(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
オシロスコープは、エンジニアが使用する電子試験測定装置であり、被試験回路の特定の試験ポイントから関心のある信号の波形を取込み、表示するのに使用される。最も初期のオシロスコープには、トリガ機能がなく、そのため、関心のある波形を安定して表示できなかった。初期のアナログ・オシロスコープでは、トリガ回路が加えられ、オシロスコープの表示画面上で、常にトリガ・イベントの検出に応じて関心のある波形の描画を開始することで、安定した波形表示が得られるようになった。このように、トリガ・イベントの発生に応じて、表示すべき波形を表示画面上の同じ場所で安定して生じさせるようにしている。
【0003】
最新のリアルタイム・デジタル・ストレージ・オシロスコープ(DSO)でも、安定した波形表示を実現するためにトリガ・システムを採用しているが、これは、アナログのオシロスコープとは異なるやり方で動作している。DSOは、被測定信号のサンプル・ポイント(又は、単にサンプルとも呼ぶ)を連続的に取込み、循環型のアクイジション(信号取込み)メモリに蓄積する。つまり、アクイジション・メモリの最後のメモリ位置が満たされる(サンプルが蓄積される)と、メモリ・ポインタは、アクイジション・メモリの最初のメモリ位置をリセットして、サンプルの取込みと蓄積を続ける。トリガ・イベントを受ける前に収集されたサンプルは、プリ・トリガ・データと呼ばれる。トリガ・イベントが検出されると、取り込まれる複数のサンプルに関して「ゼロ時点」が設定され、このゼロ時点に続いて収集されるサンプルは、ポスト・トリガ・データと呼ばれる。ポスト・トリガ・データの取込みが完了するまで、新しいトリガは受け付けない。循環型アクイジション・メモリの有限のメモリ長の中で、プリ・トリガ・データとポスト・トリガ・データとが占める比率をどのようにするかは、通常、任意に設定できる。例えば、この比率を1対1とすると、循環型アクイジション・メモリに記憶されたサンプル・データの時間的にちょうど中央にゼロ時点が位置することになる。
【0004】
別の観点から説明すると、トリガ・システムは、ユーザが時間的な特定イベントに関連する信号を捕捉する(信号にトリガをかける)ことを可能にする技術を採用している。この技術は、典型的には、高速デジタル回路の問題を解決する(つまり、デバッグ)ため、こうした回路の誤動作の原因となるイベントを特定するのに利用される。求めるトリガ・イベントは、時間的に単一の時点で生じた(つまり、1つの異常)か、又は、ロジック・シーケンスの結果として生じた、予想外のアナログ又はデジタル動作の結果である可能性がある。
【0005】
最新のDSOは、非常に多種多様なイベントについてトリガをかけることができる。そのなかで、最も一般的に選択されるトリガは、エッジ・トリガであり、これは、被測定信号にプラスの垂直方向又はマイナスの垂直方向のどちらへの遷移が生じているかを調べるものである。加えて、公知の高機能トリガとしては、次に挙げるものがある。即ち、グリッチ、ラント、パルス幅、レベル、パターン、ステート、セットアップ/ホールド違反、ロジック条件、タイム・アウト、所定ウィンドウ、所定期間、時間条件(time-qualified)遷移、時間条件(time-qualified)パターン、シリアル・データといったトリガ条件である(非特許文献1参照)
【0006】
シーケンシャル・トリガも従来から知られており、これは、2つの異なるイベントから試験測定装置でトリガをかける必要がある場合に有益である。公知のシーケンシャル・トリガ・システムでは、起こり得るトリガ・イベントのメニューの中からメイン(又はA)トリガ・イベントが選択され、これに遅延(又はB)トリガ・イベントを組み合わせる。シーケンシャル・トリガでは、Aトリガによってオシロスコープがトリガ待機状態(トリガをかける準備態勢)になり、Bトリガを受けるとトリガがかかる。
【0007】
シーケンシャル・トリガの一形態として、ロジック・アナライザにおけるものも従来から知られている。しかし、ロジック・アナライザにおけるトリガ処理は、クロック単位であって、連続的ではない。つまり、ロジック・アナライザは、そのサンプリング・クロックに従ってトリガ・イベントをサンプルする。オシロスコープでは、トリガ・イベントは、クロックと関係なく、アナログ形式でトリガ比較器に加えられる。オシロスコープでは、受けたデータに関して、オシロスコープがトリガの時点を正確に特定するために、連続的な形式のトリガが必要である。更には、ロジック・アナライザは、少なくとも2つのしきい値を必要とする「アナログ」のトリガ(立ち上がり時間、立ち下がり時間、ウィンドウ、ラントなど)に応答できない。更には、ロジック・アナライザは、DCカップリングを除いて、カップリングが利用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
困ったことに、上述したトリガ機能の全てを有するDSOでも、今日の極めて複雑化した回路に現れる複合的なイベントに対して、トリガをかけられないことがある。米国特許第7191079号は、ピンポイント・トリガの概念を開示しており、これは、シーケンシャル・トリガの概念を拡張したもので、あるシーケンスにおいて認識される第1(又はA)イベントの形式に関して複数選択肢を可能にすると共に、そのシーケンスにおいて認識される第2(又はB)イベントの形式に関しても複数選択肢を可能とし、更に、第3(又はC)イベントを含めたり、Aイベントから一定時間でタイムアウトにして、そのシーケンスをリセットすることも可能にしている。なお、「ピンポイント・トリガ」は、出願人が製造販売するオシロスコープにおける複数種類のトリガ形式から構成される高機能トリガの愛称である(非特許文献1参照)。しかし、これらの全ての場合において、単一のAイベント(シーケンスがない)又は、Aイベントの後に適切に続いて生じたBイベントのどちらでも、トリガ・イベント(捕捉される波形の時間的な基準)となり得ていた。言い換えれば、Aトリガによって、オシロスコープがトリガ待機状態になり、Bトリガを受けたらトリガがかかるということである
【0011】
本発明では、従来技術のこうした制約に取り組み、従来にない効果的なトリガ機能を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の概念(コンセプト)をいくつかの観点から見ていくと、本発明の概念1は、試験測定装置であって、
被試験信号を受けるよう構成される入力部と、
ユーザから第1トリガ・イベント及び第2トリガ・イベントの設定を受けるよう構成されたユーザ入力部と、
上記第1トリガ・イベントの発生に対してトリガをかけて第1トリガ信号を生成する第1トリガ・デコーダと、
上記第1トリガ・イベントの後
の上記第2トリガ・イベントの発生に対してトリガをかけて第2トリガ信号を生成する第2トリガ・デコーダと、
上記第1トリガ信号に応じて上記被試験信号を取込み、上記第2トリガ・デコーダによって上記第2トリガ信号が生成されたか否かに基
づいて
、取り込まれた上記被試験信号を
有効にするか又は無効にするアクイジション(信号取込み)システムと
を具えている。
【0013】
本発明の概念2は、上記概念1の試験測定装置であって、
上記第1トリガ信号が発生したときに、所定期間を計り始め、上記所定期間が終了したときに期間終了信号を生成するタイマを更に具え、
上記入力部が上記ユーザから上記所定期間を受けるよう構成されていることを特徴としている。
【0014】
本発明の概念3は、上記概念2の試験測定装置であって、このとき、上記アクイジション・システムが上記期間終了信号の前に上記第2トリガ信号を受けた場合に、上記アクイジション・システムが
取り込まれた上記被試験信号を
有効にするか又は無効にするよう構成されている。
【0015】
本発明の概念4は、上記概念2の試験測定装置であって、このとき、上記アクイジション・システムが上記期間終了信号の前に上記第2トリガ信号を受けなかった場合に、上記アクイジション・システムが
取り込まれた上記被試験信号を
有効にするか又は無効にするよう構成されている。
【0016】
本発明の概念5は、上記概念2の試験測定装置であって、上記期間終了信号が生成されたときに、上記第1トリガ・デコーダをリセットするよう構成されたリセット回路を更に具えている。
【0017】
本発明の概念6は、上記概念2の試験測定装置であって、もし上記第2トリガ信号が生成されたら、上記第1トリガ・デコーダをリセットするよう構成されたリセット回路を更に具えている。
【0018】
本発明の概念7は、上記概念1の試験測定装置であって、このとき、
上記ユーザ入力部が、第3トリガ・イベントの設定を受け、
上記試験測定装置が、上記第3トリガ・イベントの発生に対してトリガをかけて第3トリガ信号を生成する第3トリガ・デコーダを更に具え、
上記アクイジション・システムは、上記第3トリガ信号が生成される前に上記第2トリガ信号が生成されたか否かに基
づいて、取り込まれた上記被試験信号を
有効にするか又は無効にするよう構成されることを特徴としている。
【0019】
本発明の概念8は、上記概念1の試験測定装置であって、このとき、上記第1及び第2トリガ・デコーダが、ハードウェア・コンポーネントであることを特徴としている。
【0020】
本発明の概念9は、上記概念2の試験測定装置であって、このとき、上記第1及び第2トリガ・デコーダ並びに上記タイマが、ハードウェア・コンポーネントであることを特徴としている。
【0021】
本発明の概念10は、上記概念7の試験測定装置であって、このとき、上記第1、第2及び第3トリガ・デコーダが、ハードウェア・コンポーネントであることを特徴としている。
【0022】
本発明の更に別の観点からみると、本発明の概念11は、被試験信号を取込むためのトリガ方法であって、
被試験信号を受ける処理と、
第1トリガ・イベント及び第2トリガ・イベントの設定を受ける処理と、
上記第1トリガ・イベントの発生に対してトリガをかけて第1トリガ信号を生成する処理と、
上記第1トリガ・イベントの後
の上記第2トリガ・イベントの発生に対してトリガをかけて第2トリガ信号を生成する処理と、
上記第1トリガ信号に応じて上記被試験信号を取込み、上記第2トリガ信号が生成されたか否かに基
づいて取り込まれた上記被試験信号を
有効にするか又は無効にする処理と
を具えている。
【0023】
本発明の概念12は、上記概念11の方法であって、上記第1トリガ信号が発生したときから所定期間を計り、上記所定期間が終了したときに期間終了信号を生成する処理を更に具えている。
【0024】
本発明の概念13は、上記概念12の方法であって、このとき、
取り込まれた上記被試験信号を
有効にするか又は無効にする処理は、アクイジション・システムが上記期間終了信号の前に上記第2トリガ信号を受けた場合に
取り込まれた上記被試験信号を
有効にするか又は無効にする処理を更に含んでいる。
【0025】
本発明の概念14は、上記概念12の方法であって、このとき、
取り込まれた上記被試験信号を
有効にするか又は無効にする処理は、アクイジション・システムが上記期間終了信号の前に上記第2トリガ信号を受けなかった場合に
取り込まれた上記被試験信号を
有効にするか又は無効にする処理を更に含んでいる。
【0026】
本発明の概念15は、上記概念11の方法であって、
第3トリガ・イベントの設定を受ける処理と、
上記第3トリガ・イベントの発生に対してトリガをかけて第3トリガ信号を生成する処理と
を更に具え、上記第3トリガ信号が生成される前に上記第2トリガ信号が生成されたか否かに基
づいて、取り込まれた上記被試験信号を
有効にするか又は無効にする。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に示す複数の図面において、類似又は対応する要素には、同じ符号を付して説明する。なお、これら図面において、各要素の縮尺は、説明の都合上、必ずしも同一ではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態による試験測定装置100の回路ブロック図である。試験測定装置100には、ユーザの被試験回路から被試験信号(SUT)を受ける入力端子102がある。簡単のため、1つのコネクタとして示しているが、入力端子102は、実際には、n個の入力チャンネルから構成される。このとき、nは、合理的な任意の数で良いが、通常、1、2、4又は8である。n個の信号ラインは、入力ブロック104に結合される。入力ブロック104は、試験測定装置100の「フロン
ト・エンド」を表しており、これは、バッファ増幅器、アッテネーション回路など、入力信号の状態を整える回路から構成される。入力ブロック104には、t個のラインを通してマルチプレクサ(MUX)アレイ・ユニット106の第1入力端子に信号を供給する第1出力端子107と、調整された入力信号をアクイジション・システム110に供給する第2出力端子108とがある。アクイジション・システム110では、入力信号のサンプルが繰り返し取られ、デジタル形式に変換され、アクイジション・システム110内の循環型アクイジション・メモリに蓄積される。MUXアレイ106には、外部トリガ入力コネクタ105に結合された第2入力端子があり、もし外部からトリガ信号が加えられた場合には、この外部トリガ信号を第2入力端子で受ける。MUXアレイ106は、m個の信号をトリガ比較ユニット116の第1入力端子114に加える。
【0030】
トリガ比較ユニット116には第2入力端子118があり、コントローラ(簡単のため図示せず)からp個のしきい値を受ける。トリガ比較ユニット116は、後述のように、多数の異なるトリガ条件を検出できるようにユーザによってプログラム可能になっている。トリガ比較ユニット116は、所定のトリガ条件を検出すると出力信号を生成し、これら出力信号はr個のラインを通してトリガ・マシーン120の入力端子に供給される。これに応じて、トリガ・マシーン120は、入力信号の特定部分とトリガをかけるイベントとを関連づける信号をアクイジション・システム110に供給する。また、トリガ比較ユニット116は、好ましいことに、種々の結合形態(即ち、DC結合、AC結合、高周波数遮断など)にも対応しており、これは、試験測定装置100の前面パネルの操作系(ノブ、ボタンなど)やメニュー選択などにより、ユーザが選択できる。
【0031】
トリガ・イベントの検出に応じて、アクイジション・システム110は、所定数のサンプルを得るまでポスト・トリガ・データの取込みを続けた後、取込みを停止する。この時点で、取り込まれたデータは、ストレージ・メモリ122に移動すると共に、表示装置126で表示するために波形変換システムで処理される。
【0032】
図2は、
図1のトリガ・マシーン120のイベント・デコーダ200の部分の簡略化したブロック図である。イベント・デコーダ200には、イベント・デコーダ及びクオリファイヤA202、イベント・デコーダ及びクオリファイヤB204、リセット・イベント・デコーダ206、並びにタイムアウト・カウンタ208があることに注意されたい。イベント・デコーダ及びクオリファイヤA202の出力信号は、Aトリガ・ラッチ210でラッチされ、プログラマブル遅延回路212を介して、Bトリガ・ラッチ214のイネーブル(EN)入力端子に加えられる。イベント・デコーダ及びクオリファイヤB204の出力信号は、Bトリガ・ラッチ214でラッチされる。重要なことは、Aトリガ・ラッチ210が「真」の論理レベルの出力信号を生成したとき、タイムアウト・カウンタ208が時間を計り始めるということである。リセット・ロジック・ブロック218は、リセット・イベント・デコーダ206から信号を受けた場合か、タイムアウト・カウンタ208から期間終了信号を受けた場合か、更には、Bイベントとリセット・イベント・デコーダ206の出力信号とのもっと複雑な組み合わせによる場合などに、出力信号を生成するようにプログラムできる。これらのいずれの場合でも、リセット・ロジック・ブロック218からの出力信号は、Aトリガ・ラッチ210に加えられて、これをリセットし、これによって、イベント・デコーダ及びクオリファイヤB204及び連携するBトリガ・ラッチ214が、そのトリガ・イベントを探すことがないようにする。ただし、リセット・ロジック・ブロック218が、Aトリガ・ラッチ210をリセットしないようにもプログラムできる。更には、期間終了信号自身をトリガ・イベントとして利用しても良い。
【0033】
イベント・デコーダ及びクオリファイヤA202、イベント・デコーダ及びクオリファイヤB204、並びにイベント・デコーダ206のそれぞれには、信号源(入力チャンネル)及びスロープ(信号の傾斜方向)を制御する入力端子があり、これらは、試験測定装置100の前面パネル操作系又はメニューを通したユーザの選択に応じて、試験測定装置100内のコントローラ(図示せず、CPUなど)によって制御される。
【0034】
ある実施形態では、チャンネル1〜4からの入力信号を、予め設定した第1グループの4つのトリガ・レベルと比較することによって、イベント0からイベント3が生じる。また、チャンネル1〜4からの入力信号を、予め設定した第2グループの4つのトリガ・レベルと比較することによって、イベント4からイベント7が生じる。
図2では、他のトリガ信号源(まとめて「補助信号源」と呼ぶ)の入力端子も示されており、これら信号源としては、例えば、3つの映像トリガ信号(コンポジット同期信号(Comp Sync)、垂直同期信号、フィールド同期信号)が含まれる。更に別の補助トリガ信号源として、高速エッジ(即ち、外部トリガ信号源からの校正信号)もある。また、その他の補助トリガ信号源として、オプション(Opt)がある。更に別の補助トリガ信号源を受ける入力端子として、外部トリガ入力端子AUXもある。最後に、2つのワード・リコグナイザ(ワードA及びワードB)の出力信号を受けて、試験測定装置(オシロスコープなど)100にトリガをかけることもできる。
【0035】
イベント・デコーダ200の部分には、イベント・クオリファイヤ/ディスクオリファイヤ220、タイマ222、マルチプレクサ224及びポスト・トリガ・カウンタ226もある。試験測定装置のトリガ機能の選択されたモードにより、Bイベントによって被試験信号のアクイジション(取込み)が生じさせたAイベントを有効にするか又は無効にできる。
【0036】
タイマ222は、Aイベントの後、特定期間の時間を計り始める。この特定期間は、ユーザ・インターフェースを介して設定できる。Bトリガ・ラッチ214からの出力信号は、通常のA−Bシーケンスの間、ポスト・トリガ・カウンタ226の動作開始に使用しても良いし、または、イベント・クオリファイヤ(Qualifier)/ディスクオリファイヤ(Disqualifier)220への入力信号として使用しても良い。Bトリガ・ラッチ214からの出力信号と、タイマ222からの入力信号は、イベント・クオリファイヤ/ディスクオリファイヤ220がAトリガ・イベントを有効するか又は無効とするために利用できる。クオリファイヤ/ディスクオリファイヤ220は、
図1において、トリガ・マシーン120がアクイジション・システム110に送る情報を変更し、Aイベントによってトリガされたアクイジション・データを破棄する。
【0037】
詳しくは後述のように、Aイベントに基づくアクイジション・データは、タイマ222が選考期間終了信号(end-of-qualification-period signal)を出力する前にBイベントが存在しているか否か
に基
づいて、維持されるか又は破棄される。図示しないが、イベント・デコーダ(トリガ回路)200には、更にイベント・デコーダ及びクオリファイヤCと、Cトリガ・ラッチが設けられても良い。Cイベントは、イベント・クオリファイヤ/ディスクオリファイヤ220に送られると共に、タイマ222の出力信号のように、選考期間終了信号として機能する。つまり、Aイベントの時点から始まるアクイジション・データは、タイマ222が選考期間終了信号を出力するか又はCイベントが生じる前に、Bイベントが存在するか否か(不存在)かに基
づいて、受け入れられるか又は破棄される。
【0038】
本発明による装置は、
図3の状態遷移図に示すように、ステート・マシーンとしての観点から説明することができる。このステート・マシーンは、左上から入り、Aイベントが生じるのを待つ。もしAイベントだけのモードが選択され、Aイベントが生じた場合、ステート・マシーンは、ポスト・トリガ期間待ちの状態へ進み、その後、終了する。もしN番目のイベントにトリガをかけるモードが選択され、Aイベントが生じた場合、ステート・マシーンは、Bイベントの数をカウントする状態に進み、所定数のBイベントが発生するか、又は、リセットが生じるまで、ここに留まる。Bイベントの発生数が所定数に達すると、ステート・マシーンは、ポスト・トリガ期間待ちの状態へ進み、その後、終了する。もしリセットが生じた場合には、ステート・マシーンは、Aイベント待ち状態に戻る。もし所定時間後にトリガのモードが選択され、Aイベントが生じた場合、ステート・マシーンは、タイムアウト待ち状態に進み、所定期間(又は、リセットを受けるまで)ここに留まる。もし所定時間が経過したら、ステート・マシーンは、Bイベント待ち状態に進む。もしリセットが生じた場合には、ステート・マシーンは、Aイベント待ち状態に戻る。ステート・マシーンは、Bイベントが生じるか、又は、リセットを受けるまで、Bイベント待ち状態に留まる。もしBイベントが生じると、ステート・マシーンは、ポスト・トリガ期間待ちの状態へ進み、その後、終了する。もしリセットが生じると、ステート・マシーンは、Aイベント待ち状態に戻る。これらモードについては、米国特許第7191079号の
図6も参照されたい。
【0039】
本発明による高機能トリガの例は、次のようなものである。例えば、もしBイベントでAを有効にするモードを選択し、Aイベントが発生した場合には、ステート・マシーンは、
図4に示すXへと進む。ステート・マシーンは、ポスト・トリガ期間待ち状態に進むと同時に、タイマ222からの選考期間終了信号(つまり、タイムアウト)を待っている間、Bイベントを監視する。このとき、ポスト・トリガ・カウンタ226が動作してポスト・トリガ期間を計り、これが終了すると、アクイジションは終了となる。並行して、ステート・マシーンは、タイマ222による選考期間が終了するまで、Bイベントを監視する。なお、メニュー選択を通じたユーザの設定と、選考期間(Qualifying period)中におけるBイベントの発生又は不発生とに基
づいて、ステート・マシーンは、アクイジション・データを有効としたままYへと抜け出るか、又は、アクイジション・データを無効として破棄するようにアクイジション・システムに送るトリガ情報を変更するか、のどちらも行うようにできる。Bイベント(単数又は複数)が存在するか又は不存在によってAイベントを有効とする場合には、Aイベントから始まるアクイジション・データをストレージ・メモリ122に転送し、波形変換システム124で処理し、表示装置126上で表示するようにできる。一方、Bイベント(単数又は複数)が存在するか又は不存在によってAイベントを無効とする場合には、Aイベントから始まるアクイジション・データは破棄される。どちらの場合でも、続いて、新しいアクイジション・サイクルを開始するようにしても良い。
【0040】
本発明を別の観点から説明すると、BイベントによってAイベントを有効にするか、又は、BイベントによってAイベントを無効にするというトリガ・シーケンスを設定できるものである。つまり、もしAイベントがBイベントによって有効にされる場合、Aイベントの後から、タイマ又はCイベント・デコーダからの選考期間終了信号発生の前までにBイベントが発生した場合にだけ、アクイジション・データは有効に維持される。もしAイベントがBイベントによって無効にされる場合、Aイベントの後からタイマ又はCイベント・デコーダからの選考期間終了信号発生の前までにBイベントが発生しない場合にだけ、アクイジション・データは有効に維持される。アクイジション・データが無効にされない場合には、Aイベントの後から始まる被試験信号のアクイジション・データは、ストレージ・メモリ122に転送される。
【0041】
本願で開示するAトリガ・イベントを有効又は無効にするハードウェア手法によれば、ソフトウェア・ベースの処理手法で必要となるようなデジタイザやアクイジション・メモリといった追加のハードウェア資源を必要とせず、次のAイベントの検索を開始するように再度待機状態になるまでの時間が大幅に短くなる。典型的な使用形態では、こうしたハードウェア処理は、ソフトウェアによるポスト処理(後処理)に比較して、処理速度にして2〜3桁向上するという優位性がある。
【0042】
本願で開示する高機能トリガ・アクイジション・モードは、既存のピンポイント・トリガのハードウェア、つまり、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)及び高速トリガ・ロジック・チップを利用して実現できる。この高速トリガ・ロジック・チップは、従来の「Aに続いてB」シーケンス・モードと同様にしてプログラム可能であるが、異なる点は、従来は、Aトリガ・イベントがアクイジション・システム110を停止するのに使用されると共に、低速トリガ・ロジック・チップ(FPGAの一部)にフラグを立て、A時間補間器のデータを読み出すために使用されているということである。FPGA内の新しいタイムアウト・カウンタであるタイマ222は、リセット期間のカウントを開始してリセット期間の間待つ共に、Aイベントの後であって、リセット時間になる前にBイベントが発生したか否かを判断するために、高速トリガ・ロジック・チップのB時間補間器にポーリングする。Bイベントが存在するか又は存在しない(どちらであるかはトリガ・モードに依存する)と、Aイベントが有効になり、続いて、FPGAは、A時間補間器のデータをアクイジション・システム110へと渡し、アクイジション・サイクルを完結させる。高速トリガ・ロジック・チップ及び低速トリガ・ロジック・チップは、他のトリガ・イベント発生チップと共に、ASIC(特定用途向けIC)で実現しても良い。
【0043】
しかし、もしAイベントが無効にされると、FPGAは、アクイジションを拒否し、新しいアクイジションを開始するための信号を、アクイジション・システム110に送信する。
【0044】
上述し、また、米国特許第7,191,079号で開示されているハードウェアであれば、その高機能トリガ・システムを、本発明によって更に高機能化可能である。例えば、トリガ比較ユニットの出力信号をシリアル・トリガ・チャンネルを通してFPGAに送り、FPGAをプログラミングすることによって、タイマがなくても、又は、タイマに加えて、多様なCイベントをリセット条件として認識できる。これに代えて、Aイベントの2回目の発生によって、シーケンスをリセットすると同時に、新しいシーケンスを開始するようにしても良い。
【0045】
本発明による高機能トリガ機能は、任意の試験測定装置のアクイジション・モードで使用できる。しかし、上述した高機能トリガは、出願人であるテクトロニクスが製造するオシロスコープが装備する高速アクイジション・モードに特に適している。この高速アクイジション・モードでは、アクイジション・レートが最も重要である。高速アクイジション・モードでは、捕捉した多数のレコード(例えば、毎秒400,000アクイジション)を高速にオーバーレイできる。このオーバーレイは、パターンの視覚的な確認に直接利用できるし、また、そのデータは、非常に多数のアクイジションの後に、更に後処理することで、波形のパラメータ、例えば、時間軸上の各点における波形の平均、標準偏差などを求めることができる。
【0046】
図5は、被試験信号を試験測定装置上で表示したときのスクリーンショットの例を示し、この例では、チャンネル1において捕捉したかった有益な情報(楕円で囲む部分)の時間的な位置が、チャンネル3の参照信号の立ち上がりエッジによって特定されている。なお、チャンネル4では、チャンネル1のデータが有効か否かを示すための選考期間終了信号が、
図5に示した状態のずっと後で生じている。チャンネル3の単純なエッジ・トリガによって、チャンネル1の無効及び有効なデータのオーバーレイが生じる。その目標は、ユーザが関心のあるデータとして特定した部分だけを取り込む(アクイジションする)ように試験測定装置にトリガをかけることができるようにすることである。
【0047】
図6は、高機能トリガ・モードのスクリーンショットの例を示し、具体的には、Aイベントの5マイクロ秒後のBイベント(チャンネル4)によって有効にされたAイベント(チャンネル3)により選択された部分を示している。この例では、選考期間のタイムアウトは、6マイクロ秒に設定されている。即ち、Aイベントの後の6マイクロ秒以内にBイベントが発生すれば、Aイベントが有効となる設定である。この場合のBイベントは、有効化Bイベントと呼ぶことにする。なお、
図6では、時間軸(水平軸)が1.0μs/div、即ち、水平軸の1つの目盛りが1マイクロ秒に設定されている。
図7は、Bイベントによって有効化されたAイベントにより選択された部分のスクリーンショットの例を示しているが、時間軸が
図6よりも短い2.0ns/div、即ち、水平軸の1つの目盛りが2ナノ秒に設定されており、Aイベントが有効か無効かを選考するBイベントは、アクイジションが終わった後に発生している。
図6及び7において、Aイベントは、試験測定装置のチャンネル3のプラスのエッジであり、Bイベントは、試験測定装置のチャンネル4のプラスのエッジである。選考期間のタイムアウトを6マイクロ秒に設定した場合、
図6及び7の例では、もしチャンネル4の信号が6マイクロ秒を超えて低のまま、即ち、選考期間がタイムアウトする前に有効化パルス(Bイベント)が生じなければ、チャンネル1のデータは、何のパターンも示さない。
図6及び7では、説明をわかりやすくするためにチャンネル3及び4の信号波形を示したが、これらチャンネル3及び4に入力された信号は、高機能トリガ・シーケンスの動作を行う上では、実際には、取込んだり、表示したりする必要はなく、例えば、外部トリガ信号として入力すれば良い。もしこれらチャンネル3及び4に入力された信号を表示しなければ、デジタル化処理のリソースを、別のデータ・チャンネルや他の潜在的に関心のある信号を捕捉するために利用できるようになる。
【0048】
もしトリガ・モードが「AイベントをBイベントで有効化」に設定されると、
図6及び7に示すように、Aイベントの後、選考期間がタイムアウトしないうちにBイベントが続いた場合にのみ、Aイベントが表示される。時間軸が短い
図7では、複数のデータ・パターンの存在を示しているが、これは、選考期間内に後続したBイベントに付随して生じたものであり、このアクイジションを有効化したBイベントは、アクイジション・データ・レコードの最後よりもずっと後に生じている。即ち、Bイベントは、選考期間終了信号を受けるよりも前に発生しなければならないが、所望のアクイジション・データを蓄積している最中に生じる必要はない。
【0049】
図8及び9は、第2のケースを示しており、この場合では、高機能トリガ機能は、上述した「AイベントをBイベントで無効化」のモードに設定されている。
図8は、時間軸を長く設定(1.0μs/div)した場合であり、
図9は、時間軸を短く設定(2.0ns/div)した場合である。このモードでは、選考期間内にBイベントが後続しないAイベントのみが表示される。
図9は、チャンネル3のAイベント(立ち上がりエッジ)の後に、データ・パターン(高のパルス)が1つだけあって、その後に6ナノ秒の低(ロー)のパルスが続く例を示しているが、これは、選考期間内に後続するBイベントが無かったことで生じたものである。
【0050】
図6〜9では、例として、チャンネル1で、被試験デバイスからの試験出力ベクトル信号列を表している。チャンネル3の信号は、現在調査している試験における非常に重要なカ所のタイミングの基準を表し、チャンネル4の信号は、もし存在した場合には、この試験の各繰り返しサイクルの最後の時点において、試験の失敗を示すものが発生したことを表す。もしこうした場合であれば、
図6及び7は、複数の失敗したベクトル信号のオーバ
ーレイを表す一方で、
図8及び9は合格したベクトル信号だけを表す。
【0051】
好ましくは、本願でいう試験測定装置はオシロスコープである。しかし、試験測定装置は、任意のアナログのリアルタイム信号観測装置としても良い。
【0052】
図示した実施形態を参照しながら本発明の原理を説明してきたが、こうした原理から離れることなく、図示した実施形態の構成や詳細を変更したり、望ましい形態に組み合わせても良いことが理解できよう。