特許第6811289号(P6811289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6811289
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/30 20060101AFI20201228BHJP
【FI】
   G02B6/30
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-121043(P2019-121043)
(22)【出願日】2019年6月28日
【審査請求日】2019年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中西 智浩
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大司
(72)【発明者】
【氏名】山田 健二
(72)【発明者】
【氏名】那須 悠介
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−137544(JP,A)
【文献】 特開2011−076008(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0264885(US,A1)
【文献】 特開2006−293041(JP,A)
【文献】 特開2018−205569(JP,A)
【文献】 特開2005−062842(JP,A)
【文献】 特開2016−145931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/14,6/26−6/27,6/30−6/34,6/42−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面の一部に開口部を有する筐体と、
前記筐体の内部に設置された光導波路チップと、
前記筐体の外部の光ファイバの一端を保持し、前記筐体の前記開口部を通して前記光ファイバの一端を前記光導波路チップの光入出力端に直接接続しており、前記光ファイバ側の一部が前記筐体の外にあり、前記開口部と接触しないファイバブロックと、
前記ファイバブロックが接続された前記光導波路チップが設置された前記筐体の内部の空間を、前記ファイバブロックが挿入されている空間と他の空間とに隔て、前記ファイバブロックと接触しないように配置された封止樹脂と、
を備える光モジュール。
【請求項2】
前記封止樹脂は、
前記筐体の上板と底板とに接触し、且つ前記ファイバブロックを囲むように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記封止樹脂は、
前記筐体の上板側の上板側樹脂と、前記筐体の底板側の底板側樹脂とが接触して構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記上板側樹脂及び前記底板側樹脂は、互いに種類が異なる樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記封止樹脂は、硬度(ショアA)が50以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光通信に使用される光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光導波路チップ等の光部品と光ファイバとを結合させるために、光部品を筺体の内部に設置し、筐体の外部から導入した光ファイバを筺体の内部で光部品に接続する光モジュールが採用されている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−286075号公報
【特許文献2】特開2004−309978号公報
【特許文献3】特開2009−139861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、光ファイバと光部品とを接続する場合、特許文献3に記載されるような光学素子(ファイバブロック)を使用する。 特許文献1や2の光モジュールは、温度変化や衝撃から光部品を保護するためにファイバブロックを含めて筐体内に収めていた。このような構成であると、光部品が小型化してもファイバブロックの存在により光モジュールのサイズを小型化することが困難という課題がある。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、小型化が可能な構造の光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る光モジュールは、ファイバブロックの一部を筐体から飛び出させた構造とした。
【0007】
具体的には、本発明に係る光モジュールは、
側面の一部に開口部を有する筐体と、
前記筐体の内部に設置された光導波路チップと、
前記筐体の外部の光ファイバの一端を保持し、前記筐体の前記開口部を通して前記光ファイバの一端を前記光導波路チップの光入出力端に直接接続しており、前記光ファイバ側の一部が前記筐体の外にあるファイバブロックと、
前記ファイバブロックが接続された前記光導波路チップが設置された前記筐体の内部の空間を、前記ファイバブロックが挿入されている空間と他の空間とに隔てる封止樹脂と、
を備える。
【0008】
本光モジュールは、ファイバブロックの一部を筐体外に出すことで光モジュールのサイズを小さくすることができる。従って、発明は、小型化が可能な構造の光モジュールを提供することができる。
【0009】
このような構造とした場合、開口部から筐体内に埃などの異物が入らないようにして信頼性を維持する必要がある。そこで、本光モジュールは、前記筐体の前記開口部の内側に封止樹脂を配置し、開口部からの埃が筐体内に入り込むことを防止している。
【0010】
例えば、前記封止樹脂は、前記筐体の上板と底板とに接触し、且つ前記ファイバブロックを囲むように配置されている。ファイバブロックに封止樹脂を配置した場合、振動や熱による筐体からの力がファイバブロックに伝わり、光軸ズレを発生することがある。このため、ファイバブロックに触れないように封止樹脂を配置する。
【0011】
前記封止樹脂は、前記筐体の上板側の上板側樹脂と、前記筐体の底板側の底板側樹脂とが接触して構成されるとしてもよい。前記上板側樹脂及び前記底板側樹脂は、互いに種類が異なる樹脂とすれば、例えば、光導波路チップに接触する底板側樹脂を絶縁のために絶縁性樹脂とし、上板側樹脂をノイズ対策のために導電性樹脂とする。
【0012】
例えば、前記封止樹脂は、硬度(ショアA)が50以下であることを特徴とする。
【0013】
本モジュールに接続した光ファイバを曲げた時に、ファイバブロックにかかる荷重(曲げモーメント)を低減して、光部品とファイバブロックとの接続部にかかる力を低減する必要がある。そこで、本発明では、前記ファイバブロックが保持する前記光ファイバは、直径が125μmより細い細径ファイバであることを特徴とする。細径ファイバとすることで光ファイバを曲げやすくなり、曲げモーメントを低減することができる。つまり、細径ファイバを採用することで光部品とファイバブロックとの接続部にかかる力を低減することができる。具体的には、細径ファイバを採用すると、光ファイバを半径10mmで曲げた場合、光部品とファイバブロックとの接続部にかかる力を通常の光ファイバ(直径125μm)を採用したときより50%以上低減できる。
【0014】
また、本モジュールはファイバブロックが筐体外に出ているため、光モジュールを動かしたり、光ファイバが動くことで、光ファイバのファイバブロック根元部分に大きな力がかかり破損してしまう恐れがある。そこで、本発明では、前記ファイバブロックの、前記光部品の光入出力端との接続面と反対側の端面において、前記光ファイバの動きを制限する補強材をさらに備える。例えば、前記補強材は、前記光ファイバを覆い、且つ前記ファイバブロックの前記端面に接着する弾性接着剤(破断時伸びが100%以上、且つ硬さ(ショアA)が80以下、好ましくは破断時伸びが200%以上、且つ硬さ(ショアA)が60以下)、前記ファイバブロックの前記端面に接着された、前記光ファイバを貫通させるブーツ、あるいは前記ファイバブロックの前記端面に弾性接着剤で接着された、前記光ファイバを貫通させる熱収縮チューブである。このように、補強材がファイバブロック根元で光ファイバの動きを制限することで光ファイバの破損を防止することができる。また、補強材を具備すると、サイドプル試験(光ファイバの引っ張り試験)で補強材が無い場合に比べて500%以上耐力が向上する。
【0015】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、小型化が可能な構造の光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来の光モジュールの構造を説明する図(筐体の上面を省いた図)である。
図2】(A)本発明に係る光モジュールの構造を説明する上面図(筐体の上面を省いた図)である。(B)本発明に係る光モジュールの構造を説明する断面図である。
図3】(A)本発明に係る光モジュールの構造を説明する上面図(筐体の上面を省いた図)である。(B)本発明に係る光モジュールの構造を説明する断面図である。
図4】本発明に係る光モジュールのファイバブロック部分を説明する図である。
図5】本発明に係る光モジュールのファイバブロック部分を説明する図である。
図6】本発明に係る光モジュールのファイバブロック部分を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
(実施形態1)
図2は、本実施形態の光モジュール301を説明する図である。図2(A)は、光モジュール301の上面図(筐体11の上板について記載を省いたもの)、図2(B)は、光モジュール301の線X−X’での断面図である。
本実施形態の光モジュール301は、
側面11aの一部に開口部10を有する筐体11と、
筐体11の内部に設置された光導波路チップ12と、
筐体11の外部の光ファイバ50の一端を保持し、筐体11の開口部10を通して光ファイバ50の一端を光導波路チップ12の光入出力端15に直接接続しており、光ファイバ50側の一部が筐体11の外にあるファイバブロック13と、
ファイバブロック13が接続された光導波路チップ12が設置された筐体11の内部の空間を、ファイバブロック13が挿入されている空間AR1と他の空間AR2とに隔てる封止樹脂27と、
を備える。
【0020】
光導波路チップ12の光入出力端15とファイバブロック13の端面にあるファイバアレイ端のそれぞれの中心が一致するように、光導波路チップ12の光入出力端15を有する端面とファイバアレイ端を有するファイバブロック13の端面とは接着剤により直接接続固定される。
なお、本明細書では光ファイバ50が3本並列している場合を説明するが、光ファイバ50の数は3本に限定されない。
【0021】
図2(B)のように、封止樹脂27は、筐体11の上板11bと底板11cとに接触し、且つファイバブロック13を囲むように配置されていることを特徴とする。
【0022】
図1は、発明に関連する光モジュール300を説明する図である。光モジュール300は、光導波路チップ12とファイバブロック13が筐体11内にある。光導波路チップ12の機能回路部12aには、光導波路チップ12の機能に合せて、機能素子(14a、14b)が形成されている。機能素子(14a、14b)は、例えば、合分波器、光受信器に用いられる光干渉回路では信号光の光強度を調整するVOA(Variable Optical Attenuator)、信号光の偏波を分離する偏波ビームスプリッタ(PBS:Polarization Beam Splitter)、信号光または局発光の偏波を回転する偏波ローテータ(偏波回転器)、信号光および局発光の間の干渉によって位相差を検波する90度ハイブリッドなどの機能回路である。図1では一部の機能素子のみを表記しているが、機能素子は機能回路部12aの全面に形成されることもある。光導波路チップ12の入出力端15側の導波路部12bには光ファイバ50に接続する入出力導波路14cのみが形成されている。光導波路チップ12の構造は図2図6でも同様である。
【0023】
光モジュール300は、特許文献1や2で説明されるように光ファイバ50が筐体11に固定されている。光モジュール300は、ファイバブロック13が筐体11内に完全に収納されている構造であるため、筐体11を小さくすることができなかった。
【0024】
そこで、光モジュール301は、筐体11に開口部10を形成し、ファイバブロック13の一部を開口部10から飛び出させることで筐体11を小型化している。筐体11は、最大で光導波路チップ12に接する程度まで小型化できる。例えば、光導波路チップ12やファイバブロック13のサイズが同じとすれば、光モジュール301は、光モジュール300と比べて体積比で2割以上小型化することができる。
【0025】
筐体11の開口部10とファイバブロック13との隙間からごみが筐体11内に入り込むと光導波路チップ12の信頼性を確保することが難しくなる。当該隙間をできるだけ小さくするために開口部10の大きさをファイバブロックの断面(光ファイバ50の長手方向に垂直な面の外寸)よりやや大きくしておくことも考えられる。しかし、筐体11内での光導波路チップ12の実装位置誤差によるファイバブロック13の位置ずれ、筐体11の寸法誤差による開口部10の位置ずれ、あるいは温度変化による変位(光ファイバ50の長手方向に垂直な方向のずれや変位)があるため、当該隙間を小さくしてしまうとファイバブロック13が開口部10に接触することがある。ファイバブロック13と開口部10とが接触すれば、ファイバブロック13と光導波路チップ12との接続部に力がかかり光入出力端15と光ファイバ50の端部とにずれが生じ、光軸ずれによる結合損失が発生する。このため、開口部10とファイバブロック13との隙間を小さくすることには限界がある。
【0026】
そこで、光モジュール301は、開口部10とファイバブロック13との隙間から入り込む埃が光導波路チップ12へ到達しないように封止樹脂27で当該埃をブロックする。封止樹脂27は、図2(A)のように、ファイバブロック13を隙間なく取り囲むように配置される。ここで、封止樹脂27は、光導波路チップ12の導波路部12bに配置され、機能回路部12a上には配置されない。つまり、機能回路部12aへの応力の影響がないように、封止樹脂27を光導波路チップ12の導波路部12bのみ覆うように配置するため、光導波路チップ12の特性が損なわれることはない。また、筐体からの振動や熱、熱膨張差に起因する応力がファイバブロック13に伝わることにより発生する光軸ズレを防止するため、封止樹脂27はファイバブロック13に触れないように配置する。
【0027】
さらに、封止樹脂27は、図2(B)のように、筐体11の上板11bから底板11cまで隙間なく光導波路チップ12の周囲に充填される。所望の形状に隙間なく封止樹脂27を充填するため、封止樹脂27を複数回に分けて封止樹脂の量を調整しながら充填しても良い。また、封止樹脂27が導波路部12bからはみ出ないように、導波路部12bの入出端の辺の近傍や機能回路部12aと導波路部12bとの境辺りに撥水加工を施しても良い。
【0028】
封止樹脂27は、スリーボンドTB3081Jのような 硬度(ショアA)が50以下のCIPG(Cured−In−Place Gasket)材が好ましい。これは次の理由による。封止樹脂27が筐体11の上板11bから底板11cまで確実に隙間を埋めるため、光導波路チップ12は封止樹脂27が硬化する際、あるいは筐体11の機械的又は熱的変動の影響を封止樹脂27を介して受けやすい。このため、封止樹脂27の硬度が低い方が、封止樹脂27から光導波路チップ12に加わる応力は低減される。
【0029】
このように封止樹脂27を配置することで、筐体11の内部を、機能素子(14a,14b)の空間AR1と開口部10側の空間AR2に分離できる。空間AR1には、光導波路チップ12の機能回路部12aに形成される機能素子(14a,14b)、光導波路チップ12と筐体11との間に設置される光素子(受光素子や発光素子)、駆動回路や制御回路、そして配線などの光素子と部品類(不図示)が含まれる。封止樹脂27により空間AR1と空間AR2とは完全に遮断されるため、開口部10とファイバブロック13との隙間から入り込む埃は空間AR2に止まり、空間AR1へは入らない。このため、光モジュール301は、空間AR2に内在する光素子と部品類の信頼性を確保することができる。
【0030】
(実施形態2)
図3は、本実施形態の光モジュール302を説明する図である。図3(A)は、光モジュール302の上面図(筐体11の上板について記載を省いたもの)、図3(B)は、光モジュール302の線X−X’での断面図である。光モジュール302と図2の光モジュール301との相違点は、光モジュール302の封止樹脂27が、筐体11の上板11b側の上板側樹脂27bと、筐体11の底板11c側の底板側樹脂27cとが接触して構成されていることである。
【0031】
上板側樹脂27b及び底板側樹脂27cは、互いに種類が異なる樹脂であることにより、機能を付加できる。例えば、光導波路チップ12に接触する底板側樹脂27cは絶縁が求められるため、絶縁性の高い樹脂(例えば、体積抵抗率>1GΩ・m[具体例:スリーボンド TB3081J等])とする。一方、光モジュールとしてノイズ対策が求められるため、上板側樹脂27bは導電性の高い樹脂(例えば、体積抵抗率<1Ω・m[具体例:セメダイン SX−ECA48等])とする。
【0032】
(実施形態3)
本実施形態の光モジュールは、特許文献1、2の光モジュールと異なり、光ファイバが筐体に固定されていない。このため、光モジュールの取り扱いや光ファイバの配線(曲げ状態)によってファイバブロックと光導波路チップとの接続部に大きな力がかかり、光軸ずれによる結合損失が発生することがある。そこで、本実施形態の光モジュールは次のような対策を施す。
【0033】
図4は、本実施形態の光モジュール304を説明する図である。光モジュール304は、ファイバブロック13が保持する光ファイバ50が、直径が125μmより細い細径ファイバであることを特徴とする。例えば、光ファイバ50は、ファイバ径が80μm 被覆を含めた光ファイバ直径が180μm未満の細径ファイバであることが好ましい。
【0034】
通常の光ファイバは、ファイバ径が125μm、被覆を含めた光ファイバ直径が250μmである。細径ファイバは通常の光ファイバより曲がりやすく、曲げモーメントが小さい。つまり、ファイバブロック13が保持する光ファイバ50に細径ファイバを使用することで、光ファイバ50に規定の曲げを与えてもファイバブロック13と光導波路チップ12との接続部への力を、通常の光ファイバを使用した時より小さくすることができる。すなわち、光ファイバの曲げによる光軸ずれによる結合損失を低減することができる。
【0035】
従って、光モジュール304は、取り扱いや光ファイバ50の配線によって発生する結合損失を低減することができる。なお、上述した部分以外の構造は実施形態1と2で説明した光モジュールと同じである。
【0036】
(実施形態4)
本実施形態の光モジュールは、特許文献1、2の光モジュールと異なり、光ファイバが筐体に固定されていない。このため、光モジュールの取り扱いや光ファイバの配線(曲げ状態)によって光ファイバのファイバブロックの根元に大きな力がかかり、光ファイバが破損することがある。そこで、本発明に係る光モジュールは次のような対策を施す。なお、光ファイバのファイバブロックの根元とは、ファイバブロックが保持していない光ファイバの部分で最もファイバブロックに近い部分を指す。
【0037】
図5は、本実施形態の光モジュール305を説明する図である。光モジュール302は、ファイバブロック13の、光導波路チップ12の光入出力端15との接続面と反対側の端面において、光ファイバ50の動きを制限する補強材29をさらに備える。例えば、補強材29は、光ファイバ50を覆い、且つファイバブロック13の前記端面に接着する弾性接着剤である。この弾性接着剤は、光ファイバを曲げた時に剥離しないように、柔らかい(硬さ)だけでなく伸び(破断時伸び)が重要であり、破断時伸びが100%以上、且つ硬さ(ショアA)が80以下、好ましくは破断時伸びが200%以上、且つ硬さ(ショアA)が60以下が求められる。このような弾性接着剤としてDOW CORNING(登録商標) SE 9186が例示できる。また、補強材29は、ファイバブロック13の前記端面に接着された、光ファイバ50を貫通させるブーツである。また、図6のように、補強材29は、ファイバブロック13の前記端面に弾性接着剤で接着された、光ファイバ50を貫通させる熱収縮チューブであってもよい。熱収縮チューブの材質は、ポリイミドやシリコーンが例示できる。
【0038】
光モジュール305は、ファイバブロック13の根元において光ファイバ50を補強材29で保護しており、光ファイバ50に規定の曲げを与えてもファイバブロック13の根元の光ファイバへの力を、補強材が無い場合より小さくすることができる。すなわち、光ファイバの曲げによる光ファイバ破損を低減することができる。従って、補強材29は光モジュール305の取り扱い易さを向上させることができる。なお、上述した部分以外の構造は実施形態1と2で説明した光モジュールと同じである。
【0039】
(従来技術との相違点)
特許文献2も、光モジュールのサイズを小さくすることを目的としているが、光ファイバをゴムブーツで保持する構造(ファイバブロックには曲げモーメントがかからない構造)としている。一方、本発明に係る光モジュールは、ファイバブロック13を保持せず筐体11から露出させる構成としている。また、特許文献2の光モジュールは、作製時のファイバブロックの位置誤差や、温度変動による筐体の変動は、光軸方向(ファイバ長手方向)については、許容させているが、光軸方向に垂直な方向については考慮されていない。本発明に係る光モジュールは、封止樹脂で隙間からの埃をブロックする構成により、光軸に垂直な方向についてもファイバブロック13の位置誤差を許容させている。本発明に係る光モジュールは、光ファイバ50の曲げにより、ファイバブロック13に曲げモーメントがかかることを前提としており、根元補強や細径ファイバの使用を採用している。
【符号の説明】
【0040】
10:開口部
11:筐体
12:光導波路チップ
12a:機能回路部
12b:導波路部
13:ファイバブロック
14a、14b:光機能素子
14c:入出力導波路
15:光入出力端
27:封止樹脂
29:補強材
31:ブーツ
32:ファイバ固定具
50:光ファイバ
300〜305:光モジュール
【要約】      (修正有)
【課題】小型化が可能な構造の光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール301は、ファイバブロック13の一部を筐体11から飛び出させた構造とした。筐体11の開口部10とファイバブロック13との隙間により、筐体11内での光導波路チップ12の実装位置誤差によるファイバブロック13の位置ずれ、筐体11の寸法誤差による開口部10の位置ずれ、あるいは温度変化による変位を許容し、光軸ずれによる結合損失を低減することができる。光モジュールは、封止樹脂27を備えることで、筐体11内のうち光導波路チップ12が配置される空間へのごみの侵入を防止できる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6