(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来技術は、シリコン芯線を軸方向に溶接する直溶接はできるものの、2本のシリコン芯線をL字に溶接する直角溶接ができないという問題がある。
【0008】
また、特許文献1〜3に記載されている方法では、高周波加熱コイル、または予熱管がシリコン芯線を包囲するように配置されている。そのため、シリコン芯線を溶接した後、高周波加熱コイル、または予熱管から溶接した芯棒を引き抜く作業が必要となる。溶接したシリコン芯線を高周波加熱コイル、または予熱管から引き抜く際に、シリコン芯線が高周波加熱コイル、または予熱管に接触すると、シリコン芯線の汚染につながるおそれがある。そのため、引き抜き作業は慎重に行う必要があり、特に、溶接したシリコン芯線が長尺である場合、上記引き抜き作業により、作業効率がわるくなるという問題がある。
【0009】
本発明の一態様は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、直溶接のみならず、直角溶接にも対応可能であり、溶接されるシリコン芯線のセット、取り出しが極めて容易であり、作業効率がよいシリコン芯線溶接装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシリコン芯線溶接装置は、高周波発生器に接続され、交番磁界を出力するワークコイルを備え、該ワークコイルは、一方の端子から他方の端子に至るまでの形状が、シリコン芯線の溶接部を収容可能で、かつ、一方向に開放された空間を形成するように屈曲する部分を含み、前記空間において前記交番磁界による前記シリコン芯線の加熱が行われることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、一方の端子から他方の端子に至るまでのワークコイルに含まれる屈曲する部分は、シリコン芯線の溶接部を収容可能で、かつ、一方向に開放された空間を形成するように構成されている。そのため、シリコン芯線のワークコイルへのセットは、上記開放部より行うことができる。また、上記空間の一方向が開放されていることで、上記空間への溶接前のシリコン芯線のセット、および溶接後のシリコン芯線の取り出しを、上記開放部より行うことができるため、かかる作業を容易に行うことが可能となる。その結果、二本のシリコン芯線を付き合わせて融着する直溶接において、従来の溶接装置のように閉じられた空間へのシリコン芯線のセット、取り出し作業に対して、極めて効率的にかかる作業を行うことができるばかりでなく、従来の溶接装置では不可能であった、二本のシリコン芯線を例えば直角に付き合わせて融着することも可能な融着装置を実現することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係るシリコン芯線溶接装置は、2つ仮想面を形成し、該仮想面が間隔をあけて対向するように前記ワークコイルを加工することにより、前記空間が形成されることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、対向する2つの仮想面を形成するように一方の端子から他方の端子に至るまでのワークコイルを加工することで前記空間を形成することができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係るシリコン芯線溶接装置は、前記仮想面は、前記ワークコイルを逆U字形状に加工することにより形成され、対向する前記逆U字形状のワークコイルが直列に連続していることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、一方の端子から他方の端子に至る1本のワークコイルにより対向する2つの仮想面を構成する際の加工が容易である。すなわち、2つの逆U字形状に加工されたワークコイルは直列に連続、すなわち、それぞれの逆U字形状コイルの1つの端部同士が連続し、それぞれの他端は、高周波発生器に接続される。
【0016】
そのため、逆U字形状の端子側の連続部を除き、仮想面を構成する2つの逆U字形状に加工されたワークコイルにより形成される空間は、開放されている。その結果、シリコン芯線を上記空間に設置する方法のバリエーション、または、予熱用カーボンを上記空間に挿入する方向のバリエーションを増やすことができ、予熱用カーボンを用いる場合においてもシリコン芯線の直溶接、および直角溶接が可能となる。
【0017】
尚、逆U字形状は、装置の方向によっては、U字形状となり得る場合もある。
【0018】
また、本発明の一態様に係るシリコン芯線溶接装置は、前記空間に出し入れ可能に設置され、前記空間に挿入した際に前記シリコン芯線の近傍に位置し、前記交番磁界により加熱されて前記シリコン芯線の予熱を行う予熱用カーボン部材を備えていることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、交番磁界により加熱されてシリコン芯線の予熱を行う予熱用カーボン部材が、空間に出し入れ可能に、かつ、空間に挿入した際はシリコン芯線の近傍に位置するように、設置されている。これにより、作業効率を低下させることなく、シリコン芯線の予熱を行うことができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係るシリコン芯線の製造方法は、前記シリコン芯線溶接装置によりシリコン芯線を製造する工程を含むことが好ましい。
【0021】
また、本発明の一態様に係る多結晶シリコンの製造方法の製造方法は、前記シリコン芯線の製造方法によりシリコン芯線を製造するシリコン芯線製造工程と、得られたシリコン芯線を用いて、多結晶シリコンを製造する多結晶シリコン製造工程と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、直溶接のみならず、直角溶接にも対応可能であり、溶接されるシリコン芯線のセット、取り出しが極めて容易であり、作業効率がよいシリコン芯線溶接装置を実現できる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各実施形態に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、適宜その説明を省略する。
【0025】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1の(a)は本発明の実施形態1に係るシリコン芯線溶接装置100の概略構成を模式的に示す斜視図であり、
図1の(b)は上記シリコン芯線溶接装置100のワークコイル3の拡大図である。
図2はシリコン芯線溶接装置100の蓋部を外した状態を示す平面図である。
図3はシリコン芯線溶接装置100の高周波発生器5を模式的に示す図である。
【0026】
(シリコン芯線溶接装置)
シリコン芯線溶接装置100は、
図1〜
図3に示すように、筐体1、芯線支持台2、ワークコイル3、予熱部4、および高周波発生器5を備えている。
【0027】
筐体1は、ワークコイル3、および予熱部4を収容し、筐体1の内部でシリコン芯線P1・P2の溶接を行う。筐体1は、略直方体である。筐体1は、
図2に示すように、底部11、および、側壁12・13・14・15を備えている。側壁12・13・14・15は、略長方形の板部材である。側壁12・13・14・15は、略長方形の板部材である底部11の辺に沿って、底部11と略垂直になるように設けられている。側壁12と側壁13とが対向し、側壁14と側壁15とが対向するように配置されている。側壁14の幅方向の中央部には、側壁14の上端から底部11に向けて、凹部141が形成されている。凹部141の幅および高さは溶接するシリコン芯線P1・P2の直径よりも大きい。側壁15の凹部141に対向する位置には、凹部141と同様に凹部151が形成されている。
【0028】
筐体1の外面には、冷却水配管を設置して、筐体1を冷却することができる。また、図示していないが、上記筐体1には蓋を設けることが好ましく、上記蓋には窓を設けることが、筐体1の中の様子が確認することができ、好ましい。また、筐体1には、ダクト等(図示なし)を接続し、溶接時に筐体1の内部に不活性ガス(アルゴン)を充填させることが好ましい。
【0029】
芯線支持台2は、溶接するシリコン芯線P1・P2を所定の位置に支持する。芯線支持台2は、略直方体の部材で2層に分かれており、内側の層の上面に溝部21が形成されている。溝部21の幅は溶接するシリコン芯線P1・P2が嵌る大きさで形成されており、当該シリコン芯線P1・P2を溶接する際に、溝部21にシリコン芯線P1・P2を嵌め、固定することができる。芯線支持台2は2つあり、各芯線支持台2は、溝部21が凹部141または凹部151に通じるように、側壁14・15に設置されている。
【0030】
なお、本実施形態では、筐体1は略直方体としているが、上記に限らない。例えば、筐体1は卵型であってもよい。筐体1が略直方体の場合、筐体1内部の気体をアルゴンに置換する際に、アルゴンが略直方体の隅の充填に時間がかかる。筐体1を卵型とすることで筐体1内部の気体をアルゴンに置換する時間を短縮することができる。
【0031】
(ワークコイル)
ワークコイル3は、高周波発生器5に接続され、交番磁界を出力する。ワークコイル3は、2つの芯線支持台2間の中央部に配置されており、各芯線支持台2に溶接するシリコン芯線P1・P2を配置すると、後述するワークコイル3の第1逆U字形状部33、および第2逆U字形状部34の間にシリコン芯線P1・P2の溶接部が配置される。
【0032】
高周波発生器5とワークコイル3との接続例を
図3に基づき説明する。高周波発生器5は、高周波用電源51、絶縁体52、金属管53、および高周波発生コイル54を備えている。高周波用電源51は一端が高周波発生コイル54に接続されている。高周波用電源51から流れる高周波電流により、高周波発生コイル54では高周波のエネルギが発生する。高周波発生コイル54で発生した高周波のエネルギは、絶縁体52を有し、かつ高周波発生コイル54の外側に間隔をあけて設置されている金属管53に移る。ワークコイル3の他端32は、高周波用電源51の他端に接続され、ワークコイル3の一端31は金属管53に接続されている。これにより、高周波のエネルギが金属管53に移ると、ワークコイル3の空間部に交番磁界が発生する。
【0033】
交番磁界が働いている箇所にシリコン芯線P1・P2の溶接部を配置すると、シリコン芯線P1・P2に電流が流れて加熱され、シリコン芯線P1・P2を溶接することができる。
【0034】
(ワークコイルの形状)
ワークコイル3は、一方の端子(一端)から他方の端子(他端)に至るまでの形状が、シリコン芯線の溶接部を収容可能で、かつ、一方向に開放された空間を形成するように屈曲する部分を含み、上記空間において交番磁界によるシリコン芯線P1・P2の加熱が行われる。上記空間は、2つ仮想面を形成し、該仮想面が間隔をあけて対向するように前記ワークコイル3を加工することにより形成されている。
【0035】
言い換えると、ワークコイル3は、一方の端子(一端)から他方の端子(他端)に至るまでの形状が、シリコン芯線P1・P2を収容可能な空間を空けて対向する2つの面を成すように屈曲する部分を含む。より具体的には、一端から他端に至るまでのコイルの形状が、シリコン芯線P1・P2を収容可能な空間をあけて相対する2つの逆U字形状を形成するように、ワークコイル3が加工されている。これにより、ワークコイル3には、上記空間に交番磁界による加熱を行うための加熱空間部が形成されている。
【0036】
以下に、詳しく説明する。ワークコイル3は、
図1の(b)に示すように、ワークコイル3の一端31(一方の端子)およびワークコイル3の他端32(他方の端子)との間に、第1逆U字形状部33(逆U字形状)、および第2逆U字形状部34(逆U字形状)を備えている。
【0037】
第1逆U字形状部33は、第1コイル部材331、第2コイル部材332、および接続コイル部材333により逆U字形状が形成されている。第1コイル部材331、および第2コイル部材332は、側壁12・13に略平行かつ底部11に略垂直なコイル部材である。接続コイル部材333は、側壁12・13に略平行かつ底部11に略平行なコイル部材である。接続コイル部材333は、第1コイル部材331の底部11とは反対側の端部331P、および第2コイル部材332の底部11とは反対側の端部332Pを接続する。言い換えると、第1逆U字形状部33は、端部331Pおよび端部332Pで屈曲し、側壁12・13に略平行な1つの仮想面71を成す。
【0038】
第2逆U字形状部34は、第1コイル部材341、第2コイル部材342、および接続コイル部材343により逆U字形状が形成されている。第1コイル部材341、および第2コイル部材342は、側壁12・13に略平行かつ底部11に略垂直なコイル部材である。接続コイル部材343は、側壁12・13に略平行かつ底部11に略平行なコイル部材である。接続コイル部材343は、第1コイル部材341の底部11とは反対側の端部341P、および第2コイル部材342の底部11とは反対側の端部342Pを接続する。言い換えると、第2逆U字形状部34は、端部341Pおよび端部342Pで屈曲し、側壁12・13に略平行な1つの仮想面72を成す。
【0039】
第1逆U字形状部33、および第2逆U字形状部34は、(1)第1コイル部材331と第1コイル部材341とが対向し、(2)第2コイル部材332と第2コイル部材342とが対向し、(3)接続コイル部材333と接続コイル部材343とが対向するように配置されている。これにより、第1逆U字形状部33により形成される仮想面71および第2逆U字形状部34により形成される仮想面72の間には空間(加熱空間)が形成される。
【0040】
第1コイル部材341の底部11側の端部341Qは、底部11の中央部に配置されている他端32を介して高周波発生器5に接続されている。第2コイル部材332の底部11側の端部332Qは、底部11の中央部に配置されている一端31を介して高周波発生器5に接続されている。第1コイル部材331の底部11側の端部331Qは、第2コイル部材342の底部11側の端部342Qと接続されている。
【0041】
また、第1逆U字形状部33、および、第2逆U字形状部34は距離L1を空けて形成されている。そのため、第1逆U字形状部33、および第2逆U字形状部34の間は、コイル部材は存在せず、ワークコイル3の上部(接続コイル部材333および接続コイル部材343との間)は開放されている。
【0042】
さらに、距離L1はシリコン芯線P1・P2の直径よりも長い。そのため、第1逆U字形状部33と第2逆U字形状部34との間には、接続コイル部材333・343に沿った状態のシリコン芯線P1・P2が収容可能となる加熱空間が形成される。これにより、接続コイル部材333・343に沿った状態であれば、シリコン芯線P1・P2は、第1逆U字形状部33、および、第2逆U字形状部34の間において出し入れ可能となる。言い換えると、ワークコイル3における屈曲する部分により形成される2つの面は、2つの面による加熱空間の一方向において、シリコン芯線P1・P2を上記2つの面に略平行な向きで出し入れ可能に開放されている。
【0043】
ワークコイル3の上部が開放されることにより、シリコン芯線P1・P2の溶接前の加熱空間へのセット、および、溶接後の加熱空間部からの取り出しが、ワークコイル3に影響されることなくワークコイル3の上部から容易に行うことができる。その結果、シリコン芯線溶接装置100は、シリコン芯線P1・P2をワークコイル3から引き抜く必要がある従来のシリコン芯線溶接装置と比較して、作業効率が向上する。
【0044】
なお、ワークコイル3は、コイル形状でなくても、ワークコイル3によりある程度の加熱空間が形成されれば、交番磁界が作用し、渦電流によるジュール熱が発生するため、溶接箇所の加熱に問題はない。ワークコイル3の磁界が強く働く位置に、シリコン芯線P1・P2の溶接部を配置することが望ましい。
【0045】
また、ワークコイル3は上部からシリコン芯線P1・P2をセットするスタンダードなものであり、筐体1におけるワークコイル3の設置位置は適宜設定可能である。例えば、ワークコイル3が横向き(接続コイル部材333、および接続コイル部材343が底部11に略垂直)であってもよい。また、ワークコイル3が逆向き(接続コイル部材333、および接続コイル部材343が底部11側に位置する)であってもよい。
【0046】
(予熱部)
予熱部4は、シリコン芯線P1・P2の溶接箇所の近傍を予熱する。予熱部4は、カーボン部41(予熱用カーボン部材)を備えている。
【0047】
予熱部4は、カーボン部41を加熱空間に出し入れ可能となるように、側壁12に設置されている。カーボン部41は、加熱空間に挿入した際にシリコン芯線P1・P2の近傍に位置し、交番磁界により加熱されてシリコン芯線P1・P2の予熱を行う。
【0048】
カーボン部41は、2枚の板状部材が底部11と略平行に配置されており、コの字形状を有する。カーボン部41は、
図1の(a)に示すように、コの字形状を形成する各板状部材が、接続コイル部材333および接続コイル部材343と平行になるように、第1逆U字形状部33から第2逆U字形状部34へ、逆U字形状の内側に挿入される。逆U字形状の内側とは、第1コイル部材331と第2コイル部材332との間、および第1コイル部材341と第2コイル部材342との間である。その際、シリコン芯線P1・P2の溶接部近傍は、カーボン部41のコの字の中に納まり、カーボン部41はシリコン芯線P1・P2の溶接部近傍を挟む。
【0049】
カーボン部41の形状はコの字に限らず、下記の(1)および(2)を満たす形状であればよい。(1)ワークコイル3の中にセットでき(挿入でき)、かつ(2)シリコン芯線P1・P2に対して抜き差しできるよう、一部が開放されている形状。また、カーボン部41は一枚の板部材であってもよい。カーボン部41が一枚の板状部材であっても、ワークコイル3により渦電流が発生するため、シリコン芯線P1・P2を予熱することができる。
【0050】
(溶接方法)
シリコン芯線P1・P2の溶接方法について、
図1、および
図4〜
図6に基づいて説明する。
図4の(a)〜
図4の(d)は上記シリコン芯線溶接装置100におけるシリコン芯線P1・P2の溶接方法を
図1の(a)のA1方向から見て説明する図である。
図5の(a)〜
図5の(d)は上記溶接方法を
図1の(a)のB1方向から見て説明する図である。
図6の(a)〜
図6の(d)は上記溶接方法を
図1の(a)のC1方向から見て説明する図である。なお、
図4の(a)、
図5の(a)、および
図6の(a)は、シリコン芯線P1・P2のセット前の状態を示す。
図4の(b)、
図5の(b)、および
図6の(b)はカーボン部41によるシリコン芯線P1・P2の予熱状態を示す。
図4の(c)、
図5の(c)、および
図6の(c)は、ワークコイル3によるシリコン芯線P1・P2の加熱状態を示す。
図4の(d)、
図5の(d)、および
図6の(d)は、溶接完了状態を示す。
【0051】
まず、
図4の(a)、
図5の(a)、および
図6の(a)の状態から、
図1の(a)に示すように、溶接するシリコン芯線P1・P2を芯線支持台2にセットする。その後、カーボン部41を、
図1の(a)の破線で示す位置に移動させ、
図4の(b)、
図5の(b)、および
図6の(b)に示すように、シリコン芯線P1・P2を挟むようにカーボン部41をワークコイル3内にセットし、シリコン芯線P1・P2を予熱する。
【0052】
シリコン芯線P1・P2を予熱し、シリコン芯線P1・P2が赤くなった状態で、
図4の(c)、
図5の(c)、および
図6の(c)に示すようにカーボン部41をシリコン芯線P1・P2およびワークコイル3から退避させる。その後、一気にワークコイル3の出力を上げることで、
図4の(d)、
図5の(d)、および
図6の(d)に示すように、シリコン芯線P1・P2を溶接する。符号60は溶接部を示す。
【0053】
シリコン芯線P1・P2の接合部の融着は、
図1、および
図4〜
図6に示すように、シリコン芯線P1・P2を密着させた状態で加熱して行ってもよいし、間隔をあけてシリコン芯線P1・P2をセットし、端部を加熱溶融せしめた後、密着させることにより行ってもよい。
【0054】
また、シリコン芯線溶接装置100において、ワークコイル3の上部が開放されていることにより、ワークコイル3内に、シリコン芯線P2を、シリコン芯線P1とシリコン芯線P2とがL字形状を形成するように配置することが可能となる。そのため、予熱部4を用いない場合、シリコン芯線溶接装置100において直角溶接が可能となる。
【0055】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について
図7および
図8に基づいて説明する。
図7は本実施形態のシリコン芯線溶接装置100Aの蓋部16aを開けた状態を示す斜視図である。
図8の(a)は上記シリコン芯線溶接装置100Aの概略構成を模式的に示す斜視図であり、
図8の(b)は上記シリコン芯線溶接装置100Aのワークコイル3aの拡大図である。
【0056】
(シリコン芯線溶接装置)
シリコン芯線溶接装置100Aは、
図7、および
図8に示すように、筐体1a、芯線支持台2a、ワークコイル3a、予熱部4a、および高周波発生器5を備えている。
【0057】
筐体1aは、ワークコイル3a、および予熱部4aを収容し、筐体1aの内部でシリコン芯線P1・P2の溶接を行う。筐体1aは、上底部11a、側壁12a・13a・14a・15a、蓋部16a、および、下底部19aを備えている。
【0058】
側壁12a・13a・14a・15aは、略長方形の板部材である上底部11aの辺に沿って、上底部11aと略垂直になるように設けられている。側壁12aと側壁13aとが対向し、側壁14aと側壁15aとが対向するように配置されている。側壁14aおよび側壁15aは略長方形の板部材であり、側壁15aにおける上底部11aからの長さは、側壁14aにおける上底部11aからの長さよりも長い。
【0059】
また、側壁15aの上底部11aとは反対側の端部からは、上底部11aと平行な下底部19aが設けられている。下底部19aの幅は側壁12aから側壁13aまでであり、長さは上底部11aよりも短い。これにより、筐体1aの下底部19a側の一部は開口部が形成されており、シリコン芯線P1・P2の出し入れが可能となる。また、当該開口部は蓋部16aで開閉可能となっている。
【0060】
側壁14aの幅方向の中央部には、側壁14aの上端(蓋16a側の端部)から上底部11aに向けて、凹部141aが形成されている。凹部141aの幅および高さはシリコン芯線P1・P2の直径よりも大きい。
【0061】
下底部19aの幅方向の中央部には、下底部19aの端部(筐体1aの開口部側の端部)から側壁15aに向けて、凹部191aが形成されている。凹部191aの幅および高さはシリコン芯線P1・P2の直径よりも大きい。
【0062】
筐体1aの外面には、冷却水配管を設置して、筐体1aを冷却することができる。蓋16aには窓が設けられており、筐体1aの中の様子が確認できるようにすることが好ましい。また、筐体1aには、ダクト等(図示なし)を接続し、溶接時に筐体1aの内部に不活性ガス(アルゴン)を充填させることが好ましい。
【0063】
芯線支持台2aは、芯線支持台2と同様の形状であり、溝部21aが形成されている。各芯線支持台2aは、溝部21aが凹部141aまたは凹部191aに通じるように、側壁14a、および下底部19aに設置されている。
【0064】
(ワークコイル)
次にワークコイル3aについて説明する。ワークコイル3aは、ワークコイル3と比較し、第1逆U字形状部33a、および第2逆U字形状部34aの向き、および、第1逆U字形状部33a、および第2逆U字形状部34aの接続方法が異なり、その他の構成は同じである。
【0065】
ワークコイル3aは、側壁14aに設置されている芯線支持台2aの溝部21aの延長上、かつ、下底部19aに設置されている芯線支持台2aの溝部21aの延長上に配置されている。これにより、各芯線支持台2aにシリコン芯線P1・P2を配置すると、後述するワークコイル3aの第1逆U字形状部33a、および第2逆U字形状部34aの間にシリコン芯線P1・P2がL字型に配置される。
【0066】
ワークコイル3aは、
図8の(b)に示すように、ワークコイル3aの一端31aおよびワークコイル3aの他端32aとの間に、第1逆U字形状部33a、および第2逆U字形状部34aを備えている。
【0067】
第1逆U字形状部33aは、第1コイル部材331a、第2コイル部材332a、および接続コイル部材333aにより逆U字形状が形成されている。第1コイル部材331a、および第2コイル部材332aは、上底部11aに略平行かつ側壁14a・15aに略垂直なコイル部材である。接続コイル部材333aは、側壁14a・15aに略平行かつ上底部11aに略垂直なコイル部材である。
【0068】
接続コイル部材333aは、第1コイル部材331aの側壁14a側の端部331aP、および第2コイル部材332aの側壁14a側の端部332aPを接続する。言い換えると、第1逆U字形状部33aは、端部331aPおよび端部332aPで屈曲し、側壁12a・13aに略平行な1つの仮想面73を成す。
【0069】
第2逆U字形状部34aは、第1コイル部材341a、第2コイル部材342a、および接続コイル部材343aにより逆U字形状が形成されている。第1コイル部材341a、および第2コイル部材342aは、上底部11aに略平行かつ側壁14a・15aに略垂直なコイル部材である。接続コイル部材343aは、側壁14a・15aに略平行かつ上底部11aに略垂直なコイル部材である。
【0070】
接続コイル部材343aは、第1コイル部材341aの側壁14a側の端部341aP、および第2コイル部材342aの側壁14a側の端部342aPを接続する。言い換えると、第2逆U字形状部34aは、端部341aPおよび端部342aPで屈曲し、側壁12a・13aに略平行な1つの仮想面74を成す。
【0071】
第1逆U字形状部33a、および第2逆U字形状部34aは、(1)第1コイル部材331aと第1コイル部材341aとが対向し、(2)第2コイル部材332aと第2コイル部材342aとが対向し、(3)接続コイル部材333aと接続コイル部材343aとが対向するように配置されている。これにより、第1逆U字形状部33aにより形成される仮想面73および第2逆U字形状部34aにより形成される仮想面74の間には空間(加熱空間)が形成される。
【0072】
さらに、対向する第1逆U字形状部33a、および第2逆U字形状部34aは直列に連続している。具体的には、第1コイル部材331aの側壁15a側の端部331aQは、上底部11aの中央部に配置されている一端31aを介して高周波発生器5に接続されている。第1コイル部材341aの側壁15a側の端部341aQは、上底部11aの中央部に配置されている他端32aを介して高周波発生器5に接続されている。第2コイル部材332aの側壁15a側の端部332aQは、第2コイル部材342aの側壁15a側の端部342aQと接続されている。言い換えると、ワークコイル3aは、相対する2つの逆U字形状部33a・34aにおいて、対向する一組の辺(第2コイル部材332a、および第2コイル部材342a)同士が接続コイル部材351に接続されている。これにより、2つの逆U字形状部33a・34aの間に、第2コイル部材332a、第2コイル部材342a、および、接続コイル部材351により、U字形状部35(U字形状)が形成されている。
【0073】
また、第1逆U字形状部33a、および、第2逆U字形状部34aは距離L2を空けて形成されている。そのため、第1逆U字形状部33a、および第2逆U字形状部34aの間は、コイル部材は存在せず、ワークコイル3aの上部(接続コイル部材333aおよび接続コイル部材343aとの間)は開放されている。
【0074】
さらに、距離L2はシリコン芯線P1・P2の直径よりも長い。そのため、第1逆U字形状部33aと第2逆U字形状部34aとの間には、接続コイル部材333a・343aに沿った状態のシリコン芯線P1・P2が収容可能となる加熱空間が形成される。これにより、接続コイル部材333a・343aに沿った状態のシリコン芯線P1・P2は、第1逆U字形状部33a、および、第2逆U字形状部34aの間において出し入れ可能となる。
【0075】
(予熱部)
予熱部4aは、カーボン部41a(予熱用カーボン部材)を備えている。カーボン部41aはカーボン部41と比較し、ワークコイル3に挿入される方向が異なり、その他の構成は同じである。
【0076】
カーボン部41aは、
図7および
図8の(a)に示すように、ワークコイル3aの側壁15a側から、コの字形状を形成する各板状部材が、第1逆U字形状部33a、が成す面、および第2逆U字形状部34aが成す面と平行になるようにワークコイル3aの内側に挿入される。ワークコイル3aの内側とは、第1コイル部材331aと第1コイル部材341aとの間、および第2コイル部材332aと第2コイル部材342aとの間である。その際、シリコン芯線P1・P2の溶接部近傍は、カーボン部41aのコの字の中に納まり、カーボン部41aはシリコン芯線P1・P2の溶接部近傍を挟む。
【0077】
つまり、ワークコイル3aはシリコン芯線P1・P2を挿入する部分と、カーボン部41aを挿入する部分が開放されており、シリコン芯線P1・P2とカーボン部41aとが障害なく出し入れできる。そのため、本実施形態によれば、予熱部4aを用いる場合であっても、直角溶接が可能となる。
【0078】
(変形例)
本発明の実施形態2の変形例であるシリコン芯線溶接装置100Bについて
図9に基づいて説明する。
図9の(a)は、シリコン芯線溶接装置100Aの変形例であるシリコン芯線溶接装置100Bの概略構成を模式的に示す斜視図である。
図9の(b)は、シリコン芯線溶接装置100Bのワークコイル3aの拡大図である。シリコン芯線溶接装置100Bは、シリコン芯線溶接装置100Aと比較してワークコイル3aの一端31aおよび他端32aの接続先が異なり、その他の構成は同様である。シリコン芯線溶接装置100Bによれば、直角溶接だけではなく、直溶接も行うことができるため、溶接の方向性を問わずにシリコン芯線P1・P2を溶接することができる。
【0079】
シリコン芯線溶接装置100Bでは、
図9の(a)・(b)に示すように、ワークコイル3aの一端31aが側壁12aに接続されており、他端32aが側壁13aに接続されている。また、上底部11aにおいて下底部19aに設置されている芯線支持台2aに対向する位置に、さらに芯線支持台2aが設置されている(図示なし)。これにより、シリコン芯線P1・P2を軸方向に配置する際に上底部11aは障害にならないため、シリコン芯線溶接装置100Bにシリコン芯線P1・P2を軸方向に並べて配置することができ、直溶接が可能となる。
【0080】
〔実施形態3〕
本実施形態では、シリコン芯線溶接装置100・100A・100Bにより製造されたシリコン芯線を用いて製造される多結晶シリコンの製造方法について説明する。本実施形態に係る多結晶シリコンの製造方法は、ベルジャーに設置する逆U字形状のシリコン芯線にシリコン芯線溶接装置100・100A・100Bにより製造されたシリコン芯線を用いる。
【0081】
多結晶シリコンの製造方法として、ジーメンス法による方法が知られている。ジーメンス法による製造方法では、例えば、反応炉内にシリコン芯線を多数配設して加熱しておき、このベルジャーにクロロシランガスと水素ガスとを含む原料ガスを供給して赤熱状態のシリコン芯線に接触させる。そして、接触させたシリコン芯線の表面に原料ガスの熱分解及び水素還元によって多結晶シリコンを円柱状のシリコンロッドとして析出させる(多結晶シリコン製造工程)。
【0082】
この場合、シリコン芯線は、反応炉の底板部に配設した電極に立設状態に固定され、逆U字形状をなすように固定される。本実施形態では、シリコン芯線溶接装置100・100A・100Bを用いることで、シリコン芯線を直角溶接できるので、長尺の逆U字形状のシリコン芯線を作業効率よく製造することができる。その結果、長尺の逆U字形状のシリコン芯線を用いて多結晶シリコンを製造することができるので、多結晶シリコンの生産性が向上する。
【0083】
具体的に、
図10に基づき説明する。なお、以下では、シリコン芯線溶接装置100Aを用いて逆U字形状のシリコン芯線を製造する方法を説明する。
図10の(a)〜
図10の(c)は逆U字形状のシリコン芯線の製造方法を説明する図である。まず、
図10の(a)に示すように、2本のシリコン芯線P1・P2をシリコン芯線溶接装置100A内にL字に配置し、
図10の(b)に示すように、シリコン芯線P1・P2を直角溶接する。その後、
図10の(c)に示すように、シリコン芯線P1に溶接されたシリコン芯線P2と、他のシリコン芯線P3とをシリコン芯線溶接装置100Aにより直角溶接する。なお、符号61・62は溶接部を示す。これにより、逆U字形状のシリコン芯線を製造することができる(シリコン芯線製造工程)。
【0084】
なお、「シリコン芯線製造工程」と「多結晶シリコン製造工程」とは、時間・空間・人的に、それぞれ個別に行われてもよい。
【0085】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。