特許第6815293号(P6815293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6815293半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シート、半導体装置、及びその製造方法
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  • 特許6815293-半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シート、半導体装置、及びその製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815293
(24)【登録日】2020年12月24日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シート、半導体装置、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20210107BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210107BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20210107BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20210107BHJP
   C08K 5/21 20060101ALI20210107BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20210107BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   H01L23/30 R
   C08L63/00 Z
   C08K3/00
   C08K5/21
   C08J5/18CFC
   C08G59/68
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-157164(P2017-157164)
(22)【出願日】2017年8月16日
(65)【公開番号】特開2019-36642(P2019-36642A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】堤 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】藤井 修一
(72)【発明者】
【氏名】萩原 健司
(72)【発明者】
【氏名】隅田 和昌
【審査官】 川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/125350(WO,A1)
【文献】 特開2016−113483(JP,A)
【文献】 特開2017−031371(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0244590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08J 5/00−5/02
C08J 5/12−5/22
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
H01L 23/28−23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂、
(B)前記(A)成分以外の25℃で非流動性であるエポキシ樹脂、
(C)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物、
(D)無機充填材、及び
(E)ウレア系硬化促進剤、
を含有する組成物をシート状に成形したものであり、かつ、
前記(A)成分の含有量が、前記(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して10〜25質量部であり、前記(E)成分の含有量が、前記(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して0.05〜6質量部であることを特徴とする半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シート。
【請求項2】
前記(D)成分の含有量が、前記組成物100質量部に対して80〜92質量部であることを特徴とする請求項1に記載の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シート。
【請求項3】
前記(E)成分が、下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シート。
NHCONR (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基及び炭素数6〜18の芳香族炭化水素基の中から選ばれる基であり、R及びRは炭素数1〜6のアルキル基である。)
【請求項4】
前記(D)成分が、シリカを含むものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シート。
【請求項5】
前記半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートは、未硬化状態において三点曲げ試験におけるシートのたわみ量が30mm以上のものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シート。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートで半導体素子が封止されたものであることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを用いて半導体素子を封止することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
半導体素子を封止する際に、加圧下及び/又は減圧下において、加熱しながらシートを軟化・溶融して半導体素子を封止することを特徴とする請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シート、及びそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に用いられる電子部品として、半導体素子を樹脂封止して得られる半導体パッケージがある。従来、この半導体パッケージは、タブレット状のエポキシ樹脂組成物のトランスファー成形により製造されているのが一般的である。一方、近年、電子機器の小型化、軽量化に伴い、電子部品の配線基板への高密度実装が要求されるようになり、半導体パッケージにおいても小型化、薄型化及び軽量化が進められている。
【0003】
具体的には、小型化、軽量化したCSP(Chip Size Package)、BGA(Ball Grid Array)等の半導体パッケージが開発されている。さらに最近では、半導体素子の回路面を配線基板側に向けて搭載する、いわゆるフェイスダウン型パッケージのフリップチップやウエハレベルCSP等も開発されてきている。
【0004】
このような半導体パッケージの薄型化等の進展に伴い、従来のトランスファー成形では対応できない場合が生じてきている。また取り個数増加による生産性向上を目的とした理由からトランスファー成形に変わる成形方法が検討されている。例えば、取り個数増加に伴い大型基板への成形を行うと、反りの問題が発生しやすく、反りを改善するために封止材中の無機充填材の含有量を多くする傾向にある。こうした無機充填材の高充填により、トランスファー成形時、樹脂の溶融粘度が高くなり充填性が低下する。その結果、充填不良、成形物中のボイドの残存、ワイヤ流れ(ボンディングワイヤの変形・破損)及びダイシフトの増大等が生じ、成形品の品質が低下する。
【0005】
そこで、トランスファー成形に代わる封止方法として、コンプレッション(圧縮)成形法の適用が検討され、液状だけなく、シート状の封止材料が種々検討されている(特許文献1、2)。しかし、これらのシート状の封止材料は一般的なエポキシ樹脂及びフェノール硬化剤を使用しており、シート状に成形されても未硬化又は半硬化状態であれば、可とう性に乏しいために容易に割れや欠けが生じてしまい、ハンドリング性に問題がある。
【0006】
これらの問題を解決するために、スチレン−イソブチレン系熱可塑樹脂を加えたシート材料が報告されているが、このスチレン−イソブチレン系熱可塑樹脂は加熱溶融混合が容易ではなく、分離しやすいためにシートの製造が難しいだけでなく、目的の効果も得られにくいという問題がある(特許文献3)。また、硬化物の耐クラック性を向上させる可とう性付与剤を添加しても、シートの可とう性の付与には効果がない(特許文献4、5)。
【0007】
これらの問題を解決するためにフレキシブル性を重視した組成として結晶性エポキシ樹脂であるビフェニル型エポキシ樹脂を使用した組成にすることでフレキシブル性を大きく改善することが報告されている(特許文献6)。一方で、シート材料は成形時間の制約などから、より長い可使時間、保存安定性が望まれる。単純に硬化促進剤を減量するだけでは保存安定性には優れるが、硬化性に乏しくなることからこれらを両立したシート材料も望まれ、上記組成ではこれらを両立したシート材料としては不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−73621号公報
【特許文献2】特開2006−216899号公報
【特許文献3】特開2016−213391号公報
【特許文献4】特開2016−108387号公報
【特許文献5】特開2016−108388号公報
【特許文献6】特開2016−9814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、硬化前の状態において可とう性に優れ、ハンドリング性が良好であるとともに、保存安定性及び成形性にも優れる半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明では、
(A)結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂、
(B)前記(A)成分以外の25℃で非流動性であるエポキシ樹脂、
(C)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物、
(D)無機充填材、及び
(E)ウレア系硬化促進剤、
を含有する組成物をシート状に成形したものである半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを提供する。
【0011】
このような半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートであれば、硬化前の状態において可とう性に優れ、ハンドリング性が良好であるとともに、保存安定性及び成形性にも優れる半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートとすることができる。
【0012】
また、前記(A)成分の含有量が、前記(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して10〜25質量部であり、前記(E)成分の含有量が、前記(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して0.05〜6質量部であることが好ましい。
【0013】
このような(A)成分の含有量であれば、可とう性が十分であるとともに、タック性が強くなったり、シートとしての保持力が低下したり、シートを構成する樹脂のガラス転移温度が低くなりすぎたりするおそれがない。またこのような(E)成分の含有量であれば、組成物の硬化物の耐熱性及び耐湿性のバランスが悪くなったり、成形時の硬化速度が非常に遅く又は速くなったりするおそれがない。
【0014】
また、前記(D)成分の含有量が、前記組成物100質量部に対して80〜92質量部であることが好ましい。
【0015】
このような(D)成分の含有量であれば、半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートに十分な強度を与えることができるとともに、増粘による充填不良や柔軟性が失われることによる半導体装置内での剥離等の不良が発生するおそれがない。
【0016】
また、前記(E)成分が、下記一般式(1)で表されるものであることが好ましい。
NHCONR (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基及び炭素数6〜18の芳香族炭化水素基の中から選ばれる基であり、R及びRは炭素数1〜6のアルキル基である。)
【0017】
このような(E)成分を含むものとすることで、保存安定性と硬化性をさらにバランス良く達成することができる。
【0018】
また、前記(D)成分が、シリカを含むものであることが好ましい。
【0019】
このような(D)成分を含むものとすることで、優れた補強効果が得られるとともに、得られる硬化物の反りを抑えることができる。
【0020】
また、前記半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートは、未硬化状態において三点曲げ試験におけるシートのたわみ量が30mm以上のものであることが好ましい。
【0021】
このような半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートであれば、より確実に硬化前の状態において可とう性に優れ、ハンドリング性が良好なものとすることができる。
【0022】
また、本発明では、上述の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートで半導体素子が封止されたものである半導体装置を提供する。
【0023】
このような半導体装置であれば、半導体素子が良好に封止され、ボイドやワイヤ流れ、ダイシフトのない半導体装置となる。
【0024】
また、本発明では、上述の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを用いて半導体素子を封止する半導体装置の製造方法を提供する。
【0025】
このような半導体装置の製造方法であれば、上述の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの硬化温度以下の温度で加熱することでシートが軟化・溶融し、半導体素子の形状に追随して封止することができる。
【0026】
また、上述の半導体装置の製造方法では、半導体素子を封止する際に、加圧下及び/又は減圧下において、加熱しながらシートを軟化・溶融して半導体素子を封止することが好ましい。
【0027】
このような半導体装置の製造方法であれば、軟化・溶融して半導体素子の形状に追随した上述の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートと半導体素子との間の密着性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートであれば、硬化前の状態において可とう性に優れ、ハンドリング性が良好であるとともに、保存安定性及び成形性にも優れる半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートとすることができる。また、このような本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートで半導体素子を封止した本発明の半導体装置であれば、半導体素子が良好に封止され、ボイドやワイヤ流れ、ダイシフトのない半導体装置となる。さらに本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを用いた本発明の半導体装置の製造方法であれば、上述の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの硬化温度以下の温度で加熱することでシートが軟化・溶融し、半導体素子の形状に追随して封止することができるとともに、シートと半導体素子との間の密着性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】シートのたわみ量を測定するために用いた荷重−たわみ量曲線の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上述のように、硬化前の状態において可とう性に優れ、ハンドリング性が良好であるとともに、保存安定性及び成形性にも優れる半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの開発が求められていた。
【0031】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定の組み合わせのエポキシ樹脂及びウレア系硬化促進剤を含有する組成物で製造した熱硬化性エポキシ樹脂シートであれば、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0032】
即ち、本発明は、
(A)結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂、
(B)前記(A)成分以外の25℃で非流動性であるエポキシ樹脂、
(C)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物、
(D)無機充填材、及び
(E)ウレア系硬化促進剤、
を含有する組成物をシート状に成形したものである半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートである。
【0033】
以下、本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シート及び半導体装置について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
[半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シート]
本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートは、上述の(A)〜(E)成分を含有する組成物をシート状に成形したものである。以下、各成分についてさらに詳細に説明する。
【0035】
<(A)成分>
本発明に用いる(A)成分は、結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂である。このような(A)成分を使用することで、組成物をシート状に成形した際にシートに柔軟性を付与することができるだけでなく、後述する(D)成分である無機充填材を高充填しても良好な成形性を有するものとすることができる。また(A)成分は、結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂であれば、分子量等に制限されずに用いることができるが、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0036】
また、(A)成分としては、例えば、YL−6810(以上、三菱化学(株)製)、YSLV−70XY、YSLV−80XY(以上、新日鉄住金化学(株)製)などの市販品を使用することができる。
【0037】
(A)成分の含有量は、(A)成分と、後述する(B)成分である(A)成分以外の25℃で非流動性であるエポキシ樹脂及び(C)成分である1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物との総和100質量部に対して10〜25質量部であることが好ましく、より好ましくは12〜22質量部であり、さらに好ましくは14〜20質量部である。10質量部以上であれば成形して得られるシートに十分な可とう性を付与でき、25質量部以下であれば、十分な可とう性を保持しつつも、タック性が強くなったり、シートとしての保持力が低下したり、シートを構成する樹脂のガラス転移温度が低くなりすぎたりするおそれがない。
【0038】
<(B)成分>
本発明に用いる(B)成分は、前記(A)成分以外の25℃で非流動性であるエポキシ樹脂である。25℃で流動性を有するエポキシ樹脂を使用すると、タック性や貼り付き性が強く、離形フィルムから剥がしにくくなるなどハンドリング性に欠けるシートとなるため、本発明では25℃で非流動性であるエポキシ樹脂を使用する。
【0039】
(B)成分のエポキシ樹脂の例としては、25℃で固体であって、結晶性を有さないビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、及び4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂等のビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、及びフェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂、トリアジン誘導体エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、シートのタック性を始めとするハンドリング性の向上の点から、JIS K 7234:1986記載の環球法により測定された軟化点あるいは、示差走査熱量測定(DSC)法により測定した融点が、50〜120℃の範囲にあるものが好ましい。
【0040】
<(C)成分>
本発明に用いる(C)成分は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物である。この(C)成分は上述の(A)成分及び(B)成分に対する硬化剤として使用するものであり、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば一般に公知のものが使用できる。このような(C)成分としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらのフェノール系の樹脂は、分子量、軟化点、水酸基量等に制限なく使用することができるが、軟化点が低く比較的低粘度のものが好ましい。
【0041】
(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分中のエポキシ基に対し、(C)成分中のフェノール性水酸基の当量比が、0.5〜2.0となる量が好ましく、より好ましくは0.7〜1.5となる量である。当量比0.5以上、2.0以下となる量であれば、硬化性や機械特性等が低下するおそれがない。
【0042】
<(D)成分>
本発明に用いる(D)成分は、無機充填材である。この(D)成分は、本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの硬化物の強度を高めるために配合される。このような(D)成分としては、通常エポキシ樹脂組成物やシリコーン樹脂組成物に配合されるものを使用することができ、例えば、球状シリカ、溶融シリカ及び結晶性シリカ等のシリカ類、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等の無機窒化物類、アルミナ、ガラス繊維及びガラス粒子等が挙げられる。補強効果に優れている、得られる硬化物の反りを抑えられる等の点から、(D)成分はシリカを含有するものであることが好ましい。
【0043】
(D)成分の平均粒径及び形状は特に限定されないが、平均粒径は0.5〜40μmが好ましく、より好ましくは3〜40μmである。(D)成分としては、平均粒径が0.5〜40μmの球状シリカが好適に用いられる。なお、本発明において平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めた値である。
【0044】
また、本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを製造する際に、該シートを構成するエポキシ樹脂組成物の高流動化の観点から、(D)成分として複数の粒径範囲の無機充填材を組み合わせたものを使用してもよく、このような場合では、0.1〜3μmの微細領域、3〜7μmの中粒径領域、及び10〜40μmの粗領域の球状シリカを組み合わせて使用することが好ましい。さらなる高流動化のためには、平均粒径がさらに大きい球状シリカを用いることが好ましい。
【0045】
一方、半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートで半導体素子を封止する際には、コンプレッション成形やラミネート成形での成形が多く、モールドアンダーフィル(MUF)性を求められることが多くなっている。本発明においてMUF性を向上させる観点からは、球状シリカの平均粒径が2〜6μm、トップカットサイズが10〜20μmのものを用いることが好ましい。
【0046】
また、(D)成分としては、上述の(A)、(B)及び(C)成分の樹脂成分との結合強度を強くするため、後述する(I)成分のカップリング剤で予め表面処理したものを用いてもよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などが挙げられるが、シランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0047】
(D)成分の含有量は、組成物100質量部に対して80〜92質量部であることが好ましく、83〜91質量部であることがより好ましい。80質量部以上であれば半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートに十分な強度を与えることができ、92質量部以下であれば、増粘による充填不良や柔軟性が失われることによる半導体装置内での剥離等の不良が発生するおそれがない。
【0048】
<(E)成分>
本発明に用いる(E)成分は、ウレア系硬化促進剤である。この(E)成分は、上述の(A)、(B)成分のエポキシ樹脂と(C)成分の硬化剤との硬化反応を促進するために配合される。このような(E)成分を用いることで、本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの保存安定性を向上させながら、封止成形時は未硬化にはならずにしっかりと硬化させることができる。即ち、成形性に優れたものとすることができる。
【0049】
(E)成分としては、下記一般式(1)で表される構造を有するものを用いるのが好ましい。
NHCONR (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基及び炭素数6〜18の芳香族炭化水素基の中から選ばれる基であり、R及びRは炭素数1〜6のアルキル基である。)
【0050】
式中、Rは水素原子、炭素数1〜18、好ましくは3〜15のアルキル基及び炭素数6〜18、好ましくは6〜15の芳香族炭化水素基の中から選ばれる基であり、R及びRは炭素数1〜6のアルキル基である。R及びRに関しては、保存安定性及び硬化性の観点からメチル基であることが好ましい。
【0051】
上記一般式(1)で表されるウレア系硬化促進剤の具体例としては、1,1−ジメチル尿素、1,1,3−トリメチル尿素、1,1−ジメチル−3−エチル尿素、1,1−ジメチル−3−フェニル尿素、1,1−ジエチル−3−メチル尿素、1,1−ジエチル−3−フェニル尿素、1,1−ジメチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)尿素、1,1−ジメチル3−(p−クロロフェニル)尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)などが挙げられる。
【0052】
(E)成分の含有量は、上述の(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して0.05〜6質量部であることが好ましく、特に0.1〜5質量部であることがより好ましい。0.05〜6質量部であれば、組成物の硬化物の耐熱性及び耐湿性のバランスが悪くなったり、成形時の硬化速度が非常に遅く又は速くなったりするおそれがない。
【0053】
次に、本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの材料となる組成物に、上記の(A)〜(E)成分に加え、下記の任意の成分を配合することができる。
【0054】
<(F)成分>
本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの材料となる組成物には、上述の(E)成分に加えて、(F)成分として、上述の(E)成分以外の(即ち、ウレア系以外の)硬化促進剤を配合することができる。このような(F)成分としては、通常エポキシ樹脂の硬化促進剤として用いられるいかなるものも使用することができ、具体的には、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0055】
<(G)成分>
本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの材料となる組成物には、(G)成分として離型剤を配合することができる。この(G)成分は、成形時の離型性を高めるために配合するものである。このような(G)成分としては、カルナバワックス、ライスワックスをはじめとする天然ワックス、酸ワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステルをはじめとする合成ワックスが挙げられるが、離型性の観点からカルナバワックスが好ましい。
【0056】
(G)成分の含有量は、上述の(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して、0.05〜5.0質量部、特には0.4〜3.0質量部であることが好ましい。0.05質量部以上であれば、十分な離型性が得られなかったり、製造時の溶融混練時に過負荷が生じてしまったりするおそれがなく、5.0質量部以下であれば、沁み出し不良や接着性不良等が起こるおそれがない。
【0057】
<(H)成分>
本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの材料となる組成物には、(H)成分として難燃剤を配合することができる。この(H)成分は、半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの難燃性を高めるために配合するものである。このような(H)成分としては、特に制限されず公知のものを使用することができ、例えばホスファゼン化合物、シリコーン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモンなどが挙げられ、これらを1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
(H)成分の含有量は上述の(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して2〜20質量部であることが好ましく、3〜10質量部であることがより好ましい。
【0059】
<(I)成分>
本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの材料となる組成物には、(I)成分としてシランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤を配合することができる。この(I)成分は、上述の(A)、(B)及び(C)成分の樹脂成分と(D)成分である無機充填材との結合強度を強くしたり、シリコンウエハや有機基板との接着性を高くしたりするために配合するものである。このような(I)成分としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミン官能性アルコキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、などが挙げられる。
【0060】
表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではなく、常法に従って行えばよい。また、前述したように予めカップリング剤で無機充填材を処理してもよいし、上述の(A)、(B)及び(C)成分の樹脂成分と(D)成分の無機充填材とを混練する際に、カップリング剤を添加して表面処理しながら組成物を混練してもよい。
【0061】
(I)成分の含有量は、上述の(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して、0.1〜8.0質量部とすることが好ましく、特に0.5〜6.0質量部とすることが好ましい。0.1質量部以上であれば、基材への接着効果が十分に得られ、8.0質量部以下であれば、粘度が極端に低下してボイドの原因になるおそれがない。
【0062】
<その他の添加剤>
本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートには、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的でオルガノポリシロキサン、シリコーンオイル、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、又は光安定剤等の添加剤、電気特性を改善する目的でイオントラップ材、着色の観点からカーボンブラックのような顔料などを添加配合することができる。
【0063】
<半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの製造方法>
本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの製造方法としては、上述の(A)、(B)成分のエポキシ樹脂、(C)成分のフェノール化合物、(D)成分の無機充填材、(E)成分のウレア系硬化促進剤、及びその他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、先端にTダイを設置した二軸押し出し機を用いてシート状に成形するTダイ押し出し法が挙げられる。他には、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して得られた熱硬化性エポキシ樹脂組成物の粉砕品を加圧部材間で70〜120℃で加熱溶融し圧縮してシート状に成形することにより得ることもできる。
【0064】
このようにして得られる半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートは、厚さが0.1〜5.0mmであることが好ましく、0.15〜3.0mmであることがより好ましい。
【0065】
また、このようにして得られた本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートは、未硬化状態において、三点曲げ試験におけるシートのたわみ量が30mm以上のものであることが好ましく、より好ましくはたわみ量が40〜100mmのものである。なお、本発明における三点曲げ試験とは、JIS K 6911:2006に記載の曲げ強さの測定方法を準用するものとする。具体的には、試験片として長さ100mm、高さ1.0mm、幅10mmの試験片を用い、荷重速度2mm/minで加重し、その他の条件は該規格に記載の条件に従って測定した荷重−たわみ曲線からたわみ量を求めるものである。
【0066】
[半導体装置]
また、本発明では、上述の本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートで半導体素子が封止されたものである半導体装置を提供する。
【0067】
本発明の半導体装置は、上述の本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを用いて、コンプレッション成形やラミネート成形により半導体素子を封止することで、製造することができる。コンプレッション成形を行う場合、例えば、コンプレッション成形機を用い、成形温度120〜190℃で成形時間30〜600秒、好ましくは成形温度130〜160℃で成形時間120〜450秒で行うことができる。更に、いずれの成形法においても、後硬化を140〜185℃で0.5〜20時間行ってもよい。
【0068】
他にも、半導体素子を搭載した基板上に本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを乗せ、60〜150℃の熱板上で30〜240分かけてシートを溶かしながら基板に追随するようにすることで半導体素子を封止することもできる。
【0069】
このような半導体装置であれば、半導体素子が良好に封止され、ボイドやワイヤ流れ、ダイシフトのない半導体装置となる。
【0070】
[半導体装置の製造方法]
また、本発明では、上述の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを用いて半導体素子を封止する半導体装置の製造方法を提供する。
【0071】
このような半導体装置の製造方法であれば、上述の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの硬化温度以下の温度で加熱することで、シートが軟化・溶融し、半導体素子の形状に追随して封止することができる。具体的には、半導体素子を搭載した基板上に本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを乗せ、60〜150℃の熱板上で30〜240分かけてシートを溶かしながら基板及び素子に追随するようにすることで半導体素子を封止することが好ましい。
【0072】
また、上述の半導体装置の製造方法は、半導体素子を封止する際に、加圧下及び/又は減圧下において、加熱しながらシートを軟化・溶融して半導体素子を封止することが好ましい。このような半導体装置の製造方法であれば、半導体素子を封止する際に、発生するボイドを低減させたり細部への追随性・侵入性を高めたりすることができるとともに、上述の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートと半導体素子との間の密着性をさらに向上させることができる。また、加圧する場合は封止圧力を0.2MPa以上とすることが好ましく、減圧する場合は0.05MPa以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0074】
実施例、比較例で使用した原料を以下に示す。
(A)結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂
(A−1):結晶性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YL−6810:三菱化学(株)製商品名、エポキシ当量170)
【0075】
(B)(A)成分以外の25℃で非流動性であるエポキシ樹脂
(B−1):固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER−1001:三菱化学(株)製、エポキシ当量475、軟化点64℃)
(B−2):クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EPICLON N−670:(株)DIC製、エポキシ当量210、軟化点73℃)
(B−3):ビフェニル型エポキシ樹脂(YX−4000:三菱化学(株)製、エポキシ当量186、融点105℃)
(B−4):トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(EPPN−501:日本化薬(株)製、エポキシ当量166、軟化点54℃)
【0076】
(C)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物
(C−1):トリスフェノールメタン型フェノール樹脂(MEH−7500:明和化成(株)製、水酸基当量97)
(C−2):フェノールノボラック型フェノール硬化剤(TD−2131:(株)DIC製、水酸基当量110)
【0077】
(D)無機充填材
(D−1):溶融球状シリカ(CS−6103 53C2、(株)龍森製、平均粒径10μm)
【0078】
(E)ウレア系硬化促進剤
(E−1):芳香族ジメチルウレア(U−CAT 3512T、サンアプロ(株)製)
(E−2):脂肪族ジメチルウレア(U−CAT 3513N、サンアプロ(株)製)
【0079】
(F)ウレア系以外の硬化促進剤
(F−1):2−メチル−4−エチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成(株)製)
(F−2):トリフェニルホスフィン(TPP、北興化学(株)製)
【0080】
(G)離型剤
(G−1)カルナバワックス(TOWAX−131:東亜化成(株)製)
【0081】
(H)難燃材
(H−1):モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛(KEMGARD 911C:シャーウィンウィリアムズ製)
【0082】
(I)カップリング剤
(I−1):シランカップリング剤:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803:信越化学工業(株)製)
【0083】
(J)着色剤
(J−1):カーボンブラック(三菱カーボンブラック#3230MJ、三菱化学(株)製)
【0084】
[実施例1〜8,比較例1〜8]
表1及び表2に示す配合で、あらかじめヘンシェルミキサーでプレ混合して組成物を調製した後、Tダイを取り付けた2軸押し出し機を用いて各組成物を幅300mm、厚さ0.5mmに成形して半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを得た。
【0085】
<最低溶融粘度及び保存安定性試験>
高化式フローテスター((株)島津製作所製 製品名 フローテスターCFT−500型)を用い、25kgfの加圧下、直径1mmのノズルを用い、温度175℃で各半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの最低溶融粘度を測定した。さらに、各半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを40℃に設定した恒温槽に入れ、72時間放置後の最低溶融粘度も同様の条件で測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0086】
<シートのたわみ量>
未硬化状態の縦100mm、横10mm、厚さ1.0mmの半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを作製し、このシートを、三点曲げ試験として、JIS K 6911:2006規格に準じて室温(25℃)にて、荷重速度2mm/minの速度で押し、図1に示すような加重−たわみ量曲線からたわみ量を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0087】
<シートの成形性>
Tダイ押し出し法で0.5mmの厚さで製造した半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを直径150mm(6インチ)に切り出し、直径200mm(8インチ)で厚さが725μmのシリコンウエハの上にセットし、さらに半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートの上にPET製離型フィルムをセットした。これを150℃300秒キュアにセットされた真空プレスを用いて真空圧縮成形することで硬化封止した。その後、剥離フィルムをはがし、充填性及び外観を確認した。
〔充填性〕
問題なく充填できたものを○、未充填の箇所が生じたものを×として表1及び表2に記載した。
〔外観〕
外観がきれいなものを○、フローマークなど外観に問題を生じたものを×として表1及び表2に記載した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
表1に示すように、本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートを用いた実施例1〜8では、硬化前の状態においてシートのたわみ量が30mm以上であることから、可とう性に優れ、ハンドリング性が良好であるとともに、40℃、72時間放置後の最低溶融粘度の変化が小さいことから、保存安定性にも優れ、成形性も良好であった。
【0091】
一方、表2で示すように、比較例1では(B)成分を用いなかったため、タックがあり良好なハンドリング性が得られなかった。また比較例2〜4では、(E)成分を用いず、ウレア系以外の硬化促進剤を用いたことから、良好な保存安定性が得られなかった。比較例5では、(E)成分を用いず、ウレア系以外の硬化促進剤の配合量が少なかったため、成形時間内に硬化しなかった。また、比較例6〜8では、(A)成分を用いなかったため、可とう性と成形性を両立することができなかった。
【0092】
以上のことから、本発明の半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートであれば、硬化前の状態において可とう性に優れ、ハンドリング性が良好であるとともに、保存安定性及び成形性にも優れる半導体封止用熱硬化性エポキシ樹脂シートとなることが明らかとなった。
【0093】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1