【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構SIP革新的構造材料「裁断の技術開発と製造条件確立ならびに量産実証パイロットプラント設計(航空機実装を目指した超急冷マグネシウム合金の製造基盤技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属薄帯は、送出方向視において前記一対のロータリーカッターのそれぞれの前記回転体の前記回転軸同士を接続する仮想直線と平行に、且つ、前記仮想直線と重複して、前記裁断空間に送出される、
請求項2に記載の金属薄帯の連続裁断装置。
前記ロータリーカッターにおける前記複数の裁断用刃は、前記回転体の回転軸方向視において互いに隣接する前記裁断用刃が、前記回転体の両面に互い違いに配置されている、
請求項10に記載の金属薄帯の連続裁断装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。但し、以下で説明する実施形態は本発明を実施するための例示であり、本実施形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る金属薄帯の連続裁断装置100の全体の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る金属薄帯の連続裁断装置(以下、裁断装置)100は、金属材料を含む原料Nを加熱することによって融液Mとする溶融部20と、溶融部20の下方に配置され、融液Mを急冷することによって金属薄帯Rを生成する冷却部30と、冷却部30よりも下方に配置され、生成された金属薄帯Rを裁断して金属薄片Cとする裁断部10と、裁断部10よりも下方に配置され、金属薄片Cが回収される回収部40と、を含み、それらを不活性ガス雰囲気下で収容するチャンバー50を有する。本実施形態に係る裁断装置100は、溶融部20で溶融した原料Nを冷却部30で急冷することによって、原料Nに含まれる金属材料の強度を高め、急冷された金属材料を含む金属薄帯Rを裁断部10で細かく裁断することによって、成形性の高い金属薄片Cを生成する。
【0023】
ここで、本実施形態に係る裁断装置100は、チャンバー50内を真空排気して不活性ガスを充填することができる。不活性ガスは、不活性気体とも呼ばれ、窒素、ヘリウム、アルゴン等、化学反応性の低い気体のことを指す。例えば、鉄、ニッケル、希土類、磁性体、及びシリコン系の金属材料から金属薄帯Rを形成する場合に、周囲に酸素があると、金属薄片Cの生成の過程において金属材料の表面積が増大するため、金属材料が急速に酸化し発火する虞がある。また、生成した金属薄片Cの表面に酸化物が形成され、延性や展性等といった機械的特性が著しく損なわれる虞がある。しかしながら、本実施形態に係る裁断装置100は、真空又は不活性ガス雰囲気下で金属薄片Cの生成を行うため、上述した発火や酸化物の生成を好適に抑制することができる。以下、裁断装置100の各部について説明する。
【0024】
図1に示す溶融部20は、金属材料を含む原料Nを加熱することによって融液Mを生成する。溶融部20の態様は特に限定されないが、例えばグラファイト製の容器201に原料Nを入れ、図示しない高周波溶融炉を用いて、所定の温度以上となるように原料Nを加熱する。
【0025】
図1に示す冷却部30は、溶融部20より生成された融液Mを所定の温度以下となるように急冷し、金属薄帯Rとして裁断部10へ送出する。冷却部30は、溶融部20より生成された融液Mを貯湯すると共に下方へ落下させるタンディッシュ301と、タンディッシュ301の下方に配置された一対の冷却ロール302a,302bと、を有する。タンディッシュ301は上面が開口した容器であり、容器201から傾注された融液Mを所定温度に保温された状態で貯湯する。また、タンディッシュ301の下面には、出湯ノズル301aが設けられている。タンディッシュ301は、出湯ノズル301aから融液Mを連続的に冷却ロール302a,302b上へ落下させる。
【0026】
冷却ロール302a,302bは、それぞれが水平方向に回動軸303a,303bを有している。回動軸303a,303bは、互いに平行である。冷却ロール302a,302bは、互いの側面がほぼ接するように配置されている。このとき、冷却ロール302aと302bの間には、間隙Gが形成されている。間隙Gは、一対の冷却ロール302a,302bの間に形成される空間のことを指す。冷却ロール302a,302bは、タンディッシュ301の出湯ノズル301aから落下する融液Mが、間隙Gに落下するように配置されている。冷却ロール302a,302bは、所定の温度以下となるように冷却されており、間隙Gに落下した融液Mを間隙Gの下方へ押し出すように、回動軸回りに互いに逆回転している。
【0027】
冷却ロール302a,302bは、融液Mを両面から冷却しながら間隙Gを通過させて下方に押し出すことによって、融液Mから金属薄帯Rを成形する。融液Mが冷却ロール302a,302bによって金属薄帯Rとなる過程において、融液Mに含まれる金属材料の組織が微細化されるため、金属材料に所要の強度が与えられる。冷却ロール302a,302bの冷却方法は特に限定されないが、冷却ガス又は水によって好適に冷却することができる。冷却ロール302a,302bによって成形された金属薄帯Rは、間隙Gの下方に配置された裁断部10へ送出される。融液Mが出湯ノズル301aから連続して冷却ロール302a,302bに落下していることにより、連続した金属薄帯Rが裁断部10へ送出される。
【0028】
次に、
図1−6を用いて、本実施形態に係る裁断部10について説明する。本実施形態に係る裁断部10は、従来と比較して、金属薄帯Rをより細かく裁断するための特別な構成を有している。
図2(a)は、裁断部10の斜視図である。
図2(a)に示すように、裁断部10は、冷却部30の下方に配置されるガイド部材104と、鉛直方向と平行な回転軸を有する一対のローター103,103と、ローター103,103のそれぞれの下端に接続されてガイド部材104の下方に配置される第1カッター101,第2カッター102と、を有する。ガイド部材104は、上方に位置する冷却部30の間隙Gより送出された金属薄帯Rをガイドし、下方に位置する第1カッター101及び第2カッター102へ金属薄帯Rを送出する。第1カッター101及び第2カッター102は、それぞれ、ローター103,103によって回転することで、ガイド部材104より送出された金属薄帯Rを裁断する。ここで、金属薄帯Rがガイド部材104より送出される方向を送出方向Fと称する。また、送出方向Fにおける後方から見たときの状態を「送出方向視」と称す。本実施形態に係る裁断装置100は、送出方向Fが、鉛直方向と一致するように金属薄帯Rを送出する。但し、本発明の送出方向Fの向きは、これに限定されない。以下、裁断部10の各部について説明する。
【0029】
第1カッター101及び第2カッター102は、第1カッター101が回転する軸である第1回転軸A1と、第2カッター102が回転する軸である第2回転軸A2とが、互いに離間するように配置されている。第1回転軸A1と第2回転軸A2は、金属薄帯Rの送出方向Fと平行となるように配置されている。
図2(b)は、送出方向視における裁断部10を示す図である。
図2(b)に示すように、裁断部10は、送出方向視において第1回転軸A1と第2回転軸A2とを接続した線分を含む仮想直線Hが、冷却ロール302a,302bの回動軸303a,303bと平行となり、且つ、冷却ロール302a,302bの間隙Gと重複するように配置される。そのため、金属薄帯Rは、送出方向視において仮想直線Hと重なった姿勢で冷却ロール302a,302bから送出される。また、詳細については後述するが、金属薄帯Rは、ガイド部材104によって、冷却ロール302a,302bから送出されたときの姿勢を維持されたまま、第1カッター101及び第2カッター102に裁断される。
【0030】
裁断部10は、ローター103を動力として第1カッター101及び第2カッター102を同じ方向に回転させることによって、金属薄帯Rを連続裁断する。即ち、第1カッター101が第1回転軸A1回りに回転する方向と、第2カッター102が第2回転軸A2回りに回転する方向は、同方向である。以下、第1カッター101及び第2カッター102が回転する方向を、回転方向Dと称する。ローター103,103は、第1カッター101及び第2カッター102の回転数を調節することで、単位時間当たりの金属薄帯Rの裁断回数を調節することができる。第1カッター101及び第2カッター102が、本発明における「一対のロータリーカッター」に相当する。
【0031】
次に、第1カッター101及び第2カッター102の各部材について説明する。第1カッター101及び第2カッター102は、同一の構成を有しており、それぞれ、ローター103,103の下端に回転可能に接続される支持円盤2と、支持円盤2の上面に設けられると共に金属薄帯Rを切断する複数のナイフ1と、を有する。
【0032】
図3は、支持円盤2を示す図である。支持円盤2は、ローター103によって回転方向Dに回転する部材であり、
図3(a),(b)に示すように、段付きの円盤形状を有している。支持円盤2,2は、その中心軸が、第1カッター101及び第2カッター102が回転する軸である第1回転軸A1及び第2回転軸A2となるようにローター103,103に設置される。
図3(a)に示すように、支持円盤2の中央には、ローター103と接続するための接続穴21が厚み方向に貫通している。また、支持円盤2の上面は、ナイフ1を取り付けることができるように形成されており、ナイフ1を嵌めることによってナイフ1を位置決めするための固定溝22が中心軸回りに等角度間隔で8つ形成されている。即ち、それぞれの固定溝22の角度間隔は、45[°]となっている。また、各固定溝22には、ナイフ1を固定するためのネジ穴22aが設けられている。尚、支持円盤2が、本発明における「回転体」に相当する。
【0033】
図4は、ナイフ1を示す図である。
図4(a),(b)に示すように、ナイフ1は帯形状を有している。ナイフ1の幅は、支持円盤2の固定溝22の幅よりも若干幅の小さい。また、ナイフ1は、長手方向において、支持円盤2の固定溝22に固定される取付部12と、支持円盤2の外方に突出して金属薄帯Rを裁断する切断部11とに区分される。取付部12には、ナイフ1を支持円盤2の固定溝22に取り付けるための取付穴12aが形成されている。切断部11の一方の側端には、刃部111が形成されている。ナイフ1は、刃部111の刃先111aによって金属薄帯Rを切断する。また、
図2に示すように、ナイフ1は、支持円盤2の固定溝22に取付部12が嵌め込まれた状態で、支持円盤2に締結される。このとき、ナイフ1は、切断部11が支持円盤2の回転軸方向と直交する方向に突出し、且つ、刃部111の刃先111aが回転方向Dに向くように固定される。この状態では、固定溝22を形成する側壁がナイフ1の取付部12の側壁と当接することによって、ナイフ1の位置ずれや脱落が抑制されている。本実施形態に係るナイフ1は、厚さ1[mm]、幅15[mm]、長さ150[mm]に形成され、刃部111は、タングステンカーバイト等の硬質の炭化物が含まれる金属によって形成されている。但し、本発明のナイフ1の寸法及び材質は、上記に限定しない。尚、
図4(b)に示す刃部111の刃先角度θも特に限定されないが、刃先角度θを20[°]〜40[°]とすることによって、金属薄帯Rの裁断時に刃こぼれが発生することを抑制しつつも、金属薄帯Rを好適に裁断することができる。尚、ナイフ1が本発明における「裁断用刃」に相当する。
【0034】
図5A(a)は、上面視における裁断部10を示す図である。即ち、
図5A(a)は、裁断部10の送出方向視における図である。
図5A(b)は、裁断部10を送出方向Fと直交する方向から見たときの概略図である。
図2に示すように、第1カッター101及び第2カッター102は、それぞれ、支持円盤2に形成された固定溝22の全てにナイフ1が取り付けられている。即ち、各支持円盤2,2には、8個のナイフ1が45[°]の等
角度間隔で固定されている。換言すると、支持円盤2には、支持円盤2の回転軸方向視において重複しないように、ずれた位置に配置されており、且つ、8箇所に等角配置されている。ここで、本発明における「回転軸方向視」とは、支持円盤2の回転軸と平行な方向から見たときの状態のことを称す。また、
図5A(a)に示すように、第1カッター101が回転する際、第1カッター101に設けられた複数のナイフ1の刃先111aは、送出方向Fと直交する同一平面内を通過する。この、第1カッター101に設けられた複数のナイフ1が通過する平面領域を、第1領域T1と称する。同様に、第2カッター102が回転する際に複数のナイフ1の刃先111aが通過する同一平面内の領域を、第2領域T2と称する。
図5A(b)に示すように、第1領域T1と第2領域T2は、それぞれ、互いに平行であって送出方向Fと直交する第1平面P1,第2平面P2内に含まれる。また、
図5A(a)に示すように、第1カッター101及び第2カッター102は、各支持円盤2が離間しつつも、送出方向視において、第1領域T1と第2領域T2が重なって見えるように配置されている。また、
図5A(b)に示すように、第1領域T1を含む第1平面P1と第2領域T2を含む第2平面P2は、金属薄帯Rの裁断時に、第1カッター101に設けられたナイフ1と第2カッター102に設けられたナイフ1とが、干渉しない程度に接近している。ここで、第1平面P1が第2平面P2よりも所定の距離aだけ上方に位置している。即ち、第1平面P1は、第2平面P2よりも、送出方向Fにおいて後方に位置している。所定の距離aは、金属薄片Cの所望の長さに応じて設定される。但し、所定の距離aは、金属薄帯Rの裁断時に、第1カッター101のナイフ1と第2カッター102のナイフ1とが互いに干渉しない距離である。
【0035】
図5A(a),(b)に示すように、第1平面P1と第2平面P2との間に形成される
空間のうち、送出方向視において第1領域T1と第2領域T2とが重なり合う領域には、裁断空間Sが形成されている。金属薄帯Rは、裁断空間Sの内部を送出方向Fで通過することによって、第1カッター101のナイフ1及び第2カッター102のナイフ1の両方によって切断される。裁断部10は、裁断空間Sの内部であって、送出方向視において仮想直線H上の位置に金属薄帯Rを送出することによって、金属薄帯Rを裁断する。金属薄帯Rを裁断する際、第1カッター101及び第2カッター102が共に回転方向Dに回転しているため、裁断空間Sの内部では第1カッター101のナイフ1の刃先111aと第2カッター102のナイフ1の刃先111aとが互いに対向する。その結果、裁断部10は、ガイド部材104から裁断空間Sに送出された金属薄帯Rを、送出方向Fと直交すると共に互いに対向する2方向から切断することができる。
【0036】
次に、ガイド部材104について説明する。金属薄帯Rは、送出方向視において、仮想直線Hと平行で、且つ、仮想直線H上に位置するように冷却ロール302a,302bから送出される。ガイド部材104は、金属薄帯Rを上記の姿勢に維持した状態でガイドし、裁断空間Sへ送出する。
【0037】
図2に示すように、ガイド部材104は、両端が開口した直管形状を有している。ガイド部材104の一端には、冷却部30の間隙Gより送出される金属薄帯Rを内部に導入する薄帯導入口104aが形成されている。また、他端には、金属薄帯Rを裁断空間Sへ送出する薄帯送出口104bが形成されている。そして、薄帯導入口104aと薄帯送出口104bは、薄帯通路104cによって連通している。金属薄帯Rは、薄帯導入口104aからガイド部材104の内部に入り、薄帯通路104cを通過した後に、薄帯送出口104bから送出される。裁断部10において、ガイド部材104は、薄帯導入口104aが上方、薄帯送出口104bが下方(鉛直方向)に向くように配置される。そして、ガイド部材104は、薄帯導入口104aが冷却ロール302a,302bの間隙Gの真下に位置するように配置される。尚、薄帯通路104cが、本発明の「内部通路」に相当する。
【0038】
図5B(a)は、送出方向視におけるガイド部材104を示す図である。ガイド部材104は、金属薄帯Rがガイド部材104を通過することができる内径を有している。また、
図5B(a)に示すように、送出方向視において、薄帯送出口104bが裁断空間Sの内部に位置している。より詳細には、薄帯送出口104bは、送出方向視において、裁断空間Sの内部であって、第1回転軸A1と第2回転軸A2との間における中間に薄帯送出口104bが位置している。そうすることによって、金属薄帯Rが裁断空間Sの外に送出されることが抑制され、金属薄帯Rが確実に裁断空間Sへ送出される。薄帯送出口104bの径は、金属薄帯Rが通過できる大きさであれば、より小さいことが好ましい。金属薄帯Rが薄帯通路104cの内部で振れる場合に、薄帯送出口104bの縁が金属薄帯Rに当接することによって、金属薄帯Rがそれ以上大きく振れることが抑制される。即ち、薄帯送出口104bを小さくすることによって、金属薄帯Rの振れ幅を小さくすることができるため、より確実に裁断空間S内の所望の位置に金属薄帯Rを送出することができる。
【0039】
図5B(b)は、裁断空間S付近を送出方向Fと直交する方向から見たときの図である。金属薄帯Rが薄帯通路104cの内部で振れ、金属薄帯Rが薄帯送出口104bの縁に当接した場合、金属薄帯Rが薄帯送出口104bの縁を境に送出方向Fに対して屈曲する可能性がある。そうすると、金属薄帯Rは、鉛直方向視において薄帯送出口104bの外方に屈曲して送出される。
図5B(b)に示すように、本実施形態に係るガイド部材104は、裁断空間Sと薄帯送出口104bとが送出方向Fにおいて接近している。即ち、第1カッター101のナイフ1の刃先111aが通過する平面である第1平面P1の近傍に薄帯送出口104bが配置されている。そのため、金属薄帯Rが薄帯送出口104bの縁を境に屈曲しても、金属薄帯Rが送出方向視において薄帯送出口104bから大きく外れない位置で、金属薄帯Rを裁断することができる。
【0040】
上述のように、薄帯送出口104bは、金属薄帯Rを、冷却ロール302a,302bから送出されたときの姿勢を維持したまま、裁断空間Sに送出することができる。即ち、金属薄帯Rは、送出方向視において仮想直線Hと平行で、且つ、仮想直線Hに重なった状態で裁断空間Sへ送出される。そうすることによって、
図5B(a)に示すように、第1カッター101及び第2カッター102のナイフ1が金属薄帯Rを厚み方向から切断することができる。その結果、幅方向から金属薄帯Rを切断する場合と比較して、金属薄帯Rを切断する際に第1カッター101及び第2カッター102のナイフ1に掛かる負荷を低減することができ、ナイフ1の磨耗を抑制することができる。
【0041】
次に、本実施形態に係る裁断装置100が金属薄帯Rを裁断する際の動作について説明する。上述したように、本実施形態に係る裁断装置100は、裁断空間Sの内部において第1カッター101のナイフ1の刃先111aと第2カッター102のナイフ1の刃先111aとが互いに対向するため、金属薄帯Rを送出方向Fと直交すると共に対向する2方向から切断することができる。裁断部10で裁断された金属薄帯Rは、金属薄片Cとなって裁断部10の下方に配置された回収部40に落下する。
【0042】
図6Aは、
図5A(a)におけるA−A断面図であって、本実施形態に係る裁断装置100が金属薄帯Rを切断する状態を示した説明図である。
図6Bは、比較例において金属薄帯Rを切断する状態を示した説明図である。比較例は、第1カッター101のみで金属薄帯Rを裁断する。尚、以下で説明する本実施形態と比較例との比較において、送出方向Fへ金属薄帯Rが送出される送り速度の大きさ及び単位時間当たりのカッターの回転数(回転速度)は同一とする。
【0043】
図6Aに示すように、本実施形態に係る裁断装置100は、第1カッター101及び第2カッター102に設けられたナイフ1によって金属薄帯Rを裁断し、長さL1の金属薄片Cを連続的に生成する。このとき、金属薄帯Rは、第1カッター101及び第2カッタ
ー102に設けられたナイフ1によって送出方向Fと直交する2方向から挟み込まれるように切断されている。金属薄帯Rには送出方向Fと直交すると共に対向する2方向から刃先111aが同時に衝突するため、それぞれの衝撃が互いに打ち消し合う。そうすることにより、金属薄帯Rが送出方向Fに対して傾斜することなく連続して裁断される。ここで、第1カッター101のナイフ1に着目すると、第1カッター101のナイフ1は、L1の間隔で金属薄帯Rを切断する。また、L1のうち長さaの分が、第2カッター102のナイフ1によって切断される。結果として、長さL1−a、aの金属薄片Cが連続して生成される。
【0044】
一方、
図6Bに示す比較例のように、金属薄帯Rを1方向からのみ切断する場合、金属薄帯Rに1方向から衝撃が与えられることによって、金属薄帯Rの切断面がその方向に押される。その結果、金属薄帯Rは、送出方向Fから傾斜する(
図6B(a)〜(b))。それにより、金属薄帯Rは、送出方向Fから角度を持った状態で切断され続けることになる。ここで、金属薄帯Rを送出方向Fに対して傾斜しない状態で裁断することができれば、第1カッター101のナイフ1がL1の間隔で金属薄帯Rを切断する。しかしながら、金属薄帯Rが送出方向Fから傾斜しているため、ナイフ1が金属薄帯Rを切断する間隔L2は、L1よりも長くなる。即ち、連続して生成される金属薄片Cの長さL2は、L1よりも大きくなる(
図6B(c))。これに対して、上述したように、本実施形態に係る裁断装置100は、第1カッター101及び第2カッター102を同方向に回転させることによって、金属薄帯Rが送出方向Fと直交する2方向から挟断されるため、送出される金属薄帯Rが送出方向Fに対して傾斜することが抑制されている。そうすることにより、本実施形態に係る裁断装置100によれば、比較例よりも金属薄帯Rを細かく裁断することができる。更に、本実施形態に係る裁断装置100は、第1カッター101と第2カッター102によって金属薄帯Rを切断するため、単位時間当たりに金属薄帯Rを切断する回数が、比較例よりも多い。その結果、金属薄帯生成される金属薄片Cの長さがL1−a、aとなり、第1カッター101のみで金属薄帯Rを裁断する場合よりも金属薄帯Rをより小さく裁断することができる。
【0045】
尚、第1カッター101のナイフ1と第2カッター102のナイフ1は、必ずしも同時に金属薄帯Rを切断しなくてもよい。本実施形態に係る裁断装置100は、第1カッター101及び第2カッター102を高速で回転させる。そのため、第1カッター101のナイフ1と第2カッター102のナイフ1が送出方向Fと直交する2方向から同時ではなく交互に金属薄帯Rに衝突する場合でも、それぞれのナイフ1が衝突する時間間隔を非常に短くすることができる。そうすることにより、一方のカッターのナイフ1が衝突することによって金属薄帯Rの送出方向Fからの傾斜角度が最大となる前に、他方のカッターのナイフ1が対向する方向から金属薄帯Rに衝突する。その結果、金属薄帯Rが送出方向Fに対して傾斜することを抑制することができる。
【0046】
[第1実施形態に係る金属薄帯の連続裁断方法]
次に、
図1,7等を参照して、本実施形態に係る裁断装置100を用いて、マグネシウム、イットリウム、亜鉛を含み、マグネシウムを主材料とするマグネシウム基合金の金属薄帯Rを生成して裁断する手順について説明する。但し、本発明に係る金属薄帯Rの金属材料は、これらに限定するものではない。
図7は、本実施形態に係る金属薄帯の連続裁断方法の手順を示す図である。尚、以下の工程は全て、不活性ガスが充填されたチャンバー50の内部で行われる。本発明に係る金属薄帯の裁断方法は、不活性ガスを特に限定しないが、マグネシウム基合金の薄帯の連続裁断においては、アルゴンやヘリウムを不活性ガスとして好適に用いることができる。
【0047】
まず、ステップS01において、マグネシウムを主体として、イットリウム、亜鉛を含む原料Nを溶融し、融液Mを生成する(溶融工程)。溶融工程では、
図1に示すように、
原料Nを溶融部20の容器201に入れ、所定の温度まで加熱することによって融液Mを生成する。ここで、所定の温度とは、原料となる金属材料の融点よりも100[℃]程度高い温度であり、マグネシウム基合金を生成する場合、800[℃]程度である。
【0048】
次に、ステップS02では、溶融工程で生成された融液Mを冷却部30の冷却ロール302a,302bによって所定の温度以下となるように急冷することで金属薄帯Rを生成し、生成した金属薄帯Rを裁断部10へ送出する(薄帯生成工程)。薄帯生成工程では、まず、溶融工程で生成された融液Mを容器201から冷却部30のタンディッシュ301へ傾注する。その後、タンディッシュ301内に貯湯された融液Mを、出湯ノズル301aから冷却ロール302a,302bの間に形成された間隙Gへ連続的に落下させる。融液Mは、高速回転する冷却ロール302a,302bにより間隙Gから押し出されることによって、厚さ100μm、幅20[mm]程度のマグネシウム基合金の金属薄帯Rとなる。このとき、融液Mが急冷されて凝固することによって、マグネシウム基合金の組織が微細化し、所要の強度を有するマグネシウム基合金を含む金属薄帯Rを生成することができる。そして、生成された金属薄帯Rは、間隙Gの下方に設けられた裁断部10のガイド部材104へ連続的に送出される。
【0049】
次に、ステップS03では、冷却部30より連続的に送出される金属薄帯Rを、第1カッター101及び第2カッター102によって連続裁断する(薄帯裁断工程)。ガイド部材104から裁断空間Sに送出された金属薄帯Rは、第1カッター101及び第2カッター102に設けられたナイフ1によって連続的に切断され、長さ数[mm]程度の金属薄片Cとなって裁断部10の下方に配置された回収部40に落下する。以上をもって薄帯裁断工程が終了する。金属薄帯Rの裁断は、冷却部30から金属薄帯Rが生成され続ける限り行われる。尚、以上の工程は、不活性ガスで充填されたチャンバー50の内部で行われているため、工程内においてマグネシウムが酸素と反応することによる発火や酸化物の生成が好適に抑制されている。回収部40に集積した金属薄片Cは、その後、押出成形されることによって、被加工性に優れたマグネシウム基合金のブロック体となる。
【0050】
[第1実施形態の作用・効果]
以上のように、本実施形態に係る裁断装置100は、第1カッター101及び第2カッター102の支持円盤2,2が、互いに回転方向Dに回転すると共に、それぞれの回転軸が送出方向Fと平行であって、且つ、送出方向視において離間している。また、各支持円盤2,2には、ナイフ1が送出方向Fと直交する方向に突出しており、各支持円盤2,2に設けられたナイフ1の刃先111aは、送出方向Fと直交する第1平面P1と第2平面P2内を同方向に周回する。そして、第1カッター101及び第2カッター102は、第1カッター101及び第2カッター102の支持円盤2,2の間に形成される空間のうち、送出方向視において、第1カッター101に設けられたナイフ1の刃先111aが周回する軌道である第1領域T1と第2カッター102に設けられたナイフ1の刃先111aが周回する軌道である第2領域T2とが重複する領域である裁断空間Sを、金属薄帯Rが通過するように配置されている。
【0051】
本実施形態に係る裁断装置100によると、金属薄帯Rが送出方向Fと直交する2方向から挟断されるため、送出される金属薄帯Rが送出方向Fに対して傾斜することが抑制されている。即ち、本実施形態に係る裁断装置100によれば、従来よりも金属薄帯Rを細かく裁断することができる。その結果、金属薄片Cをより小さくすることができるため、より密実に金属薄片Cを集積することができる。そうすることによって、金属薄片Cをより容易に成形することが可能となる。
【0052】
更に、本実施形態に係る裁断装置100は、金属薄帯Rが送出方向視において第1回転軸A1と第2回転軸A2とを接続した線分を含む仮想直線Hと平行に、且つ、仮想直線H
と重複した姿勢で、裁断空間Sに送出される。そうすることによって、第1カッター101及び第2カッター102のナイフ1が金属薄帯Rを厚み方向から切断することができる。
【0053】
尚、本実施形態に係る第1カッター101及び第2カッター102は、8個のナイフ1が配置されているが、本発明はこれに限定しない。即ち、ナイフ1は第1カッター101及び第2カッター102のそれぞれに、1つ以上設けられていればよい。
【0054】
また、本実施形態に係る第1カッター101及び第2カッター102は、複数のナイフ1が設けられており、且つ、送出方向視において、それらが重複しない位置に設けられている。即ち、支持円盤2に設けられた複数のナイフ1は、回転軸方向視において、ずれた位置に配置されている。そうすることにより、各カッターにナイフ1が1つ設けられている場合と比較して、各カッターが1回転する際の金属薄帯Rの切断回数を増やすことができる。即ち、単位時間当たりの裁断回数を増やすことができ、より一層、細かく金属薄帯Rを裁断することができる。
【0055】
また、第1カッター101及び第2カッター102に設けられた複数のナイフ1は、第1回転軸A1及び第2回転軸A2回りに、等角度間隔で配置されている。即ち、支持円盤2に設けられた複数のナイフ1は、回転軸方向視において等角配置されている。そうすることにより、第1カッター101や第2カッター102の重量バランスが安定し、金属薄帯Rの裁断時に第1カッター101及び第2カッター102の回転がぶれて、互いのナイフ1が衝突することが抑制される。
【0056】
[変形例1]
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図8Aは、本実施形態の変形例に係る裁断装置100Aの支持円盤2Aを示す図で、
図8Bは本実施形態の変形例に係る第1カッター101Aの上面図である。尚、本実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことで、詳細な説明は割愛する。
【0057】
図8Aに示すように、支持円盤2Aは、上面だけでなく下面にも固定溝22が形成されている。固定溝22は、支持円盤2Aの上面に形成された上面固定溝群22Uと下面に形成された下面固定溝群22Dに分けられる。上面固定溝群22Uは、等角度間隔に8つ形成された固定溝22によって構成されている。また、下面固定溝群22Dは、上面固定溝群22Uと同様に、等角度間隔に8箇所に形成された固定溝22によって構成されている。即ち、上面固定溝群22U及び下面固定溝群22Dは、それぞれ、角度間隔45[°]となるように配置された8つの固定溝22によって形成されている。但し、上面固定溝群22U及び下面固定溝群22Dは、互いの固定溝22が重複しないように、支持円盤2Aの中心軸回りにずれて配置されている。より詳細には、上面固定溝群22Uと下面固定溝群22Dは、軸回りに22.5[°]ずれて配置されている。即ち、送出方向視において、支持円盤2Aに形成された固定溝22は、22.5[°]で16箇所に等角配置されている。
【0058】
図8Bに示すように、変形例に係る第1カッター101Aは、支持円盤2Aの各固定溝22にナイフ1が取り付けられている。ナイフ1は、送出方向視において22.5[°]の等角度間隔で16個配置されている。即ち、第1カッター101Aの支持円盤2Aに設けられた16個のナイフ1は、回転軸方向視において等角配置されている。変形例に係る第1カッター101Aによれば、支持円盤2Aの両面にナイフ1を配置することによって、支持円盤2Aの片面だけでは所望の数量のナイフ1を取り付けるだけの十分なスペースが得られない場合でも、支持円盤2Aの両面のスペースを使用することによって、所望数量のナイフ1を重複することなく取り付けることができる。その結果、本変形例によれば
、支持円盤2Aと支持円盤2の回動軸方向視における面積が同じでありながらも、支持円盤2の片面にのみナイフ1を配置する第1カッター101と比較して、単位時間当たりの裁断回数をより増やすことができる。より詳細には、第1カッター101が1回転する間の裁断回数が8回であるのに対して、第1カッター101Aは、1回転当たりにつき16回裁断することができる。尚、本変形例に係る第1カッター101Aは、支持円盤2Aの、回転軸方向における両端面に複数のナイフ1を配置したが、複数のナイフ1が配置される位置は、支持円盤2Aの両端面に限定されない。即ち、複数のナイフ1は、支持円盤2Aにおいて回転軸方向にずれた2面に設けられていればよい。そうすることによって、1面にのみナイフ1を配置する場合と比較して、より多くのナイフ1を配置することができ、金属薄帯Rの裁断回数をより増やすことができる。
【0059】
更に、変形例に係る第1カッター101Aは、上面固定溝群22Uのナイフ1と下面固定溝群22Dのナイフ1とが、回動軸方向視において、互い違いとなるように配置されている。換言すると、回転軸方向視において、複数のナイフ1は、上面固定溝群22Uのナイフ1と下面固定溝群22Dのナイフ1とが1個飛ばしで配置されている。そうすることにより、複数のナイフ1を支持円盤2Aの両面に対して配置するときに、両面のスペースを有効に利用することができ、より好適にナイフ1を配置することができる。尚、本変形例に係る第1カッター101Aは、16つのナイフ1が配置されているが、ナイフ1の本数はこれに限定されない。
【0060】
[変形例1の実施例]
次に、
図8Bに例示される第1カッター101A及び第1カッター101Aと同一の形状を有する第2カッター102Aを備えた裁断装置100Aを用いて金属薄帯Rを連続裁断するときの、各種条件の関係性について説明する。裁断装置100Aは、裁断装置100よりも金属薄帯Rを細かく裁断することができる。以下、裁断装置100Aを用いて、目標とする最大の裁断長さ以下の金属薄片Cを生成するための各種条件について説明する。
【0061】
図9A、
図9Bは、第1カッター101A及び第2カッター102Aを用いて金属薄帯Rを裁断する状態を示した説明図である。
図9Aと
図9Bに示す裁断装置100は同一である。
図9Aは、第1カッター101Aの上面に設けられたナイフ1と第2カッター102Aの上面に設けられたナイフ1とが同時に金属薄帯Rを切断する場合の説明図であり、
図9Bは、第1カッター101Aの上面に設けられたナイフ1と第2カッター102Aの下面に設けられたナイフ1とが同時に金属薄帯Rを切断する場合の説明図である。尚、
図9A、
図9Bでは、ガイド部材104の表示を省略している。裁断装置100Aによる金属薄帯Rの裁断は、第1カッター101Aと第2カッター102Aが同じ回転方向Dへ回転することによって行われる。このとき、上記の場合において、単位時間当たりの金属薄帯Rの切断回数が最も少なくなる。即ち、上記何れかの場合において、生成される金属薄片Cの長さ(裁断長さ)Lが最大となる。上記以外の場合では、第1カッター101Aのナイフ1と第2カッター102Aのナイフ1がそれぞれ別のタイミングで金属薄帯Rを切断するため、単位時間当たりの金属薄帯Rの切断回数が上記の場合よりも多くなる。即ち、金属薄片Cの長さLは上記の場合よりも小さくなる。以上より、
図9A及び
図9Bに示す場合において、金属薄帯Rの裁断長さLがL0以下となる条件が、長さL0以下の金属薄片Cを生成するための条件となる。以下、L0を目標とする最大の裁断長さ(目標最大裁断長さ)とし、裁断長さLをL0以下とする為の条件について、詳しく説明する。
【0062】
裁断装置100Aの第1カッター101Aと第2カッター102Aは、互いに同一の形状を有している。
図8Bに例示されるように、第1カッター101A(第2カッター102A)には、支持円盤2Aの両面にナイフ1が等角配置されている。より詳細には、支持円盤2Aにおける上面のナイフ1と下面のナイフ1は、送出方向視において、等角度間隔
で、互い違いとなるように配置されている。支持円盤2Aにおける上面のナイフ1の数量及び角度間隔と、下面のナイフ1の数量及び角度間隔は同一である。ここで、支持円盤2Aの片面に配置される複数のナイフ1の角度間隔をαとする。αは度数法で表記される。ナイフ1の角度間隔がαであるため、支持円盤2Aの片面に設けられるナイフ1の本数は、360[°]/αとなる。送出方向視において、第1カッター101Aと第2カッター102Aには、支持円盤2Aの上面と下面のナイフ1がα/2の角度間隔で2×360[°]/α個、配置されている。
【0063】
図9A、
図9Bに示すように、送出方向F(支持円盤2Aの回動軸方向)において、第1カッター101Aのナイフ1と、第2カッター102Aのナイフ1は、交互に位置している。以下、第1カッター101Aにおいて支持円盤2Aの上面に設けられた複数のナイフ1を総称してナイフU1、下面に設けられた複数のナイフ1を総称してナイフD1、第2カッター102Aにおいて支持円盤2Aの上面に設けられた複数のナイフ1を総称してナイフU2、下面に設けられた複数のナイフ1を総称してナイフD2、と称する。ナイフ1は、送出方向Fの後方(上方)から前方(下方)に、ナイフU1、ナイフU2、ナイフD1、ナイフD2の順に配置されている。
【0064】
ここで、支持円盤2Aの送出方向F(支持円盤2Aの回動軸方向)におけるナイフU1とナイフU2の間隔の長さをa、ナイフU1とナイフD1、ナイフU2とナイフD2の間隔の長さをbとする。長さaは、送出方向Fにおける第1カッター101Aと第2カッター102Aの離間距離に等しい。第1カッター101Aと第2カッター102Aは同一の構成であるため、ナイフD1とナイフD2の間隔の長さもaとなる。尚、第1カッター101Aのナイフ1と第2カッター102Aのナイフ1とが交互に配置されるための条件は、b>a>0である。
【0065】
第1カッター101及び第2カッター102の回転速度は同一である。第1カッター101及び第2カッター102の回転速度をβ、ガイド部材104から金属薄帯Rが送出される送出速度をγとする。金属薄帯Rを裁断長さLで裁断する際のパラメータは、a、b、α、β、γとなる。以下、金属薄帯Rがナイフ1によって切断される位置をYと表記する。
【0066】
第1カッター101及び第2カッター102が1回転する際に要する時間は、1/βとなる。ナイフU1は、第1カッター101が1回転する毎に360/α回、金属薄帯Rを切断するため、ナイフU1が金属薄帯Rを1回切断するために要する時間は、1/β÷360/α=α/(360β)となる。金属薄帯Rの送出速度はγであるので、ナイフU1が金属薄帯Rを1回切断する間に、金属薄帯Rは、γ×α/(360β)=γα/(360β)の長さ分、送出される。以降、γα/(360β)をδと表記する。
【0067】
ここで、ナイフU1が最初に金属薄帯Rを切断してから、第1カッター101Aがαだけ回転する回数をNとし、ナイフU1が最初に金属薄帯Rを切断する位置をY=0とする。そうすると、ナイフU1が金属薄帯Rを切断する位置Yu1は、Yu1=δNで表すことができる。
【0068】
まず、
図9Aを参照して、ナイフU1とナイフU2が同時に金属薄帯Rを切断するように第1カッター101及び第2カッター102が同期して回転する場合について説明する。このとき、送出方向視において隣接するナイフU1とナイフD1、ナイフU2とナイフD2は、α/2の角度間隔で配置されるため、ナイフD1及びナイフD2は、ナイフU1及びナイフU2よりもN=0.5回分、遅れて回転し、金属薄帯Rを同時に切断する。ナイフU2が金属薄帯Rを切断してから、第2カッター102がN=0.5回転するまでに、金属薄帯Rは、0.5δ送出される。ナイフU1とナイフD2との距離はa+bである
ため、0.5δ≦a+bであると、ナイフU1が金属薄帯Rを切断してから、第2カッター102がN=0.5回転したときに、金属薄帯Rは、送出方向FにおいてナイフD2の位置に至っていないため、ナイフD2が金属薄帯Rを切断することなく空振りする。従って、ナイフU1が金属薄帯Rを切断してから、第2カッター102がN=0.5回転したときにナイフD2が金属薄帯Rを切断するための条件は、0.5δ>a+bとなる。そうすることにより、ナイフD1とナイフD2のうち、ナイフD2の方が送出方向Fにおいて前方に位置するため、第1カッター101及び第2カッター102が1回転する間に、全てのナイフ1が金属薄帯Rを切断することができる。
【0069】
ナイフU2はナイフU1と同時に金属薄帯Rを切断し、ナイフU1とナイフU2との距離がaであるため、ナイフU2が切断する位置は、Yu2=δN−aで表すことができる。ナイフD1はナイフU1よりもN=0.5回分、遅れて回転し、ナイフU1とナイフD1との距離はbであるため、ナイフD1が金属薄帯Rを切断する位置Yd1は、Yd1=δ(N+0.5)−bと表すことができる。同様に、ナイフD2はナイフU2よりもN=0.5回分、遅れて回転し、ナイフU1とナイフD2との距離はa+bとなるため、ナイフD1が金属薄帯Rを切断する位置Yd2は、Yd2=δ(N+0.5)−(a+b)で表すことができる。
【0070】
以上のように、ナイフU1とナイフU2が同時に金属薄帯Rを切断するように同期している場合、Yu1=δN、Yu2=δN−a、Yd1=δ(N+0.5)−b、Yd2=δ(N+0.5)−(a+b)となる。0.5δ−(a+b)>0であるため、Yd1>Yd2>Yu1>Yu2となる。よって、裁断される金属薄片Cの長さLは、Yd1(n)−Yd2(n)、Yd2(n)−Yu1(n)、Yu1(n)−Yu2(n)、Yu2(n+1)−Yd1(n)となる(nは0以上の自然数)。即ち、Lは、L=a、0.5δ−(a+b)、0.5δ+(b−a)となる。
【0071】
ここで、α=45[°]、β=5000[rpm]、γ=40[m/s]とすると、δ=60[mm]となる。更に、a=5、b=10とすると、L=5、15、35となる。
【0072】
次に、ナイフU1とナイフD2が同時に金属薄帯Rを切断するように第1カッター101及び第2カッター102が同期して回転する場合について、
図9Bを参照して説明する。このとき、ナイフD1及びナイフU1がナイフU1及びナイフD2よりもN=0.5回分、遅れて回転し、金属薄帯Rを同時に切断する。ナイフU1及びナイフD2が金属薄帯Rを切断してから、第1カッター101がN=0.5回転するまでに、金属薄帯Rは、0.5δ送出される。ナイフU1とナイフD1との距離はbであるため、ナイフU1が金属薄帯Rを切断してから、第1カッター101がN=0.5回転したときにナイフD1が金属薄帯Rを切断するための条件は、0.5δ>bとなる。ナイフD1とナイフU2のうち、ナイフD1の方が送出方向Fにおいて前方に位置するため、上記の条件下では、第1カッター101及び第2カッター102が1回転する間に全てのナイフ1が金属薄帯Rを切断することができる。
【0073】
ナイフU1が金属薄帯Rを切断する位置Yu1は、Yu1=δNとなる。ナイフU2は、ナイフU1よりも、N=0.5回分、遅れて回転する。ナイフU1とナイフU2との距離はaであるため、ナイフU2が切断する位置は、Yu2=δ(N+0.5)−aで表すことができる。また、ナイフD1もナイフU1よりもN=0.5回分、遅れて回転し、ナイフU1とナイフD1との距離はbであるため、ナイフD1が金属薄帯Rを切断する位置Yd1は、Yd1=δ(N+0.5)−bとなる。ナイフD2は、ナイフU1と同期し、ナイフU1との距離がa+bとなるため、ナイフD1が金属薄帯Rを切断する位置Yd2は、Yd2=δN−(a+b)となる。
【0074】
以上のように、ナイフU1とナイフD2が同時に金属薄帯Rを切断するように同期している場合、Yu1=δN、Yu2=δ(N+0.5)−a、Yd1=δ(N+0.5)−b、Yd2=δN−(a+b)となる。b>a、0.5δ−b>0であるため、Yu2>Yd1>Yu1>Yd2となる。よって、裁断される金属薄片Cの長さLは、Yu2(n)−Yd1(n)、Yd1(n)−Yu1(n)、Yu1(n)−Yd2(n)、Yd2(n+1)−Yu2(n)となる(nは0以上の自然数)。即ち、Lは、L=b−a、0.5δ−b、a+b、0.5δ−aとなる。
【0075】
ここで、α=45[°]、β=5000[rpm]、γ=40[m/s]とすると、δ=60[mm]となる。更に、a=5[mm]、b=10[mm]とすると、L=5、15、20となる。
【0076】
以上より、第1カッター101及び第2カッター102が同期して同時に金属薄帯Rを切断する場合、金属薄片Cの長さLは、L=0.5δ+(b−a)が最大となる。第1カッター101及び第2カッター102が同期せずに、ナイフU1、ナイフD1、ナイフU2、ナイフD2がそれぞれ別のタイミングで金属薄帯Rを切断する場合、金属薄片Cの長さLは、上記よりも小さくなる。従って、金属薄帯Rの目標最大裁断長さをL0とし、長さL0以下の金属薄片Cを生成する場合、0.5δ+(b−a)≦L0、即ち、0.5γα/(360β)+(b−a)<L0となるように、a、b、α、β、γを設定すればよい。ここで、α/2=φとすると、上記の条件式は、γφ/(360β)+(b−a)≦L0となる。
【0077】
例えば、送出方向視におけるナイフ1の角度間隔φ=22.5[°]である裁断装置100Aを用いて、金属薄帯Rの送り速度γ=40[m/s]、ローター回転数β=5000[rpm]の条件で、長さL0=35[mm]以下の金属薄片Cを生成したい場合、a、bの条件は、30+(b−a)≦35となる。即ち、b−a≦5[mm]となるように、裁断装置100Aを設計すればよい。
【0078】
[変形例2]
図10は、本実施形態に係るガイド部材105の変形例を示す図である。
図10に示すように、変形例に係るガイド部材105の薄帯送出口105bは、長方形状を有している。薄帯送出口105bは、薄帯送出口105bの長手方向に沿う一対の対向する第1縁e1,e1と、短手方向に沿う一対の対向する第2縁e2,e2によって形成される。即ち、薄帯送出口105bが直線形状を有する第1縁e1,e1及び第2縁e2,e2によって矩形状に形成されている。また、ガイド部材105は、薄帯送出口105bが、送出方向視において仮想直線Hと平行となるように配置される。そのため、金属薄帯Rが薄帯通路105cの内部で厚み方向に振れる場合に、第1縁e1,e1が金属薄帯Rに厚み方向から当接する。直線形状を有する第1縁e1,e1が金属薄帯Rに厚み方向から当接するため、金属薄帯Rの姿勢や形状を変えることなく、金属薄帯Rの振れを抑制することができる。その結果、金属薄帯Rの姿勢及び位置を維持した状態で、より確実に裁断空間S内の所望の位置に金属薄帯Rを送出することができる。
【0079】
また、金属薄帯Rの裁断において、ガイド部材105は、薄帯送出口105bの長手方向が仮想直線Hと平行となるように配置される。即ち、薄帯送出口105bの短手方向(第2縁e2,e2の延伸方向)が金属薄帯Rの厚み方向と一致し、薄帯送出口105bの長手方向(第1縁e1,e1の延伸方向)が金属薄帯Rの幅方向と一致する。更に、第1縁e1,e1は、金属薄帯Rの幅よりも長く形成されている。そして、第2縁e2,e2は、金属薄帯Rの厚さよりも長く、且つ、金属薄帯Rの幅よりも短く形成されている。そうすることにより、金属薄帯Rがガイド部材105の薄帯通路105cを通過する過程で金属薄帯Rに送出方向F回りに捩れる方向の力が作用しても、第1縁e1,e1が金属薄
帯Rに当接することで、金属薄帯Rが大きく捩れることが抑制される。その結果、金属薄帯Rが大きく捩れることなく所望の姿勢で薄帯送出口105bから送出される。第2縁e2,e2は、より短い方が好ましい。第2縁e2,e2を短くすることによって、金属薄帯Rが僅かに振れたり捩れたりしたときに、第2縁e2,e2が金属薄帯Rに当接する。その結果、金属薄帯Rの振れや捩れを確実に抑制することができる。
【0080】
また、ガイド部材105は、薄帯送出口105bが送出方向視において裁断空間Sの範囲内に収まればよく、薄帯導入口105aと薄帯送出口105bの形状や大きさが異なっていてもよい。
図11は、変形例のバリエーションを示す図である。
図11(a)に示すように、変形例に係るガイド部材105は、薄帯導入口105aと薄帯送出口105bの大きさが同じであってもよい。また、ガイド部材105は、
図11(b)〜(d)に示すように、薄帯送出口105bよりも薄帯導入口105aの方が大きくなっていてもよい。ガイド部材105は、
図11(b)に示すように、薄帯導入口105aから薄帯送出口105bに至るまでに、薄帯通路105cの断面積が漸減するテーパ形状を有していてもよいし、
図11(c)、(d)に示すように、薄帯通路105cの途中から断面積が漸減する形状を有していてもよい。薄帯導入口105aを薄帯送出口105bよりも大きく形成することによって、金属薄帯Rの入り口が大きくなるため、冷却ロールから送出される金属薄帯Rをより確実にガイド部材105へ導入することができる。また、薄帯送出口105bを小さく形成することにより、第1縁e1,e1と第2縁e2,e2が金属薄帯Rに当接することによって、金属薄帯Rの振れ幅を小さくすることができる。その結果、より確実に裁断空間S内の所望の位置に金属薄帯Rを送出することができる。
【0081】
尚、薄帯送出口105bよりも薄帯導入口105aを大きく形成する場合、
図11(c)、(d)に示す形状よりも、
図11(b)に示すような薄帯導入口105aから薄帯送出口105bにかけて薄帯通路104cの断面積が減少する形状の方がより好ましい。そうすることによって、薄帯通路104cの中途で金属薄帯Rが引っ掛かることや、詰まることを抑制し、滞りなくスムーズに金属薄帯Rを薄帯送出口105bから送出することができる。また、薄帯導入口105aは矩形状を有しているが、変形例に係るガイド部材105は、薄帯送出口105bが矩形状であればよく、薄帯導入口105aが矩形状でなく円形であってもよい。
【0082】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る裁断装置について説明する。第2実施形態に係る裁断装置100Bは、第1実施形態に係る裁断装置100と、回収部40に代えて予備成形部60と押出固化成形部70を有する点で相違している。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同一の構成については、同一の符号を付すことで説明は割愛する。
【0083】
図12は、第2実施形態に係る裁断装置100Bを示す図である。
図12に示すように、裁断装置100Bは、不活性ガス雰囲気下のチャンバー50内に配置され、裁断部10より集積した金属薄片Cを圧縮してプリフォーム体Pを成形する予備成形部60と、チャンバー50の外部の大気雰囲気下に配置され、プリフォーム体Pを押出成形してブロック体Bとして固化する押出固化成形部70と、を有する。
【0084】
予備成形部60は、裁断部10の下方に配置される圧縮機601を有する。圧縮機601は、裁断部10で裁断された金属薄片Cを集積可能であり、集積した金属薄片Cを圧縮することによって凝縮し、プリフォーム体Pを成形する。
【0085】
押出固化成形部70は、チャンバー50外部の大気雰囲気下に配置される。押出固化成形部70は、押出成形機701を有する。押出成形機701は、コンテナ701aに収納したプリフォーム体Pをステム701bで圧縮してステム701bに形成されたダイス7
01cより押し出すことによって固化し、加工性に優れたブロック体Bを成形する。尚、本実施形態に係る押出固化成形の工法は、直接押出や間接押出等、種々の工法を選択することができる。
【0086】
[第2実施形態に係る金属素材の成形方法]
次に、第2実施形態に係る裁断装置100Bを用いて、マグネシウム基合金の金属素材を成形する手順について説明する。
図13は、第2実施形態に係る金属素材の成形方法の手順を示す図である。
図13に示すように、第2実施形態に係る金属素材の成形裁断方法は、薄帯裁断工程の後に、予備成形工程と、押出固化成形工程とを含む点で、第1実施形態に係る金属薄帯の連続裁断方法と相違している。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の工程については、詳細な説明を割愛する。
【0087】
第2実施形態では、
図13に示すステップS01〜ステップS03によって、マグネシウム基合金の金属薄片Cを生成した後、ステップS04において、集積した金属薄片Cを予備成形部60の圧縮機601によって所定体積となるまで圧縮し、プリフォーム体Pを成形する(予備成形工程)。プリフォーム体Pは金属薄片Cが密実に凝縮した状態で成形される。但し、プリフォーム体Pの状態では、金属薄片Cは完全には押し固められていない。尚、以上説明したステップS01の溶融工程からステップS04の予備成形工程までは、チャンバー50内部の不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0088】
次に、ステップS05において、プリフォーム体Pを押出成形し、ブロック体Bに固化する(押出固化成形工程)。このとき、この前工程である予備成形工程において、集積した金属薄片Cを所定体積となるまで圧縮してプリフォーム体Pとしていることで、材料であるマグネシウム基合金の表面積が小さくなっている。そのため、プリフォーム体Pは、大気中の酸素によって表面に酸化物が付着し難くなっている。その結果、押出固化成形工程は、チャンバー50の外部の大気雰囲気下で行うことができる。コンテナ701aに収納されたプリフォーム体Pはステム701bで圧縮されてダイス701cより押し出される過程で塑性変形し、滑らかな表面を有する棒状のブロック体Bとして成形される。以上により、マグネシウム基合金の金属素材としてのブロック体Bが成形される。
【0089】
[第2実施形態の作用・効果]
第2実施形態に係る連続裁断方法は、溶融工程から予備成形工程までの工程を不活性ガス雰囲気化で行うことによって、マグネシウム基合金に酸化物が生成されることが好適に抑制されている。そうすることによって、延性や展性などの機械的特性に富む金属素材としてのブロック体Bを成形することができる。
【0090】
尚、上記した種々の内容は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、可能な限り組み合わせることができる。