(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810667
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】洗浄溶剤及び半導体装置製造用基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20201221BHJP
G03F 7/16 20060101ALI20201221BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20201221BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20201221BHJP
C11D 9/26 20060101ALI20201221BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
H01L21/30 564Z
G03F7/16
G03F7/11 503
H01L21/30 573
H01L21/304 647A
C11D9/26
C11D17/08
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-153683(P2017-153683)
(22)【出願日】2017年8月8日
(65)【公開番号】特開2019-33187(P2019-33187A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】新井田 恵介
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
【審査官】
冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−335842(JP,A)
【文献】
特表2010−509777(JP,A)
【文献】
特開2011−192885(JP,A)
【文献】
特開2011−258770(JP,A)
【文献】
特開2012−156392(JP,A)
【文献】
特開平08−148413(JP,A)
【文献】
特開2000−319691(JP,A)
【文献】
特開2007−179043(JP,A)
【文献】
特開2007−256710(JP,A)
【文献】
特開2016−051094(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/156374(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/037398(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/146524(WO,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2007−0053139(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0069870(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
21/30
21/304
21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素含有量が10質量%以上であるケイ素含有膜が形成された基板上の端部の前記
ケイ素含有膜を洗浄除去するための洗浄溶剤であって、下記一般式(A)で示される化合物を含有するものであることを特徴とする洗浄溶剤。
【化1】
(式中、Rは水素原子、芳香族炭化水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は極性基であり、XとYはそれぞれ独立し
て−O−、−NH−、又は−S−であり、nは1〜6の整数である。)
【請求項2】
前記一般式(A)で示される化合物が、常温・常圧で液体であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄溶剤。
【請求項3】
前記一般式(A)で示される化合物を30質量%以上含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の洗浄溶剤。
【請求項4】
半導体装置製造用基板の製造方法であって、
ケイ素含有量が10質量%以上であるケイ素含有膜を基板上に回転塗布する工程と、前記基板上の端部の
ケイ素含有膜を下記一般式(A)で示される化合物を含有する洗浄溶剤を用いて洗浄除去する工程と、洗浄除去工程後に得られた
ケイ素含有膜を150℃以上450℃以下の温度で10秒〜300秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る工程とを含むことを特徴とする半導体装置製造用基板の製造方法。
【化2】
(式中、Rは水素原子、芳香族炭化水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は極性基であり、XとYはそれぞれ独立し
て−O−、−NH−、又は−S−であり、nは1〜6の整数である。)
【請求項5】
前記ケイ素含有膜として、ポリシロキサンを含有するケイ素含有膜を用いることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置製造用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄溶剤及び半導体装置製造用基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高性能化は、リソグラフィー技術における光源の短波長化によるパターン寸法の微細化がけん引してきた。しかし、ArF光源以降、短波長化の速度が鈍化したため、これに代わるリソグラフィー手法が開発されてきた(特許文献1〜3)。このようなリソグラフィーパターンを基板に転写する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜、即ちレジスト上層膜とエッチング選択性が異なる中間膜、例えばケイ素含有下層膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、上層レジストパターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングによりレジスト下層膜にパターンを転写し、更に下層レジストパターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0003】
この様な多層レジスト法で使用されるものとして、ケイ素含有膜がよく知られている。例えば、CVDによるケイ素含有無機膜としては、SiO
2膜(特許文献4)やSiON膜(特許文献5)等があり、回転塗布により膜を得られるものとしては、ケイ素含有下層膜、所謂SOG(スピンオンガラス)膜(特許文献6)や架橋性シルセスキオキサン膜(特許文献7)等がある。CVDによるケイ素含有無機膜と比較した場合、塗布型のケイ素含有下層膜はプロセス及びコストの点でメリットがある。
【0004】
このような半導体装置用の多層膜が形成された半導体装置製造用の基板(ウエハー)を、製造プロセスの関係上、ウエハー搬送用ケースに収納して、製造装置間を搬送しなければならない場合がある。この時、ウエハー端部まで塗布膜が形成されていると、この塗布膜とウエハーケースとが接触し、塗布膜から微小な粉じんが発生する場合がある。この粉じんの発生を防止するため、ウエハー端部の塗布膜を除去する必要がある。
【0005】
上記理由により、ウエハー端部の洗浄は、半導体装置製造プロセスでは一般的に使用されている。しかしながら、ウエハー端部の塗布膜を一般的な洗浄溶剤で洗浄除去すると、塗布膜中への洗浄溶剤の浸透により、本来なら平坦であるはずの洗浄後の塗布膜の端部が盛り上がり、膜厚が厚くなる場合がある。このような厚膜化現象が発生すると、ドライエッチング加工後に厚膜化した塗布膜の一部がウエハー上に残留し、半導体装置の歩留まりの低下の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−281974号公報
【特許文献2】特開2008−281980号公報
【特許文献3】特開2009−053657号公報
【特許文献4】特開平7−183194号公報
【特許文献5】特開平7−181688号公報
【特許文献6】特開2007−302873号公報
【特許文献7】特表2005−520354号公報
【特許文献8】特開2008−019423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した半導体装置の歩留まり低下を防ぐためには、ウエハー端部の塗布膜を洗浄除去しても、塗布膜が均一な膜厚である必要がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、塗布膜が形成された基板上の端部の塗布膜を洗浄除去する際に適用しても、洗浄後の塗布膜の端部の厚膜化を抑制できる洗浄溶剤、及び該洗浄溶剤を用いた半導体装置製造用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、塗布膜が形成された基板上の端部の前記塗布膜を洗浄除去するための洗浄溶剤であって、下記一般式(A)で示される化合物を含有する洗浄溶剤を提供する。
【化1】
(式中、Rは水素原子、芳香族炭化水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は極性基であり、XとYはそれぞれ独立して−CH
2−、−O−、−NH−、又は−S−であり、nは1〜6の整数である。)
【0010】
本発明のような洗浄溶剤であれば、塗布膜が形成された基板上の端部の塗布膜を洗浄除去する際に適用すると、洗浄後の塗布膜の端部の厚膜化を抑制できる。
【0011】
また、前記一般式(A)で示される化合物が、常温・常圧で液体であることが好ましい。
【0012】
このような化合物であれば、洗浄溶剤として容易に使用することが出来る。
【0013】
また、前記一般式(A)で示される化合物を30質量%以上含有するものであることが好ましい。
【0014】
このような洗浄溶剤であれば、塗布膜が形成された基板上の端部の塗布膜を洗浄除去する際、洗浄後の塗布膜の端部の厚膜化をより確実に抑制できる。
【0015】
また、本発明では、半導体装置製造用基板の製造方法であって、塗布膜を基板上に回転塗布する工程と、前記基板上の端部の塗布膜を下記一般式(A)で示される化合物を含有する洗浄溶剤を用いて洗浄除去する工程と、洗浄除去工程後に得られた塗布膜を150℃以上450℃以下の温度で10秒〜300秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る工程とを含む半導体装置製造用基板の製造方法も提供する。
【化2】
(式中、Rは水素原子、芳香族炭化水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は極性基であり、XとYはそれぞれ独立して−CH
2−、−O−、−NH−、又は−S−であり、nは1〜6の整数である。)
【0016】
本発明のような半導体装置製造用基板の製造方法であれば、洗浄後の塗布膜の端部の厚膜化を抑制でき、製造プロセスの歩留まりを向上できる。
【0017】
また、前記塗布膜として、ケイ素含有膜を用いることが好ましい。
【0018】
また、前記ケイ素含有膜として、ポリシロキサンを含有するケイ素含有膜を用いることが好ましい。
【0019】
また、前記ケイ素含有膜として、ケイ素含有量が10質量%以上であるケイ素含有膜を用いることが好ましい。
【0020】
このような塗布膜が塗布された基板において、本発明の半導体装置製造用基板の製造方法は好適に用いることが出来る。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の洗浄溶剤であれば、基板上に形成された塗布膜中へ浸透することがないため、塗布膜が塗布されたウエハー端部の不要な塗布膜を洗浄除去する際に用いても、洗浄後の塗布膜の端部に盛り上がり、即ち塗布膜の端部の厚膜化現象が発生しない。結果として、ドライエッチング加工後に厚膜化した塗布膜の一部がウエハー上に残留しないため、被加工基板の欠陥発現を抑制でき、半導体装置製造用基板の製造プロセスの歩留まりを向上できる。また、本発明の半導体装置製造用基板の製造方法であれば、一般式(A)で示される化合物を含有する洗浄溶剤を適用することにより、塗布膜中への洗浄溶剤の浸透が無くなり、洗浄後の塗布膜端部の厚膜化現象は発生しない。そのため、ドライエッチング加工後に厚膜化した塗布膜の一部がウエハー上に残留することはない。その結果として、被加工基板の欠陥発現を抑制でき、半導体装置製造用基板の製造プロセスの歩留まりを向上できる。本発明は、ウエハー上へ回転塗布により形成される有用な回転塗布膜、例えばケイ素含有膜を用いた半導体装置製造用基板の製造方法に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記のように、塗布膜が形成された基板上の端部の塗布膜を洗浄除去する際に適用しても、洗浄後の塗布膜の端部の厚膜化を抑制できる洗浄溶剤、及び該洗浄溶剤を用いた半導体装置製造用基板の製造方法が求められていた。
【0023】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、回転塗布による塗布製膜方法、中でもケイ素含有膜の製膜方法において、基板上の端部の不要な塗布膜を溶剤で洗浄除去する際に、洗浄後の塗布膜の盛り上がりが発生しない洗浄溶剤を見出し、本発明を完成させた。
【0024】
すなわち、本発明は、塗布膜が形成された基板上の端部の前記塗布膜を洗浄除去するための洗浄溶剤であって、下記一般式(A)で示される化合物を含有する洗浄溶剤である。
【化3】
(式中、Rは水素原子、芳香族炭化水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は極性基であり、XとYはそれぞれ独立して−CH
2−、−O−、−NH−、又は−S−であり、nは1〜6の整数である。)
【0025】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
<洗浄溶剤>
本発明では、下記一般式(A)で示される化合物を含む洗浄溶剤を、半導体装置製造用基板を製造する際に、塗布膜が形成された基板(ウエハー)上の端部の塗布膜を洗浄除去するための洗浄溶剤として用いる。
【化4】
【0027】
式中、Rは水素原子、芳香族炭化水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は極性基である。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、1−メチル−シクロプロピル基、2−メチル−シクロプロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、シクロペンチル基、1−メチル−シクロブチル基、2−メチル−シクロブチル基、3−メチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロプロピル基、2,3−ジメチル−シクロプロピル基、1−エチル−シクロプロピル基、2−エチル−シクロプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、シクロヘキシル基、1−メチル−シクロペンチル基、2−メチル−シクロペンチル基、3−メチル−シクロペンチル基、1−エチル−シクロブチル基、2−エチル−シクロブチル基、3−エチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロブチル基、1,3−ジメチル−シクロブチル基、2,2−ジメチル−シクロブチル基、2,3−ジメチル−シクロブチル基、2,4−ジメチル−シクロブチル基、3,3−ジメチル−シクロブチル基、1−n−プロピル−シクロプロピル基、2−n−プロピル−シクロプロピル基、1−i−プロピル−シクロプロピル基、2−i−プロピル−シクロプロピル基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル基及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。極性基としては、例えば、ニトロ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、アシル基、カルバモイル基、エポキシ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、アミノ基等が挙げられる。XとYはそれぞれ独立して−CH
2−、−O−、−NH−、又は−S−であり、nは1〜6の整数である。
【0028】
また、一般式(A)で示される化合物は、常温・常圧で液体であることが好ましく、具体的にはγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、プロピレンカーボネート等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明の洗浄溶剤に含まれる一般式(A)で示される化合物の濃度は、30質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
【0030】
このような本発明の洗浄溶剤であれば、基板上に形成された塗布膜中へ浸透することがないため、塗布膜が塗布されたウエハー端部の不要な塗布膜を洗浄除去する際に用いても、洗浄後の塗布膜の端部に盛り上がり、即ち洗浄後の塗布膜の端部の厚膜化現象が発生しない。結果として、ドライエッチング加工後に厚膜化した塗布膜の一部がウエハー上に残留しないため、被加工基板の欠陥発現を抑制でき、製造プロセスの歩留まりを向上できる。
【0031】
<半導体装置製造用基板の製造方法>
また、本発明では、半導体装置製造用基板の製造方法であって、塗布膜を基板上に回転塗布する工程と、前記基板上の端部の塗布膜を下記一般式(A)で示される化合物を含有する洗浄溶剤を用いて洗浄除去する工程と、洗浄除去工程後に得られた塗布膜を150℃以上450℃以下の温度で10秒〜300秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る工程とを含む半導体装置製造用基板の製造方法も提供する。以下、各工程について詳しく説明する。
【化5】
(式中、Rは水素原子、芳香族炭化水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は極性基であり、XとYはそれぞれ独立して−CH
2−、−O−、−NH−、又は−S−であり、nは1〜6の整数である。)
【0032】
[塗布膜形成工程]
本発明の半導体装置製造用基板の製造方法において、塗布膜はスピンコーター等を用いた常法の回転塗布によって、ウエハー上に形成することができる。
【0033】
塗布膜としては、ケイ素含有膜を用いることが好ましい。ケイ素含有膜材料組成物としては、特に限定されず、ArF用ケイ素含有膜材料、KrF用ケイ素含有膜材料等を例示することができる。また、例えば、特許文献6や、特許文献8等に挙げられたものを例示することができる。
【0034】
なお、ケイ素含有膜としては、ポリシロキサンを含有するケイ素含有膜を用いることが好ましい。
【0035】
また、ケイ素含有膜のケイ素含有量は、10質量%以上であることが好ましい。
【0036】
[塗布膜洗浄除去工程]
ウエハー端部の塗布膜の洗浄除去工程は、塗布膜をウエハー上に回転塗布した後、熱処理工程前に行われる。
【0037】
洗浄除去工程で用いられる洗浄溶剤としては、上述の洗浄溶剤の説明で挙げたものと同様の物を使用する。
【0038】
ウエハー端部の塗布膜の洗浄除去する方法としては、特に限定されず、一般的に使用されている洗浄方法を用いることができる。例えば、スピンコーターを用いて上記塗布膜形成後、引き続いて上記洗浄溶剤を基板の端部のみに供給して、端部の塗布膜を除去するようにしてもよいし、塗布膜形成後の基板を回転させながらその端部だけを前記洗浄溶剤に浸漬等により接触させるようにしてもよい。
【0039】
[熱処理工程]
熱処理工程は、洗浄除去工程後に得られた塗布膜をホットプレート等で加熱することで行われる。また、熱処理工程は150℃以上450℃以下の温度で10秒〜300秒の範囲で行われる。
【0040】
本発明の半導体装置製造用基板の製造方法は、ウエハー端部の塗布膜を洗浄除去する際、塗布膜中への洗浄溶剤の侵入がないために、洗浄後の塗布膜の端部の盛り上がりは発生しない。その結果として、ドライエッチング加工後に塗布膜の一部がウエハー上に残留しないため、被加工基板の欠陥発現を最小限に抑制することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0042】
[実施例1]
ケイ素含有レジスト中間層ポリマー(SOG−1)として、以下のポリマーのプロピレングリコールエチルエーテル2%溶液を調製した。該SOG−1を、東京エレクトロン(株)製クリーントラックACT12を用いてシリコンウエハーに1500rpmで回転塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜が形成されたシリコンウエハーを回転させたまま、ウエハー端部の塗布膜をγ−ブチロラクトンで7秒間かけ流して外周部から3mm洗浄除去した後に、240℃で60秒間加熱して、膜厚38nmの塗布膜(ケイ素含有レジスト中間層)を作製した。得られた塗布膜の中心、端部、及びウエハー端部付近の膜厚を(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(S−4700)で得られた断面図から測定した。その結果を表1に示す。
【化6】
【0043】
[実施例2]
ウエハー端部の塗布膜をδ−バレロラクトンで洗浄除去した以外は、実施例1と同様の方法で塗布膜(ケイ素含有レジスト中間層)を作製した。その後、得られた塗布膜の膜厚を実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0044】
[実施例3]
ウエハー端部の塗布膜をプロピレンカーボネートで洗浄除去した以外は、実施例1と同様の方法で塗布膜(ケイ素含有レジスト中間層)を作製した。その後、得られた塗布膜の膜厚を実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0045】
[実施例4]
ウエハー端部の塗布膜をγ−ブチロラクトン30%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70%の混合液で洗浄除去した以外は、実施例1と同様の方法で塗布膜を作製した。その後、得られた塗布膜の膜厚を実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0046】
[実施例5]
ウエハー端部の塗布膜をδ−バレロラクトン30%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70%の混合液で洗浄除去した以外は、実施例1と同様の方法で塗布膜を作製した。その後、得られた塗布膜の膜厚を実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0047】
[実施例6]
ウエハー端部の塗布膜をプロピレンカーボネート30%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70%の混合液で洗浄除去した以外は、実施例1と同様の方法で塗布膜を作製した。その後、得られた塗布膜の膜厚を実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
ウエハー端部の塗布膜をPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で洗浄除去した以外は、実施例1と同様の方法で塗布膜を作製した。その後、得られた塗布膜の膜厚を実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0049】
[比較例2]
ウエハー端部の塗布膜をPGMEA30%、プロピレングリコールモノメチルエーテル70%の混合液で洗浄除去した以外は、実施例1と同様の方法で塗布膜を作製した。その後、得られた塗布膜の膜厚を実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示されるように、本発明の洗浄溶剤でウエハー端部を洗浄した実施例1〜6では、洗浄後の塗布膜端部は厚膜化していなかった。一方、ウエハー端部の洗浄にPGMEAを用いた比較例1、2では、洗浄後の塗布膜端部が厚膜化した。これは、ウエハー端部の洗浄時に洗浄液の浸み込みが発生したためだと考えられる。
【0052】
[欠陥検査]
次いで、実施例1〜6、比較例1、2で作製した塗布膜を、後述のエッチング条件(1)でドライエッチングした後、得られたウエハー表面をKLA−Tencor社製暗視野欠陥検査装置SP2で60nm以上の大きさの表面ダスト数を計測した。その結果を表2に示す。
【0053】
(CHF
3/CF
4系ガスでのエッチング条件(1))
装置:東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置TeliusSP
チャンバー圧力:10Pa
Upper/LowerRFパワー:500W/300W
CHF
3ガス流量:50ml/min
CF
4ガス流量:150ml/min
Arガス流量:100ml/min
処理時間:40sec
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示されるように、本発明の洗浄溶剤でウエハー端部を洗浄した実施例1〜6では、ドライエッチング後のダストの数は10個以下であった。これは、ウエハー端部の洗浄時に塗布膜への洗浄液の浸み込みが発生せず、ウエハー端部の洗浄後でも、塗布膜端部の膜厚が洗浄前の膜厚と比べ大きな変化が無いことから、続いて適用されたドライエッチングにおいて、均一にドライエッチングされたことで、ドライエッチング残渣が少なかったためだと考えられる。一方、ウエハー端部の洗浄にPGMEAを用いた比較例1、2では、ドライエッチング後のダストの数は200個以上であった。これは、中心部の塗布膜がドライエッチングされる時間で処理しても、厚膜化した塗布膜端部がダストとしてウエハー上に残っているためだと考えられる。
【0056】
以上のことから、本発明であれば、塗布膜が形成された基板上の端部の塗布膜を洗浄除去する際に適用すると、洗浄後の塗布膜の端部の厚膜化を抑制できることが明らかになった。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。