(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な融着接続機を用いた光ファイバテープ心線同士の融着は以下のような手順で行われる。まず、光ファイバテープ心線をセットした光ファイバ保持部材を対向させて融着接続機にセットする。なお、光ファイバテープ心線の先端部は、所定の長さだけ各光ファイバ素線の樹脂被覆が剥離され、ガラスファイバが露出する。
【0007】
次に、融着接続機の風防カバーを閉じるとそれぞれの光ファイバ保持部材が接近する。これにより、対向して配置されるそれぞれの光ファイバ素線(ガラスファイバ)同士が突き合わさる。
【0008】
この状態で、対向配置された光ファイバ素線の端部を放電により溶融させる。また、端部が溶融している状態で対向する光ファイバ素線同士をわずかに押し込み、両者を融着接続する。以上により、一対の光ファイバテープ心線の各光ファイバ素線同士が融着接続される。
【0009】
ここで、光ファイバ素線を一括被覆した光ファイバテープ心線の場合には、融着接続時に問題は起こらないが、前述した間欠的に接着された光ファイバテープ心線(間欠テープ心線)では、接続損失が大きくなることがある。
【0010】
発明者らは、この原因の一つとして、光ファイバ素線同士を突き合せ、押し込む際の光ファイバ素線の撓みが問題であることを見出した。すなわち、間欠テープ心線の場合には、光ファイバ素線を移動する際に、光ファイバ素線の撓みが大きくなる場合がある。この結果、光ファイバ素線の先端が規定の位置に移動せず、または、光ファイバ素線同士の押し込みが不十分となることが原因であることを見出した。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、間欠テープ心線同士の融着接続時に、光ファイバ素線の撓みを防止し、接続損失の小さな光ファイバテープ心線の保持構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述した目的を達するために第1の発明は、光ファイバテープ心線を光ファイバ保持部材にセットする方法であって、前記光ファイバテープ心線は、隣り合う光ファイバ素線同士が、接着部で接着され、前記接着部は、光ファイバテープ心線の長手方向に所定の間隔で千鳥状に形成され、前記光ファイバ保持部材は、前記光ファイバテープ心線を配置する本体部と、前記本体部に開閉可能な蓋部と、前記蓋部の内面に設けられ、前記光ファイバテープ心線を押さえる押さえ部材と、を具備し、前記光ファイバテープ心線を前記本体部に配置して、前記蓋部を閉じ、前記押さえ部材で前記光ファイバテープ心線を押圧した状態において、前記押さえ部材の最先端部において前記光ファイバテープ心線の幅方向で、全ての前記光ファイバ素線が、少なくとも一方の隣り合う他の前記光ファイバ素線と前記接着部で接着されているともに、前記押さえ部材の最先端部から、前記光ファイバ素線の被覆部が除去されたガラスファイバまでの間の少なくとも一部において、前記光ファイバテープ心線の幅方向で、全ての前記光ファイバ素線が、少なくとも一方の隣り合う他の前記光ファイバ素線と前記接着部で接着されていて、前記押さえ部材の最先端部から、前記光ファイバ素線の被覆部が除去されたガラスファイバまでの間のすべての接着部が長手方向に連続していて、前記光ファイバテープ心線は、前記光ファイバテープ心線の幅方向で、全ての前記光ファイバ素線が、少なくとも一方の隣り合う他の前記光ファイバ素線と前記接着部で接着されている、光ファイバテープ心線の第1の範囲を把握することが可能なマークが、前記光ファイバ素線の前記第1の範囲の少なくとも一部の外面に設けられ、前記押さえ部材で前記光ファイバテープ心線を押さえる際に、前記マークが前記押さえ部材の先端から前記光ファイバ素線の被覆部が除去されたガラスファイバまでの間に位置するように、前記光ファイバテープ心線を前記光ファイバ保持部材にセット
することを特徴とする光ファイバテープ心線の光ファイバ保持部材へのセット方法である。
【0019】
第2の発明は、光ファイバテープ心線を光ファイバ保持部材にセットする方法であって、前記光ファイバテープ心線は、隣り合う光ファイバ素線同士が、接着部で接着され、前記接着部は、光ファイバテープ心線の長手方向に所定の間隔で千鳥状に形成され、前記光ファイバ保持部材は、前記光ファイバテープ心線を配置する本体部と、前記本体部に開閉可能な蓋部と、前記蓋部の内面に設けられ、前記光ファイバテープ心線を押さえる押さえ部材と、を具備し、前記光ファイバテープ心線を前記本体部に配置して、前記蓋部を閉じ、前記押さえ部材で前記光ファイバテープ心線を押圧した状態において、前記押さえ部材の最先端部において前記光ファイバテープ心線の幅方向で、全ての前記光ファイバ素線が、少なくとも一方の隣り合う他の前記光ファイバ素線と前記接着部で接着されているともに、前記押さえ部材の最先端部から、前記光ファイバ素線の被覆部が除去されたガラスファイバまでの間の少なくとも一部において、前記光ファイバテープ心線の幅方向で、全ての前記光ファイバ素線が、少なくとも一方の隣り合う他の前記光ファイバ素線と前記接着部で接着されていて、前記押さえ部材の最先端部から、前記光ファイバ素線の被覆部が除去されたガラスファイバまでの間のすべての接着部が長手方向に連続していて、前記光ファイバテープ心線は、前記光ファイバテープ心線の幅方向で、少なくとも一部の前記光ファイバ素線が、隣り合う他の前記光ファイバ素線と接着されていない、光ファイバテープ心線の第2の範囲を把握することが可能なマークが、前記光ファイバ素線の前記第2の範囲の少なくとも一部の外面に設けられ、前記押さえ部材で前記光ファイバテープ心線を押さえる際に、前記マークが前記押さえ部材に完全に隠れるように、前記光ファイバテープ心線を前記光ファイバ保持部材にセット
することを特徴とする光ファイバテープ心線の光ファイバ保持部材へのセット方法である。
【0020】
第1または第2の発明によれば、光ファイバ保持部材の押さえ部材の最先端部から光ファイバ素線の被覆部が除去されたガラスファイバまでの間の全長にわたって、光ファイバ素線が単独に配置されることがない。このため、光ファイバ素線の剛性の弱い部分を少なくすることができ、この部位での光ファイバ素線の撓みを抑制することができる。この結果、光ファイバ素線同士の接続時に、光ファイバ素線の撓みに起因する軸ずれなどを抑制することができる。
【0021】
特に、押さえ部材の最先端部からガラスファイバまでの間の全長に対して、全ての光ファイバ素線が、隣り合う他の光ファイバ素線と接着部で接着されていれば、その効果が大きい。
【0022】
また、
特に第1の発明によれば、全ての光ファイバ素線が、隣り合う他の光ファイバ素線と接着部で接着されている位置を把握することが可能なマークを設けることで、容易に、押さえ部材の先端からガラスファイバまでの間に接着部を位置させることができる。
【0023】
また、
特に第2の発明によれば、少なくとも一部の光ファイバ素線が、隣り合う他の光ファイバ素線と接着されていない非接着部が形成される位置を把握することが可能なマークを設けることで、容易に、押さえ部材の先端からガラスファイバまでの間に接着部を位置させることができる。
【0024】
第
3の発明は、複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線であって、隣り合う光ファイバ素線同士が、接着部で接着され、前記接着部は、光ファイバテープ心線の長手方向に所定の間隔で形成され、光ファイバテープ心線の幅方向で、全ての前記光ファイバ素線が、隣り合う他の前記光ファイバ素線と前記接着部で接着されている
、光ファイバテープ心線の
第1の範
囲を把握することが可能なマークが
、前記光ファイバ素線の
前記第1の範囲の少なくとも一部の外面に設けられることを特徴とする光ファイバテープ心線である。
第4の発明は、複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線であって、隣り合う光ファイバ素線同士が、接着部で接着され、前記接着部は、光ファイバテープ心線の長手方向に所定の間隔で形成され、光ファイバテープ心線の幅方向で、少なくとも一部の前記光ファイバ素線が、隣り合う他の前記光ファイバ素線と接着されていない、光ファイバテープ心線の第2の範囲を把握することが可能なマークが、前記光ファイバ素線の前記第2の範囲の少なくとも一部の外面に設けられることを特徴とする光ファイバテープ心線である。
【0025】
第
5の発明は、複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線であって、隣り合う光ファイバ素線同士が、接着部で接着され、前記接着部は、光ファイバテープ心線の長手方向に所定の間隔で形成され、光ファイバテープ心線の幅方向で、全ての前記光ファイバ素線が、隣り合う他の前記光ファイバ素線と前記接着部で接着されている
、光ファイバテープ心線の
第1の範囲を把握することが可能なマークが
、前記光ファイバ素線の
前記第1の範囲の少なくとも一部の外面に設けられ、前記接着部は、隣り合う一対の前記光ファイバ素線同士を接着し、光ファイバテープ心線の幅方向に隣り合う前記接着部同士が光ファイバテープ心線の長手方向で互いに千鳥状に形成され、前記マークは、光ファイバテープ心線の幅方向の両端部の前記光ファイバ素線に前記接着部が形成される範
囲を示すものであることを特徴とする光ファイバテープ心線である。
第6の発明は、複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線であって、隣り合う光ファイバ素線同士が、接着部で接着され、前記接着部は、光ファイバテープ心線の長手方向に所定の間隔で形成され、光ファイバテープ心線の幅方向で、少なくとも一部の前記光ファイバ素線が、隣り合う他の前記光ファイバ素線と接着されていない、光ファイバテープ心線の第2の範囲を把握することが可能なマークが、前記光ファイバ素線の前記第2の範囲の少なくとも一部の外面に設けられ、前記接着部は、隣り合う一対の前記光ファイバ素線同士を接着し、光ファイバテープ心線の幅方向に隣り合う前記接着部同士が光ファイバテープ心線の長手方向で互いに千鳥状に形成され、前記マークは、光ファイバテープ心線の幅方向の両端部の前記光ファイバ素線に前記接着部が形成されず、非接着部が形成される範囲を示すものであることを特徴とする光ファイバテープ心線である。
【0026】
第
3から第6の発明
のいずれかによれば、光ファイバ保持部材へセットする際に、押さえ部材で押圧する光ファイバテープ心線の位置を容易に把握することができる。このため、容易に、押さえ部材の先端からガラスファイバまでの間に接着部を位置させることができる。
【0027】
第
5または第6の発明によれば、接着部が千鳥状に配置されるので、確実に光ファイバテープ心線を柔軟に変形(丸める、折りたたむ)させることができ、ケーブルの細径・高密度化にも有効である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、間欠テープ心線同士の融着接続時に、光ファイバ素線の撓みを防止し、接続損失の小さな光ファイバテープ心線の保持構造等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、光ファイバ保持部材10を示す平面図である。光ファイバ保持部材10は、本体部1と、蓋部3と、押さえ部材7等を具備する。
【0031】
本体部1は、光ファイバテープ心線が配置される部位であり、略直方体の部材である。本体部1の上面(蓋部3との対向面)には、光ファイバテープ心線が配置される溝5が形成される。また、本体部1の幅方向の一方の側方には、本体部1に対してヒンジにより開閉可能な蓋部3が設けられる。
【0032】
本体部1、蓋部3は例えば金属製である。本体部1の蓋部3との対向面には磁石9が配置される。蓋部3を閉じると、磁石9によって、蓋部3が本体部1に対して閉じた状態を維持することができる。なお、蓋部3は、閉じた状態で蓋部3の裏面と本体部1の上面とが略平行となるように調整される。
【0033】
蓋部3の内面(本体部1との対向面)には、押さえ部材7が長手方向にわたって形成される。押さえ部材7は、蓋部3の内面から所定の量だけ突出する。押さえ部材7は、本体部1上に配置される光ファイバテープ心線を押圧して保持する部材である。なお、押さえ部材7は、例えば樹脂製等であり、光ファイバテープ心線を傷つけない部材で構成される。
【0034】
次に、光ファイバテープ心線11について説明する。
図2は、光ファイバテープ心線11を示す斜視図である。光ファイバテープ心線11は、複数の光ファイバ素線13a、13b、13c、13dが並列に接着されて構成される。なお、以下の説明において、4本の光ファイバ素線13a、13b、13c、13dにより構成される例を示すが、本発明はこれに限られず、複数の光ファイバ素線からなる光ファイバテープ心線であれば適用可能である。
【0035】
光ファイバテープ心線11は、隣り合う光ファイバ素線13a、13b、13c、13d同士が所定の間隔をあけて間欠で接着部15により接着される。すなわち、光ファイバテープ心線11は、隣り合う光ファイバ素線13a、13b、13c、13d同士が、接着部15で接着され、接着部15は、光ファイバテープ心線11の長手方向に所定の間隔で形成される。
【0036】
また、光ファイバテープ心線11の幅方向に隣り合う接着部15は、光ファイバテープ心線11の長手方向に対してずれて配置される。すなわち、接着部15は、隣り合う一対の光ファイバ素線同士を接着し、光ファイバテープ心線11の幅方向に隣り合う接着部15同士が光ファイバテープ心線11の長手方向で互いに千鳥状に形成される。
【0037】
例えば、光ファイバ素線13b、13c間の接着部15は、隣り合う光ファイバ素線13a、13b間および光ファイバ素線13c、13d間の接着部15に対して、光ファイバテープ心線11の長手方向に対して略半ピッチずれて、同一ピッチで形成される。したがって、光ファイバ素線13a、13b間の接着位置と、光ファイバ素線13c、13d間の接着位置とは同一位置となる。
【0038】
なお、接着部15の位置は、図示した例には限られず、長手方向に対して断続的に接着部15が形成されれば、千鳥状でなくてもよい。但し、両端の一対の光ファイバ素線同士(光ファイバ素線13a、13b同士および光ファイバ素線13c、13d同士)の接着部15の位置が、重なり合うことが望ましい。
【0039】
次に、光ファイバテープ心線11の光ファイバ保持部材10へのセット方法について説明する。
図3は、光ファイバ保持部材10に光ファイバテープ心線11を配置して、蓋部3を閉じた状態を示す平面図(蓋部3の透視図)である。光ファイバテープ心線11は、本体部1の溝5に沿って配置される。蓋部3を閉じると、光ファイバテープ心線11は、蓋部3の押さえ部材7によって押圧される。
【0040】
この状態で、光ファイバ保持部材10の先端側から突出する光ファイバテープ心線11(各光ファイバ素線)の所定長さの樹脂被覆部を剥離除去し、ガラスファイバ19を露出させる。さらに、ガラスファイバ19の先端部を所定長さに切断する。このようにして得られた一対の光ファイバ保持構造を対向するように融着接続機に配置して、融着接続が行われる。
【0041】
なお、光ファイバテープ心線11の押さえ部材7によって抑えられる位置を、押圧部17とする。また、各光ファイバ素線において、隣り合う他の光ファイバ素線と接着されていない部位(接着部15以外)を非接着部とする。
【0042】
次に、光ファイバテープ心線11を光ファイバ保持部材10で保持した、光ファイバ保持構造について詳細に説明する。
図4(a)は、光ファイバ保持構造20を示す図である。なお、以下の図においては、光ファイバテープ心線11を本体部1(溝5)に配置して、蓋部3を閉じ、押さえ部材7で光ファイバテープ心線11を押圧した状態を示すが、光ファイバ保持部材10の図示を省略する。
【0043】
本実施形態では、押圧部17(押さえ部材7)の最先端部と、各光ファイバ素線の被覆部が除去されたガラスファイバ19までの間(図中範囲A)の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線が、隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されている。
【0044】
具体的には、図中範囲Aにおいて、全長にわたって、光ファイバ素線13aと光ファイバ素線13bとが接着されており、光ファイバ素線13cと光ファイバ素線13dとが接着されている。すなわち、図中範囲Aにおいて、各光ファイバ素線が単独では存在しない。
【0045】
このようになるように、押圧部17の位置を決めることで、少なくとも、図中範囲Aにおいて、各光ファイバ素線の剛性を高くすることができる。このため、各光ファイバ素線の撓みを抑制することができる。
【0046】
一方、
図4(b)は、光ファイバ保持構造20aを示す図である。光ファイバ保持構造20aでは、押圧部17(押さえ部材7)の最先端部と、各光ファイバ素線の被覆部が除去されたガラスファイバ19までの間(図中範囲B)の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、少なくとも一部の光ファイバ素線13a、13dが、隣り合う他の光ファイバ素線13b、13cと接着部15で接着されていない。
【0047】
具体的には、図中範囲Bにおいて、全長にわたって、光ファイバ素線13bと光ファイバ素線13cとが接着されており、光ファイバ素線13a、13dは、隣り合う光ファイバ素線と接着されずに単独で存在する。
【0048】
このように押圧部17の位置が決められると、図中範囲Bにおいて、光ファイバ素線13a、13dが、隣り合う光ファイバ素線13b、13cと接着された場合と比較して、光ファイバ素線13a、13dの剛性が低くなる。このため、光ファイバ素線13a、13dが撓みやすくなり、前述した融着接続時における軸ずれや光ファイバ素線同士の押し込みが不十分となるおそれがある。この結果、接続部の接続損失が増大するおそれがある。
【0049】
なお、本発明では、
図4(c)に示す光ファイバ保持構造20bとしてもよい。光ファイバ保持構造20bは、押圧部17(押さえ部材7)の最先端部と、ガラスファイバ19までの間の少なくとも一部(図中範囲C)に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線が、隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されている。
【0050】
具体的には、図中範囲Cにおいては、光ファイバ素線13aと光ファイバ素線13bとが接着されており、光ファイバ素線13cと光ファイバ素線13dとが接着されている。すなわち、図中範囲Cにおいて、各光ファイバ素線が単独では存在しない。
【0051】
なお、この場合には、押圧部17(押さえ部材7)の最先端部と、各光ファイバ素線の被覆部が除去されたガラスファイバ19までの間に、部分的に、光ファイバ素線13a、13dが、隣り合う光ファイバ素線と接着されずに単独で存在する。しかし、この場合でも、少なくとも、図中範囲Cにおいて、各光ファイバ素線の剛性を高くすることができる。したがって、光ファイバ保持構造20aと比較して、各光ファイバ素線の撓みを抑制することができる。
【0052】
以上、本実施の形態によれば、光ファイバテープ心線11を光ファイバ保持部材10にセットした際に、押圧部17(押さえ部材7)の最先端部と、ガラスファイバ19までの間の少なくとも一部において、少なくとも一方に隣り合う光ファイバ素線が接着される。このため、押さえ部材7によって押圧されている部位から露出する各光ファイバ素線の先端部の剛性が低くなることを抑制することができる。したがって、光ファイバテープ心線同士の接続時に、光ファイバ素線の撓みを抑制することができる。この結果、光ファイバ素線の軸ずれや、押込み不足などによる接続部の接続損失の増大を抑制することができる。
【0053】
特に、押圧部17(押さえ部材7)の最先端部とガラスファイバ19までの間の全長に対して、少なくとも一方に隣り合う光ファイバ素線同士が接着されることで、撓み抑制の効果が大きい。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図5(a)は、光ファイバ保持構造20cを示す図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能を奏する構成については、
図1〜
図4と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0055】
本実施形態では、光ファイバテープ心線11に、マーク21(図中ハッチング部)が設けられる。マーク21は光ファイバ素線13a、13b、13c、13dの外面に設けられる。
【0056】
マーク21は、光ファイバテープ心線11の幅方向で、少なくとも一部の光ファイバ素線13a、13dが、隣り合う他の光ファイバ素線13b、13cと接着部15で接着されていない部位に設けられる。したがって、マーク21によって、光ファイバテープ心線11の一部の光ファイバ素線が単独で存在する長手方向位置(範囲)を把握することが可能である。具体的には、マーク21は、光ファイバテープ心線11の幅方向の両端部の光ファイバ素線13a、13dに接着部15が形成されず、非接着部が形成される範囲を示すものである。
【0057】
このような光ファイバテープ心線11を、マーク21が押さえ部材7に完全に隠れるように、蓋部3を閉じ、光ファイバテープ心線11を光ファイバ保持部材10にセットすることで、光ファイバ保持構造20cを得ることができる。
【0058】
このように、光ファイバ保持構造20cは、押さえ部材7の最先端部と、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線13a、13b、13c、13dが、少なくとも一方の隣り合う他の光ファイバ素線13a、13b、13c、13dと接着部15で接着される。すなわち、押さえ部材7の最先端部と、ガラスファイバ19までの間の全長に対して各光ファイバ素線が単独で存在することがない。
【0059】
なお、図示した例では、マーク21は、光ファイバ素線13a、13bおよび光ファイバ素線13c、13dがそれぞれ接着されてない範囲に形成したが、これには限られず。マーク21の一部が、光ファイバ素線13a、13bの接着部15および光ファイバ素線13c、13dの接着部15に多少かかってもよい。このようにすることで、押さえ部材7の端部位置と蓋部3の端部位置が異なる場合であっても、マーク21が蓋部3で完全に隠れるようにすることで、同様の光ファイバ保持構造20cを得ることができる。
【0060】
また、光ファイバ素線13a、13bの接着部15および光ファイバ素線13c、13dの接着部15の長手方向の中心線に対して、マーク21の形成範囲を線対称とすることで、光ファイバテープ心線11を反転して使用した際にも、同様の光ファイバ保持構造20cを得ることができる。
【0061】
以上、光ファイバ保持構造20cによれば、押さえ部材7で光ファイバテープ心線11を押さえる際に、マーク21が押さえ部材7に完全に隠れるようにすることで、光ファイバテープ心線11を光ファイバ保持部材10に容易にセットすることができる。
【0062】
なお、マークの形成範囲は、
図5(a)に示す例には限られない。例えば、
図5(b)に示す光ファイバ保持構造20dのように、光ファイバテープ心線11に、マーク21に代えてマーク21a(図中ハッチング部)を設けてもよい。マーク21aは光ファイバ素線13a、13b、13c、13dの外面に設けられる。
【0063】
マーク21aは、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線13a、13b、13c、13dが、少なくとも一方の隣り合う他の光ファイバ素線13a、13b、13c、13dと接着部15で接着されている部位に設けられる。したがって、マーク21aによって、光ファイバテープ心線11の各光ファイバ素線が単独で存在していない長手方向位置(範囲)を把握することが可能である。具体的には、マーク21aは、光ファイバテープ心線11の幅方向の両端部の光ファイバ素線13a、13dに接着部15が形成される範囲を示すものである。
【0064】
このような光ファイバテープ心線11を、マーク21aが押さえ部材7の先端からガラスファイバ19までの間に位置するように、蓋部3を閉じ、光ファイバテープ心線11を光ファイバ保持部材10にセットすることで、光ファイバ保持構造20dを得ることができる。
【0065】
このように、光ファイバ保持構造20dは、押さえ部材7の最先端部と、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線13a、13b、13c、13dが、少なくとも一方の隣り合う他の光ファイバ素線13a、13b、13c、13dと接着部15で接着される。すなわち、押さえ部材7の最先端部と、ガラスファイバ19までの間の全長に対して各光ファイバ素線が単独で存在することがない。
【0066】
なお、マーク21と同様に、光ファイバ素線13a、13bの接着部15および光ファイバ素線13c、13dの接着部15の長手方向の中心線に対して、マーク21aの形成範囲を線対称とすることで、光ファイバテープ心線11を反転して使用した際にも、同様の光ファイバ保持構造20dを得ることができる。
【0067】
以上、光ファイバ保持構造20dによれば、押さえ部材7で光ファイバテープ心線11を押さえる際に、マーク21aが押さえ部材7とガラスファイバ19の間に露出するようにすることで、光ファイバテープ心線11を光ファイバ保持部材10に容易にセットすることができる。
【0068】
また、マークの形成範囲は、
図5(a)、
図5(b)に示す例には限られない。例えば、
図5(c)に示す光ファイバ保持構造20eのように、光ファイバテープ心線11に、範囲を示すマーク21、21aに代えて、ライン状のマーク21b、21cを設けてもよい。マーク21b、21cは光ファイバ素線13a、13b、13c、13dの外面に幅方向に線状に設けられる。
【0069】
なお、マーク21bとマーク21cは、ラインの本数で区別する例を示したが、ラインの色や太さなど、マーク21bとマーク21cとを容易に識別できればよい。
【0070】
マーク21bは、光ファイバテープ心線11の幅方向で、少なくとも一部の光ファイバ素線13a、13dが、隣り合う他の光ファイバ素線13b、13cと接着部15で接着されていない部位の長手方向の端部に設けられる。したがって、マーク21bによって、光ファイバテープ心線11の一部の光ファイバ素線が単独で存在する長手方向位置(範囲)を把握することが可能である。具体的には、マーク21bは、光ファイバテープ心線11の幅方向の両端部の光ファイバ素線13a、13dに接着部15が形成されず、非接着部が形成される範囲を示すものである。
【0071】
また、マーク21cは、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線13a、13b、13c、13dが、少なくとも一方の隣り合う他の光ファイバ素線13a、13b、13c、13dと接着部15で接着されている部位に設けられる。したがって、マーク21cによって、光ファイバテープ心線11の各光ファイバ素線が単独で存在していない長手方向位置(範囲)を把握することが可能である。具体的には、マーク21cは、光ファイバテープ心線11の幅方向の両端部の光ファイバ素線13a、13dの接着部15において、例えば長手方向の中央に形成される。
【0072】
このような光ファイバテープ心線11を、マーク21bが押さえ部材7に完全に隠れ、マーク21cが押さえ部材7の先端からガラスファイバ19までの間に位置するように、蓋部3を閉じ、光ファイバテープ心線11を光ファイバ保持部材10にセットすることで、光ファイバ保持構造20eを得ることができる。
【0073】
このように、光ファイバ保持構造20eは、押さえ部材7の最先端部と、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線13a、13b、13c、13dが、少なくとも一方の隣り合う他の光ファイバ素線13a、13b、13c、13dと接着部15で接着される。すなわち、押さえ部材7の最先端部と、ガラスファイバ19までの間の全長に対して各光ファイバ素線が単独で存在することがない。
【0074】
なお、マーク21と同様に、光ファイバ素線13a、13bの接着部15および光ファイバ素線13c、13dの接着部15の長手方向の中心線(マーク21c)に対して、マーク21bの形成位置を線対称とすることで、光ファイバテープ心線11を反転して使用した際にも、同様の光ファイバ保持構造20eを得ることができる。
【0075】
以上、光ファイバ保持構造20eによれば、押さえ部材7で光ファイバテープ心線11を押さえる際に、マーク21bが押さえ部材7に完全に隠れ、マーク21cが押さえ部材7とガラスファイバ19の間に露出するようにすることで、光ファイバテープ心線11を光ファイバ保持部材10に容易にセットすることができる。
【実施例】
【0076】
次に、各光ファイバ保持構造を用いて光ファイバテープ心線同士を融着接続し、接続部の接続損失について評価した。光ファイバテープ心線11としては、0.25mmφの8心の間欠テープ心線を用いた。接着部は、
図2等に示すように千鳥状に形成した。
【0077】
光ファイバテープ心線11を、市販の光ファイバ保持部材で保持して光ファイバ保持構造を得た。この際、光ファイバ保持部材の押さえ部材と接着部の位置関係を変化させて、種々の光ファイバ保持構造を得た。光ファイバ保持構造については詳細を後述する。
【0078】
得られた光ファイバ保持構造の先端部の樹脂被覆を除去してガラスファイバを露出させ、ガラスファイバ所定長にカットした。一対の光ファイバ保持構造を市販の融着接続機へセットし、融着接続を行った。
【0079】
図6は、接続部の接続損失を測定する方法を示す図である。融着接続後の光ファイバテープ心線11に対し、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)を用い、一端から光を入射し、その反射光から接続部23の損失を測定した。
【0080】
図7(a)〜
図7(d)は、試験に供した各光ファイバ保持構造を示す図である。
図7(a)に示す光ファイバ保持構造30aは、押圧部17が、光ファイバ素線13a、13bの接着部15と、光ファイバ素線13c、13dの接着部15と、光ファイバ素線13e、13fの接着部15と、光ファイバ素線13g、13hの接着部15の部位に位置する。また、押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線13a〜13hが、少なくとも一方の隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されている。
【0081】
図7(b)に示す光ファイバ保持構造30bは、押圧部17が、光ファイバ素線13a、13bの接着部15と、光ファイバ素線13c、13dの接着部15と、光ファイバ素線13e、13fの接着部15と、光ファイバ素線13g、13hの接着部15から、光ファイバ素線13b、13cの接着部15と、光ファイバ素線13d、13eの接着部15と、光ファイバ素線13f、13gの接着部15の先端部までの範囲に位置する。この場合も、押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線13a〜13hが、少なくとも一方の隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されている。
【0082】
図7(c)に示す光ファイバ保持構造30cは、押圧部17が、光ファイバ素線13a、13bの接着部15と、光ファイバ素線13c、13dの接着部15と、光ファイバ素線13e、13fの接着部15と、光ファイバ素線13g、13hの接着部15から、光ファイバ素線13b、13cの接着部15と、光ファイバ素線13d、13eの接着部15と、光ファイバ素線13f、13gの接着部15まで、またがるよう位置する。この場合も、押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線13a〜13hが、少なくとも一方の隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されている。
【0083】
図7(d)に示す光ファイバ保持構造30dは、押圧部17が、光ファイバ素線13a、13bの接着部15と、光ファイバ素線13c、13dの接着部15と、光ファイバ素線13e、13fの接着部15と、光ファイバ素線13g、13hの接着部15の後端から、光ファイバ素線13b、13cの接着部15と、光ファイバ素線13d、13eの接着部15と、光ファイバ素線13f、13gの接着部15までの範囲に位置する。この場合も、押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線13a〜13hが、少なくとも一方の隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されている。
【0084】
一方、
図8(a)〜
図8(d)は、比較例として試験に供した各光ファイバ保持構造を示す図である。
図8(a)に示す光ファイバ保持構造30eは、押圧部17が、光ファイバ素線13b、13cの接着部15と、光ファイバ素線13d、13eの接着部15と、光ファイバ素線13f、13gの接着部15の部位に位置する。したがって、押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、一部の光ファイバ素線13a、13hが、隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されておらず、単独で存在する。
【0085】
図8(b)に示す光ファイバ保持構造30fは、押圧部17が、光ファイバ素線13b、13cの接着部15と、光ファイバ素線13d、13eの接着部15と、光ファイバ素線13f、13gの接着部15から、光ファイバ素線13a、13bの接着部15と、光ファイバ素線13c、13dの接着部15と、光ファイバ素線13e、13fの接着部15と、光ファイバ素線13g、13hの接着部15の先端までの範囲に位置する。この場合も、押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、一部の光ファイバ素線13a、13hが、隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されておらず、単独で存在する。
【0086】
図8(c)に示す光ファイバ保持構造30gは、押圧部17が、光ファイバ素線13b、13cの接着部15と、光ファイバ素線13d、13eの接着部15と、光ファイバ素線13f、13gの接着部15から、光ファイバ素線13a、13bの接着部15と、光ファイバ素線13c、13dの接着部15と、光ファイバ素線13e、13fの接着部15と、光ファイバ素線13g、13hの接着部15まで、またがるように位置する。この場合も、押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、一部の光ファイバ素線13a、13hが、隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されておらず、単独で存在する。
【0087】
図8(d)に示す光ファイバ保持構造30hは、押圧部17が、光ファイバ素線13b、13cの接着部15と、光ファイバ素線13d、13eの接着部15と、光ファイバ素線13f、13gの接着部15の後端から、光ファイバ素線13a、13bの接着部15と、光ファイバ素線13c、13dの接着部15と、光ファイバ素線13e、13fの接着部15と、光ファイバ素線13g、13hの接着部15までの範囲に位置する。この場合も、押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、一部の光ファイバ素線13a、13hが、隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されておらず、単独で存在する。
【0088】
それぞれの光ファイバ保持構造同士を接続して接続損失を測定し、0.2dB以上のものを×とし、0.2dB未満のものを○として評価した。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線が、少なくとも一方の隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されている光ファイバ保持構造30a〜30d同士の接続は、接続損失がすべて○であった。
【0091】
一方、押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、一部の光ファイバ素線13a、13hが、隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されておらず、単独で存在する光ファイバ保持構造30e〜30h同士の接続は、接続損失がすべて×であった。
【0092】
次に、他の光ファイバ保持構造同士を接続して接続損失を測定し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
接続対象の両者が光ファイバ保持構造30a〜30dのいずれかであり、押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、全ての光ファイバ素線が、少なくとも一方の隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されているものは接続損失がすべて○であった。
【0095】
一方、接続対象の少なくとも一方が、光ファイバ保持構造30e〜30hのいずれかであり、押圧部17の先端部から、ガラスファイバ19までの間の全長に対して、光ファイバテープ心線11の幅方向で、一部の光ファイバ素線13a、13hが、隣り合う他の光ファイバ素線と接着部15で接着されておらず、単独で存在するものは、接続損失がすべて×であった。
【0096】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、実用新案登録請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。