特許第6809552号(P6809552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809552放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤及び剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物並びに剥離シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809552
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤及び剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物並びに剥離シート
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20201221BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20201221BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20201221BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
   C08L83/08
   C08J7/04 ZCFH
   B32B27/00 L
【請求項の数】2
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-49409(P2019-49409)
(22)【出願日】2019年3月18日
(62)【分割の表示】特願2016-34559(P2016-34559)の分割
【原出願日】2016年2月25日
(65)【公開番号】特開2019-167528(P2019-167528A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2019年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢治
(72)【発明者】
【氏名】土田 理
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊司
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/146294(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/054508(WO,A1)
【文献】 特開昭51−125277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
B32B 27/00
C08J 7/04
C08L 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記平均組成式(1)
【化1】
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換の1価炭化水素基及び下記一般式(2)で表されるマレイミド構造を有する有機基から選択される基であり、R1のうち少なくとも1個は下記一般式(2)で表されるマレイミド構造を有する有機基を含む。aは2以上の整数、bは0以上の整数、cは0以上の整数、dは0以上の整数で、2≦a+b+c+d≦1,000である。)
【化2】
(式中、R2とR3は互いに同一又は異種の水素原子又は炭素数1〜5の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、Xは炭素数1〜10のヘテロ原子を介在してもよい非置換もしくは置換の2価炭化水素基である。破線は結合手を示す。)
で示されるマレイミド基を有するオルガノポリシロキサンからなる軽剥離添加剤であって、
下記(B)成分及び(C)成分
(B)下記平均組成式(3)で示される(メタ)アクリル基を含有するラジカル重合性オルガノポリシロキサン:100質量部
【化3】
(式中、R4は同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基及び(メタ)アクリル基を有する有機基から選択される基であり、R4のうち少なくとも1個は(メタ)アクリル基を有する有機基を含む。eは2以上の整数、fは0以上の整数、gは0以上の整数、hは0以上の整数で、2≦e+f+g+h≦1,000である。)、
(C)放射線の照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤:0〜2.5質量部
を含有する剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物配合用である、軽剥離添加剤。
【請求項2】
式(1)のR1中1〜100mol%がマレイミド構造を有する有機基であることを特徴とする請求項1記載の軽剥離添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル重合開始剤の添加量を減らすことができ又は添加する必要がなく、軽剥離で、無臭の剥離シートとすることができる剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物に配合し得る放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤、及び該添加剤を配合した剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物、並びに該組成物の硬化皮膜を有する剥離シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種紙、ラミネート紙、合成フィルム、透明樹脂、金属箔等の基材表面にオルガノポリシロキサン組成物を塗布し、架橋反応によって硬化皮膜を形成することで、接着性ないし粘着性物質に対して剥離性を持つ剥離紙、剥離フィルムなどの剥離シートが製造されている。
【0003】
オルガノポリシロキサン組成物を硬化させる方法は様々な手段があり、有機金属化合物による縮合反応、有機過酸化物を用いた加硫、白金族金属触媒によるヒドロシリル化反応などが認知されている。しかし、上記の硬化方式では加熱が必要であり、生産性向上や省エネルギー化のため、より低温又は室温での硬化が要求されている。また、最近では電子部材や光学材料などへの利用としてポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムなどの耐熱性が乏しい基材を使用する用途も増えている。
【0004】
そこで、近年加熱を行なわず、熱以外の硬化エネルギーを与える方法として、放射線による硬化方式が着目されている。
放射線による硬化方式は、アクリル変性ポリシロキサンを用いたラジカル重合、アルケニル変性オルガノポリシロキサンとメルカプト変性オルガノポリシロキサンを用いたエン−チオール反応による硬化、エポキシ変性ポリシロキサンと酸のエポキシ基の開環によるカチオン重合などが挙げられるが、その中でもアクリル変性ポリシロキサンを用いたラジカル重合は、酸素が存在することにより硬化が阻害されるため、酸素濃度を低くするための装置が必要であるものの、非常に基材への密着性が良いということが最大の利点である。これにより、加熱により基材が収縮するような耐熱性が乏しいフィルムなどを基材とした粘着テープの背面処理剤、粘着ラベル用剥離紙及びテープ等の展開も可能であり、今後も市場の拡大が期待できる。
【0005】
(メタ)アクリル基を含有するラジカル重合性オルガノポリシロキサンの剥離剤に関しては多くの発明が提案されている(特許文献1:特許第2583677号公報、特許文献2:特許第2669947号公報、特許文献3:特許第3780113号公報)。
【0006】
また、オルガノポリシロキサンを架橋させた硬化皮膜の剥離性を軽剥離にするには、軽剥離添加剤を添加することが一般的である。
【0007】
特許第2971357号公報(特許文献4)には、熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物に両末端のケイ素原子に水酸基が結合し、30重量%トルエン溶液の25℃における粘度が10,000cP以上であるジメチルポリシロキサンと両末端のケイ素原子に水酸基が結合し、かつケイ素原子に結合したアリール基を8〜20mol%含有する、25℃における粘度が5,000〜500,000cPであるポリジオルガノシロキサンを軽剥離添加剤として添加することが提案されている。
この発明では、耐暴露性に優れ、低速及び高速剥離の際に軽剥離となるが、上記軽剥離添加剤は架橋成分ではないため、残留接着率が低下する可能性が極めて高い。
【0008】
特許第3149306号公報(特許文献5)には、カチオン重合性オルガノポリシロキサンと軽剥離添加剤に両末端に水酸基を含まない非反応性であり25℃における粘度が50〜1,000,000cPのオルガノポリシロキサンを含む紫外線硬化性組成物が提案されている。
この発明では、硬化皮膜に滑り性を与え、種々の粘着物質に対して軽剥離となるが、軽剥離添加剤は非反応成分であるため、残留接着率が低下する可能性が極めて高い。
【0009】
このように、(メタ)アクリル基を含有するラジカル重合性オルガノポリシロキサンに有用な軽剥離添加剤はまだ見出されていない。
【0010】
一方、オルガノポリシロキサン組成物の硬化皮膜を有する剥離シートに残存する臭気が問題になることがある。特に、(メタ)アクリル基を含有するラジカル重合性オルガノポリシロキサン組成物として、(メタ)アクリル基を含有するラジカル重合性オルガノポリシロキサンとラジカル重合開始剤からなる放射線硬化性のシリコーン組成物の硬化物を形成した場合、ラジカル重合開始剤が分解した臭いが若干残る傾向がある。
【0011】
例えば、生理用ナプキンや紙おむつといった衛生材の粘着テープ用の剥離剤に(メタ)アクリル基を含有するラジカル重合性オルガノポリシロキサンが使用されている。生理用ナプキンや紙おむつは使用上、衛生上の観点から個包装されている。特にナプキン用個包装フィルムは、ポリエチレンフィルム等のフィルムに離型処理を行い、包装は、下着に固定するためのナプキン本体の粘着剤層に離型処理フィルムを当接させて包み込むように行われており、この離型面の作製に上記放射線硬化性シリコーン組成物を用いることが非常に多い。
【0012】
生理用ナプキンは香料により臭いを付与することが多いが、消費者の多様化から近年無臭タイプの生理用ナプキンの要望も多くなっている。
使用するナプキン本体、粘着剤層の無臭化も必要とされるが、ナプキン本体を使用する前に剥離される離型処理された個包装用フィルムもナプキン使用前に消費者の手に触れるため、これの無臭化も必要とされる。
【0013】
これらの問題に対応するために(メタ)アクリル基を含有するラジカル重合性オルガノポリシロキサンを硬化させた硬化皮膜の無臭化における様々な発明が提案されている。
【0014】
特許第2791679号公報(特許文献6)には、1級水酸基含有のラジカル重合開始剤と分子中に1個のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノイソシアネートを反応させたラジカル重合開始剤とラジカル重合性物質を含有する光硬化性被覆剤を硬化させたことを特徴とする不快臭のしない硬化皮膜が提案されている。
この発明では重合性エチレン性不飽和基をラジカル開始剤に導入することによって、ラジカル重合に関与しない未反応の過剰な開始剤も架橋硬化組成物に組み込まれるため、不快臭はないが、放射線照射時にラジカル重合開始剤が分解して発生する揮発成分は除去できないため、完全な無臭化にはまだ課題がある。
【0015】
特許第4214579号公報(特許文献7)には、光重合性マレイミド誘導体を含有する活性エネルギー線硬化性インキが提案されている。
この発明は、ラジカル重合開始剤に特定の構造を持つ光重合性マレイミド誘導体を用いることで、硬化時の悪臭、硬化皮膜の黄変を防止しているが、炭化水素系マレイミド誘導体の記載に限定されており、シロキサン樹脂への溶解性は著しく悪いと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第2583677号公報
【特許文献2】特許第2669947号公報
【特許文献3】特許第3780113号公報
【特許文献4】特許第2971357号公報
【特許文献5】特許第3149306号公報
【特許文献6】特許第2791679号公報
【特許文献7】特許第4214579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、軽剥離で、無臭の剥離シートとすることができる剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物に配合し得る放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤、及び該添加剤を配合した剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物、並びに該組成物の硬化皮膜を有する剥離シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、マレイミド基を有するオルガノポリシロキサンを放射線硬化型剥離シート用の軽剥離添加剤に用いると、硬化皮膜は軽剥離、高残留接着率となることを知見した。
また、マレイミド基を有するオルガノポリシロキサン自体がラジカル重合開始剤として働くため、ラジカル重合開始剤の添加量を減らすことができ又は添加する必要がなく、上記マレイミド基を有するオルガノポリシロキサンを用いた放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を硬化させた剥離シートは、従来のラジカル重合開始剤の分解臭がしないため、基材上に塗布、硬化させた剥離シートが無臭であることを見出した。
よって、本発明の剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、従来の放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物と比較して、軽剥離、高残留接着率であり、かつ硬化皮膜は無臭であることを確認し、本発明をなすに至った。
【0019】
従って、本発明は、下記の放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤及び剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物並びに剥離シート、製造方法を提供する。
〔1〕
下記平均組成式(1)で示されるマレイミド基を有するオルガノポリシロキサンからなる放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤。
【化1】
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基及び下記一般式(2)で表されるマレイミド構造を有する有機基から選択される基であり、R1のうち少なくとも1個は下記一般式(2)で表されるマレイミド構造を有する有機基を含む。aは2以上の整数、bは0以上の整数、cは0以上の整数、dは0以上の整数で、2≦a+b+c+d≦1,000である。)
【化2】
(式中、R2とR3は互いに同一又は異種の水素原子又は炭素数1〜5の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、Xは炭素数1〜10のヘテロ原子を介在してもよい非置換もしくは置換の2価炭化水素基である。破線は結合手を示す。)
〔2〕
式(1)のR1中1〜100mol%がマレイミド構造を有する有機基であることを特徴とする〔1〕記載の放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤。
〔3〕
下記(A)〜(C)成分を含有してなる剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
(A)〔1〕又は〔2〕記載の放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤:0.1〜10質量部
(B)下記平均組成式(3)で示される(メタ)アクリル基を含有するラジカル重合性オルガノポリシロキサン:100質量部
【化3】
(式中、R4は同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基及び(メタ)アクリル基を有する有機基から選択される基であり、R4のうち少なくとも1個は(メタ)アクリル基を有する有機基を含む。eは2以上の整数、fは0以上の整数、gは0以上の整数、hは0以上の整数で、2≦e+f+g+h≦1,000である。)
(C)放射線の照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤:0〜2.5質量部
〔4〕
(C)ラジカル重合開始剤を含まない〔3〕記載の剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
〔5〕
〔3〕又は〔4〕記載の剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を基材上に塗布し、放射線照射により硬化させた剥離シートの製造方法。
〔6〕
〔3〕又は〔4〕記載の剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化皮膜を基材上に形成してなる剥離シート。
〔7〕
硬化皮膜が無臭である〔6〕記載の剥離シート。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物にマレイミド基を有するオルガノポリシロキサンを軽剥離添加剤として少量添加すると、従来にない軽剥離となる。また該マレイミド基を有するオルガノポリシロキサンは、ラジカル重合開始剤としても働くため、ラジカル重合開始剤の添加量を減らすことができ又は添加する必要がないことから、上記組成物を硬化させた剥離シートは、従来のラジカル重合開始剤の分解臭が少ない又は分解臭がしないため、無臭である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤は、下記平均組成式(1)で示されるマレイミド基を含有するオルガノポリシロキサンからなるものである。
【化4】
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基及び下記一般式(2)で表されるマレイミド構造を有する有機基から選択される基であり、R1のうち少なくとも1個は下記一般式(2)で表されるマレイミド構造を有する有機基を含む。aは2以上の整数、bは0以上の整数、cは0以上の整数、dは0以上の整数で、2≦a+b+c+d≦1,000である。)
【化5】
(式中、R2とR3は互いに同一又は異種の水素原子又は炭素数1〜5の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、Xは炭素数1〜10のヘテロ原子を介在してもよい非置換もしくは置換の2価炭化水素基である。破線は結合手を示す。)
【0022】
上記式(1)中、R1は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられ、さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、アミノ基、エポキシ基、アルコキシ基等で置換した、ヒドロキシプロピル基、シアノエチル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1−アミノプロピル基等から選択される非置換又は置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、水酸基、上記一般式(2)で表されるマレイミド構造を有する有機基が例示できる。R1の式(2)で表されるマレイミド構造を有する有機基以外の基としては、中でも、飽和の脂肪族基又は芳香族基が好ましく、メチル基、フェニル基が好ましい。また、マレイミド基を除くR1の80mol%以上、特に85mol%以上がアルキル基であることが望ましく、特にメチル基であることがより好ましい。
【0023】
本発明においては、R1のうち少なくとも1個は一般式(2)で表されるマレイミド構造を有する有機基を含むものであり、R1中1〜100mol%、特に2〜80mol%がマレイミド構造を有する有機基であることが好ましい。
【0024】
上記式(2)中、R2とR3は互いに同一又は異種の水素原子又は炭素数1〜5の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基などが挙げられ、さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、置換基としては、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が例示され、水素原子、メチル基が好ましい。
【0025】
Xは炭素数1〜10のヘテロ原子を介在してもよい非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、CH2、C24、C36、C48、C510、C612などのアルキレン基が挙げられ、エーテル基やチオエーテル基などを介在していてもよい。また、フェニレン基、シクロヘキシレン基等の環状構造を形成してもよく、炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよい。
【0026】
一般式(2)の具体的な構造を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化6】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0027】
上記式(1)中、aは2以上、好ましくは2〜12の整数、bは0以上、好ましくは1〜998、より好ましくは5〜500の整数、cは0以上、好ましくは0〜10の整数、dは0以上、好ましくは0〜5の整数で、2≦a+b+c+d≦1,000であり、2≦a+b+c+d≦800が好ましい。a+b+c+dが1,000より大きいと、粘度が高くなり、作業性が悪くなる場合がある。
【0028】
式(1)で表されるオルガノポリシロキサンの具体的な構造としては、下記一般式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe,Phはそれぞれメチル基、フェニル基を示し、IはN−マレイミドプロピル基を代表して示すが、式(2)で表される構造の有機基であればいずれのものでもよい。
【化7】
(p≧0,q≧1。破線は結合手を示す。)
【化8】
(p1≧0,p2≧0,p3≧0,P≧1。破線は結合手を示す。)
【0029】
式(1)で示されるマレイミド基を含有するオルガノポリシロキサンは、1分子中にアミノ基含有有機基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン(a)と下記一般式(4)で示される有機化合物(b)とを、必要により有機溶剤の存在下で付加反応させ、その後、ルイス酸触媒(c)、シリル化剤(d)を用いて縮合反応(イミド化反応)させることにより合成することができる。
【化9】
(式中、R2、R3は上記と同じである。)
【0030】
1分子中にアミノ基含有有機基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン(a)としては、下記平均組成式(5)で示されるものが使用できる。
【化10】
(式中、R5は同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換(好ましくはヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、エポキシ基もしくはアルコキシ基置換)の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基及びアミノ基含有有機基から選択される基であり、R5のうち少なくとも1個はアミノ基含有有機基を含む。a、b、c、d、a+b+c+dは上記と同じである。)
【0031】
上記式(5)中、R5は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられ、さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、エポキシ基、アルコキシ基等で置換した、ヒドロキシプロピル基、シアノエチル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等から選択される非置換又は置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、水酸基、後述するアミノ基含有有機基などが例示できる。R5のアミノ基含有有機基以外の基としては、中でも、飽和の脂肪族基又は芳香族基が好ましく、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0032】
5のアミノ基含有有機基中のアミノ基は、一級アミン、二級アミンであり、反応性の観点から一級アミンが好ましい。アミノ基含有有機基としては、例えば、エーテル基やチオエーテル基などを介在していてもよい炭素数1〜10のアミノアルキル基が好ましく、特にアミノプロピル基が好ましい。アミノ基含有有機基の具体的な構造を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化11】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0033】
(a)成分のアミン当量は、200〜5,000g/molが好ましく、300〜4,800g/molがより好ましく、400〜4,500g/molがさらに好ましい。200g/molよりも少ないと、軽剥離添加剤の効果が小さくなる場合があり、5,000g/molよりも多いと、導入する官能基量が少なくなりラジカル重合開始剤としての効果が弱くなる場合がある。
【0034】
(a)成分の具体的な構造としては、下記一般式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe,Phはそれぞれメチル基、フェニル基を示し、Aはアミノプロピル基を代表して示すが、アミノ基含有有機基であればいずれのものでもよい。
【化12】
(r≧0,s≧1。破線は結合手を示す。)
【化13】
(r1≧0,r2≧0,r3≧0,R≧1。破線は結合手を示す。)
【0035】
アミノ基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン(a)と反応させる有機化合物(b)は、下記一般式(4)で示されるものである。
【化14】
(式中、R2、R3は上記と同じである。)
【0036】
(b)成分として、具体的には、無水マレイン酸、メチルマレイン酸無水物、フェニルマレイン酸無水物が挙げられる。
【0037】
(b)成分は、(a)成分のアミノ基に対しmol比で1〜3倍となる量を使用するが、好ましくは1〜2.5倍、より好ましくは1〜2倍である。1倍より少ないと未反応のアミノ基が残存するため軽剥離添加剤としての特性が悪くなり、またラジカル重合開始剤としての作用が悪くなる場合があり、3倍より多くなると、精製時に未反応の(b)成分を除去するために効率が悪くなる場合がある。
【0038】
(c)成分はルイス酸触媒であり、ルイス酸としては様々のものが挙げられ、ホウ素化合物、アルミニウム化合物、スカンジウム化合物、チタン化合物、バナジウム化合物、鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、銅化合物、亜鉛化合物、ランタン化合物、セリウム化合物などがあり、金属化合物が好ましく、特に亜鉛化合物が好ましい。
【0039】
亜鉛化合物としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛化合物や、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛などの亜鉛塩といった無機亜鉛化合物が好適に用いられ、塩化亜鉛、臭化亜鉛が好ましい。
【0040】
(c)成分は、(a)成分のアミノ基に対しmol比で0.1〜2倍となる量を使用し、好ましくは0.2〜1.8倍、より好ましくは0.5〜1.5倍である。0.1倍よりも少ないと反応が遅く長時間要する場合があり、2倍よりも多いと反応系から除去するために効率が悪くなる場合がある。
【0041】
(d)成分はシリル化剤であり、シリル化剤としてはクロロシラン化合物やジシラザン化合物などが挙げられるが、ジシラザン化合物が好ましい。
ジシラザン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンなどが挙げられるが、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0042】
(d)成分は、(a)成分のアミノ基に対しmol比で1〜3倍となる量を使用し、好ましくは1.1〜2.8倍、より好ましくは1.2〜2.5倍である。1倍より少ないと反応が十分に進行しない場合があり、3倍よりも多いと反応系から除去するために効率が悪くなる場合がある。
【0043】
上記マレイミド基を含有するオルガノポリシロキサンの合成は有機溶剤中で行なうことができる。トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤、工業用ガソリン、石油ベンジン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート等のエステルとエーテル部分を有する溶剤、又はこれらの混合溶剤などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0044】
有機溶剤は、(a)成分と(d)成分を溶解し、(c)成分を溶解しない溶剤であることが好ましい。これは、反応終了後に(c)成分を容易に除去することが可能となるためであり、(c)成分が溶解しない場合はろ過により除去できるのに対し、(c)成分が溶解する場合は洗浄操作が必要であり効率と収率が悪くなるからである。(b)成分は有機溶剤に溶解してもしなくてもよいが、溶解する方が反応の進行が速いため、溶解する方が好ましい。
【0045】
有機溶剤の使用量としては、(a)成分を100質量部としたときに、0〜5,000質量部であり、0〜4,000質量部が好ましく、0〜3,000質量部がより好ましい。5,000質量部よりも多いと、反応の進行が遅くなる場合がある。なお、配合する場合は、500質量部以上とすることが好ましい。
【0046】
上述したように、(a)成分と(b)成分とを、必要により有機溶剤の存在下で混合すると、室温(25℃)でも発熱しながら反応し、下記平均組成式(6)で表されるオルガノポリシロキサン(e)を形成する。
【化15】
(式中、R6は同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基及び下記一般式(7)で表される構造の有機基から選択される基であり、R6のうち少なくとも1個は下記一般式(7)で表される構造の有機基を含む。a、b、c、d、a+b+c+dは上記と同じである。)
【化16】
(式中、R2、R3、Xは上記と同じである。破線は結合手を示す。)
【0047】
上記式(6)中、R6は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられ、さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、アミノ基、エポキシ基、アルコキシ基等で置換した、ヒドロキシプロピル基、シアノエチル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1−アミノプロピル基等から選択される非置換又は置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、水酸基、上記一般式(7)で表される構造の有機基などが例示できる。R6の式(7)で表される構造の有機基以外の基としては、中でも、飽和の脂肪族基又は芳香族基が好ましく、メチル基、フェニル基が好ましい。
6のうち少なくとも1個、好ましくは2〜200個、より好ましくは2〜150個は一般式(7)で表される構造の有機基を含む。
【0048】
一般式(7)の具体的な構造を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化17】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0049】
(e)成分の具体的な構造としては、下記一般式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe,Phはそれぞれメチル基、フェニル基を示し、Bは下記に示す構造を代表して示すが、式(7)で表される構造の有機基であればいずれのものでもよい。
【化18】
(t≧0,u≧1。破線は結合手を示す。)
【化19】
(t1≧0,t2≧0,t3≧0,T≧1。破線は結合手を示す。)
【0050】
次いで、(c)成分と(d)成分を混合して、(e)成分中のアミド基とカルボキシル基とを縮合反応により閉環してイミド化させることにより、上記式(1)のオルガノポリシロキサンを得ることができる。
ここで、(c)成分は触媒であり、(d)成分は(e)成分中のカルボキシル基をシリルキャップするための反応試剤である。上記(e)成分と(c)成分を混合し、そこへ(d)成分を加えると(e)成分中のカルボキシル基がシリル化され、加熱することによりシリル化されたカルボキシル基とアミド基が縮合することで式(1)のオルガノポリシロキサンを得ることができる。カルボキシル基では縮合が起こりにくいが、シリル化することにより縮合が進行しやすくなる。このとき、(c)成分は(d)成分と反応することでシリル化のための活性種を生成する、また詳細な機構については確かではないが、縮合反応を触媒するという2つの役割を担っているものと推測される。
【0051】
イミド化終了後は、(d)成分から発生したアンモニアが系中に存在するため、これを除去する必要がある。アンモニアの除去方法について特に制限はないが、酸性物質と反応させて中和してから生成した塩をろ別する方法などが挙げられる。酸性物質としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酪酸等が挙げられる。反応性の観点から酸性物質は液体が好ましく、酢酸やリン酸が好ましい。
【0052】
(c)成分は、有機溶剤に不溶であればろ過により取り除くことができる。有機溶剤に溶解している場合には、液−液抽出により洗浄して系外に排出する必要がある。
また、未反応の(b)成分及び(d)成分と有機溶剤は、減圧留去により取り除くことができる。
【0053】
このようにして、上記式(1)で示されるマレイミド基を含有するオルガノポリシロキサンを製造することができる。
【0054】
上記式(1)で示されるマレイミド基を含有するオルガノポリシロキサンは、放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤として用いることができ、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物に配合することができる。
【0055】
該剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物としては、下記(A)、(B)成分、及び必要により(C)成分を含有することができる。
(A)上記式(1)で示されるマレイミド基を有するオルガノポリシロキサンからなる放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤、
(B)下記平均組成式(3)で示される(メタ)アクリル基を含有するラジカル重合性オルガノポリシロキサン、
【化20】
(式中、R4は同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又は(メタ)アクリル基を有する有機基であり、R4のうち少なくとも1個は(メタ)アクリル基を有する有機基を含む。eは2以上の整数、fは0以上の整数、gは0以上の整数、hは0以上の整数で、2≦e+f+g+h≦1,000である。)
(C)放射線の照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤。
【0056】
なお、(A)成分の上記式(1)で示されるマレイミド基を含有するオルガノポリシロキサンは、放射線照射することで、ラジカルを発生するため、ラジカル重合開始剤としても用いることができる。またマレイミド基を含有するオルガノポリシロキサンがラジカル重合開始剤として働くが、硬化皮膜中に取り込まれるため、従来のラジカル重合開始剤の添加量を少なくすることができ、もしくはラジカル重合開始剤を添加しない場合でも、ラジカル重合が可能となる。
【0057】
以下、個々の成分に関して詳しく説明する。
【0058】
(A)成分は、上記式(1)で示されるマレイミド基を有するオルガノポリシロキサンからなる放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤である。該放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤の使用量は、後述する(B)成分100質量部に対して0.1〜10質量部であり、好ましくは0.5〜9質量部である。(A)成分が多すぎると軽剥離効果は変わらず、少なすぎると軽剥離効果が小さく、また硬化性も低下してしまう。
【0059】
(B)成分は、(メタ)アクリル基を含有するラジカル重合性オルガノポリシロキサンであり、下記平均組成式(3)で示される。
【化21】
(式中、R4は同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基及び(メタ)アクリル基を有する有機基から選択される基であり、R4のうち少なくとも1個は(メタ)アクリル基を有する有機基を含む。eは2以上の整数、fは0以上の整数、gは0以上の整数、hは0以上の整数で、2≦e+f+g+h≦1,000である。)
【0060】
上記式(3)中、R4は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、アミノ基、エポキシ基、アルコキシ基等で置換した、ヒドロキシプロピル基、シアノエチル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1−アミノプロピル基等から選択される非置換又は置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、水酸基、(メタ)アクリル基を有する有機基(ラジカル重合性官能基)である。
また、(メタ)アクリル基を有する有機基を除くR4の80mol%以上がアルキル基であることが望ましく、特にメチル基であることがより好ましい。
【0061】
また、(メタ)アクリル基を有する有機基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、具体的には、γ−アクリロキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基等の(メタ)アクリルオキシアルキル基や(メタ)アクリルオキシアルコキシ基などの下記に示す基が例示できる。
【化22】
【化23】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0062】
本発明においては、R4のうち少なくとも1個は(メタ)アクリル基を有する有機基(ラジカル重合性官能基)を含むものであり、特にR4中の(メタ)アクリル基量が1〜50mol%、より好ましくは2〜45mol%、さらに好ましくは3〜40mol%を満たすものであることが望ましい。(メタ)アクリル基の量が上記下限値未満であると、硬化速度が遅くなり硬化不良となる場合がある。
【0063】
eは2以上、好ましくは2〜12の整数、fは0以上、好ましくは1〜998、より好ましくは5〜500の整数、gは0以上、好ましくは0〜10の整数、hは0以上、好ましくは0〜5の整数で、2≦e+f+g+h≦1,000、好ましくは2≦e+f+g+h≦800である。e+f+g+hが1,000より大きいと、粘度が高くなり、作業性が悪くなる場合がある。
【0064】
なお、上記式(3)で示される(メタ)アクリル基を含有するラジカル重合性オルガノポリシロキサンは、下記に示す(メタ)アクリル官能性基含有化合物と下記に示すシロキサンとを反応させることにより得ることができる。
【0065】
(メタ)アクリル官能性基含有化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートなどから選択されるヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタクリロキシプロピルなどの(メタ)アクリルオキシアルキル基を有する炭素数が2〜20の(メタ)アクリル官能性基含有化合物、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0066】
また、上記(メタ)アクリル官能性基含有化合物と反応させるシロキサンとしては、カルビノール変性シロキサン、エポキシ変性シロキサン、ヒドロシリル基含有シロキサンなどが例示できる。
【0067】
上記(メタ)アクリル官能性基含有化合物とシロキサンとの反応は、カルビノール変性シロキサンとヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートの脱水素反応、カルビノール変性シロキサンと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応、エポキシ変性シロキサンと(メタ)アクリル酸の開環反応、ヒドロシリル基含有シロキサンとアルケニル基含有(メタ)アクリレートとのヒドロシリル化反応が例示される。
【0068】
(C)成分は、放射線の照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤である。
ラジカル重合開始剤は、ラジカル重合性オルガノポリシロキサン(B)に溶解可能なラジカル重合開始剤であり、放射線照射によってラジカルを発生させる能力があるならば、特に使用は限定されない。具体的には、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ターシャリブチルジクロロアセトフェノン、p−ターシャリブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、アニシル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)チタニウム、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシジ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。
これらのラジカル重合開始剤は、1種又は2種以上のものを所望の性能に応じて配合して使用することができる。
【0069】
ラジカル重合開始剤(C)の配合量は、ラジカル重合性オルガノポリシロキサン(B)100質量部に対して、0〜2.5質量部、より好ましくは0〜2質量部、さらに好ましくは0〜1質量部であり、ラジカル重合開始剤は実質0質量部にすることも可能である。
【0070】
ラジカル重合性オルガノポリシロキサン(B)とラジカル重合開始剤(C)からなる放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を硬化させた剥離シートは、通常ラジカル重合開始剤の分解物の揮発した臭いがする。これが臭気の原因となっている。本発明のマレイミド基を有するオルガノポリシロキサンを含有する放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤(A)を配合した剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られる剥離シートは無臭であるが、ラジカル重合開始剤(C)の添加量が少ないほど臭気がなくなる。
【0071】
本発明の剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、上記各成分の所定量を配合することによって得られるが、上記の各成分以外に、任意成分として、シリコーンレジン、ジメチルポリシロキサン、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、消泡剤、流動調整剤、光安定剤、溶剤、非反応性の樹脂及びラジカル重合性化合物などの添加剤を使用することができる。これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0072】
本発明の剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、場合により有機溶剤に希釈して使用することも可能である。
【0073】
このようにして調製された剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、各種基材に塗布し、放射線硬化させる。基材としては特に限定はなく、一般に使用されている種々の基材が使用可能であり、例えば、グラシン紙、クレーコート紙、上質紙、ポリエチレンラミネート紙や、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルム、ポリカーボネート等の透明樹脂、アルミ箔等の金属箔が挙げられる。
【0074】
剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物の塗布方法は、ロール塗布、グラビア塗布、ワイヤードクター塗布、エアーナイフ塗布、ディッピング塗布などの公知の方法を用いることができる。
また、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物の塗工量にも特に制限はないが、通常、0.05〜3g/m2程度であればよい。
【0075】
放射線照射することにより硬化させるには、放射線エネルギー線として、好ましくは高圧又は超高圧の水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、蛍光灯、半導体固体レーザ、アルゴンレーザ、He−Cdレーザ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザなどから得られる紫外〜可視光領域(約100〜約800nm)のエネルギー線が用いられる。好ましくは200〜400nmに光硬度が強い放射線光源が好ましい。さらに電子線、X線などの高エネルギーを有する放射線を用いることもできる。放射線エネルギーの照射温度及び時間は、通常は常温(25℃)で0.1秒〜10秒程度で十分であるが、エネルギー線の透過性が低い場合や硬化性組成物の膜厚が厚い場合には、それ以上の時間をかけるのが好ましいことがある。必要であればエネルギー線の照射後、室温(25℃)〜150℃で数秒〜数時間加熱し、アフターキュアーすることも可能である。
【0076】
このようにして得られた剥離シートは、上記マレイミド基を有するオルガノポリシロキサンからなる放射線硬化型剥離シート用軽剥離添加剤を配合しているため、目的とする軽剥離が可能であり、さらにラジカル重合開始剤の添加量を減らすことができ又は添加する必要がないことから、ラジカル重合開始剤の分解臭が少ない又は分解臭がしないため、無臭である。
【実施例】
【0077】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、下記例において、表中の物性は、下記の試験法により測定されたものである。粘度は、BN型回転粘度計で測定した25℃における値である。また構造式中のMeはメチル基、AOはアクリロキシ基を示す。
【0078】
[合成例1]
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却管を取り付けた300mLの3つ口フラスコに、(b)成分として無水マレイン酸を3.14g(0.032mol)、(e)成分としてトルエンを81.74g(70質量%)仕込み、室温(25℃)にて混合撹拌しているところに、(a)成分として滴下ロートに仕込んだ下記式(a−1)のオルガノポリシロキサン13.76g(アミノ基として0.032mol)を滴下した。滴下終了後室温(25℃)にて4時間撹拌し、フラスコに(c)成分として臭化亜鉛を7.20g(0.032mol)投入し、50℃まで加熱した。そこへ、(d)成分として滴下ロートに仕込んだヘキサメチルジシラザン7.76g(0.048mol)を滴下し、滴下終了後80℃で1時間熟成し、放冷して40℃以下にしたところで酢酸3.17g(0.053mol)を滴下してさらに30分熟成した。反応溶液中の固体をろ過により取り除き、70℃/1時間減圧留去した後、120℃/1時間さらに減圧留去することで黄色透明の液体を得た。分析の結果、下記式(A−1)のマレイミド基含有オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【化24】
【0079】
[合成例2]
(b)成分として無水マレイン酸の代わりにメチルマレイン酸無水物を3.59g(0.032mol)に変更した以外は合成例1と同様にして製造し、黄色透明の液体を得た。分析の結果、下記式(A−2)のマレイミド基含有オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【化25】
【0080】
下記に示す実施例及び比較例で得られた剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物の評価を行なうため、下記の試験を行なった。
【0081】
[剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化性試験]
剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を調製後、ロール塗布することで厚みが38μmのPETフィルムに約1.0g/m2の塗布量となるように塗布し、酸素濃度を150ppmに設定した80W/cmの高圧水銀灯を2灯用いて100mJ/cm2の照射量の紫外線を照射し、硬化皮膜を形成させて硬化性を評価した。○は組成物全体が硬化した場合を、△は組成物全体にスミアがある場合を、×は組成物全体が未硬化の場合を示す。結果を表1にまとめた。
【0082】
[剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物の剥離力試験]
剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を調製後、ロール塗布することで厚みが38μmのPETフィルムに約1.0g/m2の塗布量となるように塗布し、酸素濃度を150ppmに設定した80W/cmの高圧水銀灯を2灯用いて100mJ/cm2の照射量の紫外線を照射し、硬化皮膜を形成させた。得られた硬化皮膜を25℃、20時間保管後、その硬化皮膜表面に幅25mmのアクリル粘着テープTESA7475(商品名)を貼り付け、2kgのローラーを一往復させて圧着し、剥離力測定用のサンプルを作製した。このサンプルに70g/cm2の荷重をかけながら、70℃で20〜24時間エージングさせた。その後、引張試験機を用いて180°の角度で剥離速度0.3m/分にて、貼り合わせたテープを引張、剥離するのに要する力(N/25mm)を測定した。結果を表1にまとめた。
【0083】
[剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物の残留接着率試験]
剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を調製後、ロール塗布することで厚みが38μmのPETフィルムに約1.0g/m2の塗布量となるように塗布し、酸素濃度を150ppmに設定した80W/cmの高圧水銀灯を2灯用いて100mJ/cm2の照射量の紫外線を照射し、硬化皮膜を形成させた。得られた硬化皮膜を25℃、20時間保管後、その硬化皮膜表面に幅25mmのアクリル粘着テープTESA7475(商品名)を貼り付け、2kgのローラーを一往復させて圧着し、剥離力測定用のサンプルを作製した。このサンプルに70g/cm2の荷重をかけながら、70℃で20〜24時間エージングさせた。その後、引張試験機を用いて180°の角度で剥離速度0.3m/分にて、貼り合わせたテープを剥離し、そのテープをSUS板に貼り付けた。2kgのローラーを一往復させて圧着し、25℃、30分放置後に剥離するのに要する力(Y)を測定した。同様に上記硬化皮膜に貼り合わせしていないTESA7475をSUS板から剥離するために要する力(Z)を測定し、(Y)を(Z)で割った値を残留接着率として、結果を表1にまとめた。
【0084】
[臭い測定]
作製した硬化皮膜の臭いについて20人のパネラーにより、下記基準で点数を付け、平均点で評価した。結果を表1にまとめた。
4:無臭
3:わずかに臭う
2:臭う
1:強く臭う
【0085】
[実施例1]
本発明成分である(A)成分に該当する合成例1で得られた式(A−1)のマレイミド基含有オルガノポリシロキサン5質量部、本発明成分である(B)成分に該当する下記平均組成式(B−1)
【化26】
で示され、25℃における粘度が300mPa・sであるアクリル基含有ジメチルポリシロキサン100質量部、及び本発明成分である(C)成分に該当するラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(C−1)2.5質量部を均一に混合することで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物1を得た。このオルガノポリシロキサン組成物1を用いて上記に記載の硬化性試験、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定を行なった。
【0086】
[実施例2]
本発明成分である(A)成分に該当する成分を、合成例2で得られた式(A−2)のマレイミド基含有オルガノポリシロキサン5質量部に変更した以外は、実施例1と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物2を得た。このオルガノポリシロキサン組成物2を用いて上記に記載の硬化性試験、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定を行なった。
【0087】
[実施例3]
本発明成分である(C)成分に該当するラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(C−1)を0質量部に変更した以外は、実施例1と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物3を得た。このオルガノポリシロキサン組成物3を用いて上記に記載の硬化性試験、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定を行なった。
【0088】
[実施例4]
本発明成分である(C)成分に該当するラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(C−1)を0質量部に変更した以外は、実施例2と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物4を得た。このオルガノポリシロキサン組成物4を用いて上記に記載の硬化性試験、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定を行なった。
【0089】
[実施例5]
本発明成分である(B)成分に該当する成分を、下記平均組成式(B−2)
【化27】
で示され、25℃における粘度が450mPa・sであるアクリル基含有ジメチルポリシロキサン100質量部に変更した以外は、実施例1と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物5を得た。このオルガノポリシロキサン組成物5を用いて上記に記載の硬化性試験、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定を行なった。
【0090】
[実施例6]
本発明成分である(A)成分に該当する成分を、合成例2で得られた式(A−2)のマレイミド基含有オルガノポリシロキサン5質量部に変更した以外は、実施例5と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物6を得た。このオルガノポリシロキサン組成物6を用いて上記に記載の硬化性試験、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定を行なった。
【0091】
[実施例7]
本発明成分である(C)成分に該当するラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(C−1)を0質量部に変更した以外は、実施例5と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物7を得た。このオルガノポリシロキサン組成物7を用いて上記に記載の硬化性試験、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定を行なった。
【0092】
[実施例8]
本発明成分である(C)成分に該当するラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(C−1)を0質量部に変更した以外は、実施例6と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物8を得た。このオルガノポリシロキサン組成物8を用いて上記に記載の硬化性試験、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定を行なった。
【0093】
[比較例1]
本発明成分である(A)成分に該当する式(A−1)のマレイミド基含有オルガノポリシロキサンを配合せず、本発明成分である(C)成分に該当するラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(C−1)を5質量部に変更した以外は、実施例1と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物9を得た。このオルガノポリシロキサン組成物9を用いて上記に記載の硬化性試験、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定を行なった。
【0094】
[比較例2]
本発明成分である(A)成分に該当する式(A−1)のマレイミド基含有オルガノポリシロキサンを配合せず、本発明成分である(C)成分に該当するラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(C−1)を5質量部に変更した以外は、実施例5と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物10を得た。このオルガノポリシロキサン組成物10を用いて上記に記載の硬化性試験、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定を行なった。
【0095】
[比較例3]
本発明成分である(C)成分に該当するラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(C−1)を0質量部に変更した以外は、比較例1と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物11を得た。このオルガノポリシロキサン組成物11を用いて上記に記載の硬化性試験を行なったが、硬化しなかったため、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定は行なわなかった。
【0096】
[比較例4]
本発明成分である(C)成分に該当するラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(C−1)を0質量部に変更した以外は、比較例2と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物12を得た。このオルガノポリシロキサン組成物12を用いて上記に記載の硬化性試験を行なったが、硬化しなかったため、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定は行なわなかった。
【0097】
[比較例5]
軽剥離添加剤としてB型粘度計により測定した25℃における粘度が3,000mPa・sのジメチルポリシロキサン(X)を2質量部配合した以外は、比較例1と同様の手順を行なうことで、剥離シート用放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物13を得た。このオルガノポリシロキサン組成物13を用いて上記に記載の硬化性試験、剥離力試験、残留接着率試験、臭い測定を行なった。
【0098】
【表1】