(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
送電用カップラから受電用カップラにワイヤレスで電力伝送する電界共鳴又は磁界共鳴型の給電カップラを備えたワイヤレス給電システムに用いられる前記給電カップラの位置検出方法であって、
前記送電用カップラ又は前記受電用カップラの少なくとも一方の電気的情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得されたデータと、比較対象となる参照データとの差分を算出する計算ステップと、
前記算出した差分に基づき、前記送電用カップラと前記受電用カップラとの相対位置又は相対角度の少なくとも一方を推定する推定ステップと、を有し、
前記推定ステップは、
前記電気的情報ごとに、前記計算ステップの算出結果と所定の閾値を比較して前記送電用カップラと前記受電用カップラとの相対位置又は相対角度の候補となるエリア候補を選択し、そのエリア候補の組合せに基づいて、前記送電用カップラと前記受電用カップラとの相対位置又は相対角度の少なくとも一方を推定し
前記電気的情報は複数あり、かつ、前記送電用カップラと前記受電用カップラとの前記相対位置又は前記相対角度の変化に対して極値を有する
ことを特徴とするワイヤレス給電システムの給電カップラの位置検出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、位置検出に用いられる上記センサは、電磁界共鳴型カップラに用いられる電磁界の強度が大きいことから、漏れ磁束、漏れ電界等の影響を受けて誤動作してしまう懸念がある。また、上記センサによって位置検出精度を高めるには、センサの数を増大する必要があり、高精度の位置検出を実現しようすると製造コストが増大してしまうのが実情である。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、給電カップラの電気的情報によって、給電カップラの位置を検出できるワイヤレス給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電システムは、送電用カップラから受電用カップラにワイヤレスで電力伝送する電界共鳴又は磁界共鳴型の給電カップラと、前記送電用カップラ又は前記受電用カップラの少なくとも一方の電気的情報を測定する検出部と、前記検出部の測定結果に基づき、前記送電用カップラと前記受電用カップラとの相対位置又は相対角度の少なくとも一方を推定する推定部と、を備え、前記電気的情報は、前記送電用カップラと前記受電用カップラとの前記相対位置又は前記相対角度の変化に対して極値を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るワイヤレス給電システムの他の態様は、前記検出部により測定した測定結果を記憶する記憶部をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るワイヤレス給電システムの他の態様は、前記電気的情報が前記送電用カップラ側のコモンモード電流又は不要放射の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るワイヤレス給電システムの他の態様は、前記電気的情報が前記受電用カップラ側のコモンモード電流又は不要放射の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るワイヤレス給電システムの他の態様は、前記推定部が、前記検出部で測定された複数の電気的情報の測定結果に基づき、前記送電用カップラと前記受電用カップラとの相対位置又は相対角度の少なくとも一方を推定することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るワイヤレス給電システムの他の態様は、前記給電カップラが電界共鳴型カップラであることを特徴とする。
【0016】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電システムの給電カップラの位置検出方法は、送電用カップラから受電用カップラにワイヤレスで電力伝送する電界共鳴又は磁界共鳴型の給電カップラを備えたワイヤレス給電システムに用いられる前記給電カップラの位置検出方法であって、前記送電用カップラ又は前記受電用カップラの少なくとも一方の電気的情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップにより取得されたデータと、比較対象となる参照データとの差分を算出する計算ステップと、前記算出した差分に基づき、前記送電用カップラと前記受電用カップラとの相対位置又は相対角度の少なくとも一方を推定する推定ステップと、を有し、前記電気的情報は、前記送電用カップラと前記受電用カップラとの前記相対位置又は前記相対角度の変化に対して極値を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るワイヤレス給電システムの給電カップラの位置検出方法の他の態様は、前記参照データは、前記取得ステップにより予め取得された事前取得データを含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るワイヤレス給電システムの給電カップラの位置検出方法の他の態様は、前記電気的情報が複数あり、前記推定ステップは、前記電気的情報ごとに、前記計算ステップの算出結果と所定の閾値を比較して前記送電用カップラと前記受電用カップラとの相対位置又は相対角度の候補となるエリア候補を選択し、そのエリア候補の組合せに基づいて、前記送電用カップラと前記受電用カップラとの相対位置又は相対角度の少なくとも一方を推定することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るワイヤレス給電システムの給電カップラの位置検出方法の他の態様は、前記電気的情報が前記送電用カップラ側のコモンモード電流又は不要放射の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るワイヤレス給電システムの給電カップラの位置検出方法の他の態様は、前記電気的情報は前記受電用カップラ側のコモンモード電流又は不要放射の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係るワイヤレス給電システムの給電カップラの位置検出方法の他の態様は、前記給電カップラが電界共鳴型カップラであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係るワイヤレス給電システムの給電カップラの位置検出方法の他の態様は、前記送電用カップラが、第1の電極と、前記第1の電極と並列して配される第2の電極とを備え、前記受電用カップラが、第3の電極と、前記第3の電極と並列して配される第4の電極とを備え、前記第1および第2の電極が前記第3および第4の電極とそれぞれ対向して配置されることで、前記送電用カップラから前記受電用カップラに電界共鳴により電力が伝送されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、給電カップラの電気的情報によって、給電カップラの位置を検出できるワイヤレス給電システムを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係るワイヤレス給電システムの一実施形態の全体構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】
図1に示す給電カップラの一実施形態である電界共鳴型カップラを示す断面図である。
【
図3】
図1に示す給電カップラの一実施形態である磁界共鳴型カップラを示す断面図である。
【
図4】
図2に示す電界共鳴型カップラの斜視図である。
【
図5】
図2に示す電界共鳴型カップラの上面図であり、(A)は位置ずれを、(B)は角度(回転)ずれを説明する図である。
【
図6】
図1のワイヤレス給電システムにおいて、位置候補情報を取得する処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図6のフローチャートによるデータ処理を説明する図であり、(A)はデータ処理の流れを、(B)は取得された位置候補情報の実施例を示す。
【
図8】位置候補情報を用いて給電カップラの位置を推定する処理を示すフローチャートである。
【
図9】(A)は電界共鳴型カップラの各電気的情報、(B)は(A)の位置候補情報、(C)は(B)から推定された推定位置の実施例を示す。
【
図10】
図1のワイヤレス給電システムにおいて、エリア候補情報を取得し、給電カップラの位置を推定する処理を示すフローチャートである。
【
図11】(A)は電界共鳴型カップラのエリア分けされた各電気的情報、(B)は(A)から推定された推定位置の実施例を示す。
【
図12】電界共鳴型カップラのエリア分けされた各電気的情報の別の実施例を示す。
【
図13】送電用カップラと受電用カップラとの相対位置変化に対するコモンモード電流の変化を示すグラフである。
【
図14】送電用カップラと受電用カップラとの相対角度変化に対するコモンモード電流の変化を示すグラフである。
【
図15】相対位置の変化に対して極値を有する電気的情報を用いて給電カップラの位置を推定する処理を示すフローチャートである。
【
図16】(A)は、第3実施形態で用いられる参照データDmの一例を示す。(B)は、
図13のコモンモード電流のグラフを用いて、位置移動Δx、移動前後の電気的情報の差分ΔD2を視覚的に説明する図である。
【
図17】相対角度の変化に対して極値を有する電気的情報を用いて給電カップラの位置を推定する処理を示すフローチャートである。
【
図18】(A)は、第4実施形態で用いられる参照データDmの一例を示す。(B)は、
図14に示したコモンモード電流のグラフを用いて、角度移動Δθ、回転前後の電気的情報の差分ΔD2を視覚的に説明する図である。
【
図19】相対位置の変化に対して極値を有する電気的情報を用いて給電カップラの位置を調整する処理を示すフローチャートである。
【
図20】相対角度の変化に対して極値を有する電気的情報を用いて給電カップラの位置を調整する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態におけるワイヤレス給電システム、及び、その給電カップラの位置検出方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0026】
まず、
図1を用いて、本発明に係るワイヤレス給電システムの一実施形態の全体構成を示す。本実施形態に係るワイヤレス給電システム50は、送電装置(交流電源)10から受電装置20(車両の充電電池等の負荷)にワイヤレス電力伝送(給電)を行う給電カップラ500を有し、給電カップラ500は、送電装置10から給電された交流電力を受電側に送電する送電用(一次側)カップラ510と、送電用カップラ510から送電された交流電力を受電する受電用(二次側)カップラ520とを備える。送電用カップラ510は第1ケーブル11で送電装置10に接続され、受電用カップラ520は第2ケーブル21で受電装置20に接続されている。
【0027】
ワイヤレス給電システム50は、送電用カップラ510又は受電用カップラ520の少なくとも一方の電気的情報を測定する検出部540と、検出部540の測定結果に基づき、送電用カップラ510と受電用カップラ520の相対位置又は相対角度のうち少なくとも一方を推定する推定部560とを備える。推定部560は、データ収集、演算も行う。さらに通信機能を備えていてもよく、例えばMPU等で実現できる。
【0028】
また、ワイヤレス給電システム50は、検出部540の測定結果を記憶する記憶部580をさらに備えることが好ましい。これによって、予め測定した事前データを記憶部580に保存し、その事前データを推定部560に入力することによって、推定部560の推定精度をより高めることができる。記憶部580には、例えば汎用のメモリや記憶装置等を用いることができる。
【0029】
本実施形態において、検出部540は、送電側検出部541と受電側検出部542を具備し、それぞれが送電用カップラ510の電気的情報(入力電圧、入力電流、コモンモード電流)、受電用カップラ520の電気的情報(出力電圧、出力電流、コモンモード電流)を測定するが、これらの全て測定する必要はなく、少なくとも一方のカップラにおいて、複数の電気的情報を検出できればよい。また、電気的情報の種類は、括弧内で示したものに限られず、例えば、不要放射等であっても良い。
【0030】
なお、コモンモード電流は、地面等を介し第1、第2ケーブルに流れる不要電流である。すなわち、電気的情報には、給電カップラ500に接続された第1、第2ケーブル等の電気的情報も含まれるものとする。
【0031】
後述するように、推定部560の推定精度をより高めるためには、この電気的情報として、送電用カップラ510と前記受電用カップラとの相対位置又は相対角度の変化に対して極値を有するものを用いることが好ましい。例えば、コモンモード電流、不要放射が挙げられる。
【0032】
本実施形態に係る給電カップラ500は、電界共鳴又は磁界共鳴型であり、
図2に電界共鳴型カップラ100の実施例を、
図3に磁界共鳴型カップラ200の実施例をそれぞれ示す。
図2は、電界共鳴型カップラ100の送電方向に沿った断面図である。電界共鳴型カップラ100は、送電用カップラ110と受電用カップラ120とを有し、送電用カップラ110には第1ケーブル11が、受電用カップラ120には第2ケーブル21が接続されている。
【0033】
電界共鳴型カップラ100の送電用カップラ110は、送電用LC共振回路として、2つの送電用電極(第1電極111と第2電極112)と2つの共振コイル(第1共振コイル113と第2共振コイル114)とを備える。第1電極111の第2電極112に近接する側の長辺とこれに対向する第2電極112の長辺とを所定の間隔を設けて略平行に配置することで、第1電極111、第2電極112はキャパシタを形成している。第1共振コイル113、第2共振コイル114は、それぞれの一端が第1電極111、第2電極112の端部にそれぞれ接続されている。これらの二つの送電用電極111、112と2つの共振コイル113、114が共振回路(送電用LC共振回路)を形成している。送電用LC共振回路の共振周波数は、給電される交流電力の周波数と略一致するように設計されている。
【0034】
同様に受電用カップラ120も、2つの受電用電極121、122(第3電極と第4電極)と2つの共振コイル(第3共振コイルと第4共振コイル)123、124とを備える。第3電極121と第4電極122の対向する2つの長辺を所定の間隔を設けて略平行に配置することで、第3電極121、第4電極122はキャパシタを形成している。そして、第3共振コイル123、第4共振コイル124のそれぞれの一端が第3電極121、第4電極122の端部にそれぞれ接続されて共振回路(受電用LC共振回路)を形成している。受電用LC共振回路の共振周波数は、受電する交流電力の周波数と略一致するように設計されている。すなわち、受電用LC共振回路の共振周波数は、上記した送電用LC共振回路の共振周波数と略一致する。
【0035】
電界共鳴型カップラ100は、送電用電極111、112と、受電用電極121、122とを対向配置することによって、送電用LC共振回路と受電用LC共振回路との間で電界共鳴させる。すなわち、送電用電極111と112、受電用電極121と122とをそれぞれ所定の間隔を設けて対向配置させ、送電用LC共振回路に所定周波数の交流電力を供給すると、送電用電極111、112と受電用電極121、122との間で電界共鳴が生じて、送電用カップラ110から受電用カップラ120に電力が供給される。
【0036】
また、送電用LC共振回路、受電用LC共振回路はそれぞれ、外部への不要放射波をシールドする効果のある送電(一次)側シールドケース115、受電(二次)側シールドケース125内に収納されている。これらのシールドケース115(125)は、一部が開放されており、この開放部に電極111(121)、112(122)が配置され、開放部を介して、送電用カップラ110の電極111(112)と、受電用カップラ120の電極121(122)が電界共鳴する。送電用カップラ110と受電用カップラ120は、開放部及び電極が対向するように所定の間隔をおいて配置される。
【0037】
第1、第2ケーブル11、21には、例えば平行2線ケーブルや同軸ケーブルを用いることができる。本実施形態において、第1ケーブル11の外導体は送電側シールドケース115及び接地電位(GND)と導通している。
【0038】
図3は、磁界共鳴型カップラ200の送電方向に沿った断面図である。磁界共鳴型カップラ200は、送電用カップラ210と受電用カップラ220とを有し、送電用カップラ110には第1ケーブル11が、受電用カップラ120には第2ケーブル21が接続されている。
【0039】
磁界共鳴型カップラ200は、
図3に示すように、上記した電界共鳴型カップラ100と比較して、電極とコイルの位置関係が逆になっており、送電側の共振コイル113と、受電側の共振コイル123とを対向配置することによって、送電用LC共振回路と受電用LC共振回路との間で磁界共鳴を発生させる点が異なる。すなわち、これらのコイルをそれぞれ所定の間隔を設けて対向配置させ、送電用LC共振回路に所定周波数の交流電力を供給すると、送電側の共振コイル113と、受電側の共振コイル123との間で磁界共鳴が生じて、送電用カップラ210から受電用カップラ220に電力が供給される。
【0040】
このように電界共鳴型カップラ100と磁界共鳴型カップラ200は、類似の構成を有していることから、以下においては主として電界共鳴型カップラ100について説明するが、磁界共鳴型カップラ200についても同様に適用可能である。
【0041】
次に、
図4を参照して、給電カップラ500として電界共鳴型カップラ100を例に、送電用カップラ110と受電用カップラ120の位置関係について説明する。図示するように、位置関係は、x(Shift)方向、y(Gap)方向、θ(角度)方向の三つで規定される。
上記したように電界共鳴型カップラ100は電界共鳴を用いることから、送電用の電極が近距離で略平行に対向することが望ましく、この位置関係がずれると、伝送効率が低下する他、漏れ電界や漏れ磁束が大きくなって他の機器の誤動作を誘発したり、人体に影響を及ぼす恐れがある。
【0042】
この位置関係のずれについて
図5を参照して説明する。
図5は、電界共鳴型カップラ100の上面図であり、(A)はx方向及びy方向の位置ずれを、(B)は角度方向の回転ずれを示す。
図5(A)のように、位置ずれは、y方向の対向距離Gapと、x方向の中心間距離Shiftによって表せる。また、
図5(B)のように、回転ずれは、送電用カップラ110に対して受電用カップラ120の対向面を時計回りに回転させた角度を+θ、反時計回りに回転させた角度を−θと定義する。なお、
図4及び
図5(B)に示すように、+θ方向、−θの回転軸は異なっているが、このように定義することで、いずれの方向であっても角度の絶対値が大きいほど回転ずれが大きい状態を指し示せる。
【0043】
以下、ワイヤレス給電システム50によって、給電カップラ500の位置を推定する具体的な処理方法について各実施形態を用いて説明する。
(第1実施形態)
図6は、本発明の第1実施形態に係る給電カップラ500の位置検出方法において、給電カップラ500の位置候補情報を取得する処理を示すフローチャートである。
【0044】
ワイヤレス給電システム50は、まず、検出部540が給電カップラ500の電気的情報Ddetを複数の測定点において測定する(ステップS1)。その際、
図5(A)に示すように、中心間距離Shift、対向距離Gapを明確にした状態で、前者をm=1…mまで、後者をn=1…nまで、任意の測定点だけ順次変化させ、
図7(A)のような各地点の電気的情報Ddetの参照データ(マッピングデータ)Dmap(m,n)を作成する。この参照データは、予め取得され、記憶部580に記憶されていることが好ましい。
【0045】
そして、次に、位置検出時(中心間距離Shift、対向距離Gapが不明確な状態)における電気的情報Ddetを取得し、取得データDdetと上記した参照データDmap(m,n)との差分ΔD(m,n)の絶対値を算出する(ステップS2)。そして、算出された差分ΔD(m,n)と所定の閾値を比較し(ステップS3)、差分ΔD(m,n)が閾値より小さい場合(ステップS3、Yes)には位置候補情報として1を出力し、その情報を記憶部580に保存する(ステップS4)。差分ΔD(m,n)が閾値より小さくない場合(ステップS3、No)には、次の測定点の参照データDmap(m',n')との比較へと進む(ステップS6)。このような参照データとの差分計算(ステップS2)と比較(ステップS3)を参照データの数だけ繰り返し、全参照データについて処理したら位置候補情報の取得は終了となる。
【0046】
図7(B)に、このようにして出力された電界共鳴型カップラ100の位置候補情報の例を示す。位置候補情報がステップS3において1と出力されない場合は、全て0と表すこととしたが、ステップS3においてNoの場合には0を出力するようにしても良い。また、所定の閾値を複数設定したり、電気的情報Ddetの種類によって重みづけを変えることによって、0、1の2値でなく、0、1、2等、3値以上で位置候補情報を表しても良い。
【0047】
図9(A)に電界共鳴型カップラ100における複数の電気的情報(送電側の入力電圧Volt、送電側のコモンモード電流Com1、受電側のコモンモード電流Com2、受電側の出力電力Precv)の測定結果の例と、
図9(B)に各電気的情報ごとに取得した位置候補情報を示す。
【0048】
次に、
図9(B)に示す位置候補情報を用いて、給電カップラ500の位置を推定する処理を、
図8のフローチャートを参照して説明する。各電気的情報ごとに取得した位置候補情報を統合(マージ)すると(ステップS11)、位置候補情報が最大となる位置(m,n)を選択できる(ステップS12)。
【0049】
図9(C)は、
図9(B)の複数の位置候補情報を、各位置(m,n)ごとに積算した結果を示す。位置候補情報の最大値は4であり、その位置は(m,n)=(2,4)であることがわかる。これによって、送電用カップラ110に対する受電用カップラ120の位置が中心間距離Shift=16cm、対向距離Gap=8cmにあることが推定できる。なお、マージ方法は積算に限られず、乗算等を適宜用いることができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る給電カップラ500の位置検出方法について説明する。
図10は、ワイヤレス給電システム50において、給電カップラ500のエリア候補情報を取得し、複数のエリア候補情報から給電カップラ500の位置を推定する処理を示すフローチャートである。
【0051】
ワイヤレス給電システム50は、まず、検出部540が給電カップラ500の第1の電気的情報Ddetを複数の測定点において測定する(ステップS21)。取得方法は、第1実施形態のステップS1と同様であり、参照データ(マッピングデータ)Dmap(m,n)を作成する。この参照データは、予め取得され、記憶部580に記憶されていることが好ましい。
【0052】
図11(A)に、参照データDmap(m,n)の例として、電界共鳴型カップラ100における第1の電気的情報(送電側の入力電圧Volt)を示す。図示するように、これらの参照データDmap(m,n)を、所定の閾値によってに予めエリア分けする。第1の電気的情報は、エリアA1〜A3の3つにエリア分けされている。
【0053】
そして、位置推定時(中心間距離Shift、対向距離Gapが不明確な状態)における電気的情報Ddetを取得し、第1の電気的情報について、取得データDdetと上記エリア分けに用いた閾値を比較する(ステップS22)。次に、エリアA1〜A3の中から該当する第1の候補エリアAxを選択する(ステップS23)。
【0054】
第2の電気的情報(送電側のコモンモード電流Com1)についても、第1の電気的情報のステップS21〜S23と同様の処理を行う(ステップS24〜S26)。そして、ステップS23で得られた第1の候補エリアAxと、ステップS26で得られた第2の候補エリアBxとを組み合わせ(重ね合せ)、両エリアAxとBxが一致したエリアから給電カップラ500の位置を推定する(ステップS27)。
【0055】
図11(B)に示すように、第1の電気的情報はエリアA2に該当し、第2の電気的情報はエリアB5に該当するため、A2とB5の組合せにより、送電用カップラ110に対する受電用カップラ120の位置が中心間距離Shift=24cm、対向距離Gap=6〜7cmにあることが推定できる。
【0056】
さらに、
図12に示すように電気的情報の数を増やすと、候補エリアの組合せにより一致するエリアが狭まるため、より推定の精度を高めることが出来る。第3の電気的情報は受電側のコモンモード電流Com2、第4の電気的情報は受電側の出力電力Precvである。
【0057】
なお、上記した実施形態においては、電界共鳴型カップラ100に回転ずれがない(θ=0°)として、位置関係を示す変数(x,y)のみを推定する例を示したが、θが不明な場合には、(x,y,θ)の3変数として上記した給電カップラの位置検出方法を適用すれば良い。また、3変数のうち2変数が明らかである場合には、不明な1変数のみを適用すれば良い。
【0058】
次に、位置関係(x,y,θ)の変化に対して極値を有する電気的情報を用いて、給電カップラ500の位置を推定する方法について説明する。まず、このような電気的情報について
図13〜14に示すコモンモード電流のデータを例に説明する。
【0059】
図13は、電界共鳴型カップラ100において、送電用カップラ110と受電用カップラ120とのx(Shift)方向の位置変化に対するコモンモード電流の変化を示すグラフである。具体的には、
図5(A)のように送電用カップラ110を固定し、受電用カップラ120の位置をx方向に移動させ、各測定点で、送電用カップラ110に接続された第1ケーブル11の外導体に流れる電流(コモンモード電流)を測定したデータである。なお、電界共鳴型カップラ100は
図2に示すようにx方向に対して対称であって、+x方向、−x方向の変化に対して対称な変化を示すと言えるため、−x方向のデータは、+x方向のデータを用いた。
なお、θ(角度)方向は、θ=0°で一定である。
【0060】
図13から明らかなように、中心間距離Shiftの絶対値が大きくなる(位置ずれが大きくなる)と全体傾向としてコモンモード電流は増大する。コモンモード電流は中心間距離Shift =0cmの位置ずれがない時が最小であり、中心間距離の変化に対して極値を有するとも言える。
【0061】
また、
図14は、電界共鳴型カップラ100において、送電用カップラ110と受電用カップラ120との±θ(角度)方向の位置変化に対するコモンモード電流の変化を示すグラフである。具体的には、
図5(B)のように送電用カップラ110を固定し、受電用カップラ120の対向面を回転させて、各測定点で、送電用カップラ110に接続された第1ケーブル11の外導体に流れる電流(コモンモード電流)を測定したデータである。
なお、x(Shift)方向は0cm、y(Gap)方向は7cmで一定である。
【0062】
図14から明らかなように、角度θの絶対値が大きくなる(回転ずれが大きくなる)とコモンモード電流は増大する。コモンモード電流は角度θ =0°の回転ずれがない時が最小であって、角度の変化に対して極値を有すると言える。
【0063】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態として、
図13のコモンモード電流のように、位置の変化に対して極値を有する電気的情報を用いた給電カップラ500の位置検出方法について説明する。
図15は、中心間距離Shiftに対して極値を有する電気的情報を用いて、給電カップラ500の位置を検出する処理を示すフローチャートである。対向距離Gap及び角度θは既知であり、中心間距離Shiftを検出する流れを示す。
【0064】
ワイヤレス給電システム50は、まず、第1、第2実施形態同様に、検出部540が電気的情報Ddetを複数の測定点において測定し、その測定値を参照データDmとする。
図16(A)は参照データDmの一例であって、
図13に示したコモンモード電流(角度θ=0°)の対向距離Gap=7cmにおけるデータを参照データDmとして抽出したものである。
【0065】
次に、中心間距離Shiftが不明確な状態で、検出部540が電気的情報Ddet-beforeを現在(移動前)の中心間距離Shiftにおいて測定する(ステップS31)。この取得データDdet-beforeと各中心間距離Shiftの参照データDmとの差分ΔD1を算出し(ステップS32)、ΔD1が最小値となる中心間距離Shiftの候補を選出する(ステップS33)。この際、データの対称性からx(Shift)方向において、+x方向、−x方向の2点の位置候補が選出される。
【0066】
その後、受電用カップラ520をx方向へΔxだけ移動させて(ステップS34)、移動後の中心間距離Shiftにおいて電気的情報Ddet-afterを測定する(ステップS35)。そして、移動前後の電気的情報の差分ΔD2=(Ddet-before)−(Ddet-after)を算出する(ステップS36)。
図16(B)は、
図13に示したコモンモード電流の対向距離Gap=7cmにおけるグラフ上で、Δx、ΔD2を視覚的に説明する図である。
【0067】
次に、差分ΔD2を0と比較し(ステップS37)、0より大きい場合(ステップS37、Yes)には、ステップS33において選出された2点の位置候補のうち+x方向の位置情報を選択する(ステップS38)。それ以外の場合(ステップS37、No)には、逆に−x方向の位置情報を選択する(ステップS39)。このようにして、送電用カップラ110に対する受電用カップラ120の位置が推定される。
【0068】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態として、
図14のコモンモード電流のように、角度の変化に対して極値を有する電気的情報を用いた給電カップラ500の位置検出方法について説明する。
図17は、角度θに対して極値を有する電気的情報を用いて、給電カップラ500の位置を検出する処理を示すフローチャートである。中心間距離Shift及び対向距離Gapは既知であり、角度θを検出する流れを示す。
【0069】
図17のフローチャートのステップS41からS49で示すように、第4実施形態は、第3実施形態と比較して検出変数が角度θである点が異なるが、それ以外は同様である。
図18(A)は、第4実施形態で用いられる参照データDmの一例であって、
図14に示したコモンモード電流におけるデータを抽出したものである。
図18(B)は、
図14に示したコモンモード電流のグラフ上で、Δθ、ΔD2を視覚的に説明する図である。
【0070】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態として、
図13のコモンモード電流のように、位置の変化に対して極値を有する電気的情報を用いた給電カップラ500の位置調整方法について説明する。
図19は、中心間距離Shiftに対して極値を有する電気的情報を用いて、給電カップラ500の位置を調整する処理を示すフローチャートである。対向距離Gap及び角度θは既知であり、中心間距離Shiftを調整する流れを示す。
【0071】
ワイヤレス給電システム50は、まず、中心間距離Shiftが不明確な状態で、検出部540が電気的情報Ddet-beforeを現在(移動前)の中心間距離Shiftにおいて測定する(ステップS51)。次に、受電用カップラ520をx方向へΔxだけ移動させて(ステップS52)、移動後の中心間距離Shiftにおいて電気的情報Ddet-afterを測定する(ステップS53)。そして、移動前後の電気的情報の差分ΔD=(Ddet-before)−(Ddet-after)を算出する(ステップS54)。
【0072】
算出された差分ΔDの絶対値と所定の閾値を比較し(ステップS55)、閾値より小さい場合(ステップS55、Yes)には、前記閾値に対応する位置(x(Shift)=0±5cm)になったとして中心間距離Shiftの調整処理を終了する。逆に、小さくない場合(ステップS55、No)には、差分ΔDの正負を判定する(ステップS56)。差分ΔDが負の場合(ステップS56、Yes)には移動方向を反転させた後に(ステップS57)、それ以外の場合(ステップS57、No)にはそのまま、ステップS51に戻って繰り返す。
【0073】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態として、
図14のコモンモード電流のように、角度の変化に対して極値を有する電気的情報を用いた給電カップラ500の位置調整方法について説明する。
図20は、角度θに対して極値を有する電気的情報を用いて、給電カップラ500の位置を調整する処理を示すフローチャートである。対向距離Gap及び中心間距離Shiftは既知であり、角度θを調整する流れを示す。
【0074】
図20のフローチャートのステップS61からS67で示すように、第6実施形態は、第5実施形態と比較して調整変数が角度θである点が異なるが、それ以外は同様である。
【0075】
このように極値を有する電気的情報を用いて第5、第6実施形態の位置調整方法を実現することができる。尚、この様に極値を有する電気的情報を検出対象とすると、予め取得した参照データを用いなくとも、相対的な電気的情報の変化に基づいて適切な位置(極値となる位置)に調整することが可能となる。
上記においては、それぞれ中心間距離Shift、角度θを検出、調整する実施例を示したが、第1から第6実施形態を適宜組み合わせてもよい。より多くの変数に対応することができるようになり、より検出、調整精度を高められる。
【0076】
尚、電界共鳴による電力伝送においては相対するカップラの回転によって給電状態の影響を受けやすいため、電界共鳴による電力伝送においては送受電用カップラ間の角度θに対して極値を有する電気的情報を用いることが好ましい。またこの場合の回転軸はx(Shift)方向、y(Gap)方向、ならびにx(Shift)方向およびy(Gap)方向に垂直なz方向の3つの回転軸全てとしても良いし、所定の一方向(例えばz方向)を回転軸とした回転角度に対して極値を有する電気的情報を用いてもよい。
【0077】
本発明によれば、給電カップラ500の電気的情報によって、センサを用いずに位置を検出可能であるが、さらに検出精度を向上する目的等で、センサと併用してもよい。
【0078】
なお、各実施形態の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、送電用LC共振回路、受電用LC共振回路には、通常共振回路として使用される種々様々な回路を適用することができる。