(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ターゲットを石英で覆ったプラズマスパッタリング装置に、端面から光を出射する構成を有する半導体発光素子を保持し、前記プラズマスパッタリング装置にて前記端面にプラズマを照射してクリーニングするクリーニング工程と、
前記クリーニングした半導体発光素子を大気に対して暴露しないように成膜装置に搬送し、前記成膜装置にて、前記クリーニングした端面に誘電体膜を形成する誘電体膜形成工程と、
を含むことを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
ターゲットを酸化アルミニウムで覆ったプラズマスパッタリング装置に、端面から光を出射する構成を有する半導体発光素子を保持し、前記プラズマスパッタリング装置にて前記端面にプラズマを照射してクリーニングするクリーニング工程と、
前記クリーニングした半導体発光素子を大気に対して暴露しないように成膜装置に搬送し、前記成膜装置にて、前記クリーニングした端面に誘電体膜を形成する誘電体膜形成工程と、
を含むことを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
窒化アルミニウムにて、プラズマの経路の内壁面の少なくとも一部を構成しおよびターゲットを覆ったプラズマスパッタリング装置に、端面から光を出射する構成を有する半導体発光素子を保持し、前記プラズマスパッタリング装置にて前記端面にプラズマを照射してクリーニングするクリーニング工程と、
前記半導体発光素子を大気に対して暴露しないように成膜装置に搬送し、前記成膜装置にて、前記クリーニングした端面に誘電体膜を形成する誘電体膜形成工程と、
を含むことを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ECRスパッタリング装置において、ターゲットに高周波バイアス電圧を印加しない状態でプラズマを発生させてクリーニングを行う場合にも、たとえば誘電体膜の剥離の原因となるなど、半導体レーザ素子の信頼性を保証するには適していないことが見い出された。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、信頼性の高い半導体レーザ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、ターゲットを石英で覆ったプラズマスパッタリング装置に、端面から光を出射する構成を有する半導体発光素子を保持し、前記プラズマスパッタリング装置にて前記端面にプラズマを照射してクリーニングするクリーニング工程と、前記クリーニングした半導体発光素子を大気に対して暴露しないように成膜装置に搬送し、前記成膜装置にて、前記クリーニングした端面に誘電体膜を形成する誘電体膜形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、石英で、プラズマ経路の内壁の少なくとも一部を構成する、またはプラズマ経路の内壁面の少なくとも一部を覆う、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、石英で、前記内壁の40%以上を構成する、または前記内壁の40%以上を覆う、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、石英で、前記内壁の60%以上を構成する、または前記内壁の60%以上を覆う、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、石英で、前記内壁の100%を構成する、または前記内壁の100%を覆う、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、ターゲットを酸化アルミニウムで覆ったプラズマスパッタリング装置に、端面から光を出射する構成を有する半導体発光素子を保持し、前記プラズマスパッタリング装置にて前記端面にプラズマを照射してクリーニングするクリーニング工程と、前記クリーニングした半導体発光素子を大気に対して暴露しないように成膜装置に搬送し、前記成膜装置にて、前記クリーニングした端面に誘電体膜を形成する誘電体膜形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、酸化アルミニウムで、プラズマ経路の内壁の少なくとも一部を構成する、またはプラズマ経路の内壁面の少なくとも一部を覆う、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、酸化アルミニウムで、前記内壁の40%以上を構成する、または前記内壁の40%以上を覆う、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、酸化アルミニウムで、前記内壁の60%以上を構成する、または前記内壁の60%以上を覆う、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、酸化アルミニウムで、前記内壁の100%を構成する、または前記内壁の100%を覆う、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、窒化アルミニウムにて、プラズマの経路の内壁面の少なくとも一部を構成する、またはプラズマ経路の内壁の少なくとも一部を覆ったプラズマスパッタリング装置に、端面から光を出射する構成を有する半導体発光素子を保持し、前記プラズマスパッタリング装置にて前記端面にプラズマを照射してクリーニングするクリーニング工程と、前記半導体発光素子を大気に対して暴露しないように成膜装置に搬送し、前記成膜装置にて、前記クリーニングした端面に誘電体膜を形成する誘電体膜形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、窒化アルミニウムで、前記内壁の40%以上を構成する、または前記内壁の40%以上を覆う、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、窒化アルミニウムで、前記内壁の60%以上を構成する、または前記内壁の60%以上を覆う、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、窒化アルミニウムで、前記内壁の100%を構成する、または前記内壁の100%を覆う、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、所定の元素を含む部材にて、プラズマの経路の少なくとも一部を構成しおよびターゲットを覆ったプラズマスパッタリング装置に、端面から光を出射する構成を有する半導体発光素子を保持し、前記プラズマスパッタリング装置にて前記端面にプラズマを照射してクリーニングするクリーニング工程と、前記半導体発光素子を大気に対して暴露しないように成膜装置に搬送し、前記成膜装置にて、前記クリーニングした端面に、前記所定の元素を構成元素とする誘電体膜を形成する誘電体膜形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、前記クリーニング工程の前に、成膜装置にて前記端面に薄膜酸化膜を形成する薄膜酸化膜形成工程をさらに含み、前記薄膜酸化膜を形成した半導体発光素子を大気に対して暴露しないように前記プラズマスパッタリング装置に搬送し、前記薄膜酸化膜を介して前記端面に前記クリーニング工程を行い、前記誘電体膜形成工程は、前記薄膜酸化膜の表面に前記誘電体膜を形成することを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、前記薄膜酸化膜の厚さは0.1nm以上30nm以下の範囲であることを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、前記薄膜酸化膜の厚さは0.3nm以上かつ4nmより薄い範囲であり、前記クリーニング工程を60秒以上行うことを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、前記薄膜酸化膜は、ストイキオメトリーの組成より酸素が少ない組成を有することを特徴とする。
【0025】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、前記薄膜酸化膜は、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タンタルおよび酸化ジルコニウムから選択される一種を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、前記プラズマは水素プラズマであり、前記クリーニング工程と前記誘電体膜形成工程との間に、水素以外のプラズマを前記クリーニングした端面に照射するプラズマ照射工程を行うことを特徴とする。
【0027】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、前記プラズマは水素プラズマであり、前記クリーニング工程と前記誘電体膜形成工程との間に、前記クリーニングした半導体発光素子を所定の温度以上に保持する高温保持工程を行うことを特徴とする。
【0028】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、少なくともターゲットを誘電体で覆ったプラズマスパッタリング装置に、端面から光を出射する構成を有する半導体発光素子を保持し、前記プラズマスパッタリング装置にて前記端面にプラズマを照射してクリーニングするクリーニング工程と、前記半導体発光素子を大気に対して暴露しないように成膜装置に搬送し、前記成膜装置にて、前記クリーニングした端面に、ターゲットの構成元素を共通の構成元素として含む別種の誘電体膜が積層して構成された誘電体多層膜を形成する誘電体膜形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0029】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、チャンバ内壁が誘電体で構成されたプラズマクリーニング装置に、端面から光を出射する構成を有する半導体発光素子を保持し、前記プラズマクリーニング装置にて前記端面にプラズマを照射してクリーニングするクリーニング工程と、前記クリーニングした半導体発光素子を大気に対して暴露しないように半導体成膜装置に搬送し、前記成膜装置にて、前記クリーニングした端面に半導体層を形成する半導体層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0030】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、前記半導体発光素子はIFVD法により前記端面に窓構造が形成されたものであることを特徴とする。
【0031】
本発明の一態様に係る半導体レーザ素子の製造方法は、イオントラップが取り付けられた装置によってプラズマを照射して前記端面をクリーニングする工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、信頼性の高い半導体レーザ素子を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、図面を参照して本発明に係る半導体レーザ素子の製造方法の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0035】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の製造方法に用いる処理装置の模式図である。この処理装置100は、半導体発光素子の端面に反射膜や反射防止膜として機能する誘電体膜を形成して半導体レーザ素子とするための装置であって、半導体発光素子の端面をクリーニングするクリーニング装置10と、クリーニングした半導体発光素子の端面に誘電体膜を形成する成膜装置20と、クリーニング装置10と成膜装置20との間で半導体発光素子を搬送する搬送機構30と、クリーニング装置10および成膜装置20のための共有の真空チャンバ101と、を備える。真空チャンバ101には、ガス導入口、および、真空チャンバ101内のガスを排出して真空状態を実現、維持するためのガス排出口が設けられている。
【0036】
クリーニング装置10は、石英からなるプラズマ室12と、プラズマ室12に接続された導波管13と、プラズマ室12の外周を取り囲むように配置された磁場コイル14と、ターゲット15と、石英からなる防着管16と、ターゲット15の表面を覆う石英からなるカバー17と、を備える。
【0037】
同様に、成膜装置20は、石英からなるプラズマ室22と、プラズマ室22に接続された導波管23と、プラズマ室22の外周を取り囲むように配置された磁場コイル24と、形成する誘電体膜の構成元素で構成されたターゲット25と、ステンレス鋼材からなる防着管26と、を備える。
【0038】
また、クリーニング装置10と成膜装置20との導波管13、23は、マイクロ波発生装置に接続されている。また、クリーニング装置10と成膜装置20とのターゲット15、25は、高周波(Radio Frequency、RF)電源PSに接続されている。
【0039】
すなわち、クリーニング装置10と成膜装置20とは、基本的にはいずれもECRスパッタリング装置の構成を有しているが、クリーニング装置10は、ターゲット15の表面が石英からなるカバー17で覆われている点と、防着管16が石英からなる点とが、成膜装置20とは異なる。
【0040】
また、搬送機構30は、円盤状のプレート31と、プレート31の中心に連結した回転軸32と、回転軸32に接続された電動モータなどの駆動装置と、を備えている。プレート31は共有の真空チャンバ101内でクリーニング装置10および成膜装置20の上側に位置している。搬送機構30は、クリーニングおよび成膜すべき試料(バー素子BE)を設置したトレーをプレート31にはめ込み、駆動装置により回転軸32を回転させてプレート31を回転させることで、クリーニング装置10と成膜装置20との間でバー素子BEを大気に対して暴露させることなく搬送できるように構成されている。
【0041】
つぎに、バー素子BEについて説明する。
図2は、半導体レーザ素子の製造についての説明図である。まず、たとえばn型のガリウムヒ素(GaAs)からなる基板Sの表面((001)面)に、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、MOCVD)法等の公知の方法で半導体層をエピタキシャル成長し、フォトリソグラフィ技術およびエッチングを用いて、所定の導波路構造を作製し、さらに電極や誘電体保護膜等を形成して、半導体発光素子Eを多数形成する。
【0042】
つづいて、基板Sを劈開して、複数の半導体発光素子Eが一次元状に連結したバー素子BEを作製する。ここで、各半導体発光素子Eの光導波路は矢印Yの方向に延伸している。したがって、バー素子BEの対向する端面BE1、BE2は光導波路の両端面となっており、半導体発光素子Eは端面BE1、BE2から光を出射する構成となる。
【0043】
大気中で基板Sを劈開してバー素子BEを作製すると、端面BE1、BE2に厚さがたとえば数nm程度の自然酸化膜等の不必要な膜の形成が一般的に知られている。
【0044】
つづいて、バー素子BEの端面BE1、BE2にそれぞれ誘電体膜RC1、RC2を形成する。これにより、半導体発光素子Eに光共振器構造が形成され、半導体レーザ素子となる。たとえば、誘電体膜RC1は、出射すべきレーザ光の波長における反射率がたとえば0.1〜5%、好ましくは0.5〜2%、具体的には1%程度となるように、その構成材料の屈折率に応じて膜厚が調整され、反射防止膜として機能する。一方、誘電体膜RC2は、その構成材料の屈折率に応じて膜厚が調整される。具体的には、出射すべきレーザ光の波長における反射率がたとえば80%以上、好ましくは90%以上、具体的には98%程度の反射率となるように調整され、高反射膜として機能する。
【0045】
つづいて、バー素子BEを個々の半導体レーザ素子LEに切り分ける。以上の説明した工程を経て、シングルエミッタ素子としての半導体レーザ素子LEが製造される。半導体レーザ素子LEは主に誘電体膜RC1側からレーザ光を出射する。
【0046】
つぎに、処理装置100を用いた端面BE1、BE2のクリーニングおよび誘電体膜RC1、RC2の形成について説明する。
【0047】
まず、バー素子BEを設置したトレーをプレート31にはめ込み、
図1に示すように、バー素子BEを、実線で示す位置、すなわちクリーニング装置10側に配置する。
【0048】
つづいて、クリーニング工程を行う。このクリーニング工程では、はじめに、ガス供給口からガスを供給し、マイクロ波電源からマイクロ波W1を発生させるとともに磁場コイル14から磁場を発生させる。すると、電子サイクロトロン共鳴により、供給したガスからプラズマP1が生成する。ここで、このクリーニング工程は、ターゲット15に電圧を印加しない状態で行う。生成したプラズマP1は、バー素子BEの端面BE1に照射される。これにより、端面BE1に形成された不要な膜が除去される。このとき照射されるプラズマP1のエネルギーは、10〜25eVであり、半導体へのダメージを抑えながら、自然酸化膜も除去できる好適なエネルギーレベルである。自然酸化膜が端面BE1に形成されたままで端面BE1に誘電体膜RC1を形成すると、半導体レーザ素子の信頼性が低下するので、クリーニング工程によって自然酸化膜を除去することが好適である。
【0049】
クリーニング工程におけるプラズマは、たとえば、水素(H
2)、硫化水素(H
2S)、塩化水素(HCl)、塩素(Cl
2)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、窒素(N
2)から選択される少なくとも一種を含むガスから生成されるものである。このガスとしては、還元性ガスが好適であるが、水素ガスがより好ましい。水素とアルゴンとの混合ガスのような混合ガスから生成されるプラズマであれば、クリーニングにおいて還元効果とメカニカルな酸化膜除去の効果の両方が期待でき効果的である。また、プラズマの構成要素として、イオンよりもラジカルの割合が多い状態がさらに好ましい。ラジカルの割合が多い状態は、例えば、イオントラップ装置をクリーニング装置内に取り付けることによって作り出すことができる。
【0050】
ここで、クリーニング装置10では、石英からなるカバー17によりターゲット15の表面が覆われているので、ターゲット材料からなる意図しない付着物が端面BE1に付着することが防止され、信頼性の高い半導体レーザ素子を実現するのに適する。さらに、クリーニング装置10では、プラズマP1の経路となるプラズマ室12、カバー17、および防着管16の全てが石英からなるので、より好ましい。
【0051】
つづいて、誘電体膜形成工程を行う。まず、搬送機構30にて、クリーニングしたバー素子BEを、大気に対して暴露しないようにして、
図1に破線で示す位置、すなわち成膜装置20に搬送する。
【0052】
つづいて、例として、誘電体膜が酸化物の場合、真空チャンバ101のガス供給口からアルゴン(Ar)ガスと酸素(O2)ガスを供給し、マイクロ波電源からマイクロ波W2を発生させるとともに磁場コイル24から磁場を発生させる。すると、プラズマP2が生成する。ここで、RF電源PSによりターゲット25にRFバイアス電圧を印加しておくことで、ターゲット25がプラズマP2によりスパッタされ、ターゲット25の構成材料の粒子PA1が飛散し、酸素と反応して所望の誘電体材料となって端面BE1に到達し、誘電体膜RC1が形成される。
【0053】
成膜装置20のターゲット25は、たとえばアルミニウム(Al)で構成される。酸素ガスとアルゴンガスが供給されると、誘電体膜RC1は酸化アルミニウムで構成される。なお、ターゲット25は、シリコン(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、またはジルコニウム(Zr)などでもよい。ターゲット25がシリコン、チタン、タンタル、またはジルコニウムの場合、誘電体膜RC1は酸化シリコン、酸化チタン、酸化タンタル、または酸化ジルコニウムで構成される。なお、ターゲット25がシリコン、またはアルミニウムの場合、真空チャンバ101のガス供給口から窒素ガスとアルゴンガスを供給すると、誘電体膜RC1は窒化シリコン、または窒化アルミニウムで構成される。真空チャンバ101のガス供給口からアルゴンガスのみを供給すると、誘電体膜RC1はアモルファスシリコンで構成される。
【0054】
誘電体膜RC1の形成後、バー素子BEを処理装置100から取り出し、上記と同様の手順で端面BE2のクリーニングおよび誘電体膜RC2の形成を行う。これにより、バー素子BEから信頼性の高い半導体レーザ素子LEを得ることができる。
【0055】
なお、クリーニング装置10のように石英からなるカバー17によりターゲット15の表面が覆われている場合でも、クリーニング工程において、石英が端面BE1に付着する場合がある。この場合は、石英が含む元素であるシリコンでターゲット25を構成し、誘電体膜RC1を、シリコンを構成元素とするたとえば酸化シリコン、窒化シリコン、アモルファスシリコンとするのがより好ましい。これにより、付着物と誘電体膜とが同一の構成元素を含むこととなり両者の相性がよくなるので、付着物に起因する誘電体膜RC1の剥離の可能性が低下するなどし、信頼性が向上する。
【0056】
ここで、ターゲットの表面をカバーで覆わず、かつターゲットにRFバイアス電圧を印加しない状態でプラズマを発生させて半導体発光素子の端面のクリーニングを行う場合の現象について詳述する。
【0057】
(実験1、2)
本発明者らは、実験1として以下の実験を行った。まず、
図1に示す成膜装置20の構成を有しかつアルミニウムからなるターゲットを備えた成膜装置を用いて、ターゲットにRFバイアス電圧を印加しない状態でプラズマを発生させて、GaAs基板の表面をクリーニングし、つづいて、
図1に示す成膜装置20の構成を有しかつシリコンからなるターゲットを備えた成膜装置を用いて、ターゲットにRFバイアス電圧を印加した状態でプラズマを発生させて、クリーニングしたGaAs基板の表面にアモルファスシリコン膜を形成した。すなわち本実験1では、半導体レーザ素子の端面に相当するものとして、GaAs基板の表面をクリーニングおよび成膜の対象としている。
【0058】
なお、クリーニング時、ガスとしてアルゴンガスを供給した。アモルファスシリコン膜を形成したGaAs基板の表面の組成をオージェ電子分光(AES:Auger Electron Spectroscopy)によって分析した。AESの分析は、基板表面のスパッタリングを行いながら深さ方向の信号を測定することで行った。
さらに、本発明者らは、実験2として、クリーニングを実施しない以外は実験1と同様の条件で実験を行った。
【0059】
クリーニング実施の場合、GaAs基板とアモルファスシリコン膜との界面には大量のアルミニウムが存在していた。更にアルミニウムと共に酸素も検出され、クリーニングによって除去したかった酸素が、クリーニング不実施の実験2の時よりも増えていた。この状態ではGaAs基板の表面がクリーニングされているとは言えず、好ましくない。
【0060】
(実験3、4)
本発明者らは、実験3として以下の実験を行った。
図1に示すクリーニング装置10の構成を有するクリーニング装置を用いて、ターゲットにRFバイアス電圧を印加しない状態でプラズマを発生させて、GaAs基板の表面をクリーニングし、つづいて、
図1に示す成膜装置20の構成を有しかつアルミニウムからなるターゲットを備えた成膜装置を用いて、ターゲットにRFバイアス電圧を印加した状態でプラズマを発生させて、クリーニングしたGaAs基板の表面に酸化アルミニウム膜を形成する実験を行った。
【0061】
なお、クリーニング時は、ガスとして水素ガスを供給した(以下、水素プラズマを用いたクリーニングを水素クリーニングと記載する)。酸化アルミニウム膜を形成したGaAs基板の表面の、Ga2p
3/2軌道に関連する電子状態をX線光電分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)によって分析した。なお、実用的な半導体レーザ素子の場合、端面に形成する酸化アルミニウム膜の膜厚は例えば酸化アルミニウムの単層膜で100nm以上であるが、本実験ではXPS分析のために4nmと薄くした。
さらに、本発明者らは、実験4として、水素クリーニングを実施しない以外は実験3と同様の条件で実験を行った。
【0062】
水素クリーニング不実施の場合は、Ga2p
3/2軌道によるGa−O結合(すなわち、ガリウム原子と酸素原子との共有結合)を示すピーク信号が検出されたが、水素クリーニング実施の場合はGa−O結合を示すピーク信号はほとんど検出されなかった。実験3、4の結果により、クリーニング装置のターゲットを覆った状態で水素クリーニングを実施した場合は、GaAs基板の表面(酸化アルミニウム膜との界面)にGa−O結合が存在しないと考えられること、すなわち、水素クリーニングによって自然酸化膜が除去され、かつ水素クリーニング後では酸化アルミニウム膜を形成してもGaAs基板の表面が酸化されないと考えられることが、本実験で初めてわかった。このように、自然酸化膜が除去され、かつ誘電体膜を形成しても半導体の表面(半導体レーザ素子の端面に相当)が酸化されなければ、半導体レーザ素子の信頼性は高くなる。
なお、従来は、半導体表面に膜を形成する際、窒化アルミニウム膜などの非酸化膜を形成する場合は、半導体表面は酸化されないが、酸化アルミニウム膜などの酸化膜を形成する場合は半導体表面が酸化されると考えられてきた。
【0063】
(実験5、6)
本発明者らは、実験5として、ガスとしてアルゴンガスを用いたアルゴンクリーニングを実施した以外は実験3と同様の条件で実験を行った。さらに、本発明者らは、実験6として、アルゴンクリーニングを実施しない以外は実験5と同様の条件で実験を行った。
【0064】
実験3、4の場合と同様に、アルゴンクリーニング不実施の場合はGa−O結合を示すピーク信号が検出されたが、アルゴンクリーニング実施の場合は、Ga−O結合を示すピーク信号はほとんど検出されなかった。実験5、6の結果は、ターゲット15を覆った状態でアルゴンクリーニングを実施した場合は、アルゴンクリーニングによって自然酸化膜が除去され、かつアルゴンクリーニング後では酸化アルミニウム膜を形成してもGaAs基板の表面が酸化されないことを示すと考えられる。
【0065】
(実施形態2)
つぎに、実施形態2について説明する。実施形態2に係る製造方法に用いる処理装置は、
図1に示す処理装置100において、クリーニング装置10を以下に説明するクリーニング装置に置き換えたものである。
【0066】
図3は、実施形態2の製造方法に用いる処理装置におけるクリーニング装置の模式図である。クリーニング装置10Aは、クリーニング装置10の構成において、プラズマ室12、防着管16、およびカバー17を、それぞれプラズマ室12A、防着管16A、およびカバー17Aに置き換えたものである。
【0067】
プラズマ室12A、防着管16A、およびカバー17Aは、いずれも酸化アルミニウムからなるものである。したがって、クリーニング装置10Aを用いた場合、クリーニング装置10を用いた場合と同様に、信頼性の高い半導体レーザ素子を実現するのに適する。さらに、プラズマP1の経路となるプラズマ室12A、カバー17A、防着管16Aの全てが酸化アルミニウムからなるので、より好ましい。
【0068】
さらに、上述したように、ターゲットのカバーを含めたプラズマの経路を構成している石英がスパッタされる場合があるが、酸化アルミニウムの場合は石英よりもスパッタされる程度が低いので、付着物の発生を抑制する点からより好ましい。なお、プラズマの経路とは、例えば、プラズマ室12Aからプレート31に至るまでのプラズマが移動する場所全てで、言い換えるとプラズマが存在する領域のことである。
【0069】
なお、クリーニング装置10Aのように酸化アルミニウムからなる防着管16A、カバー17Aを備える場合、クリーニング工程において、酸化アルミニウムが端面BE1にわずかに付着する場合がある。この場合は、酸化アルミニウムが含む元素であるアルミニウムでターゲット25を構成し、形成する誘電体膜を、アルミニウムを構成元素とするたとえば酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムとするのが好ましい。これにより、付着物と誘電体膜とは同一の構成元素を含むこととなり両者の相性がよくなるので、付着物に起因する誘電体膜の剥離の可能性が低下などし、信頼性が向上する。また、実施形態2の変形例として、プラズマ室、防着管、カバーを酸化チタンで構成してもよい、この場合、形成する誘電体膜は、チタンを構成元素とするたとえば酸化チタンとするのが好ましい。
【0070】
図1において、成膜装置20では、プラズマ室22の底面からバー素子BEまでのプラズマ経路の内壁の39%が石英で構成されている。ここでいう内壁とは、プラズマの経路を決めている装置内壁であり、例えば、
図1の場合は、プラズマ室22、ターゲット25、防着管26のBEに向かう垂直方向の内壁のことである。プラズマ経路に対する割合を議論するため、プラズマ室22の底面などは考慮に入れない。また、
図1の防着管26とBEとの間のような空間も考慮に入れない。装置クリーニング装置10において、プラズマ室12の底面からバー素子BEまでのプラズマ経路の内壁の60%から100%が石英で構成されていた装置において、クリーニングの効果が確認された。以上から、プラズマ経路の内壁の40%以上が石英で構成されていれば、好適である。プラズマ経路の内壁の60%以上が石英で構成されていれば、更に好ましい。プラズマ経路の内壁の100%が石英で構成されていれば、最も好ましい。同様に、
図3において、プラズマ室12Aの底面からバー素子BEまでのプラズマ経路の内壁の40%以上が酸化アルミニウムで構成されていれば、好適である。プラズマ経路の内壁の60%以上が酸化アルミニウムで構成されていれば、更に好ましい。プラズマ経路の内壁の100%が酸化アルミニウムで構成されていれば、最も好ましい。
【0071】
(実施形態3)
つぎに、実施形態3について説明する。以下では、まず誘電体膜が剥離する場合について詳述し、つぎに、誘電体膜の剥離を抑制するための実施形態3に係る製造方法について説明する。
【0072】
本発明者らが実験を多数回行い、その結果を精査したところ、水素クリーニングの後に誘電体膜を形成すると、誘電体膜が剥離しやすい場合があることが今回初めて分かった。
【0073】
つぎに、誘電体膜の剥離を抑制するための実施形態3に係る製造方法について説明する。実施形態3に係る製造方法には
図1に示す処理装置100を用いることができる。
【0074】
図4は、実施形態3の製造方法の説明図である。
図4に示すように、バー素子BEの端面BE1には自然酸化膜NOが形成されている。実施形態3の製造方法では、まず、搬送機構30によりバー素子BEを成膜装置20側に位置させ、成膜装置20にて端面BE1上に、薄膜酸化膜である誘電体膜RC1aを形成する薄膜酸化膜形成工程を行う。
【0075】
つづいて、誘電体膜RC1aを形成したバー素子BEを大気に対して暴露しないように、搬送機構30によりクリーニング装置10に搬送し、クリーニング装置10にて、誘電体膜RC1aを形成した端面BE1に誘電体膜RC1aを介して水素プラズマであるプラズマP1を照射する。これにより、自然酸化膜NOが除去される。自然酸化膜NOは、プラズマP1のエネルギーが、比較的薄い薄膜酸化膜である誘電体膜RC1aを介して誘電体膜RC1aと自然酸化膜NOとの界面に供給され、自然酸化膜NO中の酸素が誘電体膜RC1aにゲッタリングされる反応が促進されることにより、除去されると考えられる。このように誘電体膜RC1a形成後のプラズマ照射により自然酸化膜NOを除去できることは、本発明者らの検討によって今回初めて分かったことである。
【0076】
つづいて、端面BE1をクリーニングしたバー素子BEを大気に対して暴露しないように搬送機構30により成膜装置20に搬送し、成膜装置20にて端面BE1上に、反射率調整用誘電体膜である誘電体膜RC1bを形成する。誘電体膜RC1bは誘電体膜RC1aと同じ材質であることが、誘電体膜RC1bと誘電体膜RC1aとの密着性の観点からは好ましいが、異なっていてもよい。これにより、誘電体膜RC1aと誘電体膜RC1bとからなる誘電体膜RC1が形成される。誘電体膜RC1bは、比較的厚い誘電体膜であるが、プラズマクリーニングによって密着力が低下するおそれのある半導体表面ではなく、誘電体膜RC1aと接して形成されるため、剥離が抑制される。特に、水素クリーニングの場合、誘電体膜RC1aの上からプラズマを照射するため、半導体表面が水素終端されづらくなるので、剥離が抑制される。
【0077】
薄膜酸化膜である誘電体膜RC1aは酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タンタルおよび酸化ジルコニウムから選択される酸化物誘電体膜であることが好適である。界面酸素のゲッタリング効果の能力とプラズマに対する耐エッチング性から、酸化物誘電体膜の中でも酸化アルミニウム膜が最も好適である。誘電体膜RC1aが酸化アルミニウムからなる場合、ストイキオメトリーの組成であるAl
2O
3におけるAl組成よりも高いAl組成比(すなわち酸素が少ない組成)である酸化アルミニウムとすれば、プラズマを照射した際の界面酸素に対するゲッタリング効果が非常に顕著となり、特に好適であることが分かった。薄膜酸化膜が酸化シリコン、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウムの場合も同様にストイキオメトリーの組成よりもシリコン、チタン、タンタルまたはジルコニウムの組成比を高くする(すなわち酸素が少ない組成とする)ことが好適である。酸化シリコン、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウムのストイキオメトリーの組成はそれぞれ、SiO
2、TiO
2、Ta
2O
5、ZrO
2である。以上のようなストイキオメトリーの組成からずれた酸化膜であることは、ストイキオメトリーの酸化膜よりも屈折率が高いことで確認ができる。また、酸化物誘電体膜は、誘電体膜としての安定性が高く、長期間にわたって変質の問題がなく好適であり、半導体レーザ素子が出射するレーザ光に対して透過率が高い点でも好適である。
【0078】
なお、長期間にわたって安定な誘電体膜として、窒化膜もある。窒素を含むガスから生成されたプラズマを用いて成膜された窒化膜は、GaAsからなる基板を用いた半導体レーザ端面では非常に剥がれやすく、誘電体膜RC1aとして適さないことが本発明者らの検討によって分かった。一方、窒素を半導体中に含む例えばGaNなどの窒化物系半導体材料からなる半導体レーザ端面では、このような窒化膜の特異的な膜剥れは観察されない。
【0079】
薄膜酸化膜である誘電体膜RC1aの膜厚は、プラズマP1が透過できる程度の薄さであり、かつプラズマによるダメージの抑制や膜剥離抑制の効果が発揮され、製造再現性が良好な程度の厚さであることが好ましい。以上の観点からは、誘電体膜RC1aの膜厚は0.1nm以上30nm以下が好適である。
【0080】
また、半導体と誘電体膜RC1aとの界面状態を変化させることなく、自然酸化膜NO除去の効果をそのまま確認するには、XPS分析が適している。XPS分析は、その測定限界から、誘電体膜RC1aの膜厚が8nm以下の場合に適している。したがって、自然酸化膜NO除去の効果を確実に確認するには、誘電体膜RC1aの膜厚は、0.1nm以上8nm以下がさらに好ましい。
【0081】
好適な実施例の一例としては、クリーニング時は、ガスとして水素ガスを供給する。また、誘電体膜RC1aとしての酸化アルミニウム膜の膜厚を1nmとし、誘電体膜RC1bとしての酸化アルミニウム膜を膜厚138nmとする。なお、誘電体膜RC1bは、多層膜でも良い。
【0082】
なお、従来は、半導体表面に酸化物誘電体膜を形成すると、半導体が酸化されてしまうと考えられてきた。しかし、酸化物誘電体膜のゲッタリング効果と、比較的薄い酸化物誘電体膜である薄膜酸化膜形成後のプラズマクリーニングとの観点から、薄膜酸化膜を形成することが好適であることが今回初めて分かった。また、プラズマクリーニングによって一旦還元された半導体表面は安定しており、その後薄膜酸化膜上に酸化膜を成膜する際に酸化されないことが今回初めて分かった。
【0083】
(実験12、13)
本発明者らは、実験12として以下の実験を行った。
図1に示す成膜装置20の構成を有しかつアルミニウムからなるターゲットを備えた成膜装置を用いて、ターゲットにRFバイアス電圧を印加した状態でプラズマを発生させて、自然酸化膜が形成されたGaAs基板の表面に薄膜酸化膜としての酸化アルミニウム膜を形成し、つづいて、
図1に示すクリーニング装置10の構成を有するクリーニング装置を用いて、ターゲットにRFバイアス電圧を印加しない状態でプラズマを発生させて、酸化アルミニウム膜が形成されたGaAs基板をクリーニングし、つづいて、薄膜酸化膜を形成した成膜装置を用いて、ターゲットにRFバイアス電圧を印加した状態でプラズマを発生させて、薄膜酸化膜の上に反射率調整用誘電体膜である、酸化アルミニウム膜を形成する実験を行った。
【0084】
なお、クリーニング時は、ガスとして水素ガスを供給した。また酸化アルミニウム膜の総膜厚は4nmとしたが、まず薄膜酸化膜としての酸化アルミニウム膜の膜厚を0.3nm、1nm、4nmとし、その後、薄膜酸化膜が0.3nm、1nmの場合は、反射率調整用誘電体膜としての酸化アルミニウム膜を、総膜厚が4nmとなるように形成した。しかし、薄膜酸化膜が4nmの場合は、反射率調整用誘電体膜の成膜はしていない。これは、各条件の総膜厚を4nmに揃えることによって、XPS測定の精度を高めるためである。実際に半導体レーザとして適切な反射率にするためには、誘電体膜は、100nm程度の膜厚である必要がある。
さらに、本発明者らは、実験13として、薄膜酸化膜の成膜および水素クリーニングを実施しない以外は実験12と同様の条件で実験を行った。
【0085】
GaAs基板の表面の、Ga2p
3/2軌道に関連する電子状態をXPSによって分析した。
【0086】
薄膜酸化膜の膜厚が0.3nmと1nmの場合は、水素クリーニング不実施の場合と比較してGa−O結合を示すピーク信号はほとんど検出されなかった。この結果は、薄膜酸化膜上から水素クリーニングをすることで自然酸化膜が除去されていることを示すと考えられ、今回初めて実験で確認されたことである。一方、薄膜酸化膜の膜厚が4nmの場合は、水素クリーニング不実施の場合と同等のピーク信号が確認された。この理由を考察すると、石英からなるカバーでターゲットを覆っているので、クリーニング時に石英がスパッタされて1nm程度の厚さで付着していると考えられる。プラズマが、4nmの薄膜酸化膜と、1nm程度と予想される付着した石英と、の両方を透過し、界面の酸素を薄膜酸化膜にゲッタリングさせることが困難であったと推測される。以上の結果から、薄膜酸化膜はプラズマが透過できる程度の薄さとする必要がある。石英が意図せず付着する状況でも確実に自然酸化膜を除去するためには、薄膜酸化膜の膜厚は、0.1nm以上かつ4nmより薄いことが、最も好ましい。
また、以上のことから、薄膜酸化膜→クリーニング→反射率調整用誘電体膜という構成は、(実施形態1)または、(実施形態2)のようにターゲットを石英などで覆っている装置構成でないと意図しない付着物が更に多くなり、うまく酸化物除去の効果が発揮できないということが分かる。
【0087】
(実験14)
本発明者らは、実験14として以下の実験を行った。
図1に示す成膜装置20の構成を有しかつアルミニウムからなるターゲットを備えた成膜装置を用いて、ターゲットにRFバイアス電圧を印加した状態でプラズマを発生させて、自然酸化膜が形成されたGaAs系半導体発光素子のバー素子の表面に薄膜酸化膜としての酸化アルミニウム膜を形成し、つづいて、
図1に示すクリーニング装置10の構成を有するクリーニング装置を用いて、ターゲットにRFバイアス電圧を印加しない状態でプラズマを発生させて、酸化アルミニウム膜が形成されたバー素子の表面をクリーニングし、つづいて、成膜装置を用いて、ターゲットにRFバイアス電圧を印加した状態でプラズマを発生させて、クリーニングしたバー素子の表面に反射率調整用誘電体膜としての酸化アルミニウム膜を形成する実験を行った。
【0088】
なお、クリーニング時は、ガスとして水素ガスを供給した。クリーニング時間は30秒、60秒、75秒とした。また、酸化アルミニウム膜の膜厚については、まず薄膜酸化膜としての酸化アルミニウムの膜厚を0.3nm、1nm、4nmとし、その後、反射率調整用誘電体膜としての酸化アルミニウム膜を、膜厚138nmで形成した。その後、剥離試験として、酸化アルミニウム膜を形成したバー素子に熱衝撃試験を行い、その後酸化アルミニウム膜の状態を顕微鏡像により調べた。熱衝撃試験としては室温(約25℃)から約300℃までの温度サイクル試験を行った。
【0089】
図5は、酸化アルミニウム膜の剥離試験の結果を示す図である。横軸は水素クリーニングの時間を示し、縦軸は薄膜酸化膜としての酸化アルミニウム膜の膜厚を示す。
図5中、「〇」は酸化アルミニウム膜の剥がれが無いデータを示し、「×」は酸化アルミニウム膜の剥がれが有るデータを示す。破線は剥がれ有りと剥がれ無しとの境界を目安として示している。
【0090】
図5を見ると、薄膜酸化膜が厚く、クリーニング時間が長い方が膜剥がれが抑制されている。しかし薄膜酸化膜が厚すぎると、自然酸化膜除去の効果が薄れる。実験12,13と実験14の結果から、石英が意図せず付着する状況でも確実に自然酸化膜を除去し、膜が剥がれないためには、薄膜酸化膜の膜厚は、0.3nm以上かつ4nmより薄いことが、最も好ましく、且つクリーニングの時間は60秒以上が好ましい。
【0091】
(実験15、16)
本発明者らは、実験15、16として、クリーニング装置として
図3に示すクリーニング装置10Aの構成を有するクリーニング装置を用いて実験12、13と同様の実験を行った。
【0092】
なお、クリーニング時は、ガスとして水素ガスを供給した。また、酸化アルミニウム膜の総膜厚は4nmとしたが、まず薄膜酸化膜としての酸化アルミニウム膜の膜厚を0.3nm、1nm、4nmとし、その後、薄膜酸化膜が0.3nm、1nmの場合は、反射率調整用誘電体膜としての酸化アルミニウム膜を、総膜厚が4nmとなるように形成した。しかし、薄膜酸化膜が4nmの場合は、反射率調整用誘電体膜の成膜はしていない。これは、各条件の総膜厚を4nmに揃えることによって、XPS測定の精度を高めるためである。
【0093】
実験12、13の結果と比較すると、薄膜酸化膜である酸化アルミニウム膜の膜厚が4nmの場合も、Ga−O結合を示すピーク信号はほとんど検出されなかった。その理由は定かではないが、クリーニング装置において酸化アルミニウムからなるカバーでターゲットを覆っているため、カバーがスパッタされることがほとんどなく、その結果カバーに起因する付着物が無く、薄膜酸化膜の膜厚が4nmでもプラズマが透過できるからであると考えられる。
【0094】
別の理由として、プラズマエネルギーがクリーニング装置の内壁のスパッタに使われることなく、自然酸化膜除去に効率よく使われたため、実験12のような石英からなるカバーの場合よりも厚い4nmの薄膜酸化膜上からのプラズマ照射によっても、自然酸化膜が除去できたと考えられる。したがって、実験15の条件の場合は、薄膜酸化膜の膜厚は4nmよりも厚くても良く、プラズマが透過できる30nm以下が好適であり、8nm以下が更に好適である。
【0095】
なお、薄膜酸化膜の膜厚が0.3nmおよび1nmの場合は、プラズマクリーニング後の反射率調整用誘電体膜の成膜をしているが、反射率調整用誘電体膜の成膜をしていない膜厚4nmの場合のXPS分析結果と同様に、自然酸化膜が除去されている。つまり、プラズマクリーニングによる酸化膜除去が有効であり、その後の反射率調整用誘電体膜の成膜による影響は少なく、反射率調整用誘電体膜が酸化膜であっても、半導体が酸化されていないことが、この結果からも分かる。逆に、薄膜酸化膜が4nmの場合は、反射率調整用誘電体膜の成膜はしていないことが、0.3nm、1nmの場合と異なるが、0.3nm、1nm、4nmのXPSの結果を同列に比較しても問題はないということも、これまでの説明から言える。
【0096】
(実施形態4)
つぎに、実施形態4に係る製造方法について説明する。実施形態4に係る製造方法には
図1に示す処理装置100を用いることができる。
【0097】
実施形態4に係る製造方法では、まず、クリーニング装置10に水素ガスを供給して、バー素子BEに対して水素クリーニングを行う。つぎに、真空チャンバ101内の水素ガスを排出した後、水素以外の元素からなるガスを供給して、プラズマを発生させ、水素クリーニングしたバー素子BEの端面にプラズマを照射するプラズマ照射工程を行う。これにより、バー素子BEの半導体表面に結合している水素を除去することができる。その後、バー素子BEを成膜装置20に搬送し、誘電体膜の形成を行う。クリーニングと誘電体膜形成との間にプラズマ照射工程を行うことにより、バー素子BEの半導体表面に密着性良く誘電体膜を形成することができる。
【0098】
プラズマ照射工程におけるプラズマ照射は、プラズマによるバー素子BEのダメージを抑制するために、水素終端を除去できる程度の短時間の照射とすることが好適である。さらに、使用するガスは、バー素子BEを構成する半導体と結合しづらい元素からなるガスを用いることが好ましい。このようなガスとして、希ガスであるアルゴンガスやキセノンガスが好適である。
【0099】
(実施形態5)
つぎに、実施形態5に係る製造方法について説明する。実施形態5に係る製造方法には、
図1に示す処理装置100において、クリーニング装置10に加熱装置(たとえばランプ加熱装置)を設けた装置を用いることができる。
【0100】
実施形態5に係る製造方法では、まず、クリーニング装置10に水素ガスを供給して、バー素子BEに対して水素クリーニングを行う。つぎに、バー素子BEを加熱装置により加熱し、所定の温度以上に保持する高温保持工程を行う。これにより、バー素子BEの半導体表面に結合している水素を離脱させることができる。その後、バー素子BEを成膜装置20に搬送し、誘電体膜の形成を行う。このように、クリーニングと誘電体膜形成との間に高温保持工程を行うことにより、バー素子BEの半導体表面に密着性良く誘電体膜を形成することができる。
【0101】
高温保持工程における保持温度は、バー素子BEの半導体表面に結合している水素を離脱させることができ、かつ半導体の成長温度よりも低い温度とするが、たとえば100℃〜400℃が好適である。
【0102】
(実施形態6)
つぎに、実施形態6について説明する。実施形態6に係る製造方法に用いる装置としては、実施形態1または2に係る製造方法に用いる処理装置を用いることができるが、以下では実施形態2に係る製造方法に用いる処理装置を用いる場合について説明する。
【0103】
実施形態6に係る製造方法では、はじめに、クリーニング装置10Aにてバー素子BEの端面BE1に対してプラズマP1を照射してクリーニング工程を行う。つづいて、バー素子BEを成膜装置20に搬送し、誘電体膜形成工程を行う。このとき形成する誘電体膜は、成膜装置20のターゲット25の構成元素を共通の構成元素として含む別種の誘電体膜が積層して構成された誘電体多層膜である。たとえば、ターゲット25の構成元素がアルミニウムである場合、誘電体多層膜はアルミニウムを共通の構成元素として含む酸化アルミニウム膜と窒化アルミニウム膜とが積層して構成されたものである。
【0104】
半導体発光素子の端面に形成する誘電体膜として誘電体多層膜を利用することにより、単層では実現できない低反射率を実現することができる。しかしながら、誘電体多層膜として、たとえば、酸化アルミニウム膜と窒化シリコン膜とで構成される多層膜を形成しようとすると、成膜装置においてアルミニウムとシリコンの2つの別のターゲットが必要である。このように別種のターゲットを使う場合、初めに或る種のターゲットを備える成膜装置で誘電体膜を形成した後に、一旦真空を破り、別種のターゲットを備える別の成膜装置を使う必要があったり、同一装置内にもう1つのECR源が必要になったりするなど、装置が大型複雑化する場合がある。
【0105】
好適な誘電体多層膜の一例として、半導体発光素子の端面に膜厚90nmの酸化アルミニウム膜と膜厚30nmの窒化アルミニウム膜とをこの順に積層した誘電体多層膜がある。このような誘電体多層膜であれば、波長976nmにおいて1.0%の反射率を実現することができる。なお、酸化アルミニウム膜の単層では、波長976nmにおいて1.6%程度の反射率が下限であるが、上記のように多層膜とすることによって、より低反射率を実現できる。
【0106】
なお、成膜装置20において1種のターゲットで別種の誘電体膜を形成するには、真空チャンバ101のガス供給口から供給するガス種を変更すればよい。たとえば、ターゲットがアルミニウムからなる場合、酸素ガスを供給することによって酸化アルミニウム膜を形成でき、窒素ガスを供給することにより窒化アルミニウム膜を形成することができる。
【0107】
(実施形態7)
つぎに、実施形態7について説明する。半導体発光素子の端面に、セレン化亜鉛(ZnSe)などの、バンドギャップ波長が所望のレーザ発振波長よりも短い半導体膜を成膜する技術が、信頼性向上技術の1つとして知られている。このような技術は、EMOF(Epitaxial Mirror on Facet)などと呼ばれている。本発明者らの鋭意検討によれば、EMOFを行う前にも、端面に形成された自然酸化膜を除去しないと、形成する半導体膜(EMOF膜)内に積層欠陥が発生し、意図した信頼性の向上効果が得られないという課題があることが初めて分かった。実施形態7の製造方法は、上記課題を好適に解決できるものである。
【0108】
図6は、実施形態7の製造方法に用いる処理装置の模式図である。この処理装置200は、ロードロック40と、トランスファーチャンバ50と、クリーニング装置60と、半導体成膜装置70とを備える。
【0109】
ロードロック40は半導体発光素子のバー素子を処理装置200内に導入するためのものである。トランスファーチャンバ50は導入されたバー素子を大気に対して暴露させることなくロードロック40、クリーニング装置60および半導体成膜装置70の相互の間を搬送する搬送機構を備えたチャンバである。クリーニング装置60はチャンバ内壁が誘電体で構成されるプラズマクリーニング装置である。半導体成膜装置70はMBE(Molecular Beam Epitaxy)装置である。
【0110】
なお、従来、装置作製の容易さから、この種のプラズマクリーニング装置のチャンバ内壁は金属であった。しかし、内壁が金属であると水素プラズマが金属内部に侵入し、基底状態の水素となってしまい、水素クリーニングの効果を十分に発揮できないことが分かった。これに対して、クリーニング装置60はチャンバ内壁が誘電体で構成されるので、水素クリーニング効果を十分に発揮できる。チャンバ内壁を構成する誘電体はたとえば窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化シリコンなどが好適である。また、クリーニングに使用するプラズマは、たとえば、水素、硫化水素、塩化水素、塩素、アルゴン、キセノン、窒素から選択される少なくとも一種を含むガスから生成されるものである。このガスとしては、還元性ガスが好適であるが、水素ガスがより好ましい。プラズマの構成要素として、水素イオンよりも水素ラジカルが多い状態であればさらに好ましい。
【0111】
実施形態7の製造方法では、まず、ロードロック40からEMOF膜を形成するバー素子を導入する。トランスファーチャンバ50の搬送機構はバー素子をクリーニング装置60に搬送する。クリーニング装置60はプラズマを照射してバー素子の端面の自然酸化膜を除去し、クリーニングする。つづいて、トランスファーチャンバ50の搬送機構はバー素子を大気に対して暴露させることなく半導体成膜装置70に搬送する。半導体成膜装置70はクリーニングされた端面にEMOF膜を形成する。このように、半導体発光素子は大気に対して暴露されることなく連続的にEMOF膜が形成される。その後、バー素子はトランスファーチャンバ50を経由してロードロック40から搬出される。
【0112】
上記の各実施形態に係る製造方法によって製造される半導体レーザ素子は、導波モードがマルチモードでもよいし、シングルモードでもよい。また、半導体レーザ素子の形態も、
図2(d)に示すようにシングルエミッタ素子に切り分けた形態に限られず、
図2(c)に示すバー素子の形態でもよい。また、上記の各実施形態に係る製造方法によって製造される半導体レーザ素子の導波路構造は特に限定されない。良く知られた、リッジ導波路、埋め込みヘテロ(BH:Buried Heterostructure)構造、利得導波路などに適用可能である。
【0113】
また、上記の各実施形態に係る製造方法において、半導体発光素子は公知のIFVD(Impurity Free Vacancy Disordering)法により端面に窓構造が形成されたものでもよい。発振波長がおおよそ850〜1070nmの半導体レーザ素子では、量子井戸層がたとえばインジウムガリウムヒ素からなり、その周りのバリア層はたとえばアルミニウムガリウムヒ素からなる。基板はGaAs基板であり、その上に導電型がn型のn−クラッド層、n−SCH(Separate Confinement Heterostructure)層、バリア層、量子井戸層、バリア層、導電型がp型のp−SCH層、p−クラッド層、p−コンタクト層などが積層される。そして、IFVD法によって、窓構造となった量子井戸層は、IFVD法によって窓構造となっていない量子井戸層よりも自然酸化されやすいということが、詳細な検討により明らかになった。半導体レーザ素子の光出力が低い場合は、このように自然酸化されたとしても、IFVDの効果で良好な信頼性を保つことができる。しかし、半導体レーザ素子の高出力化が進むにつれ、更なる信頼性が求められるようになってきた。そこで、IFVDによる窓構造を持つ半導体発光素子にプラズマクリーニングをして界面酸素を除去し、その後誘電体膜を形成して半導体レーザ素子を形成すると、信頼性向上にこれまで容易に想像できなかった大きな効果があることが分かった。なお、光出力については、導波モードがシングルモードの半導体レーザ素子では、500mWを越える光出力から、また導波モードがマルチモードの半導体レーザ素子では、5Wを越える光出力から、IFVD法とプラズマクリーニングとを組み合わせる効果が顕著となる。
【0114】
なお、上記実施形態2では、クリーニング装置10Aのプラズマ室12A、防着管16A、およびカバー17Aが、いずれも酸化アルミニウムからなるものであるが、プラズマ室12Aおよび防着管16Aの少なくとも一部が窒化アルミニウムからなっていてもよいし、プラズマ室、防着管、カバーなどの、プラズマの経路となる部分を、内壁表面が窒化アルミニウムでコーティングされている部材で構成してもよい。ただし、プラズマの経路となる部分を、窒化アルミニウム自体を成形した部材で構成することは、製造容易性や機械的強度を勘案すると必ずしも好ましくない。
【0115】
また、上記実施形態3では、誘電体膜RC1aと誘電体膜RC1bとを同一の成膜装置で形成しているが、誘電体膜RC1aと誘電体膜RC1bとを別個の成膜装置で形成してもよい。
【0116】
また、実施形態6では、1種のターゲットで別種の誘電体膜からなる多層膜を形成しているが、本発明の他の実施形態に係る製造方法を実施するにあたって、異種のターゲットを備える成膜装置を用いたり、異なる種類のターゲットを備える複数の成膜装置を用いたりすることは可能である。
【0117】
また、上記実施形態では、大気中で基板を劈開しているが、本発明は真空中で劈開した半導体発光素子端面にも、もちろん適用できる。また、上記実施形態におけるプラズマクリーニングは、半導体発光素子の主たる出射端面としての端面BE1側のみ行ってもよいし、端面BE1と後端面としての端面BE2の両方に行っても良い。両端面にプラズマクリーニングをした方が、信頼性が良好で好適である。後端面は一般的に高反射率とするため、厚い多層膜で形成される。例えば、出射端面の誘電体膜の膜厚が100nm程度であるのに対し、後端面の多層膜の膜厚は、1000nm程度となるのが一般的である。水素クリーニングをした端面は誘電体膜が剥がれやすいが、誘電体膜の膜厚が厚くなると更に剥がれやすくなる。そのため、特に水素クリーニングの場合には、膜厚が薄く、端面におけるCODが起こりやすい出射端面にのみ水素クリーニングをすると膜剥れ防止と信頼性向上の両立の観点から好適である。
【0118】
また、上記実施形態では、クリーニング装置10、10Aと成膜装置20とは、基本的にはいずれもECRスパッタリング装置の構成を有しているが、本発明の製造方法に適用できるクリーニング装置および成膜装置の構成は、ECRスパッタリング装置の構成に限定されず、高周波マグネトロンスパッタリング装置、プラズマCVD装置、ヘリコン波プラズマスパッタリング装置の構成を有していてもよい。
【0119】
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。