特許第6814550号(P6814550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814550
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20210107BHJP
   F04D 15/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   F04B49/06 311
   F04D15/00 A
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-91003(P2016-91003)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-198162(P2017-198162A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】金田 一宏
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−027184(JP,A)
【文献】 特開2013−087665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水対象に給水するための給水装置であって、
水を移送する少なくとも1台のポンプと、
前記ポンプを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、書き換え可能な不揮発性メモリ、及び、外部表示器と通信するように構成された通信部を有し、
前記不揮発性メモリには、前記ポンプの台数、給水方式、及び、前記給水装置の構成を示す機種識別情報、のうちの少なくとも1つを含む装置情報と、ユーザーにより設定されて前記ポンプを制御するのに用いられる設定情報と、が記憶され、
前記制御部は、前記不揮発性メモリに記憶された前記装置情報に含まれる前記ポンプの台数と前記給水方式と前記機種識別情報との少なくとも1つの情報に基づいて前記設定情報の変更可能範囲を設定し、前記外部表示器から前記設定情報の変更指令を受信したときに、前記変更指令による前記設定情報の変更が前記変更可能範囲内のときには前記不揮発性メモリに記憶された前記設定情報を変更し、前記変更指令による前記設定情報の変更が前記変更可能範囲外のときには前記不揮発性メモリに記憶された前記設定情報を変更しない、
給水装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ポンプから吐出される水量が所定量より小さいときに前記不揮発性メモリに記憶された前記設定情報を変更する、
請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記設定情報には、前記設定情報の変更の制限を示す変更制限情報が含まれ、
前記制御部は、前記変更制限情報が前記設定情報の変更の禁止を示すときには、前記変更指令を受信しても前記不揮発性メモリに記憶された前記設定情報を変更しない、
請求項1又は2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記変更指令が所定の符号化規則に従っていないときには前記不揮発性メモリに記憶された前記設定情報を変更しない、
請求項1から3の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記変更指令により前記不揮発性メモリに記憶された前記設定情報を変更するときには、前記設定情報を変更する時刻、または、前記変更指令を受信した時刻を前記不揮発性メモリに記憶する、
請求項1から4の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記変更指令を受信して前記不揮発性メモリに記憶された前記設定情報を変更しないときに報知する、
請求項1から5の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ポンプを制御するためのメインボードと、前記通信部および前記不揮発性メモリが設けられた通信ボードと、を備え、
前記メインボードには、前記不揮発性メモリとは別にメモリが設けられ、
前記制御部は、前記給水装置の起動時に前記不揮発性メモリに記憶された前記装置情報を前記メモリに記憶する、
請求項1から6の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項8】
前記装置情報は、前記ポンプの台数を含み、
前記制御部は、前記ポンプの台数に基づいて、前記変更可能範囲の設定として前記ポンプの並列運転台数の上限値を設定する、
請求項1から7の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項9】
前記装置情報は、前記ポンプの台数を含み、
前記制御部は、前記ポンプ毎に当該ポンプの状態を示す出力信号を出力可能な所定数の出力端子を有し、前記ポンプの台数に基づいて、前記変更可能範囲の設定として、前記ポンプの台数より多い前記ポンプの状態が出力されないように前記出力信号の出力を制限する、
請求項1から8の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項10】
前記装置情報は、前記ポンプの口径と前記ポンプの出力、または前記機種識別情報を含み、
前記制御部は、前記ポンプの口径と前記ポンプの出力、または前記機種識別情報に基づいて、前記変更可能範囲の設定として、前記ポンプの設定圧の制限値を設定する、
請求項1から9の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項11】
前記装置情報は、前記ポンプの出力を含み、
前記制御部は、前記ポンプの出力に基づいて、前記変更可能範囲の設定として前記ポンプを駆動するためのインバータのストール電流の制限値を設定する、
請求項1から10の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項12】
前記装置情報は、前記給水方式を含み、
前記制御部は、前記給水方式が、前記給水装置の吸込側が受水槽に接続された受水槽方式である場合、前記変更可能範囲の設定として、前記受水槽に関する設定変更を許可する、
請求項1から11の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項13】
前記装置情報は、前記給水方式を含み、
前記制御部は、前記給水方式が、前記給水装置の吸込側が水道本管に直結された直結給水方式である場合、前記変更可能範囲の設定として、前記ポンプの吸込側圧力に対する制限値の設定変更を許可する、
請求項1から12の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項14】
前記装置情報は、前記給水方式を含み、
前記制御部は、前記給水方式が、前記給水装置の吐出側が高置水槽に接続された高置水槽方式である場合、前記変更可能範囲の設定として、前記高置水槽に関する設定変更を許可する、
請求項1から13の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項15】
前記ポンプの制御に関する情報を表示する表示部を更に備える、請求項1から14の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項16】
前記通信部は、前記ポンプの制御に関する情報を前記外部表示器に送信する、請求項1から15の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項17】
前記通信部は、前記外部表示器から電波を受信して該電波を電力に変換する制御部側アンテナ部である、請求項1から16の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項18】
前記通信部は、近距離無線通信(NFC)によって前記外部表示器と通信する、請求項1から17の何れか1項に記載の給水装置。
【請求項19】
給水対象に給水するための給水装置の制御方法であって、
前記給水装置のポンプの台数、給水方式、及び、前記給水装置の機種識別情報、のうちの少なくとも1つを含む装置情報と、ユーザーにより設定されて前記ポンプを制御するのに用いられる設定情報と、を前記給水装置が備える不揮発性メモリに記憶するステップと、
前記不揮発性メモリに記憶された前記装置情報に含まれる前記ポンプの台数と前記給水方式と前記機種識別情報との少なくとも1つの情報に基づいて前記設定情報の変更可能範囲を設定するステップと、
外部表示器から前記設定情報の変更指令を受信したときに、前記変更指令による前記設定情報の変更が前記変更可能範囲内のときには前記不揮発性メモリに記憶された前記設定情報を変更し、前記変更指令による前記設定情報の変更が前記変更可能範囲外のときには前記不揮発性メモリに記憶された前記設定情報を変更しない、ステップと、
を含む給水装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給水装置は、建物等の給水対象に水道水を供給するために広く使用されている。給水装置の給水方式としては、水道本管の水を一旦受水槽に貯留し、受水槽の水を給水対象へポンプにて圧送する受水槽方式、及び、水道本管の本管圧を利用しポンプにて増圧することにより給水対象へ水を供給する直結給水方式などが知られている。給水装置では、制御部によりポンプが制御され、例えばポンプの吐出側圧力に基づいて推定末端圧力一定制御または目標圧力一定制御が行われる。また、給水装置が複数台のポンプを備える場合には、給水量に応じて運転ポンプの台数制御、及び、起動するポンプをローテーションする制御が行われる。こうした制御部によるポンプの制御は、給水装置の設置状況および給水対象に応じて記憶部に予め記憶された設定値(設定情報)に基づいて行われる。
【0003】
給水装置の設定情報は、建物等の使用状況および環境の変化に応じて変更が求められる場合がある。一般的に、設定情報の変更は、給水装置に設けられている運転パネルによって行われる。しかし、通常、給水装置は自動制御がなされるため、運転パネルが操作される機会は少ない。また、給水装置は、機械室またはポンプ室などの電気的なノイズが多い環境に設置されることがあり、電気的ノイズに強い7セグメントLEDおよび表示灯などが使用されている。このため、運転パネルは比較的簡略化された構成になり、設定情報を変更する操作は頻度も小さいため複雑になりやすい。特に、複数の設定情報を変更する場合には運転パネルの操作が煩雑となる。
【0004】
そして、近年、携帯端末にて操作することができる給水装置が提案されている。携帯端末にて給水装置を操作することにより、給水装置の運転パネルを簡略化することができるとともに、携帯端末の操作部を利用して給水装置に不慣れなユーザーでも容易に給水装置を操作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−171788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように給水装置は機械室またはポンプ室など電気的なノイズが多い環境に設置されることがあり、携帯端末を用いて給水装置の設定情報を変更するときには、ノイズの影響により設定情報が意図しない値に変更されるおそれがある。また、給水装置が通信手段を有する場合、給水装置に第三者から不正にアクセスがなされるおそれもある。特に、給水装置が正常に動作できないような情報に設定情報が変更されたり、設定情報が現在の設定情報から大きく変更されたりすると、給水装置が誤作動するおそれがある。給水対象への給水はライフラインであり、給水装置の誤作動は最悪の場合には断水に陥る可能性もあるため、極力避けなければならない。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、外部表示器により設定情報を変更できると共に設定情報の意図しない変更による給水装置の誤作動を防止できる給水装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の給水装置は、給水対象に給水するための給水装置であって、水を移送する少なくとも1台のポンプと、ポンプを制御する制御部と、を備える。制御部は、書き換え可能な不揮発性メモリ、及び、外部表示器と通信するように構成された通信部を有する。不揮発性メモリには、ポンプの台数、給水方式、及び、給水装置の構成を示す機種識別情報、のうちの少なくとも1つを含む装置情報と、ユーザーにより設定されてポンプを制御するのに用いられる設定情報と、が記憶される。そして、制御部は、不揮発性メモリに記憶された装置情報に基づいて設定情報の変更可能範囲を設定する。制御部は、外部表示器から設定情報の変更指令を受信したときに、変更指令による設定情報の変更が変更可能範囲内のときには不揮発性メモリに記憶された設定情報を変更する。一方制御部は、変更指令による設定情報の変更が変更可能範囲外のときには不揮発性メモリに記憶された設定情報を変更しない。
かかる構成により、本発明の給水装置は、装置情報に応じた変更可能範囲を設定することができる。そして、外部表示器から設定情報の変更指令を受信したときに、変更可能範囲に基づいて不揮発性メモリに記憶された設定情報を変更するか否かを判断する。このため、装置情報に応じた変更可能範囲で設定情報が変更され、外部表示器により設定情報を変更できると共に設定情報の意図しない変更による給水装置の誤作動を防止できる。
【0009】
また、制御部は、ポンプから吐出される水量が所定量より小さいときに不揮発性メモリに記憶された設定情報を変更してもよい。
こうすれば、ポンプの運転中に設定情報が変更されてポンプの運転状態が急に変更されるのを防止できる。
【0010】
また、設定情報には、設定情報の変更の制限を示す変更制限情報が含まれてもよい。そして、制御部は、変更制限情報が設定情報の変更の禁止を示すときには、変更指令を受信しても不揮発性メモリに記憶された設定情報を変更しないものとしてもよい。
こうすれば、変更制限情報を設定することにより、外部表示器による設定情報の変更を許可したり禁止したりすることができ、設定情報の意図しない変更を防止できる。
【0011】
また、制御部は、変更指令が所定の符号化規則に従っていないときには不揮発性メモリに記憶された設定情報を変更しないものとしてもよい。
こうすれば、外部表示器と給水装置との通信の信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、制御部は、変更指令により不揮発性メモリに記憶された設定情報を変更するときには、設定情報を変更する時刻、または、変更指令を受信した時刻を不揮発性メモリに記憶してもよい。
こうすれば、設定情報が変更されるときに時刻が記憶されるため、前回に設定情報が変更されたときの情況を確認することができる。
【0013】
また、制御部は、変更指令を受信して不揮発性メモリに記憶された設定情報を変更しないときに報知してもよい。
こうすれば、外部表示器を操作したユーザーが変更指令を送信下にもかかわらず設定情報が変更されなかったことを認識できる。
【0014】
また、制御部は、ポンプを制御するためのメインボードと、通信部および不揮発性メモリが設けられた通信ボードと、を備えてもよい。また、メインボードには、不揮発性メモリとは別にメモリが設けられてもよい。そして、制御部は、給水装置の起動時に不揮発性メモリに記憶された装置情報をメモリに記憶してもよい。
【0015】
また、ポンプの制御に関する情報を表示する表示部を更に備えてもよい。
【0016】
また、通信部は、ポンプの制御に関する情報を外部表示器に送信してもよい。
【0017】
また、通信部は、外部表示器から電波を受信して該電波を電力に変換する制御部側アンテナ部であってもよい。
【0018】
また、通信部は、近距離無線通信(NFC)によって前記外部表示器と通信してもよい。
【0019】
本発明の給水装置の制御方法は、給水対象に給水するための給水装置の制御方法であって、給水装置のポンプの台数、給水方式、及び、給水装置の機種識別情報、のうちの少なくとも1つを含む装置情報と、ユーザーにより設定されてポンプを制御するのに用いられる設定情報と、を給水装置が備える不揮発性メモリに記憶するステップを含む。また、制御方法は、不揮発性メモリに記憶された装置情報に基づいて設定情報の変更可能範囲を設定するステップを含む。そして、制御方法は、外部表示器から設定情報の変更指令を受信したときに、変更指令による設定情報の変更が変更可能範囲内のときには不揮発性メモリに記憶された設定情報を変更し、変更指令による設定情報の変更が変更可能範囲外のときには不揮発性メモリに記憶された設定情報を変更しない、ステップを含む。
かかる構成により、本発明の給水装置の制御方法は、上記した本発明の給水装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る給水装置の一例を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る給水装置の一例を示す正面図ある。
図3】本発明の実施形態に係る給水装置の一例を示す左側面図である。
図4】制御部の一例を示す概略ブロック構成図である。
図5】制御部により実行される設定情報変更処理の一例を示すフローチャートである。
図6】変形例の制御部および外部表示器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1図3は本発明の実施形態に係る給水装置の一例を示す模式図であり、図1は平面図、図2は正面図、図3は左側面図である。図示するように給水装置10は、ベース20の上に、二台のポンプ30A,30Bと、これらポンプ30A,30Bの中間に配置される圧力タンク50とが載置されている。また、給水装置10は、ポンプ30A,30Bの吐出側に接続される吐出配管40と、圧力タンク50の上部に設置される制御盤60とを具備して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0022】
まず、給水装置10の建物への給水方式としては、水道本管の水を一旦受水槽に貯留し、受水槽の水を給水対象へポンプにて圧送する受水槽方式、及び、水道本管の本管圧を利用しポンプにて増圧することにより給水対象へ水を供給する直結給水方式などがある。また、給水対象への給水方式としては、ポンプにて増圧した水を直接圧送する直送式、または、ポンプにて増圧した水を屋上のタンクに一旦貯留し、自然流下にて給水を行う高置水槽方式等がある。
【0023】
ベース20は略矩形の平板状で、長手方向の両側辺は下方向に折り曲げられた後に外方向に折り曲げられることで、L字状の固定辺23,23を構成している。
【0024】
ポンプ30A,30Bは、それぞれポンプ部31A,31Bと、これらを駆動するモータ部33A,33Bとを備えている。ポンプ部31A,31Bの手前側の端面には、図示
しない受水槽または水道本管から分岐した供給管(不図示)を接続する吸込部35A,35Bが設けられ、またポンプ部31A,31Bの上面には吐出部37A,37Bが設けられている。なお、直結給水方式の場合には、吸込部35A,35Bが水道本管から分岐した供給管に逆流防止装置(不図示)を介して接続され、供給管には、水道本管の圧力を検出する図示しない圧力センサが設けられる。以下、供給管に設けられる水道本管の圧力を計測する圧力センサにより検出される圧力値を「吸込側圧力」という。
【0025】
吐出配管40は略T字状の配管であり、両ポンプ30A,30Bの吐出部37A,37Bに、フロースイッチ49A,49B、及びチェッキ弁(逆止弁)47A,47Bを介してその両端が接続されている。また吐出配管40の中央には吐出集合管43が設けられている。これによって両ポンプ30A,30Bの吐出側は並列に接続され、両ポンプ30A,30Bの吐出流体は吐出集合管43にて合流する。またチェッキ弁47A,47Bによって、ポンプ30A,30Bが停止したときに吐出配管40内の水がポンプ30A,30B側に逆流しない。また吐出配管40の中央の下部にはこの吐出配管40を圧力タンク50に連結する連結配管45が取り付けられ、さらに吐出配管40には配管内圧力を検出する圧力センサ48が取り付けられている。そして圧力タンク50とチェッキ弁47A,47Bの効果によって、ポンプ30A,30Bが停止した後の吐出配管40内の圧力は、水が使用されない限り一定圧力に保持される。以下、圧力センサ48により検出される圧力値を「吐出側圧力」という。
【0026】
制御盤60は、ケース61内に、ポンプの運転制御を行う各種電気回路からなる制御部65を内蔵して構成されている。この制御部65は、外部表示器80と有線または無線により通信する通信部73を備えている。外部表示器80としては、例えばスマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレット等の汎用端末機器、または遠隔監視器などの専用端末機器が採用される。
【0027】
図4は、制御部の一例を示す概略ブロック構成図である。図示するように、制御部65は、制御用メモリ66と、通信用メモリ67と、不揮発性メモリ68と、演算部69と、I/O部(入力部および出力部)70と、設定部71と、表示部72と、通信部73と、を備えている。設定部71及び表示部72は、給水装置10の運転パネル79に備えられている。また、通信用メモリ67および不揮発性メモリ68は、通信部73に含まれるものとしている。ただし、こうした例に限定されず、例えば通信部73、通信用メモリ67、及び不揮発性メモリ68は、別々に構成されてもよい。
【0028】
また、図3のように制御部65は通信部73と別々の基板としてもよい。その場合は、制御部65と通信部73はシリアル通信や信号線等にて接続される。制御部65に制御用メモリ66と不揮発性メモリ68を配置し且つ通信部73に通信用メモリ67を配置する構成としてもよいし、または、制御部65に制御用メモリ66を配置し且つ通信部73に通信用メモリ67と不揮発性メモリ68を配置する構成としてもよい。制御部65と通信部73を別々の基板とした場合は、給水装置10から離れた場所(例えば、管理人室や遠隔監視室等)に設置し、制御部65とシリアル通信や信号線等で接続された遠隔監視器内に通信部73を構成してもよい。または、制御部65に制御用メモリ66と不揮発性メモリ68を配置し且つ通信部73に通信用メモリ67と不揮発性メモリ(不図示)を配置する構成としてもよい。
【0029】
設定部71は、外部操作により、給水を行うのに必要な各種設定値(設定情報)を設定するのに使用される。設定部71において設定された各種設定値は、制御用メモリ66に記憶され、更には不揮発性メモリ68に記憶される。一例として、ユーザーは、設定部71を介して、停止圧力、始動圧力、及び、その他制御に必要な情報を設定情報として入力できるようになっている。また、本実施形態では、設定情報には、外部表示器80による
設定情報の変更を制限する変更制限情報が含まれる。変更制限情報によって設定情報の変更が禁止されているときには、外部表示器80から設定情報を変更することができない。この場合には、設定部71を通じて変更制限情報を変更することで、外部表示器80による設定情報の変更が許容される。また、本実施形態では設定部71には、リセットボタン74、および、クリアボタン75が備えられている。クリアボタン75の押下により、制御部65は、表示部72の表示の警報等の表示のみをクリアする。また、リセットボタン74の押下により、制御部65は、異常情報およびメンテナンス情報(例えば、運転時間、始動回数、消耗部品の使用期間、故障履歴)などのデータをリセットする。
【0030】
表示部72は、ユーザーインターフェースとして機能し、制御用メモリ66又は通信用メモリ67に格納されている設定値等の各種データや、現在のポンプ30A,30Bの運転状況(運転情報)、例えばポンプ30A,30Bのそれぞれの運転または停止、運転周波数、電流、吸込側圧力、吐出側圧力、モータ部33A,33Bを駆動するインバータのトリップ、吸入側圧力低下警報、及び、受水槽警報等を表示する。
【0031】
不揮発性メモリ68としては、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等のメモリが使用される。不揮発性メモリ68には、給水装置10を制御するための制御プログラム、給水装置10の装置情報、故障履歴、運転履歴、及び、設定部71を通じて入力された設定情報等が格納されている。ここで、給水装置10の装置情報としては、ポンプの台数、ポンプの口径、ポンプの出力、給水方式、および、給水装置の機種名などの少なくとも1つが含まれ、予め工場出荷時に不揮発性メモリ68に記憶されていてもよいし、給水装置10の設置時に作業員によって記憶されてもよい。ここで、ポンプの出力は、モータ部33A,33Bの容量やモータ部33A,33Bを駆動するためのインバータの容量等にて代用してもよい。また、故障発生時には故障履歴、定期的に給水装置10の運転履歴等の情報も不揮発性メモリ68に記憶される。
【0032】
給水装置10の装置情報は給水装置の構成によって決まるため、間違った設定を行うと正常な給水が出来なくなる虞がある。よって、本実施形態では、不揮発性メモリ68に記憶されている装置情報は、外部表示器80からの指令および設定部71の操作によって変更できないものとする。もしくはパスワード等により権限を設け、装置情報の変更可能な権限を持ったユーザーのみが変更可能とする。
【0033】
制御用メモリ66及び通信用メモリ67としては、RAM等の揮発性メモリが使用される。また、給水装置10の制御プログラムに支障のない程度、データ読み書きにおけるアクセス時間が短いメモリであれば揮発性メモリでなくてもよい。制御用メモリ66には、給水装置10の運転制御を行うための情報が格納され、通信用メモリ67には、外部表示器80等に送受信するためのデータが格納される。なお、制御用メモリ66と通信用メモリ67とは、別々の回路基板または回路素子で構成されてもよいし、1つの回路基板または回路素子における仮想的な区別であってもよい。制御部65は、給水装置10が電源オンされたときに不揮発性メモリ68に記憶されている装置情報および設定情報を読み込み、必要な情報を制御用メモリ66に記憶する。制御用メモリ66には、各種データ、例えば演算部69における演算結果のデータ(運転時間、積算値等)、圧力値(吸込側圧力、吐出側圧力)、設定部71を通じて入力された設定データ、及びI/O部70を通じて入力される、またはI/O部70を通じて出力されるデータ等が格納される。
【0034】
I/O部70としては、ポート等が使用される。I/O部70は、圧力センサ48の入力信号、及び、フロースイッチ49A,49Bの信号等を受け入れて演算部69に送る。演算部69としては、CPUが使用される。演算部69は、制御用メモリ66に格納されているプログラム及び各種データ、並びにI/O部70から入力される信号に基づいて、ポンプ30A,30Bを運転するための各種データの設定、計時、及び、演算等を行う。
演算部69からの出力は、I/O部70に入力される。
【0035】
また、I/O部70とポンプ30A,30Bを駆動するインバータとは、RS422,232C,485等の通信手段により互いに接続される。I/O部70からポンプ30A,30Bへは、各種設定値や周波数指令値、発停信号(運転・停止信号)などの制御信号がインバータへ送られ、ポンプ30A,30BからI/O部70へは、実際の周波数値や電流値等の運転状況(運転情報)がインバータから逐次送られる。
【0036】
なお、I/O部70とポンプ30A,30Bを駆動するインバータとの間で送受信される制御信号としては、アナログ信号および/またはデジタル信号を用いることができる。例えば、回転周波数等にはアナログ信号を用い、運転停止指令等にはデジタル信号を用いることができる。また、30A,30Bの可変速制御を行わない場合はインバータはなくてもよい。
【0037】
通信部73は、有線通信または無線通信によって外部表示器80と通信可能なように構成されている。無線通信としては、例えば近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術を利用することができる。また、Bluetooth(登録商標)およびWi−Fiなど、任意の方式の無線通信を利用することができる。ただし、NFCは、制御部65と外部表示器80とを近づけるだけで通信を完了させることができる点で有利である。また、有線通信としては、例えば制御部65にUSB(Universal Serial Bus)のような外部接続端子が設けられ、ここに外部表示器80が接続されることによって通信がなされてもよいし、RS422,232C,485等のシリアル通信を用いてもよい。
【0038】
本実施形態では、表示部72として、7セグメントLED及び表示灯などの簡易な表示器を採用することができる。また、外部表示器80として、タッチ入力方式または押圧ボタン方式を用いた液晶画面での高機能表示器を採用することができる。この場合、表示部72には簡易な情報を表示でき、外部表示器80には大きな情報量の情報を表示できる。こうした構成により、外部表示器80に、制御部65によるポンプ30A,30Bの運転状況に関した情報など(例えば、目標圧SV、現在圧PV、ポンプ30A,30Bの運転・停止、及び、ポンプ30A,30Bの周波数など)を同一画面上に表示することによって、給水装置に不慣れなユーザーも誤解することなく、給水装置10の状態を認識したり、設定変更を行うことができる。また、給水装置10は、機械室またはポンプ室などの電気的なノイズの多い環境に設置されることがある。こうした場合に備えて、表示部72として、液晶表示やタッチパネルよりも電気的ノイズに強い7セグメントLEDや表示灯、機械的な押圧ボタンなどにて構成された表示器が使用されてもよい。これにより、外部環境から発生される電気的なノイズによって外部表示器80の液晶表示やタッチパネル操作に異常が発生した場合でも、表示部72により給水装置10の運転に必要な最低限度の表示および操作を行うことができる。したがって、給水装置10を電気的ノイズの多い環境下にも設置することができる。
【0039】
さらに、外部表示器80として、スマートフォン、携帯電話、パソコン、又は、タブレットなどの汎用端末機器を採用した場合には、これらの機器に、外部表示器80として作用するための専用のアプリケーションソフトウエアをインストールさせてもよい。この場合には、専用のアプリケーションソフトウエアをユーザーのレベル又は目的に沿って複数用意してもよい。
【0040】
なお、制御部65に運転パネル79(表示部72)が設けられずに、外部表示器(高機能表示器)80のみが設けられてもよい。この場合、上述した運転パネル79の機能は外部表示器80にて全て実施可能とする。給水装置10には表示器自体を設ける必要がなく
なるので、給水装置10全体のコストを更に下げることが可能である。また、運転パネル79の設定部71にリセットボタン74及びクリアボタン75が備えられず、代わりに、外部表示器80にリセットボタン(不図示)又はクリアボタン(不図示)が備えられてもよい。外部表示器80上のクリアボタンを押すと、外部表示器80上に表示されている表示が消去される。
【0041】
次に、制御部65による給水装置10の制御について説明する。ポンプ30A,30Bが停止している状態で吐出側圧力が所定の始動圧力にまで低下すると、制御部65はポンプ30A,30Bの少なくとも一方を始動させる。具体的には、制御部65はポンプ30A,30Bの駆動を開始するようにモータ部33A,33B(インバータを備える場合にはインバータ)に指令を出す。ポンプ30A,30Bの運転中は、設定された圧力(設定圧)により推定末端圧力一定制御または目標圧力一定制御などの制御が行われる。具体的には推定末端圧力一定制御の場合はポンプ30A,30Bの回転数と目標圧力制御カーブとを用いて目標圧(SV)を設定し、目標圧力一定制御の場合は設定圧を目標圧(SV)とする。また、吐出側圧力を現在圧(PV)とする。そして、SVとPVの偏差にてPID演算を行いポンプ30A,30Bの指令回転数が設定される。なお、直結給水にて推定末端圧力一定制御を行う場合、吸込側圧力に基づいて目標圧力制御カーブを補正してもよい。具体的には目標圧力制御カーブを吸込側圧力だけ加算し、目標圧(SV)を算出する。また、制御部65は、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合は、同時に起動可能なポンプ台数(ポンプ並列運転台数)にて水量に応じたポンプの台数制御も行われる。
【0042】
ポンプ30A,30Bの運転中に建物での水の使用が少なくなると、フロースイッチ49A,49Bは、過少水量を検出し、その検出信号を制御部65に送る。制御部65はこの検出信号を受け、ポンプ30A,30Bに指令を出して吐出側圧力が所定の運転停止圧力に達するまでポンプ30A,30Bの回転数を増加させ、圧力タンク50に蓄圧した後ポンプ30A,30Bを停止(小水量停止)させる。ポンプ30A,30Bが小水量停止した後に、再び建物内で水が使用されると吐出側圧力が始動圧力以下まで低下しポンプ30A,30Bが始動する。なお、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合には、始動するポンプ30A,30Bをローテーションさせ、ポンプ30A,30B内に水が滞留するのを防ぐことが好ましい。また、小水量を検知する方法としては、フロースイッチ49A,49Bを用いずに、モータ部33A,33Bの電流値による低負荷や締切圧力等その他の手段を用いてもよい。
【0043】
図5は、制御部により実行される設定情報変更処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態の制御部65は、外部表示器80から設定情報の変更指令を受信することができ、設定情報変更処理によって不揮発性メモリ68に記憶されている設定情報を変更するか否かを判定する。本実施形態の設定情報変更処理は、給水装置10の電源がオンされているときに常時実行される。ただし、こうした例に限定されず、設定情報変更処理は、例えば給水装置10が外部表示器80から設定情報の変更指令を受信したときにのみ実行されてもよい。
【0044】
制御部65は、設定情報変更処理を開始すると、まず、不揮発性メモリ68に記憶されている装置情報を読み込んで制御用メモリ66に格納する(ステップS100)。本実施形態では、ステップS100の処理は、給水装置10の電源がオンされたときに行われ、その後、制御部65は、制御用メモリ66に格納した装置情報を参照する。なお、本実施形態の制御部65は、給水装置10の電源がオンされたときには、上記したポンプ30A,30Bの制御を実行するために、不揮発性メモリ68に記憶されている設定情報についても装置情報と一緒に読み込んで制御用メモリ66に格納する。
【0045】
続いて、制御部65は、制御用メモリ66に格納した装置情報に基づいて、設定情報の
変更可否または/および設定情報の変更可能範囲を設定する(ステップS110)。変更可能範囲は、設定情報の変更を許容する範囲を示すものである。設定可能範囲は、例えば設定情報が数値(設定値)である場合、設定値として許容される上限値と下限値との少なくとも一方としてもよい。また、設定可能範囲は、現在記憶されている設定値から変更が許容される変更量の上限値としてもよい。また、設定可能範囲は、設定情報が文字列または記号などである場合には、設定情報として認められるリストであってもよい。具体的な一例として、制御部65は、装置情報と変更可能範囲との関係を予め定めたマップ、関係式、又は、補正係数などを参照し、これらと装置情報とを用いて設定情報の変更可能範囲を設定する。
【0046】
本実施形態では、制御部65は、装置情報のうちポンプ台数の情報を用いて、ポンプ並列運転台数の上限値を設ける。ポンプ並列運転台数は、最大流量時に運転を行うポンプ台数である。これは、最大水量時に運転するポンプ台数が給水装置10のポンプ台数と異なる場合があることに基づく。給水装置10にポンプ故障時の予備ポンプを保有する場合は、電源容量などの設備が予備ポンプを除く容量にて設計される。よって、ポンプ台数よりポンプ並列運転台数が少くなることはあっても、ポンプ台数よりポンプ並列運転台数が多くなることはないため、ポンプ並列運転台数の上限値はポンプ台数と等しい値となる。また、ポンプ並列運転台数が1台の場合、ポンプ30A,30Bは単独交互運転のみで運転ポンプの追加解列を行わない。よって、追加解列に関する設定値を変更不可としてもよい。
【0047】
また、I/O部70は、ポンプ毎の状態(運転、故障等)を外部へ接点出力するDO端子(不図示)を複数備えている場合がある。このDO端子の出力信号は、外部表示器80からの設定変更にて、どのポンプのどのような状態を出力するかを変更してもよい。この場合、制御部65は、装置情報のうちポンプ台数を用いて、DOの出力としてポンプ台数以上のポンプ号機の状態を出力するという設定をできないように設定値に制限を設ける。これにより、意図せぬ信号をDOより出力することを予防できる。
【0048】
制御部65は、装置情報のうちポンプ口径の値とポンプ出力の値、または、給水装置の構成を示す機種識別情報を用いて設定圧の上下限値の制限を設けてもよい。設定圧の上下限値はポンプ固有の選定カーブ(Q−Hカーブ)によって決る。よって、予めポンプの口径と出力、または、給水装置の構成を示す機種識別情報から求められるポンプごとの選定カーブの上下限値を不揮発性メモリに記憶することができる。
【0049】
制御部65は、装置情報のうちポンプの出力の値を用いて、インバータのストール電流値の上下限値の制限を設けてもよい。給水装置10において、ポンプ31A,31Bの駆動源であるモータ33A,33Bの出力よりも大きな電流容量のインバータを用いる場合がある。このとき、モータ33A,33Bに定格電流以上の大電流が流れると、モータ33A,33Bのコイルが過電流にて焼損してしまい、ポンプ31A,31Bが駆動できなくなり給水不能となる可能性がある。よって、インバータのストール電流値を設定して電流制限を行う必要がある。ポンプの出力はモータ33A,33Bの定格電流に比例するため、ポンプの出力値毎にインバータのストール電流値の上下限値を決めることが可能である。
【0050】
制御部65は、装置情報のうち給水方式が受水槽方式の場合には、受水槽に関連する設定変更を許可する。受水槽の設定とは、受水槽が一槽式、二槽式もしくは無し(受水槽の水位を検知しない)という設定や、受水槽の水位を計測する電極棒が何本で満水、減水、渇水をどの電極で検知するか、といった設定が含まれる。これらの設定が正常に行われるよう入力値の制限を設ける。また、受水槽の満水、減水、渇水のいづれかの警報を検出するもしくは検出しない、という選択を行ってもよい。
【0051】
制御部65は、装置情報のうち給水方式が直結方式を選択されている場合には、吸込側圧力低下の検出値および復帰値の設定を許可する。吸込側圧力低下の検出値の上限値は復帰値であり、吸込側圧力低下の復帰値の下限値は検出値であるといった設定範囲の制限を設ける。一例として吸込側圧力低下の検出値は7m以下であり、復帰値は10m以上である。吸込側圧力低下は水道本管圧の低下を意味し、十分に水道本管圧が復帰するまではポンプ30A,30Bを停止する必要がある。よって、検出値と復帰値にはディファレンシャルを設ける必要がある。
【0052】
制御部65は、装置情報のうち給水方式が高置水槽方式を選択されている場合には、高置水槽に関連する設定を許可する。高置水槽の水位を計測する電極棒が何本で満水、減水をどの電極で検知するか、ポンプの始動/停止をどの電極で検知するか、給水装置10と高置水槽間の配管に設置された電磁弁または電動弁の開/閉をどの電極で検知するか、といった設定が含まれる。これらの設定が正常に行われるよう入力値の制限を設ける。また、高置水槽の満水、減水のいづれかの警報を検出するもしくは検出しない、という選択を行ってもよい。
【0053】
このように装置情報に基づいて設定情報の変更可能範囲を設定することにより、複数の給水装置ごとに個別に変更可能範囲を記憶させなくても各給水装置に適した変更可能範囲を設定することができる。また、これにより、装置情報が異なる給水装置に対して同一の設定情報変更処理を用いて設定情報の変更可能範囲を設定することができ、汎用性の高い制御処理を実現することができる。
【0054】
更には、設定可能範囲は、他の設定項目の値を参照して設定値として許容される上限値と下限値との少なくとも一方としてもよい。一例として、始動圧の上限値は停止圧の設定値とし、停止圧の下限値は停止圧の設定値とする。始動圧が停止圧より高いとポンプ30A,30Bは起動停止を繰り返してしまう。そうすると、ポンプ31A,31Bの発停回数が増え軸受や軸が傷んでしまい、最悪の場合、ポンプ31A,31Bは揚水不能となり給水装置10は断水ししまう。よって、始動圧と停止圧の設定値が正しく設定されるように入力制限を設けることにより、ポンプ31A,31Bの起動頻度を抑え、寿命を長くする効果がある。
【0055】
次に、制御部65は、外部表示器80から設定情報の変更指令を受信するまで待機し(ステップS120)、変更指令を受信したときには(S120;Yes)、受信した変更指令の誤り検出を行う(ステップS130)。この誤り検出は、変更指令が予め定められた符号化規則に従っているか否かを判定する処理であり、例えばパリティビットまたはチェックサム等を用いた判定が挙げられる。受信した変更指令に誤りが検出されるときには(S130;Yes)、制御部65は、変更指令が適正な指令ではない、または、通信障害等によって適正に指令を受信できていないと判断する。このときには、制御部65は、ユーザーに報知する処理を実行して(ステップS200)、ステップS120の処理に戻る。制御部65による報知としては、表示部72へ表示してもよいし、ブザー等(不図示)からエラー音等を発生させてもよいし、I/O部70により外部へ接点出力してもよい。また、制御部65は、変更指令に誤りが検出されたために設定情報を変更しない旨を報知してもよい。こうした報知により、ユーザーは、外部表示器80を操作して変更指令を給水装置10へ送信したにもかかわらず、設定情報が変更されなかったことを認識できる。また、制御部65による報知は、表示部72等の給水装置10自体による報知に代えて、または加えて、外部表示器80を用いて行われてもよい。つまり、制御部65は、通信部73を通じて外部表示器80に報知する情報を通信し、情報を受信した外部表示器80が画面表示等によりユーザーへの報知を行ってもよい。
【0056】
変更指令に誤りが検出されないときには(S130;No)、制御部65は、適正な変更指令を受信したと判断し、受信した変更指令に従って通信用メモリ67に設定情報を格納する(ステップS140)。上記したように、通信用メモリ67は、通信によるデータを格納するメモリであり、ステップS140の処理では、制御に用いる設定情報は変更されていない。
【0057】
続いて、制御部65は、制御用メモリ66に格納されている設定情報における変更制限情報を参照して外部表示器80による設定情報の書き換えが許可されているか否かを判定する(ステップS150)。制御部65は、外部表示器80による設定情報の書き換えが禁止されているときには(S150;No)、ユーザーに報知する処理を実行して(S200)、ステップS120の処理に戻る。このときには、制御部65は、変更制限情報によって外部表示器80による設定情報の書き換えが禁止されていることを報知してもよい。これにより、設定部71の操作による変更制限情報の変更を促すことができる。また、こうした変更制限情報が用いられることにより、第三者によって不正に設定情報が変更されたり、誤操作によって設定情報が変更されたりすることを防止することができる。ただし、こうした変更制限情報が設定情報に含まれなくてもよい。また、変更制限情報に代えて、設定情報の書き換えを許可/禁止するボタンなどが運転パネル79に設けられてもよい。また、変更制限情報は設定値毎に個別に設けられても良い。
【0058】
制御部65は、外部表示器80による設定情報の書き換えが許可されているときには(S150;Yes)、変更指令による設定情報の変更がステップS110の処理で設定した変更可能範囲内であるか否かを判定する(ステップS160)。ステップS160の処理では、制御部65は、例えば変更可能範囲として上限値(下限値)が設定されているときには、新しい設定情報が上限値以下(下限値以上)のときに設定情報の変更が変更可能範囲内であると判定する。一方、制御部65は、新しい設定情報が上限値より大きい(下限値より小さい)ときに設定情報の変更が変更可能範囲外であると判定する。また、制御部65は、変更可能範囲として変更量の上限値が設定されているときには、現在の設定情報と変更値との差が変更量の上限値以下のときに設定情報の変更が変更可能範囲内であると判定する。一方、制御部65は、現在の設定情報と変更値との差が変化量より大きいときに設定情報の変更が変更可能範囲外であると判定する。さらに、制御部65は、変更可能範囲としてリストが設定されているときには、新しい設定情報がリストに含まれているときには、設定情報の変更が変更可能範囲内であると判定する。一方、制御部65は、新しい設定情報がリストに含まれていないときには、設定情報の変更が変更可能範囲外であると判定する。
【0059】
設定情報の変更が変更可能範囲外であるときには(S160;No)、制御部65は、設定情報の変更を受け入れることはできないと判断し、ユーザーに報知する処理を実行して(S200)、ステップS120の処理に戻る。このときには、制御部65は、設定情報の変更が変更可能範囲外であることを報知してもよい。このように設定情報の変更が変更可能範囲外のときには設定情報を変更しないことにより、設定情報が意図しない情報に更新されて装置が誤作動することを防止できる。しかも、本実施形態では、装置情報に基づいて変更可能範囲が設定されているので、装置情報に適した範囲において給水装置10の設定情報を変更することができる。
【0060】
設定情報の変更が変更可能範囲内であるときには(S160;Yes)、制御部65は、設定情報の変更を受け入れることができると判断し、ポンプ30A,30Bが共に停止しているか否かを判定する(ステップS170)。これは、ポンプ30A,30Bの運転中に設定情報が変更されると、設定情報に基づいて制御されるポンプ30A,30Bの指令値が大きく変化するおそれがあることに基づく。このため、本実施形態では、ポンプ30A,30Bが共に停止しているか、または、ポンプ30A,30Bが運転されていても
フロースイッチ49A,49Bによって小水量が検知される小水量状態であるときに、設定情報を変更するものとしている。
【0061】
ポンプ30A,30Bの少なくとも一方が運転しているときには(ステップS170;No)、制御部65は、フロースイッチ49A,49Bからの検出値に基づいてポンプ30A,30Bから吐出される水量が小水量になるのを待つ(ステップS180)。そして、制御部65は、ポンプ30A,30Bが共に停止しているか(S170;Yes)、ポンプ30から吐出される水量が小水量のときには(S180;Yes)、設定情報を変更してもよいと判断する。このときには、制御部65は、通信用メモリ67に記憶されている設定情報と時刻とを、制御用メモリ66と不揮発性メモリ68とのそれぞれに格納して(ステップS190)、再びステップS120の処理に戻る。この処理により、制御に使用される設定情報が変更される。本実施形態では、制御部65は、制御用メモリ66と不揮発性メモリ68に記憶されている設定情報を変更するときに時刻も記憶する。この時刻は、変更指令を受信したときの時刻であってもよいし、不揮発性メモリ68の設定情報を変更するときの時刻であってもよい。このように時刻を記憶することにより、前回に設定情報が変更されたときの情況を確認することができ、誤操作などで設定情報が変更されたことなどを確認することができる。なお、制御部65は、最新の変更時の時刻だけを記憶してもよいし、所定数の過去の変更時における時刻を記憶してもよい。また、制御部65は、不揮発性メモリ68等の設定情報を変更したときには表示部72に表示して報知してもよいし、設定情報が変更されたことを示す信号を通信部73から外部に送信してもよい。
また、設定情報の変更に使用した外部表示器80の固体識別が可能な情報を記憶してもよい。個体識別情報より、設定情報を変更したユーザーの特定ができ、セキュリティの強化を図れる。
【0062】
上記した実施形態に限定されず、制御部65は、ポンプ30A,30Bから吐出される水量が小水量であってもポンプ30A,30Bが停止していないときには、設定情報を変更しないものとしてもよい。また、制御部65は、ポンプ30A,30Bの運転停止にかかわらず、設定情報を変更するものとしてもよい。さらに、上記した実施形態では、制御部65は、ポンプ30A,30Bが運転中には、ポンプ30A,30Bから吐出される水量が小水量になるのを待って、設定情報を変更するものとした。しかし、こうした例に限定されず、ポンプ30A,30Bが運転中は、制御部65は外部表示器80による変更指令を受け入れず、報知処理を実行してステップS120の処理に戻るものとしてもよい。また、上記した実施形態では、変更指令の誤り検出を行うものとしたが、こうした誤り検出が行われなくてもよい。
【0063】
(変形例)
図6は、変形例の制御部および外部表示器を示す図である。変形例の制御部65Aは、通信部73に代えて、制御部側アンテナ部76を備えている点、および制御部側アンテナ部76に接続された集積回路77を備えている点で、実施形態の制御部と異なっている。また、図6に示す例では、実施形態の制御用メモリ66、通信用メモリ67、および、不揮発性メモリ68は、記憶部78に含まれる。集積回路77は、記憶部78に電気的に接続されている。なお、図6に示す制御部65Aは表示部72を備えていないが、表示部72を備えてもよい。また、変形例の制御部65Aは、ポンプ30A,30B等の給水装置10の他の構成と一体に設けられていてもよいし、給水装置10のデータを中継するための装置として給水装置10の他の構成から離れて設けられてもよい。
【0064】
変形例の外部表示器80は、電波を送受信する表示器側アンテナ部81と、表示部82と、バッテリー83と、データリーダー84と、を備えている。この外部表示器80では、表示器側アンテナ部81で受信したデータがデータリーダー84で読み取られる。そし
て、データリーダー84で読み取られたデータ(例えば、目標圧SV、現在圧PV、ポンプ30A,30Bの周波数など)が表示部82で表示される。バッテリー83は、表示器側アンテナ部81、データリーダー84、および表示部82に電力を供給する。
【0065】
外部表示器80として、例えばスマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレット等の汎用端末機器を用いてもよく、遠隔監視器などの専用の端末機器を用いてもよい。特に、スマートフォンなどの汎用端末機器を外部表示器として使用すれば、専用の表示器を制作するコストが削減できるので、給水装置のコストを下げることができる。また、複数のユーザーが個々の汎用端末機器に給水装置10の状態を表示させることができるので、ユーザーのレベル又は目的に沿った表示操作を提供することが可能である。たとえば、マンションまたはビルの管理人のような給水装置に関する専門知識のないユーザーに対して、ポンプ30A,30Bの制御に関する情報などを分かり易く知らせることができる給水装置を安価に提供することができる。
【0066】
外部表示器80は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術によって制御部65Aと接続される。より具体的には、外部表示器80を制御部65Aに近づけた状態で、表示器側アンテナ部81が電波を発生すると、その電波を制御部側アンテナ部76が受け取り、制御部側アンテナ部76は電波を電力に変換する。この電力は集積回路77および記憶部78に供給されてこれら集積回路77および記憶部78を駆動する。外部表示器80が記憶部78のデータを読取る場合、集積回路77は、電波に含まれる通信データに基づいて、記憶部78に記憶されているデータを読み取り、制御部側アンテナ部76にデータを送る。制御部側アンテナ部76は、データとともに電波を表示器側アンテナ部81に送信する。データリーダー84は、表示器側アンテナ部81が受信したデータを読み取り、そのデータを表示部82に表示させる。
また、外部表示器80が記憶部78のデータを変更する場合、集積回路77は、電波に含まれる通信データに基づいて、記憶部78のデータを変更し、制御部側アンテナ部76にデータ変更が実行されたことを意味するデータを送る。制御部側アンテナ部76は、データとともに電波を表示器側アンテナ部81に送信する。データリーダー84は、表示器側アンテナ部81が受信したデータを読み取り、データ変更が実行されたことを表示部82に表示させる。
【0067】
外部表示器80は、表示を消去するためのクリアボタン86と、データをリセットするためのリセットボタン(不図示)を備えていてもよい。ユーザーがクリアボタン86を押すと、表示部82の表示が消去される。また、リセットボタンを押すと、リセット信号が制御部65Aに送信され、リセット信号を受信した制御部65Aは、メンテナンス情報などのデータをリセットする。本実施形態のクリアボタン86は、表示部82の画面上に現れる仮想的なボタンであるが、クリアボタン86は表示部82の外に設けられた機械的なボタンであってもよい。変形例の制御部65Aは、リセットボタンを備えていないが、制御部65にクリアボタン、リセットボタンを設けてもよい。
【0068】
変形例では、制御部65Aの記憶部78に記憶されているデータは、無線通信により制御部65Aから外部表示器80に送られる。変形例によれば、給水装置10の電源が入っていない場合でも、制御部側アンテナ部76は外部表示器80から発せられる電波から電力を発生し、集積回路77および記憶部78を駆動することができる。したがって、給水装置10のメンテンナンス中などにおいて制御部65に電力が供給されていないときでも、外部表示器80は、制御部65の記憶部78からデータを取得して表示したり、記憶部78に記憶されているデータを変更することができる。なお、このときには、制御部65Aの集積回路77が図5に示す設定情報変更処理を行ってもよい。
【0069】
NFCは、数cmの近距離にて相互通信する技術である。変形例の制御部65Aを給水
装置10の他の構成と一体に設けられている場合、外部表示器80にて各種情報を表示または変更するときには、ユーザー及びメンテナンス員は、相互通信可能な距離まで外部表示器80を制御部65Aに近づけることになる。このことは、外部表示器80を操作するときは、ユーザーおよびメンテナンス員は給水装置10の近くにいることを意味する。このため、例えば消耗品の交換作業中にリセットボタンが押されてポンプが起動するといった誤操作に起因した給水装置10の予期しない動作を防止することに繋がる。また、複数の給水装置10が設置された現場では、表示したい給水装置10の近距離で相互通信が可能となる為、意図しない別の給水装置の状態を表示または設定変更してしまうという誤表示または誤操作を防止することが出来る。
【0070】
なお、図4において、通信部73は、公衆回線やネットワーク、専用回線等を介して、保守管理会社または管理人室に設けられた遠隔監視装置(例えば、パソコン、スマートフォン、又は、専用モニター)と通信してもよい。この場合、ポンプの運転情報等が、通信部73から遠隔監視装置に送信される。遠隔監視装置は、受信したデータを表示する表示部を備えてもよい。また、遠隔監視装置は給水装置10から受信したデータを、外部表示器80に送信してもよい。また、外部表示器80および遠隔監視装置は、給水装置10から受信したデータを外部サーバに送信して記憶させてもよい。また、遠隔監視装置から各種データの書き込みを行ってよいし、外部表示器から遠方監視装置へ各種データを書き込み更に遠方監視装置より給水装置10へ各種データの書き込みを行っても良い。
【0071】
また、装置情報には、給水装置10の構成を示す機種識別情報(例えば機種名、型番など)が含まれてもよい。また、制御部65は、予め記憶された対応表を用いて、機種名から給水装置10の装置情報(例えば、ポンプの台数、ポンプの出力、ポンプの口径、及び、給水方式のうち、少なくとも1つの情報)を取得してもよい。反対に、制御部65は、不揮発メモリ68に記憶されている装置情報に基づいて、給水装置の機種識別情報を取得してもよい。そして、制御部65は、取得した装置情報または機種識別情報を外部表示器80に表示させてもよい。
【0072】
更には装置情報には、個別の給水装置10を識別するためのシリアル番号が含まれてもよい。また、外部表示器80および遠隔監視装置は、給水装置10から受信したシリアル番号を外部サーバに送信し、外部サーバに記憶されたシリアル番号に対応した給水装置10の装置情報(例えば、ポンプの台数、ポンプの出力、ポンプの口径、及び、給水方式のうち、少なくとも1つの情報)を取得してもよい。そして、取得した装置情報または機種識別情報にて、外部表示器80にデータ表示をさせてもよいし、更には外部表示器80より給水装置10の設定変更を行ってもよい。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0074】
10…給水装置
20…ベース
30A,30B…ポンプ
40…吐出配管
45…連結配管
48…圧力センサ
50…圧力タンク
60…制御盤
65,65A…制御部
66…制御用メモリ
67…通信用メモリ
68…不揮発性メモリ
69…演算部
70…I/O部
71…設定部
72…表示部
73…通信部
76…制御部側アンテナ部
77…集積回路
78…記憶部
79…運転パネル
80…外部表示器
図1
図2
図3
図4
図5
図6