(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ガス放出口から前記排出口に向かう第1の方向と、前記第2ガス放出口から前記第2プロセスガスが放出される放出方向とがなす角度が鋭角である、請求項2または3に記載のエピタキシャル成長装置。
前記半導体ウェーハの周縁と、前記第2プロセスガスの前記主流路との間の最短距離が5mm以上40mm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエピタキシャル成長装置。
【背景技術】
【0002】
エピタキシャルウェーハは、半導体ウェーハの表面上にエピタキシャル膜を気相成長させたものである。例えば、結晶の完全性がより要求される場合や抵抗率の異なる多層構造を必要とする場合などには、シリコンウェーハ上に単結晶シリコン薄膜を気相成長(エピタキシャル成長)させてエピタキシャルシリコンウェーハを製造する。
【0003】
エピタキシャルウェーハの製造には、例えば枚葉式エピタキシャル成長装置が用いられる。ここで、一般的な枚葉式エピタキシャル成長装置について、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、エピタキシャル成長装置900は、上部ドーム11、下部ドーム12及びドーム取付体13を含むチャンバ10を有し、該チャンバ10がエピタキシャル膜形成室を区画する。また、ドーム取付体13はサセプタを境界に上部ライナー17および下部ライナー18に区画される。チャンバ10には、その側面の対向する位置の上部ライナー17側に反応ガスG
Pの供給及び排出をそれぞれ行う反応ガス供給口15A及び反応ガス排出口16Aが設けられる。また、チャンバ10の側面の対向する位置の下部ライナー18側に、チャンバ内下部ドーム12の部分を水素雰囲気に保つための雰囲気ガスG
Aの供給及び排出をそれぞれ行う雰囲気ガス供給口15B及び雰囲気ガス排出口16Bが設けられる。
【0004】
また、チャンバ10内には、半導体ウェーハWが載置されるサセプタ20が配置される。サセプタ20は、下方からサセプタサポートシャフト30により支持される。サセプタサポートシャフト30は、アームの先端の3つの支持ピン(図示せず)でサセプタ20の下面外周部を勘合支持する。さらに、サセプタ20には3つの貫通孔(うち、1つは図示せず)が形成され、サセプタサポートシャフト30のアームにも貫通孔が1つずつ形成されている。これらアームの貫通孔及びサセプタの貫通孔には、リフトピン40A,40B,40C(ただし、リフトピン40Bは配置の都合により、
図1の模式断面図では図示されない)が挿通される。また、リフトピン40の下端部は昇降シャフト50に支持される。チャンバ10内に搬入された半導体ウェーハWの支持、この半導体ウェーハWのサセプタ20上への載置、及び、気相エピタキシャル成長後のエピタキシャルウェーハのチャンバ
10外への搬出の際には、昇降シャフト50が昇降することで、リフトピン40がアームの貫通孔及びサセプタの貫通孔と
摺動しながら昇降し、その上端部で半導体ウェーハWの昇降を行う。この枚葉式エピタキシャル成長装置900を用いてエピタキシャル層EPを形成するときには、サセプタ20を回転させつつ、サセプタ20に載置された半導体ウェーハWの上面に反応ガスG
Pを接触させる。また、反応ガスG
pとは、キャリアガスにソースガスを混合させたガスを意味する。エピタキシャル層EPとしてシリコンエピタキシャル層を形成する場合には、ソースガスはトリクロロシランガスなどのシリコンソースガスを用いる。なお、サセプタ20の側面は、一般的に3mm程度の間隙を介して、プリヒートリング60により覆われる。
【0005】
プリヒートリング60は予熱リングまたは予加熱リングとも呼ばれ、反応ガスG
Pがエピタキシャル膜形成室に流入し、反応ガスG
Pが半導体ウェーハWと接触する前に、プリヒートリング60はサセプタ20および反応ガスG
Pを予熱し、成膜前および成膜中の半導体ウェーハWの熱均一性を高めて、エピタキシャル膜の均一性を高める。
【0006】
反応ガス排出口16Aおよび雰囲気ガス排出口16B側での、反応ガスG
Pおよび雰囲気ガスG
Aのガス流の流れに関して
図2を参照して説明する。
図2に示されるように、反応ガスG
Pは主として反応ガス排出口16A側に流れ、雰囲気ガスG
Aは雰囲気ガス排出口16B側に主として流れる。サセプタ20とプリヒートリング60との間の間隙gを介して、反応ガスG
Pの一部が雰囲気ガス排出口16B側に沈み込み得るし、反対に、雰囲気ガスG
Aはその一部が反応ガス排出口16A側に吹き上がり得る。しかしながら、雰囲気ガスG
Aは反応ガスG
pと異なり、基本的には半導体ウェーハWの上面方向に供給することを意図するものではない。
【0007】
ここで、特許文献1には、エピタキシャル成長装置において、一つの平面状表面に対して一つの角度で第一のプロセスガスの角度の付いた注入を供給する噴出口の第一の組と、前記噴出口の第一の組に近接し、第二のプロセスガスの加圧された層流を実質的に前記平面状表面に沿って供給する噴出口の第二の組とを備え、前記平面状表面は、前記噴出口の第二の組に対して垂直に広がる、ガス注入装置が開示されている。
【0008】
特許文献1によれば、こうした2種の噴出口を用いることで、エピタキシャル層成膜時に用いられるプロセスガス間の流れに相互作用を発生させて、エピタキシャル層の厚さ及び組成上の不均一性あるいはそれら両方を改善しようとするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、
図3に示すエピタキシャル成長装置800を用いることで、半導体ウェーハWにエピタキシャル層EPを形成するときの膜厚均一性を良好に制御できることを期待し、実験を試みた。ここで、エピタキシャル成長装置800は、反応ガスGpを含む第1プロセスガスG1を放出する第1放出口15Aを備え、半導体ウェーハWの上面に第1プロセスガスG1を供給する第1ガス供給部15と、半導体ウェーハWの周縁部における第1プロセスガスG1のガス流を制御する第2プロセスガスG2を放出する第2放出口70Aを備え、半導体ウェーハWの上面方向に第2プロセスガスG2を供給する第2ガス供給部70と、を有する。そして、
図3に示すように、半導体ウェーハWを上面視すると、第1プロセスガスG1と第2プロセスガスG2の供給方向は垂直に交差する。
【0011】
エピタキシャル成長装置800を用いれば、第1プロセスガスG1がウェーハ周縁部にも均一に流れるため、エピタキシャル層EPの膜厚均一性を改善できると期待された。しかしながら、実際にエピタキシャル層EPを形成すると、詳細を後述する
図7Bのように「バンプ」と呼ばれるウェーハ周縁部での盛り上がり(ロールアップしてさらにロールオフする)が生じる場合があることが確認された。エピタキシャル周縁部(ウェーハエッジ部)の膜厚は単調減少または単調増加で変化することが求められるため、こうしたバンプの形成は許容できない。
【0012】
また、こうしたバンプの形成は、サセプタ20の回転数や、第1プロセスガスG1をウェーハ中央部および周縁部での供給比率によっても大きく影響を受けることも確認された。そのため、本発明者らは第2プロセスガスG2を用いる際に、エピタキシャル層形成時の膜厚均一性制御のロバスト性を改善する必要があることを新たな課題として認識した。
【0013】
そこで本発明は、エピタキシャル層形成時の膜厚均一性制御のロバスト性を改善することのできるエピタキシャル成長装置を提供する。さらに本発明は、このエピタキシャル成長装置を用いた半導体エピタキシャルウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記諸課題を解決するために鋭意検討した。エピタキシャル成長中には、サセプタ20を回転させることで、そこに載置される半導体ウェーハWも回転させ、プロセスガスG1を半導体ウェーハWの上面に吹き付ける。そのため、サセプタ20および半導体ウェーハWの回転に伴い、第1プロセスガスG1および第2プロセスガスG2のガス流れも変化し、そのことが外乱の要因の一つとして考えられる。さらに検討したところ、
図3に模式的に示すように、サセプタ20に回転方向において、第2プロセスガスG2と排出口16Aとの間で、第1プロセスガスG1の濃度が局所的に高くなる領域が形成され、そのことが上述したバンプが形成される原因となり得ることを見出した。
【0015】
そこで、第2プロセスガスG2を用いた場合に、半導体ウェーハWの上面における濃度分布を均一化するためには、第2プロセスガスG2のガス流の方向を適正化することにより第1プロセスガスG1のガス流を制御することを本発明者らは着想した。そして、第2プロセスガスG2のガス流の方向を適正化したエピタキシャル成長装置を用いることで、上記課題を解決できることを本発明者は見出し、本発明を完成するに到った。
【0016】
即ち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)半導体ウェーハの表面上にエピタキシャル層を気相エピタキシャル成長させるエピタキシャル成長装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部で前記半導体ウェーハを載置するサセプタと、
前記エピタキシャル層を気相エピタキシャル成長させるための反応ガスを含む第1プロセスガスを放出する第1
ガス放出口を備え、前記半導体ウェーハの上面に前記第1プロセスガスを供給する第1ガス供給部と、
前記半導体ウェーハの周縁部における前記第1プロセスガスのガス流を制御する第2プロセスガスを放出する第2
ガス放出口を備え、前記半導体ウェーハの上面方向に前記第2プロセスガスを供給する第2ガス供給部と、
を有し、
前記第1および第2プロセスガスを同時に供給するときの前記第2プロセスガスのガス流の主流路が前記サセプタ上に流入し、かつ、該主流路が前記半導体ウェーハの周縁から離隔するよう、前記第2ガス供給部が配設されることを特徴とするエピタキシャル成長装置。
【0017】
(2)前記エピタキシャル成長装置は前記第1ガス放出口と対向する位置に前記第1プロセスガスを排出する排出口を有し、
前記サセプタの回転方向において、前記第2ガス放出口は前記第1ガス放出口と、前記排出口との間の回転方向上流に配置される、前記(1)に記載のエピタキシャル成長装置。
【0018】
(3)前記第2ガス放出口は、前記サセプタの回転方向における前記第1プロセスガスの上流側に配置される、前記(2)に記載のエピタキシャル成長装置。
【0019】
(4)前記第1ガス放出口から前記排出口に向かう第1の方向と、前記第2ガス放出口から前記第2プロセスガスが放出される放出方向とがなす角度が鋭角である、前記(2)または(3)に記載のエピタキシャル成長装置。
【0020】
(5)前記第1の方向と、前記放出方向とがなす角度が40度から80度の範囲である、前記(4)に記載のエピタキシャル成長装置。
【0021】
(6)前記第1プロセスガスはソースガスおよびキャリアガスを含み、
前記第2プロセスガスは、前記キャリアガスからなる、前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のエピタキシャル成長装置。
【0022】
(7)前記半導体ウェーハの周縁と、前記第2プロセスガスの前記主流路との間の最短距離が5mm以上40mm以下である、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のエピタキシャル成長装置。
【0023】
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載のエピタキシャル成長装置の前記サセプタに半導体ウェーハを載置する工程と、
前記第1プロセスガスおよび前記第2プロセスガスを同時に供給して、前記半導体ウェーハの表面上にエピタキシャル層を気相エピタキシャル成長させる工程と、を含む半導体エピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、エピタキシャル層形成時の膜厚均一性制御のロバスト性を改善することのできるエピタキシャル成長装置を提供する。さらに、本発明によれば、このエピタキシャル成長装置を用いた半導体エピタキシャルウェーハの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に従うエピタキシャル成長装置100について説明する。なお、図中の各構成の縦横比は、説明の便宜上誇張して図示しており、実際とは異なる。また、説明を簡略化するため、各構成に対して適宜ブロック図を用いている。さらに、
図1を参照して既述の、一般的なエピタキシャル成長装置900と重複する構成については、同一符号を用いる。
【0027】
(エピタキシャル成長装置)
本発明の一実施形態に従うエピタキシャル成長装置100は、半導体ウェーハWの表面上にエピタキシャル層EPを気相エピタキシャル成長させて、半導体エピタキシャルウェーハEWを製造するために用いることができるエピタキシャル成長装置である。
図1および
図4を参照して、このエピタキシャル成長装置100を説明する。
【0028】
本実施形態によるエピタキシャル成長装置100は、チャンバ10と、チャンバ10の内部で半導体ウェーハWを載置するサセプタ20と、前記半導体ウェーハの上面に第1プロセスガスG1を供給する第1ガス供給部150と、半導体ウェーハWの上面方向に第2プロセスガスG2を供給する第2ガス供給部170と、を含む。ここで、第1ガス供給部150は、エピタキシャル層EPを気相エピタキシャル成長させるための反応ガスを含む第1プロセスガスG1を放出する第1放出口150Aを備える。また、第2ガス供給部170は、半導体ウェーハWの周縁部における第1プロセスガスG1のガス流を制御する第2プロセスガスG2を放出する第2放出口170Aを備える。なお、
図4には、第1ガス放出口150Aと対向する位置に、第1プロセスガスG1を排出する排出口160を図示している。
【0029】
説明の便宜上、排出口160から第1ガス供給部150に向かい、両者が対向する方向をx軸と定義し、当該y軸と直交し、かつ、第2ガス供給部170側の方向をy軸と定義する。併せて、半導体ウェーハWの厚み方向をz方向(エピタキシャル層EPを形成する側をz軸の正方向とする)とする。さらに、半導体ウェーハWの中心位置をこのxyz空間の原点と定義する。また、y軸と、第2放出口170Aの中心位置とがなす角をθ
1と定義する。さらに、第1ガス放出口150Aから排出口160に向かう第1の方向(すなわち、x軸の負方向)と、第2ガス放出口170Aから第2プロセスガスG2が放出される放出方向とがなす角度を角度θ
2と定義する。
【0030】
さて、第1プロセスガスG1は反応ガスを含み、該反応ガスを用いて半導体ウェーハWの表面にエピタキシャル層EPを形成する。そのため、第1プロセスガスG1は半導体ウェーハWの上面に供給される。本明細書において、反応ガスとは、キャリアガスにソースガスを混合させたガスを意味する。一方、第2プロセスガスG2は、第1プロセスガスG1のガス流を制御するものであるため、半導体ウェーハWの上面に直接接触するように第2プロセスガスG2を供給する必要はない。第2プロセスガスG2が半導体ウェーハWの上面方向に供給されることにより、第2プロセスガスG2は第1プロセスガスG1の流れを制御すすることとなる。
【0031】
ここで、本実施形態によるエピタキシャル成長装置100では、第1および第2プロセスガスG1,G2を同時に供給するときの第2プロセスガスG2のガス流の主流路Fがサセプタ20上に流入し、かつ、該主流路Fが半導体ウェーハWの周縁W
0から離隔するよう、第2ガス供給部170が配設される。
【0032】
図4および
図5A,
図5Bを参照して、第2プロセスガスG2のガス流の主流路Fについて説明する。
図5Aは、本実施形態に従うエピタキシャル成長装置100により、サセプタ20を回転させながら、第1プロセスガスG1および第2プロセスガスG2を流したときの、第2プロセスガスの主流路Fを模式的に記載したものである。ここで言う第2プロセスガスG2のガス流の主流路Fとは、第2プロセスガスの拡散速度が最大となる流れ方向を指す。
図5Bは、
図5Aの構成において、第1プロセスガスG1および第2プロセスガスG2を同時に流したときの、ソースガス(具体的にはトリクロロシラン)の質量濃度分布の一例を示すものである。
図5Bにおける濃色部は、ソースガスの質量濃度が相対的に低い(したがって、第2プロセスガスG2の質量濃度が相対的に高い)領域を示し、淡色部は、ソースガスの質量濃度が相対的に高い(したがって、第2プロセスガスG2の質量濃度が相対的に低い)領域を指す。拡散速度が最大となる流れ方向が
図4、
図5Aに示す主流路Fと一致する。
【0033】
第2プロセスガスG2の主流路Fが半導体ウェーハWの周縁W
0からは離隔しているため、半導体ウェーハWの周縁部における第1プロセスガスG1の質量濃度を比較的均一に拡散させることができる。そのため、エピタキシャル層EPを形成したときの前述したバンプの形成を抑制することができ、また、サセプタの回転数などの外乱要因に対しても、エピタキシャル層形成時の膜厚均一性制御のロバスト性を改善することが可能となる。
【0034】
なお、第2プロセスガスG2の主流路Fを半導体ウェーハWの周縁W
0から離隔させるためには、第2プロセスガスG2を放出する第2放出口170Aの位置および放出方向(ノズル角度と言ってもよい)を適宜調整すればよい。また、主流路Fが半導体ウェーハWの周縁W
0から離隔しているか否かは、例えば有限体積法による数値解析によって判別することが可能である。こうした数値解析は、例えば市販の汎用熱流体解析ソフトなどを用いて、パラメータとして、第1プロセスガスG1の流量、放出起点位置および放出方向、第2プロセスガスG2の流量、放出起点位置および放出方向、サセプタ20の回転方向および回転数、チャンバ空間、ウェーハ表面温度を少なくとも設定して、第1プロセスガスG1または第2プロセスガスG2の拡散を動的に数値解析すればよい。
【0035】
また、本発明効果をより確実に得るためには、
図4に示したように、サセプタ20の回転方向において、第2ガス放出口170Aを、第1ガス放出口150Aと、排出口160との間の回転方向上流(すなわち、−90度<θ
1<90度)に配置することが好ましい。さらにこの目的のため、第2ガス放出口170Aを、サセプタ20の回転方向における第1プロセスガスG1の上流側(すなわち、x軸方向であって、0度<θ
1<90度)に配置することが好ましく、2度<θ
1<15度とすることがさらに好ましい。θ
1の好適例として8度〜12度の範囲を例示できる。このとき、第2ガス放出口170Aを、半導体ウェーハWの中心(すなわち、チャンバ10の中心)から、第1プロセスガスG1の上流側(x軸方向)へ所定距離Lずらして配置することが好ましく、この所定距離Lとしては、半導体ウェーハWの半径Rに対して、1/10〜1/3程度とすることができる。そして、第2ガス放出口170Aの位置を第1プロセスガスG1の上流側へずらした距離Lに応じて、第2ガス放出口170Aの向きを適宜調整すればよい。具体的に説明すると、半導体ウェーハの半径が例えば150mm(直径300mm)の場合、第2ガス放出口170Aの位置を第1プロセスガスG1の上流側へ15mm〜50mm程度ずらせばよい。なお、y方向にずらす距離に関しては、チャンバーの円周上に配置するのであればx方向にずらす距離Lが決まればそれに対応して決定される。
【0036】
また、前述した主流路Fを得るため、第1ガス放出口150Aから排出口160に向かう第1の方向と、第2ガス放出口170Aから第2プロセスガスが放出される放出方向とがなす角度θ
2を鋭角とすると、より確実であり、特に、第1の方向と、上記放出方向とがなす角度θ
2が40度〜80度の範囲内であるとより確実であり、45度〜55度の範囲内であるとさらに確実である。また、この目的のためには、前述した角度θ
1が大きくなるほど、あるいは距離Lが大きくなるほど、角度θ
2を小さくするとより確実である。
【0037】
さらに、本発明による効果を確実に得るためには、半導体ウェーハWの周縁W
0と、第2プロセスガスG1の主流路Fとの間の最短距離l
0を0mm超以上40mm以下とし、さらに、5mm以上とすることが好ましい。最短距離l
0がこの範囲であれば、第1プロセスガスG1の半導体ウェーハ周縁部におけるガス流を確実に制御して、ソースガスの濃度分布を適正化することができる。なお、周縁W
0と、主流路Fとの間の最短距離l
0とは、異なる2曲線間の最短距離を意味する。
【0038】
なお、上述した第2ガス放出口170Aの配設位置は好適態様に過ぎず、第2プロセスガスG2のガス流の主流路Fがサセプタ20上に流入し、かつ、該主流路Fが半導体ウェーハWの周縁W
0から離隔する限りは、第2ガス放出口170Aの配設位置は限定されない。さらに、第2ガス放出口170Aの配設位置とサセプタとの関係は、ガス流の主流路Fがサセプタ上に流入するように第2ガス放出口170Aの配設位置を設ければよく、例えばサセプタの水平位置と同等または、サセプターより高い位置よりサセプタ上へ流入するように設けても良いし、その逆でも構わない。
【0039】
また、本実施形態に従うエピタキシャル成長装置では、半導体ウェーハWとしてシリコンウェーハを用いることが好ましく、シリコンウェーハ上に成膜するエピタキシャル層はシリコンエピタキシャル層であることが好ましい。ただし、本実施形態に従うエピタキシャル成長装置は化合物半導体ウェーハなどにも適用可能であり、ヘテロエピタキシャル成長にも適用可能である。
【0040】
ここで、第1プロセスガスG1は反応ガスとしてソースガスおよびキャリアガスを含み、かつ、この場合、第2プロセスガスG2は、キャリアガスからなることが好ましい。シリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層を形成する場合を例に説明すると、ソースガスとしてジクロロシランまたはトリクロロシランなどのシリコン源を用いることができ、キャリアガスとして水素を用いることができる。第2プロセスガスが第1プロセスガスのキャリアガスと同種であれば、エピタキシャル成長時の反応に影響を及ぼさない点で好ましい。ただし、本実施形態に用いる第1および第2プロセスガスG1,G2はこれらに限定されるものではなく、半導体ウェーハWの基板種およびエピタキシャル層の材料に応じて適宜選択すればよい。さらに、第1プロセスガスG1および第2プロセスガスG2のいずれか一方、または両方は、ドーパントガスを含んでもよい。シリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層を形成する場合であれば、ボロン、リン、ヒ素などを含む化合物ガスを用いることができる。
【0041】
また、前述の主流路Fを得るためには、第1プロセスガスG1のガス流量と、第2プロセスガスG2のガス流量との比を、8:1〜13:1の範囲で設定することが好ましい。なお、ここで言うガス流量とは、複数種の異なるガスを含む場合、合計量でのガス流量を指す。すなわち、第1プロセスガスG1がソースガスおよび水素ガスを含む場合、それらの合計のガス流量を用いて上記比を算出すればよい。
【0042】
以下で、本実施形態に適用可能なエピタキシャル成長装置の各構成の具体的な態様を説明するが、本発明はこれらの具体的な態様に何ら限定されない。
【0043】
<チャンバ>
図1に示すように、チャンバ10は、上部ドーム11、下部ドーム12及びドーム取付体13を含み、このチャンバ10がエピタキシャル膜形成室を区画する。チャンバ10には、上部ライナー17側での側面の対向する位置に反応ガスG
Pの供給及び排出を行う反応ガス供給口15A及び反応ガス排出口16Aが設けられることが一般的である。また、チャンバ10には、下部ライナー18側での側面の交差する位置に雰囲気ガスG
Aの供給及び排出を行う雰囲気ガス供給口15B及び雰囲気ガス排出口16Bが設けられることが一般的である。
図1では簡略化するため、同一断面に反応ガスG
Pおよび雰囲気ガスG
Aの供給口および排出口を図示しており、
図1のように反応ガスG
Pと雰囲気ガスG
Aとが並行するように供給口が設けられることもある。また、ドーム取付体13は、サセプタおよびウェーハと同様に円形であり、第2ノズルが設けられている。ドーム取付体13は、300mmのウェーハを処理するエピタキシャル装置においては、直径が概ね420〜470mmである。
【0044】
<サセプタ>
サセプタ20は、チャンバ10の内部で半導体ウェーハWを載置する円盤状の部材である。サセプタ20は、一般的に周方向に120度等間隔で、表裏面を鉛直方向に貫通する3つの貫通孔を有する。これら貫通孔には、リフトピン40A,40B,40Cがそれぞれ挿通される。サセプタ20は、厚みが概ね2〜8mm程度であり、カーボングラファイト(黒鉛)を母材とし、その表面を炭化ケイ素(SiC:ビッカース硬度2,346kgf/mm
2)でコーティングしたものを使用することができる。サセプタ20の表面には、半導体ウェーハWを収容し載置するザグリ部(図示せず)が形成されている。
【0045】
<サセプタサポートシャフト>
サセプタサポートシャフト30は、チャンバ10内でサセプタ20を下方から支持するものであり、その支柱は、サセプタ20の中心とほぼ同軸上に配置される。
【0046】
<リフトピン>
リフトピン40A,40B,40Cは、サセプタ20の貫通孔にそれぞれ挿通される。リフトピン40A,40B,40Cは、昇降シャフト50によって、上下方向に昇降されることにより、リフトピンの上端部で半導体ウェーハW(半径50%以上の裏面部領域)を支持しながら半導体ウェーハWをサセプタ20上に着脱させることができる。昇降シャフトの動作については後述する。リフトピン40A,40B,40Cの材料には、サセプタ20と同様に、カーボングラファイトおよび/または炭化ケイ素が用いられることが一般的である。
【0047】
<昇降シャフト>
昇降シャフト50は、サセプタサポートシャフト30の主柱を収容する中空を区画し、支柱の先端部でリフトピンの下端部をそれぞれ支持する。昇降シャフト50は石英で構成されることが好ましい。昇降シャフトが、サセプタサポートシャフト30の主柱に沿って上下動することにより、リフトピン40A,40B,40Cを昇降させることができる。
【0048】
<プリヒートリング>
プリヒートリング60は、サセプタ20の側面を間隙を介して覆う。図示しないハロゲンランプから照射された光により加熱され、反応ガスG
Pがエピタキシャル膜形成室に流入し、反応ガスG
Pが半導体ウェーハWと接触する前に、プリヒートリング60は反応ガスG
Pを予熱する。プリヒートリング60はまた、サセプタ20の予熱も行う。このようにして、プリヒートリング60は成膜前および成膜中のサセプタ20および半導体ウェーハWの熱均一性を高める。プリヒートリング60も、サセプタ20と同様に、カーボングラファイト(黒鉛)を母材とし、その表面を炭化ケイ素(SiC:ビッカース硬度2,346kgf/mm
2)でコーティングしたものを使用することができる。
【0049】
<加熱ランプ>
加熱ランプは、チャンバ10の上側領域および下側領域に配置され、一般に、昇降温速度が速く、温度制御性に優れた、ハロゲンランプや赤外ランプが用いられる。
【0050】
なお、チャンバ内に導入する雰囲気ガスとしては水素ガスを用いることが好ましい。雰囲気ガスが半導体ウェーハWの上面に供給するものではないことは、前述のとおりである。
【0051】
(半導体エピタキシャルウェーハの製造方法)
また、本発明の一実施形態に従う半導体エピタキシャルウェーハの製造方法は、前述のエピタキシャル成長装置の前記サセプタに半導体ウェーハを載置する工程と、前記第1プロセスガスおよび前記第2プロセスガスを同時に供給して、前記半導体ウェーハの表面上にエピタキシャル層を気相エピタキシャル成長させる工程と、を含む。この製造方法により、エピタキシャル層形成時の膜厚均一性制御のロバスト性を改善することができる。
【0052】
また、半導体ウェーハWの表面にエピタキシャル層を形成する際の成長条件は一般的なものとすることができる。シリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層を形成する場合であれば、例えば、水素をキャリアガスとして、ジクロロシラン、トリクロロシランなどのソースガスを第1プロセス
ガス
としてエピタキシャル成長炉内に導入し、使用するソースガスによっても成長温度は異なるが、概ね1000〜1200℃温度範囲の温度でCVD法により半導体ウェーハ上にエピタキシャル成長させることができる。第2プロセスガスについては、前述のとおりであり、水素を用いることが好ましい。また、形成するエピタキシャル層EPの厚さは1〜15μmの範囲内とすることができる。
【実施例】
【0053】
次に、本発明の効果をさらに明確にするため、以下の実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではない。
【0054】
(実施例1)
図4に示すエピタキシャル成長装置を用いて、シリコンウェーハ表面にシリコンエピタキシャル層を形成する場合の、第2プロセスガスG2の主流路Fおよび形成されるエピタキシャル層の膜厚分布を数値解析した。第2プロセスガスG2の供給口170Aを、上流側にL:40mmの位置に設置し、角度θ
1を10度とし、角度θ
2を50度とした。
【0055】
また、本実施例1では、第1プロセスガスG1としてトリクロロシラン(TCS)および水素ガスを導入し、第2プロセスガスG2として水素ガスを導入した。第1プロセスガスG1の合計流量を84slm(H
2:75slm、TCS:9slm)とし、第2プロセスガスG2の流量を7slmとした。また、サセプタ回転数を70rpm、サセプター上のウェーハ温度を1130℃とした。
【0056】
第1プロセスガスの質量濃度分布の数値解析にあたっては、TCSの質量濃度分布を計算し、パラメータとして第1プロセスガスG1の流量、放出起点位置および放出方向、第2プロセスガスG2の流量、放出起点位置および放出方向、サセプタ20の回転方向および回転数、チャンバ空間、ウェーハ表面温度、及び炉内圧力(常圧)を設定した。そして、得られた質量濃度分布から主流路Fを求めた。また、エピタキシャル成長処理の数値解析としては、シリコンソースとしてTCSを使用し、エピタキシャル成長速度分布を求めた。
【0057】
図6Aに、数値解析結果による主流路Fを図示する。
図6Aに示されるとおり、主流路Fは常時シリコンウェーハの周縁Woからは離隔している。上記数値解析では、最短距離l
0は25mmであった。この場合に得られるエピタキシャル層のウェーハ周縁部における膜厚分布の計算結果を
図7Aに示す。
図7Aより、エピタキシャル膜厚がロールアップのみしていることが確認できる。
【0058】
(比較例1)
図3の構成、すなわち、第2プロセスガスG2の供給口170Aの方向をウェーハ中心に向くようにし、第1プロセスガスG1の上流側の移動距離を0(ゼロ)とした以外は、実施例1と同様にして主流路Fおよび形成されるエピタキシャル層の膜厚分布を数値解析した。
【0059】
比較例1による結果を、実施例1と同様にして
図6B、
図7Bに示す。
図6Bより、比較例1では主流路Fが半導体ウェーハWに流入していることが確認できる。そして、
図7Bより、バンプとよばれるウェーハ周縁部でのエピタキシャル層の盛り上がり(ロールアップ後、ロールオフする)が形成されたことが確認できる。
【0060】
さらに、実施例1および比較例1で条件1としてサセプタ回転数70rpm、第1プロセスガスの配分比5:1としていた(条件1)ところ、サセプタ回転数32rpm、第1プロセスガスの配分比1:1とした場合(条件2)でも数値解析を行った。さらに、条件1,2のそれぞれにおいて、第2プロセスガスの流量を3slm,5slm,7slmとした場合の、径方向140mmおよび148mmの位置間でのエピタキシャル層の膜厚差を
図8A(実施例1),
図8B(比較例1)にそれぞれ示す。
【0061】
図8A,
図8Bより、比較例1では、第2プロセスガスの水素ガスの流量増加に伴い、エピタキシャルウェーハの外周膜厚の応答性が単調増加ではなく、ノイズ影響が大きいことが確認される。これに対して実施例1では、第2プロセスガスの水素ガスの流量増加に伴い、エピタキシャルウェーハの外周膜厚の応答性が単調増加であることが確認できたため、ノイズ影響が小さく、ロバスト性を改善できることが確認された。