(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルミニウム製の素線の表面は、酸化被膜等の絶縁性皮膜を形成しやすいため、素線同士の電気的接続が確保し難くなり、その結果、電線の導電性能が不安定になる場合がある。このように、従来の電線の構造では、導電性能が不安定となるおそれがあり、導電性能の向上を図ることができる電線の構造が求められていた。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、導電性能の向上を図ることが可能な電線、端子付き電線及びワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る電線は、1本又は複数本の導電性の素線を備える電線であって、前記素線は、表面から内部に向かって凹んだ凹部を少なくとも1つ有していることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る電線において、前記凹部は、前記素線の延び方向に沿って延在している。
【0008】
本発明の一態様に係る電線において、前記素線の延び方向における前記素線の径の値以上の長さの前記素線の範囲において、前記凹部は延びている。
【0009】
本発明の一態様に係る電線において、前記凹部の深さは、前記素線の径の値の10%以上の値である。
【0010】
本発明の一態様に係る電線において、前記凹部の総数は、前記素線の総数の2倍以上である。
【0011】
本発明の一態様に係る電線において、前記凹部の総数は、19よりも多い。
【0012】
本発明の一態様に係る電線において、前記素線は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成されている。
【0013】
本発明の一態様に係る電線において、前記電線の延び方向に交差する断面における前記電線の前記素線から形成された導体の断面積は2mm
2以上である。
【0014】
本発明の一態様に係る電線において、前記素線を1本のみ備えている。
【0015】
本発明の一態様に係る電線において、前記素線の総数は、19以下である。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、端子と、前記電線と、を備え、前記電線は、前記端子に前記素線の径方向に圧縮されて挟持されて接続されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る端子付き電線において、前記端子によって挟持されている部分における前記電線の前記素線から形成された導体の圧縮率は、50〜80%である。
【0018】
本発明の一態様に係る端子付き電線において、前記端子は、前記電線を挟持する部分に複数の溝が形成されている。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤーハーネスは、上述の電線を備えていることを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤーハーネスは、上述の端子付き電線を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電線、端子付き電線及びワイヤーハーネスによれば、導電性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る電線の概略構成を示すための図であり、
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る電線の概略構成を示す斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)における凹部を示すための電線の平面図であり、
図1(c)は、
図1(a)における凹部を示すための電線の拡大斜視図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係る端子付き電線の概略構成を示すための図であり、
図2(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る端子付き電線における接続端子を示す斜視図であり、
図2(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る端子付き電線の斜視図であり、
図2(c)は、
図2(b)に示す端子付き電線の圧着部分の拡大断面図である。
【
図3】本発明の第3の実施の形態に係るワイヤーハーネスの概略構成を示すための図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る電線の第1の変形例を示すための電線の平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る電線の第2の変形例を示すための電線の平面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る電線の第3の変形例を示すための電線の平面図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る電線の第4の変形例を示すための図であり、
図7(a)は、本変形例に係る電線の平面図であり、
図7(b)は、本変形例に係る電線の拡大斜視図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係る電線の第5の変形例を示すための電線の拡大斜視図である。
【
図9】本発明の第4の実施の形態に係る電線の概略構成を示すための図であり、
図9(a)は、本発明の第4の実施の形態に係る電線の斜視図であり、
図9(b)は、
図9(a)における凹部を示すための電線の平面図である。
【
図10】本発明の第5の実施の形態に係る端子付き電線の概略構成を示すための図であり、
図10(a)は、本発明の第5の実施の形態に係る端子付き電線の斜視図であり、
図10(b)は、
図10(a)に示す端子付き電線の圧着部分の拡大断面図である。
【
図11】本発明の第4の実施の形態に係る電線の第1の変形例を示すための電線の平面図である。
【
図12】本発明の第4の実施の形態に係る電線の第2の変形例を示すための電線の平面図である。
【
図13】本発明の第4の実施の形態に係る電線の第3の変形例を示すための電線の平面図である。
【
図14】本発明の第4の実施の形態に係る電線の第4の変形例を示すための電線の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
はじめに、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る電線の構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電線1の概略構成を示すための図であり、
図1(a)は、電線1の概略構成を示す斜視図であり、
図1(b)は、電線1における凹部12を示すための素線11の平面図であり、
図1(c)は、電線1における凹部12を示すための素線11の拡大斜視図である。
【0025】
本発明の第1の実施の形態に係る電線1は、導電性の素線11を1本のみ備えており、また、素線11は、表面から内部に向かってスリット状に凹んだ凹部12を少なくとも1つ有している。
【0026】
図1(a),(b),(c)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る電線1は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の素線11から形成された導体13と、導体13を覆う絶縁材から形成された絶縁被覆部14とを有している。なお、以下、アルミニウム製とは、純粋アルミニウム製とアルミニウム合金製をいうこととする。電線1の端部において、導体13には絶縁被覆部14が被覆されておらず、導体13が露出されている接続露出部15が形成されている。なお、後述するように端子付き電線5において、この導体13が露出した接続露出部15には、接続端子4が圧着接続される。
【0027】
素線11は、具体的には、線状に延びる可撓性の部材であり、その延び方向Xに直交する断面の形状が円形又は略円形となっている。凹部12は、素線11の延び方向Xに沿って延在しており、本実施の形態においては素線11の周面上に等角度間隔で4本形成されている。また、4本の凹部12は、同一形状及びサイズを有している。凹部12は、
図1(c)に示すように、素線11の延び方向Xに対して平行に延びている。凹部12は、素線11の延び方向Xに対して平行に延びておらず、素線11の表面に螺旋状に延びていてもよい。
【0028】
図1(b)に示すように、素線11の径の値は径寸法Dであり、
図1(c)に示すように、凹部12の素線11の延び方向Xにおける長さである延在寸法の値は延在寸法Lとなっている。なお、素線11の径寸法Dは、素線11の延び方向に亘って径の値が一定でない場合は、素線11の径の最大値とする。
【0029】
凹部12の延在寸法Lは、例えば素線11の径寸法D以上の長さであり、本実施の形態においては、素線11の延び方向全体(延び長さ)に亘って形成されており、素線11の一端側から他端側に亘って形成されている。凹部12の延在寸法Lは、素線11の延び長さよりも短くてもよく、素線11の径寸法Dより小さくてもよい。また、
図1(b)に示すように、凹部12は、素線11の表面からの深さが深さ寸法Hとなっている。凹部12の深さ寸法Hは、例えば、素線11の径寸法Dの10%以上である。凹部12の深さ寸法Hが、素線11の径寸法Dの10%以上であれば、後述するように、端子付き電線に電線1が用いられて導体13が接続端子に挟持された際に、素線11の表面が端子の内面に接触するように変形し易く、また、接続端子の溝(セレーション)が素線11の表面に食い込み易いと考えられるからである。端子付き電線の接続端子との関係においては、電線1の凹部12の深さ寸法Hは、接続端子の厚さ(板厚)の半分以上であることが好ましいと考えられる。また、凹部12の深さ寸法Hが過大であると、電線1の圧縮時に素線11が引き裂かれる不具合が発生する可能性がある。このため、凹部12の深さ寸法Hには素線11の強度に関連して上限値を設定可能であり、凹部12の深さ寸法Hは、例えば、素線11の径寸法Dの40%以下である。
【0030】
また、電線1の延び方向(矢印X方向)に交差する断面における電線1の導体13(素線11)の断面積は、例えば、2mm
2以上である。電線1の導体13の断面積は、3mm
2(sq)以上12mm
2以下が好ましく、5mm
2以上8mm
2以下であることがより好ましい。導体の断面積が3mm
2より小さい電線は、接続端子に圧着接続される際に素線の表面が接続端子の内面に接触し易いためであり、導体の断面積が12mm
2を超える電線は、素線径と圧着時の素線変位(素線の変形量)の相対的な関係として、導体の断面積が12mm
2より細い電線の素線と比較して圧縮時の素線変位が大きくなり破断する恐れがあるためである。また、電線1によれば、導体13(素線11)の断面積を大きくしても、屈曲性が悪化することを抑制することができる。
【0031】
なお、本実施の形態に係る電線1において、凹部12の総数は4としたが、凹部12の総数はこれに限られない。例えば、凹部12の総数は、素線11の総数の2倍以上である。
【0032】
次いで、
図2及び
図3を参照して、上述したように構成された電線1が接続端子4に圧着接続された本発明の第2の実施の形態に係る端子付き電線5と、端子付き電線5を有する本発明の第3の実施の形態に係るワイヤーハーネス10の構成について説明する。
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る端子付き電線5の概略構成を示すための図であり、
図2(a)は、端子付き電線5における接続端子4を示す斜視図であり、
図2(b)は、端子付き電線5の斜視図であり、
図2(c)は、
図2(b)に示す端子付き電線5の圧着部分の拡大断面図である。
図3は、本発明の第3の実施の形態に係るワイヤーハーネス10の概略構成を示すための図である。
【0033】
図2(a),(b)に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る端子付き電線5は、接続端子4に上述したように構成された電線1を圧着接続することにより構成されている。端子付き電線5において、電線1は、接続端子4に素線11の径方向に圧縮されて挟持されて接続されている。なお、本実施の形態では、接続端子4は雌型の端子である場合を図示して説明するが、接続端子4は、雄型の接続端子、丸型端子、スプライス端子等、他の形状の端子でもよい。
【0034】
接続端子4は、不図示の雄型の接続端子が挿入可能なボックス部41と、錫めっき膜Mを有し、電線1の接続露出部15にかしめられて圧着されるワイヤーバレル部42と、電線1の絶縁被覆部14にかしめられて固定されるインシュレーションバレル部43とを備えている。
【0035】
ワイヤーバレル部42の接続露出部15が圧着接続される内面には、接続端子4の幅方向に延びる溝であるセレーション44が複数形成されている。セレーション44は、ワイヤーバレル部42をかしめて接続露出部15において素線11が接続端子4に圧着された状態において、素線11に食い込むように形成されている。
【0036】
より具体的には、接続端子4のワイヤーバレル部42の幅方向において対向する一対のワイヤーバレル片45の間に電線1の接続露出部15を位置させ、ワイヤーバレル片45を内側に曲げて接続露出部15において素線11(導体13)に押圧し、素線11が径方向に圧縮され、ワイヤーバレル片45に素線11が挟持される。また、インシュレーションバレル部43の幅方向において対向する一対のインシュレーションバレル片46を内側に曲げて絶縁被覆部14に押圧し、インシュレーションバレル片46に電線1が挟持される。これにより、接続露出部15において電線1が圧着接続され、接続端子4が電線1と電気的に接続される。端子付き電線5において、接続端子4によって圧縮されている素線11の圧縮率は、例えば50%〜80%である。
【0037】
図2(c)に示すように、接続露出部15がワイヤーバレル片45に挟持されると、素線11には凹部12が形成されているため、凹部12の外周側の幅が広がることにより、素線11はワイヤーバレル部42の形状に追従して変形し、ワイヤーバレル部42の内周面に素線11の表面が密着する。また、接続露出部15がワイヤーバレル片45に挟持される際に、セレーション44が素線11の表面に食い込み、素線11の表面に形成された酸化被膜等の絶縁性皮膜が破れ、素線11が広範囲で接続端子4に電気的に接触する。このため、接続端子4と電線1との間に良好な導電性を確保することができ、端子付き電線5の導電性能の向上を図ることができる。また、素線11と接続端子4との間の圧着状態を良好に維持させることができる。
【0038】
図3に示すように、上記のように構成された端子付き電線5を、雌側のコネクタハウジングHCに装着することにより、ワイヤーハーネス10を形成することができる。雌側のコネクタハウジングHCは、不図示の雄側のコネクタハウジングと嵌合することにより、端子付き電線5が雄側コネクタハウジングに装着された端子付き電線と電気的に接続する。
【0039】
上述のように、本発明の実施の形態に係る電線1、端子付き電線5、及びワイヤーハーネス10によれば、導電性能の向上を図ることができる。
【0040】
次いで、上述したように構成された電線1の凹部12の形成方法について説明する。先ず、アルミニウム製の棒状の部材(芯線)を不図示の切り込み加工用のダイスの孔内に通して引き抜くことにより凹部12よりも幅の広いスリット状の凹部を棒状の部材の表面に形成する。上記ダイスの孔の内部には、凹部12よりも幅広の凹部を棒状の部材の表面に切り込む刃が配置されており、このダイスの孔内を通過した棒状の部材の表面には上述の凹部12よりも幅が広い凹部が形成される。
【0041】
そして、幅広の凹部が形成された棒状の部材を、不図示の伸線加工用のダイスの孔内に通して引き抜くことにより伸線し、形成された幅広の凹部が周方向につぶされていき素線11が形成されるとともに凹部の幅が小さくなり凹部12が形成される。なお、不図示の伸線加工用のダイスの孔内にスリット(凹部)を切り込むための刃を配置し、スリットを形成しながら伸線して凹部12を形成してもよい。この場合、棒状の部材の長手方向に亘って徐々にスリットの切り込み深さ寸法が深くなるように刃の形状を変化していくようにしてもよい。
【0042】
次いで、
図4〜
図8を参照して、上述した本発明の第1の実施の形態に係る電線1の第1〜第5の変形例について説明する。本第1〜第5の変形例に係る電線1においては、素線の構造が上述の素線11とは異なる。
【0043】
図4は、電線1の第1の変形例を示すための電線1の平面図である。
図4に示すように、第1の変形例に係る電線1は、上述の素線11ではなく素線11aを有しており、素線11aには、凹部16a、一対の凹部16b、一対の凹部16c、及び一対の凹部16dが形成されている。凹部16a〜16dは、素線11aの延び方向に平行に又は略平行に延びている。凹部16aは、素線11aの表面から素線11aの中心Oに向かって中心Oを超えて延びる(凹む)素線11aの半径の寸法Rより深く形成されたスリット状に凹んだ部分である。一対の凹部16bは、素線11aの表面から素線11aの中心Oに向かって凹部16aに対して直交若しくは略直交して互いに対向して延びる素線11aの半径の寸法Rより短い深さに形成されたスリット状に凹んだ部分である。一対の凹部16cは、一対の凹部16bよりも凹部16aの開放端側(
図4において上側)に形成されており、素線11aの表面から素線11aの内部へ半径の寸法Rより短い深さまで、凹部16bに対して平行又は略平行に互いに対向して延びるスリット状に凹んだ部分である。一対の凹部16dは、一対の凹部16bに対して凹部16cとは反対側に形成されており、素線11aの表面から素線11aの中心Oに向かって互いに凹部16cに対して線対称に対向して延びる素線11aの半径の寸法Rより短く形成されたスリット状に凹んだ部分である。このように、素線11aには、合計7本の凹部16a〜16dが形成されている。
【0044】
図5は、電線1の第2の変形例を示すための電線1の平面図である。
図5に示すように、第2の変形例に係る電線1は、上述の素線11ではなく素線11bを有しており、素線11bには、素線11bの延び方向に平行に又は略平行に延びる4つの凹部17が形成されている。凹部17は、
図5に示すように、素線11bの表面から素線11bの中心Oに向かって溝状に凹む部分である。凹部17は、中心Oまでは達しておらず、深さ寸法H2を有しており、素線11bの延び方向に直交する断面において、素線11bの表面から内部に向かうに連れて幅が狭まっている。また、凹部17は、素線11bの円周上に等角度間隔で形成されている。なお、素線11bに形成される凹部17の総数は上述の4つに限られない。
【0045】
図6は、電線1の第3の変形例を示すための電線1の平面図である。
図6に示すように、第3の変形例に係る電線1は、上述の素線11ではなく素線11cを有しており、素線11cには、素線11cの延び方向に平行に又は略平行に延びる12個の凹部18が形成されている。
図6に示すように、凹部18は、素線11cの中心Oに向かって素線11cの表面から内部に向かって溝状に凹んだ部分である。凹部18は、中心Oまでは達しておらず、深さ寸法H3を有しており、素線11cの延び方向に直交する断面において、素線11cの表面から内部に向かうに連れて幅が狭まっている。素線11cの凹部18の深さ寸法H3は、上述の第2の変形例における素線11bの凹部17の深さ寸法H2よりも長くなっている。また、凹部18は、素線11cの円周上に等角度間隔で形成されている。なお、素線11cに形成される凹部18の総数は上述の12個に限られない。
【0046】
図7(a),(b)は、電線1の第4の変形例を示すための図である。
図7(a),(b)に示すように、第4の変形例に係る電線1は、上述の素線11ではなく素線11dを有しており、素線11dには、素線11dの延び方向に対して傾斜して螺旋状に延びる8個の凹部19が形成されている。
図7(a),(b)に示すように、凹部19は、素線11dの中心Oに向かって素線11dの表面から内部に向かって溝状に凹んだ部分である。凹部19は、中心Oまでは達しておらず、深さ寸法H4を有しており、素線11dの延び方向に直交する断面において、素線11dの表面から内部に向かうに連れて幅が狭まっている。また、凹部19は、素線11dの円周上に等角度間隔で形成されている。なお、素線11dに形成される凹部19の総数は上述の8個に限られない。
【0047】
なお、上記凹部12,16a〜16d,17〜19は、素線11,11a〜11dの延び方向Xの一端側から他端側に亘って連続的に延在するように形成されているが、凹部12,16a〜16d,17〜19の延在形態はこれに限られない。例えば、凹部12,16a〜16d,17〜19は、
図8に示すように、素線11,11a〜11dの延び方向Xの一端側から他端側に向かって断続的に形成されていてもよい。なお、
図8に示すように断続的に形成された凹部は、延び方向Xに対して傾斜して螺旋状に延びて形成されていてもよい。また、各素線の表面における凹部の断線形態(パターン)は、夫々異なるものであってもよく、同一であってもよい。
【0048】
次に、
図9を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る電線の構成について説明する。
図9は、本発明の第4の実施の形態に係る電線2の概略構成を示すための図であり、
図9(a)は、電線2の概略構成を示す斜視図であり、
図9(b)は、電線2における凹部25を示すための素線22の平面図である。以下、前述の第1の実施の形態に係る電線1、及びその変形例と同様又は類似する構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図9(a),(b)に示すように、本発明の第4の実施の形態に係る電線2は、アルミニウム製の複数本の素線22が撚り合わされて形成された導体23と、導体23を覆う絶縁材から形成された絶縁被覆部24とを有している。素線22には、電線2の延び方向Xに沿って延びる、素線22の表面から内部に向かってスリット状に凹んだ凹部25が少なくとも1つ形成されている。導体23は2層構造になっており、1つの直線状に延びる素線22の周りに6つの素線22が撚り合されて形成されている。導体23は、従来公知の撚り合せ方法によって従来公知の装置によって作ることができる。凹部25は、上述の凹部12と同様の方法によって形成することができ、凹部25は、素線22の撚り合せ工程において同時に形成されるようにしてもよく、撚り合せ工程の前に、素線22に予め形成しておくようにしてもよい。電線2の端部において、導体23は絶縁被覆部24に覆われておらず、接続露出部26が形成されている。この絶縁被覆部24に覆われていない導体23の部分である接続露出部26には、後述するように、端子付き電線において、接続端子4が圧着接続される。
【0050】
具体的には、
図9(b)に示すように、各素線22の表面には、4つの凹部25が等角度間隔で素線22の延び方向に対して平行又は略平行に延在するように形成されており、また、凹部25の深さ寸法H5は、素線22の半径の寸法Rよりも小さくなるように形成されている。凹部25は、例えば、凹部25の延在寸法Lが素線22の径寸法Dよりも大きく、また、凹部25の深さ寸法H5が、素線22の径寸法Dの10%以上となっている。また、電線2の延び方向(矢印X方向)に交差する断面における電線2の導体23の断面積は、例えば、2mm
2以上である。
【0051】
なお、本実施の形態に係る電線2において、素線22の本数は7としたが、素線22の本数はこれに限られない。素線22の本数は、例えば19以下である。また、電線2によれば、導体23(素線22)の断面積を大きくしても、屈曲性が悪化することを抑制することができる。このため、素線の本数を少なくしつつ、電線の屈曲性の悪化を抑制することができる。また、素線の数が少ないため電線の製造を容易にすることができる。また、素線22の断面積の合計である導体23の断面積は2mm
2以上としたが、導体23の断面積は、3mm
2(sq)以上12mm
2以下であることが好ましく、5mm
2以上8mm
2以下であることがさらに好ましい。導体の断面積が3mm
2より小さい場合は素線が細く、導体を上述した接続端子4に圧着接続させる際に、撚られた素線同士が互いに表面において接触し、接続端子4の内面に素線の表面が接触するように導体を変形させ易く、導体の断面積が12mm
2を超える電線は、素線径と圧着時の素線変位(素線の変形量)の相対的な関係として、導体の断面積が12mm
2より細い電線の素線と比較して圧縮時の素線変位が大きくなり破断する恐れがあるためである。
【0052】
次いで、
図10を参照して、上述したように構成された電線2が上述の接続端子4に圧着接続されて形成された本発明の第5の実施の形態に係る端子付き電線6の構成について説明する。
図10は、本発明の第5の実施の形態に係る端子付き電線6の概略構成を示すための図であり、
図10(a)は、端子付き電線6の斜視図であり、
図10(b)は、端子付き電線5の圧着部分の拡大断面図である。
【0053】
図10(a),(b)に示すように、本発明の第5の実施の形態に係る端子付き電線6は、上述したように構成された端子付き電線5と同様に、接続端子4と電線2とが圧着接続されて作られている。また、上記のように構成された端子付き電線6を、上述の端子付き電線5と同様に雌側のコネクタハウジングHCに装着することにより、ワイヤーハーネスを作成することができる(
図3参照)。
【0054】
このように、本発明の第4の実施の形態に係る電線2、本発明の第5の実施の形態に係る端子付き電線6、及び端子付き電線6を備えるワイヤーハーネス10においても、上述の本発明の第1の実施の形態に係る電線1、本発明の第2の実施の形態に係る端子付き電線5、本発明の第3の実施の形態に係るワイヤーハーネス10と同様に、導電性能を向上させることができる。具体的には、端子付き電線6において、押しつぶされて変形された接続端子4の形状に沿って素線22が変形し、また、素線22の表面の絶縁被膜が破られるため、隣接する素線22間に良好な電気的に接続する接触が得られ、端子付き電線6の導電性能を良好にすることができる。従来の電線においては、電線を端子に圧着する際、端子と接触する素線は導電が取れるものの、素線同士でしか接触していない素線は導電が取れ難く、導電性能が低くなる場合があった。特に、電線の径の拡大に伴い素線の数が多くなる場合には、素線同士でしか接触していない素線の数が増加するため、導電性能が十分ではない場合があった。これに対し、本発明の第4の実施の形態に係る電線2を備える端子付き電線6及びワイヤーハーネス10においては、素線22に凹部25を形成したことにより、圧着接続部における接続端子4の形状に沿って素線22が柔軟に変形し、また、絶縁被膜が破られるため、導電性能を良好にすることができる。
【0055】
このため、従来の電線では、素線同士でしか接触していない素線の導電性能を向上させるために、素線同士を半田付けする処理等を行うことにより素線間の導電を図る必要があったが、本発明の第4の実施の形態に係る電線2によれば、このような半田付け処理をしなくても導電性能を向上させることができる。
【0056】
上述した凹部25の形状は、
図9(a),(b)に示す形状に限定されるものではない。次いで、
図11〜14を参照して、電線2の変形例について説明する。各変形例に係る電線2は、上述した凹部25ではなく凹部25a〜25eを有している。
【0057】
図11は、第1の変形例に係る電線2の平面図である。
図11に示すように、第1の変形例に係る電線2における導体23aは、1本の断面円形の素線22aに、断面矩形、略矩形、又は略三角形等の素線22bを撚り合せて形成されており、導体23aの中央に配置された1本の素線22aと、1本の素線22aの中心Oから同心状に配置された8本の素線22bからなる。
【0058】
1本の素線22aには、素線22aの中心Oに向かって素線22aの表面から内部に向かってスリット状に凹んだ凹部25aが素線22aの円周上に等角度間隔で3本形成されている。また、8本の素線22bのうち、4本の素線22bにはそれぞれ素線22aの中心Oに向かって素線22bの表面から内部に向かってスリット状に凹んだ1本の凹部25bが形成されている。この凹部25bが形成された素線22bは、素線22aの等角度間隔に上下左右に配置されている。
【0059】
図12は、第2の変形例に係る電線2の平面図である。
図12に示すように、導体23bは、2本の素線22cが撚り合されて形成されている。この素線22cは、断面形状が略三角形又は山形状等であり、各素線22cには、突出する部分から内部に向かって凹む溝状に形成された凹部25cが形成されており、導体23bにおいて、凹部25cが導体23bの中心Cに向かって延びるように、素線22cが配置されている。また、導体23bにおいて、一対の素線22cは外側(外周側)に隙間を形成して接触するように形成されている。
【0060】
図13は、第3の変形例に係る電線2の平面図である。
図13に示すように、導体23cは、1本の断面十時状(x字状)の素線22dに、断面矩形、略矩形、又は略三角形等の素線22e,22fを撚り合せて形成されており、導体23cの中央に配置された1本の素線22dと、1本の素線22dを中心として等角度間隔に
図13において上下左右方向に配置された4本の素線22eと、素線22eの間にそれぞれ配置された4本の素線22fからなる。
【0061】
素線22dには、素線22dの延び方向に延びる溝である溝27が4つ形成されている。素線22eには、幅広の外周側の表面から内部に向かって凹むスリット状に形成された凹部25dが形成されており、導体23cにおいて、凹部25dが導体23cの中心Cに向かって延びるように、素線22eは配置されている。また、導体23cにおいて、素線22eは、内周側の端部が素線22dの溝27内に収容されて、等角度間隔に十字形状となるように配置されている。
【0062】
図14は、第4の変形例に係る電線2の平面図である。
図14に示すように、導体23dは、5本の断面円形の素線22gと、6つの断面楕円形の素線22hと、2つの断面円形の素線22iとが撚り合されて形成されている。素線22iの径は素線22gの径よりも小さい。導体23dにおいて、導体23dの中央に1本の素線22gが配置され、この素線22gを2つの一対の隣接する素線22gが対向して互いの間に挟むように4本の素線22gが配置されている。2つの素線22hは、2つの一対の素線22gの間に中央の素線22gを挟むように配置されており、各一対の素線22gの外側には1つの素線22iが一対の素線22gの両方の素線22gに接触するように配置されている。また、一対の素線22hが、外側から各素線22iを挟むように配置されている。
【0063】
素線22gには、上述の素線22と同様に、素線22gの中心Oに向かって素線22gの表面から内部に向かってスリット状に凹んだ凹部25eが等角度間隔で4本形成されている。
【0064】
なお、電線2における素線22,22a〜22iの形態は、上述のものに限らず、上述の素線11a〜11dのような形態であってよい。
【0065】
以上、本発明の実施の形態に係る電線1,2、端子付き電線5,6、ワイヤーハーネス10について説明したが、本発明に係る電線、端子付き電線、ワイヤーハーネスは、これら電線1,2、端子付き電線5,6、ワイヤーハーネス10に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0066】
上述した本発明の実施の形態における電線1,2の凹部12,16a〜16d,17,18,19,25,25a〜25eの形状は上述の図示した形状に限定されない。例えば、凹部が素線の表面から内部へ向かう方向、数及び位置は適宜変更が可能である。例えば、凹部の総数は、素線の総数の2倍以上としてもよく、また、19よりも多いとしてもよく、19以下としてもよい。
【0067】
また、上述した本発明の実施の形態における素線の数及び配置は、図示した数及び配置に限定されず適宜変更が可能である。