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アクリル酸エステル単量体と架橋性基を有する架橋性単量体とを、リビングラジカル重合開始剤の存在下で、乳化重合または懸濁重合により共重合するアクリルゴムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0010】
<アクリルゴム>
本発明の実施形態に係るアクリルゴムは、アクリル酸エステル単量体単位と、架橋性単量体由来の構成単位とを有し、重量平均分子量が1,000,000〜4,000,000であり、オリゴマー量が5%以下のアクリルゴムである。
【0011】
本実施形態のアクリルゴムに含まれるアクリル酸エステル単量体単位は、本実施形態に係るアクリルゴムの主成分を構成する。
【0012】
アクリル酸エステル単量体単位を構成するアクリル酸エステル単量体は、特に限定されない。アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両者を意味する。
【0013】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等のアルキル基の炭素数が1〜8の直鎖または分岐のアルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のシクロアルキル基の炭素数が4〜8のシクロアルキルエステル単量体;等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が1〜8の直鎖または分岐の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルおよびアクリル酸n−ブチルが特に好ましい。これらは1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0014】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、および(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル等のアルコキシアルキル基の炭素数が2〜8のアルコキシアルキルエステル単量体が挙げられる。これらの中でも、アルコキシアルキル基の炭素数が3〜5の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルおよび(メタ)アクリル酸2−エトキシエチルがより好ましく、アクリル酸2−メトキシエチルが特に好ましい。これらは1種単独でも、2種以上を併用しても良い。さらに、これらの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体は、上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と併用してもよい。
【0015】
アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、アクリルゴムを構成する全単量体単位の合計100重量%に対して、好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは60〜99.7重量%、さらに好ましくは70〜99.5重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐候性、耐熱性、および耐油性が低下するおそれがあり、一方、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物の耐熱性が低下するおそれがある。
【0016】
なお、本実施形態において、アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30〜100重量%、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位0〜70重量%からなるものとすることが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位50〜100重量%、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位0〜50重量%からなるものとすることがより好ましい。
【0017】
本実施形態に係るアクリルゴムに含まれる架橋性単量体由来の構成単位は、側鎖に架橋性基を有する架橋性単量体に由来する構成単位である。この架橋性単量体の側鎖を構成する架橋性基としては、特に限定されないが、エポキシ基、ハロゲン基、およびカルボキシル基のいずれか1種または2種以上を有する架橋性基であることが好ましい。
【0018】
エポキシ基を有する架橋性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有エーテルが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0019】
カルボキシル基を有する架橋性単量体としては、特に限定されないが、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体が挙げられる。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、および炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステル等が挙げられる。
【0020】
炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、およびケイ皮酸等が挙げられる。
【0021】
炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸の具体例としては、フマル酸、マレイン酸等のブテンジオン酸;イタコン酸;シトラコン酸;クロロマレイン酸;等が挙げられる。
【0022】
炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn−ブチル等のブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキセニル等の脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn−ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシル等のイタコン酸モノエステル;等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル、または脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルが好ましく、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘキシルがより好ましく、フマル酸モノn−ブチルがさらに好ましい。これらのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。なお、上記単量体のうち、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸には、無水物として存在しているものも含まれる。
【0024】
ハロゲン基を有する架橋性単量体としては、特に限定されないが、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、およびハロアセチル基含有不飽和単量体等が挙げられる。
【0025】
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルの具体例としては、クロロ酢酸ビニル、2−クロロプロピオン酸ビニル、およびクロロ酢酸アリル等が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2−ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2−クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3−クロロプロピル、および(メタ)アクリル酸2,3−ジクロロプロピル等が挙げられる。
【0027】
(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−(クロロアセトキシ)プロピル、および(メタ)アクリル酸3−(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピル等が挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、および(メタ)アクリル酸3−(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピル等が挙げられる。
【0029】
ハロゲン含有不飽和エーテルの具体例としては、クロロメチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、3−クロロプロピルビニルエーテル、2−クロロエチルアリルエーテル、および3−クロロプロピルアリルエーテル等が挙げられる。
【0030】
ハロゲン含有不飽和ケトンの具体例としては、2−クロロエチルビニルケトン、3−クロロプロピルビニルケトン、および2−クロロエチルアリルケトン等が挙げられる。
【0031】
ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物の具体例としては、p−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、o−クロロメチルスチレン、およびp−クロロメチル−α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0032】
ハロゲン含有不飽和アミドの具体例としては、N−クロロメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0033】
ハロアセチル基含有不飽和単量体の具体例としては、3−(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p−ビニルベンジルクロロ酢酸エステル等が挙げられる。なお、これらの架橋性単量体は、1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0034】
架橋性単量体由来の構成単位の含有量は、本実施形態に係るアクリルゴムを構成する全単量体単位の合計100重量%に対して、0.1〜10重量%とすることができ、好ましくは0.3〜8重量%とし、より好ましくは0.5〜5重量%とする。なお、架橋性単量体由来の構成単位が0.1重量%未満では、アクリルゴムの架橋が十分に進行せず、十分な機械的特性(例えば、ゴム架橋物の引張強度、伸び、耐圧縮永久歪性等)が得られない。また、10重量%を超えると、アクリルゴムが過度に架橋され、伸びが低下する。
【0035】
本実施形態に係るアクリルゴムは、アクリルゴムの特性を維持する限り、上述のアクリル酸エステル単量体単位、架橋性単量体由来の構成単位に加えて、共重合可能なその他の単量体の単位を有していてもよい。
【0036】
共重合可能なその他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル単量体(ただし、上述した多官能性単量体に該当するものを除く)、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、オレフィン系単量体、およびビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0037】
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ジメチルアミノスチレン、ジビニルベンゼン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。
【0038】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0039】
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、および1−オクテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0040】
ビニルエーテル化合物の具体例としては、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、およびn−ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
また、これら以外にも、エチレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル、プロピレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル等の(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する単量体(多官能アクリル単量体)、アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル等の任意の化合物等が挙げられる。
【0042】
これらの中でも、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルが好ましく、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびエチレンがより好ましい。
【0043】
共重合可能なその他の単量体は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。本実施形態でアクリルゴム中における、その他の単量体の単位の含有量は、40重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0044】
また、本実施形態に係るアクリルゴムの分子量は、重量平均分子量(Mw)で1,000,000〜4,000,000であり、好ましくは1,500,000〜4,000,000である。アクリルゴムの分子量が1,000,000未満ではアクリルゴムの架橋物として十分な機械的特性が得られず、また分子量が4,000,000を超える場合は、アクリルゴムやアクリルゴム組成物として必要な加工性が低下する傾向がある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を意味する。
【0045】
また、本実施形態に係るアクリルゴムは、
分子量が100,000以下の組成物の含有割合(以下、オリゴマー量という)が5%以下であり、好ましくは、0.1〜4.5%以下であり、より好ましくは0.5〜4.0%である。該オリゴマー量が5%以下では、伸びを低下させずに、優れた機械的特性を有するゴム架橋物を得ることができる。なお、該オリゴマー量が5%を超えると、十分な引張強度が得られない。
【0046】
なお、アクリルゴム中のオリゴマーを含む
分子量が100,000以下の成分は、定量が比較的容易であるため、アクリルゴム組成物中のオリゴマーを含む
分子量が100,000以下の成分の含有割合(%)をオリゴマー量と定義した。
【0047】
本実施形態に係るアクリルゴムは、上述のように、アクリル酸エステル単量体と側鎖に架橋性基を有する架橋性単量体由来の構成単位とを含有し、重量平均分子量を1,000,000〜4,000,000に調整し、かつ
分子量が100,000以下のオリゴマー量
が5%以下に調整されている。このようなアクリルゴムを用いることにより、伸びおよび耐圧縮永久歪性を維持しながら、優れた引張強度を有するゴム架橋物を得ることができる。
【0048】
なお、本実施形態に係るアクリルゴムの分子量分布は、特に限定されるものではないが、好ましくは1.3〜3.0であり、より好ましくは1.4〜2.9である。本明細書において、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)を意味する。
【0049】
本実施形態に係るアクリルゴムでは、少ないオリゴマー成分を維持したまま分子量を上げた結果、分子量分布をこのような範囲で調整することができる。すなわち、アクリルゴムの分子量分布を1.3〜3.0に調整することにより、伸びおよび耐圧縮永久歪性を維持しながら、優れた引張強度を有するゴム架橋物を確実に得ることができる。
【0050】
<アクリルゴムの製造方法>
本実施形態に係るアクリルゴムの製造方法は、アクリル酸エステル単量体と側鎖に架橋性基を有する架橋性単量体とを、リビングラジカル重合開始剤の存在下で、乳化重合または懸濁重合により共重合(リビングラジカル重合)するものである。
【0051】
本実施形態の製造方法で用いられるアクリル酸エステル単量体は、リビングラジカル重合可能なものであれば、特に限定されず、上述のアクリル酸エステル単量体を用いることができる。
【0052】
本実施形態の製造方法で用いられる側鎖に架橋性基を有する架橋性単量体は、上述のアクリル酸エステルとリビングラジカル重合可能なものであれば、特に限定されず、上述の架橋性単量体を用いることができる。
【0053】
本実施形態に係るアクリルゴムの製造方法で用いられる重合開始剤は、リビングラジカル重合開始剤である。このリビングラジカル重合開始剤の存在下で、乳化重合または懸濁重合することにより、上述のアクリル酸エステル単量体と架橋性単量体とがリビングラジカル重合により共重合して、アクリルゴムの共重合体が得られる。このようにして得られたアクリルゴムの共重合体を架橋すると、伸びおよび耐圧縮永久歪性を維持しながら、優れた引張強度を有するゴム架橋物を得ることができる。
【0054】
本実施形態に係るアクリルゴムの製造方法で用いられるリビングラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、有機テルル化合物を用いることができる。このような有機テルル化合物としては、下記一般式(1)で示される有機テルル化合物を用いるのが好ましい。
【0056】
一般式(1)中で、R
1は、アルキル基、無置換もしくは置換シクロアルキル基、無置換もしくは置換アリール基または無置換もしくは置換芳香族ヘテロ環基を示し、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を示し、R
4は、無置換もしくは置換ビニル基、無置換もしくは置換アリール基、無置換若しくは置換芳香族ヘテロ環基、アシル基、ヒドロカルビルオキシカルボニル基またはシアノ基を示す。
【0057】
本明細書において、「無置換もしくは置換」とは、シクロアルキル基等の置換基が、水素原子および重水素原子を除き、さらに他の置換基を有してもよいことを意味する。また、これらの他の置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0058】
R
1のアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、入手容易性の観点から、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜5がさらに好ましい。R
1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の分岐アルキル基が挙げられる。
【0059】
R
1の無置換もしくは置換シクロアルキル基の炭素数は、3〜10であり、入手容易性の観点から、3〜8が好ましく、5または6がより好ましい。R
1の無置換もしくは置換シクロアルキル基のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0060】
R
1の無置換もしくは置換シクロアルキル基の置換基は、重合反応を妨げないものであれば、特に限定されない。例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;水酸基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜8のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基;アミノ基;ニトロ基;シアノ基;−CORaで示される基(Raは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜8のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基;フェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ基等の無置換もしくは置換炭素数6〜10のアリーロキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜8のハロアルキル基);等が挙げられる。
【0061】
R
1の無置換もしくは置換アリール基の炭素数は、6〜20であり、入手容易性の観点から、6〜15が好ましく、6〜10がさらに好ましい。無置換もしくは置換アリール基のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。無置換もしくは置換アリール基の置換基は、重合反応を妨げないものであれば、特に限定されない。例えば、無置換もしくは置換シクロアルキル基の置換基として示したものと同様のものが挙げられる。
【0062】
R
1の無置換もしくは置換芳香族ヘテロ環基の炭素数は、1〜15であり、入手容易性の観点から、3〜15が好ましく、4〜10がより好ましい。無置換もしくは置換芳香族ヘテロ環基の芳香族ヘテロ環基としては、ピロリル基、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基等の5員環の芳香族ヘテロ環基;ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピラジニル基等の6員環の芳香族ヘテロ環基;ベンズイミダゾリル基、キノリル基、ベンゾフラニル基等の縮合芳香族ヘテロ環基;等が挙げられる。
【0063】
R
1の無置換もしくは置換芳香族ヘテロ環基の置換基は、重合反応を妨げないものであれば、特に限定されない。例えば、無置換もしくは置換シクロアルキル基の置換基として示したものと同様のものが挙げられる。
【0064】
R
2およびR
3のアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜5がさらに好ましい。
【0065】
R
2およびR
3のアルキル基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;1−プロペニル基、2−プロペニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基;1−プロピニル基、2−プロピニル基等の炭素数2〜10のアルキニル基:シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基;メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル等の炭素数2〜20のヒドロカルビルオキシカルボニル基;等が挙げられる。
【0066】
一般式(1)中、R
4は、無置換もしくは置換ビニル基、無置換もしくは置換アリール基、無置換もしくは置換芳香族ヘテロ環基、アシル基、ヒドロカルビルオキシカルボニル基またはシアノ基を示す。
【0067】
R
4の無置換もしくは置換ビニル基の具体例としては、例えば、アリル基、イソプロペニル基、アクリル基、メタクリル基、オレフィン基、ジエン基等が挙げられる。
【0068】
R
4の無置換もしくは置換アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ハロゲン原子置換フェニル基、トリフルオロメチル置換フェニル基等が挙げられる。
【0069】
R
4の無置換もしくは置換芳香族ヘテロ環基の具体例としては、ピリジル基、ピロール基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
【0070】
R
4のアシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0071】
R
4のヒドロカルビルオキシカルボニル基の具体例としては、R
2およびR
3のヒドロカルビルオキシカルボニル基として示したものと同様のものが挙げられる。
【0072】
R
2〜R
4は、これらから選択される2つの基が結合して芳香環以外の環を形成していてもよい。芳香環以外の環としては、炭化水素環が好ましい。環は、5〜7員環が好ましく、6員環がより好ましい。環に結合する置換基としては、R
2〜R
4の置換基として示したものと同様のものが挙げられる。
【0073】
一般式(1)で示される有機テルル化合物は、限定されるものではない。有機テルル化合物の具体例としては、例えば、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−アミノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−シアノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−(メチルテラニル−メチル)ピリジン、2−(1−メチルテラニル−エチル)ピリジン、2−(2−メチルテラニル−プロピル)ピリジン、メチル2−メチルテラニルエタネート、メチル2−メチルテラニルプロピオネート、メチル2−メチル−2−メチルテラニルプロピオネート、エチル2−メチルテラニルエタネート、メチル2−メチルテラニルプロピオネート、エチル2−メチル−2−メチルテラニルプロピオネート、2−メチルテラニルアセトニトリル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル、3−メチルテラニル−1−プロペン、1−メチルテラニル−3−メチル−2−ブテン、3−フェニルテラニル−1−プロペン、3−ブチルテラニル−1−プロペン、3−シクロヘキシルテラニル−1−プロペン、3−メチルテラニル−1−シクロヘキセン等が挙げられる。中でも、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、メチル2−メチル−2−メチルテラニルプロピオネート、エチル2−メチル−2−メチルテラニルプロピオネート、エチル2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオネート、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル、3−メチルテラニル−1−プロペン、3−フェニルテラニル−1−プロペン、3−ブチルテラニル−1−プロペンが好ましい。
【0074】
本実施形態のアクリルゴムの製造方法では、一般式(1)で示される有機テルル化合物の存在下で、アクリル酸エステル単量体と架橋性単量体をリビングラジカル重合することで、制御性に優れたリビングラジカル重合反応を行うことができる。
【0075】
一般式(1)で示される有機テルル化合物とアクリル酸エステル単量体及び架橋性単量体(以下、アクリル酸エステル単量体及び架橋性単量体をまとめてラジカル重合性単量体という場合がある)の使用量は、目的の重合体の分子量や分子量分布を考慮して、適宜調節すればよい。通常、ラジカル重合性単量体1molに対して、一般式(1)で示される有機テルル化合物の量が、0.00001〜0.001mol、好ましくは0.00002〜0.0005molである。
【0076】
リビングラジカル重合は、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスで置換した容器内で、一般式(1)で示される有機テルル化合物、ラジカル重合性単量体、必要に応じて、溶媒を添加し、それらを所定温度で所定時間撹拌することで乳化重合、懸濁重合により行うことができる。
【0077】
重合反応に用いる溶媒としては、通常は、水が使用される。溶媒の使用量は、特に限定されないが、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、通常、50〜2000重量部、好ましくは70〜1500重量部である。
【0078】
重合反応に用いる乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0079】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム、ロジン酸ナトリウム、ロジン酸カリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤の中でも、アルキル硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等が好ましい。
【0080】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0081】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましい。
【0082】
これらの乳化剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。乳化剤の使用量は特に限定されないが、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、通常、0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0083】
重合反応に用いる分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、セルロース誘導体等のノニオン系高分子化合物;ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステルとメタクリル酸及び/またはその塩との共重合体等のアニオン性高分子化合物;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の水難溶性無機化合物;等が挙げられる。
【0084】
これらの分散剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。分散剤の使用量は特に限定されないが、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、通常、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜10重量部である。
【0085】
これらの乳化剤の存在下に、回分方式または連続的あるいは断続的な添加方式等の任意の方法により、−10〜100℃、好ましくは0〜80℃で、1分〜100時間、好ましくは0.1〜40時間で重合反応が行われる。反応は、常圧下で行われるが、加圧下または減圧下で行ってもよい。
【0086】
本実施形態のアクリルゴムの製造方法では、リビングラジカル重合反応系に、さらに、ラジカル発生剤を存在させてもよい。このようなラジカル発生剤としては、加熱または光の照射によりラジカルを発生させるものであれば、特に限定されず、アゾ化合物、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、及び過硫酸塩が用いられる。中でもアゾ化合物、過酸化物、過硫酸塩が好ましい。リビングラジカル重合開始剤に加えて、このようなラジカル発生剤の存在下で重合反応を行うことで、リビングラジカル重合反応がより促進され、アクリルゴムの重合体を効率よく得ることができる。
【0087】
アゾ化合物は、一般的なラジカル重合で重合開始剤または重合促進剤として使用されるアゾ化合物であれば、特に制限なく使用することができる。例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2’−アゾビス(イソブチレート)(MAIB)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
これらのアゾ化合物は、反応条件に応じて適宜選択するのが好ましい。例えば、低温(40℃以下)で重合反応を行う場合は、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)が好ましく、中温(40〜80℃)で重合反応を行う場合は、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、ジメチル−2,2’−アゾビス(イソブチレート)(MAIB)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)が好ましく、高温(80℃以上)で重合反応を行う場合は、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(ACHN)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)が好ましい。
【0089】
過酸化物は、通常のラジカル重合で重合開始剤または重合促進剤として使用される過酸化物であれば、特に制限なく使用することができる。このような過酸化物としては、例えば、ジイソブチリルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、ジラウロイルペルオキシド、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0090】
過硫酸塩は、通常のラジカル重合で重合開始剤または重合促進剤として使用される過硫酸塩であれば、特に制限なく使用することができる。このような過硫酸塩としては、例えば、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0091】
これらのラジカル発生剤を使用する場合、その使用量は、一般式(1)で示される有機テルル化合物1molに対して、例えば0.01〜100mol、好ましくは0.05〜10mol、より好ましくは0.05〜5molである。
【0092】
また、本実施形態の末端変性アクリルゴムの製造方法においては、重合反応系に、光を照射しながら、重合反応を行ってもよい。重合反応系に光を照射しながら重合反応を行うことで、重合反応がより促進され、重合体を効率よく得ることができる。
【0093】
照射する光としては、紫外線(波長200〜380nmの光)または可視光(波長380〜830nmの光)が好ましい。光の照射は、光重合反応において一般的に用いられる方法により行うことができ、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、クリプトンランプ、LEDランプ等の光源を用いて光を照射すればよい。
【0094】
なお、ラジカル発生剤の使用および光の照射は、両者を併用することもできるが、どちらか一方を行えば、十分に重合反応が促進される。
【0095】
重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン等が挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、0.1〜2重量部である。
【0096】
なお、乳化重合に際しては、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0097】
上述したラジカル発生剤の他、本実施形態のアクリルゴムの製造方法では、リビングラジカル重合反応系に、さらに、下記式(2)で示されるジテルリド化合物を存在させてもよい。
【0099】
リビングラジカル重合開始剤に加えて、このようなジテルリド化合物の存在下で重合反応を行うことで、重合反応がより良好に制御され、より理論値に近い分子量と狭い分子量分布とを有する重合体を得ることができる。
【0100】
一般式(2)中で、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、アルキル基、無置換もしくは置換シクロアルキル基、無置換もしくは置換アリール基、または無置換もしくは置換芳香族ヘテロ環基を示す。
【0101】
R
5およびR
6のアルキル基、無置換もしくは置換シクロアルキル基、無置換もしくは置換アリール基、または無置換もしくは置換芳香族ヘテロ環基の具体例としては、それぞれ、一般式(1)におけるR
1のアルキル基、無置換もしくは置換シクロアルキル基、無置換もしくは置換アリール基、または無置換もしくは置換芳香族ヘテロ環基として示したものと同様のものが挙げられる。
【0102】
一般式(2)で示されるジテルリド化合物の具体例としては、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ(n−プロピル)ジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ(n−ブチル)ジテルリド、ジ(sec−ブチル)ジテルリド、ジ(tert−ブチル)ジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ビス(2−ナフチル)ジテルリド、4,4’−ジピリジルジテルリド等が挙げられる。これらのジテルリド化合物は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
一般式(2)で示されるジテルリド化合物を使用する場合、その使用量は、リビングラジカル重合開始剤(上述の一般式(1)で示される有機テルル化合物)1molに対して、例えば0.01〜100mol、好ましくは0.1〜10mol、より好ましくは0.1〜5molである。
【0104】
なお、一般式(2)で示されるジテルリド化合物の使用は、上述のラジカル発生剤の使用および光の照射のそれぞれと併用することができる。
【0105】
反応終了後、常法に従い、重合体の単離・精製処理を行うことができる。例えば、得られたラテックスから未反応の単量体を水蒸気蒸留等により除去した後、フェノール類、アミン類等の老化防止剤を添加し、この系と、金属塩水溶液(例えば硫酸アルミニウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、硫安水溶液)とを混合させる等の常法に従ってラテックスを凝固させ、得られた凝固物を乾燥させることにより共重合体(本実施形態のアクリルゴム)を得ることができる。
【0106】
本実施形態のアクリルゴムの製造方法により得られるアクリルゴム重合体の分子量は、反応時間およびリビングラジカル重合開始剤(有機テルル化合物)の量により調整可能である。例えば、アクリルゴム重合体の重量平均分子量は、好ましくは1,000,000〜4,000,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は、1.3〜3.0であり、より好ましくは1.4〜2.9に調整される。
【0107】
本実施形態のアクリルゴムの製造方法では、ラジカル重合性単量体を2種以上用いることで、共重合体を得ることができる。例えば、2種以上のラジカル重合性単量体を同時に重合反応系に存在させることで、ランダム共重合体を得ることができる。また、本実施形態のアクリルゴムの製造方法では、重合反応がリビング性を伴って進行するので、2種以上のラジカル重合性単量体を順次反応させることで、ブロック共重合体を得ることができる。
【0108】
なお、アクリルゴムの重合体に限らずゴム重合体の分子量は、理論的には重合開始剤の量を減らせば高くなる。しかし、従来のアクリルゴムは、通常の乳化重合により製造されるために、停止反応等の副反応が優先し、単純に重合開始剤を減らしただけでは、オリゴマー成分を減らしながら分子量を1,000,000以上に上げることはできなかった。
【0109】
これに対して、本実施形態の製造方法のように、アクリルゴムの重合において、リビングラジカル重合開始剤として上記の有機テルル化合物を用いて乳化または懸濁重合すると、オリゴマー成分を減らしながらアクリルゴムの分子量を1,000,000以上にすることができる。しかも、ゴム架橋物の伸びを維持しながら、引張強度を向上させるアクリルゴムを得ることができる。
【0110】
言い換えると、本実施形態のアクリルゴムの製造方法を用いることにより、重合開始剤の添加量を減らすことができ、またゴム架橋物の伸びを低下させずに、ゴム架橋物の引張強度を向上させることができる。
【0111】
<アクリルゴム組成物>
本実施形態に係るアクリルゴム組成物は、アクリルゴムと架橋剤とを含有する。
【0112】
本実施形態のアクリルゴム組成物に含まれるアクリルゴムは、上述のアクリルゴムを用いることができる。
【0113】
本実施形態で用いる架橋剤は、上述したアクリルゴムを架橋可能なものであれば、特に限定されず、上述したアクリルゴムに含有される架橋性単量体の種類により適宜選択することができる。このような架橋剤としては、例えば、ジアミン化合物等の多価アミン化合物、およびその炭酸塩;硫黄;硫黄共与体;トリアジンチオール化合物;多価エポキシ化合物;有機カルボン酸アンモニウム塩;有機過酸化物;ジチオカルバミン酸金属塩;多価カルボン酸;四級オニウム塩;イミダゾール化合物;イソシアヌル酸化合物等の架橋剤を用いることができる。これらの架橋剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0114】
アクリルゴムに含有される架橋性単量体がエポキシ基を有する架橋性単量体である場合には、架橋剤として、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等の脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩;4,4’−メチレンジアニリン等の芳香族多価アミン化合物;安息香酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム等のカルボン酸アンモニウム塩;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸金属塩;テトラデカンニ酸等の多価カルボン酸;セチルトリメチルアンモニウムブロマイド等の四級オニウム塩;2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;イソシアヌル酸アンモニウム等のイソシアヌル酸化合物;等を用いることが好ましい。
【0115】
アクリルゴムに含有される架橋性単量体がハロゲン基を有する架橋性単量体である場合には、架橋剤として、硫黄、硫黄供与体、またはトリアジンチオール化合物等を用いることが好ましい。
【0116】
硫黄供与体の具体例としては、ジペンタメチレンチウラムヘキササルファイド、トリエチルチウラムジサルファイド等が挙げられる。
【0117】
トリアジンチオール化合物の具体例としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、および6−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール等が挙げられるが、これらの中でも、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールが好ましい。
【0118】
アクリルゴムに含有される架橋性単量体がカルボキシル基を有する架橋性単量体である場合には、架橋剤として、多価アミン化合物およびその炭酸塩、またはグアニジン化合物、等を用いることが好ましい。
【0119】
多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、炭素数4〜30の多価アミン化合物、およびその炭酸塩が好ましい。このような多価アミン化合物、およびその炭酸塩の例としては、脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩、ならびに芳香族多価アミン化合物等が挙げられる。
【0120】
脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、およびN,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメートが好ましい。
【0121】
芳香族多価アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、4,4’−メチレンジアニリン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、および1,3,5−ベンゼントリアミン等が挙げられる。これらの中でも、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが好ましい。
【0122】
本実施形態のアクリルゴム組成物における架橋剤の含有量は、アクリルゴム組成物中のアクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.01〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは0.2〜7重量部である。架橋剤の含有量が少なすぎると、架橋が不十分となり、アクリルゴム架橋物の形状維持が困難になるおそれがある。一方、架橋剤の含有量が多すぎると、アクリルゴム架橋物が硬くなりすぎて、伸びが低下する可能性がある。
【0123】
本実施形態のアクリルゴム組成物では、架橋剤の他に架橋促進剤を含有することができる。架橋促進剤としては、特に限定されないが、例えば、上述した架橋性単量体がエポキシ基を有する架橋性単量体であり、かつ、架橋剤がジチオカルバミン酸金属塩である場合には、架橋促進剤としては、架橋剤として用いたジチオカルバミン酸金属塩以外のその他のジチオカルバミン酸金属塩等が用いられる。
【0124】
また、アクリルゴムに含有される架橋性単量体がハロゲン基を有する架橋性単量体であり、かつ、架橋剤が硫黄または硫黄供与体である場合には、架橋促進剤としては、脂肪酸金属石鹸等が好ましく用いられる。アクリルゴムに含有される架橋性単量体がハロゲン基を有する架橋性単量体であり、かつ、架橋剤がトリアジンチオール化合物である場合には、架橋促進剤としては、ジチオカルバミン酸塩およびその誘導体、チオ尿素化合物、チウラムスルフィド化合物等が用いられる。
【0125】
また、アクリルゴムに含有される架橋性単量体がカルボキシル基を有する架橋性単量体であり、かつ、架橋剤が多価アミン化合物、またはその炭酸塩である場合には、架橋促進剤として、脂肪族1価2級アミン化合物、脂肪族1価3級アミン化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第4級オニウム塩、第3級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩、およびジアザビシクロアルケン化合物等が用いられる。
【0126】
これらの架橋促進剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0127】
架橋促進剤の使用量は、アクリルゴム組成物中のアクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、特に好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルーム(またはブルーミング)が生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりするおそれがある。架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強度が著しく低下する可能性がある。
【0128】
また、本実施形態に係るアクリルゴム組成物には、上記成分以外に、アクリルゴムの分野において一般的に使用される配合剤を用いることができる。このような配合剤は、架橋活性化剤、充填材、滑材、老化防止剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、プロセス油、可塑剤等の配合剤であり、これらの配合剤をそれぞれ必要量配合することができる。
【0129】
充填剤としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)等の炭素系材料を用いることができる。中でもカーボンブラックを用いるのが好ましい。カーボンブラックの具体例は、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。これらの中でも、ファーネスブラックを用いることが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、MAF、FEF等が挙げられる。黒鉛の具体例は、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。なお、上述した炭素系材料は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0130】
炭素系材料以外の充填剤としては、例えば、アルミニウム粉末等の金属粉;ハードクレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機粉末;デンプンやポリスチレン粉末等の有機粉末等の粉体;ガラス繊維(ミルドファイバー)、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の短繊維;シリカ、マイカ;等が挙げられる。これらの充填剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0131】
滑材としては、例えば、パラフィンワックス等の炭化水素系ワックス;ステアリンのような脂肪酸系ワックス;多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステルのような脂肪酸エステルワックス(エステル系ワックス);高級アルコールのような脂肪アルコール系ワックス;等が挙げられる。これらの滑材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
老化防止剤としては、例えば、フェノール系、アミン系、リン酸系等の老化防止剤を使用することができる。フェノール系の代表例としては、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等があり、アミン系の代表例としては、4,4−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等が挙げられる。これらの老化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
スコーチ防止剤としては、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、りんご酸等の有機酸系スコーチ防止剤;N−ニトロソジフェニルアミン等のニトロソ化合物系スコーチ防止剤;N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド等のチオフタルイミド系スコーチ防止剤;スルホンアミド誘導体;2−メルカプトベンズイミダゾール;トリクロルメラミン;等が挙げられる。これらの中でも、スルホンアミド誘導体が好ましい。スコーチ防止剤は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を併せて使用してもよい。
【0135】
プロセス油としては、例えば、鉱物油や合成油を用いてよい。鉱物油には、アロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイル等を用いることができる。
【0136】
可塑剤としては、例えば、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、アルキルスルホン酸エステル化合物類可塑剤、エポキシ化植物油系可塑剤等を用いることができる。
【0137】
可塑剤の具体例としては、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸イソノニルエステル、トリメリット酸混合直鎖アルキルエステル、ジペンタエリスリトールエステル、ピロメリット酸2−エチルヘキシルエステル、ポリエーテルエステル(分子量300〜5000程度)、アジピン酸ビス[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル]、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸系のポリエステル(分子量300〜5000程度)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジブチル、リン酸トリクレシル、セバシン酸ジブチル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、エポキシ化大豆油、ジヘプタノエート、ジ−2−エチルヘキサノエート、ジデカノエート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を併せて用いることができる。
【0138】
また、本実施形態のアクリルゴム組成物には、必要に応じて、本実施形態のアクリルゴム以外のゴム、エラストマー、樹脂等の重合体を配合してもよい。
【0139】
本実施形態のアクリルゴム組成物を調製する方法としては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合等の混合方法を適宜採用することができる。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解を起こしにくい成分を十分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分(例えば、架橋剤、架橋促進剤等)を、反応や分解が起こらない温度にて短時間で混合すればよい。
【0140】
このようにして得られた本実施形態に係るアクリルゴム組成物は、架橋することによりゴム架橋物の伸びを維持しながら、引張強度を向上させることができる。
【0141】
<アクリルゴム架橋物>
本実施形態に係るアクリルゴム架橋物は、上述のアクリルゴム組成物を架橋してなる。
【0142】
架橋は、アクリルゴム組成物を加熱することにより行われる。架橋条件は、架橋温度は、好ましくは130〜220℃、より好ましくは140℃〜200℃であり、架橋時間は、好ましくは30秒間〜10時間、より好ましくは1分間〜5時間である。この第1段階の架橋を一次架橋ともいう。
【0143】
所望の形状のアクリルゴム架橋物を得るための成形方法としては、押出成形、射出成形、トランスファー成形、圧縮成形等の成形法を採用することができる。また、成形と同時に加熱し、架橋することもできる。
【0144】
押出成形には、一般的なゴムの加工手順を採用することができる。すなわち、ロール混合等によって調製したゴム組成物を、押出機のフィード口に供給し、スクリューでヘッド部に送る過程でバレルからの加熱により軟化させる。そして、軟化させたゴム組成物を、ヘッド部に設けた所定形状のダイスに通すことにより、目的の断面形状を有する長尺の押出成形品(板、棒、パイプ、ホース、異形品等)を得る。
【0145】
射出成形、トランスファー成形及び圧縮成形では、製品1個分のまたは数個分の形状を有する金型のキャビティに、本実施形態のアクリルゴム組成物を充填して賦形することができる。そして、この金型を加熱することにより、賦形と架橋をほぼ同時に行うことができる。
【0146】
さらに、上述の一次架橋に加えて、必要に応じて、このアクリルゴム架橋物を電気、熱風、蒸気等を熱源とするオーブン等で130℃〜220℃、より好ましくは140℃〜200℃で、1〜48時間加熱して二次架橋することもできる。
【0147】
このようにして得られた本実施形態のアクリルゴム架橋物は、アクリルゴム架橋物としての伸び、耐圧縮永久歪性を維持しながら、引張強度が高いものとなる。そのため、本実施形態のアクリルゴム架橋物は、例えば、燃料油やエンジンオイル等と接触する自動車用部品(例えば、O−リング、シール、ガスケット、ホース)等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0148】
以下に、実施例を示して、本実施形態をさらに具体的に説明する。以下において「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。ただし、本実施形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。各特性の測定、評価は以下のようにして行った。
【0149】
<分子量>
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、アクリルゴムの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。GPCによる測定では、測定装置として東ソー社製の「HLC−8320」と、カラムとして東ソー社製の「supermultipore HZ−H」を直列に4本接続したものを用いた。また、GPCによる測定は、カラムサイズ:4.6mmID×15cm、溶離液:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の条件で行った。また、GPCによる測定では、検出器として、示差屈折計(東ソー社製、RI−8320)を用いた。なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ポリスチレン換算値として測定した。
【0150】
<分子量分布>
上述の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)から、アクリルゴムの分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0151】
<オリゴマー量>
オリゴマー量は、アクリルゴム中のオリゴマーを含む
分子量が100,000以下の組成物の含有割合(%)として測定した。
【0152】
<常態物性(引張強さ、伸び、硬さ)>
アクリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら、170℃で20分間プレスすることによりシート状のアクリルゴム架橋物を得た。次いで、得られたシート状のアクリルゴム架橋物を、ギヤー式オーブンに入れ、170℃で4時間熱処理を行った。熱処理後のシート状のアクリルゴム架橋物をダンベル型3号形で打ち抜いて試験片を作製した。次に、この試験片を用いて、JIS K6251に従い、引張強さ(MPa)および伸び(%)を、また、JIS K6253に従い、デュロメーター硬さ試験機(タイプA)を用いて硬さを、それぞれ測定した。
【0153】
<耐圧縮永久歪性>
アクリルゴム架橋物を170℃、20分間のプレスによって成型、架橋して、直径29mm、厚さ12.5mmの円柱型試験片を作製し、さらに、170℃にて4時間加熱して二次架橋させた。JIS K6262に従い、上記にて得られた二次架橋後の試験片を25%圧縮させたまま、175℃の環境下で70時間放置した後、圧縮を解放して圧縮永久歪率を測定した。圧縮永久歪率の値が小さいほど、耐圧縮永久歪性に優れることを示す。
【0154】
<合成例>
(合成例1)エチル2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオネートの合成
窒素雰囲気下、300mLの三口フラスコ内で、金属テルル(Aldrich社製、以下同じ)11.48g(90mmol)をTHF86mlに懸濁させた。得られた懸濁液を撹拌しながら0℃に冷却した。懸濁液の撹拌と冷却を続けながら、この懸濁液に、フェニルリチウム(0.98Mシクロヘキサン−ジエチルエーテル溶液、関東化学社製、以下同じ)96.4ml(94.5mmol)を、10分かけて滴下した。滴下終了後、三口フラスコ内の内容物を、室温(25℃)で20分撹拌することで、金属テルルが完全に消失した反応溶液を得た。
【0155】
得られた反応溶液を撹拌しながら0℃に冷却した。反応溶液の撹拌と冷却を続けながら、この反応溶液に、エチル−2−ブロモイソブチレート(東京化成社製、以下同じ)18.45g(94.5mmol)を加えた。そのまま、三口フラスコ内の内容物の撹拌を2時間続けて反応を行った後、反応溶液を室温に戻した。
【0156】
得られた反応溶液を、脱気水、脱気飽和NH
4Cl水溶液、脱気飽和NaCl水溶液で順次洗浄した。次いで、有機層(洗浄後の反応溶液)に、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥後、窒素雰囲気下でセライトろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、次いで、濃縮物を減圧蒸留することにより、黄色油状物として、エチル2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオネート13.4g(収率51%)を得た。
【0157】
得られたエチル2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオネートの
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δppm)1.18(t,J=7.2Hz、3H),1.73(s,6H),4.07(q,J=7.2Hz,2H),7.26−7.30(m,2H),7.39−7.43(m,1H),7.88−7.90(m,2H)。
【0158】
(合成例2)3−メチルテラニル−1−プロペンの合成
フェニルリチウムの代わりにメチルリチウム(1.10Mジエチルエーテル溶液、関東化学社製、以下同じ)86.0ml(94.5mmol)を用いたこと、及びエチル−2−ブロモイソブチレートの代わりに臭化アリル(東京化成工業社製、以下同じ)11.4g(94.5mmol)を用いたこと以外は、合成例1と同様に反応・精製を行い、黄色油状物として3−メチルテラニル−1−プロペン6.55g(収率40%)を得た。
【0159】
得られた3−メチルテラニル−1−プロペンの
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δppm)1.85(s,3H),3.31(d,J=8.5Hz,2H),4.80(d,J=9.0Hz,1H),4.85(d,J=17.0Hz,1H),5.90−5.99(m,1H)。
【0160】
<製造例>
(製造例1)アクリルゴムAの製造
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、水200部、ドデシル硫酸ナトリウム(東京化成工業社製)2部、アクリル酸エチル98.3部、フマル酸モノn−ブチル1.7部を仕込み、減圧脱気及び窒素置換を3度行って酸素を十分に除去した。その後、アゾビス(イソブチロニトリル)0.016部およびエチル−2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオネート(合成例1)0.021部を加えて常圧下、温度50℃で懸濁重合を開始し、13時間反応させ、重合転化率89%に達するまで重合した。得られた懸濁重合液を塩化カルシウム溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムAを得た。得られたアクリルゴムAの重量平均分子量(Mw)は1,303,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.49であった。また、オリゴマー量(%)は1.0%であった。
【0161】
(製造例2)アクリルゴムBの製造
アゾビス(イソブチロニトリル)0.016部の代わり0.0083部、エチル−2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオネート0.021部の代わりに0.0089部を使用し、17時間反応させ、重合転化率83%に達するまで重合した以外は、製造例1と同様にして、アクリルゴムBを得た。得られたアクリルゴムBの重量平均分子量(Mw)は2,360,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.08であった。また、オリゴマー量は0.9%であった。
【0162】
(製造例3)アクリルゴムCの製造
アゾビス(イソブチロニトリル)0.016部の代わり0.0064部、エチル−2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオネート0.021部の代わりに0.0070部を使用し、19時間反応させ、重合転化率89%に達するまで重合した以外は、製造例1と同様にして、アクリルゴムCを得た。得られたアクリルゴムCの重量平均分子量(Mw)は3,505,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.54であった。また、オリゴマー量は1.6%であった。
【0163】
(製造例4)アクリルゴムDの製造
アクリル酸エチル98.3部の代わりにアクリル酸エチル48.3部及びアクリル酸n−ブチル50部、アゾビス(イソブチロニトリル)0.016部の代わり0.0071部、エチル−2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオネート0.021部の代わりに0.0070部を使用し、21時間反応させ、重合転化率80%に達するまで重合した以外は、製造例1と同様にして、アクリルゴムDを得た。得られたアクリルゴムDの重量平均分子量(Mw)は3,098,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.46であった。また、オリゴマー量は1.2%であった。
【0164】
(製造例5)アクリルゴムEの製造
アクリル酸エチル98.3部の代わりに98.5部、フマル酸モノn−ブチル1.7部の代わりにメタクリル酸グリシジル1.5部、アゾビス(イソブチロニトリル)0.016部の代わり0.0051部、エチル−2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオネート0.021部の代わりに3−メチルテラニル−1−プロペン(合成例2)0.0051部を使用し、18時間反応させ、重合転化率78%に達するまで重合した以外は、製造例1と同様にして、アクリルゴムEを得た。得られたアクリルゴムEの重量平均分子量(Mw)は1,930,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.61であった。また、オリゴマー量は2.2%であった。
【0165】
(製造例6)アクリルゴムFの製造
アクリル酸エチル98.3部の代わりにアクリル酸エチル48.3部、アクリル酸n−ブチル30部、及びアクリル酸2−メトキシエチル20部、フマル酸モノn−ブチル1.7部の代わりにビニルクロロアセテート1.7部、アゾビス(イソブチロニトリル)0.016部の代わりに4,4‘−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)0.0062部、エチル−2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオネート0.021部の代わりに3−メチルテラニル−1−プロペン(合成例2)0.0020部とメタクリル酸0.029部を予め1時間室温で反応させたマクロ開始剤を使用し、20時間反応させ、重合転化率85%に達するまで重合した以外は、製造例1と同様にして、アクリルゴムFを得た。得られたアクリルゴムFの重量平均分子量(Mw)は2,682,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.39であった。また、オリゴマー量は2.4%であった。
【0166】
(製造例7)アクリルゴムGの製造
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、水200部、ドデシル硫酸ナトリウム2部、アクリル酸エチル98.3部、フマル酸モノn−ブチル1.7部を仕込み、減圧脱気及び窒素置換を2度行って酸素を十分に除去した。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.005部およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.002部を加えて常圧下、温度20℃で乳化重合を開始し、5時間反応させ、重合転化率95%に達するまで重合した。得られた懸濁重合液を製造例1と同様にして、アクリルゴムGを得た。得られたアクリルゴムGの重量平均分子量(Mw)は849,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.18であった。また、オリゴマー量は6.8%であった。
【0167】
(製造例8)アクリルゴムHの製造
アゾビス(イソブチロニトリル)0.016部の代わり0.035部、エチル−2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオネート0.021部の代わりに0.045部を使用し、6時間反応させ、重合転化率81%に達するまで重合した以外は、製造例1と同様にして、アクリルゴムHを得た。得られたアクリルゴムHの重量平均分子量(Mw)は638,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.29であった。また、オリゴマー量は0.6%であった。
【0168】
(製造例9)アクリルゴムIの製造
アクリル酸エチル98.3部の代わりにアクリル酸エチル48.3部及びアクリル酸n−ブチル50部を使用した以外は、製造例7と同様にして、アクリルゴムIを得た。得られたアクリルゴムIの重量平均分子量(Mw)は1,145,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.93であった。また、オリゴマー量は5.3%であった。
【0169】
(製造例10)アクリルゴムJの製造
アクリル酸エチル98.3部の代わりに98.5部、フマル酸モノn−ブチル1.7部の代わりにメタクリル酸グリシジル1.5部を使用した以外は、製造例7と同様にして、アクリルゴムJを得た。得られたアクリルゴムJの重量平均分子量(Mw)は704,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.38であった。また、オリゴマー量は6.1%であった。
【0170】
(製造例11)アクリルゴムKの製造
アクリル酸エチル98.3部の代わりにアクリル酸エチル48.3部、アクリル酸n−ブチル30部及びアクリル酸2−メトキシエチル20部、フマル酸モノn−ブチル1.7部の代わりにビニルクロロアセテート1.7部を使用した以外は、製造例7と同様にして、アクリルゴムKを得た。得られたアクリルゴムKの重量平均分子量(Mw)は1,253,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.15であった。また、オリゴマー量は8.4%であった。
【0171】
<実施例および比較例>
(実施例1)
バンバリーミキサーを用いて、製造例1で得られたアクリルゴムA100部に、FEFカーボンブラック(商品名「シーストSO」、東海カーボン社製、充填剤、「シースト」は登録商標)50部、ステアリン酸2部、エステル系ワックス(商品名「グレッグG−8205」、大日本インキ化学工業社製、滑剤)1部、4,4'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名:ノクラックCD、大内新興化学工業社製、老化防止剤、「ノクラック」は登録商標)2部を添加して、80℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(商品名:Diak#1、デュポンエラストマー社製、架橋剤)0.78部、および1,3−ジ−o−トリルグアニジン(商品名:ノクセラーDT、大内新興化学工業社製、架橋促進剤、「ノクセラー」は登録商標、以下同様)2部を配合して、混練することにより、架橋性ゴム組成物(アクリルゴム組成物)を得た。得られたアクリルゴム組成物を用いて、上述した方法により試験片(アクリルゴム架橋物)を得て、常態物性(引張強さ、伸び、硬さ)および圧縮永久歪率を測定し、評価を行った。その結果を表1Aに示す。
【0172】
(実施例2)
アクリルゴムAに代えて製造例2で得られたアクリルゴムBを使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Aに示す。
【0173】
(実施例3)
アクリルゴムAに代えて製造例3で得られたアクリルゴムCを使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Aに示す。
【0174】
(実施例4)
アクリルゴムAに代えて製造例4で得られたアクリルゴムDを使用し、FEFカーボンブラックの添加量を60部とし、ヘキサメチレンジアミンカルバメートの添加量を0.6部とした以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Aに示す。
【0175】
(実施例5)
アクリルゴムAに代えて製造例5で得られたアクリルゴムEを使用し、ヘキサメチレンジアミンカルバメートおよび1,3−ジ−o−トリルグアニジンに代えて安息香酸アンモニウム(商品名:バルノックAB−S、大内新興化学工業社製、架橋剤、「バルノック」は登録商標)1.1部を使用し、エステル系ワックスを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Bに示す。
【0176】
(実施例6)
アクリルゴムAに代えて製造例6で得られたアクリルゴムFを使用し、FEFカーボンブラックの添加量を60部とし、ヘキサメチレンジアミンカルバメートおよび1,3−ジ−o−トリルグアニジンに代えて1,3,5−トリアジントリチオール(商品名:ZISNET−F、三洋化成社製、架橋剤、「ZISNET」は登録商標)0.5部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(商品名:ノクセラーBZ、大内新興化学工業社製、架橋促進剤)1.5部、ジエチルチオ尿素(商品名:ノクセラーEUR、大内新興化学工業社製、架橋促進剤)0.3部、およびN−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(商品名:リターダーCTP、大内新興化学工業社製、スコーチ防止剤)0.2部を使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Bに示す。
【0177】
(実施例7)
FEFカーボンブラックの添加量を80部とし、ポリエーテルエステル系可塑剤(商品名:アデカサイザーRS735、アデカ社製、可塑剤)20部をさらに使用した以外は、実施例4と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Bに示す。
【0178】
(比較例1)
製造例1で得られたアクリルゴムAに代えて製造例7で得られたアクリルゴムGを使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Aに示す。
【0179】
(比較例2)
製造例1で得られたアクリルゴムAに代えて製造例8で得られたアクリルゴムHを使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Aに示す。
【0180】
(比較例3)
製造例4で得られたアクリルゴムDに代えて製造例9で得られたアクリルゴムIを使用した以外は、実施例4と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Aに示す。
【0181】
(比較例4)
製造例5で得られたアクリルゴムEに代えて製造例10で得られたアクリルゴムJを使用した以外は、実施例5と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Bに示す。
【0182】
(比較例5)
製造例6で得られたアクリルゴムFに代えて製造例11で得られたアクリルゴムKを使用した以外は、実施例6と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Bに示す。
【0183】
(比較例6)
製造例4で得られたアクリルゴムDに代えて製造例9で得られたアクリルゴムIを使用した以外は、実施例7と同様にして、アクリルゴム組成物を調製し、アクリルゴム架橋物を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1Bに示す。
【0184】
【表1A】
【表1B】
【0185】
表1A及び表1Bに示すように、アクリル酸エステル単量体と側鎖に架橋性基を有する架橋性単量体由来の構成単位とを含有し、重量平均分子量を1,000,000〜4,000,000に調整し、かつオリゴマー量を5%以下に調整されたアクリルゴムの架橋物(実施例1〜7)は、伸びおよび耐圧縮永久歪性を維持しながら、引張強度が高いものであった。
【0186】
また、アクリルゴム組成物において充填材(カーボンブラック)の添加量を増加させることにより、アクリルゴムの架橋物の耐圧縮永久歪性がさらに向上するものとなった(実施例7)。
【0187】
以上、本実施形態の実施形態について実施例を挙げて説明したが、本実施形態は特定の実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0188】
本国際出願は2016年12月22日に出願された日本国特許出願2016-250179号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容をここに援用する。