(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)環状脂肪族骨格と芳香族骨格とを有する酸無水物と、ジアミンから得られるポリアミック酸と、(B)光酸発生剤を含有することを特徴とするものである。
本発明では、ポリアミック酸の原料の酸無水物として、環状脂肪族骨格と芳香族骨格とを有するものを使用するので、解像性に優れた硬化物を得ることができる。例えば、L/Sが10/10μm以下のパターン膜を得ることができる。
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、光照射後かつ現像前に加熱した場合に、特に優れた解像性を発揮する。即ち、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の塗膜に、活性光線を照射することにより、照射部の溶解性が上昇し、照射部と非照射部との間に溶解性の差が生ずる。その後、加熱し、未露光部のポリアミック酸の一部をイミド化した後、現像することによって、解像性に優れたポジ型パターン膜を形成することができる。現像後は、さらに高温で加熱し、完全にイミド化を行えばよい。
【0022】
以下、本発明のポジ型感光性樹脂組成物が含有する成分について詳述する。
【0023】
[(A)環状脂肪族骨格と芳香族骨格とを有する酸無水物と、ジアミンから得られるポリアミック酸]
本発明で使用される(A)環状脂肪族骨格と芳香族骨格とを有する酸無水物と、ジアミンから得られるポリアミック酸(以下、「(A)ポリアミック酸」とも称する)は、実質的にイミド化されていない。(A)ポリアミック酸は、下記一般式(I)で表わされる構造を有することが好ましい。
【0024】
(式中、R
1は、芳香族環と脂肪族炭化水素環との縮合環を含む4価の有機基、または芳香族基と脂環式炭化水素基とを含む4価の有機基であり、
R
2は2価の有機基であり、
Xは2価の有機基であり、
mは1以上の整数であり、nは0または1以上の整数である。)
【0025】
(A)ポリアミック酸は、環状脂肪族骨格と芳香族骨格とを有する酸無水物と、ジアミンのみから得られるもの、即ち、一般式(I)中、nは0であってもよい。
【0026】
R
1の芳香族環と脂肪族炭化水素環との縮合環を含む4価の有機基としては、
のうちのいずれか1種で表されることが好ましい。
【0027】
式(1−1):
Z
1は、Z
2と共通するエチレン基と共に芳香族環(好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、特にベンゼン環)を形成する炭素原子数4〜12個の不飽和炭化水素基であり、芳香族環は置換基として少なくとも1個のアルキル基(炭素原子数1〜4個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、アリール基(炭素原子数6〜10個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を有していてもよい。
【0028】
Z
2は、Z
1と共通するエチレン基と共に脂肪族炭化水素環(脂環式炭化水素)を形成する炭素原子数3〜10個(好ましくは4〜6個、特に4個)の脂肪族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素環は置換基として少なくとも1個のアルキル基(炭素原子数1〜4個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、アリール基(炭素原子数6〜10個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を有していてもよい。2個の「−」で表される1価の結合手(すなわち、一組の結合手、Z
2の右側の結合手)は、相互に隣接する炭素に結合しているが、「=CR
6−」で表される2価の結合手は、2個の「−」の結合手が結合する隣接する炭素原子の隣の炭素原子またはその隣の炭素原子に結合していることが好ましい。特に後者が好ましい。例えば、脂肪族炭化水素環がシクロヘキサン環の場合、3,4位に2個の「−」の結合手が結合し、2または1位に(好ましくは1位に) 「=CR
6−」が結合していることが好ましい。R
6は一般に水素原子、アルキル基(炭素原子数1〜4個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、水素原子が好ましい。
【0029】
式(1−2):
Z
3は、Z
4と共通するエチレン基と共に芳香族環(好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、特にベンゼン環)を形成する炭素原子数4〜12個の不飽和炭化水素基であり、芳香族環は置換基として少なくとも1個のアルキル基(炭素原子数1〜4個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、アリール基(炭素原子数6〜10個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を有していてもよい。
【0030】
Z
4は、Z
3と共通するエチレン基と共に脂肪族炭化水素環(脂環式炭化水素)を形成する炭素原子数3〜10個(好ましくは4〜6個、特に4個)の脂肪族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素環は置換基として少なくとも1個のアルキル基(炭素原子数1〜4個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、アリール基(炭素原子数6〜10個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を有していてもよい。2個の「−」で表される1価の結合手(一組の結合手、Z
4の右側の一組の結合手または左側の一組の結合手)は、それぞれ隣接する炭素に結合しているが、一組の結合手同士も隣接して配置されてもよいし、環が大きければ、相互に少なくとも1個の炭素原子をおいて配置されてもよい。
【0031】
式(1−3):
Z
5は、Z
6と共通するエチレン基と共に芳香族環(好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、特にベンゼン環)を形成する炭素原子数4〜12個の不飽和炭化水素基であり、芳香族環は置換基として少なくとも1個のアルキル基(炭素原子数1〜4個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、アリール基(炭素原子数6〜10個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を有していてもよい。2個の「−」で表される1価の結合手は、隣接する炭素に結合しているが、2個の「−」で表される隣接する1価の結合手の組み合わせ同士も隣接して配置されてもよいし、環が大きければ、相互に少なくとも1個の炭素原子をおいて配置されてもよい。2個の「−」で表される1価の結合手は、隣接する炭素に結合しているが、「=CR
7−」で表される2価の結合手は、「−」の結合手が結合する炭素の少なくとも1個の炭素原子をおいて隣の炭素原子に結合していることが好ましい。R
7は一般に水素原子、アルキル基(炭素原子数1〜4個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、水素原子が好ましい。
【0032】
Z
6は、Z
5と共通するエチレン基と共に脂肪族炭化水素環(脂環式炭化水素の環)を形成する炭素原子数3〜10個(好ましくは4〜6個、特に4個)の脂肪族炭化水素基であり、飽和炭化水素環は置換基として少なくとも1個のアルキル基(炭素原子数1〜4個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、アリール基(炭素原子数6〜10個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を有していてもよい。
【0033】
式(1−4):
Z
7は、Z
8と共通するエチレン基と共に芳香族環(好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、特にベンゼン環)を形成する炭素原子数4〜12個の不飽和炭化水素基であり、芳香族環は置換基として少なくとも1個のアルキル基(炭素原子数1〜4個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、アリール基(炭素原子数6〜10個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を有していてもよい。2個の「−」で表される1価の結合手(Z
7の右側の結合手、または、Z
7の左側の結合手)は、それぞれ隣接する炭素に結合しているが、一組の結合手同士も隣接して配置されてもよいし、環が大きければ、相互に少なくとも1個の炭素原子をおいて配置されてもよい。
【0034】
Z
8は、Z
7と共通するエチレン基と共に脂肪族炭化水素環(脂環式炭化水素の環)を形成する炭素原子数3〜10個(好ましくは4〜6個、特に4個)の飽和炭化水素基であり、飽和炭化水素環は置換基として少なくとも1個のアルキル基(炭素原子数1〜4個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、アリール基(炭素原子数6〜10個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を有していてもよい。
【0035】
式(1−1)〜(1−4)のうち、式(1−1)および(1−2)で表される有機基が好ましく、特に式(1−1)で表される有機基が好ましい。
【0036】
R
1の芳香族基と脂環式炭化水素基とを含む4価の有機基としては、
で表されることが好ましい。
【0037】
A
1は、2価の芳香族環(好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、特にベンゼン環)またはAR−R
10−AR[但し、ARは、置換基{好ましくは少なくとも1個のアルキル基(炭素原子数1〜4個)、アリール基(炭素原子数6〜10個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子}を有していてもよい2価のベンゼン環(好ましくは無置換)であり、R
10はアルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜4個)、−SO
2−、−COO−、−CONHであり、−SO
2−が好ましい。]である。
【0038】
R
8、R
9は、それぞれ独立して、単結合、アルキレン基(炭素原子数1〜4個)、−SO
2−、−COO−、−CONH−であり、単結合、−CONH−が好ましい。
【0039】
B
1、B
2は、それぞれ独立して、炭素原子数5〜12個(好ましくは6〜8個、特に6個)の脂環式炭化水素基(環状脂肪族炭化水素基)であり、飽和炭化水素環は置換基として少なくとも1個のアルキル基(炭素原子数1〜4個)、アルコキシ基(炭素原子数1〜4個)、アリール基(炭素原子数6〜10個)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を有していてもよい。
【0040】
式(I)中、Xは、前述のように、2価の有機基であり、例えば、アミック酸基、ヒドロキシアミック酸基、芳香族または脂肪族エステル基、アミド基、アミドイミド基、シロキサン基、エポキシ基、オキセタニル基等を少なくとも一部の構成として含む基を挙げることができる。
【0041】
mは、前述のように、1以上の整数である。(A)ポリアミック酸の好ましい数平均分子量は、1000〜100万であり、より好ましくは5000〜50万であり、さらに好ましくは1万〜20万であるので、これを満たすようにmを設定することが好ましい。
【0042】
一般式(I)で表される構造を有する化合物は、下記の一般式(II):
で表される化合物であることが特に好ましい。R
2、X、m、nは式(I)で述べたとおりである。
【0043】
また、一般式(I)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(III)で表される構造を有する化合物も好ましく用いることができる。一般式(I)においてnが1以上、例えば一般式(III)で表されるような共重合構造を有するポリアミック酸を用いることにより、硬化物のガラス転移温度(Tg)を向上させるが可能となる。即ち、共重合構造を有するポリアミック酸を含むポジ型感光性樹脂組成物によれば、解像性に加えて、耐熱性などにも優れた硬化物を得ることができる。
【0044】
(式中、R
1は、芳香族環と脂肪族炭化水素環との縮合環を含む4価の有機基、または芳香族基と脂環式炭化水素基とを含む4価の有機基であり、
R
2、R
4およびR
6は、2価の有機基であり、
R
3およびR
5は、4価の有機基であり、
mは、1以上の整数であり、nおよびsは、それぞれ独立して、0または1以上の整数であり、かつ、nおよびsの少なくとも一方は1以上の整数である。)
【0045】
一般式(III)中のR
1およびR
2、は式(I)で述べたとおりである。
【0046】
一般式(III)中のR
3およびR
5は、前述のように、4価の有機基であり、例えば、置換または無置換の芳香族骨格を有する基、または、置換または無置換の環状脂肪族骨格を有する基であり、好ましくは、置換または無置換の芳香族骨格を有する基であり、より好ましくは、ベンゼン骨格を有する基、ビフェニル骨格を有する基またはビスフェニル骨格を有する基である。
ここで、ビスフェニル骨格としては、例えば、−O−、−CH
2−、―C
2H
4−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−SO
2−、−SO−、−S−もしくは−CO−で連結されたビスフェニル骨格が挙げられる。
【0047】
一般式(III)中のR
4およびR
6は、前述のように、2価の有機基であり、前記一般式(I)中のR
2と同様である。
【0048】
nとsの和は、mに対して、例えば、m:(n+s)=1:0〜10であり、好ましくは、m:(n+s)=1:0.1〜5であり、より好ましくは、m:(n+s)=1:0.3〜3である。
【0049】
尚、一般式(III)において、sが0である化合物は、下記一般式(IV)で表すことができる。
【0050】
R
1〜R
4、m、nは式(III)で述べたとおりである。
【0051】
一般式(III)で表される構造を有する化合物はそれぞれ、下記一般式(V)で表される構造を有することが好ましい。
【0052】
R
2〜R
6、m、n、sは式(III)で述べたとおりである。
【0053】
尚、一般式(V)において、sが0である化合物は、下記一般式(VI)で表すことができる。
【0054】
R
2〜R
4、m、nは式(III)で述べたとおりである。
【0055】
また、短波長光によりパターン膜を形成する場合には、ポリマーの吸収特性の観点から、R
1〜R
6がそれぞれ脂肪族基を含んでもよい。また、例えば、R
1〜R
6としてフッ素を含有する基を含む場合は、光吸収の低波長化または誘電特性を向上することができる。
【0056】
これにより、アルカリ現像性が良好となり、良好なパターン膜が得られる。
【0057】
前記(A)ポリアミック酸の酸価は、100mgKOH/g以上が好ましく、150mgKOH/g以上がより好ましく、200mgKOH/g以上がさらに好ましい。酸価の上限は300mgKOH/g以下が好ましい。
(A)ポリアミック酸の酸価は、JIS K−5601−2−1に準じて測定したものである。なお、試料の希釈溶剤としては、無水酸の酸価も測定できるようにアセトン/水(9/1体積比)の混合溶剤で酸価0のものを使用する。
【0058】
前記(A)ポリアミック酸の合成方法は特に限定されず、従来公知の手法により調製可能である。例えば、環状脂肪族骨格と芳香族骨格とを有する酸二無水物とジアミンを溶液中で混合するだけで合成できる。このような合成方法は、1段階の反応で合成することができ、容易かつ低コストで得られ、更なる修飾が不要であるため好ましい。尚、酸無水物およびジアミンのうちのいずれか少なくとも一方を2種以上用いることによって、上記一般式(III)で表される構造を有する化合物を共重合体として容易に製造することもできる。
【0059】
前記(A)ポリアミック酸を得るために用いる、環状脂肪族骨格と芳香族骨格とを有する酸無水物は、カルボン酸二無水物であることが好ましく、テトラカルボン酸二無水物であることがより好ましい。例としては、下記一般式(8)で表されるものを挙げることができる。
【0060】
(式中のR
1は、式(I)で述べたとおりである。)
【0061】
(A)ポリアミック酸の合成の原料として一般式(8)の酸無水物を用いることによって、前記一般式(I)のポリアミック酸における繰り返し単位中のR
1基を容易に導入することができる。
【0062】
前記酸無水物の環状脂肪族骨格としては、シクロヘキサン骨格が好ましい。前記酸無水物は、芳香族骨格上にアルキル基(例えばt−ブチル基)を有しないことが好ましい。
【0063】
前記酸無水物は、無水コハク酸構造を有する酸無水物基を有することが好ましい。無水コハク酸構造を有する酸無水物基としては、下記のような酸無水物基が挙げられる。
【0065】
前記酸無水物の中でも、下記の化合物が好ましい。
【0067】
前記酸無水物の分子量は、600以下が好ましく、500以下がより好ましく、400以下がさらに好ましい。分子量の下限は250以上が好ましい。
【0068】
(A)ポリアミック酸の合成において、本発明の趣旨に反しない限り、公知の他の酸二無水物を併用することができる。
【0069】
そのような他の酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−または3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物、スルホニルジフタル酸無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0070】
前記(A)ポリアミック酸を得るために用いるジアミンとしては、下記一般式(10)で示されるジアミンが挙げられる。ただし、下記のものは一例であり、本発明の趣旨に反しない限り、公知のものを用いることができる。
【0071】
(式中、R
2は、式(I)で述べたとおりである。)
【0072】
前記ジアミンは、芳香族環を有することが好ましく、芳香族環を複数有することがより好ましい。芳香族環を複数有する場合、芳香族環同士が直接結合または(チオ)エーテル基を介して結合していることが好ましい。
【0073】
R
2が2価の芳香族基である場合のジアミンの例としては、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォキシド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフォン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、メタフェニレンジアミン、3、4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを挙げることができる。
【0074】
R
2が2価の脂肪族基である場合のジアミンの例としては、1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミンを挙げることができる。
【0075】
また、別の例としては、下記式(11)で示されるジアミノポリシロキサン等が挙げられる。
【0077】
式中、R
28およびR
29はそれぞれ独立して二価の炭化水素基を表し、R
30およびR
31は、それぞれ独立して一価の炭化水素基を表す。pは1以上、好ましくは1〜10の整数である。
【0078】
具体的には、上記式(11)におけるR
28およびR
29としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜7のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6〜18のアリーレン基等が挙げられ、R
30およびR
31としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基等の炭素数6〜12のアリール基等が挙げられる。
【0079】
前記ジアミンは、3、4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテルであることが特に好ましい。
【0080】
感光性樹脂組成物中、(A)ポリアミック酸としては、単一種類の材料を用いてもよいし、複数種類を混合物として用いてもよい。また、R
1およびR
2がそれぞれ複数の構造からなる、共重合体であってもよい。
【0081】
(A)ポリアミック酸の配合量は、組成物の固形分基準で20〜80質量%であることが好ましい。
【0082】
[(B)光酸発生剤]
(B)光酸発生剤としては、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N−オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ベンゾキノンジアゾスルホン酸エステル等を挙げることができる。(B)光酸発生剤は、溶解阻害剤であることが好ましい。中でもナフトキノンジアジド化合物であることが好ましい。
【0083】
ナフトキノンジアジド化合物としては、具体的には例えば、トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTS533,TS567,TS583,TS593)や、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS550,BS570,BS599)等を使用することができる。
【0084】
このような(B)光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。(B)光酸発生剤の配合量は、前記(A)ポリアミック酸100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましい。この範囲とすることにより、溶解抑制効果と溶解促進効果のバランスが良好になる。より好ましくは10〜40質量部であり、さらに好ましくは10〜35質量部であり、特に好ましくは10〜25質量部である。
【0085】
以下に、本発明の感光性樹脂組成物に配合可能な他の成分を説明する。
【0086】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、(C)溶媒を配合することができる。(C)溶媒としては、(A)ポリアミック酸、(B)光酸発生剤、および他の添加剤を溶解させるものであれば特に限定されない。一例としては、N,N'−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N'−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもかまわない。使用する溶媒の量は、塗布膜厚や粘度に応じて、(A)ポリアミック酸100質量部に対し、50〜9000質量部の範囲で用いることができる。
【0087】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、更に光感度を向上させるために公知の増感剤を配合することもできる。
【0088】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、基材との接着性向上のため公知の接着助剤を添加することもできる。
【0089】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、フェノール性水酸基を有する化合物を含まないことが好ましい。
【0090】
本発明の樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよい。例えば、着色剤、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子が含まれる。また、本発明の樹脂組成物に各種着色剤および繊維等を配合してもよい。
【0091】
[ドライフィルム]
本発明のドライフィルムは、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を塗布後、乾燥して形成される樹脂層を有する。本発明のドライフィルムは、樹脂層を、基材に接するようにラミネートして使用される。
【0092】
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルムに本発明のポジ型感光性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の適宜の方法により均一に塗布し、乾燥して、前記した樹脂層を形成し、好ましくはその上にカバーフィルムを積層することにより、製造することができる。カバーフィルムとキャリアフィルムは同一のフィルム材料であっても、異なるフィルムを用いてもよい。
【0093】
本発明のドライフィルムにおいて、キャリアフィルムおよびカバーフィルムのフィルム材料は、ドライフィルムに用いられるものとして公知のものをいずれも使用することができる。
【0094】
キャリアフィルムとしては、例えば2〜150μmの厚さのポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
【0095】
カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、感光性樹脂層との接着力が、キャリアフィルムよりも小さいものが良い。
【0096】
本発明のドライフィルム上の感光性樹脂層の膜厚は、100μm以下が好ましく、5〜50μmの範囲がより好ましい。
【0097】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いて、その硬化物であるパターン膜は、例えば下記のように製造する。
【0098】
まず、ステップ1として、ポジ型感光性樹脂組成物を基材上に塗布、乾燥する、或いはドライフィルムから樹脂層を基材上に転写することにより塗膜を得る。ポジ型感光性樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性樹脂組成物中の(A)ポリアミック酸のイミド化が起こらないような条件で行うことが望ましい。具体的には、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、70〜120℃で20分〜1時間の条件で行うことができる。好ましくは、ホットプレート上で20〜40分乾燥を行う。また、真空乾燥も可能であり、この場合は、室温で20分〜1時間の条件で行うことができる。
【0099】
基材に特に制限はなく、シリコンウェハー、配線基板、各種樹脂、金属、半導体装置のパッシベーション保護膜等に広く適用できる。
【0100】
次に、ステップ2として、上記塗膜を、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは、直接露光する。露光光線は、(B)光酸発生剤を活性化させ、酸を発生させることができる波長のものを用いる。具体的には、露光光線は、最大波長が350〜410nmの範囲にあるものが好ましい。上述したように、適宜増感剤を用いると、光感度を調製することができる。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー、レーザーダイレクト露光装置等を用いることができる。
【0101】
続いて、ステップ3として、加熱し、未露光部の(A)ポリアミック酸の一部をイミド化する。ここで、イミド化率は、30%程度である。加熱時間および加熱温度は、(A)ポリアミック酸、塗布膜厚、(B)光酸発生剤の種類によって適宜変更する。典型的には、10μm程度の塗布膜厚の場合、110〜200℃で30秒〜3分程度である。加熱温度を110℃以上とすることで、部分的イミド化を効率的に達成することができる。一方、加熱温度を200℃以下とすることで、露光部のイミド化を抑え、露光部と未露光部との溶解性の差を大きくでき、パターン膜の形成が容易になる。
【0102】
次いで、ステップ4として、塗膜を現像液で処理する。これにより、塗膜中の露光部分を除去して、基材上に部分的にイミド化した(A)ポリアミック酸からなるパターン膜を形成することができる。
【0103】
現像に用いる方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択することができる。現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を単独または組み合わせて用いることができる。また、現像液として上記(C)溶媒を使用してもよい。
【0104】
その後、ステップ5として、パターン膜を加熱して硬化塗膜(硬化物)を得る。このとき、(A)ポリアミック酸を完全にイミド化し、ポリイミドを得ればよい。加熱温度は、ポリイミドのパターン膜を硬化可能なように適宜設定する。例えば、不活性ガス中で、150〜300℃で5〜120分程度の加熱を行う。加熱温度のより好ましい範囲は、150〜250℃であり、さらに好ましい範囲は180〜220℃である。加熱は、例えば、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることにより行う。このときの雰囲気(気体)としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いてもよい。
【0105】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、印刷インキ、接着剤、充填剤、電子材料、光回路部品、成形材料、レジスト材料、建築材料、3次元造形、光学部材等、樹脂材料が用いられる公知の種々の分野・製品、特にポリイミド膜の耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の特性が有効とされる広範な分野・製品、例えば、塗料または印刷インキ、或いは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材および建築材料等の形成材料として好適に用いられる。
【0106】
特に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、主にパターン膜形成材料(レジスト)として用いられ、それによって形成されたパターン膜は、ポリイミドからなる永久膜として耐熱性や絶縁性を付与する成分として機能し、例えば、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、電子部品、半導体装置、層間絶縁膜、ソルダーレジストやカバーレイ膜等の配線被覆膜、ソルダーダム、光回路、光回路部品、反射防止膜、その他の光学部材または電子部材を形成するのに適している。また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は解像性に優れることから、パッケージ基板、特にはウェハレベルパッケージ基板のパターン膜形成材料に好適に用いることができる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0108】
[合成例1:ポリアミック酸A−1の合成]
容量300mLのセパラブルフラスコに、下記表1に記載のジアミン30mmolを投入した後、窒素を流しながら、脱水NMP(N−メチルピロリドン)でジアミンを溶解させた。ジアミンを全て溶解させた後、下記表1に記載の酸無水物30mmolを徐々に加えた。少量のNMPでフラスコの壁に付着した酸無水物を反応溶液に流し入れた後、24時間室温で撹拌して反応させ、15質量%のポリアミック酸(PAA)A−1のワニスを得た。脱水NMPの投入量はPAAのワニスの量の75質量%であった。尚、表中の酸無水物「TDA」として、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(新日本理科社製リカシッドTDA−100)を用いた。ジアミン「4,4’−ODA」として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(和歌山精化社製)を用いた。
【0109】
【表1】
【0110】
[合成例2、3:ポリアミック酸A−2、A−3の合成]
ジアミンおよび酸無水物を、それぞれ以下の表2に示す化合物に変更した以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸A−2およびA−3のワニスを得た。尚、表中の酸無水物「PPHT」としてN,N’−ビス(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物−4−イル)カルボニル−1,4−フェニレンジアミン(日本精化社製)を用いた。ジアミン「3,4’−ODA」として、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ニチジュン化学社製)を用いた。
【0111】
【表2】
【0112】
[合成例4:ポリアミック酸A−4の合成]
容量300mLのセパラブルフラスコに、下記表3に記載のジアミン30mmolを投入した後、窒素を流しながら、脱水NMP(N−メチルピロリドン)でジアミンを溶解させた。ジアミンを全て溶解させた後、下記表に記載の酸無水物TDA22.5mmolとPMDA7.5mmolを徐々に加えた。少量のNMPでフラスコの壁に付着した酸無水物を反応溶液に流し入れた後、24時間室温で撹拌して反応させ、15質量%のポリアミック酸(PAA)A−4のワニスを得た。脱水NMPの投入量はPAAのワニスの量の75質量%であった。尚、表中の酸無水物「PMDA」としてピロメリット酸無水物(三菱瓦斯化学社製)を用いた。
【0113】
[合成例5:ポリアミック酸A−5の合成]
酸無水物の量を、TDA15mmolとPMDA15mmolに変更した以外は合成例4と同様にしてポリアミック酸A−5のワニスを得た。
【0114】
[合成例6:ポリアミック酸A−6の合成]
酸無水物の量を、TDA7.5mmolとPMDA22.5mmolに変更した以外は合成例4と同様にしてポリアミック酸A−6のワニスを得た。
【0115】
【表3】
【0116】
[比較合成例1、2:ポリアミック酸R−1、R−2の合成]
ジアミンおよび酸無水物を、それぞれ以下の表4に示す化合物に変更した以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸R−1およびR−2のワニスを合成した。尚、表中の酸無水物「CBDA」として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(新日本薬業社製)を用いた。
【0117】
【表4】
【0118】
(実施例1〜
11、13〜16、
参考例12、比較例1〜3)
表5に記載の組み合わせで、ポリアミック酸のワニスに対して、光酸発生剤を配合し、溶解させて、実施例
、参考例および比較例の感光性樹脂組成物を得た。尚、表中の光酸発生剤の配合量は、ポリアミック酸のワニスの固形分100質量部あたりの配合量である。
【0119】
[ポジ型パターン膜の形成方法]
実施例
、参考例および比較例の各感光性樹脂組成物を、撹拌・脱泡装置を用いてワニス濃度を均一にした後、スピンコーターを用いてシリコン基板上に塗布し、ホットプレートで100℃30分乾燥させ、膜厚5μm程度の感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を得た。この乾燥塗膜上に半分だけマスク(透過率0%)を配置して高圧水銀ランプを備える卓上型露光装置(三永電機社製)で1Jブロード露光を行った。次に、ホットプレートで表5に記載の条件のもと露光後加熱(PEB)を行った。これを1%NaOH水溶液もしくは1%Na
2CO
3水溶液にて現像し水でリンス後室温で乾燥させ、ポジ型パターン膜を得た。表5に光酸発生剤の添加量、PEB条件とコントラスト評価結果を示す。
【0120】
[コントラストの評価]
上記コントラストを下記の式により求めた。
コントラスト=露光部現像速度(膜厚μm/現像時間min)/未露光部現像速度(膜厚μm/現像時間min)
膜厚(μm):現像前の膜厚から現像後の膜厚を差し引いた値
現像時間(min):現像液に浸漬させている時間
コントラストの値に従い下記のように評価した。
◎:10以上
〇:2以上〜10未満
△:1以上〜2未満
×:なし(溶解しなかった)
【0121】
[表5]
*1:三宝化学研究所社製TS583、DNQ(ジアゾナフトキノン)
*2:和光純薬社製WPAG−149、(2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−1−プロパン)
【0122】
[微細なポジ型パターン膜の形成]
実施例8の感光性樹脂組成物を、撹拌・脱泡装置を用いてワニス濃度を均一にした後、スピンコーターを用いてシリコン基板上に塗布し、ホットプレートで100℃30分乾燥させ、膜厚5μm程度の感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を得た。この乾燥膜上にL/S=3/3μm、7/7μmおよび9/9μmの細線パターン状のフォトマスクをそれぞれ載せ、マスク密着露光ステージ(リソテックジャパン)を用いて300mJのブロード光を露光した。その後ホットプレートで160℃1分のPEBを行った。これを1%Na
2CO
3水溶液にて現像し水でリンス後室温で乾燥させ、ポジ型パターン膜を得た。得られたポジ型パターン膜の顕微鏡写真図を
図1に示す。また、段差(ラインの表面とスペース部分の表面の差)を表6に示す。
【0123】
【表6】
【0124】
(実施例17〜20)
[ガラス転移温度の評価]
ポリアミック酸A−1、A−4、A−5、A−6の15質量%ワニス3gに対して光酸発生剤B−1(三宝化学研究所社製TS583、DNQ(ジアゾナフトキノン))を0.0675g添加し、実施例17〜20の感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物をシリコンウエハ上にアプリケータで塗布し、ホットプレートで100℃10分加熱した後、さらに200℃30分熱処理して、硬化膜を作製した。この硬化膜をシリコンウエハ上から剥離し、ガラス転移温度(Tg)を測定した。TgはTA Instrument社製の動的粘弾性測定装置RSA−G2を用い、大気下、50℃から350℃、昇温速度10℃/min、周波数1Hzの条件のもと測定した。
【0125】
【表7】
【0126】
表5、6および
図1に示す結果から、本発明の感光性樹脂組成物はコントラストに優れ、高解像性のポジ型パターン膜が得られることがわかる。特に、L/S=3/3μmの場合でも段差が大きく、溶解促進効果と溶解阻害効果が得られており、解像性に優れていることがわかる。一方、本発明における特定のポリアミック酸にかえて、他のポリアミック酸を配合した比較例の感光性樹脂組成物は、コントラストが得られず、ポジ型パターン膜を形成することができなかった。
【0127】
また、表5、7に示すとおり、(A)ポリアミック酸について、環状脂肪族骨格と芳香族骨格とを有する酸無水物としてTDAを用い、かつ、共重合させる他の酸無水物を選択することによって、解像性に優れ、かつ耐熱性を付与した材料とすることができる。