【実施例】
【0025】
以下本発明の実施例について図面とともに説明する。
図1は本発明の一実施例による舌機能評価装置を機能実現手段で表したブロック図である。
本実施例による舌機能評価装置は、被評価者の舌尖を保持する舌尖保持部11と、舌尖保持部11に加わる力を検出するひずみセンサ12と、入力部13と、ひずみセンサ12からの信号を受信して表示部20に計測値と目標値とを表示させる制御部30と、少なくとも1回の評価所要時間の計測値を記憶する記憶部40とを備え、舌部の任意の位置と姿勢において、発揮可能な舌部の力を計測して舌部の機能を評価する。
計測する力を、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とする場合には、ひずみセンサ12として、6軸力覚センサを用いることが好ましい。6軸力覚センサを用いることで、舌部の各部位を作用点とした力のベクトル値を計測でき、機能低下の部位を特定できる。
計測する力を、舌部の所定範囲における舌圧とする場合には、舌尖保持部11及びひずみセンサ12に代えて、特許文献1から特許文献4にも記載されているバルーンを用いることができる。
【0026】
制御部30は、ひずみセンサ12で検出される計測値を受信する計測値受信手段31と、計測値受信手段31で受信した計測値を目標値画像データにマッチングさせる計測値マッチング手段32と、筋力評価手段33、持久力評価手段34、瞬発力評価手段35、及び巧緻性評価手段36での評価結果を評価画像データにマッチングさせる評価結果マッチング手段37とを有している。
【0027】
計測値マッチング手段32では、計測される計測値を、リアルタイムで目標値画像データにマッチングさせ、マッチングさせた目標値画像データは、リアルタイムで表示部20に表示される。
筋力評価手段33は、少なくとも1回の筋力評価所要時間の終了後に、舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を筋力と判断して、記憶部40に記憶している筋力評価テーブルを照会して筋力評価を行う。
持久力評価手段34は、目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測し、少なくとも1回の持久力評価所要時間の終了後に、計測された持続時間から持久力を判断して、記憶部40に記憶している持続力評価テーブルを照会して持続力評価を行う。
瞬発力評価手段35は、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、第1目標値を第2目標値に変化させた場合に、第1目標値から第2目標値への過度応答を計測し、少なくとも1回の瞬発力評価所要時間の終了後に、過度応答の特性値から瞬発力を判断して、記憶部40に記憶している瞬発力評価テーブルを照会して瞬発力評価を行う。
巧緻性評価手段36は、目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、少なくとも1回の巧緻性評価所要時間の終了後に、追従応答における目標値との誤差から巧緻性を判断して、記憶部40に記憶している巧緻性評価テーブルを照会して瞬発力評価を行う。
評価結果マッチング手段37では、瞬発力評価手段35、及び巧緻性評価手段36での評価結果を、入力部13で入力された計測点又は計測面とともに、評価画像データにマッチングさせ、マッチングさせた評価画像データは、それぞれの評価が行われた後、又は全ての評価が行われた後に、表示部20に表示される。
【0028】
記憶部40に記憶している目標値画像データは、目標値を時間の経過とともに画像表示とするものであり、目標値を入力部13によって変更することができる。また、計測された最大計測値を基準として目標値を設定してもよい。計測された最大計測値を基準として目標値を設定する場合には、目標値を最大計測値以下に設定する。例えば、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定する場合には、第1目標値を最大計測値の70%、第2目標値を最大計測値の35%に設定する。また、目標値を時間経過に応じて変化させる場合には、この変化速度を入力部13によって変更することができる。
表示イメージ21は、計測される計測値を目標値画像データにマッチングさせたものである。評価する方向を指示する場合は、計測した3次元力ベクトルのうち、指示された任意方向の力成分のみを表示しながら、目標値と一致させる。
記憶部40に記憶している評価画像データは、舌部を表す舌部イメージ図である。
表示イメージ22は、入力部13で入力された計測点を舌部イメージ図にマッチングさせ、この計測点に、筋力、持久力、瞬発力、及び巧緻性の評価結果を表示している。なお、計測範囲が、舌部の所定エリアである場合には、計測点に代えて計測面を表示する。
評価結果は、表示イメージ22の矢印で示すように、例えば、舌先から、前、横、斜めなど、検査する力の方向を示し、空間的な力の発揮特性をビジュアルフィードバックすることが好ましい。また、瞬発力については、立ち上がり時間、オーバーシュート、整定時間、行き過ぎ時間、減衰比、定常偏差などを表示することが好ましい。巧緻性については、目標値との誤差を、定常位置偏差、定常速度偏差、定常加速度偏差、最大誤差、平均誤差などとして表示したり、相関係数や振幅比、位相遅れなどを用いて表示することが好ましい。
【0029】
本実施例によれば、表示画像データを用いてビジュアルフィードバックすることによって被評価者に舌部の力を調整することを促して舌部の力の発揮能力や調整能力を評価することができ、例えば嚥下障害などの機能低下を多面的に定量評価することができる。
また本実施例によれば、筋力、持久力、瞬発力、及び巧緻性を評価することで、舌部の力の大きさと変化によって多面的な定量評価を行える。
【0030】
次に本発明の一実施例による舌機能訓練装置について説明する。
本実施例による舌機能訓練装置は、
図1に示す舌機能評価装置と同一の機能実現手段で実現することができる。従って、それぞれの構成には同一符号を付して説明を省略する。
本実施例による舌機能訓練装置では、舌部の任意の位置と姿勢において、表示された計測値を、表示された目標値に一致させることを促すことで、舌部の機能を訓練する。
本実施例によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の力を調整することを促すことができ、瞬発力や巧緻性を高める訓練を効果的に行うことができ、この訓練によって筋力や持久力も鍛えられる。
また本実施例によれば、舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を基準として、持久力評価手段、瞬発力評価手段、及び巧緻性評価手段における目標値を設定することができる。
また本実施例によれば、被訓練者の個人差を考慮して、瞬発力や巧緻性の訓練を行えるため、より効果的な訓練を行え、この訓練によって筋力や持久力も鍛えられる。
【0031】
図2は本発明の一実施例による舌機能評価方法及び舌機能訓練方法を示すフローチャート、
図3は評価を説明するグラフである。
本実施例による舌機能評価方法は、筋力評価ステップ(ステップ1)、持久力評価ステップ(ステップ2)、瞬発力評価ステップ(ステップ3)、及び巧緻性評価ステップ(ステップ4)を備え、舌部の任意の位置と姿勢において、舌部が発揮可能な任意方向の力を計測して舌部の機能を評価する。また、ステップ1における筋力評価ステップからステップ4における巧緻性評価ステップの後に、評価結果を表示する(ステップ5)。
【0032】
ステップ1における筋力評価ステップは、舌部の最大発揮力を計測し、計測された最大計測値を筋力と判断する。筋力評価ステップでは、あらかじめ定めた所定時間、最大計測値が維持されることを条件とする。
ステップ2における持久力評価ステップは、目標値を持続的に発揮できる持続時間を計測して、持続時間から持久力を判断する。
ステップ3における瞬発力評価ステップは、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、第1目標値を第2目標値に変化させた場合に、第1目標値から第2目標値への過度応答を計測し、過度応答の特性値から瞬発力を判断する。
【0033】
本実施例においては、瞬発力は、以下に説明する定常特性や過渡特性のいずれかで評価することができる。
図3(a)は定常特性の評価を説明するグラフである。
図3(a)では、第2目標値をy(t)=1とした場合を示しており、定常状態(例えば目標値との誤差が±2%以内に収束したt=10の後)に、力が第2目標値に一致しているかを、定常偏差e
sで評価する。
図3(b)は過渡特性の評価を説明するグラフである。
図3(b)では、第2目標値をy(t)=1とした場合を示しており、第2目標値への立ち上がりに対する追従性又は速応性を、立ち上がり時間T
r、遅れ時間T
d、整定時間T
s、行き過ぎ時間T
p、オーバーシュートA
max、減衰比b/aで評価する。
速応性の評価には、立ち上がり時間T
r、遅れ時間T
d、整定時間T
s、行き過ぎ時間T
pを用いることができ、減衰特性の評価には、オーバーシュートA
max、減衰比b/aを用いることができる。
【0034】
ステップ4における巧緻性評価ステップは、目標値を連続的に変化させた場合に、連続的な変化への追従応答を計測し、追従応答における目標値との誤差から巧緻性を判断する。
巧緻性は、目標値に対する追従性から評価する。巧緻性の評価では、特に正弦波を目標値とする場合には、周波数応答(周波数特性)、すなわち、目標値として与えた振幅と被評価者が加えた力(測定値)の振幅の比、及び目標値と測定値の位相のずれを評価する。
目標値との誤差の評価には、
図3(c)に示す、定常位置偏差、定常速度偏差、定常加速度偏差を用いてもよい。
本実施例によれば、舌部の力の発揮能力や調整能力を評価することができ、例えば嚥下障害などの機能低下を多面的に定量評価することができる。
また、本実施例によれば、筋力、持久力、瞬発力、及び巧緻性を評価することで、舌部の力の大きさと変化によって多面的な定量評価を行える。
【0035】
ステップ2における持久力評価ステップ、ステップ3における瞬発力評価ステップ、及びステップ4における巧緻性評価ステップにおける目標値は、ステップ1における筋力評価ステップで計測された最大計測値を基準として設定することが好ましい。
本実施例によれば、最大計測値を基準として目標値を設定することで、被評価者の個人差を考慮して、持久力、瞬発力、及び巧緻性を評価できるため、より正確な定量評価を行える。
【0036】
ステップ2における持久力評価ステップ、ステップ3における瞬発力評価ステップ、及びステップ4における巧緻性評価ステップでは、目標値と、計測される計測値とをリアルタイムに表示部20に表示させ、表示された計測値を、表示された目標値に一致させることを促す。
本実施例によれば、ビジュアルフィードバックによって被評価者に舌部の力を調整することを促すことができる。
【0037】
計測する力を、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの少なくとも一つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用したベクトル値とすることが好ましい。ベクトル値とすることで、任意の方向における力を計測することができる。
本実施例によれば、舌部の各部位ごとに評価でき、機能低下の部位を特定できる。
なお、計測する力を、舌部の所定範囲における舌圧としてもよい。既に普及が進んでいる舌圧測定によっても、舌部の力の発揮能力や調整能力を計測でき多面的な定量評価を行える。
【0038】
ステップ2における持久力評価ステップで判断した持久力、ステップ3における瞬発力評価ステップで判断した瞬発力、及びステップ4における巧緻性評価ステップで判断した巧緻性の評価結果を、舌部を表す舌部イメージ図において、計測点又は計測面とともに表示することで、舌部の空間的な力の発揮特性、すなわち任意の方向における力をビジュアルに把握できる。
【0039】
本実施例による舌機能訓練方法は、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定して、第1目標値を第2目標値に変化させることで、第1目標値から第2目標値への過度応答を訓練する瞬発力訓練ステップ(ステップ6)と、目標値を連続的に変化させることで、連続的な変化への追従応答を訓練する巧緻性訓練ステップ(ステップ7)とを備え、舌部の任意の位置と姿勢において、舌部で発揮する任意方向の力を計測し、舌部で発揮させる目標値と、計測される計測値とを表示させ、表示された計測値を、表示された目標値に一致させることを促すことで、舌部の機能を訓練する。また、ステップ6における瞬発力訓練ステップ又はステップ7における巧緻性訓練ステップの後に、訓練結果を表示する(ステップ8)。
本実施例によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の力を調整することを促すことができ、瞬発力や巧緻性を高める訓練を効果的に行うことができる。
【0040】
ステップ6における瞬発力訓練ステップ、及びステップ7における巧緻性訓練ステップにおける目標値は、ステップ1における筋力評価ステップで計測された最大計測値を基準として設定することが好ましい。なお、訓練ステップでの目標値は、その他の評価を基準とすることもできる。
本実施例によれば、最大計測値を基準として目標値を設定することで、被評価者の個人差を考慮して、瞬発力や巧緻性の訓練を行えるため、より効果的な訓練を行え、この訓練によって筋力や持久力も鍛えられる。ちなみに、筋に対する一般論として、筋力強化を目的とする場合には、最大筋力の85%以上の負荷で6回以下の反復訓練、持久力強化を目的とした場合には、65%以下の負荷で12回以上の反復が良いとの知見がある(Thomas RB, Roger WE(石井直方 総監修):ストレングストレーニング&コンディショニング.ブックハウス・エイチディ,東京,2004)。
舌機能評価ステップでの評価結果をもとに、ステップ6における瞬発力訓練ステップ、及びステップ7における巧緻性訓練ステップにおける目標値や、訓練内容を決定することで、被訓練者の個人差を考慮して効果的な訓練を行える。また、舌機能の訓練の後は、再度、舌機能の評価を行うことで訓練効果を評価できる。
【0041】
ステップ6における瞬発力訓練ステップ、及びステップ7における巧緻性訓練ステップでは、目標値と、計測される計測値とをリアルタイムに表示部20に表示させ、表示された計測値を、表示された目標値に一致させることを促す。
本実施例によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の力を調整することを促すことができる。
【0042】
計測する力を、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの少なくとも一つ以上の任意の計測点又は任意の計測面に作用した、任意方向へのベクトル値とすることが好ましい。
本実施例によれば、舌部の各部位ごとに訓練でき、より効果的な訓練を行える。
なお、訓練対象部位を舌部の所定範囲として、計測対象を舌圧としてもよい。既に普及が進んでいる舌圧測定によっても、舌部の力を訓練できる。
【0043】
ステップ6における瞬発力訓練ステップでの訓練結果、及びステップ7における巧緻性訓練ステップで評価した巧緻性の評価結果を、舌部を表す舌部イメージ図において、計測点又は計測面とともに表示することで、訓練結果をビジュアルに把握できる。
なお、
図2では舌機能訓練ステップとして、瞬発力訓練ステップと巧緻性訓練ステップとを示したが、持久力評価ステップに対応した持久力訓練ステップを有してもよい。
【0044】
図4及び
図5は、本実施例の表示部で表示する目標値画像データの表示イメージである。
図4及び
図5に示す表示イメージ21では、計測される計測値をポイント21aで表示し、目標値をライン21bで表示している。また、表示イメージ21は、舌部で発揮している力の能力表示21cと、開始からの経過時間表示21dを有している。
ポイント21a又はライン21bは、時間の経過に伴い、左右いずれかの一方向に移動する。ポイント21aが左右に移動するバージョン、ライン21bが移動するバージョンのいずれでもよい。ポイント21aは、舌部で発揮している力によって、高さを変更する。本実施例では、ポイント21aは、力が大きくなれば上方に、力が小さくなれば下方に移動する。
ポイント21aは自動車をイメージし、ライン21bは道路をイメージし、画面の左端から右端に進む自動車の上下位置を、舌部の力の大きさに対応付け、道路(目標値)に沿って走行するように、被評価者又は被訓練者に舌部の力を調整させる。
なお、目標値となるライン21bの高さや時間変化のパターンは、評価ステップや訓練ステップに応じて設定できる。
【0045】
図4(a)は、持久力評価ステップで用いる表示イメージである。
図4(a)に示す表示イメージ21は、一定の目標値を持続的に発揮することを促すために、ライン21bは同じ高さの位置としている。
持久力評価ステップで用いる目標値(ライン21bの高さ)は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定し、目標値は筋力以下に設定することが好ましい。筋力は、筋力評価ステップで計測された最大計測値である。
【0046】
図4(b)は、瞬発力評価ステップ又は瞬発力訓練ステップで用いる表示イメージである。
図4(b)に示す表示イメージ21は、目標値として第1目標値と第2目標値とを設定している。低位置(左部分)に表示されたライン21bが第1目標値、高位置(右部分)に表示されたライン21bが第2目標値である。第1目標値から第2目標値への変化を促すために、ライン21bは2段階の高さラインと、この2段階の高さを繋ぐ上下方向ラインとしている。
第1目標値をゼロ(無負荷)とすることで脱力状態からの瞬発力を判断又は訓練できる。また、第1目標値を第2目標値よりも低い負荷状態とすることもできる。
【0047】
図4(c)は、瞬発力評価ステップ又は瞬発力訓練ステップで用いる表示イメージである。
図4(c)に示す表示イメージ21は、高位置(左部分)に表示されたライン21bが第1目標値、低位置(右部分)に表示されたライン21bが第2目標値である。第2目標値は第1目標値よりも弱い力としている。
【0048】
図5(a)〜(g)は、巧緻性評価ステップ又は巧緻性訓練ステップで用いる表示イメージであり、それぞれ異なるコースパターンを示している。
巧緻性評価ステップ又は巧緻性訓練ステップで用いる目標値(ライン21bの高さ)や変化速度は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定し、目標値は筋力以下に設定することが好ましい。筋力は、筋力評価ステップで計測された最大計測値である。
例えば、
図5(a)に示す表示イメージ21は、ライン21bを正弦波としたものであり、
図5(f)に示す表示イメージ21は、ライン21bを矩形波としたものである。
図5(a)及び
図5(f)に示す表示イメージ21は、最小目標値、最大目標値、一つの波の速さ、すなわち周波数、及び画面の左端から右端までの時間を設定している。これらの設定値は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定できる。
図5(e)に示す表示イメージ21は、ライン21bを三角波としたものである。
図5(e)に示す表示イメージ21は、最小目標値、最大目標値、一つの波の速さ、波と波との間の時間、及び画面の左端から右端までの時間を設定している。これらの設定値は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定できる。
図5(b)、
図5(c)、及び
図5(d)に示す表示イメージ21は、
図5(e)に示す表示イメージ21の変形例である。
図5(g)に示す表示イメージ21は、時間経過に伴って波の速さを段階的に早く、すなわち、波の周期を段階的に短くしている。
図5(g)に示す表示イメージ21では、どの段階まで追従できるかを評価又は訓練することができる。また、波の周期を段階的に長くすることもできる。
【0049】
図6は、本実施例の表示部で表示する目標値画像データの他の表示イメージである。
図6(a)に示す表示イメージ21では、計測される計測値は、指差しをイメージした第1ポイント21aで表示し、目標値は、ばい菌をイメージした第2ポイント21bで表示している。また、表示イメージ21は、舌部で発揮している力の能力表示21cと、開始からの経過時間表示21dと、スコアー21eを有している。
第1ポイント21aは、舌部で発揮している力によって、高さを変更する。本実施例では、ポイント21aは、力が大きくなれば上方に、力が小さくなれば下方に移動する。
第2ポイント21bは、あらかじめ設定した最大目標値と最小目標値との間で高さを変更する。第2ポイント21bの変動高さ及び変動速度は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定し、最大目標値は筋力以下に設定することが好ましい。筋力は、筋力評価ステップで計測された最大計測値である。
図6(a)に示す表示イメージ21では、第1ポイント21aから定期的に弾丸が発射されるように設定され、第1ポイント21aが第2ポイント21bの高さと一致し、第1ポイント21aから発射される弾丸が第2ポイント21bに当たるとスコアー21eのポイントが加算されるゲームである。
図6(a)に示す表示イメージ21は、瞬発力評価ステップ、瞬発力訓練ステップ、巧緻性評価ステップ、又は巧緻性訓練ステップに適しているが、第2ポイント21bの高さ位置を所定時間維持する動作を設定することで、持久力評価ステップで用いることができる。
【0050】
図6(b)に示す表示イメージ21では、計測される計測値は、ぶたの貯金箱をイメージした第1ポイント21aで表示し、目標値は、コインをイメージした第2ポイント21bで表示している。また、表示イメージ21は、舌部で発揮している力の能力表示21cと、開始からの経過時間表示21dと、スコアー21eを有している。
第1ポイント21aは、舌部で発揮している力によって、高さを変更する。本実施例では、ポイント21aは、力が大きくなれば上方に、力が小さくなれば下方に移動する。
第2ポイント21bは、あらかじめ設定した最大目標値と最小目標値との間で高さを変更する。第2ポイント21bの変動高さ及び変動速度は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定し、最大目標値は筋力以下に設定することが好ましい。筋力は、筋力評価ステップで計測された最大計測値である。
図6(b)に示す表示イメージ21では、第2ポイント21bが高さを変更しながら、第1ポイントの方向(左方向)に飛んで行くように設定され、第1ポイント21aが第2ポイント21bの高さと一致し、飛んで来た第2ポイント21bを第1ポイント21aで受け取るとスコアー21eのポイントが加算されるゲームである。
図6(b)に示す表示イメージ21は、瞬発力評価ステップ、瞬発力訓練ステップ、巧緻性評価ステップ、又は巧緻性訓練ステップに適しているが、第2ポイント21bの高さ位置を所定時間維持する動作を設定することで、持久力評価ステップで用いることができる。
【0051】
図6(c)に示す表示イメージ21では、計測される計測値は、一方の顔の表情をイメージした第1ポイント21aで表示し、目標値は、他方の顔の表情をイメージした第2ポイント21bで表示している。また、表示イメージ21は、舌部で発揮している力の能力表示21cと、開始からの経過時間表示21dを有している。
第1ポイント21aは、舌部で発揮している力によって、表情を変更する。
第2ポイント21bは、あらかじめ設定した最大目標値と最小目標値との間で表情を変更する。第2ポイント21bの表情の変更及び変更速度は、被評価者又は被訓練者の筋力に応じて設定し、最大目標値は筋力以下に設定することが好ましい。筋力は、筋力評価ステップで計測された最大計測値である。
図6(c)に示す表示イメージ21では、第2ポイント21bでの表情が変更し、第1ポイント21aの表情を第2ポイント21bの表情に一致させるゲームである。
図6(c)に示す表示イメージ21は、瞬発力評価ステップ、瞬発力訓練ステップ、巧緻性評価ステップ、又は巧緻性訓練ステップに適しているが、第2ポイント21bでの表情を所定時間維持する動作を設定することで、持久力評価ステップで用いることができる。
【0052】
図7は、本実施例の表示部で表示する目標値画像データの更に他の表示イメージである。
図7(a)は、瞬発力評価ステップ又は瞬発力訓練ステップで用いる表示イメージである。
図7(a)に示す表示イメージは、目標とするベクトル(目標値)と、計測したベクトル(計測値)とを表示し、計測値である力の方向を目標値である力の方向に一致させることを促す。
図7(b)は、巧緻性評価ステップ又は巧緻性訓練ステップで用いる表示イメージである。
図7(b)に示す表示イメージは、連続的に変化する目標とするベクトル(目標値)と、計測したベクトル(計測値)とを表示し、計測値である力の方向を目標値である力の方向に一致させることを促す。
図7(b)では、
図5における縦軸を目標角度θrに置き換えて、目標ベクトルの方向を連続的に変化させるものである。
図7に示すように、目標値と計測値をベクトルとして可視化(表示)して、評価や訓練を行うこともできる。
なお、
図7では、目標値及び計測値であるベクトルは、単位ベクトルに変換して表示しているため、図示のベクトルの長さを一定として力の方向だけを変化させるが、力の大きさをベクトル長さとして表示してもよい。
【0053】
図8は、本実施例で用いる舌尖保持部とひずみセンサを示す構成図である。
舌尖保持部11は、被評価者又は被訓練者の舌尖を覆うように保持し、舌尖保持部11の底部にはひずみセンサ12を設けている。ひずみセンサ12には、制御部30に接続される信号線12aを有している。
図8に示すひずみセンサ12は、薄膜型ひずみゲージを用いた6軸力覚センサである。
【0054】
図9は、舌尖保持部とひずみセンサの他の実施例による構成図である。
図9(a)は舌尖保持部とひずみセンサとを装着した状態での平面図、
図9(b)は舌尖保持部を取り外した状態での平面図、
図9(c)、(d)はひずみセンサでの力の検出方向を示す図、
図9(e)は舌尖部での計測状態を示す説明図である。
本実施例では、舌尖保持部11として舌接触プレートを用い、ひずみセンサ12として3つの3軸力覚センサを用いている。
本実施例のように、舌尖保持部11として舌接触プレートを用いることで、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの任意の計測面に作用した力のベクトル値とその作用点を計測することができる。
本実施例では、複数の力覚センサを用いてベクトルを算出したが、一つの力覚センサを用い、舌接触プレートの代わりに、先端を球状とした舌尖保持部11を用いることで、舌部における舌尖部、舌体部、舌根部などでの任意の計測点を作用点とした力のベクトル値を計測することができる。また、舌接触プレートに突起部を設けて突起部の点でのみ接触するようにすれば、複数の力覚センサを用いても、任意点での計測が可能である。また、圧力センサやひずみゲージだけでも、センサ配置と個数を工夫することで、力ベクトルや作用点を計測できる。
【0055】
以下本発明の実施例に基づいた訓練結果について説明する。
図10は訓練と評価に用いた表示イメージであり、
図10(a)は訓練に用いたゲームの表示イメージ、
図10(b)はゲーム終了時のデータを示すグラフ、
図10(c)、(d)は評価に用いた表示イメージである。
訓練には各個人の最大舌圧に基づいた目標値を設定し、その人の能力に応じた訓練を実施した。
被験者は健常成人男性10名(年齢22.8±0.6歳、身長168.8±4.1cm、体重56.5±3.5kg、mean±SD)とした。訓練は2週間(平日のみ、10日間)、1日10分(1分×10セット)行った。訓練ゲームの目標値は訓練開始前に計測した最大舌圧の70%とした。評価は1週間に1度行い、訓練開始前のデータを取得するために訓練開始一週間前から評価を開始した。訓練の条件の設定は、言語聴覚士の指導のもと行った。
評価項目には、筋力として最大舌圧、持久力として一定の力(訓練開始前の最大舌圧の70%と35%)の持続可能時間(
図10(c)、(d))、巧緻性として訓練ゲームの記録データ(目標値と計測値のRoot mean square error:RMSE、
図10(b))を用い、また従来法との比較のために臨床現場で口腔機能評価に使われている、RSST(反復唾液嚥下テスト、30秒間に何回空嚥下できるかを計測)とオーラルディアドコキネシス(『パ』、『タ』、『カ』をそれぞれ5秒間に何回発音できるかを計測)も評価項目に加えた。RSSTは、嚥下反射の随意的な惹起能力を評価する。オーラルディアドコキネシスは、舌、口唇、軟口蓋などの運動の速度や巧緻性を発音により評価する。口唇の動きの評価は『パ』、舌の前方の動きの評価『タ』、舌の後方の動きの評価は『カ』を用いる。オーラルディアドコキネシスの計測には健口くん(T.K.K.3350、竹井機器工業)を使用した。
最大舌圧の計測は、舌圧測定器のセンサを口蓋と舌の間に挟み、5秒間の間最大限の力で潰すように指示をした。持続時間の計測は、ゲーム画面の道路の高さを最大舌圧の70%、あるいは35%の高さに固定し、最大限の努力で道路の上をなぞり続けるように指示をした。訓練ゲームの記録データは、訓練時の自動車の軌跡を記録し、道路を模した目標値との誤差(RMSE)を計算した。
【0056】
図11〜
図13に訓練の結果として、評価項目の被験者10名の平均の推移と計測結果のまとめを示す。
図11(a)は最大舌圧の結果を示すグラフ、
図11(b)は最大舌圧の70%の力の持続時間の結果を示すグラフ、
図11(c)は最大舌圧の35%の力の持続時間の結果を示すグラフである。
図12(a)は訓練ゲームの目標値と計測値のRMS誤差の結果を示すグラフ、
図12(b)はRSSTの結果を示すグラフ、
図12(c)はオーラルディアドコキネシスの結果を示すグラフである。
図13は最大舌圧(筋力)と訓練データのRMS誤差(巧緻性)の相関を示すグラフである。
図11及び
図12に示すように、最大舌圧、舌圧持続時間は、個人差はあるものの全体の平均は訓練開始から訓練終了までの間、増加傾向を示した。RSST、オーラルディアドコキネシスも同様であった。それに対し、訓練ゲームでの目標値と計測値のRMS誤差は減少傾向を示した。
その結果、筋力、持久力、巧緻性すべての能力の向上が見られた。
また、
図13に示すように、最大舌圧が高いほど訓練データのRMS誤差が低くなり、最大舌圧と舌圧の調整能力の間に有意な相関があることを示した。相関係数は0.54であった。