特許第6809922号(P6809922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809922歩行支援機用トルク発生装置及び歩行支援機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809922
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】歩行支援機用トルク発生装置及び歩行支援機
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20201221BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A61H3/00 B
   B25J11/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-17391(P2017-17391)
(22)【出願日】2017年2月2日
(65)【公開番号】特開2018-121942(P2018-121942A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】佐野 明人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光久
(72)【発明者】
【氏名】植田 勝
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−059763(JP,A)
【文献】 特開2013−236741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に設けられるカムと、
前記カムに設けられた入出力手段と、
前記カムに対して押圧する押圧部を有する付勢手段と、
前記付勢手段に設けられ、前記付勢手段の移動方向を規制するリンク手段と、
を備えたことを特徴とする歩行支援機用トルク発生装置。
【請求項2】
前記リンク手段は、前記ハウジングに回動可能に設けられた第1回転軸と、前記付勢手段の前記押圧部に回転可能に設けられた第2回転軸と、を有するリンク部材からなることを特徴とする請求項1記載の歩行支援機用トルク発生装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、スプリングと、前記スプリングの先端に設けられた回転部材からなる前記押圧部と、
を備え、
前記スプリング及び前記押圧部は、前記カムと同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の歩行支援機用トルク発生装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、2分割可能に形成されており、前記カム、前記付勢手段及び前記リンク手段は、いずれか一方の前記ハウジングに取り付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の歩行支援機用トルク発生装置。
【請求項5】
前記ハウジングには、隙間が形成されており、
前記入出力手段は、前記ハウジングの前記隙間から延出していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の歩行支援機用トルク発生装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の歩行支援機用トルク発生装置と、
前記ハウジングに設けられた腰装着部材と、
前記入出力手段に取り付けられた伝達部材と、
前記伝達部材に設けられた脚部装着部材と、
を備えていることを特徴とする歩行支援機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行支援機用トルク発生装置及び歩行支援機に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の腰に装着される腰装着部材と、使用者の大腿部の側方に配置される第1リンク部と、前記腰装着部材と第1リンク部を回転可能に支持する第1回転支持部と、使用者の大腿部又は下腿部に装着される腿装着部材と、前記腿装着部材と前記第1リンク部を回転可能に支持する第2回転支持部と、を備えている歩行支援機が提案されている(特許文献1)。
【0003】
かかる歩行支援機は、腰に装着して使用される歩行支援機であり、主として、片麻痺等の歩行能力の弱くなった人に対して自然な歩行を補助するために軽いアシストを行なう装置である。この歩行支援機は、歩行能力の弱くなった人に使用するのに有用な発明である。
【0004】
しかし、かかる歩行支援機に使用されているトルク発生機は、カムに対してオフセットされているため、捻れが発生しトルク伝達にロスが発生するという課題があった。また全体の厚さが厚くなり、コストアップに繋がるという問題点があった。さらに、カムフォロワー内のバネをフォロワー内の内壁面で支持しているため、摺動抵抗が発生するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−39865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、従来の歩行支援機のトルク発生装置より薄くコンパクトに作製することができ、エネルギー損失の軽減を図ることができ、カムの力をよりダイレクトに出力することができる歩行支援機用トルク発生装置及び歩行支援機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0008】
本発明の歩行支援機用トルク発生装置は、
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に設けられるカムと、
前記カムに設けられた入出力手段と、
前記カムに対して押圧する押圧部を有する付勢手段と、
前記付勢手段に設けられ、付勢手段の移動方向を規制するリンク手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
かかる歩行支援機用トルク発生装置によれば、付勢手段の移動方向を規制するリンク手段を有しているため、カムを押圧する際の反力によって付勢手段が一定範囲以上に押圧方向以外に移動することがなく、エネルギーのロスを低減することができる。また、これにより、付勢手段の移動防止手段としてハウジング内で摺動する機構を用いていないので、摺動摩擦抵抗によるエネルギー損失をも防止することができる。
【0010】
また、本発明にかかる歩行支援機用トルク発生装置において、前記リンク手段は、前記ハウジングに回動可能に設けられた第1回転軸と、前記付勢手段の前記押圧部に回転可能に設けられた第2回転軸と、を有するリンク部材からなることを特徴とするものであってもよい。
【0011】
かかる構成を採用することによって、前記リンク手段を容易かつシンプルな構造で提供することができる。
【0012】
さらに、本発明にかかる歩行支援機用トルク発生装置において、前記付勢手段は、スプリングと、前記スプリングの先端に設けられた回転部材からなる前記押圧部と、
を備え、
前記スプリング及び前記押圧部は、前記カムと同一平面上に配置されていることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
スプリング及び押圧部を同一平面上に配置することによって、オフセットした際に捻れたりする可能性を低減することができ、エネルギー損失を抑え、よりダイレクト感のあるトルク発生装置とすることができる。
【0014】
さらに、本発明にかかる歩行支援機用トルク発生装置において、前記ハウジングは、2分割可能に形成されており、前記カム、前記付勢手段及び前記リンク手段は、いずれか一方の前記ハウジングに取り付けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0015】
可動部品をいずれかのハウジングに固定することによって、エネルギー損失を低減させることができる。
【0016】
さらに、本発明にかかる歩行支援機用トルク発生装置において、前記ハウジングには、隙間が形成されており、
前記入出力手段は、前記ハウジングの前記隙間から延出していることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
かかる構成を採用することによって、ハウジング自体が可動することがなくなり、出力時によるエネルギーロスも抑えることができる。
【0018】
さらに、本発明は、前述したトルク発生装置と、
前記ハウジングに設けられた腰装着部と、
前記入出力手段に取り付けられた伝達部材と、
前記伝達部材に設けられた脚部装着部材と、
を備えていることを特徴とする歩行支援機を提供する。
【0019】
かかる歩行支援機によれば、エネルギー損失が少なく、ダイレクト感のある歩行支援機を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる歩行支援機によれば、薄くコンパクトに作製することができ、かつカムの力をよりダイレクトに出力し、エネルギーロスの軽減を図ることができる歩行支援機用トルク発生装置及び歩行支援機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態にかかる歩行支援機用トルク発生装置100を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態にかかる歩行支援機用トルク発生装置100の分解斜視図である。
図3図3は、実施形態にかかる歩行支援機用トルク発生装置100の可動状態を示す正面模式図である。
図4図4は、実施形態にかかる歩行支援機用トルク発生装置100の可動状態を示す正面模式図である。
図5図5は、実施形態にかかる歩行支援機110の斜視図である。
図6図6は、実施形態にかかる歩行支援機110の側面図である。
図7図7は、実施形態にかかる後方側フック152の斜視図である。
図8図8は、実施形態にかかる歩行支援機用トルク装置100の別実施形態を示す分解斜視図である。
図9図9は、実施形態にかかる歩行支援機110の別実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態にかかる歩行支援機用トルク発生装置100及び歩行支援機110を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。なお、右脚用と左脚用とは、左右対称であるので、使用者の左脚に装着して使用される左脚用の歩行支援機110を説明することにより、右脚用の歩行支援機110の説明に代える。
【0023】
図1は、実施形態にかかる歩行支援機用トルク発生装置100の斜視図である。図2は、実施形態にかかる歩行支援機用トルク発生装置100の分解斜視図である。本実施形態にかかる歩行支援機用トルク発生装置100は、図2に示すように、主として、ハウジング10、ハウジング10内に配置されるカム20と、カム20に取り付けられた入出力手段30と、カム20を押圧する付勢手段40と、付勢手段40に取り付けられるリンク手段50とを有している。
【0024】
ハウジング10は、身体側に配置される身体側ハウジング11と身体と反対側に配置される外側ハウジング12とに分割可能に作製されており、その内側は、主としてカム20が収容されるカム収容領域13と、主として付勢手段40が収容される付勢手段収容領域14からなる収容領域を有している。カム収容領域13は、カム20が回動可能な空間を有しており、その略中心には、カム20のカム回転軸21が挿入可能なカム軸挿入孔15が設けられている。付勢手段収容領域14は、付勢手段40が収容可能なように内側が筒状の収容領域が設けられている。また、カム収容領域13と付勢手段収容領域14とは、それぞれカム20と付勢手段40が略同一平面上に配置できるように形成されている。また、入出力手段30の可動範囲を確保するために、ハウジング10の一部に切欠部16が形成されている。この切欠部16には、外部からの異物の混入を防止するために、ゴムストリップや、複数の毛を設けても良い(図示しない。)。
【0025】
カム20は、図3に示すように、カム回転軸21からの距離が不定の円弧からなる外周面20aを有する板カムからなる。カム20の外周面20aは、カム回転軸21からの距離が入出力手段30に近づくほど長くなるように形成されている。すなわち、線分D、線分E、線分Fと順に長くなるように形成されている。カム20は、カム回転軸21がハウジング10のカム軸挿入孔15に配置されて回転自在に設けられており、付勢手段40以外に回動させる機構は有していない。なお、カム20の外周面20aは、少なくとも可動範囲に作製されていればよく、図3のように略半円形に形成してもよいし、図8に示すカムのように略円形に作製してもよい。
【0026】
入出力手段30は、図2に示すように、カム20に対して直接又は間接的に固定されており、カム20の動きをハウジング10の外部に出力する機能と、脚の動きをカムに入力する機能を有する。入出力手段30の形態に関しては、カム20の動きに連動して動くように形成されていれば、その形態は特に限定するものではない。実施形態においては、板状の部材で形成され、リベット35によってカム20に固定されている。カム20と固定されている側と反対側には、後述する取付部材32(図5参照)を取り付ける取付孔31が複数設けられている。この取付孔31は、取付部材32の取り付け位置を選択できるように複数設けてもよい。また、カム20からの延出方向に対して、取付部材32を好適な方向へ取り付けられるように、くの字状に屈曲して形成してもよい。
【0027】
付勢手段40は、カム20の外周面20aを押圧するように力を加えることによって、カム20に回転力を付与するための部材である。付勢手段40は、カム20を押圧する押圧部41と、この押圧部41をカム20の外周面20aに付勢するスプリング42と、このスプリング42の上面側を支持する支持部材43と、を備えている。任意に、押圧部41の押圧力を調整可能とするように強度調整用ボルト44を設けても良い。押圧部41は、ベアリングや車輪等の回転部材41aが取り付けられており、カム20の外周面20aをスムーズに移動可能にしてある。スプリング42は、ハウジング10の付勢手段収容領域14の内周径より短い周径に形成されており、スプリング42が伸び縮みする際に、ハウジング10の内周面には当接しないように作製される。支持部材43は、スプリング42の上面側の高さ方向及び水平方向の位置を固定するものである。強度調整用ボルト44は、ハウジング10の付勢手段収容領域14の最も外側(図2の上方)に設けられており、外部から操作可能となるように頂面に設けられたボルト孔44aを回転させることによって、付勢手段収容領域14に対する高さ位置を変更することができ、これにより、スプリング42の初期圧縮状態を調整して押圧部41の押圧力を変更することができる。なお、本実施形態においては、強度調整用ボルト44をハウジング10内に収容して、六角レンチ等の工具によって強度を調整する形態を採用しているが、ハウジング10の外部から直接手で回せるようなつまみボルトを採用してもよい。
【0028】
リンク手段50は、付勢手段40の押圧部41と、押圧部41近傍のハウジング10との間に設けられる。リンク手段50は、押圧部41がカム20の外周面20aを移動する際に、カム20側から加わる反力によって押圧部41が所定以上移動しないように、特に水平方向側の位置を一定の範囲に限定する機能を有する。実施形態においては、リンク手段50は、押圧部41の回転部材41aの回転軸に回動自在に形成される第1回転軸50aと、ハウジング10の任意の場所に回転自在に取り付けられる第2回転軸50bと、これらを連結する板部材からなるリンク部材51からなる。これにより、リンク手段50は、第2回転軸50bを中心に回動することができる。
【0029】
こうして構成された歩行支援機用トルク発生装置100は、以下のように作用する。カム20は、前述したようにカム回転軸21からの距離が線分Dから線分Fに向かって徐々に長くなるように形成されていることから、カム20に外部からの力が加わっていない場合には、図3に示すように短い線分Dの位置に付勢手段40が当接するように位置している。この状態から、入出力手段30を移動させて矢印αの方向にカム20を回転移動させるに従って、スプリング42は、図4に示すように、圧縮されて弾性エネルギーが蓄勢されていく。この状態で入出力手段30に加えた力を開放すると、カム20は、スプリング42の付勢力によって矢印βの方向に移動し、入出力手段30が移動することになる。図3から図4に至る間のスプリング42の伸び縮みの間において、押圧部41には、矢印γに示すように、斜め方向に反力が加わる(図4には、実際にかかる方向より強調して記載してある。)。従って、押圧部41には矢印δの水平方向の力が加わる。しかし、押圧部41は、リンク手段50に連結されているため、第2回転軸50bを中心に第1回転軸50aと同様に円弧状に移動することになる。しかしながら、円弧状に移動する距離はわずかであるので、図4に示すように、水平方向への移動はわずかに抑えることができる。これにより、押圧部41は、円弧の方向以外の水平方向への移動が抑えられる。このため、スプリング42の伸び縮みの際にスプリング42の水平方向への移動が抑えられ、従来のように付勢手段収容領域14との間に摺動部材を設けてスプリング42の水平方向の移動を防止する手段が不要になる。そのため、摺動部材と付勢手段収容領域14との間の摩擦によるエネルギー損失を低減することができる。また、付勢手段40とカム20とがオフセットされることなく同一平面上に配置されているため、付勢手段40からの力がカム20に伝達される際の力のロスがなく、ダイレクトに力を加えることができ、トルク特性を向上させた高効率な歩行支援機用トルク発生装置100とすることができる。また同一平面上に配置することによって、ハウジング10の全体の厚さを薄くすることができる。
【0030】
以上のように作製された歩行支援機用トルク発生装置100は、図5に示すように、ハウジング10に設けられた腰装着部材120と、入出力手段30に取り付けられた伝達部材130と、伝達部材130に設けられた脚部装着部材140と、が取り付けられて歩行支援機110とされる。
【0031】
腰装着部材120は、歩行支援機110を身体の腰部に装着するための部材であり、ハウジング10に取り付けられる。腰装着部材120は、ハウジング10の両側に張り出すように形成されており、ハウジング10の両側かつ上方側に腰ベルト又は衣服に取り付けられるフック150が設けられている。腰装着部材120は、特に素材を限定するものではないが、剛性を有するプラスチック板や柔軟性を有する平板状のプラスチック板等を使用して形成されており、身体の腰部の形状に適合可能に形成することが好ましい。この際に、歩行支援機用トルク発生装置100は、大転子よりも上方に配置されるように設計することが好ましい。
【0032】
フック150は、前方側に配置される前方側フック151と、身体の後方側に配置される後方側フック152と、を有する。前方側フック151は、略逆U字形状に形成される。後方側フック152は、図6に示すように、全体が略逆U字形状又は略逆J字形状に設けられており、かえし部152aが設けられている。このかえし部152aを設けることにより、後方側フック152が腰ベルト又は衣服に引っかかり、歩行時に後方側フック152が外れないようにされている。なお、前方側フック151には、かえし部は設けられていない。また、かえし部152aは、図7に示すように、先端が細くなるようにテーパーが設けられており、かえし部を有しない前方側フック151側から腰装着部材120を回転させるように外すことによって、テーパー形状がガイドの機能を有し、簡単に後方側フック152を外すことができる。なお、かえし部152aは、本実施形態のように、略逆U字形状又は略逆J字形状の端部の片方にのみ設けられていても良いし、両側の端部に設けられていても良い。また、両側に設ける場合には、かえし部152aは、互い違いとなるようにずらして設けてもよい。
【0033】
伝達部材130は、図5に示すように、一本の線状部材で形成されており、取付部材32を介して入出力手段30に取り付けられる。取付部材32は、入出力手段30の取付孔31に対してボルト等で取り付けられる。この際に、使用者の体格に合わせて異なる位置に取り付けられるようにされている。伝達部材130は、入出力手段30付近の大腿部側面から大腿部正面に屈曲して形成され、大腿部正面から下方に延びるように形成されている。伝達部材130は、特に限定するものではないが、金属、プラスチック、CFRP等を使用することができる。また、線状部材は、パイプ状に形成してもよい。大腿部正面から下方に延びる部分には、使用者の体格に合わせて変更可能なように、2本のパイプ状の伝達部材130を組み合わせて長さを調整可能に作製してもよい。
【0034】
脚部装着部材140は、脚前方宛部141と、脚前方宛部141に取り付けられるベルト状部材142とを備えている。脚前方宛部141は、伝達部材130に対して矢印Gに示すように回転自在に設けられる。また、脚前方宛部141は、大腿部の正面側にフィットするように湾曲して形成されていて、脚前方宛部141にはベルト用孔142aが形成されていて、このベルト用孔142aにベルト状部材142が取り付けられている。実施形態にかかる歩行支援機110は、大腿を正面側から引っ張るようにアシストするため、ベルト状部材142は、大腿部の周囲の長さに対して、やや緩く取り付けられる長さを有しており、大腿部に対してある程度自由に移動可能となるように大腿部との間に隙間ができるように取り付けられる。また,ベルト状部材142は、従来のように側面側で固定するタイプと異なり、大腿部に対し締め付けて取り付ける必要はないため、バックル145等によって容易に接続及び解除が可能となるようにするとよい。
【0035】
こうして作製された歩行支援機110は、フック150を腰ベルトや衣服等に引っ掛けて腰に取り付けられ、脚部装着部材140を大腿部に巻回するようにして身体に取り付けられる。このように、歩行支援機110は、専用のベルトによって腰に装着する必要がなく、フック150を衣服又は腰ベルト等に引っ掛け、かつ脚部装着部材140も、バックル等で容易に脚部にベルト状部材を巻回するだけで取り付けることができる。そのため、従来の歩行支援機110と比較して容易、かつ迅速に取り付けることができる。
【0036】
身体に取り付けられた歩行支援機110は、以下のように作用する。使用者が歩行する際には、歩行支援機110が取り付けられた脚は、支持脚と遊脚とを繰り返すことになる。歩行支援機110は、伝達部材130が大腿部に沿って移動し、自然な遊脚と支持脚の動きに合わせて移動する。この際に伝達部材130は、歩行支援機用トルク発生装置100によって前方方向へ付勢されている。そのため、脚が遊脚となった場合には、脚が前方方向へ振り出されるように促進される。このように前方へ脚を押し出す力が付加されるため、重い荷物を運搬している場合や坂道を登坂する場合であっても歩行支援機用トルク発生装置100による強いトルクにより、普段の力よりも弱い力で脚を容易に移動させることができる。また、歩行支援機110は、脚が外側へ広がることを同時に防止するので、重い荷物を運んでいる際のよろめき等を効果的に防止することができる。脚が前方へ移動すると、スプリング42の弾性エネルギーが解放されるが、脚が地面に着地し支持脚となり、反対側の脚が前方に押し出されると、伝達部材130は、歩行支援機用トルク発生装置100を中心に後方側へ回転移動する。すると、再度、カム20によってスプリング42が押圧され、弾性エネルギーが蓄勢される。そして、再度遊脚となったときに遊脚を前方へ押し出すことができる。こうして、歩行時において遊脚となった場合には常に前方へ脚を押し出すことができる。
【0037】
歩行支援機110がこうしたアシストをする際に、実際に脚は前後方向のみの移動ではなく、複雑な移動をしている。特に健常者の場合には、自らの意思で脚を移動させるため、この前後方向以外の動きは歩行能力の弱い者と比較して大きく、かつ力強いものとなる。しかし、本実施形態にかかる歩行支援機110によれば、伝達部材130が1本の線状部材で作製されており、左右方向への撓みもある程度可能であること、脚部装着部材140が伝達部材130に回転自在に形成されていること、ベルト状部材142が大腿部に対して隙間が設けられるように取り付けられていること、大腿部が正面側から引っ張られるようにアシストされること等から、脚の複雑な動きに対応して柔軟に移動方向へ追従可能となり、脚に対して無理な力がかかることを防止することができる。
【0038】
また、アシスト時には、図5に示すように、反力により前方側フック151には矢印Hに示すように、腰ベルト等を押し付ける方向へ力が加わるため、前方側フック151は、かえし部がなくても腰ベルトから外れることはない。一方で、後方側フック152は、矢印Iに示す方向に力が加わるが、かえし部152aが腰ベルト等に効果的に引っかかり外れることを防止することができる。他方で、歩行支援機110をベルト等から外したい場合には、矢印Hの方向と反対の方向となるように、前方側フック151から回転するように持ち上げることによって、後方側フック152のテーパー部(特に側面部)が腰ベルトを滑るように移動して容易に外すことができる。
【0039】
このように本発明にかかる歩行支援機110によれば、腰装着部材120、脚部装着部材140ともに締付けのない構造を採用しているので、歩行支援機110を装着した際に、締付け感等の違和感を低減させることができ、長時間の使用においてもストレスがなく、かつ心地よいアシスト感を得ることができる。また、歩行支援機110を腰ベルト等の側面のみに使用することによって、着座、起立等によって腰全体や上体が大きく変化する動作を行っても腰部自体には大きな変化が加わりづらいため、装着位置のズレを発生しにくくすることができる。仮に、位置がズレたりした場合であっても、フック150を横にずらすだけであるので、位置を容易に調整することができる。さらに、衣服用ベルトに直接連結するため、他に装着用ベルトが不要であり、軽量化、装着性の向上、着脱の簡易化及びコストダウンを図ることができる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうる。
【0041】
上述した実施形態においては、歩行支援機用トルク発生装置100のハウジング10に、身体側ハウジング11と身体と反対側に配置される外側ハウジング12のいずれもプラスチック製の成形品を使用したが、図8に示すように、身体側ハウジング11に金属製の板材を使用することもできる。
【0042】
また、上述した実施形態においては、片方にのみ装着することを前提に説明したが、左右対象の歩行支援機110を使用して両脚に装着してもよい。両脚に装着する場合においても、それぞれを腰ベルト等に引っ掛け、ベルト状部材を大腿部にバックル145で嵌めるのみであるので、容易に装着可能であるとともに、装着位置をそれぞれの脚に応じて容易に調整することができる。
【0043】
さらに、上述した実施形態においては、脚を前方に振り上げる方向の場合の歩行支援機110を説明したが、大腿部を後方に移動させる場合、すなわち、股関節を伸展させる方向にアシストする場合に使用してもよい。この場合には、入出力手段30の付勢方向が逆になるように腰装着部材120に取り付ければよい。かかる歩行支援機110を使用することによって、例えば登山の場合に、坂の前方かつ上方に脚を移動した後に、股関節を伸展させる方向にアシストされ、上半身を上方へ移動させようとする方向へ補助が働くことになる。
【0044】
さらに、上述した実施形態においては、脚部装着部材140は、大腿部に取り付けるものとしたが、下腿部に取り付けるようにしてもよい。その場合には、図9に示すように、伝達部材130を膝部近傍で屈曲自在とする屈曲部材170を設けても良い。
【0045】
さらに、上述した実施形態においては、健常者が使用することを主眼として説明したが、勿論、非健常者が使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上述した実施の形態で示すように、主として、健常者の肉体的負担の軽減を行なう歩行支援機として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…ハウジング、11…身体側ハウジング、12…外側ハウジング、13…カム収容領域、14…付勢手段収容領域、15…カム軸挿入孔、16…切欠部、20…カム、20a…外周面、21…カム回転軸、30…入出力手段、31…取付孔、32…取付部材、35…リベット、40…付勢手段、41…押圧部、41a…回転部材、42…スプリング、43…支持部材、44…強度調整用ボルト、44a…ボルト孔、50…リンク手段、50a…第1回転軸、50b…第2回転軸、51…リンク部材、100…歩行支援機用トルク発生装置、110…歩行支援機、120…腰装着部材、130…伝達部材、140…脚部装着部材、141…脚前方宛部、142…ベルト状部材、142a…ベルト用孔、145…バックル、150…フック、151…前方側フック、152…後方側フック、152a…かえし部、170…屈曲部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9