特許第6809585号(P6809585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809585
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】炭素系発光材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20201221BHJP
   C09K 11/65 20060101ALI20201221BHJP
   C01B 32/182 20170101ALI20201221BHJP
【FI】
   C09K11/08 A
   C09K11/65
   C01B32/182
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-188518(P2019-188518)
(22)【出願日】2019年10月15日
(62)【分割の表示】特願2016-574742(P2016-574742)の分割
【原出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2020-12118(P2020-12118A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-23819(P2015-23819)
(32)【優先日】2015年2月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊左治 忠之
(72)【発明者】
【氏名】大谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】植田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】川崎 剛美
【審査官】 青鹿 喜芳
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/016296(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103482598(CN,A)
【文献】 国際公開第2014/084797(WO,A1)
【文献】 林 孝星他,高効率炭素ドット蛍光体の開発,東京都立産業技術研究センター研究報告,2014年,第9号,pp.86-87,全文
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Science Direct
Wiley Online Library
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価カルボン酸及びアミノ基含有化合物を含む原料、酸触媒及び溶媒を混合して、加熱することを特徴とする炭素系発光材料の製造方法であって、
前記アミノ基含有化合物がアミノ酸及びアミノ基含有ポリアルキレングリコールから選ばれる少なくとも1種であり、
前記酸触媒が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルホン酸及びp−トルエンスルホン酸から選ばれる均一酸触媒又はカチオン性のイオン交換樹脂、カチオン性のイオン交換膜、ゼオライト及びポリリン酸から選ばれる固体酸触媒である不均一酸触媒である炭素系発光材料の製造方法。
【請求項2】
前記多価カルボン酸が、クエン酸である請求項1記載の炭素系発光材料の製造方法。
【請求項3】
前記アミノ基含有化合物が、アミノ酸である請求項1又は2記載の炭素系発光材料の製造方法。
【請求項4】
前記アミノ酸が、システインである請求項3記載の炭素系発光材料の製造方法。
【請求項5】
前記酸触媒が、細孔を有する多孔質体不均一酸触媒である請求項1〜4のいずれか1項記載の炭素系発光材料の製造方法。
【請求項6】
更に、界面活性剤を混合する請求項1〜5のいずれか1項記載の炭素系発光材料の製造方法。
【請求項7】
前記炭素系発光材料がグラフェン構造を有するものである請求項1〜6のいずれか1項記載の炭素系発光材料の製造方法。
【請求項8】
前記炭素系発光材料が、波長380〜480nmの光を発光するものである請求項1〜7のいずれか1項記載の炭素系発光材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素系発光材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光材料として、炭素系発光材料が注目されている。炭素系発光材料の一例として、グラフェン量子ドットが挙げられる。グラフェン量子ドットは、半導体量子ドットに比べて、価格、安全性、化学的安定性等の点で優位性が期待されている。
【0003】
炭素系発光材料の既存の製法は、トップダウン法とボトムアップ法の2種類に大別される(非特許文献1)。トップダウン法は、炭素繊維、コークス、酸化グラフェン等、グラファイト構造を持つバルク物質を、物理的、化学的な手法を用いてナノレベルまで分解し調製する方法である。トップダウン法は、量産も可能な方法であるが、狭帯発光が難しく、工業的に通用する発光特性を備えた炭素系発光材料は本手法では作製されていない。
【0004】
一方、ボトムアップ法は、炭素源として低分子化合物を用い、焼成や水熱反応によって化学的に合成する方法である。生成物に適切なドープを施すことで約70%以上の極めて高い量子収率を示す炭素系発光材料が、シスチンを原料に焼成する乾式法で作製されているものの、収率は極めて低い(非特許文献2)。
【0005】
また、ボトムアップ法において、湿式法で炭素系発光材料を作製する方法が非特許文献3に記載されているが、同様の反応条件を繰り返して実施しても炭素系発光材料を得られず、再現性に問題を有していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chem. Commun., 48, pp. 3686-3699 (2012)
【非特許文献2】Angew. Chem., 125, pp. 7954-7958 (2013)
【非特許文献3】ACS Nano., 6, pp. 5102-5110 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、高い量子収率を示し、優れた発光特性を有する炭素系発光材料を、高収率で再現性よく簡便に合成できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、多価カルボン酸を含む原料、酸触媒及び溶媒を混合して、加熱することで、炭素系発光材料が得られ、該材料が高い量子収率を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、下記炭素系発光材料の製造方法を提供する。
1.多価カルボン酸及びアミノ基含有化合物を含む原料、酸触媒及び溶媒を混合して、加熱することを特徴とする炭素系発光材料の製造方法であって、
前記アミノ基含有化合物がアミノ酸及びアミノ基含有ポリアルキレングリコールから選ばれる少なくとも1種であり、
前記酸触媒が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルホン酸及びp−トルエンスルホン酸から選ばれる均一酸触媒又はカチオン性のイオン交換樹脂、カチオン性のイオン交換膜、ゼオライト及びポリリン酸から選ばれる固体酸触媒である不均一酸触媒である炭素系発光材料の製造方法。
2.前記多価カルボン酸が、クエン酸である1の炭素系発光材料の製造方法。
3.前記アミノ基含有化合物が、アミノ酸である1又は2の炭素系発光材料の製造方法。
4.前記アミノ酸が、システインである3の炭素系発光材料の製造方法。
5.前記酸触媒が、細孔を有する多孔質体不均一酸触媒である1〜4のいずれかの炭素系発光材料の製造方法。
6.更に、界面活性剤を混合する1〜5のいずれかの炭素系発光材料の製造方法。
7.前記炭素系発光材料がグラフェン構造を有するものである1〜6のいずれかの炭素系発光材料の製造方法。
8.前記炭素系発光材料が、波長380〜480nmの光を発光するものである1〜7のいずれかの炭素系発光材料の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炭素系発光材料の製造方法によれば、量子収率の高い優れた発光特性を有する炭素系発光材料を、高収率で再現性よく簡便に合成できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の炭素系発光材料の製造方法は、多価カルボン酸を含む原料、酸触媒及び溶媒を混合して、加熱するものである。
【0012】
前記多価カルボン酸は、炭素系発光材料の原料であって、カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸であれば特に限定されない。その具体例としては、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられる。これらのうち、クエン酸、コハク酸、シュウ酸が好ましく、クエン酸がより好ましい。多価カルボン酸は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
また、原料として、更にアミノ基含有化合物を含むことが好ましい。前記アミノ基含有化合物としては、アミノ酸、アミノ基含有ポリアルキレングリコール、一級脂肪族アミン等が好ましい。これらのうち、アミノ酸が特に好ましい。アミノ基含有化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
前記アミノ酸としては、システイン、グリシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、スレオニン、リシン、アスパラギン、トリプトファン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、オルニチン、チロキシン、シスチン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、メチオニン、トレオニン等が挙げられる。アミノ基含有ポリアルキレングリコールとしては、アミノ基含有ポリエチレングリコール、アミノ基含有ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらのうち、システイン、グリシン、アミノ基含有ポリエチレングリコール等が好ましい。なお、前記アミノ酸が光学異性体を有するものである場合、前記アミノ酸はD体でもL体でもよいし、ラセミ体でもよい。
【0015】
アミノ基含有化合物の使用量は、均一な窒素導入効率の点から、多価カルボン酸100質量部に対して10〜90質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましい。
【0016】
原料として、更に、多価カルボン酸及びアミノ基含有化合物以外の有機化合物を使用してもよい。このような有機化合物としては、本発明の効果を妨げないものであれば、特に限定されない。
【0017】
前記酸触媒は、均一酸触媒でも不均一酸触媒でもよいが、量子収率を向上させる観点から不均一酸触媒が好ましい。均一酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、スルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。一方、不均一酸触媒としては、固体酸触媒が好ましく、例えば、カチオン性のイオン交換樹脂、カチオン性のイオン交換膜、Nature 438, p. 178 (2005)に記載された固体酸触媒等が挙げられる。固体酸触媒としては、市販品を使用することができ、例えば、ロームアンドハース社製イオン交換樹脂のAMBERLYST(登録商標)15、16、31、35等、AMBERLITE(登録商標)IR120B、IR124、200CT、252等、デュポン社製イオン交換膜のNAFION(登録商標)、ゼオライトやポリリン酸等の無機系固体酸触媒等が挙げられる。前記酸触媒は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
均一酸触媒を用いる場合、通常、均一酸触媒を原料の質量に対して0.01〜10質量%添加するが、0.1〜5質量%がより好ましく、0.5〜1質量%がより一層好ましい。
【0019】
不均一酸触媒は、生成した炭素系発光材料を内包できる細孔を有する多孔質体であることが好ましい。この細孔の大きさにより生成する炭素系発光材料の粒子径又はディスク径を制御することができる。一般的には、20nmまでの細孔径を有する多孔質体の固体酸触媒により、20nmまでの粒子径(ディスク径)の炭素系発光材料を製造するのが好ましい。
【0020】
不均一酸触媒を用いる場合、原料の質量に対して概ね0.1〜100質量%の添加が好ましく、1.0〜50質量%の添加がより好ましく、5.0〜10質量%の添加がより一層好ましい。
【0021】
前記溶媒は、使用する原料を溶解できるものであれば特に限定されない。このような溶媒としては、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、アセトニトリル、アセトン、アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等)、グリコール類(エチレングリコール、トリエチレングリコール等)、セロソルブ類(エチルセロソルブ、メチルセロソルブ等)、多価アルコール類(グリセリン、ペンタエリスリトール等)、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ヘキサデカン、ベンジルアルコール、オレイルアミン等が挙げられる。これらのうち、水、トルエン等が好ましい。前記溶媒は、1種単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
溶媒の使用量は、均一粒子サイズの炭素系発光材料調製の点から、原料100質量部に対して100〜10,000質量部が好ましく、400〜2,500質量部がより好ましい。
【0023】
本発明の製造方法は、界面活性剤存在下で行ってもよい。前記界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0024】
カチオン性界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTABr)、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTACl)等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)等が挙げられる。前記界面活性剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
界面活性剤の使用量は、原料の分散性と、合成条件での臨界ミセル濃度の点から、原料100質量部に対して10〜2,000質量部が好ましく、50〜500質量部がより好ましい。
【0026】
本発明の製造方法は、原料、酸触媒、溶媒、及び必要に応じて界面活性剤を混合して、加熱するものであるが、これらの混合は、任意の順で行えばよい。例えば、原料及び必要に応じて界面活性剤をあらかじめ溶媒に加え、次いで酸触媒を加えてもよく、原料、酸触媒及び必要に応じて界面活性剤を同時に溶媒に加えてもよい。
【0027】
加熱は、常圧(大気圧)下でも加圧下で行ってもよい。加圧下で行うと、常圧での沸点以上に反応温度を上げることができるため、常圧で反応させる場合と比べて、反応時間を短縮することができる。
【0028】
加圧する場合は、例えば、オートクレーブを使用すればよい。オートクレーブを使用することで、常圧での沸点以上に反応温度を上げることができる。例えば、溶媒として水を使用する場合でも、オートクレーブを用いて反応させることで、200℃程度の反応温度は容易に達成できる。
【0029】
加圧は、所望の反応温度を達成できるものであれば特に限定されないが、概ね200kPa〜2.0MPa程度が好ましく、500kPa〜1.0MPa程度がより好ましい。
【0030】
常圧で反応させる場合、反応温度は、使用する溶媒の沸点にもよるが、通常、40〜250℃程度が好ましく、60〜200℃がより好ましく、100〜150℃がより一層好ましい。加熱は、通常水浴や油浴でなされるが、マイクロ波で加熱することもできる。これによって、例えば、溶媒として水を用いる場合は、水浴や油浴で加熱する場合に比べて、短時間で生成物を得ることができる。
【0031】
常圧で反応させる場合、反応時間は、1分〜240時間程度が好ましく、10分〜48時間程度がより好ましく、12〜30時間程度がより一層好ましい。加圧して反応させる場合、反応時間は、1分〜24時間程度が好ましく、10分〜12時間程度がより好ましく、30分〜3時間程度がより一層好ましい。
【0032】
また、固体酸触媒を用いる場合は、攪拌して反応させることが好ましく、固体触媒が砕けない範囲で、攪拌速度を上げると良い結果が得られる。攪拌速度は、10〜500rpm程度が好ましく、50〜300rpm程度がより好ましい。
【0033】
得られた生成物は、透析や限外ろ過等で低分子量の不純物を除いた後、遠心分離等で高分子量の不純物を除くことで精製することができる。透析膜や限外ろ過膜の孔径、遠心分離時の遠心力は、除去するものの分子量に合わせて適宜設定すればよい。
【0034】
更に高純度に精製するためには、カラム精製を行えばよい。この場合のカラム充填剤は、順相でも逆相でもよい。順相充填剤としては、シリカ粒子、アルミナ粒子等が使用できる。一方、逆相充填剤としては、長鎖アルキル基で表面修飾されたシリカ粒子等が使用できる。また、時間短縮の点から、カラム精製中に加圧してもよい。
【0035】
本発明の方法で製造された炭素系発光材料は、化学的安定性、発光量子収率、発光特性制御等の点から、グラフェン構造を含むものであることが好ましい。
【0036】
また、前記炭素系発光材料は、波長380〜480nmの光を発光するものであることが好ましい。
【0037】
本発明の方法で製造された炭素系発光材料は、量子収率が概ね30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより一層好ましい。また、その発光スペクトルの半値幅が、100nm以下であることが好ましく、90nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることがより一層好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)蛍光スペクトル:日本分光製(株)FP-6500
(2)量子収率の測定:(株)島津製作所製UV-3600及び日本分光(株)製FP-6500
【0039】
[1]試料の調製
[実施例1]
ジムロート冷却管及び温度計を装着した100mL三口フラスコに、クエン酸一水和物0.67g(3.1mmol)、L−システイン0.33g(2.72mmol)及び脱イオン水24mLを入れ、溶液を調製した。得られた溶液に、攪拌子及びAmberlyst 15 0.05gを加え、攪拌還流しながら95時間反応させ、炭素系発光材料1含有水分散液を得た。
【0040】
[実施例2]
50mLサンプルビンに、クエン酸一水和物0.67g(3.1mmol)とL−システイン0.33g(2.72mmol)を脱イオン水24mLに溶解した溶液を入れた。得られた溶液に、攪拌子及びAmberlyst 15 0.05gを加えた。これをステンレス製オートクレーブ内に装着したテフロン(登録商標)製インナー内に装着し、40分かけて200℃まで昇温した。気圧が徐々に上昇し、200℃に達してから30分後0.8MPaで一定となった。そのまま30分反応し、室温まで放冷した。褐色沈殿と固体触媒を0.2μmフィルターで除き、淡黄色の溶液を得た。これにより炭素系発光材料2含有水分散液を得た。
【0041】
[実施例3]
100mL三口フラスコに、クエン酸一水和物0.40g(1.9mmol)、L−システイン0.10g(0.8mmol)及び脱イオン水0.5mLを入れ、溶液を調製した。得られた溶液を、ナフィオン0.05g(デュポン社製)に含浸させ、100℃で25時間反応させた。ナフィオンから生成物を水10mLで抽出し、炭素系発光材料3含有水分散液を得た。
【0042】
[実施例4]
50mLサンプルビンに、クエン酸一水和物0.80g(3.8mmol)、L−システイン0.20g(1.7mmol)及び脱イオン水24mLを入れ、溶液を調製した。得られた溶液に、攪拌子及びAmberlyst 15 0.05gを加えた。これをステンレス製オートクレーブ内に装着したテフロン(登録商標)製インナー内に装着し、40分かけて200℃まで昇温した。気圧が徐々に上昇し、30分後0.8MPaで一定となった。そのまま30分反応し、室温まで放冷した。褐色沈殿と固体触媒を0.2μmフィルターで除き、黄色の溶液を得た。これにより、炭素系発光材料4含有水分散液を得た。
【0043】
[実施例5]
50mLサンプルビンに、クエン酸一水和物0.8g(3.8mmol)、L−システイン0.2g(1.7mmol)、SDS2.5g(8.7mmol)及び脱イオン水2.5mLを入れ、溶液を調製した。得られた溶液に、攪拌子及び濃硫酸0.05gを加えた。これをステンレス製オートクレーブ内に装着したテフロン(登録商標)製インナー内に装着し、40分かけて200℃まで昇温した。気圧が徐々に上昇し、30分後0.8MPaで一定となった。そのまま90分反応し、室温まで放冷した。褐色沈殿と固体触媒を0.2μmフィルターで除き、黄土色の溶液を得た。これにより、炭素系発光材料5含有水分散液を得た。
【0044】
[実施例6]
ジムロート冷却管及び温度計を装着した100mL三口フラスコに、クエン酸一水和物0.80g(3.8mmol)、L−システイン0.20g(1.7mmol)、SDS2.5g(8.7mmol)及び脱イオン水2.5mLを入れ、溶液を調製した。得られた溶液に、攪拌子及び濃硫酸0.05gを加え、攪拌還流しながら40時間反応させた。反応液を冷却後、反応系が固化したので水20mLで可溶分を抽出した。これにより、炭素系発光材料6含有水分散液を得た。
【0045】
[実施例7]
クエン酸一水和物を0.7g(3.3mmol)、L−システインを0.10g(0.83mmol)使用した以外は、実施例4と同じ方法で炭素系発光材料7含有水分散液を得た。
【0046】
[実施例8]
クエン酸一水和物を0.51g(2.4mmol)、L−システインを0.29g(2.4mmol)使用した以外は、実施例4と同じ方法で炭素系発光材料8含有水分散液を得た。
【0047】
[実施例9]
クエン酸一水和物を0.73g(3.4mmol)、L−システインを0.28g(2.3mmol)使用した以外は、実施例4と同じ方法で炭素系発光材料9含有水分散液を得た。
【0048】
[実施例10]
ジムロート冷却管及び温度計を装着した100mL三口フラスコに、クエン酸一水和物0.51g(2.4mmol)、L−システイン0.29g(2.4mmol)、SDS0.80g(2.8mmol)、並びに脱イオン水4mL及びトルエン25mLを入れ、溶液を調製した。得られた溶液に、攪拌子及びAmberlyst 15 0.05gを加え、攪拌還流しながら15時間反応させた。反応中、ディーン・スタークトラップにより水を取り除いた。得られた黄土色不溶物と黄土色溶液とを0.2μmフィルターでろ過し、炭素系発光材料10含有トルエン溶液を得た。
【0049】
[実施例11]
50mLサンプルビンに、クエン酸一水和物0.63g(3.0mmol)、L−システイン0.37g(3.0mmol)、実施例2で調製した炭素系発光材料2含有水分散液2.0g、並びに脱イオン水22mLを入れ、溶液を調製した。得られた溶液に、攪拌子及びAmberlyst 15 0.05gを加え、これをステンレス製オートクレーブ内に装着したテフロン(登録商標)製インナー内に装着し、40分かけて200℃まで昇温した。気圧が徐々に上昇し、200℃に達してから30分後0.8MPaで一定となった。そのまま30分反応し、室温まで放冷した。褐色沈殿と固体触媒を0.2μmフィルターで除き、淡黄色の溶液を得た。これにより炭素系発光材料11含有水分散液を得た。
【0050】
[実施例12]
クエン酸一水和物を0.75g(3.6mmol)、L−システインを0.05g(0.41mmol)使用した以外は、実施例4と同じ方法で炭素系発光材料12含有水分散液を得た。
【0051】
[実施例13]
クエン酸一水和物を0.64g(3.1mmol)、L−システインを0.36g(3.0mmol)使用し、Amberlyst 15のかわりに濃硫酸0.05gを使用した以外は、実施例4と同じ方法で炭素系発光材料13含有水分散液を得た。
【0052】
[実施例14]
50mLサンプルビンに、クエン酸一水和物0.67g(3.1mmol)とL−システイン0.33g(2.72mmol)を脱イオン水24mLに溶解した溶液を入れた。得られた溶液に、幅1mm、長さ5mm程度の短冊状に細かく切断したナフィオン0.05g(デュポン社製)を加えた。これをステンレス製オートクレーブ内に装着したテフロン(登録商標)製インナー内に装着し、40分かけて200℃まで昇温した。気圧が徐々に上昇し、30分後0.7MPaで一定となった。そのまま90分反応し、室温まで放冷した。褐色沈殿と固体触媒を0.2μmフィルターで除き、橙色の溶液を得た。これにより、炭素系発光材料14含有水分散液を得た。
【0053】
[実施例15]
脱イオン水のかわりにトルエン25mLを用いた以外は、実施例5と同じ方法で炭素系発光材料15含有トルエン分散液を得た。
【0054】
[実施例16]
濃硫酸のかわりにリン酸0.24gを用いた以外は、実施例13と同じ方法で炭素系発光材料16含有水分散液を得た。
【0055】
[実施例17]
ジムロート冷却管及び温度計を装着した100mL三口フラスコに、クエン酸一水和物0.20g(0.95mmol)、下記式で表されるPEG−ジアミン0.5mL(0.56mmol)(Sigma-Aldrich社製)を入れ、溶液を調製した。得られた溶液に、攪拌子及びリン酸2.0gを加え、90℃で40時間反応させ、黒色粘凋体として、炭素系発光材料17を得た。
【化1】
【0056】
[実施例18]
クエン酸一水和物を0.54g(2.6mmol)、L−システインを0.46g(3.8mmol)使用した以外は、実施例4と同じ方法で、炭素系発光材料18含有水分散液を得た。
【0057】
[2]量子収率の測定
各実施例で得られたポリマーについて、蛍光スペクトル及び量子収率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示したように、本発明の方法で得られた炭素系発光材料は、高い量子収率を示した。