特許第6810542号(P6810542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6810542-飲食品組成物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810542
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】飲食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20201221BHJP
   A61K 31/718 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20201221BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALN20201221BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
   A23L33/105ZNA
   A61K31/718
   A61P43/00 111
   A61P29/00
   !C12Q1/6851 Z
   !C12N15/09 Z
【請求項の数】2
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-118048(P2016-118048)
(22)【出願日】2016年6月14日
(65)【公開番号】特開2017-221130(P2017-221130A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年3月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・平成28年5月20日発行 British Journal of Nutrition,Volume 116,Issue 02,July 2016,pp 247−257
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J−オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】長畑 雄也
(72)【発明者】
【氏名】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅博
(72)【発明者】
【氏名】東泉 裕子
(72)【発明者】
【氏名】石見 佳子
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−084674(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/161359(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/020552(WO,A1)
【文献】 J. Clin. Biochem. Nutr., 2013, Vol.53, No.1, pp.41-48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00
A23L 7/00
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含み、
前記レジスタントスターチ高含有澱粉が、アミロース含有量が40%以上であるアミロース高含有澱粉の酸処理物であり、
前記酸処理の反応条件が、以下の式(1)および(2)を満たす、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物。
(a)AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が65%以上
(b)分子量ピークが×103以上1.5×104以下
(c)分子量分散度が3.0以上5.0以下
(d)示差走査熱量測定による50℃〜130℃における糊化エンタルピーが1J/g以上8J/g以下
(5.54×(4.20)(T-40)/10(-0.879)≦C<−0.000016×T3+0.00068×T2−0.028×T+4.3 (1)
(ただし、上記式(1)において、T:反応温度(℃)、C:無機酸水溶液中の無機酸の規定度(N)である。)
13.0×C(-1.14)×(1/4.2)(T-40)/10≦t≦180×C(-1.58)×(1/4.2)(T-40)/10 (2)
(ただし、上記式(2)において、T:反応温度(℃)、C:無機酸水溶液中の無機酸の規定度(N)、t:反応時間(時間)である。)
【請求項2】
当該IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物中の前記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量が、当該IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物全体に対して0.1質量%以上100質量%未満である、請求項1に記載のIL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉は一般的に消化されやすいが、難消化性の画分も存在し、この画分はレジスタントスターチ(Resistant Starch:RS)と呼ばれている。
【0003】
特許文献1には、生体内における消化耐性に優れるレジスタントスターチを高い割合で含むとともに、レジスタントスターチの耐熱性に優れた澱粉を提供する技術が記載されている。
【0004】
一方、エストロゲン欠乏は骨粗鬆症に対する主要なリスクファクターであり、それは骨の炎症および骨吸収と関連している。
そして、骨粗鬆症の予防に関する技術として、非特許文献1および2においては、大豆イソフラボンの骨代謝調節作用について検討されている。
【0005】
非特許文献1には、イソフラボンの代謝産物であるエクォールを、卵巣摘出手術(OVX)をしたマウスに投与した試験において、8種類の骨髄中の遺伝子の発現が抑えられたことが記載されている。また、非特許文献2には、イソフラボンによる骨密度の改善効果に関する検討結果が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、エピガロカテキンガレートを有効成分とする破骨細胞分化抑制剤に関する技術が記載されている。また、同文献の段落0003には、「骨組織は、通常の状態では、破骨細胞と骨芽細胞との間で活性のバランスが保たれることにより、骨の形と量は維持される。骨形成速度よりも骨吸収速度が高くなることにより、上記バランスが崩れると、骨に小さな穴が多発し、骨密度が低下して骨の強度が弱まり脆弱性骨折リスクが高まる。このような状態が骨粗鬆症である。」と記載されており、骨粗鬆症の予防には、骨代謝のバランスが重要であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/045902号
【特許文献2】特開2009−107995号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Yoriko Nishide他7名,「Possible role of S-equol on bone loss via amelioration of inflammatory indices in ovariectomized mice」、J. Clin. Biochem. Nutr.、2013年7月、vol. 53、no. 1、41-48
【非特許文献2】Susan M Potter他5名,「Soy protein and isoflavones: their effects on blood lipids and bone density in postmenopausal women」、Am J Clin Nutr、1998年12月、68(6 Suppl)、1375S-1379S
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、骨粗鬆症とレジスタントスターチとの関連については明らかでなかった。
【0010】
本発明は、骨粗鬆症の原因となりうる骨密度の低下、骨髄の炎症、または、骨髄の炎症関連遺伝子の発現について、これを抑制し、あるいは、骨代謝バランスを改善する新規な飲食品組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下の条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含み、
前記レジスタントスターチ高含有澱粉が、アミロース含有量が40%以上であるアミロース高含有澱粉の酸処理物であり、
前記酸処理の反応条件が、以下の式(1)および(2)を満たす、Interleukin 7 Receptor(IL−7R)遺伝子発現抑制用飲食品組成物が提供される。
(a)AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が65%以上
(b)分子量ピークが×103以上1.5×104以下
(c)分子量分散度が3.0以上5.0以下
(d)示差走査熱量測定による50℃〜130℃における糊化エンタルピーが1J/g以上8J/g以下
(5.54×(4.20)(T-40)/10(-0.879)≦C<−0.000016×T3+0.00068×T2−0.028×T+4.3 (1)
(ただし、上記式(1)において、T:反応温度(℃)、C:無機酸水溶液中の無機酸の規定度(N)である。)
13.0×C(-1.14)×(1/4.2)(T-40)/10≦t≦180×C(-1.58)×(1/4.2)(T-40)/10 (2)
(ただし、上記式(2)において、T:反応温度(℃)、C:無機酸水溶液中の無機酸の規定度(N)、t:反応時間(時間)である。)
【0012】
また、本発明によれば、たとえば、以下の条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含む、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物を得ることもできる。
(a)AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が60%以上
(b)分子量ピークが6×103以上4×104以下
(c)分子量分散度が1.5以上6.0以下
(d)示差走査熱量測定による50℃〜130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下
【0013】
また、本発明によれば、たとえば、以下の条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含む、骨密度の低下抑制用飲食品組成物を得ることもできる。
(a)AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が60%以上
(b)分子量ピークが6×103以上4×104以下
(c)分子量分散度が1.5以上6.0以下
(d)示差走査熱量測定による50℃〜130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下
【0014】
また、本発明によれば、たとえば、以下の条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含む、骨代謝バランス改善用飲食品組成物を得ることもできる。
(a)AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が60%以上
(b)分子量ピークが6×103以上4×104以下
(c)分子量分散度が1.5以上6.0以下
(d)示差走査熱量測定による50℃〜130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下
【0015】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、用途などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明によれば、前記条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉のIL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物、骨密度低下抑制用飲食品組成物、または骨代謝バランス改善用飲食品組成物への使用が提供される。
また、本発明によれば、前記条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を含む、IL−7R遺伝子発現抑制剤が提供される。
本発明によれば、前記条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を含む、骨髄の炎症抑制剤が提供される。
本発明によれば、前記条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を含む、骨密度低下抑制剤が提供される。
本発明によれば、前記条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を含む、骨代謝バランス改善剤が提供される。
また、本発明によれば、前記IL−7R遺伝子発現抑制剤、前記骨髄の炎症抑制剤、前記骨密度低下抑制剤、または前記骨代謝バランス改善剤の飲食品、飼料または医薬品への使用が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、骨粗鬆症の原因となりうる骨密度の低下、骨髄の炎症、または、骨髄の炎症関連遺伝子の発現について、これを抑制し、あるいは、骨代謝バランスを改善する新規な飲食品組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例における骨髄の炎症関連遺伝子発現量の測定結果を示す図である。
図2】実施例における大腿骨骨密度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について各成分の具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
はじめに、本実施形態において飲食品組成物に用いられるレジスタントスターチ高含有澱粉について説明する。
【0020】
(レジスタントスターチ高含有澱粉)
本実施形態において、レジスタントスターチ高含有澱粉は、以下の条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たす。
(a)AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が60%以上
(b)分子量ピークが6×103以上4×104以下
(c)分子量分散度が1.5以上6.0以下
(d)示差走査熱量測定による50℃〜130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下
【0021】
本実施形態において用いられるレジスタントスターチ高含有澱粉は、上記条件(a)を満たし、レジスタントスターチ含有量が今までの製造方法によって得られたものに比べて顕著に高い。
レジスタントスターチ含有量をより一層高める観点からは、本実施形態におけるレジスタントスターチ高含有澱粉のAOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量は60%以上であり、好ましくは62%以上、さらに好ましくは65%以上である。なお、本実施形態におけるレジスタントスターチ高含有澱粉のレジスタントスターチ含有量の上限に制限はなく、100%以下であり、たとえば90%以下であってもよい。
ここで、レジスタントスターチ含有量は、試料乾燥重量当たりのレジスタントスターチ重量(w/w)として定義される。
【0022】
また、上記条件(b)および(c)を満たすことにより、澱粉中のレジスタントスターチ含有量を安定的に高めることができる。
【0023】
このうち、上記条件(b)は、レジスタントスターチ高含有澱粉の分子量範囲を規定する。
分子量ピークを6×103以上4×104以下とすることにより、レジスタントスターチ含有量が60%を上回る澱粉が安定的に得られる。
より安定的にレジスタントスターチ含有量の高い澱粉を得る観点からは、分子量ピークがたとえば6.5×103以上、好ましくは8×103以上であってもよい。また、さらに確実にレジスタントスターチ含有量の高い澱粉を得る観点からは、分子量ピークがたとえば3.6×104以下、好ましくは2.5×104以下、より好ましくは1.5×104以下であってもよい。
【0024】
次に、上記条件(c)は、分子量分散度を規定する。
条件(c)における分子量分散度とは、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnをいう。上記条件(c)を満たす構成とすることにより、レジスタントスターチ含有量を安定的に高めることができる。また、分子量が低い画分または分子量が高い画分が過剰に多くなることを抑制することができるため、飲食品組成物が粉っぽくなりすぎたり食感が硬くなりすぎることを抑制できる。
分子量分散度の下限は、飲食品組成物を摂取する際の粉っぽさ等の食感の好ましさを向上させる観点からは、1.5以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上とする。
一方、分子量分散度の上限は、レジスタントスターチ含有量をより一層安定的に高める観点からは、6.0以下、好ましくは5.5以下、さらに好ましくは5.0以下である。
よって、本実施形態における分子量分散度は、レジスタントスターチ含有量と食感とのバランスの観点からは、1.5以上6.0以下、好ましくは2.0以上5.5以下、より好ましくは3.0以上5.0以下である。
なお、澱粉の分子量は、たとえば、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:プルラン換算)で測定することができる。
【0025】
次に、条件(d)について説明する。
本実施形態においては、条件(d)を満たすため、元々のレジスタントスターチ含有量が高いことに加えて、加熱処理をおこなった後もレジスタントスターチを高含有量で含むことができる。
具体的には、200℃、20分間加熱後のレジスタントスターチ含有量を、たとえば55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは63%以上とすることも可能となる。
【0026】
ここで、糊化エンタルピーとは、澱粉が加熱され、糊になるために必要なエネルギーである。澱粉と水が共存下にて加熱されると、ある温度で澱粉は糊になる。この糊になるときにエネルギーを必要とするため、吸熱反応が起こる。示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)では、温度変化に伴う吸熱量がピークとして計測され、そのピーク面積が糊化エンタルピーとして計算される。糊化エンタルピーは糊化温度、分子量ピークおよび分子量分散度が近い澱粉同士において、耐熱性の指標として用いることができる。
【0027】
このDSCによる吸熱ピークの面積が小さいことが本実施形態におけるレジスタントスターチ高含有澱粉の一つの特徴であり、具体的には10J/g以下、好ましくは8J/g以下、さらに好ましくは6J/g以下である。こうすることにより、加熱処理後もレジスタントスターチ含有量が高い飲食品組成物を安定的に得ることができる。なお、糊化エンタルピーの下限に制限はなく、たとえば1J/g以上であってもよい。
【0028】
本実施形態の飲食品組成物においては、以上の条件(a)〜(d)をすべて満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含むため、IL−7R遺伝子の発現の抑制効果、骨髄の炎症抑制効果、骨密度の低下抑制効果、または、骨代謝バランスの改善効果を有するレジスタントスターチを高い割合で含むとともに、レジスタントスターチの加熱安定性に優れた飲食品組成物を得ることができる。
【0029】
次に、上記レジスタントスターチ高含有澱粉の製造方法を説明する。本実施形態におけるレジスタントスターチ高含有澱粉は、たとえば、特許文献1に記載の方法に準じて製造することができる。
なお、本明細書においてとくに記述がない場合、各用語の定義は以下の通りである。また、本明細書において、レジスタントスターチをRSと記載する場合もある。
スラリー濃度:澱粉スラリー重量に対する澱粉乾重量の割合(w/w)。
酸規定度:澱粉由来の水分も含めた、反応液中の水に対する酸の規定度。ここで、水分とは、澱粉湿重量に対する水分の割合(w/w)である。
レジスタントスターチ含有量:試料乾重量に対するレジスタントスターチの重量の割合(w/w)。
レジスタントスターチ高含有澱粉:レジスタントスターチ含有量60%以上の澱粉。
【0030】
本実施形態において、上記レジスタントスターチ高含有澱粉は、たとえば、アミロース含有量が40%以上であるアミロース高含有澱粉の酸処理物であり、好ましくは酸処理ハイアミロースコーンスターチである。
アミロース高含有澱粉の酸処理物は、たとえば、アミロース含有量が40%以上であるアミロース高含有澱粉を原料とし、該原料を無機酸水溶液中で酸処理することにより得られる。
【0031】
原料として用いられるアミロース高含有澱粉の由来は、コーン、馬鈴薯、米、小麦、甘藷、タピオカなど問わないが、容易に入手できるという観点からは、コーン由来のものが好ましく、具体的には、ハイアミロースコーンスターチが好ましい。ハイアミロースコーンスターチは育種によりアミロース含有量を高めたコーンスターチであり、アミロース含有量は40%以上のもの、70%以上のものが現在入手可能である。レジスタントスターチ高含有澱粉に含まれるレジスタントスターチ含有量をさらに安定的に増加させる観点からは、澱粉中のアミロース含有量がたとえば40%以上であり、好ましくは60%以上であれば、いずれの澱粉も使用できる。
【0032】
酸処理においては、原料の澱粉と水を反応装置に投入する。あるいは水に無機酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料の澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的に行う観点からは、反応中の澱粉の全量が水相内に均質に分散した状態、またはスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理を行う上での澱粉スラリーの濃度をたとえば50質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲になるように調整する。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。
【0033】
酸処理に用いられる酸として、具体的には塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類、純度などを問わず利用できる。
【0034】
酸処理反応は、得られる酸処理澱粉が上記条件(a)〜(d)を満たすよう適当な温度、適当な酸濃度を選択しておこなわれる。本実施形態においては、たとえば酸処理時の無機酸濃度、反応温度および反応時間を特定の条件に設定する。以下、各条件について具体的に説明する。
【0035】
まず、酸処理の時間は、上記条件(a)〜(d)を満たすように設定されるが、反応中の変質をより確実に抑制する観点からは、酸処理に要する時間をたとえば3日以内、好ましくは2日以内とする。
【0036】
また、酸処理における無機酸濃度および反応温度については、たとえば以下の式(1)を満たす条件とする。
(5.54×(4.20)(T-40)/10(-0.879)≦C<−0.000016×T3+0.00068×T2−0.028×T+4.3 (1)
(ただし、上記式(1)において、T:反応温度(℃)、C:無機酸水溶液中の無機酸の規定度(N)である。)
【0037】
無機酸規定度および反応温度がいずれも高すぎると、レジスタントスターチ含有量を充分高めることができない場合がある。一方、低すぎると、酸処理反応に時間がかかりすぎる場合がある。
上記式(1)を満たす条件とすることにより、レジスタントスターチ含有量を効率よく安定的に高めることができる。
【0038】
さらに、酸処理における反応時間は、反応温度および酸規定度の2つのファクターから以下の式(2)で一義的に決定することができる。
13.0×C(-1.14)×(1/4.2)(T-40)/10≦t≦180×C(-1.58)×(1/4.2)(T-40)/10 (2)
(ただし、上記式(2)において、T:反応温度(℃)、C:無機酸水溶液中の無機酸の規定度(N)、t:反応時間(時間)である。)
【0039】
上記式(2)は実験的に求められた式であり、酸規定度が2倍になると、レジスタントスターチ高含有澱粉が得られる最短時間が1/2.2倍、最長時間が1/3倍になり、反応温度が10℃上昇すると最短時間、最長時間ともに1/4.2倍になるという関係に基づく式である。
【0040】
レジスタントスターチ高含有澱粉の製造条件は、反応温度、酸規定度および反応時間の3つのファクターで表される。そして、式(2)に使用する反応温度および酸規定度の上限と下限は、前述の上記式(1)によって決定される。
【0041】
アミロース含有量が40%以上であるアミロース高含有澱粉を原料として酸処理を行い、その際の反応温度、酸規定度および反応時間についてそれぞれ特定の条件を設定することにより、レジスタントスターチ含有量を飛躍的に上昇させることができる。また、高効率にアミロース高含有澱粉のレジスタントスターチ含有量を増やすことが可能となる。
【0042】
こうして得られるレジスタントスターチ高含有澱粉は、条件(a)〜(d)を満たすため、レジスタントスターチの割合が高く、レジスタントスターチの加熱耐性に優れているとともに、骨髄の炎症関連遺伝子であるIL−7R遺伝子の発現を抑制することができる。
また、条件(a)〜(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉は、レジスタントスターチ含有量が高く、レジスタントスターチの加熱耐性に優れているとともに、IL−7R遺伝子の発現抑制ができるため、骨髄の炎症、または、骨密度の低下を抑制し、また、骨代謝バランスを改善することができる。これは、IL−7はエストロゲン欠乏による骨量の減少を引き起こす主要な炎症性サイトカインであり、その受容体であるIL−7R遺伝子の発現抑制をすることは、IL−7の作用を弱め、骨髄の炎症、または、骨密度の低下を抑制し、また、骨代謝バランスを改善することができるためである。
【0043】
また、条件(a)〜(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉は、たとえば、IL−7R遺伝子発現抑制剤、好ましくは骨髄のIL−7R遺伝子発現抑制剤、骨髄の炎症抑制剤、骨密度の低下抑制剤、または、骨代謝バランス改善剤として有効である。
また、条件(a)〜(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉は、飲食品組成物中の成分として好ましく用いられる。
以下、飲食品組成物の具体例として、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物、骨密度の低下抑制用飲食品組成物、および骨代謝バランス改善用飲食品組成物について説明する。
【0044】
(IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物)
本実施形態において、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物は、前述した条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含む。このため、本実施形態におけるIL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物は、骨髄の炎症関連遺伝子であるIL−7R遺伝子の発現を抑制することができる。
【0045】
IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量は、骨髄におけるIL−7R遺伝子の発現の抑制効果を高める観点からは、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物全体に対してたとえば0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、よりいっそう好ましくは10質量%以上、さらにまた好ましくは15質量%以上である。また、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量の上限に制限はなく、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物全体に対してたとえば100質量%未満であり、好ましくは90質量%以下である。また、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量を、たとえば60質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下としてもよい。
【0046】
また、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物中に含まれるレジスタントスターチ高含有澱粉以外の成分は、飲食品に用いられる成分であればよいが、その具体例として、
コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉等の上記レジスタントスターチ高含有澱粉以外の澱粉、またはこれらにアセチル化、ヒドロキシプロピル化、リン酸架橋等の加工を施した加工澱粉;
小麦粉、大麦粉、大豆粉、米粉等の穀粉;
不溶性食物繊維、水溶性食物繊維、難消化性オリゴ糖等の食物繊維;
ペクチン、グァーガム、セルロース等の上記以外の多糖類;
ブドウ糖、果糖、シュークロース、乳糖、トレハロース等の単糖またはオリゴ糖;
アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア等の上記単糖およびオリゴ糖以外の甘味料;
カゼイン、アルブミン、大豆タンパク質等のタンパク質またはペプチド;
コーン油、オリーブ油、ココナッツ油、亜麻仁油、えごま油、ごま油、パーム油等の食用油脂、バター、ショートニング、マーガリン等の加工油脂等の油脂;
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等のミネラル;
ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群等のビタミン;
シスチン、グルタミン酸またはその塩、グリシン等のアミノ酸;
コリン酒石酸水素塩等のコリン塩;
t−ブチルヒドロキノン、ローズマリー抽出物等の酸化防止剤;
クエン酸、リンゴ酸等の有機酸、無機酸、無機塩等のpH調整剤;
レシチン、グリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤;
ダイゼイン、エクォール等のイソフラボン類;
香料;および
水等が挙げられる。
【0047】
このうち、不溶性食物繊維として、たとえば、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キトサン、キチン、およびカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。この中で、セルロースは植物および酵母の細胞壁を構成する主成分であり、利用しやすく、不溶性食物繊維の代表的な化合物である。不溶性食物繊維の由来は限定されず、植物由来のもの、動物由来のもの、菌類由来のもの等を用いることができる。
また、入手の容易さの観点からは、不溶性食物繊維がセルロースおよびその誘導体から選ばれる1種以上または2種であることが好ましく、より好ましくはセルロースである。
【0048】
IL−7R遺伝子発現抑制効果を得るとともに、腸内環境を改善する観点からは、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物が不溶性食物繊維を1種または2種以上含むことも好ましい。
IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物中の不溶性食物繊維の含有量は、飲食品組成物の形態に応じて設定してよく、また、IL−7R遺伝子の発現抑制効果が充分に得られる範囲で適宜設定してよいが、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物全体に対してたとえば0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、また、たとえば30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
【0049】
IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物は、上記レジスタントスターチ高含有澱粉およびその他の原料を所定の順序で混合することにより得ることができる。
また、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物の製造過程において、加熱、乾燥、混合、水や油脂等への分散等の所定の調理工程をおこなうこともできる。
【0050】
得られるIL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物の形態に制限はなく、粉末、顆粒等の粒状物、錠剤、カプセル剤等の固形状;
分散液、懸濁液等の液状;
ゼリー状;または
ペースト状等の組成物とすることができる。
【0051】
また、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物の摂取量は、たとえばIL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物中の有効成分であるレジスタントスターチ高含有澱粉の含有量、摂取者の年齢や体調、摂取方法等に応じて設定することができる。
IL−7R遺伝子の発現抑制効果を高める観点から、成人については、体重1kgあたり、1日あたりの有効成分として、たとえば50mg以上、好ましくは100mg以上とすることができる。
また、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物の摂取量の上限に制限はないが、成人については、体重1kgあたり、1日あたりの有効成分として、たとえば5g以下とすることができる。
また、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物を摂取する者は、年齢や性別に制限はないが、エストロゲン欠乏による骨粗鬆症を引き起こしやすい者が好ましく、特に閉経後の女性が好ましい。
【0052】
本実施形態においては、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物が有効成分として上記レジスタントスターチ高含有澱粉を含むため、IL−7R遺伝子の発現を効果的に抑制することができる。
【0053】
(骨髄の炎症抑制用飲食品組成物)
本実施形態において、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物は、前述した条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含む。
【0054】
骨髄の炎症抑制用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量は、骨髄の炎症抑制効果を高める観点からは、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物全体に対してたとえば0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、よりいっそう好ましくは10質量%以上、さらにまた好ましくは15質量%以上である。また、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量の上限に制限はなく、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物全体に対してたとえば100質量%未満であり、好ましくは90質量%以下である。また、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量を、たとえば60質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下としてもよい。
【0055】
また、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物中に含まれるレジスタントスターチ高含有澱粉以外の成分は、飲食品に用いられる成分であればよいが、その具体例として、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物中に含まれる成分として前述したものが挙げられる。
【0056】
骨髄の炎症抑制用飲食品組成物は、たとえば、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物について前述した方法により得ることができる。
得られる骨髄の炎症抑制用飲食品組成物の形態に制限はなく、たとえば、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物の形態として前述した形態とすることができる。
【0057】
また、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物の摂取量は、たとえば骨髄の炎症抑制用飲食品組成物中の有効成分であるレジスタントスターチ高含有澱粉の含有量、摂取者の年齢や体調、摂取方法等に応じて設定することができ、たとえば、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物の摂取量として前述した摂取量とすることができる。
また、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物を摂取する者は、年齢や性別に制限はないが、エストロゲン欠乏による骨粗鬆症を引き起こしやすい者が好ましく、特に閉経後の女性が好ましい。
【0058】
本実施形態においては、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物が有効成分として上記レジスタントスターチ高含有澱粉を含むため、骨髄における炎症を効果的に抑制することができる。
【0059】
(骨密度の低下抑制用飲食品組成物)
本実施形態において、骨密度の低下抑制用飲食品組成物は、前述した条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含む。また、骨密度の低下抑制用飲食品組成物は、たとえば、大腿骨の骨密度低下抑制用に優れる。
【0060】
骨密度の低下抑制用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量は、骨密度の低下を抑制する効果を高める観点からは、骨密度の低下抑制用飲食品組成物全体に対してたとえば0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、よりいっそう好ましくは10質量%以上、さらにまた好ましくは15質量%以上である。また、骨密度の低下抑制用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量の上限に制限はなく、骨密度の低下抑制用飲食品組成物全体に対してたとえば100質量%未満であり、好ましくは90質量%以下である。また、骨密度の低下抑制用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量を、たとえば60質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下としてもよい。
【0061】
また、骨密度の低下抑制用飲食品組成物中に含まれるレジスタントスターチ高含有澱粉以外の成分は、飲食品に用いられる成分であればよいが、その具体例として、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物中に含まれる成分として前述したものが挙げられる。
【0062】
骨密度の低下抑制用飲食品組成物は、たとえば、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物について前述した方法により得ることができる。
骨密度の低下抑制用飲食品組成物の形態に制限はなく、たとえば、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物の形態として前述した形態とすることができる。
【0063】
また、骨密度の低下抑制用飲食品組成物の摂取量は、たとえば骨密度の低下抑制用飲食品組成物中の有効成分であるレジスタントスターチ高含有澱粉の含有量、摂取者の年齢や体調、摂取方法等に応じて設定することができ、たとえば、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物の摂取量として前述した摂取量とすることができる。
また、骨密度の低下抑制用飲食品組成物を摂取する者は、年齢や性別に制限はないが、エストロゲン欠乏による骨粗鬆症を引き起こしやすい者が好ましく、特に閉経後の女性が好ましい。
【0064】
本実施形態においては、骨密度の低下抑制用飲食品組成物が有効成分として上記レジスタントスターチ高含有澱粉を含むため、骨密度の低下を効果的に抑制することができる。さらに具体的には、本実施形態の骨密度の低下抑制用飲食品組成物を用いることにより、大腿骨における骨密度の低下を好適に抑制することも可能となる。
【0065】
(骨代謝バランス改善用飲食品組成物)
本実施形態において、骨代謝バランス改善用飲食品組成物は、前述した条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含む。
【0066】
骨代謝バランス改善用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量は、骨代謝バランスを改善する効果を高める観点からは、骨代謝バランス改善用飲食品組成物全体に対してたとえば0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、よりいっそう好ましくは10質量%以上、さらにまた好ましくは15質量%以上である。また、骨代謝バランス改善用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量の上限に制限はなく、骨代謝バランス改善用飲食品組成物全体に対してたとえば100質量%未満であり、好ましくは90質量%以下である。また、骨代謝バランス改善用飲食品組成物中の上記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量を、たとえば60質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下としてもよい。
【0067】
また、骨代謝バランス改善用飲食品組成物中に含まれるレジスタントスターチ高含有澱粉以外の成分は、飲食品に用いられる成分であればよいが、その具体例として、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物中に含まれる成分として前述したものが挙げられる。
【0068】
骨代謝バランス改善用飲食品組成物は、たとえば、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物について前述した方法により得ることができる。
骨代謝バランス改善用飲食品組成物の形態に制限はなく、たとえば、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物の形態として前述した形態とすることができる。
【0069】
また、骨代謝バランス改善用飲食品組成物の摂取量は、たとえば骨代謝バランス改善用飲食品組成物中の有効成分であるレジスタントスターチ高含有澱粉の含有量、摂取者の年齢や体調、摂取方法等に応じて設定することができ、たとえば、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物の摂取量として前述した摂取量とすることができる。
また、骨代謝バランス改善用飲食品組成物を摂取する者は、年齢や性別に制限はないが、エストロゲン欠乏による骨粗鬆症を引き起こしやすい者が好ましく、特に閉経後の女性が好ましい。
【0070】
本実施形態においては、骨代謝バランス改善用飲食品組成物が有効成分として上記レジスタントスターチ高含有澱粉を含むため、骨代謝バランスを効果的に改善することができる。
【0071】
(飲食品)
本実施形態において、IL−7R遺伝子発現を抑制する飲食品組成物、骨髄の炎症を抑制できる飲食品組成物、骨密度の低下を抑制することができる飲食品組成物、または、骨代謝バランスを改善する飲食品組成物における飲食品の具体例として、
ヨーグルト、チーズ、粉ミルク等の乳製品;
粉末スープ、レトルトスープ等のスープ類;
プリン、クッキー、ビスケット、クラッカー、ケーキ、チョコレート、キャンディー、シリアルバー、グラノーラ、コーンパフ等の洋菓子、和菓子等の菓子;
パン、ピザ、麺類;
ベーコン、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の畜肉加工品;
かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージ等の魚介加工品;
味噌、塩麹等の調味料;
果汁飲料、乳飲料、スポーツ飲料等の清涼飲料、茶、アルコール飲料、スムージー等の飲料;
サプリメント等が挙げられる。
【0072】
また、本実施形態において、飲食品は、特定保健用食品等の特別用途食品、栄養機能食品等の保健機能食品;病者用食品等であってもよい。
また、本実施形態において、飲食品の摂取者はヒト以外であってもよく、飲食品が飼料であってもよい。
【0073】
本実施形態によれば、上述した条件(a)〜(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を含む飲食品組成物として、骨髄の炎症関連遺伝子であるIL−7R遺伝子発現を抑制する飲食品組成物、骨髄の炎症を抑制できる飲食品組成物、骨密度の低下を抑制することができる飲食品組成物、および、骨代謝バランスを改善する飲食品組成物を得ることができる。
また、本実施形態によれば、たとえば、骨粗鬆症を予防または改善する効果を得ることも可能となる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 以下の条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含む、IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物。
(a)AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が60%以上
(b)分子量ピークが6×103以上4×104以下
(c)分子量分散度が1.5以上6.0以下
(d)示差走査熱量測定による50℃〜130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下
2. 前記レジスタントスターチ高含有澱粉が、アミロース含有量が40%以上であるアミロース高含有澱粉の酸処理物である、1.記載のIL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物。
3. 当該IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物中の前記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量が、当該IL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物全体に対して0.1質量%以上100質量%未満である、1.または2.に記載のIL−7R遺伝子発現抑制用飲食品組成物。
4. 以下の条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含む、骨髄の炎症抑制用飲食品組成物。
(a)AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が60%以上
(b)分子量ピークが6×103以上4×104以下
(c)分子量分散度が1.5以上6.0以下
(d)示差走査熱量測定による50℃〜130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下
5. 前記レジスタントスターチ高含有澱粉が、アミロース含有量が40%以上であるアミロース高含有澱粉の酸処理物である、4.に記載の骨髄の炎症抑制用飲食品組成物。
6. 当該骨髄の炎症抑制用飲食品組成物中の前記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量が、当該骨髄の炎症抑制用飲食品組成物全体に対して0.1質量%以上100質量%未満である、4.または5.に記載の骨髄の炎症抑制用飲食品組成物。
7. 以下の条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含む、骨密度の低下抑制用飲食品組成物。
(a)AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が60%以上
(b)分子量ピークが6×103以上4×104以下
(c)分子量分散度が1.5以上6.0以下
(d)示差走査熱量測定による50℃〜130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下
8. 前記レジスタントスターチ高含有澱粉が、アミロース含有量が40%以上であるアミロース高含有澱粉の酸処理物である、7.に記載の骨密度の低下抑制用飲食品組成物。
9. 当該骨密度の低下抑制用飲食品組成物中の前記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量が、当該骨密度の低下抑制用飲食品組成物全体に対して0.1質量%以上100質量%未満である、7.または8.に記載の骨密度の低下抑制用飲食品組成物。
10. 以下の条件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を有効成分として含む、骨代謝バランス改善用飲食品組成物。
(a)AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が60%以上
(b)分子量ピークが6×103以上4×104以下
(c)分子量分散度が1.5以上6.0以下
(d)示差走査熱量測定による50℃〜130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下
11. 前記レジスタントスターチ高含有澱粉が、アミロース含有量が40%以上であるアミロース高含有澱粉の酸処理物である、10.に記載の骨代謝バランス改善用飲食品組成物。
12. 当該骨代謝バランス改善用飲食品組成物中の前記レジスタントスターチ高含有澱粉の含有量が、当該骨代謝バランス改善用飲食品組成物全体に対して0.1質量%以上100質量%未満である、10.または11.に記載の骨代謝バランス改善用飲食品組成物。
【実施例】
【0074】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の趣旨はこれらに限定されるものではない。
また、以下において、特に断りのない場合、「%」とは「質量%」である。
【0075】
(製造例1)レジスタントスターチ高含有澱粉の製造
特許文献1に記載の実施例1に準じて、上記条件(a)〜(d)を満たすレジスタントスターチ高含有澱粉を製造した。
具体的には、ハイアミロースコーンスターチHS−7 classVII(J−オイルミルズ社製、水分15.0%、アミロース含有量70%)を用い、スラリー重量に対する澱粉乾重量が40%(dry starch weight/slurry weight)となるよう水を加えたスラリーを320g調製した。そこに、懸濁しながら6.67Nに調製した塩酸水溶液80mLを加え、40℃に調整した。このとき、澱粉水分を含めた反応水当たりの塩酸の規定度は1.96Nとなった。塩酸水溶液を加えたのち、40℃に達した時点を開始時とした。24時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、レジスタントスターチ高含有澱粉である酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。なお、酸規定度とは最終的な反応液における澱粉水分を含めた反応水当たりの酸規定度を意味する。
【0076】
得られたレジスタントスターチ高含有澱粉の評価結果を以下に示す。
レジスタントスターチ含有量:68%(AOAC公定法2002.02による測定法)
分子量ピーク:1.2×104
分子量分散度:4.0
DSCによる糊化エンタルピー:4.9J/g
200℃、20分間加熱後のレジスタントスターチ含有量:67%
ここで、分子量分布、糊化エンタルピー、および、200℃、20分間加熱後のレジスタントスターチ含有量の測定は、それぞれ以下の方法でおこなった。
【0077】
(分子量分布の測定)
分子量分布(分子量ピークおよび分子量分散度)の測定は、東ソー社製HPLCユニット(ポンプDP−8020、RI検出器RS−8021、脱気装置SD−8022)を使用した。分析条件は、以下の通りである。
カラム:TSKgel α−M(7.8mmφ、30cm)(東ソー社製)2本
流速:0.5ml/min
移動相:5mM NaNO3/ジメチルスルホキシド:水(9:1)
カラム温度:40℃
分析量:0.2mL(試料濃度1.0mg/mL移動相)
【0078】
検出器のデータは専用のソフトウェア(マルチステーションGPC−8020 modelIIデータ収集version5.70、東ソー社製)を用いて収集し、分子量ピーク、分子量分散度を計算した。検量線は分子量既知のプルラン(昭和電工社製、Shodex Standard P−82)を使用して作成した。
【0079】
(示差走査熱量測定(DSC)による糊化エンタルピーの測定)
DSCの測定には、マックサイエンス社製DSC3100を使用した。試料15mgと蒸留水45μLを70μL容量のアルミセル中に入れ、蓋をして密閉し、室温で3時間以上放置し、吸水させた。リファレンスにはブランクセルを用いた。昇温は、室温から130℃まで10℃/minの速度でおこなった。得られたDSCチャートの吸熱ピークの面積より測定される熱量である糊化エンタルピーを澱粉乾燥重量当たりの糊化熱(J/g)として定義した。
【0080】
(200℃、20分間加熱後のレジスタントスターチ含有量の測定)
水分が30%となるよう澱粉と水を混ぜ、Wonder Brender(大阪ケミカル社製)で3秒間の混合を2回行った。その後、ゴムベラで側面および底部に付着した澱粉をかき落とし、再度3秒間の混合を1回行った。この調湿した澱粉6gを取り、底面の直径が52mm、開口部の直径が72mm、高さが36mmのステンレス製カップに詰め、同じ大きさのステンレス製カップを上に重ね、10秒間上から押し固めた。重ねたステンレス製カップを外し、試料を200℃の送風定温乾燥機(EYELA WFO−40、東京理化器械社製)に入れ20分間加熱した。加熱後の試料を粉砕し、60メッシュの篩に通し、AOAC公定法2002.02による測定法により、レジスタントスターチ含有量を測定した。
【0081】
(試験例1 脛骨骨髄中の炎症関連遺伝子発現量の解析)
上記製造例1により得られたレジスタントスターチ高含有澱粉および表1に示す成分を用いて飼料1〜3の各飼料を調製した。各飼料について、マウスを用いた2週間試験により、頸骨骨髄中の炎症関連遺伝子発現量の解析をおこなった。
飼料の組成を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
*1 ミネラル混合:AIN−93Gミネラル混合(オリエンタル酵母工業社製)
*2 ビタミン混合:AIN−93ビタミン混合(オリエンタル酵母工業社製)
*3 ハイアミロースコーンスターチ(HAS):ハイアミロースコーンスターチHS−7 ClassVII(J−オイルミルズ社製)、レジスタントスターチ含有量(AOAC公定法2002.02による測定値)40.5%。飼料を調製する際は、ハイアミロースコーンスターチのRS含有量は34.4%(湿重量換算値)とした。
*4 製造例1で得られたレジスタントスターチ高含有澱粉(HRS):レジスタントスターチ含有量(AOAC公定法2002.02による測定値)68%。飼料を調製する際は、レジスタントスターチ高含有澱粉のRS含有量は60%(湿重量換算値)とした。
【0084】
試験方法は以下のとおりである。
試験には7.5週齢のddY雌性マウス(日本エスエルシー社製)を用いた。4日間の予備飼育の後、偽手術(Sham)あるいは卵巣摘出手術(OVX)を施した。偽手術を施したマウスをSham群とした。また、卵巣を摘出したマウスをOVX群、ハイアミロースコーンスターチ(HAS)摂取群(OVX+HAS群)、および、製造例1のレジスタントスターチ高含有澱粉(HRS)摂取群(OVX+HRS群)に分けた。ここで、OVX群は、閉経後骨粗鬆症のモデル群である。
【0085】
Sham群およびOVX群にはコントロール飼料である飼料1を与えた。OVX+HAS群には飼料2の20%HAS食を与えた。また、OVX+HRS群には飼料3の20%HRS食を与えた。ここで、各群には、上記飼料をpaired feedingにより2週間与えた。
各マウスは個別ケージで飼育し、室温23±1℃、湿度60±5%、明期、暗期ともに12時間のサイクルに調節された部屋で飼育した。飼育期間の飼料摂取量は随時記録し、飲水は自由に摂取させた。
2週間飼育後、ネンブタール麻酔下で脛骨を採取し、分析まで70%エタノールに浸漬し4℃で保存した。
そして、各群のマウスの脛骨骨髄中の炎症関連遺伝子発現量を以下の方法で解析した。
【0086】
RNA抽出試薬としてISOGEN II(ニッポン・ジーン社製)を用いて脛骨骨髄よりTotal RNAを抽出した。RNAからcDNAの合成には、Prime Script RT Master Mix(タカラバイオ株式会社製)を用いた。リアルタイムPCR解析にはMiniOpticon Real-time PCR System(バイオ・ラッド社製)を使用し、PCR反応試薬としてSYBR Primer Ex Taq II(タカラバイオ株式会社製)を使用した。リアルタイムPCR反応条件は、95℃、30秒の初期変性の後、95℃、5秒の変性、60℃、30秒でのアニーリングを40サイクル行った。
【0087】
使用したプライマーを以下に示す。
Interleukin (IL) -7-F:TCCTCCACTGATCCTTGTTC(配列番号1)
IL-7-R:CTTCAACTTGCGAGCAGCAC(配列番号2)
Interleuin 7 Receptor (IL-7R) -F:GCGGACGATCACTCCTTCTG(配列番号3)
IL-7R-R:AGCCCCACATATTTGAAATTCCA(配列番号4)
Tumor necrosis factor (TNF)-α -F:ATGAGCACAGAAAGCATGATC(配列番号5)
TNF-α-R:TACAGGCTTGTCACTCGAATT(配列番号6)
IL1β-F:TGCCACCTTTTGACAGTGAT(配列番号7)
IL1β-R:CGAGATTTGAAGCTGGATGC(配列番号8)
【0088】
また、遺伝子発現量の測定結果を以下の方法で統計解析した。
解析にはSPSS Statics、Ver 19.0J for Windows(IBM社製)を使用した。結果は平均±標準誤差で示した。すべての値はスミルノフ・グラブス検定で外れ値を除外した後、それぞれの検定を行った。遺伝子発現量のグループ間での有意差検定は一元配置の分散分析(ANOVA)を行った後、Tukeyの多重比較検定を行った。判定基準の確率は全て5%有意水準とした。
【0089】
図1(A)〜図1(D)は、解析結果を示す図である。各図において、遺伝子発現量(図中の「Relative expression」)について、a〜cの異なる記号間で優位差がある(P<0.05)。
図1(A)〜図1(D)より、2週間の各飼料の摂取が骨粗鬆症モデルマウスの骨髄の炎症関連遺伝子の発現におよぼす影響について、以下のことがわかる。
図1(B)より、エストロゲン欠乏のOVX群のIL−7R遺伝子発現量は、Sham群と比し有意に高値を示した。飼料2のOVX+HAS群では、IL−7R遺伝子発現量についてOVX群との有意差は認められなかった。
一方、飼料3のOVX+HRS群ではIL−7R遺伝子発現量について有意に低値を示した。
骨髄のIL−7、TNF−αおよびIL−1β遺伝子発現量に対しては、OVX+HRS群における有意な影響は認められなかった(図1(A)、図1(C)および図1(D))。
【0090】
(試験例2 大腿骨密度の解析)
試験例1に準じて、上記製造例1により得られたレジスタントスターチ高含有澱粉および表1に示す成分を用いて飼料1〜3を調製した。
各飼料について、マウスを用いた6週間試験により、各飼料が大腿骨密度に与える影響を調べた。
試験方法は以下のとおりである。
【0091】
試験例1の方法に準じて、Sham群、OVX群、OVX+HAS群、および、OVX+HRS群のマウスを準備した。
各マウスは個別ケージで飼育し、室温23±1℃、湿度60±5%、明期、暗期ともに12時間のサイクルに調節された部屋で飼育した。飼育期間の飼料摂取量は随時記録し、飲水は自由に摂取させた。
6週間飼育後、ネンブタール麻酔下で心臓採血を行い、大腿骨を採取し、分析まで70%エタノールに浸漬し4℃で保存した。
【0092】
摘出した左大腿骨の骨密度を、DCS−600EX−R(アロカ社製)を用いてDXA(dual-energy X-ray absorptiometry)法により測定した。骨密度は骨塩量を骨面積で除することにより算出した。解析は大腿骨全体および近位部、骨幹部、遠位部に3等分割して行った。
【0093】
また、骨密度の測定結果を以下の方法で統計解析した。
解析にはSPSS Statics、Ver 19.0J for Windows(IBM社製)を使用した。結果は平均±標準誤差で示した。すべての値はスミルノフ・グラブス検定で外れ値を除外した後、それぞれの検定を行った。骨密度についての有意差検定は、体重を共変量とし、共分散分析(ANCOVA)を行った後、Fisherの多重比較検定を行った。
【0094】
図2(A)〜図2(D)は、それぞれ、大腿骨全体骨密度、大腿骨遠位部骨密度、大腿骨骨幹部骨密度および大腿骨近位部骨密度の測定結果を示す図である。各図の骨密度について、a〜cの異なる記号間で優位差がある(P<0.05)。
図2(A)〜図2(D)より、6週間の各飼料の摂取が骨粗鬆症モデルマウスの大腿骨骨密度におよぼす影響について、以下のことがわかる。
図2(A)より、エストロゲン欠乏のOVX群の大腿骨全体骨密度は、Sham群のものに比べて有意に低値を示した。飼料2を摂取したOVX+HAS群では、エストロゲン欠乏に起因する骨密度の減少について、有意差は認められなかった。
一方、飼料3を摂取したOVX+HRS群では、エストロゲン欠乏に起因する骨密度の減少が有意に抑制された。
また、図2(B)より、大腿骨遠位部でも同様の傾向が認められた。
図2(C)より、大腿骨骨幹部に対して飼料2および飼料3の摂取による有意な影響は認められなかった。
また、図2(D)より、大腿骨近位部においても、飼料3を摂取したOVX+HRS群において、エストロゲン欠乏に起因する骨密度の低下が有意に抑制された。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]