(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対のガラス板を構成する2枚のガラス板のうち、一方のガラス板Aの共振周波数をQa、共振振幅の半値幅をwa、他方のガラス板Bの共振周波数をQb、共振振幅の半値幅をwbとした時に、下記[式1]の関係を満たす、請求項1〜4のいずれかに記載のガラス板構成体。
(wa+wb)/4<|Qa−Qb|・・・[式1]
前記液体層がプロピレングリコール、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜7のいずれかに記載のガラス板構成体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スピーカー用の振動板として、二枚のガラス板の間に厚さ0.5mmのポリブチル系のポリマー層を有する合せガラスが知られている(非特許文献1)。しかし当該振動板は、高周波数領域での再生は困難なものであった。
【0007】
そこで本発明では、良好な音響性能を有するガラス板構成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研鑽を積んだ結果、所定のガラス板構造体とすることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
<1> 25℃における損失係数が1×10
−2以上、かつ、板厚方向の縦波音速値が5.5×10
3m/s以上である、ガラス板構成体。
<2> 2枚以上のガラス板を含み、前記ガラス板のうち少なくとも一対のガラス板の間に液体層を含む、前記<1>に記載のガラス板構成体。
<3> 前記液体層の厚みが、
前記一対のガラス板の合計の厚みが1mm以下の場合は、前記一対のガラス板の合計の厚みの1/10以下であり、
前記一対のガラス板の合計の厚みが1mm超の場合は、100μm以下である、前記<2>に記載のガラス板構成体。
<4> 前記液体層の25℃における粘性係数が1×10
−4〜1×10
3Pa・sであり、かつ、25℃における表面張力が15〜80mN/mである、前記<2>又は<3>に記載のガラス板構成体。
<5> 前記ガラス板のうち少なくとも一対のガラス板の比弾性率が共に、2.5×10
7m
2/s
2以上である、前記<2>〜<4>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<6> 前記一対のガラス板を構成する2枚のガラス板のうち、一方のガラス板Aの共振周波数をQa、共振振幅の半値幅をwa、他方のガラス板Bの共振周波数をQb、共振振幅の半値幅をwbとした時に、下記[式1]の関係を満たす、前記<2>〜<5>のいずれかに記載のガラス板構成体。
(wa+wb)/4<|Qa−Qb|・・・[式1]
<7> 前記一対のガラス板を構成する2枚のガラス板の質量比が0.8〜1.25である、前記<2>〜<6>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<8> 前記一対のガラス板を構成する2枚のガラス板の厚みが、それぞれ0.01〜15mmである、前記<2>〜<7>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<9> 前記液体層がプロピレングリコール、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む前記<2>〜<8>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<10> 物理強化ガラス板および化学強化ガラス板の少なくともいずれか一方のガラス板を含む、前記<1>〜<9>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<11> 可視光透過率が60%以上である、前記<1>〜<10>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<12> 3枚以上のガラス板を含む、前記<2>〜<11>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<13> 前記ガラス板のうち少なくとも1枚、および、前記液体層の少なくともいずれか一方が着色された、前記<2>〜<12>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<14> 前記液体層に蛍光材料を含む、前記<2>〜<13>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<15> ガラス板構成体の少なくとも一方の最表面にコーティング又はフィルムが形成された、前記<1>〜<14>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<16> ガラス板構成体が曲面形状である、前記<1>〜<15>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<17> 前記液体層の屈折率と、前記一対のガラス板の屈折率との差がいずれも0.2以下である、前記<2>〜<16>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<18> ガラス板構成体の外周端面の少なくとも一部が、ガラス板構成体の振動を妨げない部材でシールされた、前記<1>〜<17>のいずれかに記載のガラス板構成体。
<19> 2枚以上のガラス板を含み、前記ガラス板のうち少なくとも一対のガラス板の間に液体層を含み、
前記液体層の厚みが、
前記一対のガラス板の合計の厚みが1mm以下の場合は、前記一対のガラス板の合計の厚みの1/10以下であり、
前記一対のガラス板の合計の厚みが1mm超の場合は、100μm以下である、ガラス板構成体。
<20> 前記<1>〜<19>のいずれかに記載のガラス板構成体および、前記ガラス板構成体の片面または両面に設置された少なくとも1つの振動子を含む振動板。
<21> 前記<1>〜<19>のいずれかに記載のガラス板構成体または前記<20>に記載の振動板を用いた開口部材。
<22> 前記<1>〜<19>のいずれかに記載のガラス板構成体を用いた磁気記録媒体用ガラス基板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スピーカーやマイクロフォン、イヤフォン、モバイル機器等に用いられる振動板用途等において、低音域から高周波域にかけて音の再現性が良好となる。また、建築・車両用開口部材用途等において、高い振動減衰能を利用して共振を生じにくくし、共振に起因する異音の発生を抑制することができる。さらには、磁気記録媒体用ガラス基板用途等において、制振効果を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態に基づいて、本発明の詳細およびその他の特徴について説明する。なお、以下の図面において、同一又は対応する部材又は部品には、同一又は対応する符号を付すことにより、重複する説明を省略する。また、図面は、特に指定しない限り、部材又は部品間の相対比を示すことを目的としない。よって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、適宜選択可能である。
【0013】
また本明細書において数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0014】
<ガラス板構成体>
本発明に係るガラス板構成体は、25℃における損失係数が1×10
−2以上、かつ、板厚方向の縦波音速値が5.5×10
3m/s以上であることを特徴とする。なお、損失係数が大きいとは振動減衰能が大きいことを意味する。
【0015】
損失係数とは、半値幅法により算出したものを用いる。材料の共振周波数f、振幅hであるピーク値から−3dB下がった点(すなわち、最大振幅−3[dB]における点)の周波数幅をWとしたときに、{W/f}で表される値を損失係数と定義する。
共振を抑えるには、損失係数を大きくすればよく、すなわち、振幅hに対し相対的に周波数幅Wは大きくなり、ピークがブロードとなることを意味する。
【0016】
損失係数は材料等の固有の値であり、例えばガラス板単体の場合にはその組成や相対密度等によって異なる。なお、損失係数は共振法などの動的弾性率試験法により測定することができる。
【0017】
縦波音速値とは、振動板中で縦波が伝搬する速度をいう。縦波音速値およびヤング率は、日本工業規格(JIS−R1602−1995)に記載された超音波パルス法により測定することができる。
【0018】
本発明に係るガラス板構成体において、高い損失係数および高い縦波音速値を得るための具体的な構成として、2枚以上のガラス板を含み、前記ガラス板のうち少なくとも一対のガラス板の間に所定の液体層を含むことが好ましい。
【0019】
(液体層)
本発明に係るガラス板構成体は、少なくとも一対のガラス板の間に流体からなる層(液体層)を設けることで、高い損失係数を実現することができる。中でも、液体層の粘性や表面張力を好適な範囲にすることで、より損失係数を高くすることができる。
これは、一対のガラス板を粘着層を介して設ける場合とは異なり、前記一対のガラス板が固着せず、各々のガラス板としての振動特性を持ち続けることに起因するものと考えられる。
【0020】
液体層は25℃における粘性係数が1×10
−4〜1×10
3Pa・sであり、かつ、25℃における表面張力が15〜80mN/mであることが好ましい。粘性が低すぎると振動を伝達しにくくなり、高すぎると液体層の両側に位置する一対のガラス板同士が固着して一枚のガラス板としての振動挙動を示すようになることから、共振振動が減衰されにくくなる。また、表面張力が低すぎるとガラス板間の密着力が低下し、振動を伝達しにくくなる。表面張力が高すぎると、液体層の両側に位置する一対のガラス板同士が固着しやすくなり、一枚のガラス板としての振動挙動を示すようになることから、共振振動が減衰されにくくなる。
【0021】
液体層の25℃における粘性係数は1×10
−3Pa・s以上がより好ましく、1×10
−2Pa・s以上がさらに好ましい。また、1×10
2Pa・s以下がより好ましく、1×10Pa・s以下がさらに好ましい。
液体層の25℃における表面張力は20mN/m以上がより好ましく、30mN/m以上がさらに好ましい。
【0022】
液体層の粘性係数は回転粘度計などにより測定することができる。
液体層の表面張力はリング法などにより測定することができる。
【0023】
液体層は、蒸気圧が高すぎると液体層が蒸発してガラス板構成体としての機能を果たさなくなるおそれがある。そのため、液体層は、25℃、1atmにおける蒸気圧が1×10
4Pa以下が好ましく、5×10
3Pa以下がより好ましく、1×10
3Pa以下がさらに好ましい。また、蒸気圧が高い場合には、液体層が蒸発しないようにシール等を施してもよいが、このとき、シール材によりガラス板構成体の振動を妨げないようにする必要がある。
【0024】
液体層の厚みは薄いほど、高剛性の維持および振動伝達の点から好ましい。具体的には、前記一対のガラス板の合計の厚みが1mm以下の場合は、前記液体層の厚みは、前記一対のガラス板の合計の厚みの1/10以下が好ましく、1/20以下がより好ましく、1/30以下がさらに好ましく、1/50以下がよりさらに好ましく、1/70以下がことさらに好ましく、1/100以下が特に好ましい。
また前記一対のガラス板の合計の厚みが1mm超の場合は、前記液体層の厚みは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、20μm以下がよりさらに好ましく、15μm以下がことさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。
液体層の厚みの下限は、製膜性および耐久性の点から0.01μm以上が好ましい。
【0025】
液体層は化学的に安定であり、液体層と液体層の両側に位置する一対のガラス板とが、反応しないことが好ましい。
化学的に安定とは、例えば光照射により変質(劣化)が少ないものであったり、少なくとも−20〜70℃の温度領域で凝固、気化、分解、変色、ガラスとの化学反応等が生じないものを意味する。
【0026】
液体層の成分としては、具体的には、水、オイル、有機溶剤、液状ポリマー、イオン性液体およびそれらの混合物等が挙げられる。
より具体的には、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ストレートシリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル)、変性シリコーンオイル、アクリル酸系ポリマー、液状ポリブタジエン、グリセリンペースト、フッ素系溶剤、フッ素系樹脂、アセトン、エタノール、キシレン、トルエン、水、鉱物油、およびそれらの混合物、等が挙げられる。中でも、プロピレングリコール、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、プロピレングリコールまたはシリコーンオイルを主成分とすることがより好ましい。
【0027】
上記の他に、粉体を分散させたスラリーを液体層として使用することもできる。損失係数の向上といった観点からは、液体層は均一な流体であることが好ましいが、ガラス板構成体に着色や蛍光等といった意匠性や機能性を付与する場合には、該スラリーは有効である。
液体層における粉体の含有量は0〜10体積%が好ましく、0〜5体積%がより好ましい。
粉体の粒径は沈降を防ぐ観点から10nm〜1μmが好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
【0028】
また、意匠性・機能性付与の観点から、液体層に蛍光材料を含んでもよい。蛍光材料を粉体として分散させたスラリー状の液体層でも、蛍光材料を液体として混合させた均一な液体層でもよい。これにより、ガラス板構成体に光の吸収および発光といった光学的機能を付与することができる。
【0029】
(ガラス板)
本発明に係るガラス板構成体(符号“10”)は、前記液体層(符号“16”)を両側から挟むように、少なくとも一対のガラス板を設けることが好ましい(
図1)。一方のガラス板をガラス板A(符号“11”)、他方をガラス板B(符号“12”)とすると、ガラス板Aが共振した場合に、液体層の存在により、ガラス板Bが共振しない、又は、ガラス板Bの共振の揺れを減衰することができることから、ガラス板構成体は、ガラス板単独の場合と比べて損失係数を高くすることができる。
【0030】
前記一対のガラス板を構成する2枚のガラス板のうち、一方のガラス板Aと他方のガラス板Bとの共振周波数のピークトップの値は異なることが好ましく、共振周波数の範囲が重なっていないものがより好ましい。ただし、ガラス板Aおよびガラス板Bの共振周波数の範囲が重複していたり、ピークトップの値が同じであっても、液体層の存在によって、一方のガラス板が共振しても、他方のガラス板の振動が同期しないことで、ある程度共振が相殺されることから、ガラス板単独の場合に比べて高い損失係数を得ることができる。
【0031】
すなわち、ガラス板Aの共振周波数(ピークトップ)をQa、共振振幅の半値幅をwa、他方のガラス板Bの共振周波数(ピークトップ)をQb、共振振幅の半値幅をwbとした時に、下記[式1]の関係を満たすことが好ましい。
(wa+wb)/4<|Qa−Qb|・・・[式1]
上記[式1]における左辺の値が大きくなるほどガラス板Aとガラス板Bとの共振周波数の差異(|Qa−Qb|)が大きくなり、高い損失係数が得られるようになることから好ましい。
【0032】
そのため、下記[式1’]を満たすことがより好ましく、下記[式1”]を満たすことがより好ましい。
(wa+wb)/2<|Qa−Qb|・・・[式1’]
(wa+wb)/1<|Qa−Qb|・・・[式1”]
なお、ガラス板の共振周波数(ピークトップ)および共振振幅の半値幅は、ガラス板構成体における損失係数と同様の方法で測定することができる。
【0033】
ガラス板Aおよびガラス板Bは、質量差が小さいほど好ましく、質量差がないことがより好ましい。ガラス板の質量差がある場合、軽い方のガラス板の共振は重い方のガラス板で抑制することはできるが、重い方のガラス板の共振を軽い方のガラス板で抑制することは困難である。すなわち、質量比に偏りがあると、慣性力の差異により原理的に共振振動を互いに打ち消せなくなるためである。
【0034】
(ガラス板A/ガラス板B)で表されるガラス板Aおよびガラス板Bの質量比は0.8〜1.25(8/10〜10/8)が好ましく、0.9〜1.1(9/10〜10/9)がより好ましく、1.0(10/10)がさらに好ましい。
【0035】
ガラス板A、ガラス板Bの厚みはいずれも薄いほど、ガラス板同士が液体層を介して密着しやすく、また、ガラス板を少ないエネルギーで振動させることができる。そのため、スピーカー等の振動板用途の場合には、ガラス板の厚みは薄いほど好ましい。具体的にはガラス板A、ガラス板Bの板厚がそれぞれ15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、5mm以下がさらに好ましく、3mm以下がさらにより好ましく、1.5mm以下が特に好ましく、0.8mm以下が特により好ましい。一方、薄すぎるとガラス板の表面欠陥の影響が顕著になりやすく割れが生じやすくなったり、強化処理しにくくなることから、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましい。
【0036】
また、共振現象に起因する異音の発生を抑制した建築・車両用開口部材用途においては、ガラス板A、ガラス板Bの板厚はそれぞれ0.5〜15mmが好ましく、0.8〜10mmがより好ましく、1.0〜8mmがさらに好ましい。
防振効果を高めた磁気記録媒体用ガラス基板用途においては、ガラス板A、ガラス板Bの板厚はそれぞれ0.3〜1.2mmが好ましく、0.4〜1.0mmがより好ましく、0.5〜0.8mmがさらに好ましい。
【0037】
ガラス板Aおよびガラス板Bの少なくともいずれか一方のガラス板は、損失係数が大きい方が、ガラス板構成体としての振動減衰も大きくなり、振動板用途として好ましい。具体的には、ガラス板の25℃における損失係数は1×10
−4以上が好ましく、3×10
−4以上がより好ましく、5×10
−4以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、生産性や製造コストの観点から5×10
−3以下であることが好ましい。また、ガラス板Aおよびガラス板Bの両方が、上記損失係数を有することがより好ましい。
なお、ガラス板の損失係数は、ガラス板構成体における損失係数と同様の方法で測定することができる。
【0038】
ガラス板Aおよびガラス板Bの少なくともいずれか一方のガラス板は、板厚方向の縦波音速値が高い方が高周波領域の音の再現性が向上することから、振動板用途として好ましい。具体的には、ガラス板の縦波音速値が5.5×10
3m/s以上が好ましく、5.7×10
3m/s以上がより好ましく、6.0×10
3m/s以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、ガラス板の生産性や原料コストの観点から7.0×10
3m/s以下が好ましい。また、ガラス板Aおよびガラス板Bの両方が、上記音速値を満たすことがより好ましい。
なお、ガラス板の音速値は、ガラス板構成体における縦波音速値と同様の方法で測定することができる。
【0039】
ガラス板Aおよびガラス板Bの組成は特に限定されないが、例えば下記範囲であることが好ましい。
SiO
2:40〜80質量%、Al
2O
3:0〜35質量%、B
2O
3:0〜15質量%、MgO:0〜20質量%、CaO:0〜20質量%、SrO:0〜20質量%、BaO:0〜20質量%、Li
2O:0〜20質量%、Na
2O:0〜25質量%、K
2O:0〜20質量%、TiO
2:0〜10質量%、かつ、ZrO
2:0〜10質量%。但し上記組成がガラス全体の95質量%以上を占める。
【0040】
ガラス板Aおよびガラス板Bの組成はより好ましくは、下記範囲である。
SiO
2:55〜75質量%、Al
2O
3:0〜25質量%、B
2O
3:0〜12質量%、MgO:0〜20質量%、CaO:0〜20質量%、SrO:0〜20質量%、BaO:0〜20質量%、Li
2O:0〜20質量%、Na
2O:0〜25質量%、K
2O:0〜15質量%、TiO
2:0〜5質量%、かつ、ZrO
2:0〜5質量%。但し上記組成がガラス全体の95質量%以上を占める。
【0041】
ガラス板A、ガラス板Bの比重はいずれも小さいほど、少ないエネルギーでガラス板を振動させることができる。具体的にはガラス板A、ガラス板Bの比重がそれぞれ2.8以下が好ましく、2.6以下がより好ましく、2.5以下がさらにより好ましい。下限は特に限定されないが、2.2以上であることが好ましい。
ガラス板A、ガラス板Bのヤング率を密度で除した値である比弾性率は、いずれも大きいほど、ガラス板の剛性を高くすることができる。具体的にはガラス板A、ガラス板Bの比弾性率がそれぞれ2.5×10
7m
2/s
2以上が好ましく、2.8×10
7m
2/s
2以上がより好ましく、3.0×10
7m
2/s
2以上がさらにより好ましい。上限は特に限定されないが、4.0×10
7m
2/s
2以下であることが好ましい。
【0042】
(ガラス板構成体)
ガラス板構成体における損失係数が大きいほど振動減衰が大きくなることから好ましく、本発明に係るガラス板構成体の25℃における損失係数は1×10
−2以上であり、好ましくは2×10
−2以上、より好ましくは5×10
−2以上である。
また、ガラス板構成体の板厚方向の縦波音速値は、音速が速いほど振動板とした際に高周波音の再現性が向上することから、好ましくは5.5×10
3m/s以上であり、より好ましくは5.7×10
3m/s以上、さらにより好ましくは6.0×10
3m/s以上である。上限は特に限定されないが、7.0×10
3m/s以下が好ましい。
【0043】
ガラス板構成体の直線透過率が高いと、透光性の部材としての適用が可能となる。そのため、日本工業規格(JIS R3106−1998)に準拠して求められた可視光透過率が60%以上であることが好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
なお、透光性の部材としては、例えば透明スピーカー、透明マイクロフォン、建築、車両用の開口部材等の用途が挙げられる。
【0044】
ガラス板構成体の透過率を高めるために、屈折率を整合させることも有用である。すなわち、ガラス板構成体を構成するガラス板と液体層との屈折率は近いほど、界面における反射および干渉が防止されることから好ましい。中でも液体層の屈折率と液体層に接する一対のガラス板の屈折率との差がいずれも0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.01以下であることがさらにより好ましい。
【0045】
ガラス板構成体を構成するガラス板の少なくとも1枚および液体層の少なくともいずれか一方に着色することも可能である。これは、ガラス板構成体に意匠性を持たせたい場合や、IRカット、UVカット、プライバシーガラス等の機能性を持たせたい場合に有用である。
【0046】
ガラス板構成体を構成するガラス板は2枚以上であればよいが、3枚以上のガラス板を用いてもよい(
図2)。2枚の場合はガラス板Aおよびガラス板Bが、3枚以上の場合は例えばガラス板A、ガラス板Bおよびガラス板C(符号“13”)が、すべて異なる組成のガラス板を用いてもよく、すべて同じ組成のガラス板を用いてもよく、同じ組成のガラス板と異なる組成のガラス板とを組み合わせて用いてもよい。中でも、異なる組成からなる2種類以上のガラス板を用いることが振動減衰性の点から好ましく用いられる。
ガラス板の質量や厚みについても同様に、すべて異なっても、すべて同一でも、一部が異なっていてもよい。中でも、構成するガラス板の質量が全て同一であることが振動減衰性の点から好ましく用いられる。
【0047】
ガラス板構成体を構成するガラス板の少なくとも1枚に物理強化ガラス板や化学強化ガラス板を用いることもできる。これは、ガラス板構成体の破壊を防ぐのに有用である。ガラス板構成体の強度を高めたい場合には、ガラス板構成体の最表面に位置するガラス板を物理強化ガラス板又は化学強化ガラス板とすることが好ましく、構成するガラス板の全てが物理強化ガラス板又は強化ガラス板であることがより好ましい。
【0048】
また、ガラス板として、結晶化ガラスや分相ガラスを用いることも、縦波音速値や強度を高める点から有用である。特に、ガラス板構成体の強度を高めたい場合には、ガラス板構成体の最表面に位置するガラス板を結晶化ガラス又は分相ガラスとすることが好ましい。
【0049】
ガラス板構成体の少なくとも一方の最表面に本発明の効果を損なわない範囲でコーティング(符号“21”)やフィルム(符号“22”)を形成してもよい(
図3)。コーティングの施工やフィルムの貼付は例えば傷付き防止等に好適である。
コーティングやフィルムの厚みは、表層のガラス板の板厚の1/5以下であることが好ましい。コーティングやフィルムには従来公知の物を用いることができるが、コーティングとしては例えば撥水コーティング、親水コーティング、滑水コーティング、撥油コーティング、光反射防止コーティング、遮熱コーティング、等が挙げられる。また、フィルムとしては例えばガラス飛散防止フィルム、カラーフィルム、UVカットフィルム、IRカットフィルム、遮熱フィルム、電磁波シールドフィルム等が挙げられる。
【0050】
ガラス板構成体の形状は、用途によって適宜設計することができ、平面板状であっても曲面形状でもよい。
低周波数帯域の出力音圧レベルを上げるため、ガラス板構成体にエンクロージャーまたはバッフル板を付与した構造とすることも出来る。エンクロージャーまたはバッフル板の材質は特に限定されないが、本発明のガラス板構成体を用いることが好ましい。
【0051】
ガラス板構成体の少なくとも一方の最表面に本発明の効果を損なわない範囲で、フレーム(枠)(符号“30”)を設けてもよい(
図4、
図5)。フレームは、ガラス板構成体の剛性を向上させたい場合、あるいは曲面形状を保持したい場合等に有用である。フレームの材質としては従来公知の物を用いることができるが、例えばAl
2O
3、SiC、Si
3N
4、AlN、ムライト、ジルコニア、イットリア、YAG等のセラミックスおよび単結晶材料、鋼、アルミニウム、チタン、マグネシウム、炭化タングステン等の金属および合金材料、FRP等の複合材料、アクリル、ポリカーボネート等の樹脂材料、ガラス材料、木材等を用いることが出来る。
用いるフレームの重量は、ガラス板の重量の20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
なお、ガラス板構成体とフレームとの間にはシール材(符号“31”)を有することもでき、液体層のフレームからの漏れを防止することができる。
【0052】
ガラス板構成体の外周端面の少なくとも一部を、ガラス板構成体の振動を妨げない部材でシールしてもよい(
図6)。シール材(符号“31”)としては、伸縮性の高いゴム、樹脂、ゲル等を用いることが出来る。
【0053】
シール材用の樹脂に関しては、アクリル系、シアノアクリレート系、エポキシ系、シリコーン系、ウレタン系、フェノール系等を用いることができる。硬化方法としては一液型、二液混合型、加熱硬化、紫外線硬化、可視光硬化等が挙げられる。
熱可塑性樹脂(ホットメルトボンド)を用いることも出来る。例として、エチレン酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、合成ゴム系、アクリル系、ポリウレタン系が挙げられる。
ゴムに関しては、例えば天然ゴム、合成天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロン)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン・酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム(チオコール)、水素化ニトリルゴムを用いることが出来る。
シール材の厚さtは、薄すぎると十分な強度が確保されず、厚すぎると振動の支障となる。ゆえにシール材の厚さは10μm以上かつガラス構成体の合計厚みの5倍以下であることが好ましく、50μm以上かつガラス構成体の合計厚みより薄いことがより好ましい。
【0054】
ガラス板構成体のガラス板と液体層との界面における剥離防止等のために、向かい合うガラス板の面の少なくとも一部に本発明の効果を損なわない範囲で上記のシール材31を塗布することができる(
図7、
図8)。この場合、シール材塗布部の面積は振動の支障とならないように液体層の面積の20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
【0055】
また、シール性能を向上するために、ガラス板のエッジ部分を適切な形状に加工することも出来る。例えば少なくとも一方のガラス板の端部をC面取り(ガラス板の断面形状が台形形状)またはR面取り(ガラス板の断面形状が略円弧状)することにより、シール材とガラスとの接触面積を増大させ、シール材とガラスとの接着強度を向上させることが出来る(
図9)。
【0056】
また、本発明は、2枚以上のガラス板を含み、前記ガラス板のうち少なくとも一対のガラス板の間に液体層を含み、前記液体層の厚みが、前記一対のガラス板の合計の厚みが1mm以下の場合は、前記一対のガラス板の合計の厚みの1/10以下であり、前記一対のガラス板の合計の厚みが1mm超の場合は、100μm以下である、ガラス板構成体にも関する。
このガラス板構成体における好ましい態様は、上述したガラス板構成体と同様である。
【0057】
(振動板、開口部材、磁気記録媒体用ガラス基板)
本発明は、上記ガラス板構成体および振動子を含む振動板、上記ガラス板構成体を用いた開口部材、および、上記ガラス板構成体を用いた磁気記録媒体用ガラス基板にも関する。
【0058】
振動板としては、例えば、ガラス板構成体の片面または両面に1個以上の振動素子や振動検出素子(振動子)を設置することにより、スピーカー、マイクロフォン、イヤフォン、モバイル機器等の筺体振動体や筺体スピーカーとして機能させることができる。出力音圧レベルを向上させるためには2個以上の振動素子をガラス構成体の両面に設置することが望ましい。一般に振動板に対する振動子の位置は構成体の中央部であることが望ましいが、本材料は高音速かつ高減衰性能を有するため、振動子をガラス構成体の端部に設置してもよい。本発明に係る振動板を用いることにより、従来再現が難しかった高周波領域の音の再生が容易に可能となる。また、ガラス板構成体の大きさ、形状、色調等における自由度が高く、意匠性を施すことが可能であることから、デザイン性にも優れた振動板を得ることができる。また、ガラス板構成体表面または近傍に設置した集音用マイクロフォンまたは振動検出器で音声または振動をサンプリングし、これと同位相あるいは逆位相の振動をガラス板構成体に発生させることによりサンプリングした音声または振動を増幅したり打ち消したりすることができる。このとき、上記のサンプリング点における音声または振動の特性が、ガラス構成体に伝搬するまでの間に或る音響伝達関数に基づいて変化する場合、および、ガラス構成体に音響変換伝達関数が存在する場合には、制御フィルタを用いて制御信号の振幅と位相とを補正することにより、振動を精度よく増幅したりキャンセルしたりすることが可能となる。上記のような制御フィルタを構成する際、例えば最小二乗法(LMS)アルゴリズムを用いることが出来る。
より具体的な構成として、例えば、複層ガラスの全部または少なくとも1枚のガラス板を本発明のガラス構成体とし、制御対象の音波振動が流入する側の板の振動レベルまたはガラス間に存在する空間の音圧レベルをサンプリングし、これを制御フィルタにより適切に信号補正した上で音波振動が流出する側に設置されたガラス構成体上の振動素子に出力する構造とすることが出来る。
本振動板の用途としては、例えば電子機器用部材として、フルレンジスピーカー、15Hz〜200Hz帯の低音再生用スピーカー、10kHz〜100kHz帯の高音再生スピーカー、振動板の面積が0.2m
2以上の大型スピーカー、振動板の面積が3cm
2以下の小型スピーカー、平面型スピーカー、円筒型スピーカー、透明スピーカー、スピーカーとして機能するモバイル機器用カバーガラス、TVディスプレイ用カバーガラス、映像信号と音声信号とが同一の面から生じるディスプレイ、ウェアラブルディスプレイ用スピーカー、電光表示器、照明器具、等に利用することが出来る。また、ヘッドフォン、イヤフォンまたはマイク用の振動板、振動センサーとして用いることが出来る。
車両等の輸送機械の内装用振動部材として、車載・機載スピーカーとして用いることができる。例えばスピーカーとして機能するサイドミラー、サンバイザー、インパネ、ダッシュボード、天井、ドア、その他内装パネルとすることが出来る。これらをマイクロフォンおよびアクティブノイズコントロール用振動板として機能させることもできる。
その他の用途として、超音波発生装置用振動板、超音波モーター用スライダ、低周波発生装置、液中に音波振動を伝搬させる振動子、およびそれを用いた水槽並びに容器、振動素子、振動検出素子、振動減衰装置用のアクチュエータ用材料として用いることができる。
【0059】
開口部材としては、例えば、建築・輸送機械等に用いられる開口部材が挙げられる。例えば、車両、航空機、船舶、発電機等の駆動部などから発生する騒音の周波数帯で共振しにくいガラス板構成体を用いた場合、それらの騒音に対して特に優れた発生抑制効果を得ることが可能となる。また、ガラス板構成体にIRカット、UVカット、着色等の機能を付与することもできる。
開口部材に適用する際には、ガラス板構成体の片面または両面に1個以上の振動素子や振動検出素子(振動子)を設置した振動板を、スピーカーやマイクロフォンとして機能させることもできる。本発明に係るガラス板構成体を用いることにより、従来再現が難しかった高周波領域の音の再生が容易に可能となる。また、ガラス板構成体の大きさ、形状、色調等における自由度が高く、意匠性を施すことが可能であることから、デザイン性にも優れた開口部材を得ることができる。また、ガラス板構成体表面または近傍に設置した集音用マイクロフォンまたは振動検出器で音声または振動をサンプリングし、これと同位相あるいは逆位相の振動をガラス板構成体に発生させることによりサンプリングした音声または振動を増幅したり打ち消したりすることができる。
より具体的には、車内スピーカー、車外スピーカー、遮音機能を有する車両用フロントガラス、サイドガラス、リアガラスまたはルーフガラスとして用いることができる。このとき、特定の音波振動のみを透過または遮断できる仕組みとしてもよい。また、音波振動により撥水性、耐着雪性、耐着氷性、防汚性を向上させた車両用窓、構造部材、化粧板として用いることもできる。具体的には、自動車用窓ガラスやミラーのほか、レンズ、センサーおよびそれらのカバーガラスとして用いることができる。
建築用開口部材としては、振動板および振動検出装置として機能する窓ガラス、ドアガラス、ルーフガラス、内装材、外装材、装飾材、構造材、外壁、遮音板および遮音壁、および太陽電池用カバーガラスとして用いることが出来る。それらを音響反射(残響)板として機能させてもよい。また、音波振動により上記の撥水性、耐着雪性、防汚性を向上させることもできる。
【0060】
磁気記録媒体用ガラス基板としては、ガラス板構成体に高い制振効果を付与することができることから、基板のフラッタリング抑制の点で非常に有用である。
【0061】
(ガラス板構成体の製造方法)
本発明に係るガラス板構成体は一対のガラス板の間に液体層を形成することにより得ることができる。
一対のガラス板の間に液体層を形成する方法は特に限定されず、例えば、ガラス板表面に液体層を形成し、その上に別のガラス板を設置する方法、それぞれ液体層を表面に形成したガラス板同士を貼り合わせる方法、二枚のガラス板の隙間から液体層を流し入れる方法等が挙げられる。
【0062】
液体層の形成についても特に限定されず、例えば、ガラス板表面に液体層を構成する液体の塗布、噴霧、等が挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0064】
<評価方法>
(ヤング率、縦波音速値、密度)
ガラス板のヤング率Eおよび音速V、およびガラス板構成体の縦波音速値Vは、長さ60mm、幅12mm、厚さ0.5mm〜1mmの試験片を用い、日本工業規格(JIS−R1602−1995)に記載された超音波パルス法により25℃で測定した(オリンパス株式会社製、DL35PLUSを使用)。ガラス板構成体の縦波音速値は、板厚方向の音速を測定した。
ガラス板の密度ρはアルキメデス法(株式会社島津製作所、AUX320)により25℃で測定した。
【0065】
(共振周波数)
ガラス板およびガラス板構成体の損失係数は、上記測定と同一の試験片を用い、共振法内部摩擦測定装置(日本テクノプラス株式会社、JE−HT)により25℃で計測した。具体的には試験片に600Hz〜3000Hzの帯域で交流電圧を連続的に印加することによりガラス基板を曲げ1次モードで自由振動させ、その振動振幅の変化を計測した。振動振幅hが最大となる周波数を共振周波数fとした。
【0066】
(損失係数)
損失係数は、上記測定で求めた材料の共振周波数f、最大振幅より−3dB下がった点(すなわち、最大振幅−3[dB]における点)の周波数幅Wを用い、W/fで表される値を損失係数とした。
ピーク形状が非対象になるなどの理由で上記手法が適用できない試験片については、共振周波数測定において、共振状態から加振を停止した際の振動振幅の減衰時間を計測し、これを用いて損失係数を算出した。
【0067】
(粘性係数)
液体層の粘性係数は回転粘度計(BROOKFIELD社、RVDV−E)を用い、25℃で計測した。
【0068】
(表面張力)
液体層の表面張力は、以下の方法により測定した。
25℃の試験液に対して平行に吊り下げた金属リングを液中に沈め、その後リングを鉛直方向に徐々に引き上げた。この時、液体膜により加えられた力のピークを測定することにより、表面張力値を算出した。
【0069】
<実施例1>
ガラス板Aとして12mm×60mm×0.5mmのガラス板1を用意し、そこに液体層としてイオン交換水を塗布し、さらにガラス板Bとして12mm×60mm×0.5mmのガラス板2を密着させ、12mm×60mm×1mmのガラス板構成体を得た。ガラス板1およびガラス板2の組成(質量%)および物性値を以下に示す。(ガラス板1)SiO
2:60%、Al
2O
3:17%、B
2O
3:8%、MgO:3%、CaO:4%、SrO:8%、密度:2.5g/cm
3、ヤング率:77GPa、比弾性率:3.1×10
7m
2/s
2(ガラス板2)SiO
2:61.5%、Al
2O
3:20%、B
2O
3:1.5%、MgO:5.5%、CaO:4.5%、SrO:7%、密度:2.7g/cm
3、ヤング率:85GPa、比弾性率:3.2×10
7m
2/s
2【0070】
<実施例2〜12>
液体層を変えた以外は実施例1と同様にしてガラス板構成体を得た。なお、実施例6については、ガラス板Bのガラス板2に代えてガラス板1を用いた。
【0071】
<比較例1〜4>
ガラス板Aとしてガラス板1(比較例1)、ガラス板2(比較例2)、アクリル樹脂(比較例3)、アルミナ焼結体(比較例4)のそれぞれ単体における各種特性評価を行った。
【0072】
<比較例5および6>
液体層を用いずにガラス板Aにガラス板Bを密着させたガラス板構成体を得た(比較例5)。また、比較例5で得たガラス板構成体を大気雰囲気下900℃で加熱し、ガラス板Aとガラス板Bとを融着させたガラス板構成体を得た(比較例6)。
【0073】
<比較例7〜10>
液体層に代えて各種粘着剤またはフィルムを用いてガラス板Aおよびガラス板Bを固着させたガラス板構成体をそれぞれ得た。
【0074】
実施例1〜12で得られたガラス板構成体の構成と評価結果を表1に、比較例1〜10で得られたガラス板構成体の構成と評価結果を表2にそれぞれ示す。なお、表中、*で示す10Λ−2は、10
−2なる数値単位を示すものである。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
粘性係数0.7mPa・s〜60Pa・s、表面張力21〜73mN/m、液体層の厚さ5μm未満かつ一対のガラス板の合計の厚みの1/10以下、とした実施例1〜12のガラス板構成体については、板厚方向の縦波音速値はいずれも6.0×10
3m/s以上であり、かつ25℃における損失係数は1.7×10
−2以上となり、良好な特性であった。
なお、一対のガラス板としてガラス板Aとガラス板Bとが異種の組み合わせ(ガラス板1+ガラス板2)であるものが、同種の組み合わせ(ガラス板1+ガラス板1)のものより良好な振動減衰特性を示した(例えば、実施例5および6等参照)。
【0078】
一方、ガラス単板、アルミナ焼結体を用いた場合(比較例1、2、4)、縦波音速値はいずれも6.0×10
3m/s以上であったが、25℃における損失係数が1×10
−3以下と低く、振動板として適さなかった。アクリル樹脂を用いた場合(比較例3)、25℃における損失係数の値は2.2×10
−2であったが、縦波音速値は2.7×10
3m/sと低かった。
カップラント剤を用いなかった場合(比較例5)、25℃における損失係数の値は1.4×10
−3と低く、かつガラス基板間で音波を十分に伝達することができず、振動板として不適であった。ガラス板Aとガラス板Bとを900℃で融着させた場合(比較例6)、損失係数は単板と同様に低かった。
カップラント剤に固体を用い、その膜厚を25μm以下、かつ一対のガラス板の合計の厚みの1/10以下とした場合(比較例7〜10)、いずれも損失係数が低く、振動板として適さなかった。
【0079】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2016年4月5日出願の日本特許出願(特願2016−75928)、2016年9月7日出願の日本特許出願(特願2016−174801)、および2016年11月24日出願の日本特許出願(特願2016−228372)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。