特許第6815580号(P6815580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6815580舌機能評価方法、舌機能訓練方法、舌機能評価装置、及び舌機能訓練装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815580
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】舌機能評価方法、舌機能訓練方法、舌機能評価装置、及び舌機能訓練装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20210107BHJP
   A61B 5/22 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   A61B5/11 320
   A61B5/22 200
   A61B5/11ZDM
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-182278(P2016-182278)
(22)【出願日】2016年9月16日
(65)【公開番号】特開2018-42925(P2018-42925A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠
(72)【発明者】
【氏名】柴本 勇
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 勝裕
【審査官】 清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4697601(US,A)
【文献】 特表2013−544603(JP,A)
【文献】 特表2004−526473(JP,A)
【文献】 特開2003−116819(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3204772(JP,U)
【文献】 米国特許第4585012(US,A)
【文献】 佐々木将瑛、佐々木誠、中山淳、柴本勇,舌骨上筋群の表面筋電位を用いた舌尖の力ベクトル推定,日本顎口腔機能学会雑誌,2016年 4月24日,Vol.23 No.1,pp. 48-49
【文献】 正木絢乃、柳青、宮内将斗、木村尭、野嶋琢也,スカッチュ:口腔筋トレーニング支援を目的とするシリアスゲームの開発,日本バーチャルリアリティ学会論文誌,2016年 9月 9日,Vol.21 No.2,pp. 243-250
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
A63B 23/00−23/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部が発揮可能な任意方向の力を計測して前記舌部の機能を評価する舌機能評価方法であって、
目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測して、前記持続時間から持久力を判断する持久力評価ステップと、
前記目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、前記第1目標値から前記第2目標値に変化させた場合に、前記第1目標値から前記第2目標値への過度応答を計測し、前記過度応答の特性値から瞬発力を判断する瞬発力評価ステップと、
前記目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、前記追従応答における前記目標値との誤差から巧緻性を判断する巧緻性評価ステップと、
を有することを特徴とする舌機能評価方法。
【請求項2】
前記舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を筋力と判断する筋力評価ステップを有することを特徴とする請求項1に記載の舌機能評価方法。
【請求項3】
前記筋力評価ステップで計測された前記最大計測値を基準として、前記持久力評価ステップ、前記瞬発力評価ステップ、及び前記巧緻性評価ステップにおける前記目標値を設定することを特徴とする請求項2に記載の舌機能評価方法。
【請求項4】
前記持久力評価ステップ、前記瞬発力評価ステップ、及び前記巧緻性評価ステップでは、前記目標値と、計測される計測値とを表示させ、表示された前記計測値を、表示された前記目標値に一致させることを促すことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の舌機能評価方法。
【請求項5】
計測する前記力を、前記舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの、少なくとも1つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の舌機能評価方法。
【請求項6】
計測する前記力を、前記舌部の所定範囲における舌圧とすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の舌機能評価方法。
【請求項7】
前記持久力評価ステップで判断した前記持久力、前記瞬発力評価ステップで判断した前記瞬発力、及び前記巧緻性評価ステップで判断した前記巧緻性の評価結果を、前記舌部を表す舌部イメージ図において、前記計測点又は前記計測面とともに表示することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の舌機能評価方法。
【請求項8】
舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部で発揮する任意方向の力を計測し、前記舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示させ、表示された前記計測値を、表示された前記目標値に一致させることを促すことで、前記舌部の機能を訓練する舌機能訓練方法であって、
前記目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、前記第1目標値から前記第2目標値に変化させることで、前記第1目標値から前記第2目標値への過度応答を訓練する瞬発力訓練ステップと、
前記目標値を連続的に変化させることで、連続的な変化への追従応答を訓練する巧緻性訓練ステップと、
を有することを特徴とする舌機能訓練方法。
【請求項9】
前記舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を基準として、前記瞬発力訓練ステップ、及び前記巧緻性訓練ステップにおける前記目標値を設定することを特徴とする請求項8に記載の舌機能訓練方法。
【請求項10】
舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部が発揮可能な任意方向の力を計測して前記舌部の機能を評価する舌機能評価装置であって、
舌尖を保持する舌尖保持部と、
前記舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、
前記ひずみセンサからの信号を受信して、前記舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示部に表示させる制御部と、
を備え、
前記制御部では、
前記目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測して、前記持続時間から持久力を判断する持久力評価手段と、
前記目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、前記第1目標値から前記第2目標値に変化させた場合に、前記第1目標値から前記第2目標値への過度応答を計測し、前記過度応答の特性値から瞬発力を判断する瞬発力評価手段と、
前記目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、前記追従応答における前記目標値との誤差から巧緻性を判断する巧緻性評価手段と、
を有することを特徴とする舌機能評価装置。
【請求項11】
前記舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を筋力と判断する筋力評価手段を有することを特徴とする請求項10に記載の舌機能評価装置。
【請求項12】
舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部で発揮する任意方向の力を計測し、前記舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示させ、表示された前記計測値を、表示された前記目標値に一致させることを促すことで、前記舌部の機能を訓練する舌機能訓練装置であって、
舌尖を保持する舌尖保持部と、
前記舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、
前記ひずみセンサからの信号を受信して、前記舌部で発揮させる前記目標値と、計測される前記計測値とを表示部に表示させる制御部と、
を備え、
前記制御部では、
前記目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測して、前記持続時間から持久力を判断する持久力評価手段と、
前記目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、第1目標値を第2目標値に変化させた場合に、前記第1目標値から前記第2目標値への過度応答を計測し、前記過度応答の特性値から瞬発力を判断する瞬発力評価手段と、
前記目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、前記追従応答における前記目標値との誤差から巧緻性を判断する巧緻性評価手段と、
を有することを特徴とする舌機能訓練装置。
【請求項13】
前記舌部の最大発揮力を計測し、計測された前記最大計測値を基準として、前記瞬発力評価手段、及び前記巧緻性評価手段における前記目標値を設定することを特徴とする請求項12に記載の舌機能訓練装置。
【請求項14】
舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部が発揮可能な任意方向の力を計測して前記舌部の機能を評価する舌機能評価装置であって、
舌尖を保持する舌尖保持部と、
前記舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、
前記ひずみセンサからの信号を受信して、前記舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示部に表示させる制御部と、
を備え、
計測する前記力を、前記舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの少なくとも1つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とし、
前記ひずみセンサとして、6軸力覚センサを用いることを特徴とする舌機能評価装置。
【請求項15】
舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部で発揮する任意方向の力を計測し、前記舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示させ、表示された前記計測値を、表示された前記目標値に一致させることを促すことで、前記舌部の機能を訓練する舌機能訓練装置であって、
舌尖を保持する舌尖保持部と、
前記舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、
前記ひずみセンサからの信号を受信して、前記舌部で発揮させる前記目標値と、計測される前記計測値とを表示部に表示させる制御部と、
を備え、
計測する前記力を、前記舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの少なくとも1つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とし、
前記ひずみセンサとして、6軸力覚センサを用いることを特徴とする舌機能訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舌部の機能を評価する舌機能評価方法、舌部の機能を訓練する舌機能訓練方法、舌部の機能を評価する舌機能評価装置、舌部の機能を訓練する舌機能訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平成23年度に、我が国の死因第3位は脳血管疾患から「肺炎」へと移り変わった。肺炎による死亡者12万4,652人のうち、96.5%が65歳以上の高齢者であり、その約半数は「嚥下障害による誤嚥性肺炎」による死亡とされている。また、後期高齢者の約30%に嚥下障害があると言われており、少なくとも500万人が肺炎で命を落とす危険性がある。岩手県内においても、肺炎による死亡者が年間1,666人に上るなど、嚥下障害の問題は深刻化の一途をたどっている。
嚥下リハビリテーションを効果的に行うためには、嚥下機能を正確に把握し、個人に適した訓練を実施することが重要である。嚥下機能の評価は、食塊の生成(飲み込みやすい塊を作る)、咽頭への送り込み、喉頭閉鎖(気管に蓋をして誤嚥を防ぐ)等に直接的/間接的に寄与する「舌の運動能力」に着目して行われる場合が多い。現状では、口に取り込んだ食品を舌が口蓋前方部とその間で潰す力を舌圧と定義し(非特許文献1)、その最大値に着目することで、舌機能低下や訓練効果に対する評価が行われているが、この方法では、舌尖部、舌体部、舌根部などの各部位ごとの運動能力や、麻痺側、非麻痺側の運動能力を個別に評価できず、舌の運動能力をマクロ的な視点でしか評価できていないという問題を抱えている。
特許文献1から特許文献4には、バルーンを用いた舌圧の測定方法が開示されている。
また、特許文献5及び特許文献6には、口蓋に圧力センサシートを貼りつけるものであり、口蓋の任意の点の圧力を測定することが開示されている。
一方、嚥下機能の訓練では、上述したように舌運動能力の詳細な評価ができないことから、徒手による可動域拡大訓練や、舌圧子やスプーンへの舌の押し付けによる筋力増強訓練、バルーン型舌圧測定器による口腔内圧を高める訓練など、簡便な訓練法が採用されている。しかし、舌に加える負荷の大きさや方向、時間によって、訓練部位や効果が大きく異なることは、生理学的に明らかであり、個々人の舌機能に適した訓練の実現が不可欠といえる。また、舌運動障害は様々な病態があり、それらに対応することが求められている。より詳細で正確な評価は、適切な訓練の実施およびアウトカムのために不可欠である。
特許文献7には、マウスピースに複数の圧力センサを配置して、舌圧、頬圧などを計測するデバイスが開示されている。
特許文献8には、舌の運動を行わせることなく、舌の運動機能を簡便に評価することができる舌測定装置が開示されている。
特許文献9には、自発的に舌が動かせない患者に対しても、患者の舌を傷つけることなく、また、術者にも負担が無い体勢で、舌を前後や上下左右等に動かすことが可能となる舌吸引リハビリ用具が開示されている。
また、特許文献10及び特許文献11に記載されたような舌圧測定装置や訓練装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−204940号公報
【特許文献2】特開2005−013679号公報
【特許文献3】特開2001−275994号公報
【特許文献4】特開2005−296281号公報
【特許文献5】特開2010−273840号公報
【特許文献6】特開2006−000234号公報
【特許文献7】特開2015−144695号公報
【特許文献8】特開2014−188029号公報
【特許文献9】実用新案登録第3204772号公報
【特許文献10】特開2007−202922号公報
【特許文献11】特表2013−544603号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hayashi R, Tsuga K et al., A novel handy probe for tongue pressure measurement. Int J Prosthodont, 15: 385-388, 2002.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1から特許文献4は、舌全体でバルーンを口蓋に押し付けたときのバルーン内部の圧力を評価するものであり、舌尖部、舌体部、舌根部などの各部位ごとの運動能力や、麻痺側、非麻痺側の運動能力を個別に評価できない。また、舌で加えた力の大きさと方向(すなわち3次元力ベクトル)とその作用点を評価できない。加えて、バルーンの大きさは一定であり、口腔内容積によって測定値が変わるため個人間の評価をする際に単純に舌運動の違いとして捉えることができないという側面がある。さらに、目標値と実際に発揮している舌圧を同時に可視化し、ビジュアルフィードバックを用いながら発揮できる力の調整能力を評価できない。また、例えば、舌を左右に動かそうとする力、前方に押し出そうとする力など、舌を口蓋に押し付ける方向以外の任意方向に発揮可能な力の能力を評価できない。
また、特許文献5及び特許文献6は、圧力センサシートを口蓋に設置することを原則としているため、せん断力を測定できず、舌で加えた力の大きさと方向(すなわち3次元力ベクトル)とその作用点も評価できない。また、例えば、舌を左右に動かそうとする力、前方に押し出そうとする力など、舌を口蓋に押し付ける方向以外の任意方向に発揮可能な力の能力を評価できない。
また、特許文献7は圧力センサを使用しているため、舌で加えた力の大きさと方向、すなわち3次元力ベクトルを評価できない。
また、特許文献8は、舌のインピーダンスから計算した筋肉断面積から、舌を動かす能力を予測する方法であり、任意の部位から、任意方向に発揮できる力を予測できず、麻痺側、非麻痺側の能力を個別に評価できない。
また、特許文献9は舌を牽引可能な舌吸引リハビリ用具、特許文献10はバルーンとは異なる圧力検知具、特許文献11は更に異なる力感知部が開示されているが、舌機能評価方法を提案するものではない。
【0006】
本発明は、目標値と実際に発揮している力の情報を同時に可視化し、可視化したビジュアルな情報を用いながら(ビジュアルフィードバック)、発揮できる舌部(舌部とは、舌尖部、舌体部、舌根部などの舌の各部位をまとめたもの)の力の調整能力を評価することができ、例えば嚥下障害などの機能低下を多面的に定量評価することができる舌機能評価方法を提供することを目的とする。
本発明は、ビジュアルフィードバックによって被評価者に目標値に沿って舌部の力を調整することを促して、発揮できる舌部の力の調整能力を評価することができ、例えば嚥下障害などの機能低下を多面的に定量評価することができる舌機能評価装置を提供することを目的とする。
本発明は、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に目標値に沿って舌部の力を調整することを促すことができ、瞬発力、巧緻性、筋力、又は持久力を高める訓練を効果的に行うことができる舌機能訓練方法及び訓練装置を提供することを目的とする。
本発明は、舌部の各部位を作用点とした力のベクトル値を計測でき、機能低下の部位を特定できる舌機能評価装置を提供することを目的とする。
本発明は、舌部の各部位を作用点とした力のベクトル値を計測でき、瞬発力、巧緻性、筋力、又は持久力を高める訓練を効果的に行うことができる舌機能訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明の舌機能評価方法は、舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部が発揮可能な任意方向の力を計測して前記舌部の機能を評価する舌機能評価方法であって、目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測して、前記持続時間から持久力を判断する持久力評価ステップと、前記目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、前記第1目標値から前記第2目標値に変化させた場合に、前記第1目標値から前記第2目標値への過度応答を計測し、前記過度応答の特性値から瞬発力を判断する瞬発力評価ステップと、前記目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、前記追従応答における前記目標値との誤差から巧緻性を判断する巧緻性評価ステップと、を有することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の舌機能評価方法において、前記舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を筋力と判断する筋力評価ステップを有することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の舌機能評価方法において、前記筋力評価ステップで計測された前記最大計測値を基準として、前記持久力評価ステップ、前記瞬発力評価ステップ、及び前記巧緻性評価ステップにおける前記目標値を設定することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の舌機能評価方法において、前記持久力評価ステップ、前記瞬発力評価ステップ、及び前記巧緻性評価ステップでは、前記目標値と、計測される計測値とを表示させ、表示された前記計測値を、表示された前記目標値に一致させることを促すことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の舌機能評価方法において、計測する前記力を、前記舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの、少なくとも1つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とすることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の舌機能評価方法において、計測する前記力を、前記舌部の所定範囲における舌圧とすることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の舌機能評価方法において、前記持久力評価ステップで判断した前記持久力、前記瞬発力評価ステップで判断した前記瞬発力、及び前記巧緻性評価ステップで判断した前記巧緻性の評価結果を、前記舌部を表す舌部イメージ図において、前記計測点又は前記計測面とともに表示することを特徴とする。
請求項8記載の本発明の舌機能訓練方法は、舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部で発揮する任意方向の力を計測し、前記舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示させ、表示された前記計測値を、表示された前記目標値に一致させることを促すことで、前記舌部の機能を訓練する舌機能訓練方法であって、前記目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、前記第1目標値から前記第2目標値に変化させることで、前記第1目標値から前記第2目標値への過度応答を訓練する瞬発力訓練ステップと、前記目標値を連続的に変化させることで、連続的な変化への追従応答を訓練する巧緻性訓練ステップと、を有することを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の舌機能訓練方法において、前記舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を基準として、前記瞬発力訓練ステップ、及び前記巧緻性訓練ステップにおける前記目標値を設定することを特徴とする。
請求項10記載の本発明の舌機能評価装置は、舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部が発揮可能な任意方向の力を計測して前記舌部の機能を評価する舌機能評価装置であって、舌尖を保持する舌尖保持部と、前記舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、前記ひずみセンサからの信号を受信して、前記舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示部に表示させる制御部と、を備え、前記制御部では、前記目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測して、前記持続時間から持久力を判断する持久力評価手段と、前記目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、前記第1目標値から前記第2目標値に変化させた場合に、前記第1目標値から前記第2目標値への過度応答を計測し、前記過度応答の特性値から瞬発力を判断する瞬発力評価手段と、前記目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、前記追従応答における前記目標値との誤差から巧緻性を判断する巧緻性評価手段と、を有することを特徴とする。
請求項11記載の本発明は、請求項10に記載の舌機能評価装置において、前記舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を筋力と判断する筋力評価手段を有することを特徴とする。
請求項12記載の本発明の舌機能訓練装置は、舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部で発揮する任意方向の力を計測し、前記舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示させ、表示された前記計測値を、表示された前記目標値に一致させることを促すことで、前記舌部の機能を訓練する舌機能訓練装置であって、舌尖を保持する舌尖保持部と、前記舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、前記ひずみセンサからの信号を受信して、前記舌部で発揮させる前記目標値と、計測される前記計測値とを表示部に表示させる制御部と、を備え、前記制御部では、前記目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測して、前記持続時間から持久力を判断する持久力評価手段と、前記目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、前記第1目標値から前記第2目標値に変化させた場合に、前記第1目標値から前記第2目標値への過度応答を計測し、前記過度応答の特性値から瞬発力を判断する瞬発力評価手段と、前記目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、前記追従応答における前記目標値との誤差から巧緻性を判断する巧緻性評価手段と、を有することを特徴とする。
請求項13記載の本発明は、請求項12に記載の舌機能訓練装置において、前記舌部の最大発揮力を計測し、計測された前記最大計測値を基準として、前記瞬発力評価手段、及び前記巧緻性評価手段における前記目標値を設定することを特徴とする。
請求項14記載の本発明の舌機能評価装置は、舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部が発揮可能な任意方向の力を計測して前記舌部の機能を評価する舌機能評価装置であって、舌尖を保持する舌尖保持部と、前記舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、前記ひずみセンサからの信号を受信して、前記舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示部に表示させる制御部と、を備え、計測する前記力を、前記舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの少なくとも一つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とし、前記ひずみセンサとして、6軸力覚センサを用いることを特徴とする。
請求項15記載の本発明の舌機能訓練装置は、舌部の任意の位置と姿勢において、前記舌部で発揮する任意方向の力を計測し、前記舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示させ、表示された前記計測値を、表示された前記目標値に一致させることを促すことで、前記舌部の機能を訓練する舌機能訓練装置であって、舌尖を保持する舌尖保持部と、前記舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、前記ひずみセンサからの信号を受信して、前記舌部で発揮させる前記目標値と、計測される前記計測値とを表示部に表示させる制御部と、を備え、計測する前記力を、前記舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの少なくとも一つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とし、前記ひずみセンサとして、6軸力覚センサを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の舌機能評価方法によれば、舌部の力の発揮能力や調整能力を評価することができ、例えば嚥下障害などの機能低下を多面的に定量評価することができる。
本発明の舌機能訓練方法によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に目標値に沿って舌部の力を調整することを促すことができ、瞬発力、巧緻性、筋力、又は持久力を高める訓練を効果的に行うことができる。
本発明の舌機能評価装置によれば、ビジュアルフィードバックによって被評価者に目標値に沿って舌部の力を調整することを促して舌部の力の調整能力を評価することができ、例えば嚥下障害などの機能低下を多面的に定量評価することができる。
本発明の舌機能訓練装置によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に目標値に沿って舌部の力を調整することを促すことができ、瞬発力、巧緻性、筋力、又は持久力を高める訓練を効果的に行うことができる。
本発明の舌機能評価装置によれば、6軸力覚センサを用いることで、舌部の各部位を作用点とした力のベクトル値を計測でき、機能低下の部位を特定できる。
本発明の舌機能訓練装置によれば、6軸力覚センサを用いることで、舌部の各部位を作用点とした力のベクトル値を計測でき、瞬発力、巧緻性、筋力、又は持久力を高める訓練を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例による舌機能評価装置を機能実現手段で表したブロック図
図2】本発明の一実施例による舌機能評価方法及び舌機能訓練方法を示すフローチャート
図3】本実施例による評価を説明するグラフ
図4】本実施例の表示部で表示する目標値画像データの表示イメージを示す図
図5】本実施例の表示部で表示する目標値画像データの表示イメージを示す図
図6】本実施例の表示部で表示する目標値画像データの他の表示イメージを示す図
図7】本実施例の表示部で表示する目標値画像データの更に他の表示イメージを示す図
図8】本実施例で用いる舌尖保持部とひずみセンサを示す構成図
図9】舌尖保持部とひずみセンサの他の実施例による構成図
図10】本発明の実施例に基づいた訓練と評価に用いた表示イメージを示す図
図11】本発明の実施例に基づいた訓練結果を示すグラフ
図12】本発明の実施例に基づいた訓練結果を示すグラフ
図13】本発明の実施例に基づいた訓練結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の実施の形態による舌機能評価方法は、目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測して、持続時間から持久力を判断する持久力評価ステップと、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、第1目標値を第2目標値に変化させた場合に、第1目標値から第2目標値への過度応答を計測し、過度応答の特性値から瞬発力を判断する瞬発力評価ステップと、目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、追従応答における目標値との誤差から巧緻性を判断する巧緻性評価ステップと、を有するものである。本実施の形態によれば、舌部の力の発揮能力や調整能力を評価することができ、例えば嚥下障害などの機能低下を多面的に定量評価することができる。
【0011】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による舌機能評価方法において、舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を筋力と判断する筋力評価ステップを有するものである。本実施の形態によれば、持久力、瞬発力、及び巧緻性に加えて筋力を評価することで、舌部の力の発揮能力及び調整能力を評価することができる。
【0012】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による舌機能評価方法において、筋力評価ステップで計測された最大計測値を基準として、持久力評価ステップ、瞬発力評価ステップ、及び巧緻性評価ステップにおける目標値を設定するものである。本実施の形態によれば、被評価者の個人差を考慮して、持久力、瞬発力、及び巧緻性を評価できるため、より正確な定量評価を行える。
【0013】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による舌機能評価方法において、持久力評価ステップ、瞬発力評価ステップ、及び巧緻性評価ステップでは、目標値と、計測される計測値とを表示させ、表示された計測値を、表示された目標値に一致させることを促すものである。本実施の形態によれば、ビジュアルフィードバックによって被評価者に舌部の力を調整することを促すことができる。
【0014】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による舌機能評価方法において、計測する力を、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの、少なくとも1つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とするものである。本実施の形態によれば、舌部の各部位ごとに評価でき、麻痺等の機能低下の部位を特定できる。
【0015】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による舌機能評価方法において、計測する力を、舌部の所定範囲における舌圧とするものである。本実施の形態によれば、既に普及が進んでいる舌圧測定によっても、舌部の力の発揮能力や調整能力を計測でき多面的な定量評価を行える。
【0016】
本発明の第7の実施の形態は、第1から第6のいずれかの実施の形態による舌機能評価方法において、持久力評価ステップで判断した持久力、瞬発力評価ステップで判断した瞬発力、及び巧緻性評価ステップで判断した巧緻性の評価結果を、舌部を表す舌部イメージ図において、計測点又は計測面とともに表示するものである。本実施の形態によれば、舌部の力の発揮特性や調整能力をビジュアルフィードバックできる。
【0017】
本発明の第8の実施の形態による舌機能訓練方法は、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、第1目標値を第2目標値に変化させることで、第1目標値から第2目標値への過度応答を訓練する瞬発力訓練ステップと、目標値を連続的に変化させることで、連続的な変化への追従応答を訓練する巧緻性訓練ステップと、を有するものである。本実施の形態によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の力を調整することを促すことができ、瞬発力や巧緻性を高める訓練を効果的に行うことができ、この訓練によって筋力や持久力も鍛えられる。
【0018】
本発明の第9の実施の形態は、第8の実施の形態による舌機能訓練方法において、舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を基準として、瞬発力訓練ステップ、及び巧緻性訓練ステップにおける目標値を設定するものである。本実施の形態によれば、被訓練者の個人差を考慮して、瞬発力や巧緻性の訓練を行えるため、より効果的な訓練を行え、この訓練によって筋力や持久力も鍛えられる。
【0019】
本発明の第10の実施の形態による舌機能評価装置は、舌尖を保持する舌尖保持部と、舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、ひずみセンサからの信号を受信して、舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示部に表示させる制御部と、を備え、制御部では、目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測して、持続時間から持久力を判断する持久力評価手段と、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、第1目標値を第2目標値に変化させた場合に、第1目標値から第2目標値への過度応答を計測し、過度応答の特性値から瞬発力を判断する瞬発力評価手段と、目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、追従応答における目標値との誤差から巧緻性を判断する巧緻性評価手段と、を有するものである。本実施の形態によれば、ビジュアルフィードバックによって被評価者に舌部の力を調整することを促して舌部の力の調整能力を評価することができ、例えば嚥下障害などの機能低下を多面的に定量評価することができる。
【0020】
本発明の第11の実施の形態は、第10の実施の形態による舌機能評価装置において、舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を筋力と判断する筋力評価手段を有するものである。本実施の形態によれば、持久力、瞬発力、及び巧緻性に加えて筋力を評価することで、舌部の力の発揮能力及び調整能力を評価することができる。
【0021】
本発明の第12の実施の形態による舌機能訓練装置は、舌尖を保持する舌尖保持部と、舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、ひずみセンサからの信号を受信して、舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示部に表示させる制御部と、を備え、制御部では、目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測して、持続時間から持久力を判断する持久力評価手段と、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、第1目標値を第2目標値に変化させた場合に、第1目標値から第2目標値への過度応答を計測し、過度応答の特性値から瞬発力を判断する瞬発力評価手段と、目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、追従応答における目標値との誤差から巧緻性を判断する巧緻性評価手段と、を有するものである。本実施の形態によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の力を調整することを促すことができ、瞬発力や巧緻性、ならびに筋力や持久力を高める訓練を効果的に行うことができる。
【0022】
本発明の第13の実施の形態は、第12の実施の形態による舌機能訓練装置において、舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を基準として、瞬発力評価手段、及び巧緻性評価手段における目標値を設定するものである。本実施の形態によれば、被訓練者の個人差を考慮して、瞬発力や巧緻性の訓練を行えるため、より効果的な訓練を行える。
【0023】
本発明の第14の実施による舌機能評価装置は、舌尖を保持する舌尖保持部と、舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、ひずみセンサからの信号を受信して、舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示部に表示させる制御部と、を備え、計測する力を、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの少なくとも一つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とし、ひずみセンサとして、6軸力覚センサを用いるものである。本実施の形態によれば、6軸力覚センサを用いることで、舌部の各部位を作用点とした力のベクトル値を計測でき、機能低下の部位を特定できる。
【0024】
本発明の第15の実施による舌機能訓練装置は、舌尖を保持する舌尖保持部と、舌尖保持部に加わる力を検出するひずみセンサと、ひずみセンサからの信号を受信して、舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示部に表示させる制御部と、を備え、計測する力を、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの少なくとも一つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とし、ひずみセンサとして、6軸力覚センサを用いるものである。本実施の形態によれば、6軸力覚センサを用いることで、舌部の各部位を作用点とした力のベクトル値を計測でき、瞬発力や巧緻性、筋力、持久力を高める訓練を効果的に行うことができる。
【実施例】
【0025】
以下本発明の実施例について図面とともに説明する。
図1は本発明の一実施例による舌機能評価装置を機能実現手段で表したブロック図である。
本実施例による舌機能評価装置は、被評価者の舌尖を保持する舌尖保持部11と、舌尖保持部11に加わる力を検出するひずみセンサ12と、入力部13と、ひずみセンサ12からの信号を受信して表示部20に計測値と目標値とを表示させる制御部30と、少なくとも1回の評価所要時間の計測値を記憶する記憶部40とを備え、舌部の任意の位置と姿勢において、発揮可能な舌部の力を計測して舌部の機能を評価する。
計測する力を、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とする場合には、ひずみセンサ12として、6軸力覚センサを用いることが好ましい。6軸力覚センサを用いることで、舌部の各部位を作用点とした力のベクトル値を計測でき、機能低下の部位を特定できる。
計測する力を、舌部の所定範囲における舌圧とする場合には、舌尖保持部11及びひずみセンサ12に代えて、特許文献1から特許文献4にも記載されているバルーンを用いることができる。
【0026】
制御部30は、ひずみセンサ12で検出される計測値を受信する計測値受信手段31と、計測値受信手段31で受信した計測値を目標値画像データにマッチングさせる計測値マッチング手段32と、筋力評価手段33、持久力評価手段34、瞬発力評価手段35、及び巧緻性評価手段36での評価結果を評価画像データにマッチングさせる評価結果マッチング手段37とを有している。
【0027】
計測値マッチング手段32では、計測される計測値を、リアルタイムで目標値画像データにマッチングさせ、マッチングさせた目標値画像データは、リアルタイムで表示部20に表示される。
筋力評価手段33は、少なくとも1回の筋力評価所要時間の終了後に、舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を筋力と判断して、記憶部40に記憶している筋力評価テーブルを照会して筋力評価を行う。
持久力評価手段34は、目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測し、少なくとも1回の持久力評価所要時間の終了後に、計測された持続時間から持久力を判断して、記憶部40に記憶している持続力評価テーブルを照会して持続力評価を行う。
瞬発力評価手段35は、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、第1目標値を第2目標値に変化させた場合に、第1目標値から第2目標値への過度応答を計測し、少なくとも1回の瞬発力評価所要時間の終了後に、過度応答の特性値から瞬発力を判断して、記憶部40に記憶している瞬発力評価テーブルを照会して瞬発力評価を行う。
巧緻性評価手段36は、目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、少なくとも1回の巧緻性評価所要時間の終了後に、追従応答における目標値との誤差から巧緻性を判断して、記憶部40に記憶している巧緻性評価テーブルを照会して瞬発力評価を行う。
評価結果マッチング手段37では、瞬発力評価手段35、及び巧緻性評価手段36での評価結果を、入力部13で入力された計測点又は計測面とともに、評価画像データにマッチングさせ、マッチングさせた評価画像データは、それぞれの評価が行われた後、又は全ての評価が行われた後に、表示部20に表示される。
【0028】
記憶部40に記憶している目標値画像データは、目標値を時間の経過とともに画像表示とするものであり、目標値を入力部13によって変更することができる。また、計測された最大計測値を基準として目標値を設定してもよい。計測された最大計測値を基準として目標値を設定する場合には、目標値を最大計測値以下に設定する。例えば、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定する場合には、第1目標値を最大計測値の70%、第2目標値を最大計測値の35%に設定する。また、目標値を時間経過に応じて変化させる場合には、この変化速度を入力部13によって変更することができる。
表示イメージ21は、計測される計測値を目標値画像データにマッチングさせたものである。評価する方向を指示する場合は、計測した3次元力ベクトルのうち、指示された任意方向の力成分のみを表示しながら、目標値と一致させる。
記憶部40に記憶している評価画像データは、舌部を表す舌部イメージ図である。
表示イメージ22は、入力部13で入力された計測点を舌部イメージ図にマッチングさせ、この計測点に、筋力、持久力、瞬発力、及び巧緻性の評価結果を表示している。なお、計測範囲が、舌部の所定エリアである場合には、計測点に代えて計測面を表示する。
評価結果は、表示イメージ22の矢印で示すように、例えば、舌先から、前、横、斜めなど、検査する力の方向を示し、空間的な力の発揮特性をビジュアルフィードバックすることが好ましい。また、瞬発力については、立ち上がり時間、オーバーシュート、整定時間、行き過ぎ時間、減衰比、定常偏差などを表示することが好ましい。巧緻性については、目標値との誤差を、定常位置偏差、定常速度偏差、定常加速度偏差、最大誤差、平均誤差などとして表示したり、相関係数や振幅比、位相遅れなどを用いて表示することが好ましい。
【0029】
本実施例によれば、表示画像データを用いてビジュアルフィードバックすることによって被評価者に舌部の力を調整することを促して舌部の力の発揮能力や調整能力を評価することができ、例えば嚥下障害などの機能低下を多面的に定量評価することができる。
また本実施例によれば、筋力、持久力、瞬発力、及び巧緻性を評価することで、舌部の力の大きさと変化によって多面的な定量評価を行える。
【0030】
次に本発明の一実施例による舌機能訓練装置について説明する。
本実施例による舌機能訓練装置は、図1に示す舌機能評価装置と同一の機能実現手段で実現することができる。従って、それぞれの構成には同一符号を付して説明を省略する。
本実施例による舌機能訓練装置では、舌部の任意の位置と姿勢において、表示された計測値を、表示された目標値に一致させることを促すことで、舌部の機能を訓練する。
本実施例によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の力を調整することを促すことができ、瞬発力や巧緻性を高める訓練を効果的に行うことができ、この訓練によって筋力や持久力も鍛えられる。
また本実施例によれば、舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を基準として、持久力評価手段、瞬発力評価手段、及び巧緻性評価手段における目標値を設定することができる。
また本実施例によれば、被訓練者の個人差を考慮して、瞬発力や巧緻性の訓練を行えるため、より効果的な訓練を行え、この訓練によって筋力や持久力も鍛えられる。
【0031】
図2は本発明の一実施例による舌機能評価方法及び舌機能訓練方法を示すフローチャート、図3は評価を説明するグラフである。
本実施例による舌機能評価方法は、筋力評価ステップ(ステップ1)、持久力評価ステップ(ステップ2)、瞬発力評価ステップ(ステップ3)、及び巧緻性評価ステップ(ステップ4)を備え、舌部の任意の位置と姿勢において、舌部が発揮可能な任意方向の力を計測して舌部の機能を評価する。また、ステップ1における筋力評価ステップからステップ4における巧緻性評価ステップの後に、評価結果を表示する(ステップ5)。
【0032】
ステップ1における筋力評価ステップは、舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を筋力と判断する。筋力評価ステップでは、あらかじめ定めた所定時間、最大計測値が維持されることを条件とする。
ステップ2における持久力評価ステップは、目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測して、持続時間から持久力を判断する。
ステップ3における瞬発力評価ステップは、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、第1目標値を第2目標値に変化させた場合に、第1目標値から第2目標値への過度応答を計測し、過度応答の特性値から瞬発力を判断する。
【0033】
本実施例においては、瞬発力は、以下に説明する定常特性や過渡特性のいずれかで評価することができる。
図3(a)は定常特性の評価を説明するグラフである。
図3(a)では、第2目標値をy(t)=1とした場合を示しており、定常状態(例えば目標値との誤差が±2%以内に収束したt=10の後)に、力が第2目標値に一致しているかを、定常偏差eで評価する。
図3(b)は過渡特性の評価を説明するグラフである。
図3(b)では、第2目標値をy(t)=1とした場合を示しており、第2目標値への立ち上がりに対する追従性又は速応性を、立ち上がり時間T、遅れ時間T、整定時間T、行き過ぎ時間T、オーバーシュートAmax、減衰比b/aで評価する。
速応性の評価には、立ち上がり時間T、遅れ時間T、整定時間T、行き過ぎ時間Tを用いることができ、減衰特性の評価には、オーバーシュートAmax、減衰比b/aを用いることができる。
【0034】
ステップ4における巧緻性評価ステップは、目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、追従応答における目標値との誤差から巧緻性を判断する。
巧緻性は、目標値に対する追従性から評価する。巧緻性の評価では、特に正弦波を目標値とする場合には、周波数応答(周波数特性)、すなわち、目標値として与えた振幅と被評価者が加えた力(測定値)の振幅の比、及び目標値と測定値の位相のずれを評価する。
目標値との誤差の評価には、図3(c)に示す、定常位置偏差、定常速度偏差、定常加速度偏差を用いてもよい。
本実施例によれば、舌部の力の発揮能力や調整能力を評価することができ、例えば嚥下障害などの機能低下を多面的に定量評価することができる。
また、本実施例によれば、筋力、持久力、瞬発力、及び巧緻性を評価することで、舌部の力の大きさと変化によって多面的な定量評価を行える。
【0035】
ステップ2における持久力評価ステップ、ステップ3における瞬発力評価ステップ、及びステップ4における巧緻性評価ステップにおける目標値は、ステップ1における筋力評価ステップで計測された最大計測値を基準として設定することが好ましい。
本実施例によれば、最大計測値を基準として目標値を設定することで、被評価者の個人差を考慮して、持久力、瞬発力、及び巧緻性を評価できるため、より正確な定量評価を行える。
【0036】
ステップ2における持久力評価ステップ、ステップ3における瞬発力評価ステップ、及びステップ4における巧緻性評価ステップでは、目標値と、計測される計測値とをリアルタイムに表示部20に表示させ、表示された計測値を、表示された目標値に一致させることを促す。
本実施例によれば、ビジュアルフィードバックによって被評価者に舌部の力を調整することを促すことができる。
【0037】
計測する力を、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの少なくとも一つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とすることが好ましい。ベクトル値とすることで、任意の方向における力を計測することができる。
本実施例によれば、舌部の各部位ごとに評価でき、機能低下の部位を特定できる。
なお、計測する力を、舌部の所定範囲における舌圧としてもよい。既に普及が進んでいる舌圧測定によっても、舌部の力の発揮能力や調整能力を計測でき多面的な定量評価を行える。
【0038】
ステップ2における持久力評価ステップで判断した持久力、ステップ3における瞬発力評価ステップで判断した瞬発力、及びステップ4における巧緻性評価ステップで判断した巧緻性の評価結果を、舌部を表す舌部イメージ図において、計測点又は計測面とともに表示することで、舌部の空間的な力の発揮特性、すなわち任意の方向における力をビジュアルに把握できる。
【0039】
本実施例による舌機能訓練方法は、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、第1目標値を第2目標値に変化させることで、第1目標値から第2目標値への過度応答を訓練する瞬発力訓練ステップ(ステップ6)と、目標値を連続的に変化させることで、連続的な変化への追従応答を訓練する巧緻性訓練ステップ(ステップ7)とを備え、舌部の任意の位置と姿勢において、舌部で発揮する任意方向の力を計測し、舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示させ、表示された計測値を、表示された目標値に一致させることを促すことで、舌部の機能を訓練する。また、ステップ6における瞬発力訓練ステップ又はステップ7における巧緻性訓練ステップの後に、訓練結果を表示する(ステップ8)。
本実施例によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の力を調整することを促すことができ、瞬発力や巧緻性を高める訓練を効果的に行うことができる。
【0040】
ステップ6における瞬発力訓練ステップ、及びステップ7における巧緻性訓練ステップにおける目標値は、ステップ1における筋力評価ステップで計測された最大計測値を基準として設定することが好ましい。なお、訓練ステップでの目標値は、その他の評価を基準とすることもできる。
本実施例によれば、最大計測値を基準として目標値を設定することで、被評価者の個人差を考慮して、瞬発力や巧緻性の訓練を行えるため、より効果的な訓練を行え、この訓練によって筋力や持久力も鍛えられる。ちなみに、筋に対する一般論として、筋力強化を目的とする場合には、最大筋力の85%以上の負荷で6回以下の反復訓練、持久力強化を目的とした場合には、65%以下の負荷で12回以上の反復が良いとの知見がある(Thomas RB, Roger WE(石井直方 総監修):ストレングストレーニング&コンディショニング.ブックハウス・エイチディ,東京,2004)。
舌機能評価ステップでの評価結果をもとに、ステップ6における瞬発力訓練ステップ、及びステップ7における巧緻性訓練ステップにおける目標値や、訓練内容を決定することで、被訓練者の個人差を考慮して効果的な訓練を行える。また、舌機能の訓練の後は、再度、舌機能の評価を行うことで訓練効果を評価できる。
【0041】
ステップ6における瞬発力訓練ステップ、及びステップ7における巧緻性訓練ステップでは、目標値と、計測される計測値とをリアルタイムに表示部20に表示させ、表示された計測値を、表示された目標値に一致させることを促す。
本実施例によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の力を調整することを促すことができる。
【0042】
計測する力を、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの少なくとも一つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用した、任意方向へのベクトル値とすることが好ましい。
本実施例によれば、舌部の各部位ごとに訓練でき、より効果的な訓練を行える。
なお、訓練対象部位を舌部の所定範囲として、計測対象を舌圧としてもよい。既に普及が進んでいる舌圧測定によっても、舌部の力を訓練できる。
【0043】
ステップ6における瞬発力訓練ステップでの訓練結果、及びステップ7における巧緻性訓練ステップで評価した巧緻性の評価結果を、舌部を表す舌部イメージ図において、計測点又は計測面とともに表示することで、訓練結果をビジュアルに把握できる。
なお、図2では舌機能訓練ステップとして、瞬発力訓練ステップと巧緻性訓練ステップとを示したが、持久力評価ステップに対応した持久力訓練ステップを有してもよい。
【0044】
図4及び図5は、本実施例の表示部で表示する目標値画像データの表示イメージである。
図4及び図5に示す表示イメージ21では、計測される計測値をポイント21aで表示し、目標値をライン21bで表示している。また、表示イメージ21は、舌部で発揮している力の能力表示21cと、開始からの経過時間表示21dを有している。
ポイント21a又はライン21bは、時間の経過に伴い、左右いずれかの一方向に移動する。ポイント21aが左右に移動するバージョン、ライン21bが移動するバージョンのいずれでもよい。ポイント21aは、舌部で発揮している力によって、高さを変更する。本実施例では、ポイント21aは、力が大きくなれば上方に、力が小さくなれば下方に移動する。
ポイント21aは自動車をイメージし、ライン21bは道路をイメージし、画面の左端から右端に進む自動車の上下位置を、舌部の力の大きさに対応付け、道路(目標値)に沿って走行するように、被評価者又は被訓練者に舌部の力を調整させる。
なお、目標値となるライン21bの高さや時間変化のパターンは、評価ステップや訓練ステップに応じて設定できる。
【0045】
図4(a)は、持久力評価ステップで用いる表示イメージである。図4(a)に示す表示イメージ21は、一定の目標値を持続的に発揮することを促すために、ライン21bは同じ高さの位置としている。
持久力評価ステップで用いる目標値(ライン21bの高さ)は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定し、目標値は筋力以下に設定することが好ましい。筋力は、筋力評価ステップで計測された最大計測値である。
【0046】
図4(b)は、瞬発力評価ステップ又は瞬発力訓練ステップで用いる表示イメージである。図4(b)に示す表示イメージ21は、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定している。低位置(左部分)に表示されたライン21bが第1目標値、高位置(右部分)に表示されたライン21bが第2目標値である。第1目標値から第2目標値への変化を促すために、ライン21bは2段階の高さラインと、この2段階の高さを繋ぐ上下方向ラインとしている。
第1目標値をゼロ(無負荷)とすることで脱力状態からの瞬発力を判断又は訓練できる。また、第1目標値を第2目標値よりも低い負荷状態とすることもできる。
【0047】
図4(c)は、瞬発力評価ステップ又は瞬発力訓練ステップで用いる表示イメージである。図4(c)に示す表示イメージ21は、高位置(左部分)に表示されたライン21bが第1目標値、低位置(右部分)に表示されたライン21bが第2目標値である。第2目標値は第1目標値よりも弱い力としている。
【0048】
図5(a)〜(g)は、巧緻性評価ステップ又は巧緻性訓練ステップで用いる表示イメージであり、それぞれ異なるコースパターンを示している。
巧緻性評価ステップ又は巧緻性訓練ステップで用いる目標値(ライン21bの高さ)や変化速度は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定し、目標値は筋力以下に設定することが好ましい。筋力は、筋力評価ステップで計測された最大計測値である。
例えば、図5(a)に示す表示イメージ21は、ライン21bを正弦波としたものであり、図5(f)に示す表示イメージ21は、ライン21bを矩形波としたものである。図5(a)及び図5(f)に示す表示イメージ21は、最小目標値、最大目標値、一つの波の速さ、すなわち周波数、及び画面の左端から右端までの時間を設定している。これらの設定値は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定できる。
図5(e)に示す表示イメージ21は、ライン21bを三角波としたものである。図5(e)に示す表示イメージ21は、最小目標値、最大目標値、一つの波の速さ、波と波との間の時間、及び画面の左端から右端までの時間を設定している。これらの設定値は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定できる。
図5(b)、図5(c)、及び図5(d)に示す表示イメージ21は、図5(e)に示す表示イメージ21の変形例である。
図5(g)に示す表示イメージ21は、時間経過に伴って波の速さを段階的に早く、すなわち、波の周期を段階的に短くしている。図5(g)に示す表示イメージ21では、どの段階まで追従できるかを評価又は訓練することができる。また、波の周期を段階的に長くすることもできる。
【0049】
図6は、本実施例の表示部で表示する目標値画像データの他の表示イメージである。
図6(a)に示す表示イメージ21では、計測される計測値は、指差しをイメージした第1ポイント21aで表示し、目標値は、ばい菌をイメージした第2ポイント21bで表示している。また、表示イメージ21は、舌部で発揮している力の能力表示21cと、開始からの経過時間表示21dと、スコアー21eを有している。
第1ポイント21aは、舌部で発揮している力によって、高さを変更する。本実施例では、ポイント21aは、力が大きくなれば上方に、力が小さくなれば下方に移動する。
第2ポイント21bは、あらかじめ設定した最大目標値と最小目標値との間で高さを変更する。第2ポイント21bの変動高さ及び変動速度は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定し、最大目標値は筋力以下に設定することが好ましい。筋力は、筋力評価ステップで計測された最大計測値である。
図6(a)に示す表示イメージ21では、第1ポイント21aから定期的に弾丸が発射されるように設定され、第1ポイント21aが第2ポイント21bの高さと一致し、第1ポイント21aから発射される弾丸が第2ポイント21bに当たるとスコアー21eのポイントが加算されるゲームである。
図6(a)に示す表示イメージ21は、瞬発力評価ステップ、瞬発力訓練ステップ、巧緻性評価ステップ、又は巧緻性訓練ステップに適しているが、第2ポイント21bの高さ位置を所定時間維持する動作を設定することで、持久力評価ステップで用いることができる。
【0050】
図6(b)に示す表示イメージ21では、計測される計測値は、ぶたの貯金箱をイメージした第1ポイント21aで表示し、目標値は、コインをイメージした第2ポイント21bで表示している。また、表示イメージ21は、舌部で発揮している力の能力表示21cと、開始からの経過時間表示21dと、スコアー21eを有している。
第1ポイント21aは、舌部で発揮している力によって、高さを変更する。本実施例では、ポイント21aは、力が大きくなれば上方に、力が小さくなれば下方に移動する。
第2ポイント21bは、あらかじめ設定した最大目標値と最小目標値との間で高さを変更する。第2ポイント21bの変動高さ及び変動速度は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定し、最大目標値は筋力以下に設定することが好ましい。筋力は、筋力評価ステップで計測された最大計測値である。
図6(b)に示す表示イメージ21では、第2ポイント21bが高さを変更しながら、第1ポイントの方向(左方向)に飛んで行くように設定され、第1ポイント21aが第2ポイント21bの高さと一致し、飛んで来た第2ポイント21bを第1ポイント21aで受け取るとスコアー21eのポイントが加算されるゲームである。
図6(b)に示す表示イメージ21は、瞬発力評価ステップ、瞬発力訓練ステップ、巧緻性評価ステップ、又は巧緻性訓練ステップに適しているが、第2ポイント21bの高さ位置を所定時間維持する動作を設定することで、持久力評価ステップで用いることができる。
【0051】
図6(c)に示す表示イメージ21では、計測される計測値は、一方の顔の表情をイメージした第1ポイント21aで表示し、目標値は、他方の顔の表情をイメージした第2ポイント21bで表示している。また、表示イメージ21は、舌部で発揮している力の能力表示21cと、開始からの経過時間表示21dを有している。
第1ポイント21aは、舌部で発揮している力によって、表情を変更する。
第2ポイント21bは、あらかじめ設定した最大目標値と最小目標値との間で表情を変更する。第2ポイント21bの表情の変更及び変更速度は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定し、最大目標値は筋力以下に設定することが好ましい。筋力は、筋力評価ステップで計測された最大計測値である。
図6(c)に示す表示イメージ21では、第2ポイント21bでの表情が変更し、第1ポイント21aの表情を第2ポイント21bの表情に一致させるゲームである。
図6(c)に示す表示イメージ21は、瞬発力評価ステップ、瞬発力訓練ステップ、巧緻性評価ステップ、又は巧緻性訓練ステップに適しているが、第2ポイント21bでの表情を所定時間維持する動作を設定することで、持久力評価ステップで用いることができる。
【0052】
図7は、本実施例の表示部で表示する目標値画像データの更に他の表示イメージである。
図7(a)は、瞬発力評価ステップ又は瞬発力訓練ステップで用いる表示イメージである。図7(a)に示す表示イメージは、目標とするベクトル(目標値)と、計測したベクトル(計測値)とを表示し、計測値である力の方向を目標値である力の方向に一致させることを促す。
図7(b)は、巧緻性評価ステップ又は巧緻性訓練ステップで用いる表示イメージである。図7(b)に示す表示イメージは、連続的に変化する目標とするベクトル(目標値)と、計測したベクトル(計測値)とを表示し、計測値である力の方向を目標値である力の方向に一致させることを促す。図7(b)では、図5における縦軸を目標角度θrに置き換えて、目標ベクトルの方向を連続的に変化させるものである。
図7に示すように、目標値と計測値をベクトルとして可視化(表示)して、評価や訓練を行うこともできる。
なお、図7では、目標値及び計測値であるベクトルは、単位ベクトルに変換して表示しているため、図示のベクトルの長さを一定として力の方向だけを変化させるが、力の大きさをベクトル長さとして表示してもよい。
【0053】
図8は、本実施例で用いる舌尖保持部とひずみセンサを示す構成図である。
舌尖保持部11は、被評価者又は被訓練者の舌尖を覆うように保持し、舌尖保持部11の底部にはひずみセンサ12を設けている。ひずみセンサ12には、制御部30に接続される信号線12aを有している。図8に示すひずみセンサ12は、薄膜型ひずみゲージを用いた6軸力覚センサである。
【0054】
図9は、舌尖保持部とひずみセンサの他の実施例による構成図である。
図9(a)は舌尖保持部とひずみセンサとを装着した状態での平面図、図9(b)は舌尖保持部を取り外した状態での平面図、図9(c)、(d)はひずみセンサでの力の検出方向を示す図、図9(e)は舌尖部での計測状態を示す説明図である。
本実施例では、舌尖保持部11として舌接触プレートを用い、ひずみセンサ12として3つの3軸力覚センサを用いている。
本実施例のように、舌尖保持部11として舌接触プレートを用いることで、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの任意の計測面に作用した力のベクトル値とその作用点を計測することができる。
本実施例では、複数の力覚センサを用いてベクトルを算出したが、一つの力覚センサを用い、舌接触プレートの代わりに、先端を球状とした舌尖保持部11を用いることで、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの任意の計測点を作用点とした力のベクトル値を計測することができる。また、舌接触プレートに突起部を設けて突起部の点でのみ接触するようにすれば、複数の力覚センサを用いても、任意点での計測が可能である。また、圧力センサやひずみゲージだけでも、センサ配置と個数を工夫することで、力ベクトルや作用点を計測できる。
【0055】
以下本発明の実施例に基づいた訓練結果について説明する。
図10は訓練と評価に用いた表示イメージであり、図10(a)は訓練に用いたゲームの表示イメージ、図10(b)はゲーム終了時のデータを示すグラフ、図10(c)、(d)は評価に用いた表示イメージである。
訓練には各個人の最大舌圧に基づいた目標値を設定し、その人の能力に応じた訓練を実施した。
被験者は健常成人男性10名(年齢22.8±0.6歳、身長168.8±4.1cm、体重56.5±3.5kg、mean±SD)とした。訓練は2週間(平日のみ、10日間)、1日10分(1分×10セット)行った。訓練ゲームの目標値は訓練開始前に計測した最大舌圧の70%とした。評価は1週間に1度行い、訓練開始前のデータを取得するために訓練開始一週間前から評価を開始した。訓練の条件の設定は、言語聴覚士の指導のもと行った。
評価項目には、筋力として最大舌圧、持久力として一定の力(訓練開始前の最大舌圧の70%と35%)の持続可能時間(図10(c)、(d))、巧緻性として訓練ゲームの記録データ(目標値と計測値のRoot mean square error:RMSE、図10(b))を用い、また従来法との比較のために臨床現場で口腔機能評価に使われている、RSST(反復唾液嚥下テスト、30秒間に何回空嚥下できるかを計測)とオーラルディアドコキネシス(『パ』、『タ』、『カ』をそれぞれ5秒間に何回発音できるかを計測)も評価項目に加えた。RSSTは、嚥下反射の随意的な惹起能力を評価する。オーラルディアドコキネシスは、舌、口唇、軟口蓋などの運動の速度や巧緻性を発音により評価する。口唇の動きの評価は『パ』、舌の前方の動きの評価『タ』、舌の後方の動きの評価は『カ』を用いる。オーラルディアドコキネシスの計測には健口くん(T.K.K.3350、竹井機器工業)を使用した。
最大舌圧の計測は、舌圧測定器のセンサを口蓋と舌の間に挟み、5秒間の間最大限の力で潰すように指示をした。持続時間の計測は、ゲーム画面の道路の高さを最大舌圧の70%、あるいは35%の高さに固定し、最大限の努力で道路の上をなぞり続けるように指示をした。訓練ゲームの記録データは、訓練時の自動車の軌跡を記録し、道路を模した目標値との誤差(RMSE)を計算した。
【0056】
図11図13に訓練の結果として、評価項目の被験者10名の平均の推移と計測結果のまとめを示す。
図11(a)は最大舌圧の結果を示すグラフ、図11(b)は最大舌圧の70%の力の持続時間の結果を示すグラフ、図11(c)は最大舌圧の35%の力の持続時間の結果を示すグラフである。
図12(a)は訓練ゲームの目標値と計測値のRMS誤差の結果を示すグラフ、図12(b)はRSSTの結果を示すグラフ、図12(c)はオーラルディアドコキネシスの結果を示すグラフである。
図13は最大舌圧(筋力)と訓練データのRMS誤差(巧緻性)の相関を示すグラフである。
図11及び図12に示すように、最大舌圧、舌圧持続時間は、個人差はあるものの全体の平均は訓練開始から訓練終了までの間、増加傾向を示した。RSST、オーラルディアドコキネシスも同様であった。それに対し、訓練ゲームでの目標値と計測値のRMS誤差は減少傾向を示した。
その結果、筋力、持久力、巧緻性すべての能力の向上が見られた。
また、図13に示すように、最大舌圧が高いほど訓練データのRMS誤差が低くなり、最大舌圧と舌圧の調整能力の間に有意な相関があることを示した。相関係数は0.54であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、嚥下リハビリテーションの評価や訓練に特に適している。
【符号の説明】
【0058】
11 舌尖保持部
12 ひずみセンサ
13 入力部
20 表示部
21 表示イメージ
22 表示イメージ
30 制御部
31 計測値受信手段
32 計測値マッチング手段
33 筋力評価手段
34 持久力評価手段
35 瞬発力評価手段
36 巧緻性評価手段
37 評価結果マッチング手段
40 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13