特許第6809658号(P6809658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809658接着剤、電池用包装材用接着剤、積層体、電池用包装材、電池用容器及び電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6809658
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】接着剤、電池用包装材用接着剤、積層体、電池用包装材、電池用容器及び電池
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20201221BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20201221BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20201221BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201221BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20201221BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20201221BHJP
【FI】
   C09J175/06
   B32B15/095
   B32B27/40
   B32B27/00 H
   B65D65/40 D
   H01M2/02 K
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2020-552923(P2020-552923)
(86)(22)【出願日】2020年5月20日
(86)【国際出願番号】JP2020019957
【審査請求日】2020年9月29日
(31)【優先権主張番号】特願2019-103716(P2019-103716)
(32)【優先日】2019年6月3日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕季
(72)【発明者】
【氏名】菅野 勉
(72)【発明者】
【氏名】中村 英美
(72)【発明者】
【氏名】神山 達哉
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/117080(WO,A1)
【文献】 特開2014−091770(JP,A)
【文献】 特開2006−037037(JP,A)
【文献】 特開2015−082354(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/044891(WO,A1)
【文献】 特表2017−532632(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0251552(US,A1)
【文献】 特表2017−532405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 15/095,27/00,27/40
B65D 65/40
H01M 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステルポリオール(A1)を含むポリオール組成物(A)と、
イソシアネート化合物(B)を含むポリイソシアネート組成物(B)と、を含み、
前記結晶性ポリエステルポリオール(A1)のガラス転移温度が−20℃以上10℃以下であり、融点が80℃以上160℃以下であり、数平均分子量が2,000以上30,000以下であることを特徴とする2液型接着剤。
【請求項2】
前記結晶性ポリエステルポリオール(A1)の融解熱量が0.1J/g以上50J/g以下である請求項1に記載の2液型接着剤。
【請求項3】
前記ポリオール組成物(A)が、ガラス転移温度が−70℃以上−20℃未満であるポリエステルポリオール(A2)を含む請求項1または2のいずれか一項に記載の2液型接着剤。
【請求項4】
前記結晶性ポリエステルポリオール(A1)と前記ポリエステルポリオール(A2)の総質量に対して前記ポリエステルポリオール(A2)の配合量が10質量%以下である請求項3に記載の2液型接着剤。
【請求項5】
電池用包装材に用いられる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の2液型接着剤。
【請求項6】
第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材とを貼り合せる接着層を有し、
前記接着層が請求項1乃至5のいずれか一項に記載の接着剤の硬化物である積層体。
【請求項7】
少なくとも、外層側基材層1、接着層2、金属層3、及びシーラント層4が順次積層された電池用包装材であって、前記接着層2が請求項1乃至5のいずれかに記載の2液型接着剤の硬化物であることを特徴とする電池用包装材。
【請求項8】
請求項7に記載の電池用包装材を成型してなる電池用容器。
【請求項9】
請求項8に記載の電池用容器を使用してなる電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2液型接着剤、当該2液型接着剤を用いて得られる積層体、成型体、包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や日用品、電子素子を始めとする種々の収納物の包装に用いられる包装材料には、流通時等に受ける衝撃や、酸素や水分による劣化から内容物を保護するため、強度や割れにくさ、ガスバリア性等の機能が要求される。内容物を加熱殺菌処理する場合には耐レトルト性、耐熱性等が必要であるし、内容物を確認できるように透明性が要求されることもある。しかしながら必要な機能を一種類の材料で満足するのは難しい。例えばヒートシールにより密閉する場合に用いられる無延伸のポリオレフィンフィルムは熱加工性に優れる一方、酸素バリア性は不十分である。反対にナイロンフィルムはガスバリア性に優れるが、ヒートシール性には劣る。
【0003】
このようなことから、異種のポリマー材料や、ポリマー材料と金属基材とを貼り合せた積層体が包装材料として広く用いられている。また、積層体を成型して一つまたは複数の収納部を形成した積層体を包装材として用いることがある(特許文献1−3)。一つまたは複数の収納部が形成された積層体は、同じ形状の収納部が形成された積層体や、収納部が形成されていない(成型加工されていない)積層体と接合されることで収納部を密封する。接合方法として熱融着(ヒートシール)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−199283号公報
【特許文献2】特表2008−535746号公報
【特許文献3】特開2015−082354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような用途に適した包装材、即ち優れた成型性を有し、収納物を封止するために行うシーラント層同士の熱融着後も層間の接着強度の低下がなく、層間の浮きなどの外観不良の無い包装材を提供することを目的とする。また、このような包装材の製造に好適な、成型性、耐熱性に優れた2液型接着剤、これを用いた積層体、成型体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、結晶性ポリエステルポリオール(A1)を含むポリオール組成物(A)と、イソシアネート化合物(B)を含むポリイソシアネート組成物(B)と、を含み、結晶性ポリエステルポリオール(A1)のガラス転移温度が−20℃以上10℃以下であり、融点が80℃以上160℃以下であり、数平均分子量が2,000以上30,000以下である2液型接着剤を使用することで、前記課題を解決した。
【0007】
即ち本発明は、結晶性ポリエステルポリオール(A1)を含むポリオール組成物(A)と、イソシアネート化合物(B)を含むポリイソシアネート組成物(B)と、を含み、結晶性ポリエステルポリオール(A1)のガラス転移温度が−20℃以上10℃以下であり、融点が80℃以上160℃以下であり、数平均分子量が2,000以上30,000である2液型接着剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の2液型接着剤を使用することで、優れた成型性を有し、収納物を封止するために行うシーラント層同士の熱融着後も層間の接着強度の低下がなく、層間の浮きなどの外観不良の無い包装材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の、外層側基材層1、接着層2、金属層3、及びシーラント層4が順次積層された積層体の具体的態様の一例である。
図2】本発明の、外層側基材層1、接着層2、金属層3、接着層5、及びシーラント層4が順次積層された積層体の具体的態様の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<接着剤>
本発明の接着剤は、ポリオール組成物(A)と、イソシアネート化合物(B)を含むポリイソシアネート組成物(B)と、を含み、ポリオール組成物(A)が、ガラス転移温度が−20℃以上10℃以下であり、融点が80℃以上160℃以下であり、数平均分子量が2,000以上30,000以下である結晶性のポリエステルポリオール(A1)を含む2液型の接着剤である。
【0011】
(ポリオール組成物(A))
(結晶性ポリエステルポリオール(A1))
本発明の接着剤に用いられるポリオール組成物(A)は結晶性ポリエステルポリオール(A1)を含む。結晶性ポリエステルポリオール(A1)は多塩基酸又はその誘導体と多価アルコールとを必須原料として得られ、結晶性を有するポリエステルポリオールである。
【0012】
結晶性ポリエステルポリオール(A1)の原料として使用する多塩基酸又はその誘導体としては、マロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、無水コハク酸、アルケニル無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族多塩基酸;
【0013】
マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ピメリン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の脂肪族多塩基酸のアルキルエステル化物;
【0014】
1,1−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物、無水ハイミック酸、無水ヘット酸等の脂環族多塩基酸;
【0015】
オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、ナフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の芳香族多塩基酸;
【0016】
ジメチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の芳香族多塩基酸のメチルエステル化物;等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
多価アルコールとしては、ジオールでも、3官能以上のポリオールでもよく、前記ジオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2,2−トリメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等の脂肪族ジオール;
【0018】
ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のエーテルグリコール;
【0019】
前記脂肪族ジオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルジオール;
【0020】
前記脂肪族ジオールと、ラクタノイド、ε−カプロラクトン等の種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;
【0021】
ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール;
【0022】
ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノールにエチレンオキサイド、プロプレンオキサイド等を付加して得られるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0023】
前記3官能以上のポリオールは、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール;
【0024】
前記脂肪族ポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール;
【0025】
前記脂肪族ポリオールと、ε−カプロラクトン等の種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0026】
本発明では、結晶性ポリエステルポリオール(A1)に結晶性を発現させつつ、後述する接着剤の硬化塗膜が成型性に優れたものとするために、多塩基酸又はその誘導体としてアジピン酸、コハク酸、フマル酸、セバシン酸、及びテレフタル酸から選ばれる少なくとも1種を、多価アルコールとして1,4−ブタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種を必須成分とすると共に、環状構造を有する多価カルボン酸、分岐アルキレン構造を有する多価アルコール、環状構造を有する多価アルコールからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0027】
環状構造を有する多価カルボン酸としてはイソフタル酸、オルトフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられ、分岐アルキレン構造を有する多価アルコールとしては1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−イソアミル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル-1,3−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンンジオール、1,2−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。環状構造を有する多価アルコールとしては1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ビシクロヘキサノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3,5−アダマンタントリオール、3−(ヒドロキシメチル)-1−アダマンタノール、トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカンジメタノール、1,2−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、4,4−ジヒドロキシビフェノール、4,4’−ビスフェニルジメタノール、2,2’−メチレンジフェノール、2,4’−メチレンジフェノール、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノールA、ビスフェノールA、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,6−ナフタレンジオール、1,7−ナフタレンジオール、2,3−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール等が挙げられる。
【0028】
アジピン酸、コハク酸、フマル酸、セバシン酸、テレフタル酸、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールはポリエステルポリオールに結晶性を付与することができる。中でも多塩基酸又はその誘導体としてアジピン酸、テレフタル酸を用い、多価アルコールとして1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールを用いることが好ましい。
環状構造を有する多価カルボン酸、分岐アルキレン構造を有する多価アルコール、環状構造を有する多価アルコールは結晶性ポリエステルポリオール(A1)の結晶性を低下させることで接着強度を確保するとともに、結晶性ポリエステルポリオール(A1)のガラス転移温度、融点を好適な範囲に調整して加工性、耐熱性、耐湿熱性を向上させ、さらに溶剤中での保存安定性を付与する。1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく用いられる。
【0029】
多価塩基酸又はその誘導体成分の15モル%以上50モル%以下の範囲でアジピン酸を配合し、40モル%以上80モル%以下の範囲でテレフタル酸を配合し、5モル%以上40モル%以下の範囲で環状構造を有する多価カルボン酸を配合することが好ましい。また多価アルコール成分の40モル%以上80モル%以下の範囲で1,4−ブタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種を配合し、20モル%以上60モル%以下の範囲で分岐アルキレン構造を有する多価アルコール、環状構造を有する多価アルコールからなる群から選ばれる少なくとも一種を配合することが好ましい。
【0030】
本発明においては、結晶性ポリエステルポリオール(A1)は、多塩基酸又はその誘導体と、多価アルコールと、ポリイソシアネートとを必須原料とするポリエステルポリウレタンポリオールであってもよい。その場合に使用するポリイソシアネートは、ジイソシアネート化合物や、3官能以上のポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらポリイソシアネートはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0031】
ジイソシアネート化合物は、例えば、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
【0032】
シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;
【0033】
1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0034】
3官能以上のポリイソシアネート化合物は、例えば、分子内にウレタン結合部位を有するアダクト型ポリイソシアネート化合物や、分子内にイソシアヌレート環構造を有するヌレート型ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0035】
分子内にウレタン結合部位を有するアダクト型ポリイソシアネート化合物は、例えば、ジイソシアネート化合物と多価アルコールとを反応させて得られる。該反応で用いるジイソシアネート化合物は、例えば、前記ジイソシアネート化合物として例示した各種のジイソシアネート化合物が挙げられ、これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。また、該反応で用いるポリオール化合物は、前記多価アルコールとして例示した各種のポリオール化合物や、多価アルコールと多塩基酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0036】
分子内にイソシアヌレート環構造を有するヌレート型ポリイソシアネート化合物は、例えば、ジイソシアネート化合物とモノアルコールおよび/又はジオールとを反応させて得られる。該反応で用いるジイソシアネート化合物は、例えば、前記ジイソシアネート化合物として例示した各種のジイソシアネート化合物が挙げられ、これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。また、該反応で用いるモノアルコールとしては、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、n−トリデカノール、n−テトラデカノール、n−ペンタデカノール、n−ヘプタデカノール、n−オクタデカノール、n−ノナデカノール、エイコサノール、5−エチル−2−ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、3,9−ジエチル−6−トリデカノール、2−イソヘプチルイソウンデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール等が挙げられ、ジオールとしては前記多価アルコールで例示した脂肪族ジオール等が挙げられる。これらモノアルコールやジオールはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0037】
本発明に使用する結晶性ポリエステルポリオール(A1)は多塩基酸又はその誘導体と多価アルコールとの反応生成物であって、多塩基酸又はその誘導体における芳香族環を有する多塩基酸又はその誘導体の割合が30モル%以上であることが好ましい。これにより、保存安定性に優れた接着剤とすることができる。さらに成型性、耐熱性が向上することから多塩基酸又はその誘導体における、芳香族環を有する多塩基酸又はその誘導体の割合が50モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。多塩基酸又はその誘導体の配合量の上限は特に制限されないが、一例として85%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましい。
【0038】
あるいは本発明に使用する結晶性ポリエステルポリオール(A1)は多塩基酸又はその誘導体と、多価アルコールと、ポリイソシアネートとの反応生成物であってもよく、多塩基酸又はその誘導体における芳香族環を有する多塩基酸又はその誘導体の割合が30モル%以上であることが好ましい。これにより、保存安定性に優れた接着剤とすることができる。さらに成型性、耐熱性が向上することから多塩基酸又はその誘導体における、芳香族環を有する多塩基酸又はその誘導体の割合が50モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。多塩基酸又はその誘導体の配合量の上限は特に制限されないが、一例として85%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましい。
【0039】
本発明で使用する結晶性ポリエステルポリオール(A1)の水酸基価は、接着強度により優れることから、1〜40mgKOH/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、30mgKOH/g以下である。
【0040】
本発明で使用する結晶性ポリエステルポリオール(A1)の数平均分子量(Mn)は、2000〜30,000の範囲であり、3,000〜15,000がより好ましく、4000〜12000がなお好ましい。数平均分子量がこの範囲にあることで、硬化塗膜中において結晶性ポリエステルポリオール(A1)が適度に伸長でき、成型性に優れた接着剤とすることができる。
【0041】
尚、本願発明において数平均分子量(Mn)は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0042】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8320GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel 4000HXL、TSKgel 3000HXL、TSKgel 2000HXL、TSKgel 1000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0043】
本発明で使用する結晶性ポリエステルポリオール(A1)の固形分酸価は、特に限定はないが、10.0mgKOH/g以下であることが好ましい。5.0mgKOH/g以下であると耐湿熱性により優れ好ましい。また、固形分酸価の下限について特に制限はないが、一例として0.5mgKOH/g以上である。0mgKOH/gであってもよい。
【0044】
本発明で使用する結晶性ポリエステルポリオール(A1)のガラス転移温度は、−20℃以上10℃以下であり、より好ましくは−15℃以上5℃以下である。
【0045】
本発明で使用する結晶性ポリエステルポリオール(A1)の融点は、80℃以上160℃以下であり、より好ましくは90℃以上145℃以下、さらに好ましくは100℃以上130℃以下である。本発明においてポリエステルポリオールが結晶性であるとは融点を有し、融解熱量が0.1J/g以上であることをいう。
【0046】
本願発明におけるガラス転移温度、融点、融解熱量は次のようにして測定する。
示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DSC−7000、以下DSCとする)を用い、試料5mgを20mL/minの窒素気流下で30℃から10℃/minでT℃まで昇温した後10分保持し、その後10℃/minでT℃まで冷却して熱履歴を除去する。T℃にて5分保持した後、再び10℃/minでT℃まで昇温させてDSC曲線を測定し、2度目の昇温工程で観測される測定結果における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点をガラス転移点とし、このときの温度をガラス転移温度とする。また、2度目の昇温工程で観測される吸熱曲線の最大ピーク温度を融点とし、この最大ピークとベースラインに囲まれた部分の面積から融解熱量を算出する。
【0047】
<T≦Tであり、Tは結晶性ポリエステルポリオール(A1)のガラス転移温度よりも十分低く、T及びTは結晶性ポリエステルポリオールの融点よりも少なくとも30℃以上高い温度である。一例としてTは200℃であり、Tは−80℃であり、Tは200℃であるが、測定する試料に合わせて適宜調整される。
【0048】
保存安定性、塗工適性に優れることから、本発明で使用する結晶性ポリエステルポリオール(A1)の融解熱量は、0.1J/g以上50J/g以下であることが好ましく、0.15J/g以上30J/g以下であることがより好ましく、0.2J/g以上20J/g以下であることがさらに好ましい。
【0049】
結晶性ポリエステルポリオール(A1)を用いることにより接着性、成型性、耐熱性、耐湿熱性が向上する理由については定かではないが、以下のように推測される。ポリエステルポリオール(A1)は結晶性を有することから、ガラス転移温度を超えた後も融点以下では分子運動が一部抑制されている。このため成型加工を行う室温付近ではメチレン鎖等によって擬網目構造が生じており、この擬網目部分とゴム領域部分の共存によって高弾性と高靱性を両立させることができるため、優れた成型性を示す。また、擬網目構造の存在によって加熱時の接着剤層の流動が抑えられるため、耐熱性、耐湿熱性を向上させることができる。
【0050】
(ポリエステルポリオール(A2))
本発明の接着剤に用いられるポリオール組成物(A)は結晶性ポリエステルポリオール(A1)に加えてポリエステルポリオール(A2)を含んでいてもよい。ポリエステルポリオール(A2)は多塩基酸又はその誘導体と多価アルコールとを必須原料として得られ、結晶性であってもよいし、非晶性であってもよい。ポリエステルポリオール(A2)の合成に用いられる多塩基酸又はその誘導体、多価アルコールとしては、ポリエステルポリオール(A1)と同様のものを用いることができる。
【0051】
ポリエステルポリオール(A2)はガラス転移温度が−70℃以上−20℃未満であることが好ましく、−70℃以上−30℃以下であることがより好ましい。結晶性ポリエステルポリオール(A1)とこのようなポリエステルポリオール(A2)とを併用することで、塗工適性が向上し、また接着強度、成型性により優れた接着剤とすることができる。
【0052】
ポリエステルポリオール(A2)の水酸基価は、接着強度により優れることから、1〜40mgKOH/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、30mgKOH/g以下である。
【0053】
ポリエステルポリオール(A2)の固形分酸価は、特に限定はないが、10.0mgKOH/g以下であることが好ましい。5.0mgKOH/g以下であると耐湿熱性により優れ好ましい。また、固形分酸価の下限について特に制限はないが、一例として0.5mgKOH/g以上である。0mgKOH/gであってもよい。
【0054】
ポリエステルポリオール(A2)の数平均分子量(Mn)は、3,000〜15,000 の範囲であることが好ましく、4000〜12000 であることがより好ましい。数平均分子量がこの範囲にあることで、溶剤溶解性が高く、かつ分子鎖の絡まりによる接着性の向上が可能となる。
【0055】
ポリエステルポリオール(A2)の配合量は、接着強度、成型性を向上させつつ耐熱性を維持する観点から、結晶性ポリエステルポリオール(A1)とポリエステルポリオール(A2)の総質量に対してポリエステルポリオール(A2)の配合量が10質量%以下となるよう配合することが好ましく、より好ましくは8質量%以下である。
【0056】
(ポリエステルポリオールの製造方法)
結晶性ポリエステルポリオール(A1)、ポリエステルポリオール(A2)の合成にあたり、多塩基酸又はその誘導体と多価アルコールとの反応、あるいは多塩基酸又はその誘導体と多価アルコールとポリイソシアネートとの反応は、公知の方法で行えばよい。
【0057】
例えば多塩基酸又はその誘導体と前記多価アルコールとの反応は、重縮合反応で行うことができる。また多塩基酸又はその誘導体と前記多価アルコールと前記ポリイソシアネートとの反応は、多塩基酸又はその誘導体と前記多価アルコールとを前記方法で反応させたポリエステルポリオールと前記ポリイソシアネートとを、必要に応じて公知慣用のウレタン化触媒の存在下で反応させることで、本発明のポリエステルポリオールを得ることができる。
【0058】
多塩基酸又はその誘導体と多価アルコールとのエステル化反応は、多塩基酸又はその誘導体と、多価アルコールと、重合触媒とを撹拌機、精留設備を備える反応容器に仕込み、攪拌しながら、常圧で130℃程度まで昇温させる。その後、130〜260℃の範囲の反応温度で、1時間に5〜10℃の割合で昇温させながら生成する水を留去させる。4〜12時間エステル化反応させた後、常圧から1〜300tоrrの範囲内まで徐々に減圧度を上げながら、余剰の多価アルコールを留去、反応を促進させることでポリエステルポリオールを製造することができる。
【0059】
エステル化反応に用いる重合触媒としては、周期律表の2族、4族、12族、13族、14族、15族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、またはその金属の化合物からなる重合触媒が好ましい。かかる金属またはその金属化合物からなる重合触媒としては、Ti、Sn、Zn、Al、Zr、Mg、Hf、Ge等の金属、これらの金属の化合物、より具体的にはチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等が挙げられる。
【0060】
エステル化反応に用いることができる重合触媒の市販品としては、マツモトファインケミカル社製のオルガチックスTAシリーズ、TCシリーズ、ZAシリーズ、ZCシリーズ、ALシリーズ、日東化成社製の有機錫系触媒、無機金属触媒、無機錫化合物が好ましく挙げられる。
【0061】
これらの重合触媒の使用量は、エステル化反応を制御でき、かつ良好な品質のポリエステルポリオールが得られるのであれば特に制限はされないが、一例として多塩基酸又はその誘導体と多価アルコールとの合計量に対して10〜1000ppmであり、好ましくは20〜800ppmである。ポリエステルポリオールの着色を抑制するため、30〜500ppmであることがさらに好ましい。
【0062】
また、本発明で使用するポリエステルポリウレタンポリオールは、上述した方法で得られるポリエステルポリオールをポリイソシアネートで鎖伸長して得られる。具体的な製造方法としては、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートと、鎖伸長触媒と、必要に応じて用いられるポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの良溶媒とを反応容器に仕込み、60〜90℃の反応温度で攪拌する。用いるポリイソシアネートに由来するイソシアネート基が実質的に残存しなくなるまで反応を行い本発明で使用するポリエステルポリウレタンポリオールを得る。
【0063】
前記鎖伸長触媒としては、通常のウレタン化触媒として使用される公知公用の触媒を用いることができる。具体的には、有機錫化合物、有機カルボン酸錫塩、鉛カルボン酸塩、ビスマスカルボン酸塩、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられ、単独または併用して用いることができる。前記鎖伸長触媒の使用量としては、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応を十分促進させる量であればよく、具体的には、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの合計量に対して、5.0質量%以下が好ましい。触媒による樹脂への加水分解や着色を抑制するために、1.0質量%以下がより好ましい。更にこれら鎖伸長触媒は後述するポリオール組成物(A)とイソシアネート組成物(B)との硬化触媒としての作用を考慮して使用しても良い。
【0064】
イソシアネート基の残量の確認方法としては、赤外吸収スペクトル測定により、イソシアネート基に由来する吸収スペクトルである2260cm−1付近に観察される吸収ピークの有無の確認や、滴定法によるイソシアネート基の定量が挙げられる。
【0065】
ポリエステルポリウレタンポリオールの製造に用いられる良溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン等が挙げられる。単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0066】
(ポリイソシアネート組成物(B))
本発明で使用するポリイソシアネート組成物(B)は、イソシアネート化合物(B)を含む。イソシアネート化合物(B)は、一分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、各種の化合物を用いることができる。具体的には、前述のポリエステルポリオール(A1)、ポリエステルポリオール(A2)の原料で述べた各種のジイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物のオリゴマー、各種のジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応させて得られるアダクト変性ジイソシアネート化合物、これらのビウレット変性体、アロファネート変性体や、各種3官能以上のポリイソシアネート化合物を使用することができる。これらイソシアネート化合物(B)はそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0067】
中でもトルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体が好ましく挙げられる。
【0068】
また、イソシアネート化合物(B)は結晶性ポリエステルポリオール(A1)と過剰量のイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリエステルポリイソシアネートであってもよい。結晶性ポリエステルポリオール(A1)との反応に用いられるイソシアネート化合物は上述のものを特に制限なく用いることができる。トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体が好ましく挙げられる。
【0069】
(接着剤 その他の成分)
本発明の接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の成分を併用することができる。例えばポリオール組成物(A)には、結晶性ポリエステルポリオール(A1)の他、ポリカーボネートポリオール化合物を含有することが好ましい。この時、結晶性ポリエステルポリオール(A1)の総量とポリカーボネートポリオール化合物との配合比率は、各種の基材に対する接着性が高く、耐湿熱性にも優れる接着剤となることから、両者の合計質量に対し結晶性ポリエステルポリオール(A1)の総質量が30〜99.5質量%の範囲であることが好ましく、60〜99質量%の範囲であることが好ましい。
【0070】
ポリカーボネートポリオール化合物の数平均分子量(Mn)は、各種の基材に対する接着性が高く、耐湿熱性にも優れる接着剤となることから、300〜2,000の範囲であることが好ましい。その水酸基価は30〜250mgKOH/gの範囲であることが好ましく、40〜200mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。また、ポリカーボネートポリオール化合物はポリカーボネートジオール化合物であることが好ましい。
【0071】
また、ポリオール組成物(A)は、結晶性ポリエステルポリオール(A1)の他、ポリオキシアルキレン変性ポリオール化合物を含有することが好ましい。この時、結晶性ポリエステルポリオール(A1)の総量とポリオキシアルキレン変性ポリオール化合物との配合比率は、各種の基材に対する接着性が高く、耐湿熱性にも優れる接着剤となることから、両者の合計質量に対し結晶性ポリエステルポリオール(A1)の総質量が30〜99.5質量%の範囲であることが好ましく、60〜99質量%の範囲であることが好ましい。
【0072】
ポリオキシアルキレン変性ポリオール化合物の数平均分子量(Mn)は、各種の基材に対する接着性が高く、耐湿熱性にも優れる接着剤となることから、300〜2,000の範囲であることが好ましい。その水酸基価は40〜250mgKOH/gの範囲であることが好ましく、50〜200mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。また、ポリオキシアルキレン変性ポリオール化合物はポリオキシアルキレン変性ジオール化合物であることが好ましい。
【0073】
本発明で用いる前記ポリオール組成物(A)は、結晶性ポリエステルポリオール(A1)の他、その他の樹脂成分を含有しても良い。その他の樹脂成分を用いる場合には、主剤の総質量に対し50質量%以下で用いることが好ましく、30質量%以下で用いることが好ましい。その他の樹脂成分の具体例としては、エポキシ樹脂が挙げられる。前記エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。これらの中でも、各種の基材に対する接着性が高く、耐湿熱性にも優れる接着剤となることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0074】
前記エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は、各種の基材に対する接着性が高く、耐湿熱性にも優れる接着剤となることから、300〜2,000の範囲であることが好ましい。また、そのエポキシ当量は、150〜1000g/当量の範囲であることが好ましい。
【0075】
前記エポキシ樹脂を用いる場合、結晶性ポリエステルポリオール(A1)の総量とエポキシ樹脂との配合比率は、各種の基材に対する接着性が高く、耐湿熱性にも優れる接着剤となることから、両者の合計質量に対してポリエステルポリオール(A1)の総質量が30〜99.5質量%の範囲であることが好ましく、60〜99質量%の範囲であることが好ましい。
【0076】
本発明で用いる前記ポリオール組成物(A)は粘着付与剤を含有していても良い。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系又はロジンエステル系粘着付与剤、テルペン系又はテルペンフェノール系粘着付与剤、飽和炭化水素樹脂、クマロン系粘着付与剤、クマロンインデン系粘着付与剤、スチレン樹脂系粘着付与剤、キシレン樹脂系粘着付与剤、フェノール樹脂系粘着付与剤、石油樹脂系粘着付与剤、ケトン樹脂系粘着付与剤などが挙げられる。ケトン樹脂系粘着付与剤、ロジン系またはロジンエステル系粘着付与剤が好ましく、ケトン樹脂系粘着付与剤がより好ましい。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。粘着付与剤を用いる場合、ポリエステルポリオール(A1)と粘着付与剤との合計質量に対しポリエステルポリオール(A1)の総質量が80〜99.99質量%であることが好ましく、85〜99.9質量%であることがより好ましい。
【0077】
ロジン系又はロジンエステル系としては、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、及びこれらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールエステル、トリエチレングリコールエステルなどがあげられる。
【0078】
テルペン系又はテルペンフェノール系としては、低重合テルペン系、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、テルペンフェノール系、芳香族変性テルペン系、水素添加テルペン系などあげられる。
【0079】
石油樹脂系としては、ペンテン、ペンタジエン、イソプレンなどから得られる炭素数5個の石油留分を重合した石油樹脂、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレンなどから得られる炭素数9個の石油留分を重合した石油樹脂、前記各種モノマーから得られるC5−C9共重合石油樹脂及びこれらを水素添加した石油樹脂、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンから得られる石油樹脂;並びにそれらの石油樹脂の水素化物;それらの石油樹脂を無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、フェノールなどで変性した変性石油樹脂などを例示できる。
【0080】
フェノール樹脂系としては、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物を使用できる。該フェノール類としては、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなどが挙げられ、これらフェノール類とホルムアルデヒドをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックなどが例示できる。また、ロジンにフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂なども例示できる。
【0081】
ケトン樹脂としては公知慣用のものを挙げることができるが、ホルムアルデヒド樹脂、シクロヘキサノン・ホルムアルデヒド樹脂また、ケトンアルデヒド縮合樹脂等を好適に用いることができる。
【0082】
粘着付与剤は種々の軟化点を有するものが得られるが、前記ポリオール組成物(A)を構成する他の樹脂と混合した場合の相溶性、色調や熱安定性などの点から軟化点が70〜160℃、好ましくは80〜100℃のケトン樹脂系粘着付与剤、もしくは軟化点が80〜160℃、好ましくは90〜110℃のロジン系樹脂及びその水素添加誘導体が好ましく、軟化点が70〜160℃、好ましくは80〜100℃のケトン樹脂系粘着付与剤がより好ましい。また酸価が2〜20mgKOH/g、水酸基価が10mgKOH/g以下のケトン樹脂系粘着付与剤、水添ロジン系粘着付与剤であることが好ましく、酸価が2〜20mgKOH/g、水酸基価が10mgKOH/g以下のケトン系粘着付与剤がより好ましい。
【0083】
本発明の接着剤において、更に別の良好な態様として、公知のリン酸類又はその誘導体が併用できる。これによって、接着剤の初期接着性が更に向上し、トンネリング等のトラブルを解消することができる。
【0084】
ここで使用されるリン酸類又はその誘導体としては、例えば次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、例えばメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類、例えばオルトリン酸モノメチル、オルトリン酸モノエチル、オルトリン酸モノプロピル、オルトリン酸モノブチル、オルトリン酸モノ−2−エチルヘキシル、オルトリン酸モノフェニル、亜リン酸モノメチル、亜リン酸モノエチル、亜リン酸モノプロピル、亜リン酸モノブチル、亜リン酸モノ−2−エチルヘキシル、亜リン酸モノフェニル、オルトリン酸ジ−2−エチルヘキシル、オルトリン酸ジフェニル亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジ−2−エチルヘキシル、亜リン酸ジフェニル等のモノ、ジエステル化物、縮合リン酸とアルコール類とからのモノ、ジエステル化物、例えば前記のリン酸類に、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のエポキシ化合物を付加させたもの、例えば脂肪族又は芳香族のジグリシジルエーテルに前記のリン酸類を付加させて得られるエポキシリン酸エステル類等が挙げられる。
【0085】
上記のリン酸類又はその誘導体は一種又は二種以上用いてもよい。含有させる方法としては単に混ぜ込むだけでよい。
【0086】
また、本発明の接着剤において、接着促進剤を用いることもできる。接着促進剤にはシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系等のカップリング剤、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0087】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることが出来る。
【0088】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、テトラオクチレングリコールチタネート、チタンラクテート、テトラステアロキシチタン等を挙げることが出来る。
【0089】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げることが出来る。
【0090】
接着促進剤としてはシランカップリング剤を用いることが好ましい。また接着促進剤の含有量(固形分)は、ポリオール組成物(A)の固形分100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、0.7質量部以上であることがさらに好ましい。また接着促進剤の含有量(固形分)はポリオール組成物(A)の固形分100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0091】
本発明の接着剤において、ポリオール組成物(A)とポリイソシアネート組成物(B)との配合比は、ポリオール組成物(A)に含まれる水酸基の合計モル数[OH]と、ポリイソシアネート組成物(B)に含まれるイソシアネート基のモル数[NCO]との比[NCO]/[OH]を1.2〜30.0の範囲とすることが好ましくい。これにより、成型性、耐熱性、耐湿熱性に優れる2液型接着剤となる。
【0092】
本発明の接着剤は、溶剤型又は無溶剤型のいずれの形態であってもよい。なお本発明でいう「溶剤型」の接着剤とは、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して塗膜中の有機溶剤を揮発させた後に他の基材と貼り合せる方法、いわゆるドライラミネート法に用いられる形態をいう。ポリオール組成物(A)及びポリイソシアネート組成物(B)のいずれか一方、もしくは両方が本発明で使用する前記ポリオール組成物(A)またはポリイソシアネート組成物(B)を溶解することの可能な、溶解性の高い有機溶剤を含む。溶剤型の場合、ポリオール組成物(A)またはポリイソシアネート組成物(B)の構成成分の製造時に反応媒体として使用された有機溶剤が、更に塗装時に希釈剤として使用される場合もある。溶解性の高い有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。
【0093】
本明細書において「無溶剤型」の接着剤とは、ポリオール組成物(A)及びポリイソシアネート組成物(B)が上述したような溶解性の高い有機溶剤、特に酢酸エチル又はメチルエチルケトンを実質的に含まず、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して溶剤を揮発させる工程を経ずに他の基材と貼り合せる方法、いわゆるノンソルベントラミネート法に用いられる接着剤の形態を指す。ポリオール組成物(A)またはポリイソシアネート組成物(B)の構成成分や、その原料の製造時に反応媒体として使用された有機溶剤が除去しきれずに、ポリオール組成物(A)やポリイソシアネート組成物(B)中に微量の有機溶剤が残留してしまっている場合は、有機溶剤を実質的に含まないと解される。また、ポリオール組成物(A)が低分子量アルコールを含む場合、低分子量アルコールはポリイソシアネート組成物(B)と反応して塗膜の一部となるため、塗工後に揮発させる必要はない。従ってこのような形態も無溶剤型接着剤として扱う。
【0094】
本発明の接着剤が溶剤型の場合、粘度は溶剤希釈で低減可能なため、使用する前記ポリオール組成物(A)またはポリイソシアネート組成物(B)がやや高粘度であっても使用可能である。一方無溶剤型の場合は、加温により粘度を下げるという特性上低粘度であることが重視され、粘度を下げる手段として、ポリイソシアネート組成物(B)は粘度に寄与する芳香族濃度を低減したものが多用される。
【0095】
本発明の接着剤は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、帯電防止剤、防曇剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0096】
本発明の接着剤の用途は特に限定されないが、接着強度、加工性、耐湿熱性、耐熱性に優れるため、一例として電池用包装材に好適に用いることができる。
【0097】
<積層体>
本発明の積層体は、第1の基材と、第2の基材とを貼り合せる接着層とを有し、接着層が本発明の接着剤の硬化物である。本発明の積層体は第1の基材と第2の基材とを本発明の接着剤を用いてドライラミネート法やノンソルベントラミネート法にて貼り合せて得られる。基材としては、紙、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、カーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂やポリエステル系樹脂から得られた合成樹脂フィルム、銅箔、アルミニウム箔の様な金属箔等が挙げられる。
【0098】
基材の膜厚は特に制限されるものではなく、例えば、10〜400μmから選択される。基材と接着剤との密着性を向上させるために、基材の接着剤を塗布する面に表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理、放射線処理等が挙げられる。
【0099】
<電池用包装材>
電池用包装材は、図1に示すように、少なくとも、外層側基材層1、接着層2、金属層3、及びシーラント層4が順次積層された積層体からなる。本発明の電池用包装材において、外層側基材層1が最外層になり、シーラント層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層4同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。また、本発明の電池用包装材は、図2に示すように、金属層3とシーラント層4との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層5が設けられていてもよい。本発明の接着剤は、接着層2に好適に使用できるが、耐溶剤性に優れることから接着層5として使用することも可能である。
【0100】
(外層側基材層1)
本発明の電池用包装材において、外層側基材層1は最外層を形成する層である。外層側基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものでれば特に制限されず、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物や共重合物等の樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂であり、より好ましくは2軸延伸ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリアミド樹脂である。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
【0101】
外層側基材層1は、1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために、2層以上の樹脂フィルム、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムとポリアミドフィルムからなる複層で形成されていてもよい。外層側基材層1を多層の樹脂フィルムで形成する場合、樹脂フィルム同士は、接着剤または接着性樹脂などの接着成分を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量等については、後述する接着層2又は接着層5の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず公知の方法が採用でき、例えばドライラミネーション法、サンドラミネーション法などが挙げられ、好ましくはドライラミネーション法が挙げられる。ドライラミネーション法により積層させる場合には、接着層として接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚みとしては、例えば0.5〜10μm程度である。
【0102】
外層側基材層1の厚さについては、電池用包装材が上記の物性を満たせば特に制限されないが、例えば、10〜50μm程度、好ましくは15〜35μm程度である。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは9μm〜50μmであるのが好ましく、ポリアミドフィルムを用いる場合には厚さは10μm〜50μmであるのが好ましい。包装材として十分な強度を確保できるとともに張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくでき、成形性を向上させることができる。
【0103】
(金属層3)
電池用包装材において、金属層3は、電池用包装材の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムである。金属層3は、金属箔や金属蒸着などにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。
【0104】
金属層3の厚みは、電池用包装材が上記の物性を満たせば特に制限されないが、例えば、10〜50μm程度、好ましくは25〜45μm程度とすることができる。
【0105】
(シーラント層4)
本発明の電池用包装材においてシーラント層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層同士が熱融着して電池素子を密封する層である。
【0106】
シーラント層4に使用される樹脂成分については、熱融着可能であれば特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
【0107】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0108】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0109】
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0110】
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β―不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β―不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
【0111】
シーラント層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、シーラント層4は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
【0112】
また、シーラント層4の厚さとしては、電池用包装材が上記の物性を満たせば特に制限されないが、例えば、10〜100μm程度、好ましくは20〜90μm程度である。
【0113】
(接着層5)
本発明の電池用包装材において、接着層5は、金属層3とシーラント層4を強固に接着させために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
【0114】
接着層5は、金属層3とシーラント層4とを接着可能な接着剤によって形成される。接着層5に使用される接着層としては、例えば、ポリオレフィン樹脂と多官能イソシアネートの組み合わせた接着剤、ポリオールと多官能イソシアネートとを組み合わせた接着剤、変性ポリオレフィン樹脂、複素環状化合物と硬化剤とを含有する接着剤を使用することができる。あるいは、酸変性ポリプロピレンなどの接着剤をTダイ押出し機で金属層上に溶融押出しして接着層5を形成し、前記接着層5上にシーラント層4を重ね、金属層3とシーラント層4とを貼り合せることもできる。
接着層2および接着層5の両方がエージングを必要とする場合には、まとめてエージングすることができる。尚、エージング温度は室温〜90℃とすることで、2日〜2週間で硬化が完了し、成型性が発現する。
【0115】
接着層5の厚さについては、電池用包装材が上記の物性を満たせば特に制限されないが、例えば、0.5〜50μm程度、好ましくは2〜30μm程度である。
【0116】
(コーティング層6)
本発明の電池用包装材においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成型性の向上などを目的として、必要に応じて、外層側基材層1の上(外層側基材層1の金属層3とは反対側)にコーティング層6を設けてもよい。コーティング層6は、電池を組み立てた時に最外層に位置する層である。
【0117】
コーティング層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができ、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。コーティング層6を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、コーティング層6には、マット化剤を配合してもよい。
【0118】
マット化剤としては、例えば、粒径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、タルク、シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが好ましい。また、マット化剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施してもよい。
【0119】
コーティング層6を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、コーティング層6を形成する2液硬化型樹脂を外層側基材層1の一方の表面上に塗布する方法が挙げられる。マット化剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂にマット化剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
【0120】
(電池用包装材の製造方法)
本発明の電池用包装材の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り特に制限されないが、以下の方法が例示される。
【0121】
まず、外層側基材層1、接着層2、金属層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、外層側基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理された金属層3に、本発明の接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層3又は外層側基材層1を積層させて接着層2を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
【0122】
次いで、積層体Aの金属層3上にシーラント層4を積層させる。金属層3上にシーラント層4を直接積層させる場合には、積層体Aの金属層3上に、シーラント層4を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、金属層3とシーラント層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、積層体Aの金属層3上に、接着層5及びシーラント層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)や、別途、接着層5とシーラント層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aの金属層3上に熱ラミネーション法により積層する方法や、積層体Aの金属層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜したシーラント層4をサーマルラミネーション法により積層する方法や、積層体Aの金属層3と、予めシート状に製膜したシーラント層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aとシーラント層4を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。
【0123】
コーティング層6を設ける場合には、外層側基材層1の金属層3とは反対側の表面にコーティング層6を積層する。コーティング層6は、例えばコーティング層6を形成する上記の樹脂を外層側基材層1の表面に塗布して形成する。なお、外層側基材層1の表面に金属層3を積層する工程と、外層側基材層1の表面にコーティング層6を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、外層側基材層1の表面にコーティング層6を形成した後、外層側基材層1のコーティング層6とは反対側の表面に金属層3を形成してもよい。
【0124】
上記のようにして、必要に応じて設けられるコーティング層6/外層側基材層1/接着層2/必要に応じて表面が化成処理された金属層3/必要に応じて設けられる接着層5/シーラント層4からなる積層体が形成されるが、接着層2及び必要に応じて設けられる接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜250℃で1〜5分間が挙げられる。
【0125】
本発明の電池用包装材において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成型)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
【0126】
<電池用容器>
本発明の電池用容器は、前述の電池用包装材を用い、外層側基材層1が凸面を構成し、シーラント層4が凹面を構成するように成型して得ることができる。
なお凹部の成型方法としては、以下のような方法がある。
・加熱圧空成型法:電池用包装材を高温、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型に挟み、加熱軟化させながらエアーを供給して凹部を形成する方法。
・プレヒーター平板式圧空成型法:電池用包装材を加熱軟化させた後、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型に挟み、エアーを供給して凹部を形成する方法。
・ドラム式真空成型法:電池用包装材を加熱ドラムで部分的に加熱軟化後、ポケット形状の凹部を有するドラムの該凹部を真空引きして凹部を成型する方法。
・ピン成型法:底材シートを加熱軟化後ポケット形状の凹凸金型で圧着する方法。
・プレヒータープラグアシスト圧空成型法:電池用包装材を加熱軟化させた後、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型に挟み、エアーを供給して凹部を形成する方法であって、成型の際に、凸形状のプラグを上昇及び降下をさせて成型を補助する方法。
【0127】
なかでも、加熱真空成型法であるプレヒータープラグアシスト圧空成型法が、成型後の底材の肉厚が均一に得られるという点で好ましいものである。
【0128】
(電池用包装材の用途)
本発明の電池用包装材は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容する電池用容器として使用される。
【0129】
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
【0130】
本発明の電池用包装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池に使用することができる。本発明の電池用包装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【0131】
<積層体、成型体のその他の用途>
本発明の積層体、積層体の成型体の用途は電池用包装材に限定されない。本発明の積層体は、食品や医薬品、日用品の保護を目的とする多層包装材料として使用してもよい。多層包装材料として使用する場合には、内容物や使用環境、使用形態に応じてその層構成は変化し得る。
【0132】
包装材料の一形態としては、積層体のシーラントフィルムの面を対向して重ね合わせた後、その周辺端部をヒートシールして得られるものが挙げられる。製袋方法としては、本発明の積層体を折り曲げるか、あるいは重ねあわせてその内層の面(シーラントフィルムの面)を対向させ、その周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他のヒートシール型等の形態によりヒートシールする方法が挙げられる。本発明の包装材は内容物や使用環境、使用形態に応じて種々の形態をとり得る。自立性包装材(スタンディングパウチ)等も可能である。ヒートシールの方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0133】
包装材料の他の形態としては、ブリスターパック(プレススルーパッケージやPTPとも称される)が挙げられる。ブリスターパックは、一つまたは複数の収納部が形成された積層体と、カバーフィルムとが接合されることで収納部を密封する。本発明の積層体は成型性に優れることから収納部を形成する積層体として用いてもよいし、カバーフィルムとして用いてもよい。
【0134】
本発明は包装材以外の用途に用いることもでき、一例として加飾成型シートの基材が挙げられるがこれに限定されない。成型性、耐熱性、耐湿熱性のいずれかまたは複数の機能が必要とされる用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0135】
以下、本発明を具体的な合成例、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
【0136】
<ポリエステルポリオールの調整>
(合成例1) ポリエステルポリオール(A1−1)の合成
テレフタル酸410部、イソフタル酸66部、アジピン酸173部、シクロヘキサンジメタノール238部、1,4−ブタンジオール116部、1,6−ヘキサンジオール142部を用い、定法に従いポリエステルポリオールを合成した。得られたポリエステルポリオール(A1−1)は結晶性を有し、数平均分子量(Mn)が10,000、ガラス転移温度(Tg)が2℃、融点が115℃、融解熱量(ΔH)が9.9J/g、水酸基価が11mgKOH/g、酸価が1.7mgKOH/gであった。
【0137】
(合成例2) ポリエステルポリオール(A1−2)の合成
テレフタル酸411部、イソフタル酸66部、アジピン酸177部、シクロヘキサンジメタノール248部、1,4−ブタンジオール116部、1,6−ヘキサンジオール129部を用い、定法に従いポリエステルポリオールを合成した。得られたポリエステルポリオール(A1−2)は結晶性を有し、数平均分子量(Mn)が22,000、ガラス転移温度(Tg)が4℃、融点が141℃、融解熱量(ΔH)が0.49J/g、水酸基価が4mgKOH/g、酸価が2.3mgKOH/gであった。
【0138】
(合成例3) ポリエステルポリオール(A1−3)の合成
テレフタル酸415部、イソフタル酸68部、アジピン酸180部、シクロヘキサンジメタノール192部、1,4−ブタンジオール146部、1,6−ヘキサンジオール146部を用い、定法に従いポリエステルポリオールを合成した。得られたポリエステルポリオール(A1−3)は結晶性を有し、数平均分子量(Mn)が20,000、ガラス転移温度(Tg)が−2℃、融点が133℃、融解熱量(ΔH)が0.30J/g、水酸基価が5mgKOH/g、酸価が6.7mgKOH/gであった。
【0139】
(合成例4) ポリエステルポリオール(A1−4)の合成
テレフタル酸395部、イソフタル酸70部、アジピン酸176部、シクロヘキサンジメタノール244部、1,4−ブタンジオール109部、1,6−ヘキサンジオール133部、トリメチロールプロパン17部を用い、定法に従いポリエステルポリオールを合成した。得られたポリエステルポリオール(A1−4)は結晶性を有し、数平均分子量(Mn)が4,400、ガラス転移温度(Tg)が−3℃、融点が116℃、融解熱量(ΔH)が5.7J/g、水酸基価が25mgKOH/g、酸価が1.6mgKOH/gであった。
【0140】
(合成例5) ポリエステルポリオール(A1’−1)の合成
テレフタル酸274部、イソフタル酸157部、アジピン酸310部、1,4−ブタンジオール429部を用い、定法に従いポリエステルポリオールを合成した。得られたポリエステルポリオール(A1’−1)は結晶性を有し、数平均分子量(Mn)が30,000、ガラス転移温度(Tg)が−26℃、融点が85℃融解熱量(ΔH)が13.3J/g、水酸基価が8mgKOH/g、酸価が2.1mgKOH/gであった。
【0141】
(合成例4) ポリエステルポリオール(A1’−2)の合成
テレフタル酸170部、イソフタル酸395部、無水トリメリット酸10部、1,6−ヘキサンジオール369部、ネオペンチルグリコール54部を用い、定法に従いポリエステルポリオールを合成した。得られたポリエステルポリオール(A1’−2)は非晶性であり、数平均分子量(Mn)が6,200、ガラス転移温度(Tg)が7℃、水酸基価が22mgKOH/g、酸価が0.7mgKOH/gであった。
【0142】
(合成例6) ポリエステルポリオール(A2−1)の合成
アジピン酸438部、1,2−プロピレングリコール312部を用い、定法に従いポリエステルポリオールを合成した。得られたポリエステルポリオール(A2−1)は非晶性であり、数平均分子量(Mn)が3,100、ガラス転移温度(Tg)が−50℃、水酸基価が25mgKOH/g、酸価が2mgKOH/gであった。
【0143】
ポリエステルポリオールの物性は以下のようにして測定した。
(分子量測定法)
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8320GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel 4000HXL、TSKgel 3000HXL、TSKgel 2000HXL、TSKgel 1000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0144】
(ガラス転移温度測定法)
試料5mgを、DSCを用いて、30mL/minの窒素気流下で室温から10℃/minで200℃まで昇温した後、10℃/minで−80℃まで冷却、再び150℃まで10℃/minで昇温してDSC曲線を測定した。二度目の昇温工程で観測される測定結果において、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点をガラス転移点とし、このときの温度をガラス転移温度とした。
【0145】
(融点測定法)
ガラス転移温度測定法と同様にしてDSC曲線を測定し、2度目の昇温工程で観測される吸熱曲線の最大ピーク温度を融点とした。
【0146】
(融解熱量)
ガラス転移温度測定法と同様にしてDSC曲線を測定し、2度目の昇温工程で観測される吸熱曲線の最大ピークとベースラインに囲まれた部分の面積がから算出した。
【0147】
(酸価)
試料5.0gを精秤し、テトラヒドロフラン(TFF)30mLを加えて溶解させ、0.1mol/L水酸化カリウム溶液(メタノール性)を用いて滴定した。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。測定結果は、試料1gを中和するために要した水酸化カリウムの量に換算し、単位はmgKOH/gとした。
【0148】
(水酸基価)
試料にアセチル化剤5mlを加え、密閉して60℃で15分間加熱した。0.5mol/Lのジ−n−ブチルアミンのトルエン溶液20mlを加えた後、流水で冷却した。0.5mol/Lの塩酸アルコール溶液で滴定した。並行して空試験を行い、試料を用いた滴定結果との比較から試料1g中に含まれる水酸基価と当量の水酸化カリウムのmg数を求めた。
なおアセチル化剤としては4−ジメチルアミノピリジン1gに無水酢酸15mlを加え、トルエンで全量を100mlとしたものを用い、指示薬にはブロモフェノールブルーを用いた。
【0149】
<接着剤の調整>
(実施例1)
ポリエステルポリオール(A1−1)にKBM−403(信越化学社製のシランカップリング剤、不揮発分:100%)を加え、KBM−403が完全溶解するまで良く攪拌した。ここに、デスモジュールL−75(住化コベストロウレタン株式会社製、TDIアダクト体、不揮発分75%)を加え、さらに不揮発分が25%になるように酢酸エチルを加えて良く攪拌させて、実施例1の接着剤を作製した。実施例1の接着剤における各成分の配合量(固形分)を表1に示す。
【0150】
(実施例2)〜(実施例5)
接着剤の調整に用いる材料、配合を表1に記載の値に調整した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜実施例5の接着剤を製造した。
(実施例6)
接着剤の調整に用いる材料、配合を表2に記載の値に調整した以外は実施例1と同様にして実施例6の接着剤を製造した。
(比較例1)〜(比較例2)
接着剤の調整に用いる材料、配合を表1に記載の値に調整した以外は実施例1と同様にして、比較例1、比較例2の接着剤を製造した。
(比較例3)
接着剤の調整に用いる材料、配合を表2に記載の値に調整した以外は実施例1と同様にして比較例3の接着剤を製造した。
表1、2におけるその他の化合物は以下の通りである。
BYK−051N:BYK−Chemie GmbH製、消泡剤
【0151】
<電池用包装材の製造1 図2の構成>
(実施例1)
金属層3として厚さ40μmのアルミニウム箔のマット面に、接着層2として実施例1の接着剤を塗布量:4g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、外層側基材層1として厚さ25μmの延伸ポリアミドフィルムを積層した。
次に、得られた積層フィルムの金属層3のアルミニウム箔の光沢面に、接着層5用の接着剤を塗布量:4g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、シーラント層4として厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、その後、60℃、5日間の硬化(エージング)を行い、接着剤を硬化させてラミネート物を得た。
【0152】
(実施例2)〜(実施例5)
実施例1と同様にして、接着層2として実施例2〜5の接着剤を用いて、実施例2〜5の電池用包装材を得た。
【0153】
(比較例1)〜(比較例2)
実施例1と同様にして、接着層2として比較例1〜2の接着剤を用いて、比較例1〜2の電池用包装材を得た。
【0154】
<電池用包装材の製造2>
(実施例6)
厚さ40μmのアルミニウム箔に実施例6で作成した接着剤を乾燥塗布量5g/mとなるようにバーコーターで塗布し、80℃で1分乾燥させた後、厚さ40μmのCPPフィルムと100℃で貼り合せた。その後40℃で5日間の硬化(エージング)を行い、実施例6の積層体を得た。
(比較例3)
比較例3の接着剤を用いた以外は実施例6と同様にして比較例3の積層体を得た。
【0155】
電池用包装材の評価は、以下の様に行った。結果を表1、2に示す。
<接着強度>
株式会社島津製作所の「オートグラフAGS−J」を使用し、常温、剥離速度:50mm/min、剥離幅:15mm、剥離形態:180°剥離の条件で、実施例1〜5、比較例1、2の場合は外層側基材層1と金属層3の界面の接着強度を、実施例6、比較例3の場合はアルミニウム箔とCPPフィルムの界面の接着強度を評価した。数値が高いほど接着剤として好適であることを示す。
【0156】
<成型性>
実施例または比較例の電池用包装材を60×60mmの大きさに切断し、ブランク(被成型材、素材)とした。株式会社山岡製作所の「1ton卓上サーボプレス(SBN−1000)」を使用し、前記ブランクに対し、アルミニウム箔マット面が凸側になるようにして、ストローク速度:3mm/秒で成型高さフリーのストレート金型にて成型高さを4.5mmから7.0mmまで変えて張り出し成型を行い、アルミニウム箔の破断や、各層間の浮きが発生しない、最大の成型高さにより成型性を評価した。
【0157】
なお、使用した金型のポンチ形状は、一辺30mmの正方形、コーナーR2mm、ポンチ肩R1mm、使用した金型のダイス孔形状は一片34mmの正方形、ダイス孔コーナーR2mm、ダイス孔肩R:1mmであり、ポンチとダイス孔とのクリアランスは片側0.3mmである。前記クリアランスにより成型高さに応じた傾斜が発生する。
〇:6.0mm 以上(実用上優れる)
△:5.0mm (実用域)
×:4.5mm でアルミニウム箔の破断や、各層間の浮きが発生
【0158】
<耐熱性>
実施例または比較例の電池用包装材を60×60mmの大きさに切断し、株式会社山岡製作所の「1ton卓上サーボプレス(SBN−1000)」を使用し、アルミニウム箔マット面が外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて成型高さ5.0mmにて張り出し成型を行った。得られた30mm角型トレイのフランジ部に側壁部に接するように190℃3秒ヒートシールバーを当て、フランジ部と側壁部との境界部近傍における外観を確認し、延伸ポリアミドフィルムとアルミニウム箔との間に浮きが発生していないかを評価した。
○:浮きなし(実用上優れる)
×:浮き発生
【0159】
<耐湿熱性>
実施例または比較例の電池用包装材を60×60mmの大きさに切断し、株式会社山岡製作所の「1ton卓上サーボプレス(SBN−1000)」を使用し、アルミニウム箔マット面が外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて成型高さ5.0mmにて張り出し成型を行った。得られた30mm角型のトレイを、85℃、85%RH雰囲気下の恒温恒湿槽に入れ、48時間静置した。恒温恒湿槽から前記トレイを取り出し、フランジ部と側壁部との境界部近傍における外観を確認し、延伸ポリアミドフィルムとアルミニウム箔との間に浮きが発生していないかを評価した。
○:浮きなし(実用上優れる)
×:浮き発生
【0160】
<耐電解質性>
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(質量%)混合液35gに実施例または比較例の積層体を60℃で14日間浸漬させた。浸漬後の積層体を乾燥させた後、接着強度を測定し、浸漬前後の接着強度の保持率から3段階で評価した。
〇:80%以上
△:60%以上80%未満
×:60%未満
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
本結果より、本発明の接着剤を使用することで、優れた成型性を有し、電池素子を封止するために行うシーラント層同士の熱融着後、さらには高温高湿下での長期耐久性試験後においても層間の接着強度の低下がなく、層間の浮きなどの外観不良が抑制された電池用包装材を得ることができることが明らかである。
【符号の説明】
【0164】
1:外層側基材層
2:接着層
3:金属層
4:シーラント層
5:接着層
【要約】
成型性、耐熱性、耐湿熱性に優れた2液型接着剤、当該2液型接着剤を用いて得られる積層体、成型体、包装材を提供する。
結晶性ポリエステルポリオール(A1)を含むポリオール組成物(A)と、イソシアネート化合物(B)を含むポリイソシアネート組成物(B)と、を含み、結晶性ポリエステルポリオール(A1)のガラス転移温度が−20℃以上10℃以下であり、融点が80℃以上160℃以下であり、数平均分子量が2,000以上30,000以下であることを特徴とする2液型接着剤。
図1
図2