(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
(A)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、原料乳に不活性ガス処理を行う第一の酸素濃度低減工程(以下、「工程(A)」という)と、
(B)第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳を加熱殺菌する加熱殺菌工程(以下、「工程(B)」という)と、
(C)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、加熱殺菌工程で得られた加熱殺菌後の原料乳に不活性ガス処理を行い、溶存酸素濃度を1ppm以下に低減する第二の酸素濃度低減工程(以下、「工程(C)という」)、
を含む乳含有飲料の製造方法である。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0012】
[工程(A):第一の酸素濃度低減工程]
工程(A)は、不活性ガス処理の供給方法(例えば、比例混合装置を用いた処理)及び供給条件(例えば、原料乳の供給速度及び不活性ガスの供給量)を制御し、原料乳に不活性ガス処理を行う第一の酸素濃度低減工程である。
【0013】
本発明の原料乳は、未加熱の生乳等の加熱処理前の乳含有飲料をいう。このとき、本発明の原料乳は、不活性ガス処理を行うことができる液状の形態であればよく、例えば、牛、山羊、めん羊乳(ひつじ乳)等の獣乳(獣から搾乳した生乳)、獣乳の加工物(例えば、脱脂乳、部分脱脂乳、脱脂濃縮乳、部分脱脂濃縮乳、成分調整乳、クリーム、バターミルク等の液状の乳加工物、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、バター、発酵乳、チーズ等を液状に還元した乳加工物)、大豆乳、ココナッツミルク等の植物乳、植物乳の加工物(液状に還元した乳加工物)、人工乳(食用油脂、水、乳化剤等を混合し、水中油型乳化物とする、液状の乳加工物)等が挙げられる。また、本発明の原料乳は、乳以外の原料が含まれていてもよく、例えば、コーヒー、紅茶、緑茶、抹茶、マテ茶、果汁、野菜汁、甘味料、酸味料、ビタミン、ミネラル、機能性素材等を添加した液状の形態であればよい。なお、本発明の不活性ガスには、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0014】
工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳の溶存酸素濃度(上限値)は、好ましくは8ppm以下、より好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下である。工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳の溶存酸素濃度が8ppm以下であれば、工程(C)の第二の酸素濃度低減工程において、乳含有飲料の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、かつ、製造過程で発生する乳含有飲料の泡立ちを効果的に抑制でき、本発明を容易に実施できる点で好ましい。
【0015】
工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳の溶存酸素濃度の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.1ppm、より好ましくは0.5ppm、さらに好ましくは1.0ppm、さらに好ましくは1.5ppmである。上記原料乳の溶存酸素濃度が0.1ppm以上であると、乳含有飲料の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、かつ、製造過程で発生する乳含有飲料の泡立ちを効果的に抑制でき、本発明を容易に実施できる点で好ましい。なお、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳の溶存酸素濃度が0.1ppmよりも大きく下回る場合に、不活性ガス処理の方法によっては、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳に少なからぬ量の不活性ガスが残存し、この不活性ガスの残存により、原料乳の泡立ちを効果的に抑制できなくなる。
【0016】
工程(A)における不活性ガス処理は、本発明の特徴である、溶存酸素濃度を大きく低減させた、新鮮な風味を有する乳含有飲料を得ることができる方法であれば、特に限定されず、例えば、
(a)比例混合装置を用いた原料乳と不活性ガスとの混合、
(b)不活性ガスで満たした空間を有する装置内への原料乳の噴霧、
(c)遠心分離機(分離盤型の遠心分離器)を用いた原料乳と不活性ガスとの混合、
(d)ポンプを用いた原料乳と不活性ガスとの混合、
(e)装置内に収容した原料乳への不活性ガスの吹き込み、
の中から選ばれる一種又は二種以上の組み合わせによって行うことができる。また、工程(A)において、(a)〜(e)の中から選ばれる一種の方法(例えば、(a)の方法)を、一回又は二回以上で行うことができる。
【0017】
上記(a)の原料乳と不活性ガスとを混合するための比例混合装置は、例えば、上記比例混合装置内に連続的に供給される原料乳に、不活性ガスを特定の比率(不活性ガスの供給量/原料乳の供給量)で連続的に供給することで、不活性ガス処理された原料乳において、不活性ガスの分布が均一になるように、原料乳と不活性ガスとをインラインで(配管内で連続的に)撹拌するように構成した装置(例えば、スタティックミキサー等の剪断装置)が挙げられる。また、上記比例混合装置は、必要に応じて、上記比例混合装置の供給部分(入口部分)において、不活性ガスの供給条件(原料乳の供給量及び/又は不活性ガスの供給量)を制御できる。さらに、上記比例混合装置の供給部分(入口部分)及び/又は排出部分(出口部分)において、原料乳と不活性ガスとの混合比率を検出し、この検出結果により、上記比例混合装置の供給部分において、原料乳と不活性ガスの供給条件(原料乳の供給量及び/又は不活性ガスの供給量)を制御することができる。
【0018】
上記(b)の不活性ガスで満たした空間を有する装置内への原料乳を噴霧するための装置は、例えば、不活性ガスで内部を満たしたタンク内に、このタンクの上部等に位置する供給部分を通じて、原料乳を注入及び/又は噴霧するように構成した装置が挙げられる。ここで、原料乳の注入は、特に限定されず、例えば、公知の配管等を通して行うことができる。また、原料乳の噴霧は、特に限定されず、例えば、公知のスプレーノズルやシャワーボール等を通して行うことができる。なお、原料乳の注入の方向や原料乳の噴霧の方向は、特に限定されず、例えば、水平方向、上方向、下方向等が挙げられる。また、このタンクの上部等に位置する供給部分の配置は、1箇所又は2箇所以上である。
【0019】
上記(c)の原料乳と不活性ガスとを混合するための遠心分離機は、例えば、遠心力を利用して、微細なゴミ及び/又は乳牛等の動物に由来する成分(例えば、細胞質、白血球等)を分離除去することを目的とするクラリファイヤー、遠心力を利用して、微生物を分離除去することを目的とするバクトフュージ、原料乳から脱脂乳とクリームとを分離することを目的とするクリームセパレーター等の分離盤型の遠心分離機が挙げられる。また、上記遠心分離機の内部に設置されている回転する収容容器内に向けて、原料乳と不活性ガスとを連続的に供給し、これらを混合することにより、不活性ガス処理することができる。一般的に、遠心分離機で処理する際に、原料乳にガス等の気泡が残存すると、原料乳の処理効率が低減することが知られている。すなわち、従来では、遠心分離機で処理する際に、原料乳にガス等の気泡を巻き込まない(残存させない)ように、遠心分離機を操作することが技術常識であった。一方、本発明では、上記技術常識があるにも拘わらず、あえて、原料乳と不活性ガスとを連続的に供給し、上記と同様に処理しながら、これらを混合することにより、原料乳の溶存酸素濃度を効果的に低減させることができたものである。
【0020】
上記(c)の遠心分離機を用いた原料乳と不活性ガスとを混合するための方法は、例えば、不活性ガスの吹き込み等により、一部の溶存酸素を不活性ガスで置換した原料乳を、機器の内部が不活性ガスで満たされている遠心分離機に供給し、上記と同様に処理しながら、原料乳の溶存酸素濃度を低減させる方法、及び、溶存酸素を不活性ガスで置換していない原料乳を、機器の内部が不活性ガスで満たされている遠心分離機に供給し、上記と同様に処理しながら、原料乳の溶存酸素濃度を低減させる方法が挙げられる。
【0021】
上記(d)のポンプを用いた原料乳と不活性ガスとを混合するための方法は、例えば、原料乳と不活性ガスとを連続的に供給し、ポンプへ通液しながら、ポンプの内部で撹拌混合することにより、原料乳の溶存酸素濃度を低減させる方法が挙げられる。ここで、上記(d)の原料乳と不活性ガスとを混合するためのポンプは、例えば、渦巻ポンプ、斜流ポンプ、摩擦ポンプ等の非容積式のポンプが挙げられる。なお、上記(d)のポンプを用いた原料乳と不活性ガスとを混合するための具体的な方法は、例えば、渦巻ポンプのような静置したポンプの内部で回転する撹拌羽根(羽根車)により、原料乳と不活性ガスとを撹拌混合することにより、原料乳の溶存酸素濃度を低減させる方法が挙げられる。
【0022】
上記(a)の比例混合装置を用いた原料乳と不活性ガスとの混合において、比例混合装置に供給される原料乳の空塔速度は、好ましくは0.5〜2.5m/秒、より好ましくは0.7〜2.3m/秒、さらに好ましくは0.8〜2.1m/秒、さらに好ましくは1〜2m/秒である。ここで、比例混合装置に供給される原料乳の空塔速度が0.5m/秒以上であると、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減できて好ましい。また、比例混合装置に供給される原料乳の空塔速度が2.5m/秒以下であると、製造過程で発生する原料乳の泡立ちを効果的に抑制できて好ましい。
【0023】
ここで、空塔速度とは、下記の式に示すように、液体の処理流量を配管の断面積で除した線速度である。
[空塔速度(m/s)]=[液体の処理流量(m
3/s)]÷[配管の断面積(m
2)]
(式中、配管の断面積は、液体が流通する空間部分の断面積を意味し、スタティックミキサーのエレメントの断面積を含まない。)
【0024】
上記(a)の比例混合装置を用いた原料乳と不活性ガスとの混合において、原料乳の供給速度(単位時間あたりの供給量)に対する不活性ガスの供給速度(単位時間あたりの供給量)の体積比(不活性ガスの供給量(体積)/原料乳の供給量(体積)×100)は、好ましくは5〜70%、より好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%である。ここで、原料乳の供給速度に対する上記不活性ガスの供給速度の体積比が5%以上であると、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減できて好ましい。また、原料乳の供給速度に対する不活性ガスの供給速度の体積比が70%以下であると、製造過程で発生する原料乳の泡立ちを効果的に抑制できて好ましい。
【0025】
上記(a)の比例混合装置を用いた原料乳と不活性ガスとの混合において、泡立ちの程度が大きい原料乳に、泡立ちの程度が小さい原料乳を混合することにより、結果的に、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、製造過程で発生する原料乳全体の泡立ちを抑制させることができる。すなわち、比例混合装置に供給される原料乳の空塔速度、及び、原料乳の供給速度に対する不活性ガスの供給速度の体積比が上記の好ましい範囲に属さない操作条件で不活性ガス処理した、原料乳を部分的に含む場合であっても、泡立ちの程度が異なる2種以上の原料乳を混合することにより、結果的に、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、製造過程で発生する原料乳全体の泡立ちを効果的に抑制させることができる。
【0026】
泡立ちの程度が異なる2種以上の原料乳を混合する方法は、例えば、以下のような一連の方法が挙げられる。なお、以下の「L/h」は、リットル/時間(hour)を意味し、「L/min」は、リットル/分(minute)を意味する。まず、スタティックミキサー(内径:11mm、30エレメント)を設置した比例混合装置に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.0ppm、比重:1.03):280Lを、280L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスをバブリングして、3.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:75%)で比例的に通気(混合)し、窒素ガスを混合した後の生乳を、貯乳用タンク(500L容)に貯留する。次に、前記比例混合装置に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.0ppm、比重:1.03):105Lを、280L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスをバブリングして、1.4L/min(窒素ガス/生乳の体積比:30%)で比例的に通気(混合)し、窒素ガスを混合した後の生乳を、前記貯乳用タンク(500L容)に貯留する。その後、前記比例混合装置に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.0ppm、比重:1.03):105Lを、280L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスをバブリングして、0.7L/min(窒素ガス/生乳の体積比:15%)で比例的に通気(混合)し、窒素ガスを混合した後の生乳を、前記貯乳用タンク(500L容)に貯留する。そして、以上の一連の方法により、最終的に、泡立ちの程度が小さい原料乳を得ることができる。
【0027】
上記(b)の不活性ガスで満たした空間を有する装置内への原料乳の注入及び/又は噴霧において、不活性ガスで内部を満たしたタンク内の酸素濃度(上限値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは7%以下である。ここで、不活性ガスで内部を満たしたタンク内の酸素濃度が10%以下であると、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減できて好ましい。なお、上記の(b)の不活性ガスで満たした空間を有する装置内への原料乳の注入及び/又は噴霧において、不活性ガスで内部を満たしたタンク内の酸素濃度の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0%、より好ましくは0.1%、さらに好ましくは0.5%である。
【0028】
上記(b)の不活性ガスで満たした空間を有する装置内への原料乳の噴霧において、あらかじめ原料乳を不活性ガス処理等することにより、原料乳の溶存酸素濃度を低減することが好ましい。従来では、上記(b)の不活性ガスで満たした空間を有する装置内への原料乳の噴霧において、あらかじめ原料乳を不活性ガス処理等することは、原料乳自体の泡立ちを消滅しにくくし、製造過程で発生する原料乳全体の泡立ちを効果的に抑制できないと考えることが技術常識であった。一方、本発明では、上記技術常識があるにも拘わらず、あえて、原料乳を不活性ガス処理等して、原料乳の溶存酸素濃度を低減させた後に、上記(b)の不活性ガスで満たした空間を有する装置内へ原料乳を噴霧することにより、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、製造過程で発生する原料乳全体の泡立ちを効果的に抑制させることができたものである。
【0029】
上記(b)の不活性ガスで満たした空間を有する装置内への原料乳の噴霧において、あらかじめ不活性ガス処理等して溶存酸素濃度を低減させた、原料乳の溶存酸素濃度(上限値)は、好ましくは10ppm以下、より好ましくは8ppm以下、さらに好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下である。上記(b)の不活性ガスで満たした空間を有する装置内への原料乳の噴霧において、あらかじめ不活性ガス処理等して溶存酸素濃度を低減させた、原料乳の溶存酸素濃度が10ppm以下であると、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減でき、本発明を容易に実施できる点で好ましい。また、上記(b)の不活性ガスで満たした空間を有する装置内への原料乳の噴霧において、あらかじめ不活性ガス処理等して溶存酸素濃度を低減させた、原料乳の溶存酸素濃度の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.1ppm、より好ましくは0.5ppm、さらに好ましくは1.0ppm、さらに好ましくは1.5ppmである。上記原料乳の溶存酸素濃度が0.1ppm以上であると、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、かつ、製造過程で発生する原料乳の泡立ちを効果的に抑制でき、本発明を容易に実施できる点で好ましい。
【0030】
上記(b)の不活性ガスで満たした空間を有する装置内への原料乳の噴霧において、あらかじめ不活性ガス処理等して溶存酸素濃度を低減させた、原料乳を噴霧するための装置は、例えば、特開2001−078665号公報(上記の特許文献2)に記載されている窒素ガス置換装置を改良した装置であって、原料乳の溶存酸素濃度を低減させるにあたり、上記(a)の原料乳と不活性ガスとを混合するための比例混合装置により、窒素ガス置換装置内に上方から噴霧する原料乳に対して、あらかじめ不活性ガス処理することができる装置である。具体的には、原料乳に窒素ガスを直接的に混合分散し、あらかじめ窒素ガスを直接的に混合分散させた原料乳を、窒素ガスの雰囲気を有するタンク内に注入して貯留(供給)すると共に、あらかじめ窒素ガスを直接的に混合分散させた原料乳を、窒素ガスの雰囲気を有するタンク内に上方からノズルで噴霧しながら、これらの原料乳を混合させて、原料乳の溶存酸素と窒素ガスとの置換により、原料乳の溶存酸素量(溶存酸素濃度)を低減させることができる装置である。
【0031】
従来では、特開2001−078665号公報(上記の特許文献2)に記載されている窒素ガス置換装置により、原料乳の溶存酸素濃度を低減させるにあたり、窒素ガス置換装置内に上方から噴霧する原料乳に対して、上記(a)の原料乳と不活性ガスとを混合するための比例混合装置により、あらかじめ不活性ガス処理等することは、タンク内に注入して貯留(供給)された、消泡するべき原料乳において気泡を発生させることになり、製造過程で発生する原料乳全体の泡立ちを効果的に抑制できないと考えて、窒素ガス置換装置内に上方から噴霧する原料乳に対して、あらかじめ不活性ガス処理しないことが技術常識であった。一方、本発明では、上記技術常識があるにも拘わらず、あえて、窒素ガス置換装置内に上方から噴霧する原料乳に対して、あらかじめ不活性ガス処理することにより、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、製造過程で発生する原料乳全体の泡立ちを効果的に抑制させることができたものである。
【0032】
上記(c)の遠心分離機を用いた原料乳と不活性ガスとの混合において、不活性ガスの吹き込み等により、一部の溶存酸素を不活性ガスで置換した原料乳を、機器の内部が不活性ガスで満たされている遠心分離機に供給し、原料乳の溶存酸素濃度を低減させる方法、及び、溶存酸素を不活性ガスで置換していない原料乳を、機器の内部が不活性ガスで満たされている遠心分離機に供給し、原料乳の溶存酸素濃度を低減させる方法のうち、いずれか一方を使用するか、又は、これらの両方を併用することができる。ここで、不活性ガスの吹き込み等により、一部の溶存酸素を不活性ガスで置換した原料乳を、機器の内部が不活性ガスで満たされている遠心分離機に供給し、一般的な操作条件と同様に処理して、原料乳の溶存酸素濃度を低減させる方法において、原料乳の供給速度(単位時間あたりの供給量)に対する不活性ガス(遠心分離機で処理する前に用いる不活性ガスに限る。)の供給速度(単位時間あたりの供給量)の体積比(不活性ガスの供給量/原料乳の供給量×100)は、好ましくは10〜200%、より好ましくは30〜180%、さらに好ましくは50〜150%である。ここで、原料乳の供給速度に対する不活性ガスの供給速度の体積比が10%以上であると、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させることができて好ましい。原料乳の供給速度に対する不活性ガスの供給速度の体積比が200%以下であると、製造過程で発生する原料乳全体の泡立ちを効果的に抑制できて好ましい。また、溶存酸素を不活性ガスで置換していない原料乳を、機器の内部が不活性ガスで満たされている遠心分離機に供給し、一般的な操作条件と同様に処理して、原料乳の溶存酸素濃度を低減させる方法において、遠心分離機の内部の酸素濃度(上限値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは7%以下である。ここで、遠心分離機の内部の酸素濃度が10%以下であると、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減できて好ましい。なお、遠心分離機の内部の酸素濃度の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0%、より好ましくは0.1%、さらに好ましくは0.5%である。
【0033】
上記(d)のポンプを用いた原料乳と不活性ガスとの混合において、原料乳の供給速度(単位時間あたりの供給量)に対する不活性ガスの供給速度(単位時間あたりの供給量)の体積比(不活性ガスの供給量/原料乳の供給量)は、好ましくは3〜50%、より好ましくは4〜40%、さらに好ましくは5〜30%である。ここで、原料乳の供給速度に対する不活性ガスの供給速度の体積比が3%以上であると、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減できて好ましい。また、原料乳の供給速度に対する不活性ガスの供給速度の体積比が50%以下であると、製造過程で発生する原料乳の泡立ちを効果的に抑制できて好ましい。
【0034】
上記(d)のポンプを用いた原料乳と不活性ガスとの混合において、泡立ちの程度が大きい原料乳に、泡立ちの程度が小さい原料乳を混合することにより、結果的に、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、製造過程で発生する原料乳全体の泡立ちを抑制させることができる。すなわち、原料乳の供給速度に対する不活性ガスの供給速度の体積比が上記の好ましい範囲に属さない操作条件で不活性ガス処理した、原料乳を部分的に含む場合であっても、泡立ちの程度が異なる2種以上の原料乳を混合することにより、結果的に、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、製造過程で発生する原料乳全体の泡立ちを効果的に抑制させることもできる。
【0035】
上記(e)のタンク内に収容(貯液)した原料乳への不活性ガスの吹き込み(バブリング)において、タンク内の空間の体積(タンク内の空間に原料乳を収容していないときのタンク内の容積全体)に対する原料乳の貯液量(体積)の体積比(原料乳の貯液量/タンク内の空間の体積×100)は、好ましくは20〜90%、より好ましくは30〜80%、さらに好ましくは40〜70%である。ここで、タンク内の空間の体積に対する原料乳の貯液量の体積比が20%以上であると、製造過程で発生する原料乳の泡立ちを効果的に抑制できて好ましい。また、タンク内の空間の体積に対する原料乳の貯液量の体積比が90%以下であると、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させることができて好ましい。そして、タンク内に収容した原料乳の液面に向けて、不活性ガス処理や脱気処理(減圧処理)された原料乳を噴射することにより、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、製造過程で発生する原料乳全体の泡立ちを効果的に抑制できて好ましい。なお、上記(e)のタンク内に収容した原料乳への不活性ガスの吹き込みの装置は、公知の気泡分散装置を用いることができ、例えば、焼結金属エレメント、フィルター、スパージャー、狭流路ノズル等を用いることができる。
【0036】
上記(e)のタンク内に収容した原料乳への不活性ガスの吹き込みにおいて、原料乳のタンクへの供給速度(単位時間あたりの供給量)に対する不活性ガスの供給速度(単位時間あたりの供給量)の体積比(不活性ガスの供給速度/原料乳の供給速度×100)は、好ましくは10〜100%、より好ましくは20〜90%、さらに好ましくは30〜80%である。ここで、原料乳の貯液量に対する不活性ガスの供給速度の体積比が20%以上であると、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させることができて好ましい。また、原料乳の貯液量に対する不活性ガスの供給速度の体積比が100%以下であると、製造過程で発生する原料乳の泡立ちを効果的に抑制できて好ましい。
【0037】
上記(e)のタンク内に収容した原料乳への不活性ガスの吹き込みにおいて、原料乳の貯液量(単位体積:1リットル)に対する不活性ガスの吹き込み量(単位時間あたりの供給量:リットル/分)は、好ましくは0.005〜0.1リットル/分、より好ましくは0.006〜0.08リットル/分、さらに好ましくは0.008〜0.05リットル/分、さらに好ましくは0.01〜0.03リットル/分、さらに好ましくは0.015〜0.025リットル/分である。ここで、原料乳の貯液量に対する不活性ガスの吹き込み量が0.005リットル/分・以上であると、原料乳の溶存酸素濃度を大きく低減させることができて好ましい。また、原料乳の貯液量に対する不活性ガスの吹き込み量が0.1リットル/分・以下であると、製造過程で発生する原料乳の泡立ちを効果的に抑制できて好ましい。
【0038】
上記(e)のタンク内に収容した原料乳への不活性ガスの吹き込みにおいて、ここで発生する原料乳の泡立ちを効果的に抑制するために、原料乳の脱泡処理を行うことができる。また、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程において、必要に応じて、ここで発生する原料乳の泡立ちを効果的に抑制するために、原料乳の脱泡処理を行うことができる。このとき、例えば、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳を、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程の後に設置した(小さい)タンク内に注入して貯留(供給)すると共に、上記タンクから排出された原料乳の一部を、上記タンクの上方から、上記タンク内に貯留された原料乳の一部の液面に噴霧及び/又は滴下することにより、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳の脱泡処理を行うことができる。また、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳を、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程の後に設置した(小さい)タンクに供給すると共に、気体(例えば、窒素ガス等の不活性ガス)を、上記タンクの上方から、上記タンク内に貯留された原料乳の液面に噴霧することにより、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳の脱泡処理を行うことができる。さらに、例えば、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳を所定の時間で静置すること、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳を液体サイクロンで処理すること、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳をストレーナーで処理すること、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳を公知のタンクや配管で減圧すること、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳に消泡剤等を配合(添加)すること等により、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳の脱泡処理を行うことができる。
【0039】
工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳の脱泡処理を行うことにより、仮に、工程(A)の第一の酸素濃度低減工程の直後に、上記原料乳の泡立ちが大きく発生しても、工程(B)の加熱殺菌工程の前には、上記原料乳の泡立ちが効率的に抑制されていることとなる。
【0040】
工程(A)の第一の酸素濃度低減工程において、原料乳の溶存酸素濃度を低減させることが容易であり、また、原料乳の泡立ちを抑制することが容易である観点から、上記(a)〜(e)の不活性ガス処理のうち、上記(a)の不活性ガス処理(比例混合装置を用いた原料乳と不活性ガスとの混合)が好ましい。
【0041】
工程(A)の第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳の泡立ちの程度は、気泡率を指標として評価することができる。ここで、上記原料乳の気泡率は、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下である。ここで、原料乳の気泡率が10%以下であれば、原料乳の泡立ちが過度に発生しておらず、原料乳の泡立ちが効果的に抑制されていることとなり、その後の脱泡処理・消泡処理等を簡略化又は省略できて好ましい。なお、泡立ちが過度に発生した原料乳をプレート式加熱殺菌機等で間接加熱殺菌すると、プレート式加熱殺菌機等の内面(プレート、配管等)において、原料乳に由来する成分の付着や焦げ付きが発生しやすくなる。このとき、これら付着や焦げ付きにより、プレート式加熱殺菌機等において、熱導率が低下することとなり、加熱殺菌の温度を所定の温度で維持するためには、原料乳を加熱する媒体(温水、水蒸気等)の温度を高める、あるいは原料乳を加熱する媒体の使用量を増やす必要がある。つまり、これら媒体を加熱するために、エネルギーを多量に使用することとなり、生産効率が低下すると共に、製造費等が増加する。また、これら付着や焦げ付きにより、プレート式加熱殺菌機等において、運転時間が短縮されると共に、洗浄の頻度や部品の交換の頻度等が高まることとなり、生産効率が低下すると共に、製造費等が増加する。
【0042】
ここで、原料乳の気泡率とは、下記の式に示すように、気泡の体積を原料乳の全体積で除した体積比である。
[原料乳の気泡率(単位:体積%)]=[気泡の体積(m
3)]×100÷[気泡を含む原料乳の全体積(m
3)]
そして、原料乳の気泡率は、例えば、透明なガラス製のメスシリンダーに、未処理又は所定の処理済み(例えば、殺菌済み)の原料乳を注入し、所定の時間(5分間)で保持した後に、前記のメスシリンダーに注入された原料乳において、下層にある液相の高さと、上層にある気泡相の高さを定規等で測定してから、以下の式によって算出される。
[原料乳の気泡率(単位:体積%)]=[気泡相の高さ(m)]×100÷([気泡相の高さ(m)]+[液相の高さ(m)])
【0043】
工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳を貯留することができる。このとき、例えば、内部の空間を不活性ガスで充満させた(置換した)タンクを用いるか、あるいは内部の壁面に脱酸素剤等を塗布や貼付したタンクを用いて、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳を貯留することができる。ここで、工程(B)(加熱殺菌工程)の直前に、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)を行うことが好ましいことから、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)を行った後に、工程(B)(加熱殺菌工程)を行うときまで、例えば、最終製品である乳含有飲料の出荷の状況に合わせて、乳含有飲料の製造時間を調整すること等を目的として、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳を待機させて、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳を貯留する。なお、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳の溶存酸素濃度の上昇を抑制する観点から、不活性ガスの雰囲気下(例えば、窒素ガのス雰囲気下)において、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳を貯留することが好ましいが、仮に、大気の雰囲気(通常の条件)において、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳を貯留しても、追加の酸素濃度低減工程を設ければ、追加の酸素濃度低減工程において、不活性ガス処理の条件等を適宜で定めることにより、本発明の目的とする乳含有飲料を得ることができる。
【0044】
前記した通り、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)の後で、工程(B)(加熱殺菌工程)の前には、必要に応じて、追加の酸素濃度低減工程を設けることができる。このとき、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)において、原料乳の溶存酸素濃度を所定の数値(例えば、8ppm)以下に低減させた後に、この原料乳をタンクに貯留してから、追加の酸素濃度低減工程において、この貯留中又は貯留後の原料乳の溶存酸素濃度を所定の数値(例えば、4ppm)以下に低減させる。また、このとき、追加の酸素濃度低減工程で得られた原料乳の気泡率が好ましくは10%以下となるように、これらの酸素濃度低減工程において、それぞれの不活性ガス処理の種類及び条件を適宜で定めることが好ましい。
【0045】
[工程(B):加熱殺菌工程]
工程(B)は、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳を加熱殺菌する加熱殺菌工程である。加熱殺菌の方法では、牛乳の製造において通常で用いられる加熱殺菌の方法であれば、特に限定されず、例えば、61〜65℃、30〜60分間で処理する低温長時間殺菌法、70〜75℃、15〜60秒間で処理する高温短時間殺菌法、130〜150℃、1〜5秒間で処理する超高温滅菌法等が挙げられる。これら加熱殺菌の方法では、所定の衛生度が保たれ、乳含有飲料の品質が保持される限りにおいて、加熱殺菌の温度及び時間を適宜で調整することができる。このとき、工程(B)で得られた乳含有飲料の溶存酸素濃度は、乳含有飲料の新鮮な風味を長期間に亘って保持する観点から、好ましくは8ppm以下、より好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、特に好ましくは2ppm以下である。なお、通常では、工程(A)の処理手段(処理装置)から原料乳を排出した後に、工程(A)で得られた原料乳を工程(B)の処理手段(加熱殺菌装置)に導くことによって、工程(B)は行われる。
【0046】
工程(B)で得られた乳含有飲料の溶存酸素濃度の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.1ppm、より好ましくは0.5ppm、さらに好ましくは1.0ppm、さらに好ましくは1.5ppmである。上記乳含有飲料の溶存酸素濃度が0.1ppm以上であると、乳含有飲料の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、かつ、製造過程で発生する乳含有飲料の泡立ちを効果的に抑制でき、本発明を容易に実施できる点で好ましい。
【0047】
[工程(C):第二の酸素濃度低減工程]
工程(C)は、不活性ガス処理の供給方法(例えば、比例混合装置を用いた処理)及び供給条件(例えば、原料乳の供給速度及び不活性ガスの供給量)を制御し、工程(B)(加熱殺菌工程)で得られた加熱殺菌後の原料乳に不活性ガス処理を行い、溶存酸素濃度を1ppm以下に低減する第二の酸素濃度低減工程である。このとき、工程(C)で得られた乳含有飲料の溶存酸素濃度は、乳含有飲料の新鮮な風味を長期間に亘って維持する観点から、好ましくは1ppm以下、より好ましくは0.9ppm以下、さらに好ましくは0.8ppm以下、さらに好ましくは0.6ppm以下、さらに好ましくは0.5ppm以下、さらに好ましくは0.4ppm以下、さらに好ましくは0.3ppm以下、さらに好ましくは0.2ppm以下である。なお、通常では、工程(B)の処理手段(処理装置)から乳含有飲料を排出した後に、工程(B)で得られた乳含有飲料を工程(C)の処理手段(酸素濃度低減装置)に導くことによって、工程(C)は行われる
【0048】
工程(C)で得られた乳含有飲料の溶存酸素濃度の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.1ppm、より好ましくは0.3ppm、特に好ましくは0.5ppmである。工程(C)で得られた乳含有飲料の溶存酸素濃度が0.1ppm以上であると、乳含有飲料の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、かつ、製造過程で発生する乳含有飲料の泡立ちを効果的に抑制でき、本発明を容易に実施できる点で好ましい。
【0049】
工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳の溶存酸素濃度に比べて、工程(C)で得られた乳含有飲料の溶存酸素濃度が小さくなるように、不活性ガス処理することは、不活性ガスの供給量を過度に増大させる必要がなく、工程(C)で得られた乳含有飲料の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、かつ、製造過程で発生する乳含有飲料の泡立ちを効果的に抑制でき、本発明を容易に実施できる点で好ましい。
【0050】
工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳の溶存酸素濃度と、工程(C)(第二の酸素濃度低減工程)で得られた乳含有飲料の溶存酸素濃度の差(すなわち、溶存酸素濃度の低減の幅)は、工程(B)(加熱殺菌工程)を経ることにより、原料乳の溶存酸素濃度が増加する可能性を考慮すれば、好ましくは0.1〜8ppm、より好ましくは0.1〜6ppm、さらに好ましくは0.1〜5ppm、さらに好ましくは0.2〜4ppm、さらに好ましくは0.2〜3ppm、さらに好ましくは0.2〜2ppm、さらに好ましくは0.3〜1.5ppm、さらに好ましくは0.3〜1ppmである。上記の溶存酸素濃度の低減の幅が0.1ppm以上であると、乳含有飲料の溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、かつ、製造過程で発生する乳含有飲料の泡立ちを効果的に抑制でき、本発明を容易に実施できる点で好ましい。上記の溶存酸素濃度の低減の幅が8ppm以下であると、工程(C)(第二の酸素濃度低減工程)において、製造過程で発生する原料乳の泡立ちを効果的に抑制でき、本発明を容易に実施できる点で好ましい。
【0051】
本発明において、工程(A)と工程(C)の二段階の不活性ガス処理により、原料乳の溶存酸素濃度を低減させる方法を採用した理由として、溶存酸素濃度を大きく低減させながらも、かつ、製造過程で発生する乳含有飲料の泡立ちを効果的に抑制でき、本発明を容易に実施できる(本発明の効果を効率的に得られる)点以外に、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)を経ることで、原料乳と不活性ガスが馴染みやすくなり、その後に、工程(C)(第二の酸素濃度低減工程)において安定的かつ効率的に処理できることとなるため、特異的な特徴を有することが挙げられる。このような特徴は、特許文献1に記載された一段階の不活性ガス処理のみでは予想できないことであり、本発明によって初めて、顕著な効果として見出したものである。特に、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳の溶存酸素濃度を6〜8ppmに低減した後に、工程(C)(第二の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳の溶存酸素濃度を1ppm以下に低減することで、工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)及び/又は工程(C)(第二の酸素濃度低減工程)において、液体の原料乳に対して、気体の不活性ガスを多量に接触させる必要がなくなり、大掛かりな設備を設置や運転(操作)する必要がなくなるため、これに伴う設備費や製造費等を抑制することができる。そして、最終的には、工程(B)及び/又は工程(C)で得られた乳含有飲料に過度な泡立ちの発生を抑制できることから好ましい。
【0052】
工程(C)における不活性ガス処理は、工程(A)と同様に、例えば、
(a)比例混合装置を用いた原料乳と不活性ガスとの混合、
(b)不活性ガスで満たした空間を有する装置内への原料乳の噴霧、
(c)遠心分離機を用いた原料乳と不活性ガスとの混合、
(d)ポンプを用いた原料乳と不活性ガスとの混合、
(e)装置内に収容した原料乳への不活性ガスの吹き込み、
の中から選ばれる一種又は二種以上の組み合わせによって行うことができる。また、工程(C)において、(a)〜(e)の中から選ばれる一種の方法(例えば、(a)の方法)を、一回又は二回以上で行うことができる。なお、本発明において、工程(A)における上記(a)〜(e)の各方法と、工程(C)における上記(a)〜(e)の各方法の組み合わせは、特に限定されず、工程(A)において、上記(a)〜(e)のいずれか一種又は二種以上の方法を任意に採用した上で、工程(C)において、上記(a)〜(e)のいずれか一種又は二種以上の方法を任意に採用することができる。
【0053】
工程(C)における上記(a)〜(e)の各方法の詳細(例えば、実際に用いる装置や、原料乳の好ましい空塔速度等)は、工程(A)の(a)〜(e)の各方法の詳細(例えば、実際に用いる装置や、原料乳の好ましい空塔速度等)と同様である。ここで、工程(C)における上記(a)〜(e)の各方法のうち、上記(e)の方法(装置内に収容した原料乳への不活性ガスの吹き込み)では、不活性ガスの供給時間や不活性ガスの供給量の調整によって、乳含有飲料の溶存酸素濃度を容易に低減できること、不活性ガスの供給速度(単位時間あたりの供給量)(例えば、原料乳の単位体積(1リットル)当たり、0.005〜0.1リットル/分)の調整によって、泡立ちを抑制できること、さらに、原料乳の殺菌後の貯液タンク(サージタンク)やこの周辺のみを改良すれば実現できて、省スペースで実効的に設備を改良すれば実現できることから好ましい。また、工程(C)における上記(a)〜(e)の各方法のうち、上記(a)の方法(比例混合装置を用いた原料乳と不活性ガスの混合)では、不活性ガスの供給時間や不活性ガスの供給量の調整によって、乳含有飲料の溶存酸素濃度を容易に低減できること、不活性ガスの供給速度の調整によって、泡立ちを抑制できることから好ましい。なお、工程(C)及び/又は工程(C)の後に脱泡処理する方法やこの詳細は、工程(A)で脱泡処理する方法と同様である。
【0054】
工程(C)で得られた原料乳の泡立ちの程度は、工程(A)で得られた原料乳の泡立ちの程度と同様に、気泡率を指標とすることができる。ここで、工程(C)で得られた原料乳の気泡率は、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下である。ここで、原料乳の気泡率が10%以下であると、製造過程で発生する乳含有飲料の泡立ちを効果的に抑制しながら、その生産効率の低下を抑制することができて好ましい。一方、原料乳の気泡率が10%を超えると、原料乳の泡立ちが過度に発生し、その後の脱泡や消泡を必要とすることや、泡立ちが過度に発生した原料乳をプレート式加熱殺菌機等で間接加熱殺菌した場合、プレートの内面等において、泡立ちに由来する焦げ付きが発生しやすくなり、この焦げ付きが加熱時の熱伝導率の低下を招くこととなる。それゆえ、原料乳を一定温度に加熱するために、加熱媒体を通常よりも高温に設定しなければならなくなると共に、プレートを通常よりも高頻度で洗浄や交換しなければならなくなり、生産効率の低下や設備の更新に伴う製造費の増加等が問題となることがある。
【0055】
本発明の工程(A)と工程(C)に相当する酸素濃度低減工程に不活性ガス処理以外の公知の酸素濃度低減処理を適用することができ、例えば、減圧脱気(真空脱気)処理や膜脱気処理(中空糸膜等の気体分離膜等)等を適用することができる。ここで、酸素濃度低減工程に減圧脱気処理を適用した場合、不活性ガス処理よりも、原料乳の泡立ちが発生しにくくなり、原料乳をプレート式加熱殺菌機等で間接加熱殺菌した場合にも、プレートの内面等において、原料乳の泡立ちに由来する焦げ付きが発生しにくくなるが、原料乳に由来する香気成分が散逸しやくなり、乳含有飲料の風味への影響等が問題となることがある。また、酸素濃度低減工程に膜脱気処理を適用した場合には、不活性ガス処理よりも、分離膜の目詰まりに基づいて、処理速度が低下すると共に、分離膜を高頻度で洗浄や交換しなければならなくなり、生産効率の低下や設備の更新に伴う製造費の増加等が問題となることがある。
【0056】
乳含有飲料として、例えば、牛乳、牛乳を含む乳飲料、牛以外の獣乳、牛以外の獣乳を含む乳飲料、豆乳等の植物性飲料、人工乳、人工乳を含む飲料等が挙げられる。なお、加熱殺菌前、加熱殺菌中、又は加熱殺菌後に、原料乳以外の原料を添加することができる。
【0057】
工程(C)の後に、必要に応じて、乳含有飲料をタンクに貯留する前のタンク(サージタンク、フィラータンク等)の内部空間を不活性ガスで置換すること、乳含有飲料をタンクに貯留した後のタンクの内部空間(ヘッドスペース)を不活性ガスで置換すること、乳含有飲料をタンクに充填する前の容器の内部空間を不活性ガスで置換すること、乳含有飲料を容器に充填した後の容器の内部空間(ヘッドスペース)を不活性ガスで置換すること、タンク及び/又は容器の内面に、脱酸素剤を塗布すること等を行うことができる。
【0058】
本発明において、さらに、以下の処理(i)〜(iv)のいずれか一種又は二種以上を組み合わせて行うことができる。このとき、以下の処理(i)〜(iv)を工程(A)及び/又は工程(C)として行うこともできるし、以下の処理(i)〜(iv)を工程(A)及び/又は工程(C)とは別の新たな工程として行うこともできる。
(i) 乳含有飲料を微粒子化する第一の処理を行った後に、第一の処理後の乳含有飲料を減圧雰囲気下に置く第二の処理を行うことができる。この処理によって、乳含有飲料の溶存酸素濃度をさらに低減させることができる。
(ii) 乳含有飲料を貯留槽等に貯留した後に、貯留槽の内部を減圧し、乳含有飲料に含まれている溶存酸素を貯留槽の内部空間に放出させる処理を行うことができる。この処理によって、乳含有飲料の溶存酸素濃度をさらに低減させることができる。
(iii) 乳含有飲料不活性ガスの吹き込み等を行い、乳含有飲料の溶存酸素濃度を低減させた後に、減圧ポンプ等を用いて、乳含有飲料に形成された気泡を破泡することができる。この処理によって、乳含有飲料の溶存酸素濃度をさらに低減させることができる。
(iv) 工程(C)の後に、タンク(サージタンク、フィラータンク等)に貯留された乳含有飲料に不活性ガスの吹き込み等を行うことができる。この処理によって、乳含有飲料の溶存酸素濃度をさらに低減させることができる。
【0059】
本発明において、乳含有飲料を容器に充填(収容)し、容器入りの乳含有飲料として冷蔵保存や常温保存することができる。本発明において、乳含有飲料の溶存酸素濃度が大きく低減されていることから、この保存に用いる容器として、酸素透過性が低い容器、例えば、ビン、スチールカン、アルミカン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ビニール、ナイロン等を素材とした容器が好ましい。容器入りの乳含有飲料を冷蔵保存や常温保存した際に、乳含有飲料の溶存酸素濃度が低減された状態を維持しやすく、かつ、乳含有飲料に存在する低温細菌の増殖も抑制できるためである。本発明において、乳含有飲料を紙容器に充填する場合には、例えば、紙基材層及びナイロン樹脂層を含む積層シートによって形成された容器等のように、通常の牛乳用の紙容器に比べて、酸素透過性が低い紙容器を用いることが好ましい。本発明において、紙容器を構成する積層シートとして、例えば、容器の外側から内側に向かって、ポリエチレン層、紙基材層、ナイロン樹脂層、接着剤層、ポリエチレン層の順に積層された積層シート等が挙げられる。そして、ナイロン樹脂層を形成する樹脂として、例えば、ナイロンMXD6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6等の各種のナイロン(ポリアミド樹脂)が挙げられる。
【0060】
本発明において、乳含有飲料の溶存酸素濃度を低減していることにより、例えば、酸素及び/又は加熱により風味が変化しやすい牛乳において発生する、加熱及び/又は保存に伴う異常風味の発生を低減できる。ここでいう、異常風味とは、例えば、豆臭と呼ばれる自発性酸化臭や加熱臭等である。また、自発性酸化臭の原因物質として、ヘキサナール等のカルボニル化合物、加熱臭の原因物質として、ジメチルサルファイド、ジメチルジサルファイド、ジメチルトリサルファイド等の硫黄化合物が公知であり、本発明の乳含有飲料は、溶存酸素濃度が低減されていることにより、自発性酸化臭及び/又は加熱臭の原因物質の発生を抑制できる。
【0061】
すなわち、本発明は、
(A)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、原料乳に不活性ガス処理を行う第一の酸素濃度低減工程と、
(B)第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳を加熱殺菌する加熱殺菌工程と、
(C)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、加熱殺菌工程で得られた加熱殺菌後の原料乳に不活性ガス処理を行い、溶存酸素濃度が1ppm以下である乳含有飲料を得る第二の酸素濃度低減工程酸素濃度低減工程、
を含む加熱及び/又は保存に伴う異常風味の発生を低減させた乳含有飲料の製造方法、でもある。
【0062】
本発明において、乳含有飲料の溶存酸素濃度を効率的に低減できると共に、乳含有飲料の加熱及び/又は保存に伴う異常風味の発生を低減できる。
すなわち、本発明は、
(A)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、原料乳に不活性ガス処理を行う第一の酸素濃度低減工程と、
(B)第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳を加熱殺菌する加熱殺菌工程と、
(C)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、加熱殺菌工程で得られた加熱殺菌後の原料乳に不活性ガス処理を行い、溶存酸素濃度が1ppm以下である乳含有飲料を得る第二の酸素濃度低減工程酸素濃度低減工程、
を含む乳含有飲料の溶存酸素濃度の低減方法、でもある。
【0063】
また、本発明は、
(A)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、原料乳に不活性ガス処理を行う第一の酸素濃度低減工程と、
(B)第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳を加熱殺菌する加熱殺菌工程と、
(C)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、加熱殺菌工程で得られた加熱殺菌後の原料乳に不活性ガス処理を行い、溶存酸素濃度が1ppm以下である乳含有飲料を得る第二の酸素濃度低減工程酸素濃度低減工程、
を含む乳含有飲料の加熱及び/又は保存に伴う異常風味の発生の低減方法、でもある。
【0064】
また、本発明は、
(A)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、原料乳に不活性ガス処理を行う第一の酸素濃度低減工程と、
(B)第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳を加熱殺菌する加熱殺菌工程と、
(C)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、加熱殺菌工程で得られた加熱殺菌後の原料乳に不活性ガス処理を行い、溶存酸素濃度が1ppm以下である乳含有飲料を得る第二の酸素濃度低減工程酸素濃度低減工程、
を含む乳含有飲料の自発性酸化臭及び/又は加熱臭の発生の低減方法、でもある。
【0065】
また、本発明は、
(A)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、原料乳に不活性ガス処理を行う第一の酸素濃度低減工程と、
(B)第一の酸素濃度低減工程で得られた原料乳を加熱殺菌する加熱殺菌工程と、
(C)不活性ガス処理の供給方法及び供給条件を制御し、加熱殺菌工程で得られた加熱殺菌後の原料乳に不活性ガス処理を行い、溶存酸素濃度が1ppm以下である乳含有飲料を得る第二の酸素濃度低減工程酸素濃度低減工程、
を含む乳含有飲料のカルボニル化合物(ヘキサナール等)及び/又は硫黄化合物(ジメチルサルファイド、ジメチルジサルファイド、ジメチルトリサルファイド等)の発生の低減方法、でもある。
【実施例】
【0066】
以下、実施例によって、本発明を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に包含される限りにおいて、種々の実施形態を採ることができる。
【0067】
なお、本発明において、「L/h」は、リットル/時間(hour)を意味し、「L/min」は、リットル/分(minute)を意味する。また、原料乳の気泡率は、透明なガラス製のメスシリンダー(1L容)に、原料乳(又は殺菌乳)を注ぎ、5分間で保持した後に、前記のメスシリンダーに注がれた原料乳(又は殺菌乳)における、下層にある液相の高さと、上層にある気泡相の高さを定規で測定し、以下の式によって算出した。
[原料乳の気泡率](単位:体積%)=[気泡相の高さ(m)]×100÷([気泡相の高さ(m)]+[液相の高さ(m)])
【0068】
[実施例1]
特開2001−078665号公報(上記の特許文献2)に記載されている窒素ガス置換装置にスタティックミキサー(内径:8mm、63エレメント)を設置したもの(窒素ガスを混合分散させるための比例混合装置として、スタティックミキサーを用いたもの; 以下の実施例及び比較例では、「窒素ガス置換装置」と略す。)に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:11.8ppm、比重:1.03):50Lを150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで(バブリングして)1.1L/min(窒素ガス/生乳の体積比:45%)で比例的に通気(混合)した(工程(A)の終了の直後)。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が1.3ppmであり、気泡率が5%以下であった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、11.8ppmであった。その後に、プレート式加熱殺菌機(以下の実施例及び比較例で、「殺菌機」と略す。)(加熱殺菌条件:130℃、2秒間)に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液して加熱殺菌した(工程(B)の終了の直後)。
【0069】
その後に、窒素ガス等を吹き込めるスパージャー付きのサージタンク(100L容)に、この殺菌した後の牛乳(殺菌乳):50Lを投入して貯留した。この殺菌乳では、サージタンクにおける体積比がサージタンクの全容積に対して50%であった。また、この殺菌乳では、溶存酸素濃度が3.0ppmであり、液温が10℃以下であった。そして、サージタンクにおけるヘッドスペースの割合がサージタンクの全容積に対して50%であった。
【0070】
その後に、スパージャーからサージタンクの殺菌乳に、窒素ガスを吹き込んで1L/minで通気(混合)した。この混合した窒素ガスでは、吹き込み量(バブリング量)がサージタンクにおける殺菌乳の単位体積(1リットル)に対して0.02L/minであった。なお、この窒素ガスを吹き込むのと同時に、サージタンクにおけるヘッドスペースに、窒素ガスを1L/minで通気した。この殺菌乳では、サージタンクに投入を開始した時を基準(0時間、溶存酸素濃度:3.0ppm)として、1時間の経過後に、溶存酸素濃度が1.2ppmであり、2時間の経過後に、溶存酸素濃度が0.8ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、2時間の経過後に、牛乳(最終製品である乳含有飲料)には、ほとんど泡立ちは見られなかった(工程(C)の終了の直後)。
【0071】
[実施例2]
窒素ガス置換装置の上方から噴霧する原料乳でも、窒素ガス置換した原料乳を使用できるように改良した 窒素ガス置換装置(以下の実施例では、「改良窒素ガス置換装置」と略す。)に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:11.8ppm、比重:1.03):50Lを150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.1L/min(窒素ガス/生乳の体積比:45%)で比例的に通気(混合)した(工程(A)の終了の直後)。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が1.3ppmであり、気泡率が5%以下であった。なお、改良窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、1.3ppmであった。その後に、殺菌機(加熱殺菌条件:130℃、2秒間)に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液して加熱殺菌した(工程(B)の終了の直後)。
【0072】
その後に、窒素ガス等を吹き込めるスパージャー付きのサージタンク(100L容)に、この殺菌した後の牛乳(殺菌乳):50Lを投入して貯留した。この殺菌乳では、サージタンクにおける体積比がサージタンクの全容積に対して50%であった。また、この殺菌乳では、溶存酸素濃度が3.0ppmであり、液温が10℃以下であった。そして、サージタンクにおけるヘッドスペースの割合がサージタンクの全容積に対して50%であった。
【0073】
その後に、スパージャーからサージタンクの殺菌乳に、窒素ガスを吹き込んで1L/minで通気(混合)した。この混合した窒素ガスでは、吹き込み量(バブリング量)がサージタンクにおける殺菌乳の単位体積(1リットル)に対して0.02L/minであった。なお、この窒素ガスを吹き込むのと同時に、サージタンクにおけるヘッドスペースに、窒素ガスを1L/minで通気した。この殺菌乳では、サージタンクに投入を開始した時を基準(0時間、溶存酸素濃度:3.0ppm)として、1時間の経過後に、溶存酸素濃度が1.2ppmであり、2時間の経過後に、溶存酸素濃度が0.8ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、2時間の経過後に、牛乳(最終製品である乳含有飲料)には、ほとんど泡立ちは見られなかった(工程(C)の終了の直後)。
【0074】
これらの他に、以下の試験例1〜16によっても、本発明の工程(A)(第一の酸素濃度低減工程)で得られた原料乳を調製できる。そして、試験例1〜16で得られた原料乳に、本発明の工程(B)(加熱殺菌工程)と、工程(C)(第二の酸素低減工程)を適用すれば、本発明の乳含有飲料が得られる。
【0075】
[試験例1]
窒素ガス置換装置に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.7ppm、比重:1.03):100Lを150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、12.7ppmであった。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が1.5ppmであり、気泡率が5%以下であった。
【0076】
その後に、貯乳用タンク(100L容)に、生乳を一時的に貯留してから、前記の窒素ガス置換装置に再び、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後の生乳では、溶存酸度濃度が0.1ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、1.5ppmであった。
【0077】
[試験例2]
比例混合装置にスタティックミキサー(内径:47.8mm、18エレメント)を設置したものに、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:13.1ppm、比重:1.03):5,000Lを5000L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで37.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:45%)で比例的に通気(混合)した。その後に、脱泡用タンク(200L容)に、生乳を一時的に通液した。具体的には、前記の脱泡用のタンクの上部に、噴霧ノズル(スプレーイングシステムス社;製品名:Fulljet22)を設置しており、脱泡用タンクを通過した生乳の一部を、脱泡用のタンクの上部の噴霧ノズルへ分岐させ、0.07MPaの背圧によって、500L/hの流量で、液面に噴霧して、気泡を消しつつ、貯乳用のタンクに通液した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が2.1ppmであり、気泡率が5%以下であった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、13.1ppmであった。
【0078】
その後に、貯乳用タンク(20,000L容)に、生乳を一時的に貯留してから、前記の窒素ガス置換装置に再び、生乳を5000L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで50L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後の生乳では、溶存酸度濃度が0.2ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、2.1ppmであった。
【0079】
[試験例3]
上部に噴霧ノズル(スプレーイングシステムス社;製品名:Fulljet1.5)を設置した窒素置換用タンク(50L容)の内部を窒素ガスで満たした後に、前記の窒素置換用タンクに、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:11ppm、比重:1.03):20Lを90L/hで通液しながら、前記の噴霧ノズルより、前記の窒素置換用タンクに全量を噴霧した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が2.0ppmであり、気泡率が10%以下であった。
【0080】
その後に、窒素ガス置換装置に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後の生乳では、溶存酸度濃度が0.1ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、2.0ppmであった。
【0081】
[試験例4]
分離盤型の遠心分離機であるクラリファイヤー(ウエストファリアセパレーター社、商品名SA−1)の装置の内部(ボウル周囲)に窒素ガスを10L/minで供給し、その酸素濃度を4%に調整した後に、前記のクラリファイヤー(背圧:0MPa)に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:14.7ppm、比重:1.03):30Lを100L/hで通液した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が2.8ppmであり、気泡率が10%以下であった。
【0082】
その後に、貯乳用タンク(100L容)に、生乳を一時的に貯留してから、窒素ガス置換装置に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後の生乳では、溶存酸度濃度が0.3ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、2.8ppmであった。
【0083】
[試験例5]
窒素ガス置換装置にスタティックミキサー(内径:8mm、63エレメント)を設置したものに、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:14.7ppm、比重:1.03):30Lを150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。その後に、分離盤型の遠心分離機であるクラリファイヤー(ウエストファリアセパレーター社、商品名SA−1、背圧:0MPa)に、生乳を通液した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が2.1ppmであり、気泡率が10%以下であった。
【0084】
その後に、貯乳用タンク(100L容)に、生乳を一時的に貯留してから、窒素ガス置換装置に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後の生乳(工程(A)の終了の直後)では、溶存酸度濃度が0.2ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、2.1ppmであった。
【0085】
[試験例6]
窒素ガス置換装置に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:11.1ppm、比重:1.03):30Lを150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.1L/min(窒素ガス/生乳の体積比:45%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が2.1ppmであり、気泡率が10%以下であった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、11.1ppmであった。
【0086】
その後に、貯乳用タンク(100L容)に、生乳を一時的に貯留してから、分離盤型の遠心分離機であるクラリファイヤー(ウエストファリアセパレーター社、商品名SA−1)の装置の内部(ボウル周囲)に窒素ガスを10L/minで供給し、その酸素濃度を4%に調整した後に、前記のクラリファイヤー(背圧:0MPa)に、生乳を150L/hで通液した。この窒素ガスを再び混合した後の生乳では、溶存酸度濃度が0.2ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。
【0087】
[試験例7]
渦流ポンプ(ニクニ社製)に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.3ppm、比重:1.03):30Lを150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、渦流ポンプの前で、窒素ガスを吹き込んで0.33L/min(窒素ガス/生乳の体積比:10%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が3.0ppmであり、気泡率が10%以下であった。
【0088】
その後に、貯乳用タンク(100L容)に、生乳を一時的に貯留してから、窒素ガス置換装置に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後の生乳では、溶存酸度濃度が0.3ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、3.0ppmであった。
【0089】
[試験例8]
渦流ポンプ(ニクニ社製):2台を直列に接続して設置した。このうち、前流側の渦流ポンプを第1の渦流ポンプと称し、後流側の渦流ポンプを第2の渦流ポンプと称する。第1の渦流ポンプに、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.3ppm、比重:1.03):30Lを200L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、第1の渦流ポンプの前で、窒素ガスを吹き込んで0.15L/min(窒素ガス/生乳の体積比:5%)で比例的に通気(混合)した。その後に、第2の渦流ポンプに、生乳を200L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、第2の渦流ポンプの前で、窒素ガスを吹き込んで0.15L/min(窒素ガス/生乳の体積比:5%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が2.7ppmであり、気泡率が10%以下であった。
【0090】
その後に、貯乳用タンク(100L容)に、生乳を一時的に貯留してから、窒素ガス置換装置に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後の生乳では、溶存酸度濃度が0.3ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、2.7ppmであった。
【0091】
[試験例9]
比例混合装置にスタティックミキサー(内径:11mm、30エレメント)を設置したものに、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:13.1ppm、比重:1.03):200Lを703L/h(空塔速度:2.1m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.25L/min(窒素ガス/生乳の体積比:11%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が3.4ppmであり、気泡率が10%以下であった。
【0092】
その後に、貯乳用タンク(200L容)に、生乳を一時的に貯留してから、窒素ガス置換装置に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後(工程(A)の終了の直後)の生乳では、溶存酸度濃度が0.4ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、3.4ppmであった。
【0093】
[試験例10]
比例混合装置にスタティックミキサー(内径:11mm、30エレメント)を設置したものに、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.0ppm、比重:1.03):280Lを280L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで3.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:75%)で比例的に通気(混合)すると共に、この窒素ガスを混合した後の生乳を貯乳用タンク(500L容)に貯留した。次に、前記の比例混合装置に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.0ppm、比重:1.03):105Lを280L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.4L/min(窒素ガス/生乳の体積比:30%)で比例的に通気(混合)すると共に、この窒素ガスを混合した後の生乳を前記の貯乳用タンク(500L容)に貯留した。
【0094】
さらに、前記の比例混合装置に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.0ppm、比重:1.03):105Lを280L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで0.7L/min(窒素ガス/生乳の体積比:15%)で比例的に通気(混合)すると共に、この窒素ガスを混合した後の生乳を前記の貯乳用タンク(500L容)に貯留した。これらの生乳を混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が2.2ppmであり、気泡率が10%以下であった。
【0095】
その後に、窒素ガス置換装置に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後の生乳では、溶存酸度濃度が0.2ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、2.2ppmであった。
【0096】
[試験例11]
上部に機械的な剪断力で破泡する消泡装置(豊興工業社製、バブけスBK100型)を設置した貯乳用タンク(100L容)に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.0ppm、比重:1.03):80Lを貯留した。比例混合装置にスタティックミキサー(内径:23mm、38エレメント)を設置したものに、生乳を2000L/h(空塔速度:1.3m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで14.3L/min(窒素ガス/生乳の体積比:43%)で比例的に通気(混合)すると共に、窒素ガスを混合した後の生乳を前記の貯乳用タンクに貯留して循環させた。この循環させた窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が2.0ppmであり、気泡率が10%以下であった。
【0097】
その後に、貯乳用タンク(200L容)に、生乳を一時的に貯留してから、窒素ガス置換装置に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後の生乳では、溶存酸度濃度が0.2ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、2.0ppmであった。
【0098】
[試験例12]
窒素ガス置換装置の上方から噴霧する原料乳でも、窒素ガス置換した原料乳を使用できるように改良した 窒素ガス置換装置(以下の実施例では、「改良窒素ガス置換装置」と略す。)に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.7ppm、比重:1.03):100Lを150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が1.5ppmであり、気泡率が5%以下であった。なお、改良窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、1.5ppmであった。
【0099】
その後に、貯乳用タンク(100L容)に、生乳を一時的に貯留してから、前記の改良窒素ガス置換装置に再び、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後の生乳では、溶存酸度濃度が0.1ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、改良窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、0.1ppmであった。
【0100】
[試験例13]
改良窒素ガス置換装置において、スタティックミキサー(内径:8mm、63エレメント)に換えて、スタティックミキサー(内径:47.8mm、18エレメント)を設置したものに、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:13.1ppm、比重:1.03):5,000Lを5000L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで37.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:45%)で比例的に通気(混合)した。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、2.1ppmであった。その後に、脱泡用タンク(200L容)に、生乳を一時的に通液した。具体的には、前記の脱泡用タンクの上部に、噴霧ノズル(スプレーイングシステムス社;製品名:Fulljet22)を設置しており、脱泡用のタンクを通過した生乳の一部を、脱泡用のタンクの上部の噴霧ノズルへ分岐させ、0.07MPaの背圧によって、500L/hの流量で、液面に噴霧して、気泡を消しつつ、貯乳用のタンクに通液した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が2.1ppmであり、気泡率が5%以下であった。
【0101】
その後に、貯乳用タンク(20,000L容)に、生乳を一時的に貯留してから、前記の改良窒素ガス置換装置に再び、生乳を5000L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで50L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後(工程(A)の終了の直後)の生乳では、溶存酸度濃度が0.2ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、0.2ppmであった。
【0102】
[試験例14]
比例混合装置にスタティックミキサー(内径:11mm、30エレメント)を設置したものに、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:13.1ppm、比重:1.03):200Lを703L/h(空塔速度:2.1m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.25L/min(窒素ガス/生乳の体積比:11%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が3.4ppmであり、気泡率が10%以下であった。
【0103】
その後に、貯乳用タンク(200L容)に、生乳を一時的に貯留してから、改良窒素ガス置換装置に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後(工程(A)の終了の直後)の生乳では、溶存酸度濃度が0.4ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、改良窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、0.4ppmであった。
【0104】
[試験例15]
比例混合装置にスタティックミキサー(内径:11mm、30エレメント)を設置したものに、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.0ppm、比重:1.03):280Lを280L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで3.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:75%)で比例的に通気(混合)すると共に、窒素ガスを混合した後の生乳を貯乳用タンク(500L容)に貯留した。次に、前記の比例混合装置に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.0ppm、比重:1.03):105Lを280L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.4L/min(窒素ガス/生乳の体積比:30%)で比例的に通気(混合)すると共に、窒素ガスを混合した後の生乳を、同じ貯乳用タンク(500L容)に貯留した。
【0105】
さらに、前記の比例混合装置に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.0ppm、比重:1.03):105Lを280L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで0.7L/min(窒素ガス/生乳の体積比:15%)で比例的に通気(混合)すると共に、窒素ガスを混合した後の生乳を前記の貯乳用タンク(500L容)に貯留した。これらの3つ生乳を混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が2.2ppmであり、気泡率が10%以下であった。
【0106】
その後に、改良窒素ガス置換装置に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後(工程(B)の終了の直後)の生乳では、溶存酸度濃度が0.2ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、改良窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、0.2ppmであった。
【0107】
[試験例16]
改良窒素ガス置換装置に、生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:12.7ppm、比重:1.03):100Lを150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで0.75L/min(窒素ガス/生乳の体積比:30%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が7.1ppmであり、気泡率が5%以下であった。なお、改良窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、7.1ppmであった。
【0108】
その後に、貯乳用タンク(100L容)に、生乳を一時的に貯留してから、前記の窒素ガス置換装置に再び、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで1.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:60%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを再び混合した後(工程(A)の終了の直後)の生乳では、溶存酸度濃度が0.8ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、原料乳には、ほとんど泡立ちは見られなかった。なお、改良窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、0.8ppmであった。
【0109】
[比較例1]
実施例1と同等の生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:11.8ppm、比重:1.03):50Lを用いて、スパージャーからサージタンクの殺菌乳に、窒素ガスを吹き込まない以外の工程を、実施例1と同様にして、各工程を実施した。なお、実施例1と同様にして、サージタンクにおけるヘッドスペースに、窒素ガスを1L/minで通気した。この殺菌乳では、サージタンクに投入を開始した時を基準(0時間、溶存酸素濃度:3.4ppm)として、1時間の経過後に、溶存酸素濃度が4.3ppmであり、2時間の経過後に、溶存酸素濃度が4.4ppmであり、気泡率が5%以下であった。このとき、2時間の経過後に、牛乳(最終製品である乳含有飲料)には、ほとんど泡立ちは見られなかった。ただし、比較例1の牛乳では、溶存酸素濃度が1ppmを超えるため、実施例1の牛乳に比べて、新鮮な風味を有さなかった。
【0110】
[比較例2]
窒素ガス置換装置に、実施例1と同等の生乳(原料乳、温度:10℃以下、溶存酸素濃度:11.8ppm、比重:1.03):50Lを150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液しながら、窒素ガスを吹き込んで7.5L/min(窒素ガス/生乳の体積比:300%)で比例的に通気(混合)した。この窒素ガスを混合した後の生乳では、溶存酸素濃度が0.7ppmであり、気泡率が10%を超えており(窒素ガスに起因する)、激しい泡立ちが見られた。なお、窒素ガス置換装置の上方から噴霧した原料乳の溶存酸素濃度は、11.8ppmであった。その後に、殺菌機(加熱殺菌条件:130℃、2秒間)に、生乳を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液して加熱殺菌した。
【0111】
その後に、サージタンク(100L容)に、この殺菌した後の牛乳(殺菌乳):50Lを投入して貯留した。この殺菌乳では、サージタンクにおける体積比がサージタンクの全容積に対して50%であった。また、この殺菌乳では、溶存酸素濃度が1.0ppmであり、液温が10℃以下であった。そして、サージタンクにおけるヘッドスペースの割合がサージタンクの全容積に対して50%であった。
【0112】
その後に、サージタンクにおけるヘッドスペースに、窒素ガスを1L/minで通気した。この殺菌乳では、サージタンクに投入を開始した時を基準(0時間、溶存酸素濃度:1.0ppm)として、1時間の経過後に、溶存酸素濃度が1.1ppmであり、2時間の経過後に、溶存酸素濃度が1.3ppmであった。
【0113】
一方、殺菌機(加熱殺菌条件:130℃、2秒間)に、前記の加熱殺菌前であって、窒素ガスを混合した後の生乳(溶存酸素濃度:0.7ppmで、気泡率:10%超)を150L/h(空塔速度:0.8m/秒)で通液して、連続的に長時間で処理した。このとき、比較例2の牛乳では、殺菌機のプレートの表面が焦げ付きやすくなり、間接加熱殺菌式の殺菌機を用いて、生乳(原料乳)を連続的に長時間で処理しにくいことがわかった。