(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
腐食抑制方法
1つの態様では、発明は金属を含む基板の腐食抑制方法を提供する。方法は、両性界面活性剤、スルホナート、ホスホナート、カルボキシラート、アミノ酸誘導体、リン酸エステル、イセチオナート、スルファート、スルホスクシナート、スルホシンナマート、またはそれらの任意の組み合わせを含む
水性組成物と基板を接触させることを備える。これらの各原料種の例が本明細書で提供されており、当業者には容易に理解されるであろう。いくつかの実施形態では、例えばコバルトを含む基板に関連する応用では抑制剤が約3〜約8.5のpHを有する
水性組成物に含まれる。また、発明は以下の本明細書で更に記載したように、化学機械研磨組成物及び基板の研磨方法も提供する。
【0015】
基板
腐食抑制方法は、様々な金属に対して有用性を有し、多様な業界にわたり様々な用途に使用することができる。いくつかの実施形態では、腐食抑制方法は金属がコバルトまたはコバルト含有合金の場合に使用することができる。基板は腐食抑制が必要な任意の適切な基板とすることができる。例として、制限することを意図しているわけではないが、例えば、基板が集積回路または他の電子デバイスを具現する半導体ウエハーである場合、腐食抑制方法を本明細書で記載したような化学機械研磨で使用することができる。ウエハー、一般的には、例えば金属、金属酸化物、金属窒化物、金属複合材、金属合金、低誘電材料またはそれらの組み合わせを含む、または同からなる。
【0016】
しかし、腐食抑制方法が金属工作または金属加工用途を含む他の用途に使用できることは理解されるであろう。また、発明の方法は、ガスタービン及びジェット航空エンジン用のタービン羽根、整形インプラント、補綴部品、例えば股関節および膝関節の代用品、歯科補綴物、高速鋼ドリルビット及び永久磁石に役立つコバルト及びコバルト合金を含む基板の研磨にも有用である。
【0017】
化学機械研磨の実施形態では、発明の方法及び組成物が集積回路及び他の微小デバイスの製造に使用される多種多様な半導体ウエハーの研磨で応用性を有している。そのようなウエハーは、いくつかの実施形態で従来型のノード構成、例えば65nm以下、45nm以下、32nm以下等の技術ノードの特徴を有する場合がある。しかし、いくつかの実施形態では、発明の方法及び組成物が特に先端的ノード応用(例えば、22nm以下、20nm以下、18nm以下、16nm以下、14nm以下、12nm以下、10nm以下、7nm以下、5nm以下等)に適している。腐食の影響がウエハー上の形状の相対的サイズが小さくなるにつれてより大きな影響力をもつためノード技術がより先端化すると平坦化技術における腐食の減少がより重要になることは理解されるであろう。発明の組成物及び方法によって提供される当該技術分野、例えばコバルトまたはコバルト合金に関しての顕著な進歩から、より先端化したノード研磨を発明のいつかの実施形態に従って達成し、腐食を低減することができる。しかし、注目するように、発明は、先端化ノードウエハーの用途に限定するものではなく、所望の他のワークピースの腐食に対して有益な効果を有することができる。
【0018】
発明の方法及び組成物は、上述した従来型または先端化ノードで、銅または他の既知金属(例えば、アルミニウム、タングステンなど)基板を使ったウエハーに使用することができる。しかし、発明の方法及び組成物はコバルト基板で特に驚くべき予想外の利益を有する。先端化ノード応用ではトランジスタ間の効果的相互接続として使用されるコバルトが一層重視されるようになっている。例えば、コバルトは、欠陥なくトレンチに化学気相蒸着(CVD)することができ、または銅配線周囲のライナーとして役立つため大きな利益をもたらすことがわかっている。
【0019】
化学機械研磨組成物
別の態様では、発明は(a)アニオン性粒子を含む研磨剤、(b)速度促進剤、(c)両性界面活性剤、スルホナート、ホスホナート、カルボキシラート、アミノ酸誘導体、リン酸エステル、イセチオナート、スルファート、スルホスクシナート、スルホシンナマート、またはそれらの任意の組み合わせ、(d)酸化剤、及び(e)
水性担体を含む、同からなる、若しくは同から実質的になる化学機械研磨(CMP)組成物を提供する。
【0020】
いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、発明の研磨組成物は基板表面で二次元膜を形成するのに役立つことが思量される。フィルムが固定され、腐食から基板を保護する。驚いたことに、そして予想外にも、いくつかの実施形態では発明の研磨組成物は所望の研磨除去速度を提供する間に、陰イオン界面活性剤を利用してカチオン電荷表面を不動態化し、腐食から基板を保護する。発明の実施形態は、例えば基板を保護するために腐食抑制剤として界面活性剤を使用することによって疎水性フィルムを形成することができる。そのようなフィルムは、特にコバルトの保護に適している。銅基板を保護するための従来型システムが銅との高分子錯体(例えば、ベンゾトリアゾール(BTA)等の芳香族アゾールを使用する)を形成するのに対し、発明は、驚くべきことにそして予想外にも、そのような錯体の形成がなく、またそのような芳香族アゾールを使用せず、むしろ上述の二次元膜を形成することによって有益な腐食抑制を達成する。しかし、研磨組成物はコバルトの用途に限定するものではなく、タングステン、アルミニウム、銅その他同種のものを含む他の金属基板で使用することができることは理解されよう。研磨組成物の個別の成分を以下に考察する。
【0021】
研磨粒子
研磨組成物は研摩剤(すなわち、1つ以上の研磨剤)を含む。研摩剤は任意の任意の好適な研摩剤または粒子形態で研摩剤を組み合わせることができる。研磨粒子は、好ましい実施形態で望ましくはアニオン性である。例えば、研磨粒子はアルミナ粒子、シリカ粒子またはそれらの組み合わせとすることができる。いくつかの実施形態では、研磨粒子がアルファアルミナ粒子等のアルミナ粒子であり、またはそれらを含み、少なくとも一部のアルファアルミナ粒子が負電荷重合体または共重合体で被覆されている。より好ましくは、研磨粒子はコロイダルシリカ粒子(望ましくはアニオン性コロイダルシリカ粒子)等のシリカ粒子であり、または同シリカ粒子を含む。
【0022】
研磨粒子は任意の好適なアルミナ粒子とすることができる。例えば、研磨粒子はアルファアルミナ粒子(すなわち、α‐アルミナ)、ガンマアルミナ粒子(すなわち、γ‐粒子)、デルタアルミナ粒子(すなわち、δ‐アルミナ)、またはフュームドアルミナ粒子とすることができきる。あるいは、研磨粒子は任意の好適なアルミナ粒子であって、アルミナ粒子が1つ以上のアルファアルミナ粒子、ガンマアルミナ粒子、デルタアルミナ粒子及びフュームドアルミナ粒子を含まない場合がある。
【0023】
いくつかの実施形態では、研磨粒子がアルファアルミナ粒子とするか、またはアルファアルミナ粒子を含むことができる。アルファアルミナは、1400℃を超える高温で生成する酸化アルミニウムの結晶多形を意味し、一般的には約50重量%以上のアルファ多形を含むアルミナを指す。アルファアルミナは当該技術分野では周知であり、広範囲の粒度及び表面積で市販されている。
【0024】
いくつかの実施形態では研磨剤がアルファアルミナ粒子を含み、少なくともアルファアルミナ粒子表面の一部が負電荷重合体または共重合体で被覆される。例えば、アルファアルミナ表面の約5重量%以上(例えば、約10重量%以上、約50重量%以上、実質的に全部または全部)が負電荷重合体または共重合体で被覆される場合がある。負電荷重合体または共重合体は任意の好適な重合体または共重合体とすることができる。好ましくは、負電荷重合体または共重合体がカルボキシル酸、スルホン酸及びホスホン酸官能基から選択される反復単位を含む。より好ましくは、負電荷重合体または共重合体がアクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2‐メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、2-(メタクロイロキシ)エチルホスファート、及びそれらの組み合わせから選択される反復単位を含む。最も好ましくは、負電荷重合体または共重合体がポリ(2-アクリルアミド-2‐メチルプロパンスルホン酸)またはボリスチレンスルホン酸である。アルファアルミナ粒子が一般的に正荷電表面をもつため、重合体または共重合体とアルファアルミナ粒子の会合で重合体または共重合体上の少なくとも一部の酸性基の脱プロトン化が生じ、アルファアルミナ粒子との関連で重合体または共重合体が負電荷の状態になる。
【0025】
アルミナ粒子は任意の好適な粒子径を有しうる。粒子の粒子径は粒子を包囲する最小球の直径である。アルミナ粒子の粒子径は、任意の好適な技術、例えばレーザー回折技術を使用して測定することができる。好適な粒子径測定器は、マルバーン測定装置(Malvern、UK)及びHORIBA科学(京都、日本)などから市販されている。アルミナ粒子は約10nm以上、例えば約20nm以上、約30nm以上、約40nm以上、または約50nm以上の平均粒子径を有することができる。あるいは、または更にアルミナ粒子は約1000nm以下、例えば約750nm以下、約500nm以下、約250nm以下、約200nm以下、約150nm以下、または約100nm以下の平均粒子径を有することができる。従って、アルミナ粒子は上記の終端点の任意の2つにより規定される平均粒子径を有することができる。例えば、アルミナ粒子は約10nm〜約1000nm、例えば約25nm〜約750nm、約40nm〜約500nm、約50nm〜約250nm、約50nm〜約150nm、または約50nm〜約125nmの平均粒子径を有することができる。
【0026】
好ましい実施形態に従って、粒子はシリカ粒子であるかまたはシリカ粒子を含む。例えば、研磨粒子はコロイダルシリカ粒子とすることができる。コロイダルシリカ粒子は、一般的に非凝集の個々にバラバラの粒子であり、一般に形状が球形またはほぼ球形であるが、他の形状(例えば一般に楕円、正方形または矩形状の横断面をもつ形状)を有することが可能である。そのような粒子は、一般的に高熱または火炎加水分解法によって調製され、かつ凝集した一次粒子が鎖状構造であるフュームド粒子とは構造的に異なる。あるいは、研磨粒子は、シリカ粒子がコロイダルシリカ粒子を含まない任意の好適なシリカ粒子とすることができる。
【0027】
より好ましくは、研磨粒子がコロイダルシリカ粒子である。望ましくは、コロイダルシリカ粒子は沈降または縮重合シリカであり、当業者に公知な任意の方法、例えばゾル-ゲル法またはケイ酸塩イオン交換で調製することができる。縮重合シリカ粒子は、一般的に実質的球状粒子を形成するためにSi(OH)
4の縮合よって調製される。前駆体Si(OH)
4は、例えば高純度アルコキシシランの加水分解、または水溶性ケイ酸塩溶液の酸性化によって得ることができる。そのような研磨粒子は、米国特許第5,230,833号に従って調製することが可能であり、あるいはAkzo−Nobel BINDZIL(商標)シリカ製品及びNalcoシリカ製品等の任意な種々の市販製品並びにDuPont、Bayer、Applied Research、Fuso及びClariant社から市販されている他の類似製品等として得ることが可能である。
【0028】
コロイダルシリカ粒子は任意の好適な表面電荷を有することができる。好ましくは、コロイダルシリカ粒子はアニオン性コロイダルシリカ粒子である。「アニオン性」とは、コロイダルシリカ粒子が研磨組成物のpHで負の表面電荷を有することを意味する。コロイダルシリカ粒子は研磨組成物のpHにおいて自然状態でアニオン性の場合、あるいはコロイダルシリカ粒子が当業者に公知な任意の方法を使用して、例えば表面金属ドーピング(例えばアルミニウムイオンによるドーピング)によって、またはテザー有機酸、テザー硫黄系酸若しくはテザーリン系酸による表面処理によって研磨組成物のpHでアニオン性になる場合がある。
【0029】
シリカ粒子は任意の粒子径を有することができる。粒子の粒子径は粒子を包囲する最小球の直径である。シリカ粒子の粒子径は、例えばレーザー回折技術など任意の適切な技術を使用して測定することができる。好適な粒子径測定器は、マルバーン測定装置(Malvern、UK)及びHORIBA科学(京都、日本)などから市販されている。シリカ粒子は約1nm以上、例えば約2nm以上、約4nm以上、約5nm以上、約10nm以上、約20nm以上、約25nm以上、約50nm以上、または約75nm以上の平均粒子径を有することができる。あるいは、または更に、シリカ粒子は約1000nm以下、例えば約750nm以下、約500nm以下、約300nm以下、約250nm以下、約120nm以下、約150nm以下、約100nm以下または約75nm以下の平均粒子径を有することができる。従って、シリカ粒子は、上記の終端点の任意の2つにより規定される平均粒子径を有することができる。例えば、シリカ粒子は約1nm〜約1000nm、例えば約4nm〜約750nm、約10nm〜約500nm、約20nm〜約300nm、または約50nm〜約120nmの平均粒子径を有することができる。
【0030】
研磨剤は任意の好適な量で研磨組成物中に存在する。例えば、いくつかの実施形態では、研摩剤が約10重量%以下、例えば約1〜約10重量%(例えば、約1重量%〜約8重量%、約1重量%〜約6重量%、約2重量%〜約8重量%、約2重量%〜約6重量%など)の量で含まれる場合がある。
【0031】
しかし、驚くべきことに、発明の実施形態が、特に基板がコバルトを含む実施形態では、より高量の研摩剤及び機械力の必要なしに予想外に低レベルの研摩剤で所望の除去速度の達成を可能にする。従って、いくつかの実施形態では、研摩剤が約0.05重量%〜約1重量%、例えば約0.05重量%〜約1重量%、約0.05重量%〜約0.8重量%、約0.05重量%〜約0.6重量%、約0.05重量%〜約0.4重量%、約0.05重量%〜約0.2重量%、約0.1重量%〜約1重量%、約0.1重量%〜約0.8重量%、約0.1重量%〜約0.6重量%、約0.1重量%〜約0.4重量%、約0.2重量%〜約1重量%、約0.2重量%〜約0.8重量%、約0.2重量%〜約0.6重量%、約0.2重量%〜0.4重量%、約0.4重量%〜約1重量%、約0.4重量%〜約0.8重量%、約0.4重量%〜約0.6重量%等の濃度で含まれる。
【0032】
腐食抑制剤
好ましい実施形態に従って、腐食抑制剤(例えば、コバルトの場合または他の金属の場合)は1つ以上の両性界面活性剤、スルホナート、ホスホナート、カルボキシラート、アミノ酸誘導体(例えば、脂肪酸アミノ等のアミノ酸アミド)、リン酸エステル、イセチオナート、サルフェート、スルホサクシネート、スルホシンナマートまたはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、腐食抑制剤が親水性頭部基及び疎水性尾部を有し、表面を活性状態にすることから腐食抑制剤は界面活性剤とみなせる。
【0033】
いくつかの実施形態で腐食抑制剤は式 X-R
2(式中、X=陰イオン性頭部基及びR
2=炭素数nの脂肪族基)で特徴付けられる。いくつかの実施形態でnは7より大きい。いくつかの実施形態で、nは約12〜約24(例えば約12〜約22、約12〜約20、約12〜約18、約12〜約16、約12〜約14)である。しかし、いくつかの実施形態では所望する場合にnはをより低くすることができる(例えば約8〜約24)。Xは、任意の適切な陰イオン性頭部基、例えばアミノ酸誘導体、リン酸エステル、イセチオナート、サルフェート、スルホサクシネート、スルホシンナマート、スルホナート、ホスホナート等とすることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では腐食抑制剤が陰イオン性頭部基及びC
8-C
24脂肪族尾部基のような脂肪族尾部基、例えばC
10-C
22、C
10-C
20、C
10-C
18、C
10-C
16、C
10-C
14、またはC
12-C
14脂肪族尾部基を含む。一つの実施形態で、腐食抑制剤(例えば、コバルトの場合)が陰イオン性頭部基及びC
9-C
14 脂肪族尾部基、例えばC
9-C
14 アルキルまたはC
9-C
14アルケニル尾部基を含む。本明細書全体で定義すると、「脂肪族」はアルキル、アルケニルまたはアルキニルを指し、置換または非置換及び飽和または不飽和の場合があり、例えばステアリル、オレイル、リノレイルまたはリノレニルは全てC
18脂肪族基である。従って、脂肪族という用語は、基の疎水性を保つヘテロ原子置換を有した鎖も指す。腐食抑制剤は単一化合物の場合もあり、または2つまたはそれ以上の化合物の組み合わせの場合もある。
【0035】
好ましい実施形態では、腐食抑制剤(例えば、コバルトの場合)は構造R-CON(CH[2]3[3])CH[4]2[5]COOH(式中、CON(CH
3)CH
2COOHが頭部基を形成し、Rが尾部基を形成する)であるか、または前記構造を含む。いくつかの実施形態で、R基はC
8-C
20脂肪族基であり、及びC
9-C
20アルキル基またはC
9-C
20アルケニル基(例えばC
9 アルキル基、C
10アルキル基、C
11 アルキル基、C
12アルキル基、C
13アルキル基、C
14 アルキル基、C
15 アルキル基、C
16 アルキル基、C
17 アルキル基、C
18 アルキル基、C
19アルキル基、C
20アルキル基、C
9 アルケニル基、C
10アルケニル基、C
11 アルケニル基、C
12アルケニル基、C
13アルケニル基、C
14アルケニル基、C
15アルケニル基、C
16 アルケニル基、C
17アルケニル基、C
18アルケニル基、C
19 アルケニル基またはC
20アルケニル基)とすることができる。従って、例えばR基はC
9-C
14脂肪族基、C
13-C
20脂肪族基、またはC
15-C
17脂肪族基の場合がある。
【0036】
腐食抑制剤(例えば、コバルトの場合)がサルコシン誘導体である好ましい実施形態では、炭素カウントに関してR基が結合するカルボニルが尾部基の従来型命名法に含まれる。従って、C
12 サルコシナートはラウロイルサルコシナートを意味し、C
18 サルコシナートは、例えばステアロイルサルコシナートまたはオレオイルサルコシナートを意味する。
【0037】
尾部基がアルケニル基であって、二重結合が尾部基の末端に位置しないときは、アルケニル基はE立体配置若しくはZ立体配置を有する場合、またはE及びZ異性体の混合物の場合がある。腐食抑制剤は単一化合物の場合、あるいは2つまたはそれ以上の陰イオン性頭部基とC
8-C
20脂肪族尾部基を有する混合物、あるいはC
7-C
19脂肪族R基を有する本明細書に記載したような2つまたはそれ以上のサルコシン誘導体の混合物の場合があり、但し、化合物の約75重量%以上(例えば、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上、または約95重量%以上)が陰イオン性頭部基及びC
10-C
14脂肪族尾部基を含むか、またはC
9-C
13脂肪族R基を有するサルコシン誘導体である。研磨組成物のpHに従い、前記のサルコシン誘導体が塩(例えば、金属塩、アンモニウム塩またはその他)、酸の形態または酸及びその塩の混合物として存在する場合があることが理解されよう。サルコシン誘導体の酸または塩の形態またはそれらの混合物が研磨組成物の調製での使用に適している。
【0038】
いくつかの実施形態では、腐食抑制剤が、例えば好適なアミノ酸誘導体(例えばアミノ酸アミド及び/または脂肪酸アミノ酸、特に脂肪酸アミノ酸アミン)を含む陰イオン界面活性剤でありうるかまたは同陰イオン界面活性剤を含む場合がある。いくつかの実施形態では、アミノ酸誘導体は、塩形態、すなわち上述したようなサルコシナートを含めたサルコシンの脂肪酸誘導体である。サルコシナートの例としては、例えばN‐ココイルサルコシナート、N‐ラウロイルサルコシナート、N‐ステアロイルサルコシナート、N‐オレオイルサルコシナート、N‐ミリストイルサルコシナート、N‐ココイルサルコシナート、N‐ミリストイルサルコシナート、カリウムN‐ラウロイルサルコシナート、それらの塩またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0039】
いくつかの実施形態では、アミノ酸誘導体は、例えば、C
8-C
18グリシン(例えばC
8-C
18脂肪族グリシン、例えばC
8-C
16、C
10-C
14、C
10-C
12、C
12-C
16、C
12-C
18脂肪族グリシンなど)のような脂肪酸アミノ酸アミド等のグリシン誘導体であるか、それを含む脂肪酸アミノ酸アミドの形態でのアミノ酸アミドである。例として、N-ラウロイルグリシン、N-ミリストイルグリシン、N-パルミトイルグリシンまたはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、アミノ酸誘導体は 、例えばC
8-C
18アラニナート(例えば、C
8-C
18脂肪酸アラニナート、例えばC
8-C
16、C
10-C
14、C
10-C
12、C
12-C
16、C
12-C
18脂肪酸アラニナートなど)等、例えばN-ラウロイルアラニナート、N-ミリストイルアラニナート、カリウムN‐ココイルアラニナート、それらの任意な塩、またはそれらの任意な組み合わせ等のアラニナート化合物を含む脂肪酸アミノ酸の形態でのアミドである。いくつかの実施形態では、アミノ酸誘導体は、例えばC
8-C
18グルタメート(例えば、C
8-C
18脂肪族グルタメート、例えばC
8-C
16、C
10-C
14、C
10-C
12、C
12-C
16、C
12-C
18脂肪族グルタメートなど)、例えばN-ラウロイルグルタメート、N‐ココイルグルタメート、カリウムN‐ココイルグルタメート、それらの任意な塩、またはそれらの任意な組み合わせ等のグルタメート化合物を含む脂肪酸アミノ酸アミドの形態でのアミノ酸アミドである。
【0041】
腐食抑制剤は、1つ以上のリン酸エステル、イセチオナート、スルホサクシネート、スルホシンナマート、硫酸塩等の他の陰イオン界面活性剤であるか、またはそれらを含むことができる。リン酸エステルが、ホスファート、ゼロ、一つ以上のエチレングリコール単位を通して脂肪族鎖に結合する陰イオン性頭部基で特徴付けられるため腐食抑制剤として望ましい。任意の好適なリン酸エステル、例えば、C
8-C
16、C
10-C
14、C
10-C
12、C
12-C
16、C
12-C
18脂肪族リン酸エステル(例えば、C
18アルケニルリン酸エステル(例えばオレイルリン酸エステル、オレス−3‐リン酸エステル、オレス−10‐リン酸エステル、またはそれらの任意な組み合わせ)のようなC
8-C
18 脂肪族リン酸エステルを含めて、コバルト腐食を抑制するために利用することができる。
【0042】
腐食抑制剤がいくつかの実施形態でカルボキシラート化合物であるかまたはカルボキシラート化合物含むことができる。本明細書で定義する様に、カルボキシラートは、研磨組成物のpHに依存して、そのような化合物が塩(例えば、金属塩、アンモニウム塩またはその他)、酸の形態で、またはそれらの酸及び塩の混合物として存在する場合があることが理解されるようにカルボン酸を含む。そのような化合物の酸若しくは塩形態またはそれらの混合物が研磨組成物の調製での使用に適している。任意の好適なカルボン酸を、例えば、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、それらの任意な塩、それらの任意な構造異性体、またはそれらの任意な組み合わせ等、C
8-C
18カルボン酸(例えば、C
8-C
18脂肪族カルボン酸(例えばC
8-C
16、C
10-C
14、C
10-C
12、C
12-C
16、C
12-C
18脂肪族カルボン酸など))を含めて利用することができる。本明細書で定義する構造異性体は、同じ実験式で結合性が異なる脂肪族基を指すことが理解されよう。例えば、3‐エチルデシル基はn‐ドデシル基の構造異性体である。
【0043】
ホスホナート化合物は、発明の実施形態に従った別の好適なタイプの腐食抑制剤(単独または他との組み合わせ)である。本明細書で定義する様に、ホスホナートは、研磨組成物のpHに依存して、そのような化合物が塩(例えば、金属塩、アンモニウム塩またはその他)、酸の形態またはそれらの酸及び塩の混合物として存在する場合があることが理解されようにホスホン酸を含む。そのような化合物の酸または塩またはそれらの混合物が研磨組成物の調製での使用に適している。任意の好適なカルボン酸を、例えば、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、それらの任意な塩、それらの任意な構造異性体、またはそれらの任意な組み合わせ等、C
8-C
18カルボン酸(例えば、C
8-C
18脂肪族カルボン酸(例えばC
8-C
16、C
10-C
14、 C
10-C
12、C
12-C
16、C
12-C
18脂肪族カルボン酸など))を含めて利用することができる。本明細書で定義するそのようなホスホナートの構造異性体は、同じ実験式で結合性が異なる脂肪族基をもつ脂肪族基が利用できる脂肪族ホスホナートを指すことが理解されよう。例えば、3‐エチルデシルホスホナートはn‐ドデシルホスホナートの構造異性体である。
【0044】
いくつかの実施形態では、阻害剤がスルホナート化合物であるかまたはスルホナート化合物を含むことができる。例えば、スルホナートは、スルホン酸(カルボキシラート及びホスホナートについて上述した類似の塩−酸形態下)、脂肪族スルホナート、例えば1‐ヘキサデカンスルホナート、オレフィンスルホナート、またはそれらの組み合わせを含むC
8-C
18スルホナート(例えば、C
8-C
16、C
10-C
14、C
10-C
12、C
12-C
16、C
12-C
18脂肪族スルホナートなど)とすることができる。オレフィンスルホナートは、例えば、C
8-C
24アルケニル基(例えばC
10-C
20アルケニル基、C
12-C
18アルケニル基、C
14-C
16アルケニル基など)の任意の好適なアルケニル基を有することができる。いくつかの実施形態では、スルホナートは非金属錯塩アルキルスルホナートまたは金属塩アルキルスルホナート 、例えばC
14-
17第二級アルキルスルホナート塩、または第二級アルキルスルホナートの構造異性体、すなわち線形アルキルスルホナートとすることができる。塩は、非金属錯イオン(例えばアンモニウム、アルキルアンモニウム)または任意の好適な金属(例えばカリウム、セシウム、ナトリウム、リチウムなど)から生成することができる。
【0045】
1つの実施形態では、腐食抑制剤は両性界面活性剤を含む、両性界面活性剤から実質的になる、または両性界面活性剤からなる。両性界面活性剤は任意の適切な両性界面活性剤とすることができる。例えば、両性界面活性剤はラウリミノジプロピオン酸ナトリウムまたはベタイン(例えばC
12-C
14-アルキルジメチルベタイン)の場合がある。好適な両性界面活性剤が、例えばRhodia(例えば、MIRATAINE(商標)H2C-HA)及びSigma-Aldrich(例えばEMPIGEN(商標)BB)から市販されている。あるいは、両性界面活性剤は、1つ以上のラウリミノジプロピオン酸ナトリウム及びベタインを含まない任意の適切な両性界面活性剤とすることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、研磨組成物または他の抑制剤含有組成物はベンゾトリアゾール(BTA)のような芳香族アゾールが実質的にフリーである。本明細書で使用されるとき、BTA等の芳香族アゾールの「実質的にフリー」とは、組成物の重量に基づいて0重量%、または、そのような芳香族アゾール(例えばBTA)が存在しない、あるいはそのような芳香族アゾールの無効または非物質的量を意味する。無効量の例は、そのような芳香族アゾール(例えばBTA)の使用を意図した目的を達成するための閾値以下の量である。非物質的量は例えば約0.01重量%以下とすることができる。
【0047】
腐食抑制剤は任意の適切な分子量を有することができる。いくつかの実施形態では、望ましい腐食抑制剤が約60g/mol〜約500g/mol、例えば約60g/mol〜約450g/mol、約60g/mol〜400g/mol、約60g/mol〜約350g/mol、約60g/mol〜約300g/mol、約60g/mol〜約250g/mol、約60g/mol〜約200g/mol、約60g/mol〜約150g/mol、約60g/mol〜約100g/mol、約100g/mol〜約500g/mol、約100g/mol〜約450g/mol、約100g/mol〜約400g/mol、約100g/mol〜約400g/mol、約100g/mol〜約350g/mol、約100g/mol〜約300g/mol、約100g/mol〜約250g/mol、約100g/mol〜約200g/mol、約100g/mol〜約150g/mol、約150g/mol〜約500g/mol、約150g/mol〜約450g/mol、約150g/mol〜約350g/mol、約150g/mol〜約300g/mol、約150g/mol〜約250g/mol、約200g/mol〜約500g/mol、約200g/mol〜約450g/mol、約200g/mol〜約400g/mol、約200g/mol〜約350g/mol、約200g/mol〜約300g/molなどの分子量を有するように選択することができる。
【0048】
表1は、発明の実施形態に従って代表的な腐食抑制剤の例を要約する。
表1
【表1】
【0049】
腐食抑制剤を任意の適切な量で組成物に含めることができる。例えば、いくつかの実施形態では抑制剤が約0.0025重量%以上の量、例えば約0.004重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、約0.075重量%以上、約0.1重量%以上または約0.25重量%以上で存在する。あるいは、または更に、腐食抑制剤が約1重量%以下、例えば約0.75重量%以下、約0.5重量%以下、約0.25重量%以下、または約0.1重量%以下の濃度で研磨組成物に存在することができる。従って、腐食抑制剤は、上記の終端点の任意の2つにより規定される濃度で研磨組成物中に存在することができる。好ましくは、腐食抑制剤が約0.004〜約0.25重量%、例えば約0.004〜約0.2重量%、約0.004〜0.010重量%、約0.004〜約0.008重量%、約0.005〜約0.15重量%、約0.006〜0.010重量%、約0.0075〜約0.1重量%、約0.01〜約0.1重量%または約0.05〜約0.1重量%などの濃度で研磨組成物中に存在する。
【0050】
速度促進剤
研磨組成物は適切な速度促進剤を含むことができる。速度促進剤は研磨組成物による基板からの材料の除去速度を改善する物質または物質の組み合わせである。速度促進剤は、例えばカチオン性速度促進剤、両性イオン性速度促進剤、アニオン性速度促進剤またはそれらの任意な組み合わせである場合またはそれらを含む場合がある。いくつかの実施形態では、速度促進剤がアニオン性速度促進剤を含む、アニオン性速度促進剤からなる、またはアニオン性速度促進剤から実質的になる。例えば、いくつかの実施形態では、速度促進剤としてホスホン酸、N-複素環式化合物またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、速度促進剤は、式NR
1R
2R
3 (式中、R
1、R
2及びR
3は水素、カルボキシアルキル、置換カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、置換ヒドロキシアルキル及びアミノカルボニルアルキルから独立して選択され、R
1、R
2及び R
3のいずれもが水素、ジカルボキシヘテロ環、ヘテロシクリルアルキル‐α‐アミノ酸、N‐(アミノアルキル)アミノ酸、非置換ヘテロ環、アルキル置換ヘテロ環、置換アルキル置換ヘテロ環、及びN‐アミノアルキル‐α‐アミノ酸でないか、R
1、R
2及びR
3の一つが上記である)を有する化合物から選択することができる。
【0052】
速度促進剤は、本明細書で列挙した化合物のクラスから選択される任意の好適な速度促進剤とすることができる。好ましい実施形態では、速度促進剤はイミノ二酢酸、2-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、ビシン、ジピコリン酸、ヒスチジン、[(2-アミノ-2-オキソエチル)アミノ]酢酸、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、リジンまたはそれらの組み合わせである。
【0053】
一つの実施形態では、速度促進剤がホスホン酸を含む、ホスホン酸から実質的になる、またはホスホン酸からなる。ホスホン酸は任意の好適なホスホン酸とすることができる。好ましくは、ホスホン酸がアミノトリ(メチレンホスホン酸)または1‐ヒドロキシエチリデン-1,1‐ジホスホン酸である。好適なホスホン酸は、例えばItalmatch Chemicals(例えば、DEQUEST
(商標)2000及びDEQUEST
(商標)2010)から市販されている。あるいは、ホスホン酸は任意の好適なホスホン酸であって、1つ以上のアミノトリ(メチレンホスホン酸)及び1-ヒドロキシエチリデン‐1,1‐ジホスホン酸を含まないものとすることができる。
【0054】
別の好ましい実施形態では速度促進剤はN-複素環式化合物を含む、N-複素環式化合物から実質的になる、またはN-複素環式化合物からなる。N-複素環式化合物は任意の適切なN-複素環式化合物とすることができる。好ましくは、N-複素環式化合物はピコリン酸、L-ヒスチジン、2-メルカプト-1-メチルイミダゾールまたはイミダゾールである。あるいは、N-複素環式化合物は任意の好適なN-複素環式化合物であって、1つ以上のピコリン酸、2‐メルカプト-1-メチルイミダゾール及びイミダゾールを含まないものとすることができる。
【0055】
速度促進剤(コバルトの場合または他の金属の場合)は任意の適切な濃度で研磨組成物中に存在しうる。いくつかの実施形態では、速度促進剤は約0.05重量%以上、例えば約0.075重量%以上、約0.1重量%以上、約0.15重量%以上、約0.2重量%以上、約0.25重量%以上、約0.5重量%以上または約0.75重量%以上の濃度で研磨組成物中に存在しうる。あるいは、または加えて、速度促進剤が約8重量%以下の量、例えば約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下または約1重量%以下の濃度で研磨組成物中に存在しうる。従って、速度促進剤は、上記の終端点の任意の2つにより規定される濃度で研磨組成物中に存在しうる。
【0056】
いくつかの実施形態では、速度促進剤は約0.05〜約5重量%、例えば約0.05〜約3重量%、約0.2〜約1重量%、または約0.1〜約2重量%の濃度で研磨組成物中に存在しうる。
【0057】
CMP組成物の他の成分
いくつかの実施形態では研磨組成物は、限定はされないが、コバルト等の金属を酸化する酸化剤を含む。酸化剤は、研磨組成物のpHでコバルトを酸化するのに十分な大きさの酸化電位を有する任意の適切な酸化剤でありうる。好ましい実施形態では酸化剤が過酸化水素である。他の好適な酸化剤の例として、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム)、第二鉄塩(例えば、硝酸第二鉄)、無機過酸化物、有機過酸化物およびそれらの組み合わせが挙げられる。無機過酸化物として、過炭酸ナトリウム、過酸化カルシウム及び過酸化マグネシウムが挙げられる。酸化剤は、上述した一つ以上の好適な酸化剤の例を含む、これらの例から実質的になる、またはこれらの例からなる。
【0058】
研磨組成物は任意の好適な量の酸化剤を含みうる。いくつかの実施形態では、酸化剤は約0.1重量%〜約5重量%、例えば約0.2重量%〜約5重量%、約0.3重量%〜約5重量%、または約0.3重量%〜約3重量%の濃度で研磨組成物中に存在しうる。いくつかの実施形態では、酸化剤が約0.2重量%〜約2重量%、例えば約0.3重量%〜約1.8重量%、約0.6重量%〜約1.2重量%の濃度で研磨組成物中に存在する。
【0059】
研磨組成物は任意選択でエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体を更に含む。理論に束縛されるものではないが、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体は誘電性除去の抑制剤として作用すると考えられる。特に、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体はブラックダイヤモンド(BD)の誘電性除去の抑制剤として作用すると考えられる。
【0060】
エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体は任意の適切なエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体とすることができる。例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体は、一級水酸基を末端にもつ二官能基ブロック共重合体界面活性剤とすることができる。好適なエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体は、例えばBASF社(例えば、F108を含むPLURONIC(商標)系の製品)から市販されている。あるいは、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体は、一級水酸基を末端にもつ二官能基ブロック共重合体界面活性剤を含まない任意の適切なエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体の場合がある。
【0061】
エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体は任意の好適な濃度で研磨組成物中に存在しうる。例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体は、約0.001重量%以上、例えば約0.005重量%以上、約0.0075重量%以上、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、または約0.1重量%以上の濃度で研磨組成物中に存在しうる。あるいは、または更に、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体は約1重量%以下、例えば約0.75重量%以下、約0.5重量%以下、約0.25重量%以下、または約0.1重量%以下の濃度で研磨組成物に存在しうる。従って、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体は上記の終端点の任意の2つにより規定される濃度で研磨組成物中に存在しうる。好ましくは、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体が約0.005〜約0.1重量%、例えば約0.0075〜約0.1重量%、約0.01〜約0.1重量%、または約0.05〜約0.1重量%の濃度で研磨組成物中に存在する。
【0062】
研磨組成物は任意選択で高分子安定剤を更に含む。高分子安定剤は任意の好適な安定剤とすることができる。好ましくは、高分子安定剤はポリアクリル酸である。あるいは、高分子安定剤は任意の好適な安定剤であって、ポリアクリル酸を含まないものすることができる。高分子安定剤は任意の適切な濃度で研磨組成物中に存在しうる。例えば、高分子安定剤は約0.01〜約1重量%、例えば約0.025〜約0.5重量%、または約0.025〜約0.1重量%の濃度で研磨組成物中に存在しうる。好ましくは、高分子安定剤が約0.025〜約0.075重量%、例えば約0.05重量%の濃度で研磨組成物中に存在する。
【0063】
望ましくは、コバルトが基板の実施形態では化学機械研磨組成物が約3〜約8.5のpHを有する。いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、8.5以上のpHでは酸化コバルト表面が負に荷電し、アニオン性酸化表面電荷がアニオン性抑制剤分子と反発するため抑制剤の効力が低下することが思量される。コバルトで使用する研磨組成物のpHは、pH3以下でのコバルト溶解に関する相対的表面不安定性のため3以下は望ましくない。しかし、他のpHの可能性は基板次第である。例えば、銅の研磨組成物は約3〜約7のpHをもち、タングステンの研磨組成物は約2〜約4のpHをもちうる。いくつかの実施形態では、研磨組成物は任意選択で水酸化アンモニウムまたは所望のpH達成を支援することが知られている他の緩衝剤を含む。
【0064】
研磨組成物は任意選択で1つ以上の添加剤を更に含む。例示の添加剤としては、コンディショナー、酸(例えば、スルホン酸)、錯化剤(例えば、アニオン性重合体錯形成剤)、キレート剤、殺生物剤、スケール抑制剤、分散剤等が挙げられる。
【0065】
殺生物剤は、存在する場合、任意の好適な殺生物剤であることができ、任意の適切な量で研磨組成物中に存在することができる。適切な殺生物剤は、イソチアゾリノン殺生物剤である。研磨組成物中の殺生剤の量は、存在する場合は、一般的には、使用時点で、約1ppm〜約50ppm、好ましくは約10ppm〜約30ppmである。
【0066】
CMP組成物の調製
研磨組成物は任意の好適な技術によって調製することができ、その多くが当業者に公知である。研磨組成物は回分または連続法で調製することができる。一般に、研磨組成物は任意の順序で成分を組み合わせことによって調製することができる。本明細書で使用されるとき、「成分」という用語は、個別の原料(例えば、研摩剤、速度促進剤、腐食抑制剤、酸化剤など)並びに原料(例えば、研摩剤、速度促進剤、腐食抑制剤、酸化剤など)の任意の組合せを含む。
【0067】
例えば、研摩剤を水中に分散させる場合がある。次いで、速度促進剤及び腐食抑制剤を加えて、研磨組成物中に成分を取り込むことができる任意の方法で混合することができる。酸化剤は、研磨組成物の調製の間に任意の時間で加えることができる。研磨組成物は、1つ以上の成分(例えば酸化剤)を用いて、使用直前(例えば、使用前1分以内、または使用前約1時間以内、または使用前約7日以内)に研磨組成物に加えて使用前に調製することができる。また、研磨組成物は、研磨操作の間に基板表面で成分を混合して調製することもできる。
【0068】
研磨組成物は、研磨剤、速度促進剤、腐食抑制剤、酸化剤、水などを含むワン・パッケージシステムとして供給することができる。あるいは、研磨剤は、第1容器の水中分散系として供給し、速度促進剤、腐食抑制剤、酸化剤及び所望の他の原料は、乾燥形態または溶液若しくは水中分散系のいずれかで第2容器に供給することができる。酸化剤は、望ましくは研磨組成物の他成分と別々に供給し、例えばエンドユーザーが使用直前(例えば、使用前1週間以内、使用前1日以内、使用前1時間以内、使用前10分以内、または使用前1分以内)に研磨組成物の他成分と統合する。 第1容器または第2容器内の成分は乾燥形態だが一方、他の容器内の成分は水性分散の形態とすることができる。更に、第1と第2容器内の成分は、異なるpH値を有するか、あるいは実質的類似、または等しいpH値を有することが適している。他の2つの容器、または3つ以上の容器、研磨組成物の成分の組み合わせは当業者の知識範囲内である。
【0069】
発明の研磨組成物は、使用前に適切な水量で希釈されることを意図した濃縮物として提供することができる。そのような実施形態では、研磨組成物濃縮物は、適切な水量及び既に適量で存在しない場合には酸化剤で濃縮物を希釈したときに、研磨組成物の各成分が各成分について上記に列挙した適切な範囲内の量で研磨組成物中に存在するように、研磨剤、速度促進剤、腐食抑制剤及び所望の他原料を、酸化剤の有り無しで含むことができる。例えば、研摩剤、速度促進剤、腐食抑制剤、及び所望の他原料は、濃縮物を適切な量の酸化剤と共に等量(例えば、2倍の等水量、3倍の等水量または4倍の等水量)で希釈したときに、各成分について上述した範囲内の量で研磨組成物中に存在するように、各成分について上記に列挙した濃度より約2倍より大きい(例えば、約3倍、約4倍、または約5倍)量で濃縮物に存在しうる。更にまた、当業者は理解するであろうように、濃縮物は、他の成分が濃縮物に少なくとも部分的または完全に溶解するのを確実にするために最終研磨組成物中に存在する適当な画分の水を含むことができる。
【0070】
基板の研磨方法
別の態様では、(i)基板を提供する、(ii)研磨パッドを提供する、(iii)化学機械研磨組成物を提供する、(iv)基板と研磨パッド及び化学機械研磨組成物を接触させる、及び(v)基板に対して研磨パッド及び化学機械研磨組成物を動かして少なくとも基板の一部を摩滅させて、基板を研磨することを含む、またはこれらからなる、若しくはこれらから実質的になる基板の研磨方法を提供する。研磨組成物は、本明細書に記載したように、(a)アニオン性粒子を含む研磨剤、(b)速度促進剤、(c)両性界面活性剤、スルホナート、ホスホナート、カルボキシラート、アミノ酸誘導体(例えば、脂肪酸アミノ酸アミド)、リン酸エステル、イセチオナート、サルフェート、スルホサクシネート、スルホシンナマート、またはそれらの任意な組み合わせを含む腐食抑制剤、(d)酸化剤、及び (e)
水性担体を含む、これらからなる、またはこれらから実質的になる。
【0071】
具体的には、発明は更に、(i)コバルト層を含む基板を提供する、(ii)研磨パッドを提供する、(iii)化学機械研磨組成物を提供する、(iv)基板と研磨パッド及び化学機械研磨組成物を接触させる、及び(v)基板に対して研磨パッド及び化学機械研磨組成物を動かして少なくとも基板の一部を摩滅させて、基板を研磨することを含む基板の研磨方法を提供する。研磨組成物は、本明細書に記載したように、(a)アニオン性粒子を含む研磨剤、(b)速度促進剤、(c)両性界面活性剤、スルホナート、ホスホナート、カルボキシラート、アミノ酸誘導体(例えば、脂肪酸アミノ酸アミド)、リン酸エステル、イセチオナート、サルフェート、スルホサクシネート、スルホシンナマート、またはそれらの任意な組み合わせを含む腐食抑制剤、(d)酸化剤、及び (e)
水性担体を含む、これらからなる、またはこれらから実質的になる。
【0072】
発明の研磨方法及び組成物は任意の適切な基板を研磨するのに有用である。研磨方法及び組成物は特にコバルトを含む基板層、コバルトから実質的になる基板層、またはコバルトからなる基板層の研磨に有用である。好適な基板としては、限定はされないが、フラットパネルディスプレイ、集積回路、メモリーディスクまたはりリジッドディスク、金属、半導体、層間絶縁膜(ILD)デバイス、微小電気機械システム(MEMS)、 強誘電体及び磁気ヘッドが挙げられる。基板は少なくとも他の1層、例えば、絶縁層を更に含むことができる。絶縁層は、金属酸化物、多孔性金属酸化物、ガラス、有機ポリマー、フッ化有機ポリマー、または任意の他の適切な高若しくは低誘電率(κ)絶縁体層、例えばブラックダイヤモンド(BD)とすることができる。絶縁体層は、酸化ケイ素、窒化ケイ素若しくはそれらの組み合わせを含む、それらから実質的になる、またはそれらからなることができる。酸化ケイ素層は、多くが当該技術分野で公知である好適な任意の酸化ケイ素を含み、これらから実質的になり、またはこれらからなることができる。例えば、酸化ケイ素層は、テトラエトキシシラン(TEOS)、高密度プラズマ(HDP)酸化物、ホウリンけい酸ガラス(BPSG)、高アスペクト比プロセス(HARP)酸化物、 塗布型層間絶縁膜spin on dielectric(SOD)酸化物、化学気相蒸着(CVD)酸化物、プラズマ増強テトラエチルオルソけい酸塩(PETEOS)、熱酸化物、または非ドープシリケートガラスを含むことができる。基板は金属層を更に含むことができる。金属は、多くが当該技術分野で公知な、例えばコバルト、銅、タンタル、窒化タンタル、タングステン、チタン、窒化チタン、白金、ルテニウム、イリジウム、アルミニウム、ニッケルまたはそれらの組合せのような任意の好適な金属を含み、これらから実質的になり、またはこれらからなる。
【0073】
発明に従って、基板は任意の適切な技術によって本明細書に記載した研磨組成物で平坦化または研磨することができる。発明の研磨方法は特に化学機械研磨(CMP)装置と連結した使用に適している。一般的に、CMP装置は、使用するときに運動し、軌道運動、線形運動または円運動から生じる速度を有するプラテン、プラテンと接触し運動の際にプラテンと共に動く研磨パッド、研磨パッド表面に対して接触し、動くことによって研磨される基板を保持する担体を備える。基板の研磨は、基板を発明の研磨組成物及び一般的には研磨パッドと接触させて配置し、次いで、研磨組成物及び典型的には研磨パッドを用いて、基板表面の少なくとも一部(例えば、コバルト、または本明細書に記載した1つ以上の基板物質)を摩耗させて基板を研磨することによって行う。任意の好適な研磨条件を使って基板を研磨することができる。
【0074】
基板は、任意の適切な研磨パッド(例えば、研磨表面)と化学機械研磨組成物を使って平坦化または研磨することができる。適切な研磨パッドとして、例えば織布及び不織布研磨パッドが挙げられる。さらに、好適な研磨パッドは、様々な、密度、硬度、厚さ、圧縮性、圧縮で反発する能力、および圧縮係数を有する任意の好適なポリマーを含むことができる。好適なポリマーとしては、例えば、ポリビニルクロライド、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソシアヌレート、それらの共生成製品、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0075】
望ましくは、CMP装置は その場研磨終点検知システムを更に含み、その多くが当該技術分野では公知である。加工部材の表面から反射される光または他の放射線を分析することによって研磨工程を検知及び監視する技術は当該技術分野では公知である。前述の方法は、例えば米国特許第5,196,353号、米国特許第5,433,651号、米国特許第5,609,511号、米国特許第5,643,046号、米国特許第5,658,183号、米国特許第5,730,642号、米国特許第5,838,447号、米国特許第5,872,633号、米国特許第5,893,796号、米国特許第5,949,927号、米国特許第5,964,643号に記載されている。望ましくは、研磨されている加工部材に関して研磨工程の進行の検出または監視が研磨終点の決定、すなわち特定の加工部材に関して研磨工程の終了時の決定を可能にすることである。
【0076】
以下の実施例は本発明を更に例示するが、言うまでもなく、その範囲を何ら限定するものとして解釈されるべきではない。
【0077】
実施例1
この例は、活性環境条件下のもとでの抑制剤組成物の腐食抑制効力を示す。特に、抑制剤が存在しない対照溶液との比較で、コバルト(Co)基板の静的エッチ速度(SER)を様々なpHに亘って種々の抑制剤溶液に曝露した後に測定した。静的エッチングは、試験したpHレベルで水へのコバルト溶解の大きさ示す手法であり、高値は望ましくない。また、追加的腐食性が必要な場合、すなわちpH3以上で所望の活性環境条件を提供するために溶液に硫酸カリウム(K
2SO
4 )も含めた。
【0078】
シリコン上に二酸化ケイ素(SiO
2) 、その上にチタン(Ti)、その上にコバルトの沈着スキームで2000Åの厚さをもつ、物理的蒸着法(PVD)で調製したコバルトウエハーをSilyb Wafer Services社、Gig Harbor、ワシントン州から入手した。コバルトウエハーを2cm×2cmの正方形に区切った。
【0079】
コバルト正方形を異なる各pH(3.0、5.0、7.0および9.0)に調製した四つの溶液に各5分間曝露した。侵食性の緩衝剤で溶液を調製し、腐食性条件を構築するのに必要なpH及び硫酸カリウムを維持した。硫酸カリウムが200Å/分より大きい静的エッチング速度を与える非不働態化塩であるため侵食性の腐食条件に影響を与えることは理解されるであろう。
【0080】
40グラムに計量した各試験溶液(過酸化水素を含まない)を50mLのビーカーに加え、35℃のウォーターバス内に置いた。各溶液を35℃平衡にした後、過酸化水素を加え、溶液を放置して再度平衡にさせた。抑抑制剤の効果を試験するために腐食条件の設定に使用した溶液を表2に記述し、また各試験緩衝剤と共に用いた異なる腐食抑制剤を表3に記述する。緩衝剤と抑制剤濃縮溶液を単純に混合して腐食抑制剤の試験溶液を調製した。
表2
【表2】
【0081】
KLATencor社、Milpitas、カリフォルニア州から市販されているOmniMap「RS‐75」測定器を使用して曝露前後のコバルトの厚さを測定した。厚さ変化率を使って静的エッチング速度(SER)計算した。SERは表3にpHの関数として各抑制剤(溶解する場合)に対してÅ/分で報告する。
【0082】
表3は、種々のpHレベルで各抑制剤溶液に曝露した後のPVDコバルト正方形のSERを示す。表3で示すように、「NT」は未試験を示し、「IS」は不溶解性を示し、「high」は試料が高度に腐食されたが、高レベルの腐食のために測定器(すなわち、上記の「RS‐75」)が正確な読み取りを提供しなかったことを示す。比較の目的でベースライン値を与える対照と値を比較する。表3に記載した平均SER値は、2つのデータポイントを通常に平均化することによって得た。
表3
【表3】
【0083】
コバルトのエッチングを効果的に抑制する抑制剤は、所望の通り、コバルトの溶解が少ないときに同じ程度で低い値を提供する。表3に記載したデータから明らかなように、本実験で記載した腐食条件下でも、望ましいことにサルコシナートが全pHで平均SER値が低く、対照で示された結果よりはるかに低く、大部分の値が対照の半分未満(例えば120以下、多くの値がそれよりはるかに小さい)であった。加えて、表3に記載したデータは、BTAが少なくともいくつかの実施形態でコバルト用には無効な腐食抑制剤であることを示す。
【0084】
更にまた、表3に記載したデータから明らかなように、12個の炭素
より大きい脂肪族鎖長を有するカルボキシラート基を含む界面活性剤が相当なコバルト腐食抑制を示した(対照と比較して、SERで70%以上減少)。少なくとも12個の炭素の鎖長をもつグルタメートとサルコシナートが主に低pH(3と5)で効果的であった。 特定の理論に束縛されるものではないが、この効果は、これらのpHレベルにおける陰イオン性頭部基と酸化コバルト‐水酸化物表面との電荷引力によるとすることができると思量される。更に、コバルト酸化物の等電点(IEP)の判定が約7-9であるため、9より大きいpHではこれらの抑制剤の作用は効果が弱いと考えられる。再び、いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、陰イオン性頭部基が陽イオン性コバルト表面に約pH9以下で引き付けられ、コバルト表面に陰イオン界面活性剤の不動態化層が形成されるようになることが注目される。
【0085】
更に、表3に記載したデータから明らかなように、スルホナート及びホスホナート頭部基は顕著な腐食抑制を提供する。このことは抑制が比較的に陰イオン性頭部基と無関係に達成されうることを示唆する。ナトリウムオレフィンスルホン酸塩は多分溶解性の問題に起因する可変的挙動を示した。スルホナート界面活性剤の低溶解性が観察された。1‐ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム塩は、多くの条件下で他の分子/鎖長が等価な界面活性剤より低溶解性であった。加えて、ナトリウムオレフィンスルホン酸塩(1mM未満)の臨界ミセル濃度が試験したサルコシナート(3−15mM)より低い。コバルト防食に利用できる活性な抑制剤の減少によって低い溶解性と臨界ミセル濃度が防食効果の変化の原因の可能性がある。
【0086】
多くの実用的応用は使用中にそのような腐食条件に曝すことを必要としないことは理解されよう。従って、本実施例の実験に記載した条件が、いくつかの実施形態の実践と似た共通の条件を示さないくてもよいことが理解されよう。例えば、半導体ウエハー業界では、本実施例に記載した腐食条件が典型的であるとすることはできない。
【0087】
しかし、いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、腐食条件ではアミンによる性能欠如が陰イオン性頭部基が効果的であることを示すということができる。これは陽イオン界面活性剤とコバルト表面の間に電荷斥力の可能性があることを示唆する。これらの分子による抑制機構は、コバルト表面による陰イオン基の配位化、続いての疎水性尾部基の配列化を介して発生し、それによって以降の酸化からコバルトを保護する考えられる。
【0088】
いくつかの実施形態に従って、特に腐食条件に関して、少なくとも14個の炭素の脂肪族鎖長を含む抑制剤が、いくつかの実施形態で効率的表面吸着とコバルト腐食抑制に有用である。腐食抑制剤は、腐食抑制剤に表面活性を与える親水性頭部基と疎水性尾部基を有しているため、いくつかの実施形態では界面活性剤とみなすことができる。いくつかの実施形態で芳香族基単独では特にこれらの腐食条件下でコバルト抑制を提示しなかったが、これは恐らく疎水性特徴量がより低下したか、または長鎖、飽和脂肪族鎖と比較して効率的な充填(packing)が減少したことに起因する。
【0089】
実施例2
本実施例は実施例1の条件より低活性の環境条件下で抑制剤組成物の腐食抑制効力を示す。特に、SER実験は、硫酸カリウム塩がいずれの溶液にも含まれないこと以外は実施例1に記載したように実行した。
【0090】
表4は、硫酸カリウム(K
2SO
4)塩を添加しない以外は実施例1に前述したのと同様な試験手順と条件下で選択抑制剤溶液のSERを示す。
表4
【表4】
【0091】
これらの結果は、先に実施例1の腐食条件下で腐食抑制剤として無効だった界面活性剤が、異なる、低活性条件下で有効だったことを示す。実施例は、N-ラウロイル(C
12)サルコシナート及びドデカン(C
12)酸を含み、阻害剤がない対照と比較して著しいSERの減少を示した。更に、ホスホナート及びスルホナートが低いSERを示した。このことは更にSERが頭部基の要件と相対的に独立的であることを支持する。しかし、より低腐食条件下でもベンゾイルグリシンがなお有効でなかった。これはベンゼン環単独は抑制に十分な尾部基でないことを示す。更に、対照では全体速度がアルカリpHでのコバルトの不動態化に起因して低いため、pH9では第4級アミンが対照と区別できなかった。
【0092】
更に、これらの結果は、より活性な環境条件下では実施例1に記載した特定の鎖長要件がより低活性環境条件下では不要であったことを示す。
【0093】
実施例3
本実施例は、活性条件下で種々のサルコシナート抑制剤組成物について腐食抑制効力の用量依存の役割を示す。
【0094】
特に、SER実験は、実施例1に記載した小片のPVDコバルトウェーハを抑制剤組成物に35℃で5分間曝露して行った。抑制剤組成物はpH7で溶液性状であり、40mMのL-ヒスチジン、10mMの硫酸カリウム及び、静的エッチ速度(SER)(Y軸)対種々のサルコシナート化合物の抑制剤濃度(μM)(X軸)のグラフで
図1に示した5つの異なるサルコシナート抑制剤の1つを含んだ。SERはSER試験前後でコバルトウエハーの厚さを比較することによってÅ/分で決定した。これらの条件下でいずれの抑制剤も含まないと平均SERは表3でわかるように414Å/分であった。
【0095】
図1を参照して、試験した異なるサルコシナート抑制剤をもつ組成物は以下の通りだったことは理解されよう。組成物3Aは脂肪族鎖に12個の炭素を有するN-ラウロイルサルコシナートを含み、組成物3Bは脂肪族鎖に10個と20個の炭素を有するサルコシナートの混合物を示す天然物由来のN‐ココイルサルコシナートを含み、組成物3Cは脂肪族鎖に14個の炭素を有するN-ミリストイルサルコシナートを含み、組成物3Dは脂肪族鎖に18個の炭素を有するN-ステアロイルサルコシナートを含み、組成物3Eは脂肪族鎖に18個の炭素を有するN-オレオイルサルコシナートを含んだ。キレート化剤と速度促進剤の例であるL-ヒスチジンを、pH緩衝剤として、また腐食を増加するために各抑制剤組成物に含めた。実施例1で説明した通り、硫酸カリウムを活性環境条件を提供するために各抑制組成物に含めた。塩基を加えてpH7にした。
【0096】
図1から明らかなように、これらの結果は、約400Å/分のSER値に明示されるように、活性条件下では14個未満の炭素を含むサルコシナートは抑制能力を失う傾向になりうることを示す。加えて、N-ラウロイルサルコシナートの濃度が増加するにつれて、コバルトSERが減少することがことがわかる。加えて、
図1でわかるように、例えばオレオイルサルコシナートは200−300マイクロモルの低濃度で効果があるが、ラウロイルサルコシナートは400−750マイクロモルのより高濃度で効果が得られる。これは、活性環境条件下(実施例1で示したように、実際の条件を表示したものすることはできない)では長い鎖長材料がより効果が大きいことを反映すると思われる。より長鎖をもつステアロイル抑制剤は低用量レベル(例えば300マイクロモル未満)で効果があり、コバルト表面を溶解からより完全に保護する。
【0097】
従って、これらの結果は、活性条件下では、特により長い鎖状陰イオン界面活性剤が所望の耐腐食性を提供できることを示す。そのような腐食抑制がより低用量の要件で発生し所望の不動態化を提供するのに対し、ラウロイル抑制剤等のより短鎖の陰イオン界面活性剤は同じ抑制レベルを得るのにより高用量を必要とする。いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、これは、より長い脂肪族鎖の界面活性剤でのより強い疎水性鎖会合による相対的な疎水性に起因するとしてよい。
【0098】
実施例4
本実施例は、種々の腐食抑制剤を含む研磨組成物が効果的なコバルト除去速度を提供したことを示す。
【0099】
コバルトPDV基板を正方形(4cm×4cm)に調製した。コバルト基板を8つの化学機械研磨(CMP)組成物(
図2に組成物4A−4Hとして特定)で研磨した。各研磨組成物は、0.5重量%のアニオン性コロイダルシリカ、1重量%の過酸化水素、0.54重量%のイミノ二酢酸、0.042重量%のビス‐トリス、水を含み、pH7に調製した。シリカは研磨剤であり、過酸化水素は酸化剤であり、イミノ二酢酸は促進剤として存在する一方でビス‐トリスは緩衝剤として役立った。研磨組成物は腐食抑制剤の存在に関しては相互に異なった。組成物4Aは対照であり、腐食抑制剤を含まず比較の目的でベースラインとして使用した。残りの組成物は、各組成物に352マイクロモルの異なる腐食抑制剤を含んだ。特に、組成物4BはN‐ココイルサルコシナートを含んだ。組成物4CはN-ラウロイルサルコシナートを含んだ。組成物4DはN-オレオイルサルコシナートを含んだ。組成物4EはN-ステアロイルサルコシナートを含んだ。組成物4FはN-ミリストイルサルコシナートを含んだ。組成物4Gはドデカン酸を含んだ。組成物4Hはミリスチン酸を含んだ。
【0100】
基板は、Logitech International SA社、ローザンヌ、スイスから市販されているchemical delayering and planarization(CDP)研磨装置で研磨し、Dow Chemical社、ミッドランド、ミシガン州から市販されているIC1010研磨パッドに対してのダウンフォース圧力を10.3kPa(1.5psi)、プラテン速度を80rpm、ヘッドスピードを75rpm、スラリー流速を50mL/分とし、3M(商標)
TMA165ダイヤモンドパッドコンディショナーを使用した。
【0101】
図2で示すように、これらの結果は、腐食抑制剤の352マイクロモルの一定濃度でも、12個以下の脂肪族鎖長によって特徴付けられる陰イオン界面活性剤の場合、対照と比較して除去速度が相対的に類似したことを示す。しかし、12個より大きい脂肪族鎖長によって特徴付けられるサルコシナートは除去速度の効果が低いことが観察された。鎖長は、研磨条件下では、コバルトまたは酸化コバルト表面でより効果的な会合を増すことにより除去速度に影響を及ぼすと考えられる。
図2からわかるように、抑制剤を含まない研磨組成物、または352マイクロモルのN-ラウロイルサルコシナート(C
12)、ドデカン酸(C
12)及びミリスチン酸(C
14)を含む研磨組成物の場合、除去速度は対照(抑制剤なし)との比較で影響を受けない。C
8、C
10、C
12、C
14、C
16、C
18及びC
20サルコシナートの混合物であるN‐ココイルサルコシナートが352マイクロモルの濃度で十分な抑制を示す。より長鎖の腐食抑制剤、特にN-オレオイルサルコシナート、N-ステアロイルサルコシナート、N-ミリストイルサルコシナートを352マイクロモル濃度で使用すると、除去速度抑制はほぼ完全である。
【0102】
従って、これらの結果は、コバルト除去速度が腐食抑制剤によって影響を受けうること、同時に鎖長が短くなると一定の濃度では除去速度への有害が少なくなることを示す。鎖長 (C
8-
20)の混合物であるコイルサルコシナートは中間の除去速度を示し、コバルト除去速度への鎖長の重要性を更に支持する。より短い鎖長を含む調合物がより高いコバルト除去速度を示した。CMP応用では十分な防食を有することが望ましいが、これはより高い腐食抑制剤濃度でコバルト除去速度を犠牲にして成り立つということができる。腐食速度とコバルト除去速度を減少させる抑制剤の影響力の均衡化は調合及び応用特異的であろう。
【0103】
実施例5
本実施例は、種々の腐食抑制剤を含んだ研磨組成物が効果的なコバルト除去速度を提供したことを示す。
【0104】
コバルトPDV基板を正方形(4cm×4cm)に調製した。コバルト基板を2つの化学機械研磨(CMP)組成物(
図3に組成物5A−5Bとして特定)で研磨した。各研磨組成物は、0.5重量%のアニオン性コロイダルシリカ、0.6重量%の過酸化水素、0.6重量%のイミノ二酢酸、0.04重量%のビス‐トリス及び水を含み、pH7.1に調製した。組成物5AはN‐オレオイルサルコシナートを含み、5BがN‐ラウロイルサルコシナートを含んだ。実施例4に記載した器具を使用して基板を研磨した。結果を
図3に示す。
【0105】
これらの結果は、コバルトの化学機械研磨除去速度も抑制剤濃度の関数とすることができることを示す。特に、これらの結果は2つの異なるサルコシナート、C
18 単不飽和サルコシナートであるN-オレオイルサルコシナート対 C
12 飽和サルコシナートであるN‐ラウロイルサルコシナートの影響を示す。N-オレオイルサルコシナートは100マイクロモルの濃度でコバルト薄膜除去速度を抑制し、200マイクロモルで更により大きい程度で抑制することがわかる。CMP実験で、N-ラウロイルサルコシナートがコバルトの除去を回避する前にN-ラウロイルサルコシナートの濃度が約750マイクロモルに至ることが必要である。最適性能を達成するために、コバルトCMP除去速度と腐食挙動を抑制剤の選択(例えば、鎖長)と濃度を介して調節できることがわかる。
【0106】
実施例6
本実施例は、0.02mMの濃度で硫酸カリウム (K
2SO
4)塩を加えた以外は先に実施例1で記載した試験手順及び条件下での選択した抑制剤溶液のpH7でのエッチ速度を示す。抑制剤を含まない溶液または多様な濃度のBTAを含む溶液をN-ラウロイルサルコシナートを含む溶液と比較した。試験した抑制剤溶液を表5に示す。
表5
【表5】
【0107】
結果は、BTA単独はN-ラウロイルサルコシナートの有効量より10倍高い濃度でもコバルト静的エッチ速度の軽減に効果がないことを示す。
【0108】
本明細書で引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個別に、及び具体的に参照により組み入れられるように示され、その全体が本明細書に記載されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
(特に添付の特許請求の範囲の文脈において)本発明を説明する文脈における用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中で特に指示のない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含するものと解釈されるべきである。後に1つ以上の項目(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)のリストが続く「少なくとも1つ」という用語の使用は、本明細書中で特に指示のない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、掲げた項目(AまたはB)から選択される1つの項目あるいは掲げた項目(A及びB)の2つまたはそれ以上の任意の組み合わせを意味するものと解釈されるべきである。「具備する」、「有する」、「含む」及び「含有する」という用語は、別段の記載がない限り、制限のない用語(即ち、「含むが、これに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中で特に指示のない限り、単に範囲内の各別個の値を個別に指す簡略方法として役立つことを意図しているに過ぎず、それぞれの別個の値は、本明細書中に個別に列挙されているかのように、本明細書中に盛り込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で特に指示のない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な用語(例えば、「のような」又は「例えば」など)の使用は、単に本発明をよりよく示すことを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に必須の任意の主張する要素を示すものとして、解釈されるべきである。
【0110】
本発明を実施するために本発明者らに周知の最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。これらの好ましい実施形態の変形は、上記の説明を読むことにより当業者に明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がこのような変形を適切に使用することを期待しており、本発明者らは本発明が本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で実施されることを意図する。従って、本発明は、適用法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に記載された主題の全ての改変及び同等物を含む。更に、本明細書中で特に指示のない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、それらの全ての可能な変形における上述の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。