(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族化合物(A)が、フェノール化合物と、カルボキシル基もしくはカルボキシエステル基を有する芳香族アルデヒド、及び/又は、カルボキシル基もしくはカルボキシエステル基を有する芳香族ケトンと、の重縮合物である、請求項1〜3のいずれかに記載のレジスト組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
[レジスト組成物]
本発明のレジスト組成物は、下記式(1)で表される芳香族化合物(A)と脂肪族アルデヒド(B)とを必須の反応原料とするノボラック型フェノール樹脂(C)の金属塩を含む。
【0014】
【化2】
(前記式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又はハロゲン原子を表す。
m及びnは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
R
1が複数ある場合、複数のR
1は互いに同じでも異なってもよい。
R
2が複数ある場合、複数のR
2は互いに同じでも異なってもよい。
R
3は、水素原子、炭素原子数1〜9の脂肪族炭化水素基、又は炭化水素基上にアルコキシ基、ハロゲン基及び水酸基から選択される置換基を1以上有する構造部位を表す。)
【0015】
レジスト組成物は、通常、酸の作用により分解して極性が変化する樹脂(酸分解性樹脂)、及び光の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有する。このようなレジスト組成物では、露光することにより光酸発生剤が酸を発生し、発生した酸の作用によって樹脂の極性が変化して、所望のパターンが形成される。しかしながら、酸の拡散というムラの出やすい機構を伴うため、形成されるパターンの解像度が不十分となる場合がある。
【0016】
本発明のレジスト組成物は、露光によって金属塩構造が分解して金属イオンが脱離し、ノボラック型フェノール樹脂(C)の極性が変化することで所望のパターンが形成される。酸の拡散というムラの出やすい機構を伴わない本発明のレジスト組成物では、高い解像度が得られる。特に電子線、極端紫外線等の短波長の光を用いた露光では、解像度やパターン形状の凹凸が問題となり易いが、本発明のレジスト組成物はこの問題を解消することが可能である。
【0017】
ノボラック型フェノール樹脂(C)の金属塩は、ノボラック型フェノール樹脂(C)が有する官能基の一部又は全部が金属塩構造となっていればよい。
ノボラック型フェノール樹脂(C)の金属塩は、好ましくはノボラック型フェノール樹脂(C)のカルボン酸金属塩である。前記ノボラック型フェノール樹脂(C)のカルボン酸金属塩は、好ましくは下記式(X)で表される構造である。
【0018】
【化3】
(前記式(X)中、
R
1、R
2、R
3、m及びnは、前記式(1)のR
1、R
2、R
3、m及びnと同じである。
*は、前記式(1)の3つの芳香環のいずれかとの結合点であり、2つの*は同一の芳香環に結合してもよいし、それぞれ異なる芳香環に結合してもよい。
Metは、金属原子を表す。
nは1以上の整数を表す。)
【0019】
前記式(X)で表される構造について、例えば前記金属原子の価数が1、2、3又は4の場合、それぞれ下記式(X1)、(X2)、(X3)又は(X4)で表される構造となる。
【0022】
本発明のレジスト組成物においては、ノボラック型フェノール樹脂(C)中に金属塩構造が含まれればよく、当該金属塩構造の含有率は、ノボラック型フェノール樹脂(C)の全繰り返し単位中、例えば1〜80モル%であり、好ましくは10〜65モル%であり、より好ましくは20〜50モル%である。
【0023】
本発明のレジスト組成物において、ノボラック型フェノール樹脂(C)の金属塩構造が形成されているかどうかは、実施例に記載の方法により確認する。
【0024】
以下、本発明のレジスト組成物が含む成分について説明する。
[ノボラック型フェノール樹脂]
ノボラック型フェノール樹脂(C)は、下記式(1)で表される芳香族化合物(A)と、脂肪族アルデヒド(B)とを必須の反応原料とする樹脂である。
【0025】
【化6】
(前記式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又はハロゲン原子を表す。
m及びnは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
R
1が複数ある場合、複数のR
1は互いに同じでも異なってもよい。
R
2が複数ある場合、複数のR
2は互いに同じでも異なってもよい。
R
3は、水素原子、炭素原子数1〜9の脂肪族炭化水素基、又は炭化水素基上にアルコキシ基、ハロゲン基及び水酸基から選択される置換基を1以上有する構造部位を表す。)
【0026】
前記式(1)において、R
1、R
2及びR
3の炭素原子数1〜9の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の、炭素原子数1〜9のアルキル基及び炭素原子数3〜9のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0027】
前記式(1)において、R
1及びR
2のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0028】
前記式(1)において、R
1及びR
2のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0029】
前記式(1)において、R
1及びR
2のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0030】
前記式(1)において、R
1及びR
2のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0031】
前記式(1)において、R
3の「炭化水素基上にアルコキシ基、ハロゲン基及び水酸基から選択される置換基を1以上有する構造部位」としては、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基、ヒドロキシ基で置換されたアルキルアルコキシ基等が挙げられる。
【0032】
前記式(1)において、n及びmは、それぞれ好ましくは2又は3の整数である。
n及びmがそれぞれ2である場合、2つR
1及び2つR
2が、それぞれ独立に、炭素原子数1〜3のアルキル基であると好ましい。この時、2つのR
1及び2つのR
2は、それぞれフェノール性水酸基の2,5−位に結合していることが好ましい。
【0033】
前記式(1)で表される芳香族化合物(A)は、同一構造のものを単独で用いてもよいし、異なる分子構造を有する複数の化合物を用いてもよい。
【0034】
前記式(1)で表される芳香族化合物(A)は、例えば、アルキル置換フェノール(a1)とカルボキシル基を有する芳香族アルデヒド(a2)との縮合反応により調製することができる。
前記式(1)で表される芳香族化合物(A)は、例えば、アルキル置換フェノール(a1)とカルボキシル基を有する芳香族ケトン(a3)との縮合反応により調製することができる。
【0035】
アルキル置換フェノール(a1)は、アルキル基が置換しているフェノールであり、当該アルキル基としては炭素原子数1〜8のアルキル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0036】
アルキル置換フェノール(a1)の具体例としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−シクロヘキシルフェノール、m−シクロヘキシルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール等のモノアルキルフェノール;2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール、2,4−キシレノール、2,6−キシレノール等のジアルキルフェノール;2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノールなどが挙げられる。これらのなかでも、ジアルキルフェノールが好ましく、2,5−キシレノール、2,6−キシレノールがより好ましい。アルキル置換フェノール(a1)は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
カルボキシル基を有する芳香族アルデヒド(a2)は、ベンゼン、ナフタレン、フェノール、レゾルシン、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等の芳香核上にホルミル基を有する化合物、ホルミル基の他にさらにアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等を有する化合物が挙げられる。
【0038】
カルボキシル基を有する芳香族アルデヒド(a2)の具体例としては、4−ホルミル安息香酸、2−ホルミル安息香酸、3−ホルミル安息香酸、4−ホルミル安息香酸メチル、4−ホルミル安息香酸エチル、4−ホルミル安息香酸プロピル、4−ホルミル安息香酸イソプロピル、4−ホルミル安息香酸ブチル、4−ホルミル安息香酸イソブチル、4−ホルミル安息香酸ターシャリーブチル、4−ホルミル安息香酸シクロヘキシル、4−ホルミル安息香酸ターシャリーオクチル等が挙げられる。これらのなかでも4−ホルミル安息香酸が好ましい。カルボキシル基を有する芳香族アルデヒド(a2)は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
カルボキシル基を有する芳香族ケトン(a3)は芳香環に少なくとも1つのカルボキシル基又はそのエステル誘導体とカルボニル基とを有する化合物である。
【0040】
カルボキシル基を有する芳香族ケトン(a3)の具体例としては、例えば、2−アセチル安息香酸、3−アセチル安息香酸、4−アセチル安息香酸、及び2−アセチル安息香酸メチル、2−アセチル安息香酸エチル、2−アセチル安息香酸プロピル、2−アセチル安息香酸イソプロピル、2−アセチル安息香酸ブチル、2−アセチル安息香酸イソブチル、2−アセチル安息香酸ターシャリーブチル、2−アセチル安息香酸シクロヘキシル、2−アセチル安息香酸ターシャリーオクチル等が挙げられる。これらのうち、2−アセチル安息香酸及び4−アセチル安息香酸が好ましい。
芳香族ケトン(a3)は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
脂肪族アルデヒド(B)の具体例としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、1,3,5−トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、テトラオキシメチレン、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン等が挙げられる。脂肪族アルデヒド化合物(B)は、1種類を単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0042】
脂肪族アルデヒド(B)は、ホルムアルデヒドが好ましい。
脂肪族アルデヒド(B)として、ホルムアルデヒドとホルムアルデヒド以外の脂肪族アルデヒドを使用する場合、前記ホルムアルデヒド以外の脂肪族アルデヒドの使用量は、ホルムアルデヒド1モルに対して、0.05〜1モルの範囲とすることが好ましい。
【0043】
ノボラック型フェノール樹脂(C)の製造方法は、好ましくは下記3つの工程1〜3を含む。
(工程1)
アルキル置換フェノール(a1)とカルボキシル基を有する芳香族アルデヒド(a2)とを酸触媒存在下で、必要に応じて溶媒を用いて、60〜140℃の範囲で加熱し、重縮合することにより、芳香族化合物(A)を得る。
(工程2)
工程1で得られた芳香族化合物(A)を反応溶液中から単離する。
(工程3)
工程2で単離した芳香族化合物(A)と脂肪族アルデヒド(B)とを酸触媒存在下で、必要に応じて溶媒を用いて、60〜140℃の範囲で加熱し、重縮合することにより、ノボラック型フェノール樹脂(C)を得る。
【0044】
上記工程1及び工程3で用いる酸触媒としては、例えば、酢酸、シュウ酸、硫酸、塩酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、酢酸マンガン等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの酸触媒の中でも、活性に優れる点から、工程1では硫酸、パラトルエンスルホン酸が好ましく、工程3では硫酸、シュウ酸、酢酸亜鉛が好ましい。なお、酸触媒は、反応前に加えても、反応途中で加えても構わない。
【0045】
上記工程1及び工程3において必要に応じて用いる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のポリオール;2−エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの溶媒は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの溶媒の中でも、得られる化合物の溶解性に優れる点から、2−エトキシエタノールが好ましい。
【0046】
工程1におけるアルキル置換フェノール(a1)とカルボキシル基を有する芳香族アルデヒド(a2)との仕込み比率[(a1)/(a2)]は、未反応のアルキル置換フェノール(a1)の除去性、生成物の収率及び反応生成物の純度に優れることから、モル比で1/0.2〜1/0.5の範囲が好ましく、1/0.25〜1/0.45の範囲がより好ましい。
【0047】
工程3における芳香族化合物(A)と脂肪族アルデヒド(B)との仕込み比率[(A)/(B)]は、過剰な高分子量化(ゲル化)を抑制でき、レジスト用フェノール樹脂として適正な分子量のものが得られることから、モル比で1/0.5〜1/1.2の範囲が好ましく、1/0.6〜1/0.9の範囲がより好ましい。
【0048】
工程2における芳香族化合物(A)の反応溶液中からの単離方法としては、例えば、反応溶液を反応生成物が不溶又は難溶である貧溶媒(S1)に投入して得られた沈殿物を濾別した後、反応生成物を溶解し貧溶媒(S1)にも混和する溶媒(S2)に溶解し、再度貧溶媒(S1)に投入して生じた沈殿物を濾別する方法が挙げられる。
【0049】
この際に用いる前記貧溶媒(S1)としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヒキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これらの貧溶媒(S1)の中でも、効率よく酸触媒の除去も同時に行えることから、水、メタノールが好ましい。一方、前記溶媒(S2)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のポリオール;2−エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトンなどが挙げられる。また、前記貧溶媒(S1)として水を用いた場合には、前記(S2)としては、アセトンが好ましい。なお、前記貧溶媒(S1)及び溶媒(S2)は、それぞれ1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0050】
上記工程1及び工程3において溶媒として、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いた場合、80℃以上で加熱すれば、反応により生成した前記芳香族化合物(A)は溶媒中に溶解するので、そのまま冷却することで、前記芳香族化合物(A)の結晶が析出するため、これを濾別することで前記芳香族化合物(A)を単離することができる。この場合は、前記貧溶媒(S1)及び溶媒(S2)を使用しなくてもよい。
【0051】
上記の工程2の単離方法により、前記式(1)で表される芳香族化合物(A)を得ることができる。芳香族化合物(A)の純度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャート図から算出される純度で90%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましく、98%以上であることが特に好ましい。芳香族化合物(A)の純度はGPCのチャート図の面積比から求めることができ、後述する測定条件で測定したものである。
【0052】
ノボラック型フェノール樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜35,000の範囲が好ましく、2,000〜25,000の範囲がより好ましい。ノボラック型フェノール樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)を用いて、下記の測定条件で測定したものである。
【0053】
(GPCの測定条件)
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」
カラム:昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)
+昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)
+昭和電工株式会社製「Shodex KF803」(8.0mmФ×300mm)
+昭和電工株式会社製「Shodex KF804」(8.0mmФ×300mm)
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.30」
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料:樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
標準試料:下記単分散ポリスチレン
【0054】
(標準試料:単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
【0055】
[金属塩を形成する金属原子]
ノボラック型フェノール樹脂(C)と金属塩を形成する金属原子としては、カルシウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、チタニウム、インジウム、スズ等が挙げられる。これらの中でも、カルシウム、亜鉛、銅、鉄、ジルコニウム、ハフニウム及びスズが好ましい。前記金属原子は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
ノボラック型フェノール樹脂(C)の金属塩は、ノボラック型フェノール樹脂(C)を含む組成物を加熱しながら、金属原子の塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の金属塩、及び又は金属酸化物を添加することにより形成することができる。これらのうち、硝酸塩及び又は金属酸化物が好ましい。
【0057】
前記金属塩及び又は金属酸化物の添加量は、ノボラック型フェノール樹脂(C)100質量部に対して例えば1〜100質量部であり、好ましくは10〜50質量部である。
【0058】
[アルカリ可溶性樹脂]
本発明のレジスト組成物では、ノボラック型フェノール樹脂(C)がアルカリ可溶性樹脂であるが、ノボラック型フェノール樹脂(C)以外のアルカリ可溶性樹脂(D)を含んでもよい。
【0059】
アルカリ可溶性樹脂(D)は、アルカリ水溶液に可溶な樹脂であればよく、クレゾールノボラック樹脂が好ましい。前記クレゾールノボラック樹脂は、フェノール系化合物及びアルデヒド化合物を反応原料とし、これらを縮合させたノボラック型フェノール樹脂であり、好ましくはo−クレゾール、m−クレゾール及びp−クレゾールからなる群から選択される1以上のフェノール系化合物を必須の反応原料とする樹脂である。
【0060】
前記クレゾールノボラック樹脂の反応原料となるフェノール系化合物としては、クレゾール以外のフェノール又はフェノール誘導体を併用してもよい。クレゾール以外のフェノール系化合物としては、例えば、フェノール;2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール;o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール等のブチルフェノール;p−ペンチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール;p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1置換フェノール;1−ナフトール、2−ナフトール等の縮合多環式フェノール;レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール等が挙げられる。前記クレゾール以外のフェノール系化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
アルカリ可溶性樹脂(D)の調製にクレゾールとクレゾール以外のフェノール系化合物を反応原料とする場合、前記クレゾール以外のフェノール系化合物の使用量は、クレゾール1.0モルに対して0.05〜1.0モルの範囲とすると好ましい。
【0062】
前記クレゾールノボラック樹脂の原料となるアルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらのうちホルムアルデヒドが好ましい。前記アルデヒド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記クレゾールノボラック樹脂の原料となるアルデヒド化合物としてホルムアルデヒドを用いる場合、ホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物を用いてもよい。前記クレゾールノボラック樹脂の調製にホルムアルデヒドとホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物を反応原料とする場合、前記ホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物の使用量は、前記ホルムアルデヒド1.0モルに対して0.05〜1.0モルの範囲とすると好ましい。
【0064】
前記フェノール系化合物及びアルデヒド化合物の縮合反応は、酸触媒存在下で行うことが好ましい。前記酸触媒としては、例えば、シュウ酸、硫酸、塩酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、酢酸マンガン等が挙げられる。これらのなかでも触媒活性に優れることから、シュウ酸が好ましい。前記酸触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。酸触媒は、反応前に仕込んでおいても、反応途中で加えてもどちらでもよい。
【0065】
前記クレゾールノボラック樹脂を調製する際におけるフェノール系化合物とアルデヒド化合物の仕込み比(モル比)は、アルデヒド化合物/フェノール系化合物が0.3〜1.6の範囲とすると好ましく、0.5〜1.3の範囲とするとより好ましい。
【0066】
前記クレゾールノボラック樹脂を調製する際におけるフェノール系化合物とアルデヒド化合物の反応の具体例としては、フェノール系化合物とアルデヒド化合物を酸触媒存在下60〜140℃に加熱して、重縮合反応を進行させ、次いで減圧条件下で脱水、脱モノマーを行う方法が挙げられる。
【0067】
本発明のレジスト組成物は、感光剤(E)を含んでもよく、含まなくてもよい。感光剤(E)としては、キノンジアジド基を有する化合物を用いることができる。このキノンジアジド基を有する化合物としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシ−2’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン系化合物;ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−{1−[4−〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール,3,3’−ジメチル−{1−[4−〔2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール等のビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン系化合物;トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン等のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体;ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン,ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタンなどの、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体などとナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸又はナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸等のキノンジアジド基を有するスルホン酸との完全エステル化合物、部分エステル化合物、アミド化物又は部分アミド化物などが挙げられる。これらの感光剤(E)は1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0068】
本発明のレジスト組成物の感光剤(E)の含有量は、良好な感度が得られ、所望のパターンが得られることから、ノボラック型フェノール樹脂(C)及びアルカリ可溶性樹脂(D)の合計100質量部に対して、3〜50質量部の範囲が好ましく、5〜30質量部の範囲がより好ましい。
【0069】
本発明のレジスト組成物は、好ましくは溶剤(F)を含む。前記溶剤(F)としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン;ジオキサン等の環式エーテル;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステルなどが挙げられる。これらの溶剤(F)は1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0070】
本発明のレジスト組成物における溶剤(F)の含有量は、組成物の流動性をスピンコート法等の塗布法により均一な塗膜を得られることから、本発明のレジスト組成物中の固形分濃度が15〜65質量%となる量とすることが好ましい。
【0071】
本発明のレジスト組成物は、ノボラック型フェノール樹脂(C)の金属塩、並びに任意にアルカリ可溶性樹脂(D)、感光剤(E)及び溶剤(F)を含めばよく、ノボラック型フェノール樹脂(C)の金属塩、並びに任意にアルカリ可溶性樹脂(D)、感光剤(E)、溶剤(F)及び成分(C)〜(F)以外の成分(例えば充填材、顔料、レベリング剤等の界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤から選択される1以上)を含んでもよく、本発明の効果を損なわない範囲で不可避不純物を含んでもよい。
【0072】
本発明のレジスト組成物は、例えば、溶媒(F)を除いた固形分の、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上又は100質量%が、ノボラック型フェノール樹脂(C)の金属塩、並びに任意にアルカリ可溶性樹脂(D)、感光剤(E)及び成分(C)〜(F)以外の成分からなっていてもよい。
【0073】
本発明のレジスト組成物は、ノボラック型フェノール樹脂(C)、金属塩、任意に配合する他のアルカリ可溶性樹脂(D)、感光剤(E)及び溶剤(F)、さらに必要に応じて加えた各種添加剤を通常の方法で、撹拌混合して均一な液とすることで調製できる。
【0074】
本発明のレジスト組成物に充填材、顔料等の固形のものを配合する際には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散、混合させることが好ましい。また、粗粒や不純物を除去するため、メッシュフィルター、メンブレンフィルター等を用いて該組成物をろ過することもできる。
【0075】
[パターン形成方法]
本発明のレジスト組成物は、ネガ型フォトレジスト組成物としてもポジ型フォトレジストとしても使用することができる。本発明のレジスト組成物を用いたパターンの製造方法は、本発明のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、前記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像してパターンを形成する工程とを含む。
【0076】
レジスト膜の形成、レジスト膜の露光、及び露光したレジスト膜の現像は公知の方法により実施できる。本発明のレジスト組成物を露光する光源としては、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等が挙げられる。これらの光源の中でも紫外光が好ましく、高圧水銀灯のg線(波長436nm)、i線(波長365nm)、EUVレーザー(波長13.5nm)が好適である。
【0077】
露光後の現像に用いるアルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ性物質;エチルアミン、n−プロピルアミン等の1級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の2級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の3級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミンなどのアルカリ性水溶液を使用することができる。これらのアルカリ現像液には、必要に応じてアルコール、界面活性剤等を適宜添加して用いることもできる。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常2〜5質量%の範囲が好ましく、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が一般的に用いられる。
【0078】
本発明のパターン形成方法は、電子デバイスの製造工程で好適に用いられる。上記電子デバイスとしては、家庭用電気機器、オフィスオートメーション機器、メディア関連機器、光学用機器、通信機器等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
【0080】
合成例1 カルボン酸含有フェノール性3核体化合物の合成
冷却管を設置した2000mlの4口フラスコに2,5−キシレノール293.2g(2.4mol)、4−ホルミル安息香酸150g(1mol)を仕込み、酢酸500mlに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸5mlを添加した後、マントルヒーターで100℃まで加熱し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた溶液に水を加えて粗生成物を再沈殿させた。粗生成物をアセトンに再溶解し、さらに水で再沈殿させた後、沈殿物を濾別して真空乾燥を行い、淡桃色結晶の前駆体化合物(A−1)283gを得た。
【0081】
得られた前駆体化合物(A−1)について、
13C−NMR測定を行った結果、下記構造式で表される化合物であることを確認した。また、GPCチャート図から算出される純度(GPC純度)は95.3%であった。前駆体化合物(A−1)のGPCチャートを
図1に、
13C−NMRチャートを
図2に示す。
【0082】
【化7】
【0083】
合成例2 フェノール性3核体化合物の合成
冷却管を設置した2000mlの4口フラスコに2,5−キシレノール293.2g(2.4mol)、2−ヒドロキシベンズアルデヒド122g(1mol)を仕込み、2−エトキシエタノール500mlに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸10mlを添加した後、マントルヒーターで100℃まで加熱し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた溶液に水を加えて粗生成物を再沈殿させた。粗生成物をアセトンに再溶解し、さらに水で再沈殿させた後、沈殿物を濾別して真空乾燥を行い、白色結晶の前駆体化合物(A’−2)283gを得た。
【0084】
得られた前駆体化合物(A’−2)について、
13C−NMR測定を行った結果、下記構造式で表される化合物であることを確認した。また、GPCチャート図から算出される純度(GPC純度)は98.2%であった。前駆体化合物(A’−2)のGPCチャートを
図3に、
13C−NMRチャートを
図4に示す。
【0085】
【化8】
【0086】
製造例1 カルボン酸含有ノボラック型フェノール樹脂の合成
冷却管を設置した1000mlの4口フラスコに前駆体化合物(A−1)188g、92%パラホルムアルデヒド16gを仕込んだ後、酢酸500mlに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸10mlを添加した後、オイルバスで80℃まで加熱し、4時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた溶液に水を加えて粗生成物を再沈殿させた。粗生成物をアセトンに再溶解し、さらに水で再沈殿させた後、沈殿物を濾別して、真空乾燥を行い橙色粉末のノボラック型フェノール樹脂(C−1)182gを得た。得られたノボラック型フェノール樹脂(C−1)の数平均分子量(Mn)は3946、重量平均分子量(Mw)は8504、多分散度(Mw/Mn)は2.16であった。ノボラック型フェノール樹脂(C−1)のGPCチャートを
図5に示す。
【0087】
製造例2 カルボン酸含有ノボラック型フェノール樹脂の合成
前駆体化合物(A−1)の代わりに、前駆体化合物(A−1)9.4g(0.025mol)及び前駆体化合物(A’−2)8.7g(0.025mol)を使用したほかは製造例1と同様にして、淡赤色粉末のノボラック型フェノール樹脂(C−2)16.8gを得た。得られたノボラック型フェノール樹脂(C−2)の数平均分子量(Mn)は3331、重量平均分子量(Mw)は6738、多分散度(Mw/Mn)は2.02であった。ノボラック型フェノール樹脂(C−2)のGPCチャートを
図6に示す。
【0088】
製造例3 ノボラック樹脂の合成
攪拌機、温度計を備えた2Lの4つ口フラスコに、2−ヒドロキシ安息香酸552g(4mol)、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン498g(3mol)、p−トルエンスルホン酸2.5g、トルエン500gを仕込み、120℃まで昇温し、脱メタノール反応を行った。減圧下で昇温、蒸留し、230℃、6時間減圧留去を行い、淡黄色固形のノボラック樹脂(C’−3)882gを得た。ノボラック樹脂(C’−3)の数平均分子量(Mn)は1016、重量平均分子量(Mw)は2782、多分散度(Mw/Mn)は2.74であった。ノボラック樹脂(C’−3)のGPCチャートを
図7に示す。
【0089】
製造例4 ノボラック樹脂の合成
攪拌機、温度計を備えた2Lの4つ口フラスコに、m−クレゾール648g(6mol)、p−クレゾール432g(4mol)、シュウ酸2.5g(0.2mol)、42%ホルムアルデヒド492gを仕込み、100℃まで昇温、反応させた。常圧で200℃まで脱水、蒸留し、230℃、6時間減圧蒸留を行い、淡黄色固形のノボラック樹脂(C’−4)736gを得た。
ノボラック樹脂(C’−4)のGPCは数平均分子量(Mn)は1450、重量平均分子量(Mw)は10316、多分散度(Mw/Mn)は7.116であった。ノボラック樹脂(C’−4)のGPCチャートを
図8に示す。
【0090】
実施例1
[樹脂溶液の調製]
製造例1で調製したノボラック型フェノール樹脂(C−1)とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を、ノボラック型フェノール樹脂(C−1):PGMEA=20:80の質量比で混合して、ノボラック型フェノール樹脂(C−1)のPGMEA溶液とし、この溶液を、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製ディスクフィルタで精密濾過を行い、樹脂溶液を調製した。
【0091】
[複合化評価]
30mlの耐熱チューブに得られた樹脂溶液5gと金属硝酸塩水和物であるCa(NO
3)
2・4H
2O、Zn(NO
3)
2・6H
2O、Cu(NO
3)
2・3H
2O及びFe(NO
3)
3・9H
2Oをそれぞれ0.2g加え、振盪処理しながら100℃まで加熱した。加熱後の樹脂溶液と金属硝酸塩水和物の混合物の状態を下記基準で評価した。ゲル化評価の結果を表1に示す。
○:不動ゲル化
△:粘調液体化
×:粘度変化なし
【0092】
上記評価により、不動ゲル化又は粘調液体化が確認されたので、さらに塩酸水溶液1gを加えた後、室温で3時間振盪処理を行った。振盪処理後の金属硝酸塩水和物含有樹脂溶液の状態を下記基準で評価し、金属塩構造の形成の有無を確認した。ゾル化評価の結果を表1に示す。
○:低粘度液体化
△:粘調液体化
×:状態変化なし
【0093】
表1の結果から、金属硝酸塩水和物を添加することで不動ゲル化又は粘調液体化し、さらに塩酸水溶液を加えることで低粘度液体化した製造例1のノボラック型フェノール樹脂(C−1)は、金属硝酸塩水和物の添加によって金属塩構造を形成していることが確認できた。
【0094】
金属硝酸塩水和物を添加することで不動ゲル化又は粘調液体化し、さらに塩酸水溶液を加えることで低粘度液体化することは、金属−ノボラック間の配位結合による架橋構造の形成と、その解離による架橋構造の分解が可逆的であることを示す挙動であることから、カルボン酸の金属塩を形成していることを示す。
【0095】
調製した樹脂溶液については、別途下記評価を行った。結果を表1に示す。
[アルカリ現像性評価]
得られた樹脂溶液を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させ、シリコンウェハー上に樹脂膜を形成した。得られたウェハーを現像液(2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)に60秒間浸漬後、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。現像液浸漬前後の膜厚を測定し、その差分を60で除した値をアルカリ現像性(ADR1(Å/s))とした。
【0096】
得られた樹脂溶液にノボラック型フェノール樹脂/P−200/PGMEA=20/5/75(質量比)となるように感光剤P−200(東洋合成工業株式会社製;4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール1モルと1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド2モルとの縮合物)を加え、この樹脂組成物を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させ、シリコンウェハー上に樹脂膜を形成した。得られたウェハーを現像液(2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)に60秒間浸漬後、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。現像液浸漬前後の膜厚を測定し、その差分を60で除した値をアルカリ現像性(ADR2(Å/s))とした。
【0097】
[耐熱性評価]
得られた樹脂溶液を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させ、シリコンウェハー上に樹脂膜を形成した。この樹脂膜をかき取り、ガラス転移点温度(以下、「Tg」と略記する。)を測定し、下記基準で評価した。
○:Tgが150℃以上
×:Tgが150℃以下
尚、Tgの測定は、示差熱走査熱量計(株式会社ティー・エイ・インスツルメント製「示差熱走査熱量計(DSC)Q100」)を用いて、窒素雰囲気下、温度範囲−100〜200℃、昇温速度10℃/分の条件で行った。
【0098】
実施例2及び比較例1−2
ノボラック型フェノール樹脂(C−1)の代わりに、表1に示す樹脂を用いた他は実施例1と同様にして樹脂溶液を調製し、評価した。結果を表1に示す。尚、ノボラック樹脂(C’−3)及びノボラック樹脂(C’−4)の樹脂溶液については、ゲル化評価で粘度変化がなかった場合は、ゾル化の評価は行わなかった。
【0099】
【表1】