(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態として、IABP(大動脈内バルーンポンピング)に用いられるバルーンカテーテルに具備されるバルーンを製造する場合を例にとり、図面を参照して説明する。
【0016】
まず、本実施形態に係るパリソンを製造するための母材としてのパリソン用チューブ1について説明する。パリソン用チューブ1は、
図1に示すように、その一端から他端に渡ってその径が軸方向に実質的に一定である直管状のチューブである。
【0017】
パリソン用チューブ1の材料としては、熱可塑性樹脂が用いられ、これを用いて最終的に製造されるIABP用バルーンの耐屈曲疲労特性に優れた材質であることが好ましく、たとえばポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル等を用いることができ、特にポリウレタンで形成されたものが血栓の発生抑止能が高く、耐摩耗性も高いので好適である。
【0018】
パリソン用チューブ1の製造方法は特に限定されないが、押出成形により製造されたものを用いることができる。パリソン用チューブ1の軸方向の寸法は50〜400mm程度であり、外径はφ1〜8mm程度であり、肉厚は0.1〜1.0mm程度である。
【0019】
上述したパリソン用チューブを母材とし、その両端の近傍部分を加熱延伸して製造されるパリソン(バルーン用パリソン)2は、
図2に示すように、その径が軸方向に実質的に一定の大径直胴部(未ストレッチ部)2aの両端に延伸部(ストレッチ部)をそれぞれ配置してなる両端延伸チューブである。両端の延伸部は、その径が徐々に減少する遷移部2bおよびその径が殆ど変化しない小径直胴部2cをそれぞれ有する。
【0020】
パリソン2の大径直胴部2aの軸方向の寸法は20〜200mm程度であり、遷移部2bの軸方向の寸法は2〜50mm程度である。大径直胴部2aの外径は、パリソン用チューブ1の外径と同程度であり、小径直胴部2cの外径はφ0.2〜3.0mm程度である。
【0021】
上述したパリソン2を用いて製造されるバルーン(IABP用バルーン)3は、
図3に示すように、その径が軸方向に実質的に一定の直胴部3aの両端にそれぞれ、その径が徐々に減少するコーン部(ショルダー部)3bおよびその径が軸方向に実質的に一定で直胴部3aよりも小径のネック部3cを配置して構成されている。バルーン3は、二軸延伸ブロー成形により製造される。バルーン3の直胴部3aはパリソン2の大径直胴部2aに、バルーン3のコーン部3bはパリソン2の遷移部2bに、バルーン3のネック部3cは、パリソン2の小径直胴部2cに概略対応している。
【0022】
上述したバルーン3を用いて製造される最終製品としてのIABP用バルーンカテーテル4は、
図4に示すように構成されている。IABP用バルーンカテーテル4のバルーン3は、心臓の拍動に合わせて拡張および収縮する。バルーン3は、膜厚約20〜200μm程度の筒状のバルーン膜で構成される。本実施形態では、拡張状態のバルーン膜の形状は円筒形状であるが、これに限定されず、多角筒形状であってもよい。
【0023】
IABP用のバルーン3の外径および長さは、心機能の補助効果に大きく影響するバルーン3の内容積と、動脈血管の内径等に応じて設定される。バルーン3は、通常、その内容積が5〜50ccであり、拡張時の外径が8〜20mmであり、長さが80〜270mmである。
【0024】
このバルーン3の遠位端は、短チューブ41を介してまたは直接に内管42の遠位端外周に熱融着または接着等により取り付けられている。バルーン3の近位端は、金属チューブ等からなる造影マーカ43を介してまたは直接に、カテーテル管44の遠位端に接合されている。カテーテル管44の内部に形成された第1のルーメンを通じて、圧力流体のバルーン3内に対する導入または導出が行われ、バルーン3が拡張または収縮するようになっている。バルーン3とカテーテル管44との接合は熱融着あるいは紫外線硬化樹脂等の接着剤による接着により行われる。
【0025】
内管42の遠位端はカテーテル管44の遠位端より遠方へ突き出ている。内管42はバルーン3およびカテーテル管44の内部に軸方向に挿通されている。内管42の近位端は分岐部45の第2ポート46に連通されている。内管42の内部には、バルーン3の内部およびカテーテル管44内に形成された第1のルーメンとは連通しない第2のルーメンが形成されている。
【0026】
バルーンカテーテル4を動脈内に挿入する際に、バルーン3内に位置する内管42の第2ルーメンはバルーン3を都合良く動脈内に差し込むためのガイドワイヤー挿通管腔としても用いられる。バルーンカテーテル4を血管等の体腔内に差し込む際には、バルーン3は内管42の外周に折り畳んで巻回される。内管42は、たとえばカテーテル管44と同様な材質で構成される。
【0027】
内管42の内径は、ガイドワイヤーを挿通できる径であればよく、たとえば0.15〜1.5mm、好ましくは0.5〜1mmである。この内管42の肉厚は、0.1〜0.4mmが好ましい。内管42の全長は、血管内に挿入されるバルーンカテーテル4の軸方向長さ等に応じて決定され、特に限定されないが、たとえば500〜1200mm、好ましくは700〜1000mm程度である。
【0028】
カテーテル管44は、ある程度の可撓性を有する材質で構成されることが好ましい。カテーテル管44の内径は、好ましくは1.5〜4.0mmであり、カテーテル管44の肉厚は、好ましくは0.05〜0.4mmである。カテーテル管44の長さは、好ましくは300〜800mm程度である。
【0029】
カテーテル管44の近位端には患者の体外に設置される分岐部45が連結してある。分岐部45はカテーテル管44と別体に成形され、熱融着あるいは接着等の手段で固着される。分岐部45にはカテーテル管44内の第1のルーメンおよびバルーン3に対する圧力流体の導入または導出を行うための第1ポート48と、内管42の第2ルーメン内に連通する第2ポート46とが形成されている。
【0030】
第1ポート48は、不図示の拡張・収縮駆動装置に接続され、この駆動装置によりバルーン3が拡張または収縮するように流体圧が供給されるようになっている。第2ポート46は、不図示の血圧変動測定装置に接続され、バルーン3の遠位端の開口端47から取り入れた動脈内の血圧の変動を測定可能になっている。この血圧変動測定装置で測定した血圧の変動に基づき、心臓の拍動に応じて、駆動装置を制御し、0.4〜1秒の短周期でバルーン3を拡張および収縮させるようになっている。
【0031】
次に、上述したパリソン2の製造工程について、
図5を参照して説明する。まず、
図5(A)に示すように、パリソン用チューブ1の直胴部(
図2の符号2a参照)となるべき部分の一端側の一部および他端側の一部の2か所を一対の直胴部支持機構(第2固定機構)60,60によりそれぞれ固定する。
【0032】
その後、
図5(B)に示すように、パリソン用チューブ1の一端部および他端部のそれぞれの近傍部分(直胴部固定機構60,60よりもそれぞれ対応する端部側の部分)に、加熱金型51,51を配置して、加熱金型51,51により、該当部分を加熱する加熱工程を実施する。なお、加熱金型51,51としては、特に限定されないが、パリソン用チューブ1よりも大きい径を有する略円柱状の加熱空間(加熱面)を有する非接触タイプのものを用いることができる。
【0033】
加熱工程における加熱温度は、パリソン用チューブ1の母材として、たとえばポリウレタンを用いる場合、180〜200℃程度であり、加熱時間は20〜150秒程度である。加熱金型51,51による加熱範囲(加熱面の軸方向の寸法)b1は、5〜100mm程度として、パリソン2の直胴部(大径直胴部2a)となるべき部分については極力加熱されないように、局所的に加熱を行うことが望ましい。
【0034】
次いで、
図5(C)に示すように、パリソン用チューブ1の両端を、同図中の矢印a2,a3で示すように引っ張ることにより、パリソン用チューブ1に張力を印加して、パリソン用チューブ1の前記加熱工程で加熱された部分を延伸する延伸工程(第1延伸工程)を実施する。第1延伸工程における張力は、2〜20N程度であり、延伸寸法b2は、5〜200mm程度である。
【0035】
なお、本実施形態では、第1延伸工程を実施する際には、加熱金型51,51による加熱は停止しているものとするが、加熱を継続しながら行ってもよい。
【0036】
延伸工程が終了したならば、次いで、
図5(D)に示すように、パリソン用チューブ1の加熱延伸された部分の形状を定着(固定)させるため、冷却工程を実施する。冷却工程は、加熱金型51,51による加熱を停止した状態または加熱金型51,51とパリソン用チューブ1とを離間させた状態で、自然冷却してもよいし、パリソン用チューブ1の内側または外側に冷却用の気体を送風して、強制冷却するようにしてもよい。冷却時間としては、自然冷却の場合、筐体内温度が15〜35℃である場合において、30〜300秒程度である。
【0037】
なお、本実施形態では、冷却工程中も、直胴部固定機構60,60による直胴部となるべき部分の固定は、継続するものとする。冷却時にも直胴部となるべき部分の固定を継続することにで、冷却中における重力の作用によるパリソン用チューブ1の特に加熱・延伸された部分の変形を抑制することができる。ただし、延伸工程後、冷却工程前に固定を解除してもよい。
【0038】
次いで、
図5(E)に示すように、非加熱下(たとえば、15〜35℃の雰囲気下)において、直胴部固定機構60,60を互いに離間する方向(
図5(E)の矢印a4,a5参照)に移動させて、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分の両端に張力を印加して、該直胴部となるべき部分を予備的に延伸させる延伸工程(第2延伸工程)を実施する。この工程における延伸長b3(左右でそれぞれb3/2)としては、直胴部となるべき部分の長さ(延伸前の初期位置に設定された状態の直胴部固定機構60,60による固定部間の寸法)b4に対して、1.5〜4.0倍程度とすることができる。延伸長b3としては、後述する二軸延伸ブロー成形を行う際の軸方向延伸の延伸長以上とすることが好ましい。
【0039】
その後、
図5(F)に示すように、直胴部固定機構60,60による直胴部となるべき部分の固定を解除して張力の印加を解除し、所定時間だけ放置することにより、パリソン用チューブ1が、自己の復元力(弾性力)により収縮して(
図5(F)中の矢印a6,a7参照)、元の長さにまたはこれに近い長さに戻る。なお、ここでは、冷却工程(
図5(D))の実施後に、第2延伸工程(
図5(E))を開始するように説明しているが、第2延伸工程は、冷却工程と同時並行的に実施することが生産性の観点から好ましい。
【0040】
最後に、延伸した部分の適宜な箇所(
図5(G)中、符号c1で示した位置)で、それぞれ切断することにより、
図2に示した完成体としてのパリソン(バルーン用パリソン)2を得ることができる。
【0041】
次に、上述したパリソン2の製造工程を実施するための製造装置について、
図6Aを参照して説明する。このパリソン製造装置5は、一対のチャック機構(第1固定機構)50,50、一対の加熱金型51,51および一対の延伸機構(第1延伸機構)53,53を備えている。これに加えて、パリソン製造装置5は、張力検出センサ(張力検出手段)54、支持台55、筐体56、一対のファン57,57、筐体内温度検出センサ58および制御装置59等を備えている。さらに、パリソン製造装置5は、一対の直胴部固定機構(第2固定機構)60,60および一対の直胴部延伸機構(第2延伸機構)61,61(
図6Aには不図示、
図9A参照)を備えている。
【0042】
一対のチャック機構50,50は、パリソン用チューブ1を略水平に延在させた状態でその両端をそれぞれ解除可能に支持固定する手段である。チャック機構50,50は、対称的に配置されている以外は実質的に同じ構成であるので、一方(
図6Aにおいて、左側)のチャック機構50についてのみ説明する。
【0043】
チャック機構50は、
図7A〜
図7Cに示すように、位置決め用の当接面(当接部)50aを有する略円柱状の位置決め部材、略円柱状のピン部材(ピン部)50bおよび一対のチャック部材(チャック部)50cを概略備えて構成されている。
【0044】
位置決め部材の当接面50aには、該当接面50aに略垂直であり、かつ位置決め部材と実質的に同軸上に、ピン部材50bが立設されている。ピン部材50bは、パリソン用チューブ1の端部の内腔1aに挿入される部材であり、パリソン用チューブ1の内腔1aの内径と略等しいか、挿入に支障がない範囲で僅かに大径に形成されている。なお、同図には示されていないが、ピン部材50bの先端部は、パリソン用チューブ1の内腔1aに対する挿入を円滑に行えるように、先端側の一部を先細テーパ状か、あるいは丸みを帯びた形状とすることが好ましい。
【0045】
位置決め部材の当接面50aは、ピン部材50bがその端部の内腔1aに挿入されたパリソン用チューブ1の端面が当接される面であり、後述する延伸機構53が所定の初期位置に設定された状態で、パリソン用チューブ1の端面を該当接面50aに当接させることにより、パリソン用チューブ1の延在方向(
図6Aにおいて、左右方向)における位置決めを行うことができるようになっている。
【0046】
チャック部材50c,50cは、その端部の内腔1aにピン部材50bが挿入され、位置決め部材の当接面50aにその端面が当接されたパリソン用チューブ1のピン部材50bが挿入された部分に外側から圧接して挟持することにより、パリソン用チューブ1の端部を固定するための部材である。
【0047】
チャック部材50c,50cは、パリソン用チューブ1の固定を確実に行うため、互いの対向部に立設された複数の爪部を有している。また、チャック部材50c,50cは、本実施形態では、180度対向する位置に配置されており、図示は省略しているが、互いに対称的に近接離間するように支持されていて、エアーシリンダ等の駆動手段により、互いに近接または離間するように構成されている。チャック機構50,50の作動または停止(駆動手段の作動または停止)は、オペレータの指示に応じて、後述する制御装置59により制御されるようになっている。
【0048】
オペレータは、
図7Aに示すように、パリソン用チューブ1の一端部を一方のチャック部材50cの近傍に配置し、
図7Bに示すように、パリソン用チューブ1の一端側の内腔1aにピン部材50bを挿入し、パリソン用チューブ1の一端面を位置決め部材の当接面50aに当接させる。この状態で、チャック部材50c,50cの駆動手段を作動させることにより、
図7Cに示すように、パリソン用チューブ1の一端部を固定することができる。パリソン用チューブ1の他端部に対しても同様の作業を行うことにより、パリソン用チューブ1を一対のチャック機構50,50間に渡って、実質的に水平方向に延在して固定配置することができる。
【0049】
パリソン用チューブ1は、内腔1aに挿入されたピン部材50bとその外側に圧接される複数の爪部を有するチャック部材50c,50cにより挟持されるため、パリソン用チューブ1の内腔1aの潰れが生じ難く、強固な固定を実現することができる。このため、高い引張荷重を印加した場合であっても、これに耐えることが可能である。また、パリソン用チューブ1を正確に位置決めすることができるため、ロット間での品質のバラツキを少なくすることができる。
【0050】
なお、チャック部材50cは、本実施形態では、2つとしたが、3つ以上とし、それぞれを等角度間隔で放射状に配置するようにしてもよい。また、必須ではないが、
図7Dに示すように、ピン部材50bにその先端に開口する気体通路50dを形成し、該気体通路50dを介して、パリソン用チューブ1の内腔1a内に、窒素ガス等の不活性ガスを供給できるようにして、パリソン用チューブ1の内部の加熱に伴う酸化を抑制するようにするとよい。
【0051】
図6Aに戻り、チャック機構50,50は、それぞれ延伸機構53,53に支持固定されている。延伸機構53,53は、それぞれ一対のチャック機構50,50の一方を他方に対して離間するように移動ないし付勢して、チャック機構50,50にその両端が固定されたパリソン用チューブ1に張力を印加する手段である。延伸機構53,53は、対称的に配置されている以外は実質的に同じ構成であるので、一方(
図6A中、左側)の延伸機構53についてのみ説明する。
【0052】
延伸機構53は、詳細図示は省略しているが、可動部材53aと、可動部材53aを同図中左右方向(矢印a16参照)に移動可能(スライド可能)に支持するとともに、可動部材53aを直線的に移動させる直線駆動機構53b等を備えて構成されている。
【0053】
可動部材53aには、上述したチャック機構50が支持固定されており、延伸機構53の直線駆動機構53bは、支持台55に支持固定されている。直線駆動機構53bは、駆動モータ(サーボモータ等)と該駆動モータの回転運動を直線運動に変換するボールネジ機構等を備えている。なお、直線駆動機構53bは、かかる構成に限られず、ラックアンドピニオン機構やリニアモータ等であってもよい。直線駆動機構53bは、後述する制御装置59により、その作動、停止、移動速度、および移動方向等が制御されるようになっている。
【0054】
延伸機構53,53を所定の初期位置に設定した状態で、チャック機構50,50にパリソン用チューブ1の両端を固定して、延伸機構53,53を作動させることにより、可動部材53a,53aの両者が同期的に互いに離間する方向に移動し(または移動しようとし)、パリソン用チューブ1に所望の張力を印加できるようになっている。
【0055】
各延伸機構53,53は、パリソン用チューブ1に生じている張力を検出する張力検出センサ(張力検出手段)54をそれぞれ有している。張力検出センサ54としては、たとえばロードセルを用いることができる。本実施形態では、可動部材53aからその移動方向に離間して動力伝達部材53cを並設し、可動部材53aと動力伝達部材53cとの間に、コイルスプリング(不図示)および張力検出センサ54を介装し、直線駆動機構53bによる駆動力を、動力伝達部材53cを介して可動部材53aに伝達するようにしている。張力検出センサ54の検出値は制御装置59に入力され、制御装置59により、予め設定された適宜な張力が印加されるように、直線駆動機構53bによる推力が制御される。
【0056】
加熱金型51,51は、チャック機構50,50にその両端が支持固定されたパリソン用チューブ1の一端側の一部(延伸部となるべき部分)および他端側の一部(延伸部となるべき部分)を非接触で加熱する手段である。加熱金型51,51は、チャック機構50,50の間であって、同図において左右方向(パリソン用チューブ1が延在される方向)に互いに離間して配置されている。これらの加熱金型51,51は、実質的に同じ構成であるので、一方(
図6A中、左側)の加熱金型51についてのみ説明する。
【0057】
加熱金型51は、
図8A〜
図8Eにも示されているように、それぞれベリリウム銅等の金属材料からなる、上下で一対の加熱ブロック51a,51bを有している。加熱ブロック51a,51bは、昇降機構51cにより、それぞれ上下方向(
図6A中の矢印a11参照)において、互いに近接離間するように同期的に昇降される。
【0058】
昇降機構51cは、詳細図示は省略するが、各加熱ブロック51a,51bをそれぞれ上下にスライド可能に保持するスライド機構と、加熱ブロック51a,51bを昇降駆動するためのサーボモータおよびボールネジ等を有する昇降駆動機構とを備えている。なお、本実施形態では、加熱ブロック51a,51bは、双方が対称的に移動して互いに近接離間するように構成されているものとするが、一方(たとえば下の加熱ブロック51b)を固定し、他方(たとえば上の加熱ブロック51a)のみを昇降するように構成し、またはこれと逆となるように構成してもよい。
【0059】
上の加熱ブロック51aの下面および下の加熱ブロック51bの上面には、略半円柱状の内壁面(加熱面51d)が形成されており、上の加熱ブロック51aの下面と下の加熱ブロック51bの上面とが当接された際には、これらの半円柱状の加熱面51d,51dにより、左右方向(その両端がチャック機構50,50に支持固定されたパリソン用チューブ1が延在する方向)に概略沿って、その中心軸が延在され、その両端に開口された略円柱状の加熱空間が画成されるようになっている。
【0060】
各加熱ブロック51a,51bには、図示は省略するが、通電により発熱するヒータおよび加熱ブロック51a,51bの温度を検出する金型温度検出センサ(たとえば熱電対)が内蔵されている。制御装置59は、金型温度検出センサ(
図11の符号59c参照)による検出値に基づいて、ヒータに対する通電を制御し、加熱ブロック51a,51bの加熱面51d,51dにより画成される略円柱状の加熱空間が適切な温度となるように加熱する。なお、各加熱ブロック51a,51bに設けるヒータおよび金型温度検出センサの数は、単一でも複数でもよいが、複数の方が加熱面51d,51dの温度分布をより均等にし得るので好適である。
【0061】
加熱ブロック51a,51bの加熱面51d,51dにより画成される略円柱状の加熱空間の内径としては、これの内部を貫通して配置されるパリソン用チューブ1の外周から所定寸法だけ離間して、非接触で加熱し得るように、該パリソン用チューブ1の外径よりも大きな径に設定されている。具体的には、加熱ブロック51a,51bの加熱面51d,51dにより画成される略円柱状の加熱空間の内径は、2〜12mm程度に設定される。
【0062】
パリソン用チューブ1の両端を一対のチャック機構50,50に支持固定させる際には、
図8Aおよび
図8Bに示すように、上の加熱ブロック51aを上方(矢印a12参照)に、下の加熱ブロック51bを下方(矢印a13参照)に移動させて、互いに離間さて、開いた状態とする。パリソン用チューブ1の両端の近傍部分を加熱する際には、
図8Dおよび
図8Eに示すように、上の加熱ブロック51aを下方(矢印a13参照)に、下の加熱ブロック51bを上方(矢印a12参照)に移動させて、上の加熱ブロック51aの下面と、下の加熱ブロック51bの上面を互いに当接させて、閉じた状態とする。パリソン用チューブ1をチャック機構50,50から取り外す際には、再度、
図8Aおよび
図8Bに示すように、上の加熱ブロック51aを上方(矢印a12参照)に、下の加熱ブロック51bを下方(矢印a13参照)に移動させて、開いた状態とすることで、これを行うことができる。
【0063】
図6Aに戻り、直胴部固定機構60,60は、チャック機構50,50にその両端が支持固定されたパリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分(
図2の符号2a参照)の一端側の一部および他端側の一部をそれぞれ支持固定する手段である。
【0064】
直胴部固定機構60,60は、加熱金型51,51の間であって、
図6Aにおいて左右方向(パリソン用チューブ1が延在される方向)に互いに離間して配置されている。これらの直胴部固定機構60,60は、実質的に同じ構成であるので、一方(
図6A中、左側)の直胴部固定機構60についてのみ説明する。
【0065】
直胴部固定機構60は、
図9A〜
図9Cにも示されているように、一対の固定アーム60a,60a、把持機構60cおよび昇降機構60dを備えている。固定アーム60a,60aの下端側の近傍部分には、互いに相対するように、略半形状の切欠きである固定部60b,60bが形成されている。固定部60b,60bの内径は、パリソン用チューブ1を、その変形をなるべく抑えつつ、確実に固定し得るように、該パリソン用チューブ1の外径よりも僅かに小さい径に値されている。なお、固定部60b,60bの形状としては、パリソン用チューブ1を、その変形や外周の損傷をなるべく抑えつつ、確実に固定し得る形状であれば、略半円形状に限られない。
【0066】
一対の固定アーム60a,60aの上端側は、把持機構60cに支持されている。把持機構60cは、詳細図示は省略するが、各固定アーム60a,60aをそれぞれ、
図9Aにおいて矢印a19方向(
図6Aにおいて前後方向)にスライド可能に保持するスライド機構と、固定アーム60a,60aを移動させるためのサーボモータおよびボールネジ等を有する駆動機構とを備えている。固定アーム60a,60aは、把持機構60cにより、
図9Aまたは
図9Bに示すように、互いに離間する方向に同期的に移動して開いた状態と、
図9Cに示すように、互いに近接する方向(
図9Cにおいて矢印a20方向)に同期的に移動して閉じた状態との2つの状態をとり得るようになっている。
【0067】
把持機構60cは、昇降機構60dに支持されている。昇降機構60dは、詳細図示は省略するが、把持機構60cを上下(
図9Aにおいて、矢印a17参照)にスライド可能に保持するスライド機構と、把持機構60cを昇降駆動するためのサーボモータおよびボールネジ等を有する駆動機構とを備えている。把持機構60cは、昇降機構60dにより、
図9Aに示すように、上方の初期位置に設定された状態と、
図9Bに示すように、下方(同図において矢印a18方向)に移動して、パリソン用チューブ1を把持固定し得る位置に設定された状態との2つの状態をとり得るようになっている。
【0068】
昇降機構60dにより、把持機構60cが下方の位置に設定された状態で、把持機構60cにより、一対の固定アーム60a,60aが互いに近接されることにより、
図9Cに示すように、固定部60b,60bによりパリソン用チューブ1が挟持され、固定される。
【0069】
直胴部固定機構60,60は、それぞれ直胴部延伸機構61,61に支持固定されている。直胴部延伸機構61,61は、それぞれ一対の直胴部固定機構60,60を互いに離間するように移動ないし付勢して、直胴部固定機構60,60に固定された部分(直胴部となるべき部分)に張力を印加して延伸させる手段である。直胴部延伸機構61,61は、対称的に配置されている以外は実質的に同じ構成であるので、一方の直胴部延伸機構61についてのみ説明する。
【0070】
直胴部延伸機構61は、詳細図示は省略しているが、可動部材61aと、可動部材61aを同6A中左右方向(矢印a16参照)に移動可能(スライド可能)に支持するとともに、可動部材61aを直線的に移動させる直線駆動機構61b等を備えて構成されている。
【0071】
可動部材61aには、上述した直胴部固定機構60の昇降機構60dの下端部が支持固定されており直胴部延伸機構61の直線駆動機構61bは、支持台55に支持固定されている。直線駆動機構61bは、駆動モータ(サーボモータ等)と該駆動モータの回転運動を直線運動に変換するボールネジ機構等を備えている。なお、直線駆動機構61bは、かかる構成に限られず、ラックアンドピニオン機構やリニアモータ等であってもよい。直線駆動機構61bは、後述する制御装置59により、その作動、停止、移動速度、および移動方向等が制御されるようになっている。
【0072】
直胴部延伸機構61,61を所定の初期位置に設定した状態で、直胴部固定機構60,60にパリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分の両端の近傍部分を固定して、直胴部延伸機構61,61を作動させることにより、左側の直胴部延伸機構61の可動部材61aと右側の直胴部延伸機構61の可動部材61aとの両者が同期的に互いに離間する方向に移動し、パリソン用チューブ1の該当部分を延伸するようになっている。なお、各直胴部延伸機構61,61の一方または両方は、直胴部となるべき部分に生じている張力を検出する張力検出センサ(張力検出手段)を備えていてもよい。この場合の張力検出センサとしては、上述した延伸機構53に係る張力検出センサ54と同様のものを用いることができる。
【0073】
図6Aに戻り、チャック機構50を保持する一対の延伸機構53,53(直線駆動機構53b,53b)、一対の加熱金型51,51(昇降機構51c,51c)および一対の直胴部延伸機構61,61(直線駆動機構61b,61b)は、支持台55上に固定されており、これらの全体は、筐体56内に収容されている。筐体56としては、金属等からなるフレームに、透明なパネル(たとえばアクリル板)を取り付けてなるものを用いることができる。筐体56は、図示は省略しているが、パリソン用チューブ1のチャック機構50,50に対する固定もしくは取り外しを手作業で行うため、あるいはその他メンテナンス等を行うため、開閉可能な扉が設けられている。筐体56には、複数の吸排気用(本実施形態では、排気用)のファン57,57や筐体56内の温度を検出する筐体内温度検出センサ58が取り付けられている。
【0074】
次に、上述したパリソン製造装置の制御系について、
図10を参照して説明する。制御装置59は、入力手段59aおよび表示手段59bを備えている。入力手段59aには、チャック機構50,50の作動または解除を行うボタン、緊急停止ボタン、その他のボタン、機能の選択や各種の設定値を入力するためのキーボード等が含まれる。表示手段59bには、液晶モニタや各種インジケータ等が含まれる。
【0075】
パリソンの製造時には、まず、オペレータは、未延伸のパリソン用チューブ1を、その両端をチャック機構50,50に手作業でセットする。なお、この時点では、
図6Aに示すように、延伸機構53,53は、所定の初期位置に設定されており、加熱金型51,51は加熱ブロック51a,51bが離間した(開いた)状態となっている。また、この時点では、
図6Aおよび
図9Aに示すように、直胴部固定機構60,60は、上方の初期位置に設定された状態で、固定アーム60a,60aが離間した(開いた)状態となっている。次いで、チャック機構50,50の作動ボタンを押下して、パリソン用チューブ1の両端の支持固定を行う。
【0076】
パリソン用チューブ1の両端の固定が正常に行われたことを確認したならば、オペレータが、所定の操作を行う(たとえば加熱延伸の開始ボタンを押下する)ことにより、パリソン製造のための一連の動作が開始される。制御装置59は、予めオペレータによって選択された制御シーケンスに従って各部を自動制御する。なお、この操作を省略して、上述したチャック機構50,50の作動ボタンの押下により、上述したパリソン用チューブ1の両端の固定の動作を含む一連の制御が開始されるようにしてもよい。
【0077】
制御装置59による制御シーケンスの一例について説明すると、まず、延伸機構53,53が離間するように駆動されることにより、その両端がチャック機構50,50に支持固定されたパリソン用チューブ1に、予め設定された張力(初期張力)が印加され、その状態が維持される。パリソン用チューブ1に生じている張力は、張力検出センサ54により検出されており、その検出値に基づいて、予め設定された初期張力になるように延伸機構53,53が制御され、初期張力に至った後は、該張力が一定となるようにフィードバック制御される。
【0078】
初期張力は、パリソン用チューブ1の弛み(チューブの軸方向の中央部と両端の固定部との高さの差)が許容範囲内となる適宜な値に設定される。初期張力が小さすぎると、弛みが大きくなって、後に実施される直胴部固定機構60,60による固定を適正に行えない場合がある。一方、初期張力が大きすぎると、弛みは少なくなって、上記の問題は解消し得るものの、加熱金型51による加熱中に、パリソン用チューブ1の加熱部分が不要に延伸してしまい、製造されたパリソン2の遷移部2bの傾斜が一様でなくなる(傾斜が2段になる)延伸ムラが生じる場合がある。このため、初期張力は、これらの双方が許容し得る程度の適宜な値に設定される。初期張力は、1〜10N程度とすることができる。本実施形態では、張力検出センサ54により、パリソン用チューブ1に生じている張力をリアルタイムに検出できるので、初期張力を正確に所望の値に一定に維持することが可能であり、初期張力の変動に伴う延伸ムラの発生を少なくし得る。
【0079】
初期張力が付与されたならば、直胴部延伸機構61,61が所定の初期位置に設定された状態で、直胴部固定機構60,60が作動され、
図9Aに示した初期位置から、
図6Bおよび
図9Bに示すように、固定アーム60a,60aが降下され、
図9Cに示すように、固定アーム60a,60aが互いに近接されて閉じて、固定アーム60,60の固定部60b,60bにより、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分が挟持されて固定される。
【0080】
次いで、
図6Bに示すように、加熱金型51,51の昇降機構51c,51cが作動され、上の加熱ブロック51aが降下(同図中、矢印a13参照)し,下の加熱ブロック51bが上昇して(同図中、矢印a12参照)、互いに当接する(閉じる)ことにより、パリソン用チューブ1の両端の近傍部分の延伸すべき部分が、加熱ブロック51a,51bの加熱面51d,51dによって画成される加熱空間内に配置される(
図8D,
図8Eも参照)。
【0081】
次いで、加熱金型51,51のヒータに対する通電が行われ、発熱が開始される。なお、加熱金型51,51のヒータに対する通電は、加熱ブロック51a,51bを閉じる前に行われてもよい。加熱金型51,51の温度は、金型温度検出センサ59cにより検出されており、予め設定された所定の温度になるようにヒータに対する通電が制御される。
【0082】
加熱の開始から(または所定の温度に達してから)、予め設定された所定の時間が経過したならば、加熱が停止され、延伸機構53,53が互いに離間する方向に移動されて(矢印a17,a18参照)、パリソン用チューブ1の一端側のチャック機構50と直胴部固定機構60の間の部分および他端側のチャック機構50と直胴部固定機構60の間の部分に張力がそれぞれ印加されて、延伸が行われる。パリソン用チューブ1に生じている張力は、張力検出センサ54により検出されており、その検出値に基づいて、延伸機構53,53による直線駆動機構53b,53bの移動速度が制御される。なお、延伸中に、加熱を継続してもよい。
【0083】
予め設定された延伸長(ストレッチ長)になったならば、延伸機構53,53の直線駆動機構53b,53bの移動が停止され、この状態が予め設定された所定の時間だけ維持されることにより、パリソン用チューブ1が冷却される。これにより、その両端の近傍部分が延伸されたパリソン用チューブ1の形状が固定される。
【0084】
この冷却と並行して、または冷却が終了後に、直胴部となるべき部分の延伸が行われる。すなわち、直胴部延伸機構61,61が互いに離間する方向に移動されて(
図6B中の矢印a17,a18参照)、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分の一端側の直胴部固定機構60と他端側の直胴部固定機構60の間の部分に張力が印加されて、延伸が行われる。パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分に生じている張力は、張力検出センサ(不図示)により検出されており、その検出値に基づいて、直胴部延伸機構61,61による直線駆動機構61b,61bの移動速度が制御される。
【0085】
次いで、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分が予め設定された所定の延伸長(たとえば、直胴部となるべき部分の延伸を行う前のパリソン用チューブ1の直胴部固定機構60,60による固定位置間の寸法の2倍)になったならば、直胴部延伸機構61,61の直線駆動機構61b,61bによる移動が停止される。なお、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分の延伸中は、チャック機構50,50に係る延伸機構53,53が、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分以外の部分に張力や圧縮力が作用しないように、直胴部固定機構60,60の移動に同期して、互いに離間する方向に移動される。
【0086】
その後、直胴部延伸機構61,61の直線駆動機構61b,61bによる可動部材61a,61aに対する付勢力が開放され、すなわち可動部材61a,61aが移動自在な状態となり、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分の自己の弾性(復元力)により、可動部材61a,61aが互いに近接方向に移動し、該直胴部となるべき部分が収縮される。なお、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分の収縮中は、チャック機構50,50に係る延伸機構53,53が、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分以外の部分に張力や圧縮力が作用しないように、直胴部固定機構60,60の移動に同期して、互いに近接する方向に移動される。
【0087】
次いで、直胴部固定機構60,60の固定アーム60a,60aが把持機構60cにより互いに離間するように開いて、固定アーム60a,60aの固定部60b,60bによるパリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分の固定が解除される。なお、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分の固定が解除された後における、直胴部となるべき部分の収縮中は、チャック機構50,50に係る延伸機構53,53が、パリソン用チューブ1に張力や圧縮力が作用しないように、互いに近接する方向に移動される。
【0088】
所定の時間の経過により、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分が元の長さ(延伸前の長さ)または所定の長さまで戻ったならば、一連の動作が終了したことをオペレータに通知して、このシーケンスを終了する。なお、終了通知は、表示手段59bのインジケータ等に表示し、あるいはブザー等で行うようにできる。
【0089】
一連のシーケンスが完了したならば、オペレータは、チャック機構50,50の解除ボタンを押下することにより、その両端の近傍部分が延伸されたパリソン用チューブ1の両端の固定が解除されるので、手作業でこれを取り外す。なお、これらの一連の動作中は、筐体56内の温度が筐体内温度検出センサ58により検出されており、その検出値に基づいて、ファン57,57が作動または停止されることにより、筐体56内の温度が一定に制御される。また、チャック機構50,50の解除操作を省略し、この操作も一連のシーケンスに含んでもよい。
【0090】
最後に、その両端の近傍部分が延伸されたパリソン用チューブ1の当該延伸部の適宜な箇所を手作業で切断して、両端部を切り落とすことにより、
図2に示す完成体としてのパリソン2を得ることができる。
【0091】
このようにして製造されたパリソン2を用いて、二軸延伸ブロー成形機で加工して、バルーンを製造する工程を、
図11を参照して概説する。まず、
図11(A)に示すように、二軸延伸ブロー成形機の金型70内に、パリソン2をセットする。金型70は、その長手方向(軸心方向)の両端部にそれぞれ開口する開口部を有するとともに、その内部に製造すべきバルーンの外形と実質的に相対形状の空間を有する。すなわち、金型70は、直胴部3a、コーン部3b,3bおよびネック部3c,3c(
図3参照)にそれぞれ対応する空間70a,70b,70b,70c,70cを有している。金型70は、結合時に各空間70a,70b,70b,70c,70cが画成されるように、互いに相対形状を有する一対の分割金型から構成されている。
【0092】
金型70を開いた状態(一対の分割金型を互いに離間させた状態)で、パリソン2を
図11(A)に示すようにセットする。金型70の軸方向の両端部の外側には、図示は省略しているが、一対の固定機構が配置されており、パリソン2の両端を、該固定機構にそれぞれ固定することより、パリソン2がその軸心が金型70の軸心に沿った状態でセットされる。
【0093】
次いで、
図11(B)に示すように、非加熱下(たとえば、15〜35℃の雰囲気下)において、パリソン2の両端を固定している一対の固定機構を、互いに離間する方向に移動させることにより、パリソン2に張力が印加され、パリソン2を軸方向に延伸する軸方向延伸を実施する。パリソン2に生じている張力は、張力検出センサにより検出されており、検出された張力に応じて、固定機構の移動速度が制御され、所定の延伸長になったならば、固定機構の移動が停止され、その状態が維持される。
【0094】
次いで、金型70の加熱を開始するとともに、パリソン2の内腔内に窒素ガスを所定の供給(充填)圧力で供給する。窒素ガスの供給は、パリソン2の一端側から行い、他端側を閉塞して行う。ただし、両端側から供給するようにしてもよい。金型70の温度上昇に伴い、窒素ガスの供給圧力は低下するように制御される。これにより、
図11(C)に示すように、パリソン2の大径直胴部2a、遷移部2b,2bおよび小径直胴部2c,2cが周方向に延伸する周方向延伸が実施され、金型70の対応する空間70a,70b,70b,70c,70cに対応する形状に成形される。これにより、直胴部3a、コーン部3b,3bおよびネック部3c,3cを有するバルーンが製造される。
【0095】
上述した実施形態によると、パリソン2の製造工程において、パリソン用チューブ1の直胴部となるべき部分を1度延伸した後に自己の弾性により収縮させる工程を実施している。このような予備的な延伸および収縮を実施することにより、パリソン2の直胴部(大径直胴部2a)の延伸性に関する物性(応力−ひずみ曲線の形状)が変化し、パリソン2が次に延伸される際には、その軸方向に伸び易くなる。このため、このパリソン2を用いて二軸延伸ブロー成形してバルーンを製造する際に行われるその軸方向の延伸(上述した軸方向延伸)に要する時間を短縮することができ、バルーン3の生産性を向上することができる。
【0096】
また、上述した実施形態では、パリソン用チューブ1の予備的な延伸は、直胴部となるべき部分の両端の近傍部分をそれぞれ固定して、該直胴部となるべき部分について行うようにしたので、この予備的な延伸に伴い、パリソン用チューブ1の加熱延伸された部分(延伸部)に影響を与えることがない。したがって、該延伸部の十分な冷却を待つのと並行して、この予備的な延伸を行うことができるので、パリソン2の製造に要する時間が長くなることはない。なお、上述した実施形態では、パリソン2の製造工程において行う直胴部となるべき部分の予備的な延伸は、1回としているが、2回以上行うようにしてもよい。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の実施例について説明する。試験片の母材として、ポリウレタン製の直管状のチューブを250mm(延伸機構53,53が初期位置に設定された状態におけるチャック機構50,50の当接面50a,50a間の寸法)で切断して、複数のパリソン用チューブ1を製造した。チューブの外径は4.0mmであり、肉厚は0.5mmであった。
【0098】
図6Aに示したパリソン製造装置5に、パリソン用チューブ1をセットして、直胴部となるべき部分を固定した後に、パリソン用チューブ1を加熱し、該加熱した部分の延伸を実施した。金型温度は190℃、加熱時間は55秒、延伸速度は140mm/秒、延伸長(ストレッチ長)b2(
図5(C参照))は60mmであった。印加張力(初期張力)は、5Nとした。
【0099】
次いで、自然冷却を実施した。冷却時間は、60秒であった。この冷却と並行して、直胴部となるべき部分の予備的な延伸を実施した。延伸距離は未延伸の直胴部となるべき部分の2倍(すなわち、200mm)、延伸速度は1000mm/分とした。なお、製造中の筐体56内の温度は、30℃に制御した。その後、直胴部となるべき部分の延伸を実施した。同じ条件で、10本の試験片を製造した。
【0100】
比較例として、直胴部となるべき部分の予備的な延伸を実施しなかった以外は、上述した実施例と同様にして、同じく10本の試験片を製造した。
【0101】
各試験片(実施例10本、比較例10本)について、
図11に示したブロー成形機の金型にセットし、軸方向への延伸(軸方向延伸)を実施し、延伸開始から終了(所定の延伸長になった時点)までの時間をそれぞれ計測した。その結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示すように、直胴部となるべき部分の予備的な延伸を行った実施例では、延伸時間の平均値は42秒であり、標準偏差(σ)は13.3秒であったのに対して、予備的な延伸を行わなかった比較例では、延伸時間の平均値は614秒であり、標準偏差(σ)は546.7秒であった。直胴部となるべき部分の予備的な延伸を行った実施例の方が、これを行わない比較例よりも延伸時間が大幅に短縮され、そのバラツキも小さく、優位であることが確認できた。
【0104】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。