(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記気体と、水分を含む空気とを混合して混合ガスとした後、前記混合ガス中に含まれる前記酸化エチレンを、前記CaA型ゼオライトによって吸着除去する、請求項1又は2に記載の酸化エチレン除去方法。
前記気体が、酸化エチレンを含む燻蒸ガスを燻蒸空間内に封入して燻蒸処理した後、前記燻蒸空間から排出されるガスである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の酸化エチレン除去方法。
【背景技術】
【0002】
酸化エチレンは、殺虫・殺菌等に対して有効な成分であるため、燻蒸ガスとして広く用いられている。しかしながら、酸化エチレンは、人体に対して発がん性を有しており、慢性及び急性中毒症状を引き起こす可能性がある有害な物質である。また、酸化エチレンを大気中に排出した場合、環境汚染を引き起こす恐れがある。このため、酸化エチレンの大気中への排出に対する規制が強化されている。
【0003】
燻蒸作業(燻蒸処理)は、ある程度の湿気がある空気雰囲気下で、密閉した室内、或いは専用の燻蒸庫内(以下、「燻蒸空間」という)に燻蒸対象となる物品(燻蒸対象物)を置いた後、燻蒸空間内に燻蒸ガスを封入して行なう。また、燻蒸終了後は、燻蒸空間内の燻蒸ガスを含んだ空気(以下、「混合ガス」という)を、外部から取り込んだ新鮮な空気によって置換して、混合ガスを排出する。
【0004】
なお、混合ガスの排出開始時には、混合ガス中に1.0〜1.5%程度の酸化エチレンが含まれるが、徐々に酸化エチレンの濃度が低下する。最終的には、混合ガス中の酸化エチレンの濃度が1ppm以下になるまで置換、排出を続ける。
【0005】
ところで、酸化エチレンは可燃性物質であるため、酸化エチレン単体であれば触媒を用いた燃焼によって無害化させることが可能である。しかしながら、酸化エチレンを燻蒸ガスとして用いる場合、希釈ガスとして不燃性の代替フロン(例えば、フロン/HFC134a等)が混合されているため、燻蒸ガス中の酸化エチレンを燃焼によって無害化処理することは適切ではなかった。
【0006】
そこで、燻蒸処理後の混合ガス中に含まれる酸化エチレンを、吸着剤を用いて除去する吸着除去方法が用いられている。例えば、特許文献1〜3には、吸着剤を利用した従来の酸化エチレンの処理方法が開示されている。
【0007】
特許文献1には、気体中の酸化エチレンの濃度が高濃度のときは活性炭を用いて酸化エチレンを吸着し、酸化エチレンの濃度が低濃度のときは吸着した酸化エチレンを放出することで、気体中の酸化エチレン濃度を平準化し、平準化された気体中の酸化エチレンを触媒燃焼によって無害化する方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、シクロヘキサン及びエチレンオキシド用の吸着剤として、0.43〜1.29mol/Lの硫酸を含有する活性炭が開示されている。
【0009】
特許文献3には、酸化エチレンガス滅菌器から排出された酸化エチレンガスを含む排ガスを、細孔径0.5〜1.0nm、表面積80〜100m
2/gの固体酸で処理する、酸化エチレンの処理方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、活性炭(吸着剤)が吸着する酸化エチレンの吸着量が少ないため、大量の活性炭を必要とするという問題や、吸着した酸化エチレンが脱着しやすいという問題があった。
【0012】
また、特許文献2は、防毒マスク等を想定した吸着剤に関する発明であるため、除去対象となる大気中の酸化エチレン濃度は20ppm程度である。一方、燻蒸用ガスは、酸化エチレン濃度が最大で1〜2%含まれる燻蒸ガスを処理するため、大量の吸着剤が必要になるという問題があった。
【0013】
また、特許文献3に開示された、表面積が80〜100m
2/gの吸着剤では、燻蒸用ガスに含まれる酸化エチレンガスを処理するには処理能力が不充分であった。また、細孔径が0.5〜1.0nmである固体酸は、燻蒸用ガス中のHFC−134a等の希釈剤も吸着してしまうおそれがあった。これにより、過剰な吸着熱が発生して、局所的に急激な温度上昇が生じる恐れがあった。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みたものであり、酸化エチレンに対して優れた吸着特性を有する吸着剤を用いて、気体中に含まれる酸化エチレンを効率的かつ安全に除去可能な酸化エチレン除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 気体中に含まれる酸化エチレンを、CaA型ゼオライトによって吸着除去する、酸化エチレン除去方法。
[2] 前記気体が、HFC134a、HFC125のうち、少なくとも1つを含む、前項[1]に記載の酸化エチレン除去方法。
[3] 前記気体と、水分を含む空気とを混合して混合ガスとした後、前記混合ガス中に含まれる前記酸化エチレンを、前記CaA型ゼオライトによって吸着除去する、前項[1]又は[2]に記載の酸化エチレン除去方法。
[4] 前記空気中の水分濃度が、1.0〜4.0(%)である、前項[3]に記載の酸化エチレン除去方法。
[5] 前記気体が、酸化エチレンを含む燻蒸ガスを燻蒸空間内に封入して燻蒸処理した後、前記燻蒸空間から排出されるガスである、前項[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の酸化エチレン除去方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の酸化エチレン除去方法は、酸化エチレンに対して優れた吸着特性を有するCaA型ゼオライトを吸着剤として用いるため、少ない使用量で酸化エチレンを吸着除去できるとともに、吸着した酸化エチレンの脱着を抑制することができる。
また、CaA型ゼオライトは、HFC−134a等の希釈剤の吸着量が少なく、過剰な吸着熱が発生して局所的に急激な温度上昇が生じる恐れがない。
したがって、本発明の酸化エチレン除去方法によれば、気体中に含まれる酸化エチレンを効率的かつ安全に吸着除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した一実施形態の酸化エチレン除去方法について、これに用いる酸化エチレン除去装置の構成とともに、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の燻蒸処理及び酸化エチレン除去装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0019】
<酸化エチレン除去装置>
先ず、本発明の一実施形態である酸化エチレン除去方法に用いることが可能な酸化エチレン除去装置の構成について、燻蒸処理に適用する場合を一例として説明する。
図1は、本発明の一実施形態である酸化エチレン除去方法を行う際に使用する、燻蒸処理設備兼酸化エチレン除去装置の構成を模式的に示す系統図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の酸化エチレン除去方法に適用可能な、燻蒸処理設備兼酸化エチレン除去装置(以下、単に「除去装置」という)10は、燻蒸室11と、空気導入部12と、排出部13と、第1のガス排出ライン17−1と、第2のガス排出ライン17−2と、排気装置18と、吸着剤23を収容する吸着塔22とを備えて、概略構成されている。
【0021】
燻蒸室11は、その内側に気密可能な燻蒸空間11Aを有する。この燻蒸室11内(燻蒸空間11A)には、燻蒸対象物14(例えば、木材や紙類)が載置される。また、燻蒸空間11Aには、燻蒸ガスとして酸化エチレン及び希釈用ガスを含む混合ガスが供給される。なお、燻蒸ガスの供給は、例えば、燻蒸ガスが充填されたボンベ(図示せず)から当該燻蒸ガスを抜き出し、気化器を通過させた後に燻蒸室11の下部に供給する。また、燻蒸ガスの希釈用ガスとしては、例えば、HFC134a、又はHFC125を用いることができる。
【0022】
空気導入部12は、燻蒸処理が終了後、燻蒸室11内から燻蒸ガスを排出する際、燻蒸室11内に水分を含んだ空気を導入するために、燻蒸室11の上方寄りに設けられている。
排出部13は、燻蒸処理が終了後、燻蒸室11内から燻蒸ガス及び水分を含んだ空気を含む混合ガスを、第1のガス排出ライン17−1に排出するために、燻蒸室11の下方寄りに設けられている。
【0023】
第1のガス排出ライン17−1は、燻蒸室11内から排出された上記混合ガスを吸着塔22に供給するために、燻蒸室11と吸着塔22との間に設けられている。具体的には、第1のガス排出ライン17−1は、一端が排出部13と接続されており、他端が吸着塔22の導入口と接続されている。
【0024】
第2のガス排出ライン17−2は、酸化エチレンの濃度が十分に低下した混合ガスを大気中に放出するために、吸着塔22の後段(二次側)に設けられている。具体的には、第2のガス排出ライン17−2は、一端が吸着塔22の導出口と接続されている。
【0025】
排気装置18は、第1のガス排出ライン17−1に設けられている。排気装置18は、燻蒸処理後に燻蒸室11内から混合ガスを強制的に排気させるために設けられている。排気装置18としては、特に限定されないが、具体的には、排気ファンや排気ブロア等を用いることができる。
【0026】
吸着塔22は、その内部に吸着剤23を収容している。すなわち、吸着剤23は、吸着塔22内に充填されている。
吸着剤23の形状としては、特に限定されないが、例えば、粒状(具体的には、球状、ペレット状等)とすることができる。
吸着剤23の大きさとしては、特に限定されないが、例えば、球状の場合には直径が1.0〜5.0mmの範囲であることが好ましい。また、吸着剤23がペレット状の場合には、直径が1.0〜2.0mm、長さが1.0〜4.0mmの範囲であることが好ましい。
【0027】
本実施形態の酸化エチレン除去方法に適用可能な除去装置10は、気体中の酸化エチレンの吸着剤23として、CaA型ゼオライトを用いる。
【0028】
燻蒸ガス中に希釈ガスとして含まれているHFC134a等の分子径は、CaA型ゼオライトの細孔径よりも大きいとされている。これにより、希釈用ガスがCaA型ゼオライトに吸着されにくくなるため、局所的な過度の吸着熱の発生を抑制することができる。
【0029】
CaA型ゼオライトの比表面積は、特に限定されないが、500m
2/g以上とすることがより好ましい。CaA型ゼオライトの比表面積を500m
2/g以上とすることで、気体中の酸化エチレンをより効率的に除去することができる。
【0030】
なお、吸着剤23となるCaA型ゼオライトとして、Naを含む市販されたCaA型ゼオライトを用いてもよい。
【0031】
<酸化エチレン除去方法>
次に、本実施形態の酸化エチレン除去方法について説明する。
本実施形態の酸化エチレン除去方法は、気体中に含まれる酸化エチレンを、CaA型ゼオライトによって吸着除去するものである。以下、本実施形態の酸化エチレン除去方法を、上述した除去装置10を用いた燻蒸処理に適用する場合を一例として説明する。
【0032】
先ず、
図1に示すように、燻蒸室11内の気密な燻蒸空間11Aに燻蒸対象物14を載置する。次いで、燻蒸ガスが充填されたボンベ等、図示略の燻蒸ガス供給源から、燻蒸空間11Aに燻蒸ガスを供給する。この際、燻蒸空間11A内に拡散する酸化エチレンの濃度が1〜2体積%となるように、燻蒸空間11A内に燻蒸ガスを封入する。
【0033】
次に、上記燻蒸ガスを用いて、燻蒸対象物14の燻蒸処理を行う。
次いで、燻蒸処理が終了した後、排気装置18を稼働して、燻蒸空間11Aに存在する燻蒸ガスを、燻蒸空間11Aから排出部13を介して第1のガス排出ライン17−1内に排出する。
【0034】
このとき、燻蒸室11内の圧力が少し負圧となるため、空気導入部12を介して、燻蒸空間11Aに水分を含む空気が導入される。
このため、排出部13からは、燻蒸空間11Aから排出された燻蒸ガス(酸化エチレン及び希釈用ガスを含むガス)と、水分を含む空気とが混合された混合ガスが排出される。
なお、上記混合ガスに含まれる酸化エチレンの濃度は、燻蒸空間11Aに水分を含む空気が導入されるにつれて低下する。
【0035】
ここで、水分を含む空気とは、空気中の水分濃度が、1.0〜4.0(%)であることを示している。また、空気中の水分濃度は、2.0〜4.0(%)であることがより好ましい。水分を含む空気を燻蒸ガスと混合することにより、燻蒸ガスによる燻蒸対象物への燻蒸処理効果を高めることができる。
なお、空気中の水分濃度は、市販されている家庭用の湿度計等を用いて測定することができる。
【0036】
次に、排出部13から排出される混合ガスを、第1のガス排出ライン17−1によって、吸着塔22に供給する。これにより、吸着塔22内に充填された吸着剤23であるCaA型ゼオライトによって、混合ガス中に含まれる酸化エチレンが吸着除去される。
【0037】
次に、吸着塔22から第2のガス排出ライン17−2を介して、酸化エチレンが除去された混合ガス(言い換えれば、酸化エチレンの濃度が十分に低減された混合ガス)を大気中に放出する。
【0038】
なお、燻蒸空間11Aから混合ガスの排出が進むにつれて、当該燻蒸空間11A内に載置された燻蒸対象物14から、徐々に酸化エチレンが脱離することが知られている。したがって、燻蒸空間11Aから排気される混合ガス中の酸化エチレンの濃度が低下した後も、比較的長い時間、混合ガス中には低濃度の酸化エチレンが含まれることとなる。このため、燻蒸空間11Aから排出される混合ガスの吸着処理を続ける必要がある。
【0039】
ところで、従来の吸着剤である活性炭を酸化エチレンの吸着除去に用いた場合、低濃度の酸化エチレンを含む混合ガスを活性炭に流し続けると、活性炭に吸着した酸化エチレンが脱着して大気中に放出されてしまうことが知られていた。このため、酸化エチレンが活性炭から脱着する前に、吸着塔を封じきることが必要であった。
【0040】
これに対して、本実施形態の酸化エチレン除去方法によれば、酸化エチレンの吸着剤23として用いるCaA型ゼオライトは、吸着した酸化エチレンを固定化する吸着特性を有している。このため、低濃度の酸化エチレンを含む混合ガスを吸着塔22に流し続けた場合であっても、吸着剤からの酸化エチレンの脱着を抑制することができる。
【0041】
なお、細孔径が0.41nm程度であるNaA型ゼオライトは、酸化エチレンを固定化可能で、かつHFC134aが吸着しない点において、活性炭よりも好ましい吸着剤であるが、酸化エチレンの吸着性能に関しては、活性炭と同程度であるため、吸着剤としては、CaA型ゼオライトの方が良好な特性を有する。
また、CaA型ゼオライトとして、Naを含む市販されたCaA型ゼオライトを用いてもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の酸化エチレン除去方法によれば、酸化エチレンに対して優れた吸着特性を有するCaA型ゼオライトを吸着剤として用いるため、活性炭と比較して少ない使用量で酸化エチレンを吸着除去できる。これにより、燻蒸処理設備兼酸化エチレン除去装置10の小型化を図ることができる。
【0043】
また、CaA型ゼオライトは、吸着した酸化エチレンの脱着を抑制することができる。これにより、吸着後の吸着塔22を封じ切る必要がない。
【0044】
また、CaA型ゼオライトは、HFC−134a等の希釈剤の吸着量が少なく、過剰な吸着熱が発生して局所的に急激な温度上昇が生じる恐れがない。
【0045】
したがって、本実施形態の酸化エチレン除去方法によれば、混合ガス中に含まれる酸化エチレンを効率的かつ安全に吸着除去できる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上述した実施形態では、燻蒸処理に適用する場合を一例として酸化エチレン除去方法を説明したが、これに限定されるものではない。酸化エチレンを含む気体中から当該酸化エチレンを除去する種々の用途に適用することが可能である。
【0047】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明の効果を詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1では、
図2に示す試験装置30を用いると共に、吸着剤33としてペレット状のCaA型ゼオライト(東ソー株式会社製、「SA−500A」)を用いて、酸化エチレンの除去処理を行った。
【0048】
吸着塔32には、内径23.9mm×高さ1mの金属製の筒を用いた。この吸着塔に、CaA型ゼオライトを高さ0.8m分充填した。
【0049】
ガス供給ライン31を介して、0.6%の酸化エチレン、1.46%のHFC134a、及び相対湿度が70%の空気(水蒸気濃度2.2%)を含み、かつ温度が25℃とされた混合ガスを、18NL/minの供給量で、大気圧にて吸着塔32に供給した。ガス排出ライン35から排出される混合ガスに含まれる酸化エチレンの濃度変化及びHFC134aの濃度変化と、吸着塔32の高さ方向及び径の中心に設けられた温度測定部36の温度(吸着剤33の内部)と、を測定した。結果を
図2に示す。
【0050】
なお、酸化エチレンの濃度、及びHFC134aの濃度は、ガス排出ライン35に接続した分析計34で測定した。分析計34は、島津製作所株式会社製のガスクロマトグラフGC−8Aを用いた。ガスクロマトグラフGC−8Aは、カラムであるHayeSep P(Φ3.2mm×4m)と、水素炎イオン化検出器(FID)と、を有する。
また、カラムの温度は、200℃とした。
また、温度測定部36にて測定される、吸着剤33の温度変化は、吸着による発熱状態を観察する目的で、株式会社ネツシン製のK熱電対を用いて測定した。
【0051】
図3は、実施例における経過時間に対する酸化エチレンの濃度変化及びHFC134aの濃度変化と、経過時間に対する吸着剤33の温度変化と、を示す図である。
ここで、混合ガスを吸着塔32に流通し始めてから、酸化エチレンの濃度が5ppm検出されるまでの時間を酸化エチレンの破過時間とし、破過時間までの間に、吸着剤33に吸着された酸化エチレンの量を破過吸着量[mol/kg]とした。なお、破過吸着量は、混合ガスの組成と流量と流通時間とから求めた吸着剤33への酸化エチレンの流入量を、吸着剤33の重量で除したものである。
【0052】
更に、分析計34において酸化エチレンの濃度が0.6体積%(混合ガスと同濃度)検出されるまで混合ガスを流し続けた。吸着塔32に混合ガスを流通し始めてから、酸化エチレンの濃度が0.6体積%を検出するまでの間に吸着剤33に吸着された酸化エチレンの量を飽和吸着量[mol/kg]とした。
【0053】
酸化エチレン濃度が0.6%となった段階で混合ガスの供給を止め、替わりに酸化エチレン及びHFC134aを含まないガス(具体的には、温度が25℃の乾燥空気)を10NL/minの供給量で、大気圧にて吸着塔32に供給した。乾燥空気により吸着剤33から酸化エチレンを脱着させつつ、分析計34で脱着した酸化エチレンの濃度を測定した。乾燥空気を流し始めてから酸化エチレンが1ppm検出されるまでの間に脱着した酸化エチレンの量を、吸着剤33の重量で除し、脱着量[mol/kg]とした。また、脱着量の飽和吸着量に対する割合を脱着率とした。
図4は、実施例における経過時間に対する吸着剤33から脱着した酸化エチレンの濃度変化を示す図である。
【0054】
本実施例では、破過吸着量が2.0mol/kg、脱着率が0.2%であった。
また、HFC134aは、吸着剤33にほとんど吸着されなかった。本実施例の酸化エチレン除去時における吸着塔32内の最大到達温度は、耐熱性硬質ポリ塩化ビニルの耐熱温度である90℃よりも低い85℃であった。
【0055】
(比較例1)
比較例1では、吸着剤33として活性炭を用いて、実施例と同様な評価を行った。
活性炭の酸化エチレン破過吸着量は、実施例の破過吸着量である2.0mol/kgよりもかなり低い0.34mol/kgであった。
また、比較例1の脱着率は80%であり、酸化エチレン除去時における吸着塔32内の最大到達温度は、35℃であった。
【0056】
(比較例2)
比較例2では、吸着剤33としてNaX型ゼオライト(細孔径0.74nm)を用いて、実施例と同様な評価を行った。
NaX型ゼオライトの酸化エチレン破過吸着量は、実施例の破過吸着量である2.0mol/kgよりも大きい2.4mol/kgであり、良好な結果が得られた。
【0057】
しかしながら、脱着率は90%であり、吸着したほとんどの酸化エチレンが脱着してしまうことが分かった。
また、比較例2の酸化エチレン除去時における吸着塔32内の最大到達温度は、125℃であり、かなり高い温度に到達することが確認できた。
【0058】
(比較例3)
比較例3では、吸着剤33として硫酸添着活性炭(添着量が1.8mol/L)を用い、実施例と同様な評価を行った。
硫酸添着活性炭の酸化エチレン破過吸着量は、実施例の破過吸着量である2.0mol/kgよりもかなり小さい0.14mol/kgであった。
また、比較例3の脱着率は、2%であり、実施例よりも少し悪い結果となった。また、比較例3の酸化エチレン除去時における吸着塔22内の最大到達温度は、33℃であった。
【0059】
(実施例及び比較例の評価結果のまとめ)
表1に、実施例及び比較例における破過吸着量、脱着率、吸着剤の最高到達温度を示す。
実施例1では、吸着剤33としてCaA型ゼオライトを用いると、活性炭や硫酸添着活性炭より破過吸着量が一桁大きく(具体的には、2.0mol/kg)することができ、かつ脱着率を極力低減(具体的には、0.2%)できることが確認できた。
比較例2のNaX型ゼオライトは、CaX型ゼオライトより破過吸着量が大きいものの、脱着率が高く、吸着剤の最高到達温度も高かった。すなわち、CaA型ゼオライトは、比較例1〜3の吸着剤より酸化エチレンの除去に適していることが確認できた。