【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0044】
先ず、鋳造機を用いて、タフピッチ銅からなる厚さ100mm〜200mmの鋳塊を作製した。次いで、600〜1000℃の熱間圧延により厚さ10〜20mmの板材を作製し、その後冷間圧延を施した。
【0045】
上記共通工程を経た後、表1に示すように、発明例1のプロセス1では、処理温度300℃、処理時間2時間で板材に熱処理を施した後、圧下率97%で最終圧延を施し、厚さ0.035mmの導体を得た。
また、発明例2のプロセス2では、処理温度170℃、処理時間2時間で、板材に熱処理を施した後、圧下率97%で圧延処理を施し、厚さ0.035mmの導体を得た。
【0046】
発明例3のプロセス3では、処理温度200℃、処理時間2時間で、板材に1回目熱処理を施した後、1回目熱処理後の板材に圧下率67%で1回目圧延を施して厚さ0.4mmの導体を得、その後処理温度300℃、処理温度2時間で、導体に2回目熱処理を施し、更に2回目熱処理後の板材に圧下率91%で2回目圧延を施して厚さ0.035mmの導体を得た。
【0047】
比較例1のプロセス4では、1回目圧延の圧下率を83%、2回目圧延の圧下率を83%としたこと以外は、プロセス3と同様にして厚さ0.035mmの導体を得た。
【0048】
比較例2のプロセス5では、1回目圧延の圧下率を92%、2回目圧延の圧下率を65%としたこと以外は、プロセス3と同様にして厚さ0.035mmの導体を得た。
【0049】
比較例3のプロセス6では、1回目圧延の圧下率を96%、2回目圧延の圧下率を30%としたこと以外は、プロセス3と同様にして厚さ0.035mmの導体を得た。
【0050】
そして、作製された発明例1〜3、比較例1〜3の各導体について、{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率、導体の厚み方向における結晶粒の寸法の平均値、及び導体の幅方向における結晶粒の寸法を導体の厚み方向における当該結晶粒の寸法で除した値の平均値を、それぞれ下記(A)〜(C)の方法で測定し、また0.2%耐力を下記(D)の方法で測定した。
【0051】
(A){123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率
前加工処理としてクロスセクションポリッシャ加工を導体断面に施して銅表面を露出させた後、200μm×35μmの範囲をステップ0.1μm〜0.3μmにて電子線後方散乱解析(EBSD:Electron Back Scatter Diffraction)を実施し、解析ソフトを用いて許容ずれ角12.5°以内として、{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率を解析した。
【0052】
(B)導体の厚み方向における結晶粒の寸法の平均値
上記EBSDにて測定解析されたIPF MAPから、導体の厚み方向に沿って結晶粒の数をカウントし、導体厚みで除して、結晶粒の寸法の平均値を求めた。
【0053】
(C)導体の幅方向における結晶粒の寸法を導体の厚み方向における当該結晶粒の寸法で除した値の平均値
導体の幅方向をTD方向(圧延方向に垂直な方向)とし、厚み方向の結晶粒の寸法と同様の方法にて幅方向の100μm長における結晶粒の寸法を求め、上記厚み方向の結晶粒の寸法で除して、(幅方向結晶粒寸法)/(厚み方向結晶粒寸法)の平均値を算出した。
【0054】
(D)0.2%耐力
0.035mm厚、0.8mm幅、160mm長の短冊材をスリット切断にて作製し、該短冊材について、試験片サイズ以外はJIS Z 2241に準拠し、試験数3本の平均値を算出した。0.2%耐力が400MPa以上である場合を良好、400MPa未満である場合を不良とした。上記の方法にて測定した結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1の結果より、発明例1では、導体の材料及び{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率が本発明の範囲内であり、0.2%耐力が440MPaであった。
また、発明例2では、導体の材料及び{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率が本発明の範囲内であり、更に、導体の厚み方向における結晶粒の寸法の平均値が2μmであり、且つ、(幅方向結晶粒寸法)/(厚み方向結晶粒寸法)の平均値が5であり、0.2%耐力が455MPaであった。
発明例3では、導体の材料及び{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率が本発明の範囲内であり、0.2%耐力が430MPaであった。
【0057】
一方、比較例1〜3ではいずれも、1回目圧延で高圧延率であったため、2回目熱処理時に{001}<100>の方位に配向する結晶粒が成長し、最終圧延後における{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率が本発明の範囲外であり、0.2%耐力が310MPaと劣った。
【0058】
次に、発明例4として、表1のプロセス1で得られた導体を、1本当り0.3kgfの張力を付与しながら、2枚の接着層付PET絶縁シート(リケンテクノス社製、エアバッグ用フレキシブルフラットケーブル(絶縁フィルム)、ベース層厚25μm、接着層厚20μm)で挟み込み、両面からプレスしてラミネート処理を施し、フラットケーブルを作製した。接着層として、160〜200℃、0.1s〜5sの加熱条件で融解可能なポリエステル系樹脂を選定し、ベース層として、上記加熱条件で融解しないPET樹脂を選定した。ラミネート処理条件は、ロール温度170℃、加熱時間(プレス時間)5s、プレス圧力0.5MPaとした。
【0059】
発明例5として、プロセス2で得られた導体を用いたこと以外は、発明例4と同様にして、フラットケーブルを作製した。また、発明例6として、プロセス3で得られた導体を用いたこと以外は、発明例4と同様にして、フラットケーブルを作製した。
【0060】
次に、比較例4として、表1のプロセス1で得られた導体を、0.3kgfの張力を付与しながら、PI絶縁シート(東レデュポン社製、製品名「カプトンFタイプ」、もしくは宇部興業社製、製品名「ユーピレックス(登録商標)−VT/NVT」、厚さ10〜50μm)で挟み込み、両面からプレスしてラミネート処理を施し、フラットケーブルを作製した。ラミネート処理条件は、ロール温度300℃、加熱時間(プレス時間)180s、プレス圧力0.5MPaとした。
【0061】
比較例5として、ラミネート処理時のロール温度を170℃に変えたこと以外は、比較例4と同様にして、フラットケーブルを作製した。また、比較例6として、接着層付PET絶縁シートを用いたこと以外は、比較例4と同様にして、フラットケーブルを作製した。
【0062】
比較例7として、プロセス2で得られた導体を用いたこと以外は、比較例4と同様にして、フラットケーブルを作製した。また、比較例8として、プロセス2で得られた導体を用いたこと以外は、比較例5と同様にして、フラットケーブルを作製した。また、比較例9として、プロセス2で得られた導体を用いたこと以外は、比較例6と同様にして、フラットケーブルを作製した。
【0063】
比較例10として、プロセス3で得られた導体を用いたこと以外は、比較例4と同様にして、フラットケーブルを作製した。
【0064】
比較例11として、プロセス4で得られた導体を用いたこと以外は、比較例4と同様にして、フラットケーブルを作製した。また、比較例12として、プロセス4で得られた導体を用いたこと以外は、比較例5と同様にして、フラットケーブルを作製した。
【0065】
比較例13として、プロセス5で得られた導体を用いたこと以外は、比較例4と同様にして、フラットケーブルを作製した。また、比較例14として、プロセス5で得られた導体を用いたこと以外は、比較例5と同様にして、フラットケーブルを作製した。
【0066】
比較例15として、プロセス6で得られた導体を用いたこと以外は、比較例4と同様にして、フラットケーブルを作製した。また、比較例16として、プロセス6で得られた導体を用いたこと以外は、比較例5と同様にして、フラットケーブルを作製した。
【0067】
そして、作製された発明例4〜6、比較例4〜16の各フラットケーブルについて、ラミネート処理後の{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率、ラミネート処理後の導体の0.2%耐力、ラミネート性、コネクタ接合性、室温試験寿命、高温試験寿命、及び高温時10万回屈曲試験後の{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率を、それぞれ下記(E)〜(J)の方法で測定、評価した。
【0068】
(E)ラミネート処理後の{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率
ラミネート処理後の導体について、上記(A)と同様の方法にて、EBSDにより{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率を求めた。
【0069】
(F)ラミネート処理後の0.2%耐力
フラットケーブルにおいて所定の溶剤にて樹脂を溶解し、取り出した導体について、上記(D)と同様の方法にて、試験数3本の平均値を算出した。
【0070】
(G)ラミネート性
ラミネート処理時に導体間が設計上の距離の1/10以上縮まったり離れたり、もしくは導体に1%以上の永久伸びが生じた場合、ラミネート性を不良「×」とし、導体間が設計上の距離の1/10以上縮まったり離れたりせず且つ導体に1%以上の永久伸びが生じなかった場合、ラミネート性を良好「〇」とした。
【0071】
(H)コネクタ接合性
コネクタ接合時に導体が破断した場合を不良「×」とし、導体に破断が生じなかった場合を良好「〇」とした。
【0072】
(I)室温屈曲寿命及び高温屈曲寿命
FPC屈曲試験機(上島製作所製、装置名「FT−2130」)を用い、試験サンプルとして、導体を4〜6本配列し、樹脂でラミネートしたフラットケーブルを作製し、該フラットケーブルの幅方向両端に配列された導体のいずれかが破断したときに寿命と判断した。試験条件は、ストローク±13mm、試験速度180rpm、屈曲半径5.5mm、室温は23℃、高温は85℃とした。寿命と判断したときの屈曲回数が30万回以上である場合を、回転コネクタが要求される疲労特性を満足するとして極めて良好「A」、15万回以上30万回未満である場合を良好「B」、15万回未満を不良「C」とした。
【0073】
(J)10万回高温屈曲試験後の{001}<100>の方位に配向する結晶粒の面積率
上記(I)と同様の方法にて高温(85℃)における10万回屈曲試験を行った後、上記(E)と同様の方法にて、{001}<100>の方位に配向する結晶粒の面積率を求めた。上記の方法にて測定、評価した結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示すように、発明例4では、プロセス1で製造された導体を用い、ラミネート材が上記接着層付きPET絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が170℃、3sであるので、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が良好であった。また、ラミネート処理後の{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率が本発明の範囲内であり、ラミネート処理後の0.2%耐力が420MPaであり、室温屈曲寿命が良好であると共に高温屈曲寿命が極めて良好であった。更に、10万回高温屈曲試験後の{001}<100>の方位に配向する結晶粒の面積率が97%であり、屈曲によりCube方位の結晶粒が成長していることが分かった。
【0076】
発明例5では、プロセス2で製造された導体を用い、ラミネート材が上記接着層付きPET絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が170℃、3sであるので、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が良好であった。また、ラミネート処理後の{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率が本発明の範囲内であり、ラミネート処理後の0.2%耐力が420MPaであり、更に、導体の厚み方向における結晶粒の寸法の平均値が2μmであり、且つ、(幅方向結晶粒寸法)/(厚み方向結晶粒寸法)の平均値が5であり、高温屈曲寿命のみならず室温屈曲寿命も極めて良好であった。更に、10万回高温屈曲試験後の{001}<100>の方位に配向する結晶粒の面積率が95%であり、屈曲によりCube方位の結晶粒が十分に成長していることが分かった。
【0077】
発明例6では、プロセス3で製造された導体を用い、ラミネート材が上記接着層付きPET絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が170℃、3sであるので、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が良好であった。また、ラミネート処理後の{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率が本発明の範囲内であり、ラミネート処理後の0.2%耐力が430MPaであり、室温屈曲寿命が良好であると共に高温屈曲寿命が極めて良好であった。更に、10万回高温屈曲試験後の{001}<100>の方位に配向する結晶粒の面積率が80%であり、屈曲によりCube方位の結晶粒が成長していることが分かった。
【0078】
一方、比較例4では、プロセス1で製造された導体を用い、ラミネート材がPI絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が300℃、3sであるので、ラミネート処理時に導体が軟化し、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が不良であった。
【0079】
比較例5では、プロセス1で製造された導体を用い、ラミネート材がPI絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が170℃、3sであるので、ラミネート処理時にPI絶縁シートが融解せず、フラットケーブルを作製することができなかった。
【0080】
比較例6では、プロセス1で製造された導体を用い、ラミネート材が接着層付きPET絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が300℃、3sであるので、ラミネート処理時に接着層のみならずベース層が融解し、制御不能となってフラットケーブルを成形することができなかった。
【0081】
比較例7では、プロセス2で製造された導体を用い、ラミネート材がPI絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が300℃、3sであるので、比較例4と同様、ラミネート処理時に導体が軟化し、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が不良であった。
【0082】
比較例8では、プロセス2で製造された導体を用い、ラミネート材がPI絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が170℃、3sであるので、比較例5と同様、ラミネート処理時にPI絶縁シートが融解せず、フラットケーブルを作製することができなかった。
【0083】
比較例9では、プロセス2で製造された導体を用い、ラミネート材が接着層付きPET絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が300℃、3sであるので、比較例6と同様、ラミネート処理時に接着層のみならずベース層が融解し、制御不能となってフラットケーブルを成形することができなかった。
【0084】
比較例10では、プロセス3で製造された導体を用い、ラミネート材がPI絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が300℃、3sであるので、比較例4と同様、ラミネート処理時に導体が軟化し、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が不良であった。
【0085】
比較例11では、プロセス4で製造された導体を用い、ラミネート材がPI絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が300℃、3sであるので、比較例4と同様、ラミネート処理時に導体が軟化し、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が不良であった。
【0086】
比較例12では、プロセス4で製造された導体を用い、ラミネート材が接着層付きPET絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が170℃、3sであるので、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が良好であったものの、ラミネート処理後の{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率が本発明の範囲外であり、ラミネート処理後の0.2%耐力が310MPaであり、室温屈曲寿命及び高温屈曲寿命の双方が不良であった。また、10万回高温屈曲試験後の{001}<100>の方位に配向する結晶粒の面積率が15%であり、屈曲によってCube方位の結晶粒がほとんど成長していないことが分かった。
【0087】
比較例13では、プロセス5で製造された導体を用い、ラミネート材がPI絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が300℃、3sであるので、比較例4と同様、ラミネート処理時に導体が軟化し、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が不良であった。
【0088】
比較例14では、プロセス5で製造された導体を用い、ラミネート材が接着層付きPET絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が170℃、3sであるので、ラミネート処理前の{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率が本発明の範囲外であり、ラミネート処理前の導体の0.2%耐力が250MPaであるので、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が不良であった。
【0089】
比較例15では、プロセス6で製造された導体を用い、ラミネート材がPI絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が300℃、3sであるので、比較例4と同様、ラミネート処理時に導体が軟化し、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が不良であった。
【0090】
比較例16では、プロセス6で製造された導体を用い、ラミネート材が接着層付きPET絶縁シートであり、ラミネート処理における加熱条件が170℃、3sであるので、ラミネート処理前の{123}<634>の方位に配向する結晶粒の面積率が本発明の範囲外であり、ラミネート処理前の0.2%耐力が230MPaであるので、ラミネート性及びコネクタ接合性の双方が不良であった。