。これらのなかでも、カーボンブラック、シリカ、クレーが好ましく用いられる。無機充填剤は、1種単独で、または複数種併せて用いることができる。
【0060】
カーボンブラックとしては、ゴムの配合用に通常用いられているものであればよく、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどが挙げられる。
【0061】
シリカとしては、石英粉末、珪石粉末等の天然シリカ;無水珪酸(シリカゲル、アエロジル等)、含水珪酸等の合成シリカ;などが挙げられ、これらのなかでも、合成シリカが好ましい。
【0062】
クレーとしては、含水ケイ酸アルミニウムを主成分とする天然鉱物であればよく、特に限定されないが、モンモリロナイト、パイロフィライト、カオリナイト、ハロイサイトおよびセリサイトなどが挙げられる。
【0063】
なお、無機充填剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等によるカップリング処理や、高級脂肪酸またはその金属塩、エステルもしくはアミド等の高級脂肪酸誘導体や界面活性剤等による表面改質処理を施したものを用いてもよい。
【0064】
アジピン酸エステル系可塑剤および/またはエーテルエステル系可塑剤(C)
本発明で用いるアジピン酸エステル系可塑剤および/またはエーテルエステル系可塑剤(C)としては、アジピン酸のエステル化合物または、エーテルエステル系の化合物であればよく、特に限定されない。
【0065】
アジピン酸エステル系可塑剤としては、たとえば、アジピン酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)、アジピン酸ジ(メトキシテトラエチレングリコール)、アジピン酸ジ(メトキシペンタエチレングリコール)、アジピン酸(メトキシテトラエチレングリコール)(メトキシペンタエチレングリコール)などの他、商品名「アデカサイザーRS−107」などを挙げることができる。
【0066】
エーテルエステル系可塑剤としては、たとえば、商品名「アデカサイザーRS−700」(ADEKA社製)、商品名「アデカサイザーRS−735」(ADEKA社製)などのポリエーテルエステル系可塑剤などを挙げることができる。
【0067】
本発明のニトリルゴム組成物中における、アジピン酸エステル系可塑剤および/またはエーテルエステル系可塑剤(C)の含有量は、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対して、0〜29.9重量部、好ましくは5〜27.5重量部、より好ましくは10〜25重量部である。アジピン酸エステル系可塑剤および/またはエーテルエステル系可塑剤(C)の含有量が多すぎると、耐油中硬化性に劣るものとなってしまう。一方、硬度をより低く、また、耐寒性をより高めるという観点より、本発明のニトリルゴム組成物を、アジピン酸エステル系可塑剤および/またはエーテルエステル系可塑剤(C)を含有するものとすることが好ましい。
【0068】
なお、アジピン酸エステル系可塑剤および/またはエーテルエステル系可塑剤(C)としては、2種以上の化合物を併用してもよいが、この場合においては、併用する各化合物の合計量が上記範囲となるような量とすればよい。
【0069】
架橋性ニトリルゴム組成物
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、上述したニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対し、50〜90重量部の充填剤(B)、0〜29.9重量部のアジピン酸エステル系可塑剤および/またはエーテルエステル系可塑剤(C)を含有するニトリルゴム組成物に、架橋剤を配合してなるものである。
【0070】
架橋剤としては、特に限定されないが、たとえば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物架橋剤およびポリアミン系架橋剤などが挙げられる。これらの中でも、耐圧縮永久歪み性をより向上させるという観点より、ポリアミン系架橋剤が好ましい。
【0071】
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼノピン−2)、含リンポリスルフィド、高分子多硫化物などの含硫黄化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどの硫黄供与性化合物;などが挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0072】
有機過酸化物架橋剤としては、ジクミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ビス−(t−ブチル−ペルオキシ)−n−ブチルバレレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキシン−3、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、p−クロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシベンゾエート等が挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0073】
ポリアミン系架橋剤としては、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNH
2で表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物および架橋時にその化合物の形態になるものが好ましい。
【0074】
ポリアミン系架橋剤の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物などの脂肪族多価アミン類;4,4−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4−ジアミノベンズアニリド、4,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミンなどの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、ナフタレン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタミン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ブラッシル酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、アセトンジカルボン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、アコニット酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジドなどの多価ヒドラジド類;が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができるという点より、脂肪族多価アミン類および芳香族多価アミン類が好ましく、ヘキサメチレンジアミンカルバメートおよび2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンがより好ましく、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
【0075】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物中における、架橋剤の含有量は、特に限定されないが、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の機械的特性をより良好なものとすることができる。
【0076】
また、架橋剤として、ポリアミン系架橋剤を使用する場合には、得られるゴム架橋物の機械的特性をより高めることができるという点より、塩基性架橋促進剤をさらに含有していることが好ましい。
【0077】
塩基性架橋促進剤の具体例としては、下記一般式(1)で表される化合物や、環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤、グアニジン系塩基性架橋促進剤、アルデヒドアミン系塩基性架橋促進剤などが挙げられる。
【化1】
(上記一般式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数5〜12のシクロアルキル基である。)
【0078】
R
1およびR
2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数5〜12のシクロアルキル基であるが、置換基を有していてもよい炭素数5〜12のシクロアルキル基であることが好ましく、置換基を有していてもよい炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが特に好ましい。
また、R
1およびR
2は、置換基を有していないことが好ましい。
【0079】
なお、R
1およびR
2が置換基を有する場合の置換基の具体例としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0080】
また、上記一般式(1)で表される化合物のなかでも、加工性およびスコーチ安定性をより高めることができるという点より、下記一般式(2)で表される化合物がより好ましい。
【化2】
(上記一般式(2)中、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数5〜8のシクロアルキル基である。)
【0081】
R
3およびR
4は、置換基を有していてもよい炭素数5〜8のシクロアルキル基であるが、炭素数5または6の置換基を有していてもよいシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数6の置換基を有していてもよいシクロアルキル基であることがより好ましい。
また、R
3およびR
4は、置換基を有していないことが好ましい。
【0082】
なお、R
3およびR
4が置換基を有する場合の置換基の具体例としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0083】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジシクロヘプチルアミンなどのジシクロアルキルアミン;N−メチルシクロペンチルアミン、N−ブチルシクロペンチルアミン、N−ヘプチルシクロペンチルアミン、N−オクチルシクロペンチルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−ブチルシクロヘキシルアミン、N−ヘプチルシクロヘキシルアミン、N−オクチルシクロオクチルアミンなどのアルキル基とシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;N−ヒドロキシメチルシクロペンチルアミン、N−ヒドロキシブチルシクロヘキシルアミンなどのヒドロキシ基を有するアルキル基とシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;N−メトキシエチルシクロペンチルアミン、N−エトキシブチルシクロヘキシルアミンなどのアルコキシ基を有するアルキル基とシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;N−メトキシカルボニルブチルシクロペンチルアミン、N−メトキシカルボニルヘプチルシクロヘキシルアミンなどのアルコキシカルボニル基を有するアルキル基とシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;N−アミノプロピルシクロペンチルアミン、N−アミノヘプチルシクロヘキシルアミンなどのアミノ基を有するアルキル基とシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;ジ(2−クロロシクロペンチル)アミン、ジ(3−クロロシクロペンチル)アミンなどのハロゲン原子を有するシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;などが挙げられるが、加工性およびスコーチ安定性をより高めることができるという点より、ジシクロアルキルアミンが好ましく、ジシクロペンチルアミンおよびジシクロヘキシルアミンがより好ましく、ジシクロヘキシルアミンが特に好ましい。
【0084】
また、環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(以下「DBU」と略す場合がある)および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(以下「DBN」と略す場合がある)、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メトキシエチルイミダゾール、1−フェニル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−エトキシイミダゾール、1−メチル−4−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−4−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−アミノイミダゾール、1−メチル−4−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール、1−メチル−5−ニトロベンゾイミダゾール、1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−フェニルイミダゾリン、1−メチル−2−ベンジルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−メチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。これら環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤のなかでも、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5が好ましく、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7がより好ましい。
グアニジン系塩基性架橋促進剤としては、テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−オルト−トリルグアニジン、オルトトリルビグアニドなどが挙げられる。
アルデヒドアミン系塩基性架橋促進剤としては、n−ブチルアルデヒドアニリン、アセトアルデヒドアンモニアなどが挙げられる。
【0085】
これら塩基性架橋促進剤のなかでも、上記一般式(1)で表される化合物、グアニジン系塩基性架橋促進剤および環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤が好ましく、上記一般式(1)で表される化合物、および環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤がより好ましい。
【0086】
なお、上記一般式(1)で表される化合物は、アルキレングリコールや炭素数5〜20のアルキルアルコールなどのアルコール類が混合されたものであってもよく、さらに無機酸および/または有機酸を含んでいてもよい。また、一般式(1)で表される化合物としては、一般式(1)で表される化合物と前記無機酸および/または有機酸とで塩を形成し、さらにアルキレングリコールと複合体を形成していてもよい。また、上記環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤は、有機カルボン酸やアルキルリン酸などと塩を形成していてもよい。
【0087】
塩基性架橋促進剤を配合する場合における、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物中の配合量は、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
【0088】
その他の配合剤
また、本発明のニトリルゴム組成物、架橋性ニトリルゴム組成物には、上記以外に、ゴム分野において通常使用される配合剤、たとえば、酸化亜鉛や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、メタクリル酸亜鉛やアクリル酸亜鉛などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸金属塩、共架橋剤、架橋助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、ジエチレングリコールなどの活性剤、シランカップリング剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を配合することができる。
【0089】
共架橋剤としては、特に限定されないが、ラジカル反応性の不飽和基を分子中に複数個有する低分子または高分子の化合物が好ましく、たとえば、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンなどの多官能ビニル化合物;トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート類;トリアリルシアヌレートなどのシアヌレート類;N,N'−m−フェニレンジマレイミドなどのマレイミド類;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルセバケート、トリアリルホスフェートなどの多価酸のアリルエステル;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート;エチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンのトリアリルエーテル、ペンタエリトリットの部分的アリルエーテルなどのアリルエーテル類;アリル化ノボラック、アリル化レゾール樹脂等のアリル変性樹脂;トリメチロールプロパントリメタクリレートやトリメチロールプロパントリアクリレートなどの、3〜5官能のメタクリレート化合物やアクリレート化合物;などが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0090】
さらに、本発明のニトリルゴム組成物、架橋性ニトリルゴム組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲で上記ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)以外のゴムを配合してもよい。ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)以外のゴムとしては、アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体ゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムなどを挙げることができる。ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)以外のゴムを配合する場合における配合量は、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
【0091】
本発明のニトリルゴム組成物、架橋性ニトリルゴム組成物は、上記各成分を好ましくは非水系で混合して調製される。本発明のニトリルゴム組成物、架橋性ニトリルゴム組成物を調製する方法に限定はないが、通常、架橋剤や熱に不安定な成分(たとえば、架橋助剤など)を除いた成分を、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で一次混練した後、ロールなどに移して架橋剤や熱に不安定な成分などを加えて二次混練することにより調製できる。
【0092】
ゴム架橋物
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜1時間である。
【0093】
また、架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0094】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のニトリルゴム組成物、架橋性ニトリルゴム組成物を用いて得られるものであり、耐寒性、耐圧縮永久歪み性、耐油中膨潤性(油中における体積変化が小さいこと)、および耐油中硬化性(具体的には、多環縮合芳香族化合物が含まれた油中における硬度変化が小さいこと、および多環縮合芳香族化合物が含まれた油中に浸漬した際における耐寒性の低下が小さいこと)に優れたものである。
このため、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、ショックアブソーバシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素または二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置およびボールねじ等)用のシール、バルブおよびバルブシート、BOP(Blow Out Preventar)、プラターなどの各種シール材;インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;平ベルト(フィルムコア平ベルト、コード平ベルト、積層式平ベルト、単体式平ベルト等)、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト等)、Vリブドベルト(シングルVリブドベルト、ダブルVリブドベルト、ラップドVリブドベルト、背面ゴムVリブドベルト、上コグVリブドベルト等)、CVT用ベルト、タイミングベルト、歯付ベルト、コンベアーベルト、などの各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材、クラッチフェーシング材などの減衰材ゴム部品;ダストカバー、自動車内装部材、摩擦材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、耐油中膨潤性および耐油中硬化性に優れたものであることから、自動車部品用の各種ガスケット、特に、インテークマニホールドガスケット用途として、好適に用いることができる。
【実施例】
【0095】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
【0096】
ゴム組成
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムを構成する各単量体単位の含有割合は、以下の方法により測定した。
すなわち、マレイン酸モノn−ブチル単位の含有割合は、2mm角のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム0.2gに、2−ブタノン100mLを加えて16時間攪拌した後、エタノール20mLおよび水10mLを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム100gに対するカルボキシル基のモル数を求め、求めたモル数をマレイン酸モノn−ブチル単位の量に換算することにより算出した。
1,3−ブタジエン単位および飽和化ブタジエン単位の含有割合は、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムを用いて、水素添加反応前と水素添加反応後のヨウ素価(JIS K 6235による)を測定することにより算出した。
アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6383に従い、ケルダール法により、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。
アクリル酸n−ブチル単位およびアクリル酸2−メトキシエチル単位の含有割合は、上記で求めたマレイン酸モノn−ブチル単位、1,3−ブタジエン単位、飽和化ブタジエン単位、および、アクリロニトリル単位の含有割合から、計算により求めた。
【0097】
ヨウ素価
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムのヨウ素価は、JIS K 6235に準じて測定した。
【0098】
ムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムのムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)は、JIS K6300に従って測定した(単位は〔ML
1+4、100℃〕)。
【0099】
常態物性(引張強度、破断時の伸び、硬さ)
架橋性ニトリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス成形してシート状のゴム架橋物を得た。次いで、得られたゴム架橋物をギヤー式オーブンに移して170℃で4時間二次架橋し、得られたシート状のゴム架橋物をJIS3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強度、および破断時の伸びを、また、JIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機(タイプA)を用いてゴム架橋物の硬さを、それぞれ測定した。
【0100】
耐寒性試験
上記常態物性の評価と同様にして得たシート状架橋物を用いて、JIS K6261に従い、TR試験(低温弾性回復試験)によりゴム架橋物の耐寒性を測定した。具体的には、伸長させた試験片を凍結させ、温度を連続的に上昇させることによって伸長されていた試験片の回復性を測定し、昇温により試験片の長さが10%収縮(回復)した時の温度TR10を測定した。TR10が低いほど、耐寒性に優れると判断できる。
【0101】
O−リング圧縮永久歪み
内径30mm、リング径3mmの金型を用いて、架橋性ニトリルゴム組成物を170℃で20分間、プレス圧10MPaで架橋した後、170℃で4時間二次架橋を行って、O−リング試験片を得た。O−リング試圧縮永久歪みは、この試験片を用いて25%圧縮状態で150℃にて168時間保持する条件で、JIS K6262に従って測定した。
【0102】
耐油中膨潤性試験
上記常態物性の評価と同様にして得たシート状架橋物を用いて、JIS K6258に従い、得られたシート状のゴム架橋物を60℃に調整した試験燃料油(Fuel B:エタノール=74:26(体積比率)(Fuel Bはイソオクタン:トルエン=70:30(体積比率)の混合物である。))に、70時間浸漬することにより、耐油中膨潤性試験を行った。
なお、耐油中膨潤性試験においては、燃料油浸漬前後のゴム架橋物の体積を測定し、燃料油浸漬後の体積膨潤度△V(単位:%)を、「△V=([燃料油浸漬後の体積−燃料油浸漬前の体積]/燃料油浸漬前の体積)×100」に従って算出し、算出した体積膨潤度△Vにより評価した。体積膨潤度△Vが小さいほど、耐油中膨潤性に優れる。
【0103】
多環縮合芳香族化合物含有燃料油浸漬後の硬化性試験(多環縮合芳香族化合物を含有する燃料油に浸漬した際の硬度変化)
上記耐油中膨潤性試験と同様にして、シート状のゴム架橋物を作製した。また、これとは別に、Fuel C(イソオクタン:トルエン=50:50(体積比率)の混合物である。)と、エタノールとの混合液(Fuel C:エタノール=80:20(体積比率))に、フェナントレン10重量%を溶解させることにより、フェナントレン含有試験燃料油を調製した。
そして、上記にて得られたシート状のゴム架橋物について、JIS K6253に従い、国際ゴム硬さ試験機(IRDH M法)を用いて、硬さの測定を行った。次いで、上記にて調製したフェナントレン含有試験燃料油に、上記にて得られたシート状のゴム架橋物を、60℃、70時間浸漬させた後、ゴム架橋物をフェナントレン含有試験燃料油から取り出して、120℃で3時間乾燥し、さらに室温条件下で24時間静置した後に、上記同様の条件にて、再度、硬さの測定を行った。そして、「硬さ変化ΔHs=燃料油浸漬後の硬さ−燃料油浸漬前の硬さ」に従って、硬さ変化ΔHsを求めた。硬さ変化ΔHsの値が大きいほど、フェナントレン含有試験燃料油に浸漬することによる硬度の上昇が大きく、耐油中硬化性に劣ると判断できる。その値が±10pts以内のものを「○」、±10ptsを超えたものを「×」として評価した。
【0104】
多環縮合芳香族化合物含有燃料油浸漬後の低温性試験(多環縮合芳香族化合物を含有する燃料油に浸漬した後の耐寒性)
上記耐油中膨潤性試験と同様にして、シート状のゴム架橋物を作製した。また、これとは別に、イソオクタン:エタノール=74:26(体積比率)の混合物に、フェナントレン8重量%を溶解させることにより、フェナントレン含有試験燃料油を調製した。次いで、上記にて調製したフェナントレン含有試験燃料油に、上記にて得られたシート状のゴム架橋物を、60℃、70時間浸漬させた後、ゴム架橋物をフェナントレン含有試験燃料油から取り出して、120℃で3時間乾燥し、さらに室温条件下で24時間静置した後に、JIS K6261に従い、TR試験(低温弾性回復試験)によりゴム架橋物の耐寒性を測定した。具体的には、伸長させた試験片を凍結させ、温度を連続的に上昇させることによって伸長されていた試験片の回復性を測定し、昇温により試験片の長さが10%収縮(回復)した時の温度TR10を測定した。TR10が低いほど、耐寒性および耐油中硬化性に優れると判断できる。その値が−25℃未満のものを「○」、−25℃以上のものを「×」として評価した。
【0105】
合成例1(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A1)の製造)
金属製ボトルに、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル15部、マレイン酸モノn−ブチル6部、アクリル酸n−ブチル39部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン40部を仕込んだ。金属製ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、金属製ボトルを回転させながら16時間重合反応を行った。濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、共重合体ゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
【0106】
そして、上記にて得られた共重合体ゴムのラテックスを、その共重合体ゴムの乾燥重量に対するパラジウム含有量が1,000重量ppmになるように、オートクレーブ中に、共重合体ゴムのラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3.0MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A1)のラテックスを得た。
【0107】
次いで、得られたラテックスに2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、60℃で12時間真空乾燥することにより、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A1)を得た。得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A1)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位15重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位35重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は40であった。
【0108】
合成例2(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A2)の製造)
アクリロニトリルの配合量を21部に、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部に、アクリル酸n−ブチルの配合量を34部に、1,3−ブタジエンの配合量を39部に、それぞれ変更した以外は、合成例1と同様にして、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A2)を得た。得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A2)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位21重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位29重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は47であった。
【0109】
合成例3(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A3)の製造)
アクリル酸n−ブチル39部の代わりにアクリル酸2−メトキシエチル30部を使用するとともに、アクリロニトリルの配合量を24部に、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を7部に、1,3−ブタジエンの配合量を39部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A3)を得た。得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A3)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位24重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位6重量%、アクリル酸2−メトキシエチル単位25重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は3.2×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は48であった。
【0110】
合成例4(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A4)の製造)
アクリロニトリルの配合量を16.5部に、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部に、アクリル酸n−ブチルの配合量を37.8部に、1,3−ブタジエンの配合量を39.8部に、それぞれ変更した以外は、合成例1と同様にして、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A4)を得た。得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A4)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位16.5重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位33.5重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は45であった。
【0111】
合成例5(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A5)の製造)
アクリロニトリルの配合量を18.0部に、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部に、アクリル酸n−ブチルの配合量を36.5部に、1,3−ブタジエンの配合量を39.5部に、それぞれ変更した以外は、合成例1と同様にして、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A5)を得た。得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A5)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位18重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位32重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は43であった。
【0112】
合成例6(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A6)の製造)
アクリロニトリルの配合量を19.5部に、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部に、アクリル酸n−ブチルの配合量を35.3部に、1,3−ブタジエンの配合量を39.3部に、それぞれ変更した以外は、合成例1と同様にして、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A6)を得た。得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A6)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位19.5重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位30.5重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45重量%であり、またヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は42であった。
【0113】
合成例7(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A7)の製造)
合成例4と同様の単量体組成にて、同様にして重合操作を行うことにより、共重合体ラテックスを得た。そして、得られた共重合体ラテックスについて、パラジウム含有量を共重合体ゴムの乾燥重量に対し900重量ppmとなるように変更した以外には、合成例1と同様にして、水素化反応を行い、次いで、凝固および乾燥を行うことで、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A7)を得た。得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A7)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位16.5重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位33.5重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45重量%であり、またヨウ素価は25、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は43であった。
【0114】
合成例8(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A8)の製造)
合成例4と同様の単量体組成にて、同様にして重合操作を行うことにより、共重合体ラテックスを得た。そして、得られた共重合体ラテックスについて、パラジウム含有量を共重合体ゴムの乾燥重量に対し800重量ppmとなるように変更した以外には、合成例1と同様にして、水素化反応を行い、次いで、凝固および乾燥を行うことで、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A8)を得た。得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A8)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位16.5重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位33.5重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45重量%であり、またヨウ素価は45、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は42であった。
【0115】
合成例9(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A9)の製造)
合成例4と同様の単量体組成にて、同様にして重合操作を行うことにより、共重合体ラテックスを得た。そして、得られた共重合体ラテックスについて、パラジウム含有量を共重合体ゴムの乾燥重量に対し650重量ppmとなるように変更した以外には、合成例1と同様にして、水素化反応を行い、次いで、凝固および乾燥を行うことで、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A9)を得た。得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A9)の各単量体単位の組成は、アクリロニトリル単位16.5重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位33.5重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45重量%であり、またヨウ素価は75、カルボキシル基含有量は2.8×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は41であった。
【0116】
実施例1
合成例1で得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A1)100部に、シリカ(商品名「Nipsil ER」、東ソー・シリカ社製)70部、ポリエーテルエステル系可塑剤(商品名「アデカサイザーRS−700」、ADEKA社製、可塑剤)20部、ステアリン酸(架橋促進助剤)1部、4,4’−ジ−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ナウガード445」、Crompton社製、老化防止剤)1.5部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(商品名「フォスファノールRL210」、東邦化学工業社製)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7(DBU)(商品名「RHENOGRAN XLA−60(GE2014)」、RheinChemie社製、DBU60%(ジンクジアルキルジフォスフェイト塩になっている部分も含む)、塩基性架橋促進剤)4部、および、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(商品名「Diak#1」、デュポン・ダウ・エラストマー社製、ポリアミン系架橋剤)2部を添加して混練することで、架橋性ニトリルゴム組成物を得た。
【0117】
そして、得られた架橋性ニトリルゴム組成物を用いて、常態物性(硬さ、引張強度、伸び)、耐寒性試験、O−リング圧縮永久歪み、耐油中膨潤性試験、多環縮合芳香族化合物含有燃料油浸漬後の硬化性試験、および、多環縮合芳香族化合物含有燃料油浸漬後の低温性試験の各試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
実施例2〜20
表1に示す各成分を、表1に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
たとえば、実施例2においては、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)として、合成例1で得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A1)25重量%、および、合成例2で得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A2)75重量%からなるものを用い、これらの合計100部に対して、表1に示す各成分を表1に示す量だけ使用して、架橋性ニトリルゴム組成物を得た。
【0119】
なお、実施例2〜20においては、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)として、合成例1で得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A1)、合成例2で得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A2)、および合成例3で得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A3)で得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A3)のうち、2種類を組み合わせて用いたが、実施例2〜20において用いたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)全体としての、アクリロニトリル単位量およびヨウ素価は、表1に示す通りであった(後述する実施例21、比較例2、比較例4〜11においても同様。)。なお、この際には、2種類のゴムを予め混練した後に、各種配合剤を添加した。
【0120】
実施例21〜27
表2に示す各成分を、表2に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0121】
比較例1〜11
表2に示す各成分を、表2に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
表1、表2中、各成分は、以下のとおりである。
・「FEFカーボンブラック」:FEFカーボンブラック(商品名「シーストSO」、東海カーボン社製)
・「MTカーボンブラック」:MTカーボンブラック(商品名「Thermax
(R) medium thermal carbon black N990」、CANCARB社製)
・「シリカ(Nipsil ER)」:シリカ(商品名「Nipsil ER」、東ソー・シリカ社製)
・「シリカ(Nipsil E75)」:シリカ(商品名「Nipsil E75」、東ソー・シリカ社製)
・「クレー(BURGESS KE)」:クレー(商品名「BURGESS KE」、バーゲスピグメント社製、シラン処理クレー)
・「トリメリット酸エステル(TOTM)」:トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(商品名「アデカサイザーC−8」、ADEKA社製、可塑剤)
・「トリメリット酸エステル(C−9N)」:トリメリット酸イソノニルエステル(商品名「アデカサイザーC−9N」、ADEKA社製、可塑剤)
・「ポリエーテルエステル系可塑剤(RS−700)」:ポリエーテルエステル系可塑剤(商品名「アデカサイザーRS−700」、ADEKA社製、可塑剤)
・「ポリエーテルエステル系可塑剤(RS−735)」:ポリエーテルエステル系可塑剤(商品名「アデカサイザーRS−735」、ADEKA社製、可塑剤)
・「アジピン酸エーテルエステル系可塑剤(RS−107)」:アジピン酸エーテルエステル系可塑剤(商品名「アデカサイザーRS−107」、ADEKA社製、可塑剤)
・「3−アミノプロピルトリエトキシシラン(Z−6011)」:3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「Z−6011」、東レ・ダウコーニング社製、シランカップリング剤)
・「ステアリン酸」:ステアリン酸(架橋促進剤)
・「4,4’−ジ−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン」:4,4’−ジ−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ナウガード445」、Crompton社製、老化防止剤)
・「ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル」:ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(商品名「フォスファノールRL210」、東邦化学工業社製)
・「1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7 60%品」:1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7(DBU)(商品名「RHENOGRAN XLA−60(GE2014)」、RheinChemie社製、DBU60%(ジンクジアルキルジフォスフェイト塩になっている部分も含む)、塩基性架橋促進剤)
・「ヘキサメチレンジアミンカルバメート」:ヘキサメチレンジアミンカルバメート(商品名「Diak#1」、デュポン・ダウ・エラストマー社製、ポリアミン系架橋剤)
【0125】
表1、表2に示すように、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位14重量%以上、21重量%未満を含有し、ヨウ素価が120以下であるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対し、50〜90重量部の充填剤(B)、および、0〜29.9重量部のアジピン酸エステル系可塑剤および/またはエーテルエステル系可塑剤(C)を配合してなるニトリルゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物は、耐寒性、耐圧縮永久歪み性、耐油中膨潤性、および耐油中硬化性(具体的には、多環縮合芳香族化合物を含有する燃料油に浸漬した際の硬度変化、多環縮合芳香族化合物を含有する燃料油に浸漬した後の耐寒性)に優れるものであった(実施例1〜27)。
一方、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムとして、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合が多すぎるものを用いた場合(比較例1〜3)、アジピン酸エステル系可塑剤および/またはエーテルエステル系可塑剤(C)の配合量が多い場合(比較例4)、アジピン酸エステル系可塑剤および/またはエーテルエステル系可塑剤(C)以外の可塑剤を用いた場合(比較例5,6)、充填剤(B)の含有量が少なすぎる場合(比較例7)、あるいは、充填剤(B)の含有量が多すぎる場合(比較例8〜11)には、得られるゴム架橋物は、多環縮合芳香族化合物を含有する燃料油に浸漬した際の硬度変化、および、多環縮合芳香族化合物を含有する燃料油に浸漬した後の耐寒性のいずれか一方、あるいは、両方に劣る結果となった。