(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高級感、ユニークな嗜好性を有するチョコレート菓子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、電子レンジで加熱して食するチョコレート菓子であって、第1のチョコレート部と、第1のチョコレート部の内側に位置する第2のチョコレート部とを有し、第2のチョコレート部の水分は、第1のチョコレート部の水分に対して相対的に高いことを特徴とする。
本発明のチョコレート菓子は、電子レンジで加熱すると、保形性を有しながら菓子の内部はとろけるような食感であり、高級感、ユニークな嗜好性を有するものである。
【0007】
本発明の好ましい形態では、第1のチョコレート部の水分が3質量%以下であって、第2のチョコレート部の水分が7質量%以上であることを特徴とする。
各チョコレート部の水分を前記範囲とすることで、良好な加熱特性を付与することができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、第1のチョコレート部は、含気チョコレートであることを特徴とする。
これにより、外側が軽い食感となる。また、以下に示すように第1のチョコレート部に焼成により硬化した硬質層を設ける場合には、含気チョコレートとすることによりチョコレート菓子の保形性をより高めることができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、第1のチョコレート部は、第2のチョコレート部に近接する表面と反対側の表面に、焼成により硬化した硬質層を有することを特徴とする。
これにより、更にチョコレート菓子の保形性を高めることができるとともに、硬質な食感と内部のとろけるような食感との組み合わせというユニークな嗜好性が得られる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、第1のチョコレート部と第2のチョコレート部の体積比が、5:1〜15:1であることを特徴とする。
各チョコレート部の体積比を、当該範囲とすることによって、良好な加熱特性(加熱の程度、加熱の均一性)を付与しやすくなる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、チョコレート菓子の体積が5〜150cm
3であることを特徴とする。
チョコレート菓子の体積を、当該体積とすることによって、良好な加熱特性(加熱の程度、加熱の均一性)を付与しやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチョコレート菓子は、電子レンジで加熱するチョコレート菓子であって、内部がとろけるような食感である、従来にない嗜好性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、説明する。
本明細書において、「電子レンジで加熱するチョコレート菓子」とは、喫食前に電子レンジで加熱することを意図したチョコレート菓子を意味する。
【0015】
本発明のチョコレート菓子は、第1のチョコレート部と、第1のチョコレート部の内側に位置する第2のチョコレート部とを有する。
【0016】
各チョコレート部は、チョコレート生地によって形成される。ここで、チョコレート生地には、チョコレート類の表示に関する公正競争規約におけるチョコレート生地、準チョコレート生地、その他これに類する油性食品生地を含む。また、本発明の「チョコレート菓子」とは、前記チョコレート生地を含む菓子の意味である。
各チョコレート部は、ナッツ、ドライフルーツ、パフ等の任意の具材を含んでいてもよい。
本発明のチョコレート菓子における前記チョコレート生地の割合は制限されないが、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0017】
第2のチョコレート部は、第1のチョコレート部の内側に位置していればよく、第2のチョコレート部は必ずしも第1のチョコレート部によって覆われている必要はない。また、第1のチョコレート部の外側、第2のチョコレート部の内側、各チョコレート部の間に他の層が含まれていてもよい。また、各チョコレート部の形状、及びチョコレート菓子全体の形状も特に制限されない。チョコレート菓子の形状として、
図1に示すような円柱状の他、球状、キューブ状等が挙げられる。
本発明のチョコレート菓子の大きさは特に制限されず、意図する食感や嗜好性を考慮して設計することができるが、電子レンジでの加熱時間や食しやすさを考慮すると、通常5〜150cm
3の範囲とすることが好ましい。また、手軽に食することができるという観点からは5〜50cm
3の範囲とすることが好ましく、高級感を訴求する観点からは、50〜150cm
3の範囲とすることが好ましい。
【0018】
第2のチョコレート部の水分は、第1のチョコレート部の水分に対して相対的に高い。
これにより、電子レンジで加熱した際に、はじめに相対的に水分が高い第2のチョコレート部が昇温する。その結果、チョコレート菓子内部が温かくとろけるような食感となる。また、本発明のチョコレート菓子は、所定の時間電子レンジで加熱した直後に全体として概ね加熱前の形が保たれているという意味で、いわゆる保形性を有する。
【0019】
第1のチョコレート部の水分は、一般的なチョコレートにおける水分を目安とすればよく、好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは2.5質量%以下であり、特に好ましくは1.5質量%以下である。
外側に位置する第1のチョコレート部の水分を前記範囲とすることにより、電子レンジでの適度な加熱によって第1のチョコレート部が過度に発熱することを防ぎ、チョコレート菓子の保形性を高めることができる。
第1のチョコレート部の水分の下限値は特に制限されないが、食感や風味の観点から0.5質量%、好ましくは1.0質量%を目安とすることができる。
【0020】
第2のチョコレート部の水分は、生チョコレートやガナッシュ等の一般的な含水チョコレートにおける水分を目安とすればよく、好ましくは7質量%以上であり、更に好ましくは8.5質量%以上である。
内側に位置する第2のチョコレート部の水分を前記範囲とすることにより、電子レンジでの加熱によって第2のチョコレート部の発熱が起こり、チョコレート菓子の内側から優先的に昇温させることができるため、チョコレート菓子の内部にとろけるような食感を付与することができる。
第2のチョコレート部の水分の上限値は特に制限されないが、15質量%、好ましくは13質量%を目安とすることができる。
【0021】
第1のチョコレート部と第2のチョコレート部の水分の差は、好ましくは4〜15質量%、更に好ましくは7〜10質量%である。
このように、各チョコレート部の水分の差を一定以上とすることで、第2のチョコレート部を確実に優先的に昇温させることができる。
【0022】
第1のチョコレート部は、好ましくは含気チョコレートで形成される。第1のチョコレート部を含気チョコレートで形成することにより、軽い食感が得られるため、第2のチョコレートのとろけるような食感とのユニークな組み合わせが得られる。また、後述するように、第1のチョコレート部を含気チョコレートで形成し、かつ表面を焼成することで、より高い保形性を付与することができる。
【0023】
含気チョコレートとする場合の比重は、例えば0.3〜1.1を目安とすればよい。含気チョコレートは、ミキサーを用いて常法により撹拌することで得ることができる。
【0024】
また、第1のチョコレート部は、第2のチョコレート部に近接する表面と反対側の表面に、焼成により硬化した硬質層を有することが好ましい。電子レンジでの加熱により優先的に昇温し軟化する第2のチョコレート部より外側に位置する第1のチョコレート部に硬質層を設けることで、チョコレート菓子の保形性を高めることができる。また、第1のチョコレート部において、第2のチョコレート部に近接する表面と反対側の表面に硬質層を設けることで、発熱した第2のチョコレート部からの熱伝導によって第1のチョコレート部の内側が軟化することで、チョコレート菓子の表面は硬質層の硬い食感であり、内側に行けばいくほどとろけるような食感を得ることが可能となる。
【0025】
また、第1のチョコレート部の硬質層が、チョコレート菓子の最外層を構成する形態とすることで、チョコレート組織が手指に付着しにくくなるので、手指でつまんで食する形態の菓子とすることもできる。
なお、チョコレート表面を焼成することで、チョコレートに硬質層を形成する方法は公知であり、これを特に制限なく用いることができる。例えばオーブンやシュバンクバナーを用いて、150〜350℃、30秒〜10分焼成する方法が挙げられる。
【0026】
第1のチョコレート部と第2のチョコレート部の体積比は、意図する電子レンジの加熱時間や意図する食感、嗜好性によって設定することができるが、好ましくは5:1〜15:1、より好ましくは6.5:1〜13:1、特に好ましくは7:1〜12:1である。このような範囲とすることにより、良好な加熱特性を得ることができる。具体的には、チョコレート菓子に保形性を付与しながら、第2のチョコレート部の昇温、軟化によって菓子内部の好ましい範囲にとろけるような食感を付与することができる。
すなわち、第1のチョコレート部の体積が当該範囲より小さくなると、第2のチョコレート部からの熱伝導による影響で、第1のチョコレート部全体の軟化が起こりやすくなり、菓子全体に保形性を付与しにくくなる。一方、第1のチョコレート部の体積が当該範囲より大きくなると、第2のチョコレート部の昇温及び軟化が起こっても、菓子全体における当該部分の体積比率が小さいことから、温かさやとろけるような食感を感じにくくなる。若しくは、このような食感を得ようとすると、長時間の加熱が必要になる。
【0027】
本発明のチョコレート菓子は、電子レンジで加熱して食するものである。電子レンジでの加熱時間の目安は、チョコレート菓子の体積、形状、第1のチョコレート部及び第2のチョコレート部の体積比率等の形態、意図する食感によって適宜設定されるが、500〜800W程度で、数十秒を目安とすることができ、好ましくは10〜30秒である。
【0028】
本発明のチョコレート菓子は、例えば以下の方法で製造することができる。
二重ノズルを設けた押出成形装置を用いて、二重ノズルの外側ノズルから第1のチョコレート部を構成する生地を、内側ノズルから第2のチョコレート部を構成する生地を押し出した後、適当な大きさに切断することで、円柱状に成型(
図1参照)する方法が挙げられる。
また、第1のチョコレート部からなるシェルをモールド成型し、内部に第2のチョコレート部を構成する生地を充填する方法や、第2のチョコレート部をモールド成型した後、第1のチョコレート部を構成する生地で被覆する方法などが挙げられる。
【0029】
また、本発明のチョコレート菓子の製造方法は、通常行われる殺菌工程、包装工程等の工程を含んでいてもよい。また、本発明のチョコレート菓子は、電子レンジでの加熱がしやすいように、プラスチックトレイに載置した包装形態とすることも好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について、実施例を示しながらより詳細に説明する。
以下の実施例及び比較例に用いたチョコレート部に用いた原料を表1に示す(質量部)。
【0031】
【表1】
【0032】
<実施例1>
第1のチョコレート部の生地は、表1記載の配合にて原料を調製した後、コンチングにて水分を1%とし、調製した。当該生地は、加圧式のミキサーにて2気圧下で所定時間撹拌して含気した。含気後の比重は0.8であった。
第2のチョコレート部の生地は、表1記載の配合にて原料を調製し、これにBrix65に調整した加糖クリームを配合し、水分を8.5%に調整し、乳化することによって調製した。
【0033】
二重ノズルを設けた押出成形装置を用いて、本発明のチョコレート菓子を成型した。すなわち、二重ノズルの内側ノズルからは第2のチョコレート部の生地が、その外側ノズルからは第1のチョコレート部の生地が押し出され、第1のチョコレート部を外層とし、第2のチョコレート部を内層とする円柱状の押出物を成型した。各ノズル径及び流量を調節することで、押出物の内層と外層の体積比が1:8.5となるようにした。
得られた押出物を所定の長さで切断し、オーブンで、200〜315℃、1〜10分間焼成することで、およそ3.0cm(たて)×3.5cm(よこ)×2.3cm(高さ)の円柱状のチョコレート菓子を調製した。
【0034】
<実施例2〜7>
第1のチョコレート部の生地及び第2のチョコレート部の生地の水分を表2に示すように調整し、実施例1と同様にしてチョコレート菓子を調製した。
【0035】
<比較例1>
第1のチョコレート部の生地及び第2のチョコレート部の生地の水分を表2に示すように調整し、実施例1と同様にしてチョコレート菓子を調製した。
【0036】
<実施例8〜17>
第1のチョコレート部の含気後の比重、各チョコレート部の体積及び体積比を表3に示すように調整し、実施例1と同様にしてチョコレート菓子を調製した。
【0037】
<評価>
実施例及び比較例の菓子について、電子レンジで加熱し、保形性、加熱特性(加熱の程度及び均一性)及び食感の評価を行った。電子レンジの出力は500Wとし、20秒加熱した。また、1種のサンプルについて、複数の機種の電子レンジを用いて複数回加熱試験をした。
評価は以下の基準で行った。併せて、異なる機種の電子レンジでの加熱試験間でのバラツキについても評価した(評価コメント)。結果を表2及び表3に示す。
【0038】
(1)保形性
〇:保形性があり、触れても崩れない。
△:保形性があるが、触れると崩れる。
×:保形性がない。
【0039】
(2)加熱特性
〇:菓子内部が優先的に加熱される。
△:菓子内部が優先的に加熱されるが、外部も一部加熱される。
×:菓子内部が優先的に加熱されない。
【0040】
(3)食感
〇:菓子内部が軟らかく、とろけるような食感である。
△:菓子内部が軟らかいが、ねっちりとする場合がある。
×:菓子内部が軟らかくない。
【0041】
【表2】
【0042】
表2から分かるように、実施例のチョコレート菓子は何れも保形性を有し、菓子内部が加熱され軟らかいものであった。一方、比較例のチョコレート菓子は、保形性は有するものの菓子内部は加熱されず軟らかさも得られなかった。
実施例1〜3と、実施例4との比較から、第2のチョコレート部の水分は、加熱特性(加熱の均一性)の観点からは、13%より小さくすることが好ましいことがわかった。
実施例1、2と、実施例5との比較から、第1のチョコレート部の水分は、保形性を高める観点からは、4質量%より小さくすることが好ましいことがわかった。また、第2のチョコレート部の水分は、加熱特性(加熱の均一性)の観点からは、6質量%より大きくすることが好ましいことがわかった。
また、実施例1〜5と、実施例6、7との比較から、第2のチョコレート部の水分は、食感の観点からは、5質量%より大きくすることが好ましいことがわかった。
また、実施例1〜3と、実施例5、6との比較から、加熱特性(加熱の程度、加熱の均一性)の観点から第1のチョコレート部と第2のチョコレート部との間で、水分の差が2質量%より大きいことが好ましいことがわかった。
【0043】
【表3】
【0044】
表3から分かるように、実施例のチョコレート菓子は何れも保形性を有し、菓子内部が加熱され軟らかいものであった。これより、本発明は、様々な体積のチョコレート菓子を提供することができることがわかる。
また、実施例8〜10と、実施例11との比較から、第1のチョコレート部と第2のチョコレート部の体積比について、加熱特性の観点からは、第1のチョコレート部の体積は、第2のチョコレート部の体積に対して6倍より大きいことが好ましいことがわかった。
また、実施例8〜10と、実施例12、13との比較から、第1のチョコレート部と第2のチョコレート部の体積比について、加熱特性の観点からは、第1のチョコレート部の体積は、第2のチョコレート部の体積に対して13.5倍より小さいことが好ましいことがわかった。
また、実施例8〜10と、実施例14、15との比較から、第1のチョコレート部と第2のチョコレート部の体積比について、食感の観点からは、第1のチョコレート部の体積は、第2のチョコレート部の体積に対して16倍より小さいことが好ましいことがわかった。
また、実施例8〜10と、実施例16、17との比較から、第1のチョコレート部と第2のチョコレート部の体積比について、保形性の観点からは、第1のチョコレート部の体積は、第2のチョコレート部の体積に対して4倍より大きいことが好ましいことがわかった。