特許第6814171号(P6814171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814171
(24)【登録日】2020年12月22日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20201228BHJP
【FI】
   G01N35/10 K
   G01N35/10 D
   G01N35/10 C
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-51283(P2018-51283)
(22)【出願日】2018年3月19日
(65)【公開番号】特開2019-163991(P2019-163991A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2020年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】足立 作一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 興子
(72)【発明者】
【氏名】藪谷 千枝
(72)【発明者】
【氏名】小西 励
(72)【発明者】
【氏名】牧野 彰久
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−239334(JP,A)
【文献】 特開昭63−066466(JP,A)
【文献】 特開2015−132521(JP,A)
【文献】 特開2008−241508(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0136251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルが分注された反応容器に試薬を分注する分注プローブと、
前記分注プローブを制御する制御装置とを有し、
前記制御装置は、
前記分注プローブが、前記試薬を収容する試薬容器から前記試薬を吸引する吸引工程と、
前記分注プローブが、前記吸引工程で前記試薬容器から吸引した前記試薬のうち、第1の液量を前記反応容器に吐出し、前記反応容器内で前記試薬と前記サンプルとが混合された混合液のうち、第2の液量を前記反応容器から吸引する第1の吐出吸引工程と、
前記分注プローブが、前記反応容器から吸引した前記混合液及び前記吸引工程で前記試薬容器から吸引し、前記反応容器に吐出せずに前記分注プローブに残った前記試薬をあらかじめ定められた吐出量を吐出する最終吐出工程と、
前記第1の吐出吸引工程の後、前記最終吐出工程の前に、前記分注プローブが、前記反応容器から吸引した前記混合液及び前記吸引工程で前記試薬容器から吸引し、前記反応容器に吐出せずに前記分注プローブに残った前記試薬のうち、第3の液量を前記反応容器に吐出し、前記混合液のうち、第4の液量を前記反応容器から吸引する第2の吐出吸引工程と、
を実行するよう制御され、
前記第1の液量は前記第3の液量よりも少なく、前記第1の液量及び前記第3の液量は、前記あらかじめ定められた吐出量よりも少ない自動分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の液量は前記第3の液量の半分よりも多い自動分析装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2の液量は、前記第1の吐出吸引工程後に前記反応容器に残る前記混合液の量が所定量以上となるように設定され、
前記第4の液量は、前記第2の吐出吸引工程後に前記反応容器に残る前記混合液の量が所定量以上となるように設定される自動分析装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記サンプルは血液であり、前記試薬は希釈液であり、
前記あらかじめ定められた吐出量は、前記血液を前記希釈液により希釈する濃度によって定められる自動分析装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記制御装置は、前記吸引工程の前に、
前記分注プローブが、前記サンプルを収容するサンプル容器から前記サンプルを前記反応容器に分注するサンプル分注工程を実行するよう制御する自動分析装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記サンプル容器が配置されるサンプルディスクと、
複数の反応セルが円周上に配置される反応ディスクとを有し、
前記分注プローブの軌道は、前記サンプルディスク上の前記サンプル容器、前記反応ディスク上の反応セル、前記試薬容器及び前記反応容器に分注動作可能なように設定される自動分析装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記分注プローブは円筒形状を有する自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の生体由来のサンプルに含まれる成分を自動的に分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルに含まれる成分量を分析する分析装置として、光源からの光を、サンプルと試薬とが混合した反応液に照射して得られる単一又は複数の波長の透過光量または散乱光量を測定して、光量と濃度の関係から成分量を算出する自動分析装置が知られている。
【0003】
自動分析装置には、生化学検査や血液学検査の分野等で生体サンプル中の目的成分の定量、定性分析を行う生化学分析用の装置や、サンプルである血液の凝固能を測定する血液凝固分析用の装置等がある。
【0004】
特許文献1に記載された生化学分析部と血液凝固分析部を集約した自動分析装置において、サンプル分注プローブは、血液凝固時間測定部で測定される分析項目に応じて、反応セル(生化学分析用)または反応容器(血液凝固分析用)にサンプルを分注する。血液凝固分析項目として、PT(プロトロンビン時間)項目やFbg(フィブリノーゲン)項目がある。前者はサンプル濃度の変化に対してどの程度凝固時間が変化するか基準となるキャリブレーションを測定する場合、サンプルをあらかじめ設置されている希釈液とサンプル分注プローブにて反応容器内で混合する必要がある。また後者はキャリブレーション測定においても、通常測定においても、サンプルと希釈液とをサンプル分注プローブにて反応容器内で混合する必要がある。希釈したサンプルの入った反応容器は検出部に移設され、血液凝固反応開始のための試薬を分注されることにより凝固するまでの時間が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2013/187210号
【特許文献2】特開2015−132521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような血液凝固分析において、サンプルと希釈液との混合が不十分であると、凝固試薬吐出後に測定する凝固時間再現性が悪化する。サンプルと希釈液とを十分に混合させるために攪拌機構部を追加すればよいが、装置が複雑となりコストがかかる。このような攪拌機構なしにサンプルと希釈液とを混合させる方法として、希釈液をサンプルに勢いよく吐出させることが考えられる。しかし、少量のサンプルには効果が薄いと考えられるし、吐出の勢いにより混合液に気泡が生じると、凝固時間測定の妨げになる。気泡の発生を防止して攪拌機構なしにサンプルと希釈液とを混合させる方法として、特許文献2は希釈液を吐出した後にプローブによる吸引吐出動作(ピペッティング動作という)を行うことを開示している。
【0007】
しかしながら、特許文献2では遺伝子検査装置を対象としており、このような装置ではサンプルのコンタミネーションを確実に防止するために、プローブの先端に使い捨てのディスポーザブルチップを装着して分注を行う。ディスポーザブルチップは円錐形状をしているため、ピペッティング動作によりディスポーザブルチップ内部の混合液に乱流が発生して攪拌が進みやすいと考えられる。これに対して、血液凝固分析の場合は洗浄によりコンタミネーションを防止できるため、ディスポーザブルチップは使用されない。このため、ピペッティング動作をするとしても、円筒形状の金属製プローブで行うことになる。サンプル分注プローブは、内径が一定で細いため、プローブ内部では混合しづらいという問題がある。また、特許文献2では吐出した全量の液体を吸引する動作を繰り返すようにしているが、装置のスループットを維持するためには、数秒の短時間の間に希釈液を導入し、十分に攪拌することが求められる。できるだけ多くの液量を繰り返し吸引吐出すれば攪拌は進行するが、スループットの観点からはできるだけ短時間で行わなければならないという制約もある。
【0008】
以上のように、管の内径が一定である分注プローブによって、少量のサンプルと試薬(希釈液)とを、短時間で効率的に攪拌することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の形態である自動分析装置は、サンプルが分注された反応容器に試薬を分注する分注プローブと、分注プローブを制御する制御装置とを有し、制御装置は、分注プローブが、試薬を収容する試薬容器から試薬を吸引する吸引工程と、分注プローブが、吸引工程で試薬容器から吸引した試薬のうち、第1の液量を反応容器に吐出し、反応容器内で試薬とサンプルとが混合された混合液のうち、第2の液量を反応容器から吸引する第1の吐出吸引工程と、分注プローブが、反応容器から吸引した混合液及び吸引工程で試薬容器から吸引し、反応容器に吐出せずに分注プローブに残った試薬をあらかじめ定められた吐出量を吐出する最終吐出工程と、第1の吐出吸引工程の後、最終吐出工程の前に、分注プローブが、反応容器から吸引した混合液及び吸引工程で試薬容器から吸引し、反応容器に吐出せずに分注プローブに残った試薬のうち、第3の液量を反応容器に吐出し、混合液のうち、第4の液量を反応容器から吸引する第2の吐出吸引工程と、を実行するよう制御され、第1の液量は第3の液量よりも少なく、第1の液量及び第3の液量は、あらかじめ定められた吐出量よりも少ない。
【0010】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0011】
少量のサンプルと試薬を効率的に短時間で混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】自動分析装置の構成を示す図である。
図2】血液凝固時間項目の測定動作のフローチャートである。
図3】希釈液の段階吐出動作を説明する図である。
図4】検体モード条件及び試験結果の一覧である。
図5】段階吐出シーケンスにおける吐出/吸引量の一覧である。
図6】試験結果のグラフである。
図7】試験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の構成を示す図である。ここでは、自動分析装置の一態様として、ターンテーブル方式の生化学分析部と血液凝固時間分析ユニットとを備えた複合型の自動分析装置について説明する。
【0014】
自動分析装置1は、その主要な構成として、筐体上に反応ディスク13、サンプルディスク11、第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16、血液凝固時間分析ユニット2、光度計19が配置されている。
【0015】
反応ディスク13は、時計回り、反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、反応セル(生化学分析用)26がその円周上に複数個配置される。
【0016】
サンプルディスク11は、時計回り、反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、標準サンプルや被検サンプル等のサンプルを収容するサンプル容器27がその円周上に複数個配置される。
【0017】
第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16は、それぞれ時計回り、反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、サンプルに含まれる各検査項目の成分と反応する成分を含有する試薬を収容する試薬容器30がその円周上に複数個配置される。なお、図には示していないが、第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16では、保冷機構等を備えることにより、配置された試薬容器30内の試薬を保冷しながら保持することが可能である。第1試薬ディスク15または第2試薬ディスク16上に2試薬系で使用される第1試薬および第2試薬両方を配置する構成でもよく、第1試薬ディスク15および第2試薬ディスク16の各々に、第1試薬および第2試薬のいずれか一方を配置する構成でもよい。試薬を第1試薬ディスク15に配置するか、第2試薬ディスク16に配置するかを操作者が自由に設定できる構成でもよい。
【0018】
サンプルディスク11と反応ディスク13との間にはサンプル分注プローブ12が配置されており、サンプル分注プローブ12の回転動作によってサンプルディスク11上のサンプル容器27、反応ディスク13上の反応セル26、および血液凝固時間分析ユニット2の第1の分注ポジション18に配置された反応容器(血液凝固分析用)28、試薬容器(血液凝固分析用)29において、サンプルまたは試薬の分注動作が可能なように配置されている。なお、試薬容器(血液凝固分析用)29の設置場所に保冷機構等を備えることにより、配置された試薬容器(血液凝固分析用)29内の試薬を保冷しながら保持することが可能である。この例では、試薬容器29の試薬として希釈液を入れる。
【0019】
サンプル分注プローブ12の軌道12a上には、図示しないサンプル分注プローブ用洗浄槽が配置されており、プローブの洗浄を行うことができる。図1に示したサンプル分注プローブ12の軌道12a(破線)はサンプル分注プローブ12の回転軌道の一部である。
【0020】
同様に、第1試薬ディスク15と反応ディスク13との間には第1試薬分注プローブ17が、第2試薬ディスク16と反応ディスク13との間には第2試薬分注プローブ14が配置されており、それぞれ回転動作により反応ディスク13上の反応セル26と第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16上の試薬容器30との間で分注動作が可能とされている。
【0021】
血液凝固時間分析ユニット2は、その主要な構成として、血液凝固時間検出部21、血液凝固試薬分注プローブ20、反応容器供給部25、第1の分注ポジション18、反応容器移送機構23、反応容器廃棄口24、血液凝固試薬分注機構用洗浄槽40を有している。血液凝固時間検出部21は、反応容器(血液凝固分析用)28を保持可能な図示しない反応容器保持部と、保持された反応容器(血液凝固分析用)28に光を照射する光源と、照射された光を検出する光検出部を備えた反応ポート301を複数有している。反応容器(血液凝固分析用)28には検体(サンプル)間でのコンタミを防止するため、ディスポーザブル反応容器が用いられる。検体に対する分析項目として血液凝固時間測定が含まれる場合に、反応容器内にフィブリンによる血餅の固化が生じるためである。
【0022】
次に、自動分析装置1に係る制御系、及び信号処理系について簡単に説明する。制御装置105はインターフェース101を介して、サンプル分注制御部201、試薬分注制御部(1)206、試薬分注制御部(2)207、血液凝固試薬分注制御部204、A/D変換器(1)205、A/D変換器(2)203、移送機構制御部202に接続されており、各制御部に対して指令となる信号を送信する。
【0023】
サンプル分注制御部201は、制御装置105から受けた指令に基づいて、サンプル分注プローブ12によるサンプルの分注動作を制御する。
【0024】
また、試薬分注制御部(1)206および試薬分注制御部(2)207は、制御装置105から受けた指令に基づいて、第1試薬分注プローブ17、第2試薬分注プローブ14による、試薬の分注動作を制御する。
【0025】
また、移送機構制御部202は、制御装置105から受けた指令に基づいて、反応容器移送機構23による、反応容器供給部25、第1の分注ポジション18、血液凝固時間検出部21の反応ポート301、反応容器廃棄口24の間における反応容器(血液凝固分析用)28の移送動作を制御する。
【0026】
また、血液凝固試薬分注制御部204は、制御装置105から受けた指令に基づいて、サンプル分注プローブ12によって分注され、反応ポート301に移載されたサンプルを収容する反応容器(血液凝固分析用)28に対して、血液凝固試薬分注プローブ20によって血液凝固用の試薬の分注を行う。あるいは、反応セル(生化学分析用)26内で混合されたサンプルと血液凝固分析用の第1試薬との混合液である前処理液を、血液凝固試薬分注プローブ20によって空の反応容器(血液凝固分析用)28に対して分注し、その後、前処理液を収容する反応容器(血液凝固分析用)28に対して、血液凝固分析用の第2試薬の分注を行う。
【0027】
なお、本実施例においては、制御装置105からの指令に基づいて複数の制御部が各々複数の機構を制御しているが、制御装置105が複数の機構を直接制御するような構成でもよい。
【0028】
A/D変換器(1)205によってデジタル信号に変換された反応セル(生化学分析用)26内の反応液の透過光または散乱光の測光値、およびA/D変換器(2)203によってデジタル信号に変換された反応容器(血液凝固分析用)28内の反応液の透過光または散乱光の測光値は、制御装置105に取り込まれる。
【0029】
インターフェース101には、測定結果をレポート等として出力する際に印字するためのプリンタ106、記憶装置であるメモリ104や外部出力メディア102、操作指令等を入力するためのキーボードなどの入力装置107、画面表示するための表示装置103が接続されている。表示装置103には、例えば液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等が用いられる。
【0030】
この自動分析装置1による生化学項目の分析は、次の手順で行われる。まず、操作者はキーボード等の入力装置107を用いて各サンプルに対し検査項目を依頼する。依頼された検査項目についてサンプルを分析するために、サンプル分注プローブ12は分析パラメータに従ってサンプル容器27から第2の分注ポジション31に位置づけられた反応セル(生化学分析用)26へ所定量のサンプルを分注する。
【0031】
サンプルが分注された反応セル(生化学分析用)26は、反応ディスク13の回転によって移送され、試薬分注ポジションに停止する。第1試薬分注プローブ17、第2試薬分注プローブ14のピペットノズルは、該当する検査項目の分析パラメータにしたがって、反応セル(生化学分析用)26に所定量の試薬液を分注する。なお、サンプルと試薬の分注順序は、この例とは逆にサンプルより試薬が先であってもよい。
【0032】
その後、図示しない攪拌機構により、サンプルと試薬との攪拌が行われ、混合される。この反応セル(生化学分析用)26が測光位置を横切る時、光度計19により反応液の透過光または散乱光が測光される。測光された透過光または散乱光は、A/D変換器(1)205により光量に比例した数値のデータに変換され、インターフェース101を経由して、制御装置105に取り込まれる。
【0033】
この変換された数値を用い、検査項目毎に指定された分析法により予め測定しておいた検量線に基づき、濃度データが算出される。各検査項目の分析結果としての成分濃度データは、プリンタ106や表示装置103の画面に出力される。
【0034】
サンプルと試薬が混合された反応セル(生化学分析用)26が、反応ディスク13の回転によって移送され、第3の分注ポジション32に位置づけられたタイミングで、サンプル分注プローブ12が混合液を吸引し、第2の分注ポジション31に位置づけられた別の反応セル(生化学分析用)26に分注することもできる。第2の分注ポジション31および第3の分注ポジション32はそれぞれ、サンプル分注プローブの軌道12aと反応ディスク13の円周上に配置された反応セル(生化学分析用)26の回転軌道の交点にそれぞれ配置されている。
【0035】
以上の測定動作が実行される前に、操作者は、分析に必要な種々のパラメータの設定や試薬およびサンプルの登録を、表示装置103の操作画面を介して行う。また、操作者は、測定後の分析結果を表示装置103上の操作画面により確認する。
【0036】
血液凝固時間項目の測定動作について説明する。測定動作が実行される前に、操作者は、分析に必要な種々のパラメータの設定や試薬、サンプルの登録を、表示装置103の操作画面を介して予め行っておく。また、操作者は、測定結果を表示装置103上の操作画面により確認することができる。
【0037】
まず、操作者はキーボード等の情報入力装置107を用いて各サンプルに対し検査項目を依頼する。ここで各サンプルの測定シーケンスは検査項目の設定に応じて決定される。図2にサンプルを希釈する必要のあるPT項目のキャリブレーション時や、Fbg項目におけるフローを示す。
【0038】
血液凝固時間測定が開始される(S01)と、依頼された検査項目についてサンプルを分析するために、反応容器移送機構23は反応容器(血液凝固分析用)28を反応容器供給部25から第1の分注ポジション18へ移送する(S02)。サンプル分注プローブ12は分析パラメータに従ってサンプル容器27から第1の分注ポジション18に配置された反応容器(血液凝固分析用)28へ所定量のサンプルを分注する(S03)。
【0039】
その後、サンプル分注プローブ12の軌道12a上に配置されている洗浄ポート(図示せず)によってサンプル分注プローブ12を洗浄する。洗浄終了後、サンプル分注プローブ12が分析パラメータに従って試薬容器(血液凝固分析用)29から希釈液を吸引する(S04)。
【0040】
サンプル分注プローブ12は、サンプルと希釈液とを攪拌混合するため、第1の分注ポジション18に配置された反応容器(血液凝固分析用)28へ所定量の希釈液を段階吐出することによりサンプルと希釈液を混合する(S05)。この動作については図3を用いて後述する。サンプルが分注された反応容器(血液凝固分析用)28は、反応容器移送機構23によって第1の分注ポジション18から血液凝固時間検出部21の反応ポート301へ移送され、所定の温度へ昇温される(S06)。
【0041】
一方、反応ディスク13上には、サンプルが分注されない空の反応セル(生化学分析用)26が発生するように反応セルの使用が制御されている。第1試薬分注プローブ17は、該当する検査項目の分析パラメータにしたがって、反応ディスク13上の空の反応セル(生化学分析用)26に凝固反応開始試薬を分注する。反応ディスク13には、図示しない恒温槽が設けられているため、反応セル(生化学分析用)26に分注された凝固反応開始試薬は37℃に温められる。その後、反応ディスク13の回転によって凝固反応開始試薬が分注された反応セル(生化学分析用)26は、血液凝固試薬分注プローブ20が吸引可能な位置まで移送される。反応ディスク13の回転軌道と血液凝固試薬分注プローブ20の軌道の交点に凝固反応開始試薬が分注された反応セル(生化学分析用)26が移送されると、血液凝固試薬分注プローブ20は反応セル(生化学分析用)26に分注されている凝固反応開始試薬を吸引する。血液凝固試薬分注プローブ20は試薬昇温機能を有しており、図示しない昇温機構により凝固反応開始試薬を所定の温度に昇温した後、反応容器(血液凝固分析用)28に凝固反応開始試薬を吐出する。このとき、血液凝固試薬分注プローブ20では、先に反応容器(血液凝固分析用)28に収容されているサンプルに対して、凝固反応開始試薬を吐出するときの勢いによって、反応容器(血液凝固分析用)28内における希釈されたサンプルと凝固反応開始試薬の攪拌混合を行う吐出攪拌を行う。
【0042】
凝固反応開始試薬がサンプルに対して吐出された時点から、反応容器(血液凝固分析用)28に照射された光の透過光または散乱光の測光が開始される。測光された透過光または散乱光は、A/D変換器(2)203により光量に比例した数値のデータに変換され、インターフェース101を経由して、制御装置105に取り込まれる。反応終了後、この変換された数値を用い、血液凝固反応に要した時間(血液凝固時間)を求める(S07)。
【0043】
その後、反応が終了した反応容器(血液凝固分析用)28は反応容器移送機構23によって反応容器廃棄口24へ移送され、廃棄される(S08)。凝固反応開始試薬吸引後の反応セル(生化学分析用)26には、第1試薬分注プローブ17もしくは第2試薬分注プローブ14により洗浄水または洗剤が吐出され、その後、図示しない反応セル洗浄機構にて洗浄され、凝固時間測定を終了する(S09)。
【0044】
次に図3を用いて、ステップS05においてサンプル分注プローブ12が実施する、サンプルに希釈液を段階的に吐出吸引しながら吐出する吐出吸引攪拌動作について説明する。図3にはステップS03〜S05におけるサンプル分注プローブ12の動作を示している。
【0045】
前述のように、サンプル容器27よりサンプル41を一定量吸引する(S031)。分注プローブは分注するサンプルや試薬の量を精密に制御するために、シリンジポンプにより吸引量、吐出量が制御されている。サンプル41は分節空気42によりシステム水43と隔離された状態で吸引される。分節空気42によりサンプルや試薬がシステム水43と混合されることなく、シリンジポンプによりシステム水43が吸引、吐出されるのに応じて、サンプル41が吸引、吐出される。反応容器28が移送されている第1の分注ポジション18に移動後、サンプル分注プローブ12は反応容器28内にサンプル41をサンプル分注量S1だけ分注する(S032)。
【0046】
サンプル分注プローブ洗浄後、サンプル分注プローブ12は、試薬容器29から希釈液44を吸引し(S04)、第1の分注ポジション18に移動する(S051)。その後、サンプルに対して、希釈液を段階的に吐出吸引しながら最終的に希釈倍率に応じた所定の分注量だけ吐出するが、希釈液の吐出はサンプルまたは混合液に気泡を発生させないように、プローブの先端をサンプルまたは混合液に接触させた状態で行う。第1の吐出吸引(S052)では、反応容器28内のサンプル41に希釈液44をVaだけ吐出し、サンプルと希釈液の混合液45をVbだけ吸引する。次に第2の吐出吸引(S053)では、反応容器28内の混合液45にプローブ内の混合液45及び希釈液44をVcだけ吐出し、混合液45をVdだけ吸引する。最終吐出(S054)では、反応容器28内の混合液45にプローブ内の混合液45及び希釈液44を最終吐出量Vdil吐出する。なお、最終吐出量Vdilはサンプル41に混合される希釈液44の分注量DL1に等しくなる。その後、サンプル分注プローブ12は反応容器28から引き上げられる(S055)。
【0047】
第1及び第2の吐出吸引においては、吸引時、最初のサンプル分注量S1の量に関わらず、混合液45b、45dは反応容器28内に一定量残すようにしている。混合液に気泡が混入すると凝固時間測定の妨げになるためである。後述する比較実験においては、混合液45b、45dがそれぞれ5μLになるようにしている。この量は、少量であることが望ましいが、混合液に気泡が入らないようサンプル分注プローブ12が安定的に動作できる程度以上の量になるよう定めればよい。段階的に吐出させるため、
Va<Vc<Vdil・・・(1)
とした。これにより、混合液45は徐々に増大し反応容器28内において効率的に攪拌することができる。
【0048】
Va〜Vdまでの条件を変更した場合のFbg項目分析性能を比較した。試薬には積水メディカル社製コアグピア(登録商標)Fbgを用い、サンプルにはコアグピア用コントロールP−N I、P−N IIを用いた。キャリブレーション測定では希釈倍率を異ならせた混合液を生成するため、希釈濃度を変化させた減量モード、標準モード、増量モードの3種類で実験を行った。ただし、コントロールP−N IIは低濃度検体サンプルであり、これを更に減量モードで希釈する必要性は低いため、減量モードについては除いている。それぞれのサンプル分注量S1、希釈液分注量DL1の条件及びその結果を図4に示している。各サンプル及びモードについて、本実施例として説明した段階吐出を複数の条件で行い、吐出吸引攪拌の結果を確認した。比較例として、段階吐出を行わず、吐出のみで攪拌させた結果を「段階吐出なし」として示した。
【0049】
各モードにおける吐出/吸引量を図5に示す。段階吐出は、2つの条件で行い、条件1では第1の吐出量Vaが第2の吐出量Vcの半分以下であり、条件2では第1の吐出量Vaが第2の吐出量Vcの半分以上かつ第2の吐出量Vc未満とした。減量モード、標準モード、増量モードのどのモードにおいても混合液45b、45dが5μLになるように吸引量Vb、Vdは検体モード(減量、標準、増量)で変化させた。繰り返し測定回数nは36とした。
【0050】
図4に示した結果を図6図7のグラフに示す。同時再現性とは、測定値の標準偏差を平均値で割った値である。すなわち、この値が低いほどばらつきが小さい、すなわち、サンプルと希釈液との攪拌が良好になされているということを示している。いずれの場合においても、比較例よりも、段階吐出を行った結果の方が小さいばらつきとなっているという結果が現れている。特に比較例における低濃度検体における標準モードの同時再現性は5.7%と極めて大きい。これに対して、段階吐出を行った場合はいずれの場合でも同時再現性は3.0%に抑えられており、良好な結果を得ている。特に、条件2はいずれの場合でも同時再現性が2.5%に抑えられており、特に良好な結果を得ることができた。すなわち、(1)の条件に加えて、
Vc/2<Va<Vc・・・(2)
の関係を満たすことが望ましいと考えられる。これは段階吐出において、サンプルと希釈液の混合液が徐々に大きくすることで、吐出吸引攪拌がより良好に行えることを示すものである。
【0051】
本実施例においては、希釈液を吐出する際に全量吐き出さずに、少量ずつの吐出吸引を繰り返し、かつ段階的に吐出量を増大させていき、最終的に所定量吐出させる。これにより吐出吸引する置換量が同じであっても短時間で効率的に攪拌することができることが確認できた。これは混合液を吸引してディスポーザルチップ内で攪拌する特許文献2とは異なり、プローブ内よりも反応容器内で、サンプルと希釈液とが混ざり合うためと考えられる。一気に全量吐出しても、特に気泡の発生を抑制しながらでは、サンプルの上に希釈液が重なるだけで混ざり合う効果は少ない。しかしながら、比較的少量の希釈液をサンプルに吐出した場合は、反応容器内のサンプルと希釈液とが吐出した勢いにて混ざりあう。さらに、吸引後先ほど吐出した量よりも多く混合液及び希釈液を吐出することで、段階的に反応容器内で攪拌が進行する。このことは、一旦吐出した後に吸引した量の合計(合計置換量)が最終吐出量以下であった方が攪拌が進行することを意味するため、装置のスループットの増大にも有効である。
【0052】
今回の比較においては、図3に示したような2回の吐出吸引を行っているが、1回だけの吐出吸引であっても、最終吐出量よりも少ない量が吐出吸引され、段階的に吐出量を増大させていれば同様の効果が得られると考えられる。この場合、吐出吸引での吐出量をVa、最終吐出量をVdilとすると、
Va<Vdil・・・(3)
であることを満たせればよく、同様の理由から、
Vdil/2<Va<Vdil・・・(4)
を満たしていることが望ましい。
【0053】
一方、装置のスループットの観点から許容できるのであれば、吐出吸引の回数を3回以上にすることを妨げない。この場合も段階的に吐出量を増大させることが好ましいので、第3の吐出吸引における吐出量をVeとすると、
Va<Vc<Ve<Vdil・・・(5)
を満たすようにする。
【0054】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施の形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の構成を加えることも可能である。例えば、サンプルに混合するのは希釈液に限定されるものではなく、試薬一般について適用可能である。また、サンプル分注プローブを例に説明したが、試薬分注プローブの場合であっても、同様の動作により同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・自動分析装置、2・・・血液凝固時間分析ユニット、11・・・サンプルディスク、12・・・サンプル分注プローブ、12a・・・サンプル分注プローブの軌道、13・・・反応ディスク、14・・・第2試薬分注プローブ、15・・・第1試薬ディスク、16・・・第2試薬ディスク、17・・・第1試薬分注プローブ、18・・・第1の分注ポジション、19・・・光度計、20・・・血液凝固試薬分注プローブ、21・・・血液凝固時間検出部、23・・・反応容器移送機構、24・・・反応容器廃棄口、25・・・反応容器供給部、26・・・反応セル(生化学分析用)、27・・・サンプル容器、28・・・反応容器(血液凝固分析用)、29・・・試薬容器(血液凝固分析用)、30・・・試薬容器、31・・・第2の分注ポジション、32・・・第3の分注ポジション、41・・・サンプル、42・・・分節空気、43・・・システム水、44・・・希釈液、45・・・サンプルと希釈液との混合液、101・・・インターフェース、102・・・外部出力メディア、103・・・表示装置、104・・・メモリ、105・・・制御装置、106・・・プリンタ、107・・・入力装置、201・・・サンプル分注制御部、202・・・移送機構制御部、203・・・A/D変換器(2)、204・・・血液凝固試薬分注制御部、205・・・A/D変換器(1)、206・・・試薬分注制御部(1)、207・・・試薬分注制御部(2)、301・・・反応ポート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7