(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
出力するレーザ光の波長を可変とする波長可変光源部と、入射する前記レーザ光の波長に対して周期的に特性が変化する透過特性をそれぞれ有する第1の光フィルタ及び第2の光フィルタと、前記レーザ光を3つのレーザ光に分岐する光分岐部と、前記3つのレーザ光をそれぞれ導波する第1の光導波路、第2の光導波路、及び第3の光導波路と、前記第1の光導波路にて導波され、前記第1の光フィルタを透過した前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第1の受光素子と、前記第2の光導波路にて導波され、前記第2の光フィルタを透過した前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第2の受光素子と、前記第3の光導波路にて導波された前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第3の受光素子と、前記第1の光フィルタ、前記第2の光フィルタ、前記光分岐部、前記第1の光導波路、前記第2の光導波路、前記第3の光導波路、前記第1の受光素子、前記第2の受光素子、及び前記第3の受光素子の温度を調整する温度調節器とを備えた波長可変レーザ装置の波長制御方法であって、
前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタは、
温度依存性が互いに異なる前記透過特性をそれぞれ有し、
当該波長可変レーザ装置の波長制御方法は、
前記第1の受光素子及び前記第2の受光素子がそれぞれ取得したレーザ光の強度に基づいて、第1のモニタ値及び第2のモニタ値を算出するモニタ値算出ステップと、
レーザ光の目標波長にそれぞれ対応するとともに前記第1のモニタ値及び前記第2のモニタ値の目標となる第1の制御目標値及び第2の制御目標値を算出する目標値算出ステップと、
前記第1のモニタ値及び前記第1の制御目標値に基づいて、前記波長可変光源部から出力されるレーザ光の波長を制御する波長制御ステップと、
前記第2のモニタ値及び前記第2の制御目標値に基づいて、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタの温度の目標温度からのずれを判別し、当該ずれに応じて前記温度調節器の動作を制御し、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタの温度を制御する温度制御ステップとを備える
ことを特徴とする波長可変レーザ装置の波長制御方法。
出力するレーザ光の波長を可変とする波長可変光源部と、入射する前記レーザ光の波長に対して周期的に特性が変化する透過特性をそれぞれ有する第1の光フィルタ及び第2の光フィルタと、前記レーザ光を3つのレーザ光に分岐する光分岐部と、前記3つのレーザ光をそれぞれ導波する第1の光導波路、第2の光導波路、及び第3の光導波路と、前記第1の光導波路にて導波され、前記第1の光フィルタを透過した前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第1の受光素子と、前記第2の光導波路にて導波され、前記第2の光フィルタを透過した前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第2の受光素子と、前記第3の光導波路にて導波された前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第3の受光素子と、前記第1の光フィルタ、前記第2の光フィルタ、前記光分岐部、前記第1の光導波路、前記第2の光導波路、前記第3の光導波路、前記第1の受光素子、前記第2の受光素子、及び前記第3の受光素子の温度を調整する温度調節器とを備えた波長可変レーザ装置の波長制御方法であって、
前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタは、
温度依存性が互いに異なる前記透過特性をそれぞれ有し、
当該波長可変レーザ装置の波長制御方法は、
前記第1の受光素子及び前記第2の受光素子がそれぞれ取得したレーザ光の強度に基づいて、第1のモニタ値及び第2のモニタ値を算出するモニタ値算出ステップと、
レーザ光の目標波長にそれぞれ対応するとともに前記第1のモニタ値及び前記第2のモニタ値の目標となる第1の制御目標値及び第2の制御目標値を算出する目標値算出ステップと、
前記第2のモニタ値及び前記第2の制御目標値に基づいて、前記第1の制御目標値を補正して補正制御目標値を生成する目標値補正ステップと、
前記第1のモニタ値及び前記補正制御目標値に基づいて、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタの温度の目標温度からのずれを判別し、当該ずれに応じて前記波長可変光源部から出力されるレーザ光の波長を制御する波長制御ステップとを備える
ことを特徴とする波長可変レーザ装置の波長制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光フィルタの透過特性は、当該光フィルタの温度が基準温度からずれると、波長軸上で全体がシフトするものである。すなわち、光フィルタの温度が基準温度からずれているにも拘らず、当該基準温度での透過特性を用いて、レーザ光の目標波長に対応する制御目標値を設定した場合には、光フィルタの透過特性が基準温度での透過特性からシフトしているため、当該制御目標値は、レーザ光の目標波長に対応した値とはならない。このため、モニタ値が当該制御目標値に合致するように波長可変光源部の動作を制御すると、レーザ光の波長は、目標波長からずれた波長に制御されてしまう。
そこで、特許文献1に記載の波長可変レーザ装置では、温度制御装置によって、光フィルタの温度を一定に制御している。しかしながら、光フィルタの温度を一定に制御していても、波長可変レーザ装置内部の温度バラつきや、波長可変レーザ装置の外部からの熱流入等により、意図せずに光フィルタの温度が基準温度からずれてしまう場合がある。すなわち、レーザ光の波長を精度良く目標波長に制御することが難しい、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レーザ光の波長を精度良く目標波長に制御することができる波長可変レーザ装置、及び波長可変レーザ装置の波長制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る波長可変レーザ装置は、出力するレーザ光の波長を可変とする波長可変光源部と、入射する前記レーザ光の波長に対して周期的に特性が変化する透過特性をそれぞれ有する第1の光フィルタ及び第2の光フィルタと、
前記レーザ光を3つのレーザ光に分岐する光分岐部と、前記3つのレーザ光をそれぞれ導波する第1の光導波路、第2の光導波路、及び第3の光導波路と、前記第1の光導波路にて導波され、前記第1の光フィル
タを透過した前記レーザ光の強度
に応じた電気信号を出力する第1の受光素
子と、
前記第2の光導波路にて導波され、前記第2の光フィルタを透過した前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第2の受光素子と、前記第3の光導波路にて導波された前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第3の受光素子と、前記第1の光フィルタ、前記第2の光フィルタ、前記第1の光導波路、前記第2の光導波路、前記第3の光導波路、前記第1の受光素子、前記第2の受光素子、及び前記第3の受光素子の温度を調整する温度調節器と、前記波長可変光源部から出力されるレーザ光の波長を目標波長に制御する制御装置とを備え、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタは、温度依存性が互いに異なる前記透過特性をそれぞれ有
し、前記制御装置は、前記第3の受光素子から出力された電気信号の出力値に対する前記第1の受光素子から出力された電気信号の出力値の比率を第1のモニタ値として算出し、前記第3の受光素子から出力された電気信号の出力値に対する前記第2の受光素子から出力された電気信号の出力値の比率を第2のモニタ値として算出するとともに、前記第1のモニタ値と、前記第2のモニタ値と、レーザ光の目標波長にそれぞれ対応するとともに当該第1のモニタ値及び当該第2のモニタ値の目標となる第1の制御目標値及び第2の制御目標値とに基づいて、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタの温度の目標温度からのずれを判別し、当該ずれに応じて前記波長可変光源部から出力されるレーザ光の波長を制御することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る波長可変レーザ装置では、上記発明において
、前記制御装置は、
前記第1のモニタ値及び
前記第2のモニタ値を算出するモニタ値算出部と、
前記第1の制御目標値及び
前記第2の制御目標値を算出する目標値算出部と、前記第1のモニタ値及び前記第1の制御目標値に基づいて、前記波長可変光源部から出力されるレーザ光の波長を制御する波長制御部と、前記第2のモニタ値及び前記第2の制御目標値に基づいて、前記温度調節器の動作を制御し、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタの温度を制御する温度制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る波長可変レーザ装置では、上記発明において、前記制御装置は、
前記第1のモニタ値及び
前記第2のモニタ値を算出するモニタ値算出部と、
前記第1の制御目標値及び
前記第2の制御目標値を算出する目標値算出部と、前記第2のモニタ値及び前記第2の制御目標値に基づいて、前記第1の制御目標値を補正して補正制御目標値を生成する目標値補正部と、前記第1のモニタ値及び前記補正制御目標値に基づいて、前記波長可変光源部から出力されるレーザ光の波長を制御する波長制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る波長可変レーザ装置では、上記発明において、周囲温度を検出する温度セン
サをさらに備え、前記制御装置は、前記周囲温度に基づいて、前記温度調節器の動作を制御し、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタの温度を目標温度に制御する温度制御部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る波長可変レーザ装置では、上記発明において、前記温度調節器は、温度の調節対象が設置される設置面を有し、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタは、前記温度調節器の同一の前記設置面に設置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る波長可変レーザ装置では、上記発明において、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタは、導波路型の光フィルタであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る波長可変レーザ装置では、上記発明において、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタは、前記レーザ光を伝搬するコア及びクラッドを有し、当該コア及びクラッドの少なくとも一方にドーパントが添加され、当該添加するドーパントの種類及び添加量の少なくとも一方が互いに異なることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る波長可変レーザ装置では、上記発明において、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタは、平面光波回路でそれぞれ構成されているとともに、当該平面光波回路の厚み方向の層構成が互いに異なる熱膨張係数を有する材料で構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る波長可変レーザ装置の波長制御方法は、出力するレーザ光の波長を可変とする波長可変光源部と、入射する前記レーザ光の波長に対して周期的に特性が変化する透過特性をそれぞれ有する第1の光フィルタ及び第2の光フィルタと、
前記レーザ光を3つのレーザ光に分岐する光分岐部と、前記3つのレーザ光をそれぞれ導波する第1の光導波路、第2の光導波路、及び第3の光導波路と、前記第1の光導波路にて導波され、前記第1の光フィル
タを透過した前記レーザ光の強度
に応じた電気信号を出力する第1の受光素
子と、
前記第2の光導波路にて導波され、前記第2の光フィルタを透過した前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第2の受光素子と、前記第3の光導波路にて導波された前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第3の受光素子と、前記第1の光フィルタ
、前記第2の光フィルタ
、前記第1の光導波路、前記第2の光導波路、前記第3の光導波路、前記第1の受光素子、前記第2の受光素子、及び前記第3の受光素子の温度を調整する温度調節器とを備えた波長可変レーザ装置の波長制御方法であって、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタは、温度依存性が互いに異なる前記透過特性をそれぞれ有し、当該波長可変レーザ装置の波長制御方法は、前記第1の受光素子及び前記第2の受光素子がそれぞれ取得したレーザ光の強度に基づいて、第1のモニタ値及び第2のモニタ値を算出するモニタ値算出ステップと、レーザ光の目標波長にそれぞれ対応するとともに前記第1のモニタ値及び前記第2のモニタ値の目標となる第1の制御目標値及び第2の制御目標値を算出する目標値算出ステップと、前記第1のモニタ値及び前記第1の制御目標値に基づいて、前記波長可変光源部から出力されるレーザ光の波長を制御する波長制御ステップと、前記第2のモニタ値及び前記第2の制御目標値に基づいて、
前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタの温度の目標温度からのずれを判別し、当該ずれに応じて前記温度調節器の動作を制御し、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタの温度を制御する温度制御ステップとを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る波長可変レーザ装置の波長制御方法では、上記発明において、前記波長可変レーザ装置は、周囲温度を検出する温度センサをさらに備え、当該波長可変レーザ装置の波長制御方法は、前記波長制御ステップ及び前記温度制御ステップを実行する前に、前記周囲温度に基づいて、前記温度調節器の動作を制御し、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタの温度を
前記目標温度に制御する粗調ステップをさらに備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る波長可変レーザ装置の波長制御方法は、出力するレーザ光の波長を可変とする波長可変光源部と、入射する前記レーザ光の波長に対して周期的に特性が変化する透過特性をそれぞれ有する第1の光フィルタ及び第2の光フィルタと、
前記レーザ光を3つのレーザ光に分岐する光分岐部と、前記3つのレーザ光をそれぞれ導波する第1の光導波路、第2の光導波路、及び第3の光導波路と、前記第1の光導波路にて導波され、前記第1の光フィル
タを透過した前記レーザ光の強度
に応じた電気信号を出力する第1の受光素
子と、前記第2の光導波路にて導波され、前記第2の光フィルタを透過した前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第2の受光素子と、前記第3の光導波路にて導波された前記レーザ光の強度に応じた電気信号を出力する第3の受光素子と、前記第1の光フィルタ、前記第2の光フィルタ、前記第1の光導波路、前記第2の光導波路、前記第3の光導波路、前記第1の受光素子、前記第2の受光素子、及び前記第3の受光素子の温度を調整する温度調節器とを備えた波長可変レーザ装置の波長制御方法であって、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタは、温度依存性が互いに異なる前記透過特性をそれぞれ有し、当該波長可変レーザ装置の波長制御方法は、前記第1の受光素子及び前記第2の受光素子がそれぞれ取得したレーザ光の強度に基づいて、第1のモニタ値及び第2のモニタ値を算出するモニタ値算出ステップと、レーザ光の目標波長にそれぞれ対応するとともに前記第1のモニタ値及び前記第2のモニタ値の目標となる第1の制御目標値及び第2の制御目標値を算出する目標値算出ステップと、前記第2のモニタ値及び前記第2の制御目標値に基づいて、前記第1の制御目標値を補正して補正制御目標値を生成する目標値補正ステップと、前記第1のモニタ値及び前記補正制御目標値に基づいて、
前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタの温度の目標温度からのずれを判別し、当該ずれに応じて前記波長可変光源部から出力されるレーザ光の波長を制御する波長制御ステップとを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る波長可変レーザ装置の波長制御方法では、上記発明において、前記波長可変レーザ装置は、周囲温度を検出する温度セン
サをさらに備え、当該波長可変レーザ装置の波長制御方法は、前記目標値補正ステップを実行する前に、前記周囲温度に基づいて、前記温度調節器の動作を制御し、前記第1の光フィルタ及び前記第2の光フィルタの温度を
前記目標温度に制御する粗調ステップをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る波長可変レーザ装置、及び波長可変レーザ装置の波長制御方法によれば、レーザ光の波長を精度良く目標波長に制御することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、図中で適宜xyz座標軸を示し、これにより方向を説明する。
【0021】
(実施の形態1)
〔波長可変レーザ装置の概略構成〕
図1は、本実施の形態1に係る波長可変レーザ装置1の構成を示す図である。
波長可変レーザ装置1は、モジュール化された波長可変レーザモジュール2と、当該波長可変レーザモジュール2の動作を制御する制御装置3とを備える。
なお、
図1では、波長可変レーザモジュール2と制御装置3とを別体で構成しているが、当該各部材2,3を一体にモジュール化しても構わない。
【0022】
〔波長可変レーザモジュールの構成〕
波長可変レーザモジュール2は、制御装置3による制御の下、出力するレーザ光の波長を複数の波長のうちいずれか一波長のレーザ光に可変とし、当該一波長のレーザ光を出力する。この波長可変レーザモジュール2は、波長可変光源部4と、半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)5と、平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)6と、光検出部7と、温度センサ8と、温度調節器9とを備える。
【0023】
図2は、波長可変光源部4の構成を示す図である。
波長可変光源部4は、例えばバーニア効果を利用した波長可変レーザであり、制御装置3による制御の下、レーザ光L1を出力する。この波長可変光源部4は、出力するレーザ光L1の波長を可変とする光源部41と、制御装置3から供給される電力に応じて発熱する3つのマイクロヒータ421〜423を有し、光源部41を局所的に加熱することで、光源部41から出力されるレーザ光L1の波長を変更する波長可変部42とを備える。
【0024】
光源部41は、共通の基部B1上にそれぞれ形成された第1,第2の導波路部43,44を備える。ここで、基部B1は、例えばn型InPからなる。そして、基部B1の裏面には、例えばAuGeNiを含んで構成され、当該基部B1とオーミック接触するn側電極45が形成されている。
【0025】
第1の導波路部43は、埋め込み導波路構造を有している。この第1の導波路部43は、導波路部431と、半導体積層部432と、p側電極433とを備える。
導波路部431は、半導体積層部432内にz方向に延伸するように形成されている。
また、第1の導波路部43内には、利得部431aと、DBR(Distributed Bragg Reflector)型の回折格子層431bとが配置されている。
ここで、利得部431aは、InGaAsPからなる多重量子井戸構造と光閉じ込め層とを有する活性層である。また、回折格子層431bは、InGaAsPとInPとからなる標本化回折格子で構成されている。
【0026】
半導体積層部432は、InP系半導体層が積層して構成されており、導波路部431に対してクラッド部の機能等を備える。
p側電極433は、半導体積層部432上において、利得部431aに沿うように配置されている。なお、半導体積層部432上には、SiN保護膜(図示略)が形成されている。そして、p側電極433は、当該SiN保護膜に形成された開口部(図示略)を介して半導体積層部432に接触している。
ここで、マイクロヒータ421は、半導体積層部432のSiN保護膜上において、回折格子層431bに沿うように配置されている。そして、マイクロヒータ421は、制御装置3から供給される電力に応じて発熱し、回折格子層431bを加熱する。また、制御装置3がマイクロヒータ421に供給する電力を制御することによって回折格子層431bの温度が変化し、その屈折率が変化する。
【0027】
第2の導波路部44は、2分岐部441と、2つのアーム部442,443と、リング状導波路444とを備える。
2分岐部441は、1×2型の多モード干渉型(MMI)導波路441aを含む1×2型の分岐型導波路で構成され、2ポート側が2つのアーム部442,443のそれぞれに接続されるとともに1ポート側が第1の導波路部43側に接続されている。すなわち、2分岐部441により、2つのアーム部442,443は、その一端が統合され、回折格子層431bと光学的に結合される。
【0028】
アーム部442,443は、いずれもz方向に延伸し、リング状導波路444を挟むように配置されている。これらアーム部442,443は、リング状導波路444といずれも同一の結合係数κでリング状導波路444と光学的に結合している。κの値は、例えば0.2である。そして、アーム部442,443とリング状導波路444とは、リング共振器フィルタRF1を構成している。また、リング共振器フィルタRF1と2分岐部441とは、反射ミラーM1を構成している。
ここで、マイクロヒータ422は、リング状であり、リング状導波路444を覆うように形成されたSiN保護膜(図示略)上に配置されている。そして、マイクロヒータ422は、制御装置3から供給される電力に応じて発熱し、リング状導波路444を加熱する。また、制御装置3がマイクロヒータ422に供給する電力を制御することによってリング状導波路444の温度が変化し、その屈折率が変化する。
【0029】
上述した2分岐部441、アーム部442,443、及びリング状導波路444は、いずれも、InGaAsPからなる光導波層44aがInPからなるクラッド層によって挟まれたハイメサ導波路構造を有している。
ここで、マイクロヒータ423は、アーム部443の一部のSiN保護膜(図示略)上に配置されている。当該アーム部443のうちマイクロヒータ423の下方の領域は、光の位相を変化させる位相調整部445として機能する。そして、マイクロヒータ423は、制御装置3から供給される電力に応じて発熱し、位相調整部445を加熱する。また、制御装置3がマイクロヒータ423に供給する電力を制御することによって位相調整部445の温度が変化し、その屈折率が変化する。
【0030】
以上説明した第1,第2の導波路部43,44は、互いに光学的に接続された回折格子層431bと反射ミラーM1とにより構成される光共振器C1を構成している。また、利得部431aと位相調整部445とは、光共振器C1内に配置される。
【0031】
回折格子層431bは、略所定の波長間隔で略周期的な反射特性を有する第1の櫛状反射スペクトルを生成する。一方、リング共振器フィルタRF1は、略所定の波長間隔で略周期的な反射特性を有する第2の櫛状反射スペクトルを生成する。
ここで、第2の櫛状反射スペクトルは、第1の櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅よりも狭い半値全幅のピークを有し、第1の櫛状反射スペクトルの波長間隔とは異なる波長間隔で略周期的な反射特性を有する。但し、屈折率の波長分散を考慮すると、スペクトル成分は厳密には等波長間隔になっていないことに注意が必要である。
【0032】
各櫛状反射スペクトルの特性について例示すると、第1の櫛状反射スペクトルのピーク間の波長間隔(自由スペクトル領域:FSR)は、光の周波数で表すと373GHzである。また、各ピークの半値全幅は、光の周波数で表すと43GHzである。一方、第2の櫛状反射スペクトルのピーク間の波長間隔(FSR)は、光の周波数で表すと400GHzである。また、各ピークの半値全幅は、光の周波数で表すと25GHzである。すなわち、第2の櫛状反射スペクトルの各ピークの半値全幅(25GHz)は、第1の櫛状反射スペクトルの各ピークの半値全幅(43GHz)より狭い。
【0033】
波長可変光源部4では、レーザ発振を実現するために、第1の櫛状反射スペクトルのピークの一つと第2の櫛状反射スペクトルのピークの一つとを波長軸上で重ね合わせ可能に構成されている。このような重ね合わせは、マイクロヒータ421,422の少なくとも一つを用いて、マイクロヒータ421により回折格子層431bを加熱して熱光学効果によりその屈折率を変化させて第1の櫛状反射スペクトルを波長軸上で全体的に移動させて変化させる、及び、マイクロヒータ422によりリング状導波路444を加熱してその屈折率を変化させて第2の櫛状反射スペクトルを波長軸上で全体的に移動させて変化させる、の少なくともいずれか一つを行うことにより、実現することができる。
【0034】
一方、波長可変光源部4において、光共振器C1による共振器モードが存在する。そして、波長可変光源部4において、共振器モードの間隔(縦モード間隔)は、25GHz以下となるように光共振器C1の共振器長が設定されている。この設定の場合、光共振器C1の共振器長は、1800μm以上となり、発振するレーザ光の狭線幅化を期待することができる。なお、光共振器C1の共振器モードの波長は、マイクロヒータ423を用いて位相調整部445を加熱してその屈折率を変化させて共振器モードの波長を波長軸上で全体的に移動させることにより微調整することができる。すなわち、位相調整部445は、光共振器C1の光路長を能動的に制御するための部分である。
【0035】
波長可変光源部4は、制御装置3により、n側電極45及びp側電極433から利得部431aへ電流を注入し、利得部431aを発光させると、第1の櫛状反射スペクトルのスペクトル成分のピーク、第2の櫛状反射スペクトルのスペクトル成分のピーク、及び光共振器C1の共振器モードの一つが一致した波長、例えば1550nmでレーザ発振し、レーザ光L1を出力するように構成されている。
また、波長可変光源部4では、バーニア効果を利用してレーザ光L1の波長を変化させることができる。例えば、回折格子層431bをマイクロヒータ421で加熱すると、熱光学効果により回折格子層431bの屈折率が上昇し、回折格子層431bの第1の櫛状反射スペクトルは、全体的に長波側にシフトする。その結果、1550nm付近における第1の櫛状反射スペクトルのピークは、リング共振器フィルタRF1の第2の櫛状反射スペクトルのピークとの重なりが解かれ、長波側に存在する第2の櫛状反射スペクトルの別のピーク(例えば1556nm付近)に重なる。さらに、位相調整部445をチューニングして共振器モードを微調し、共振器モードの一つを二つの櫛状反射スペクトルに重ねることで、1556nm付近でのレーザ発振を実現することができる。すなわち、波長可変光源部4では、回折格子層431bに対するマイクロヒータ421とリング共振器フィルタRF1に対するマイクロヒータ422とにより第1,第2の櫛状反射スペクトルをそれぞれチューニングすることで粗調、位相調整部445に対するマイクロヒータ423により共振器長をチューニングすることで微調を行う波長可変動作が実現される。
【0036】
半導体光増幅器5は、具体的な図示は省略したが、第1の導波路部43と同様の材料及び構造からなる活性コア層を備える埋め込み導波路構造を有する。但し、回折格子層431bは設けられていない。この半導体光増幅器5は、空間結合光学系(図示略)により波長可変光源部4に対して光学的に結合している。そして、波長可変光源部4から出力されたレーザ光L1は、半導体光増幅器5に入力される。また、半導体光増幅器5は、レーザ光L1を増幅してレーザ光L2として出力する。なお、半導体光増幅器5は、基部B1上に、波長可変光源部4とモノリシックに構成されていてもよい。
【0037】
平面光波回路6は、空間結合光学系(図示略)によりアーム部442に光学的に結合している。そして、レーザ光L1と同様に波長可変光源部4におけるレーザ発振により発生したレーザ光L3の一部は、アーム部442を介して平面光波回路6に入力される。なお、レーザ光L3は、レーザ光L1の波長と同一の波長を有する。この平面光波回路6は、光分岐部61と、光導波路62と、リング共振器型光フィルタ63aを有する光導波路63と、リング共振器型光フィルタ64aを有する光導波路64とを備える。
【0038】
光分岐部61は、入力したレーザ光L3を3つのレーザ光L4〜L6に分岐する。
そして、光導波路62は、レーザ光L4を光検出部7における後述するPD(Photo Diode)71に導波する。また、光導波路63は、レーザ光L5を光検出部7における後述するPD72に導波する。さらに、光導波路64は、レーザ光L6を光検出部7における後述するPD73に導波する。
ここで、リング共振器型光フィルタ63a,64aは、入射する光の波長に対して周期的な透過特性をそれぞれ有し、当該透過特性に応じた透過率でレーザ光L5,L6をそれぞれ選択的に透過する。そして、リング共振器型光フィルタ63a,64aを透過したレーザ光L5,L6は、PD72,73にそれぞれ入力する。すなわち、リング共振器型光フィルタ63a,64aは、導波路型の光フィルタでそれぞれ構成され、本発明に係る第1,第2の光フィルタに相当する。以下では、説明の便宜上、リング共振器型光フィルタ63aを第1の光フィルタ63aと記載し、リング共振器型光フィルタ64aを第2の光フィルタ64aと記載する。
なお、第1,第2の光フィルタ63a,64aは、基準温度(目標温度)において、位相差が略「0」となる同一の透過特性を有する。また、第1,第2の光フィルタ63a,64aは、コア材に水晶または石英が用いられ、コア及びクラッドの少なくとも一方にドーパントが添加され、当該添加するドーパントの種類及び添加量の少なくとも一方が異なることによって、温度依存性が互いに異なる透過特性をそれぞれ有する。また、熱膨張係数のそれぞれ異なる材料を光フィルタに付加することで、温度依存性が互いに異なる透過特性をそれぞれ有するようにしてもよい。例えば、第1,第2の光フィルタ63a,64aを、複数の層を重ねるように構成された平面光波回路とし、当該平面光波回路の厚み方向(複数の層が重なる方向)の層構成を、光フィルタ毎に異なる熱膨張係数を有する材料で構成する。これにより、光共振器部に温度に依存した歪応力が発生することとなり、温度依存性が互いに異なる透過特性をそれぞれ有するものとなる。当該温度依存性が互いに異なる点については、後述する透過特性情報の説明と併せて説明する。
【0039】
光検出部7は、PD71〜73を備える。
PD71は、レーザ光L4(波長可変光源部4から出力されたレーザ光L1と同一)を受光し、当該レーザ光L4の強度に応じた電気信号を制御装置3に出力する。
PD72は、第1の光フィルタ63aを透過したレーザ光L5を受光し、当該レーザ光L5の強度に応じた電気信号を制御装置3に出力する。すなわち、PD72は、本発明に係る第1の受光素子に相当する。
PD73は、第2の光フィルタ64aを透過したレーザ光L6を受光し、当該レーザ光L6の強度に応じた電気信号を制御装置3に出力する。すなわち、PD73は、本発明に係る第2の受光素子に相当する。
そして、PD71〜73からそれぞれ出力された電気信号は、制御装置3による波長ロック制御(波長可変光源部4から出力されるレーザ光L1を目標波長にするための制御)に用いられる。
【0040】
温度センサ8は、例えばサーミスタ等で構成され、平面光波回路6の周囲温度を検出する。なお、温度センサ8としては、温度調節器9の外部に設置し、波長可変レーザ装置1が配置される環境の温度を周囲温度として検出しても構わない。
温度調節器9は、例えばペルチェ素子を含むTEC(Thermo Electric Cooler)等で構成されている。この温度調節器9には、波長可変光源部4、半導体光増幅器5、平面光波回路6、光検出部7、及び温度センサ8が載置される。そして、温度調節器9は、供給された電力に応じて当該各部材4〜8の温度を調節する。
なお、温度調節器9において、当該各部材4〜8が載置される設置面91を波長可変光源部4及び半導体光増幅器5が載置される第1の領域Ar1と、平面光波回路6及び光検出部7が載置される第2の領域Ar2の2つの領域に区画した場合には、温度センサ8は、第2の領域Ar2に載置される。すなわち、温度センサ8は、平面光波回路6に近接して配置されている。
【0041】
〔制御装置の構成〕
次に、制御装置3の構成について説明する。
図3は、制御装置3の構成を示すブロック図である。
制御装置3は、例えばユーザインターフェースを備えた上位の制御装置(図示略)と接続されており、当該上位の制御装置を介したユーザからの指示にしたがって、波長可変レーザモジュール2の動作を制御する。
なお、以下では、本発明の要部である制御装置3による波長ロック制御を主に説明する。また、
図3では、説明の便宜上、制御装置3の構成として、波長ロック制御を実行する構成のみを図示している。
この制御装置3は、制御部31と、記憶部32とを備える。
【0042】
制御部31は、CPU等を用いて構成されている。この制御部31は、モニタ値算出部311と、目標値算出部312と、波長制御部313と、温度制御部314とを備える。
モニタ値算出部311は、PD71〜73からそれぞれ出力された電気信号の出力値に基づいて、レーザ光L1の波長を制御するための第1,第2のモニタ値を算出する。具体的に、モニタ値算出部311は、PD71から出力された電気信号の出力値に対するPD72から出力された電気信号の出力値の比率を第1のモニタ値(以下、第1のPD比と記載)として算出する。また、モニタ値算出部311は、PD71から出力された電気信号の出力値に対するPD73から出力された電気信号の出力値の比率を第2のモニタ値(以下、第2のPD比と記載)として算出する。
【0043】
目標値算出部312は、上位の制御装置(図示略)から取得した目標波長と、記憶部32に記憶された透過特性情報とに基づいて、第1のPD比の目標となる第1の制御目標値と、第2のPD比の目標となる第2の制御目標値とを算出する。
図4及び
図5は、記憶部32に記憶された透過特性情報を示す図である。なお、
図5では、横軸を波長とし、縦軸をPD比としている。
透過特性情報は、基準温度(目標温度)での第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過特性を示す情報である。より具体的に、透過特性情報は、複数の波長λ1〜λn[nm]と、基準温度(目標温度)において、レーザ光L1の波長を当該波長λ1〜λn[nm]にそれぞれ設定した場合でのPD71から出力された電気信号の出力値に対するPD72(PD73)から出力された電気信号の出力値の比率である各第1のPD比(各第2のPD比)の参照値となる複数の制御参照値Pd1〜Pdnとがそれぞれ関連付けられた情報である。なお、第1,第2のPD比は、第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過率にそれぞれ略比例する。このため、透過特性情報は、第1,第2の光フィルタ63a,64aにおける基準温度(目標温度)での透過特性(
図6の曲線CL)を示している。
【0044】
ここで、第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過特性は、上述したように、温度依存性が互いに異なる。
具体的に、第1の光フィルタ63aの透過特性(曲線CL)は、当該第1の光フィルタ63aの温度が基準温度(目標温度)からずれると、
図5に曲線CL1´で示すように、波長軸上で全体が短波側または長波側にシフトする。同様に、第2の光フィルタ64aの透過特性(曲線CL)は、当該第2の光フィルタ64aの温度が基準温度(目標温度)からずれると、
図5に曲線CL2´で示すように、波長軸上で全体が短波側または長波側にシフトする。なお、
図5では、長波側にシフトした状態を例示している。そして、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度が基準温度から同一の温度だけずれた場合には、当該第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過特性は、波長軸上で異なるシフト量でそれぞれシフトする。すなわち、「温度依存性が互いに異なる透過特性」とは、「第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度が基準温度から同一の温度だけずれた場合に波長軸上でのシフト量が互いに異なる透過特性」を意味する。
【0045】
なお、本実施の形態1では、温度調節器9における同一の設置面91に第1,第2の光フィルタ63a,64aを近接して載置し、かつ、第1,第2の光フィルタ63a,64aを導波型の光フィルタで構成している。これにより、第1の光フィルタ63aにおける基準温度(目標温度)からずれる温度ΔT(基準温度(目標温度)と第1の光フィルタ63aの温度との差)と第2の光フィルタ64aにおける基準温度(目標温度)からずれる温度ΔT(基準温度(目標温度)と第2の光フィルタ64aの温度との差)とは、互いに常時、略同一となる(ΔT=0℃も含む)。
【0046】
波長制御部313は、上位の制御装置(図示略)から取得した目標波長と、記憶部32に記憶された波長電力情報と、第1の制御目標値と、第1のPD比とに基づいて、マイクロヒータ421〜423にそれぞれ供給する複数の電力を変化させ、レーザ光L1の波長を目標波長に制御する。
図6は、記憶部32に記憶された波長電力情報を示す図である。
波長電力情報は、複数の波長λ1〜λn[nm]と、レーザ光L1の波長を当該波長λ1〜λn[nm]に制御するためにマイクロヒータ421〜423にそれぞれ供給する複数の電力(初期電力)とがそれぞれ関連付けられた情報である。なお、
図6では、説明の便宜上、マイクロヒータ421〜423にそれぞれ供給する総電力を各電力P1〜Pn[W]として記載している。
【0047】
温度制御部314は、温度調節器9の動作を制御し、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度を制御する。
記憶部32は、制御部31にて実行されるプログラムや、制御部31の処理に必要な情報(例えば、透過特性情報及び波長電力情報等)等を記憶する。
【0048】
〔波長制御方法〕
次に、上述した制御装置3による波長制御方法(波長ロック制御)について説明する。
図7は、制御装置3による波長制御方法を示すフローチャートである。
先ず、波長制御部313は、ユーザインターフェースを介して上位の制御装置(図示略)に入力された目標波長を当該上位の制御装置から取得する(ステップS1)。
ステップS1の後、目標値算出部312は、記憶部32に記憶された透過特性情報を参照し、第1,第2の制御目標値を算出する(ステップS2:目標値算出ステップ)。具体的に、目標値算出部312は、記憶部32に記憶された透過特性情報を読み出す。そして、目標値算出部312は、当該透過特性情報における複数の制御参照値Pd1〜Pdnのうち、ステップS1にて取得された目標波長(例えば波長λ1)に関連付けられた制御参照値(例えば制御参照値Pd1)を第1,第2の制御目標値として算出する。
【0049】
ステップS2の後、波長制御部313は、記憶部32に記憶された波長電力情報を参照し、ステップS1にて取得された目標波長に関連付けられた各電力(初期電力)をマイクロヒータ421〜423にそれぞれ供給する(ステップS3)。
ステップS3の後、温度制御部314は、温度センサ8にて検出された周囲温度に基づいて、温度調節器9の動作を制御し、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度を目標温度(基準温度)に制御する(ステップS4:粗調ステップ)。例えば、温度制御部314は、温度センサ8にて検出された周囲温度、及びステップS3にてマイクロヒータ421〜423に供給されている総電力(波長電力情報において、各電力P1〜Pn[W]のうち、ステップS1にて取得された目標波長に関連付けられた電力)等に基づいて、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度を推定する。そして、温度制御部314は、当該推定した第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度が目標温度(基準温度)となるように温度調節器9の動作を制御する。なお、温度制御部314は、温度センサ8にて検出された周囲温度自体が目標温度(基準温度)となるように温度調節器9の動作を制御しても構わない。
【0050】
ステップS4の後、モニタ値算出部311は、PD71から出力された電気信号の出力値に対するPD72から出力された電気信号の出力値の比率である第1のPD比とPD71から出力された電気信号の出力値に対するPD73から出力された電気信号の出力値の比率である第2のPD比との算出を開始する(ステップS5:モニタ値算出ステップ)。
ステップS5の後、波長制御部313は、ステップS2にて算出された第1の制御目標値に対してステップS5以降に算出された最新の第1のPD比が合致するように、マイクロヒータ421〜423にそれぞれ供給する電力を変化させる波長調整制御を実行する(ステップS6:波長制御ステップ)。
【0051】
ステップS6の後、温度制御部314は、ステップS5以降に算出された最新の第2のPD比とステップS2にて算出された第2の制御目標値とが同一であるか否かを判断する(ステップS7)。
第2のPD比と第2の制御目標値とが同一であると判断された場合(ステップS7:Yes)には、制御装置3は、波長ロック制御を終了する。
一方、第2のPD比と第2の制御目標値とが同一ではないと判断した場合(ステップS7:No)には、温度制御部314は、第2の制御目標値に対して第2のPD比が合致するように、温度調節器9に供給する電力を変化させる(第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度を変化させる)温度制御を実行する(ステップS8:温度制御ステップ)。この後、制御装置3は、ステップS6に戻り、波長調整制御を実行する。
【0052】
図8は、波長制御方法を説明する図である。具体的に、
図8は、
図5に対応した図であって、透過特性情報を曲線CLで示している。また、ステップS7にて「No」と判断された状態での第1の光フィルタ63aの透過特性を曲線CL1´で示し、当該状態での第2の光フィルタ64aの透過特性を曲線CL2´で示している。
第1の光フィルタ63aの温度が基準温度(目標温度)からずれると、当該第1の光フィルタ63aの透過特性は、波長軸上で全体がシフト(曲線CLから曲線CL1´にシフト)する。すなわち、ステップS6において、第1の光フィルタ63aの温度が基準温度(目標温度)からずれて当該第1の光フィルタ63aの透過特性が曲線CL1´になっているにも拘らず、透過特性情報(曲線CL)における目標波長TWに関連付けられた制御参照値を第1の制御目標値PDTとして波長調整制御を実行した場合には、レーザ光L1の波長は、目標波長TWからずれた波長TW´に制御されてしまう。
【0053】
そこで、本実施の形態1では、ステップS7において、第2のPD比と第2の制御目標値とを比較することにより、第1の光フィルタ63aの透過特性が基準温度(目標温度)での透過特性からシフトしているか否か(第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度が基準温度(目標温度)からずれているか否か)を確認する。
具体的に、第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過特性は、上述したように、温度依存性が互いに異なる。このため、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度が基準温度(目標温度)からずれ、第1の光フィルタ63aの透過特性が基準温度(目標温度)での透過特性からシフトしている場合(曲線CLから曲線CL1´にシフトしている場合)には、第2の光フィルタ64aの透過特性は、曲線CLから曲線CL1´へのシフト量とは異なるシフト量だけシフトする(曲線CLから曲線CL2´にシフトする)。すなわち、当該場合には、第2のPD比は、透過特性情報(曲線CL)における目標波長TWに関連付けられた制御参照値である第2の制御目標値PDTではなく、ずれた波長TW´と曲線CL2´とから導き出されるPD比PDT2となる。そして、ステップS8において、第2の制御目標値PDTに対して第2のPD比が合致するように温度制御を実行することにより、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度を基準温度(目標温度)に合致させ、第1の光フィルタ63aの透過特性を曲線CL1´から基準温度(目標温度)での曲線CLに戻す(
図8の矢印参照)。この後、ステップS6において、第1の制御目標値PDTを用いて波長調整制御を改めて実行することにより、レーザ光L1の波長は、波長TW´から目標波長TWに制御される。
【0054】
なお、特許文献1に記載の波長可変レーザ装置では、本実施の形態1に係る波長可変レーザ装置1と同様に、光フィルタを2つ用いている。しかしながら、当該2つの光フィルタは、同一の材料で構成されているため、同一の温度依存性を有する。すなわち、一方の光フィルタの透過特性が基準温度(目標温度)での透過特性からシフトした場合には、他方の光フィルタの透過特性も同一のシフト量でシフトする。このため、2つの光フィルタの温度が基準温度(目標温度)からずれ、他方の光フィルタの透過特性がシフトしたとしても、当該他方の光フィルタを透過したレーザ光の強度に応じたPD比は、レーザ光の目標波長に対応するとともに当該PD比の目標となる制御目標値と略同一の値を維持する。したがって、特許文献1に記載の波長可変レーザ装置では、他方の光フィルタを透過したレーザ光の強度に応じたPD比とレーザ光の目標波長に対応するとともに当該PD比の目標となる制御目標値とを比較しても、一方の光フィルタにおける透過特性が基準温度(目標温度)での透過特性からシフトしたこと(2つの光フィルタの温度が基準温度(目標温度)からずれたこと)を認識することができない。
【0055】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態1に係る波長可変レーザ装置1では、第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過特性は、温度依存性が互いに異なる。このため、目標波長TWに対応した第1の制御目標値PDTと第1のPD比とに基づいて波長調整制御(ステップS6)を実行している際に、目標波長TWに対応した第2の制御目標値PDTと第2のPD比とを比較することにより、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度が基準温度(目標温度)からずれているか否かを判別することができる。また、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度が基準温度(目標温度)からずれている場合には、第2の制御目標値PDTに対して第2のPD比が合致するように温度制御(ステップS8)を実行することにより、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度を基準温度(目標温度)に合致させることができる。そして、第1の制御目標値PDTを用いて波長調整制御(ステップS6)を改めて実行することにより、レーザ光L1の波長を精度良く目標波長TWに制御することができる。
【0056】
また、本実施の形態1に係る波長可変レーザ装置1では、ステップS6〜S8の前に、温度センサ8にて検出された周囲温度に基づいて、温度調節器9の動作を制御し、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度を目標温度(基準温度)に制御する(ステップS4)。このため、ステップS4を実行することにより第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度を目標温度(基準温度)に粗調整し、ステップS6〜S8を実行することにより第1,第2の温度を目標温度(基準温度)に微調整することができる。すなわち、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度を効率的に目標温度(基準温度)に合致させることができる。
【0057】
また、本実施の形態1に係る波長可変レーザ装置1では、第1,第2の光フィルタ63a,64aは、温度調節器9の同一の設置面91に近接して設置される。また、第1,第2の光フィルタ63a,64aは、導波路型の光フィルタである。すなわち、厚み寸法の小さい平面的な第1,第2の光フィルタ63a,64aを温度調節器9の同一の設置面91に近接して設置することにより、第1の光フィルタ63aにおける基準温度(目標温度)からずれる温度ΔTと第2の光フィルタ64aにおける基準温度(目標温度)からずれる温度ΔTとを互いに常時、略同一に設定することができる。
特に、第1,第2の光フィルタ63a,64aは、コア材に水晶または石英が用いられ、コア及びクラッドの少なくとも一方にドーパントが添加され、当該添加するドーパントの種類及び添加量の少なくとも一方が異なる。このため、第1,第2の光フィルタ63a,64aにおける透過特性の温度依存性を互いに異なるものとしつつ、コアとクラッドとの比屈折率差Δを大きくし、小型化を図ることができる。
【0058】
(実施の形態2)
次に、本実施の形態2について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図9は、本実施の形態2に係る制御装置3Aの構成を示すブロック図である。
図10は、制御装置3Aによる波長制御方法を示すフローチャートである。
本実施の形態2に係る波長可変レーザ装置1Aでは、上述した実施の形態1で説明した波長可変レーザ装置1に対して、制御装置3とは異なる手法で波長ロック制御を実行する制御装置3Aを採用している。
制御装置3Aでは、上述した実施の形態1で説明した制御装置3に対して、波長制御部313及び温度制御部314の機能、及び記憶部32に記憶する情報を異なるものとしている。以下では、説明の便宜上、本実施の形態2に係る制御部(波長制御部及び温度制御部)及び記憶部をそれぞれ制御部31A(波長制御部313A及び温度制御部314A)及び記憶部32Aとする。
【0059】
記憶部32Aは、制御部31Aにて実行されるプログラムや、制御部31Aの処理に必要な情報等を記憶する。なお、記憶部32Aは、制御部31Aの処理に必要な情報として、上述した実施の形態1で説明した透過特性情報及び波長電力情報の他、スロープ情報と、温度依存性情報とを記憶する。
スロープ情報は、第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過特性(曲線CL(
図11参照))において、不感帯を除く上限値UL(
図11参照)及び下限値LL(
図11参照)間の範囲内(以下、スロープ部分と記載)での波長の変動量に対する第1,第2のPD比の変動量の比率(スロープ部分の傾き)を示す情報である。なお、「不感帯」とは、第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過特性(曲線CL)において、山または谷に相当する部分であって、波長の変動量に対する第1,第2のPD比の変動量が小さい部分を意味する。
温度依存性情報は、第1,第2の光フィルタ63a,64aにおける透過特性の温度依存性の関係を示す情報である。具体的に、温度依存性情報は、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度が基準温度(目標温度)からずれた場合において、第1の光フィルタ63aの透過特性における波長のシフト量Δλ1(
図11参照)に対する第2の光フィルタ64aの透過特性における波長のシフト量Δλ2(
図11参照)の比率(例えば2倍等)を示す情報である。
【0060】
制御部31Aでは、上述した実施の形態1で説明した制御部31に対して、波長制御部313及び温度制御部314とは異なる機能を有する波長制御部313A及び温度制御部314Aを採用しているとともに、目標値補正部315の機能を追加している。
以下、波長制御部313A、温度制御部314A、及び目標値補正部315の機能について、
図10を参照しつつ説明する。
【0061】
制御装置3Aによる波長制御方法では、
図10に示すように、上述した実施の形態1で説明した波長制御方法(
図7)に対して、ステップS6〜S8の代わりにステップS6A〜S8Aが採用されている点が異なる。すなわち、本実施の形態2に係る温度制御部314Aは、上述した実施の形態1で説明した温度制御部314に対して、ステップS4のみを実行する点が異なる。以下では、ステップS6A〜S8Aのみを説明する。
【0062】
ステップS6A(波長制御ステップ)は、ステップS5の後に実行される。
具体的に、波長制御部313Aは、1回目のループ(ステップS6A〜S8Aのループ)では、ステップS6Aにおいて、上述した実施の形態1で説明したステップS6と同様に、ステップS2にて算出された第1の制御目標値に対してステップS5以降に算出された最新の第1のPD比が合致するように波長調整制御を実行する。また、波長制御部313Aは、2回目以降のループ(ステップS6A〜S8Aのループ)では、ステップS6Aにおいて、後述するステップS8Aにて生成された補正制御目標値に対してステップS5以降に算出された最新の第1のPD比が合致するように波長調整制御を実行する。
【0063】
ステップS6Aの後、目標値補正部315は、上述した実施の形態1で説明したステップS7と同様に、ステップS5以降に算出された最新の第2のPD比とステップS2にて算出された第2の制御目標値とが同一であるか否かを判断する(ステップS7A)。
第2のPD比と第2の制御目標値とが同一であると判断された場合(ステップS7A:Yes)には、制御装置3Aは、波長ロック制御を終了する。
【0064】
一方、第2のPD比と第2の制御目標値とが同一ではないと判断した場合(ステップS7A:No)には、目標値補正部315は、ステップS2にて算出された第1の制御目標値を補正して補正制御目標値を生成する(ステップS8A:目標値補正ステップ)。
具体的に、目標値補正部315は、記憶部32Aに記憶された透過特性情報及び温度依存性情報と、ステップS5以降に算出された最新の第1のPD比PDT(
図11参照)と、ステップS5以降に算出された最新の第2のPD比PDT2(
図11参照)とに基づいて、所定の演算により、第1の光フィルタ63aの透過特性における波長のシフト量Δλ1(レーザ光L1の目標波長TWからの波長のシフト量(
図11参照))を算出する。また、目標値補正部315は、当該波長のシフト量Δλ1と、記憶部32Aに記憶されたスロープ情報とに基づいて、ステップS2にて算出された第1の制御目標値PDTを補正するための補正値CV(
図11参照)を算出する。そして、目標値補正部315は、当該補正値CVをステップS2にて算出された第1の制御目標値PDTに加算して補正制御目標値PDT´(
図11参照)を生成する。
この後、制御装置3Aは、ステップS6Aに戻る。
【0065】
図11は、波長制御方法を説明する図である。具体的に、
図11は、
図5に対応した図であって、透過特性情報を曲線CLで示している。また、ステップS7Aにて「No」と判断された状態での第1の光フィルタ63aの透過特性を曲線CL1´で示し、当該状態での第2の光フィルタ64aの透過特性を曲線CL2´で示している。
上述した実施の形態1では、制御装置3は、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度が基準温度(目標温度)からずれ、第1の光フィルタ63aの透過特性が曲線CLから曲線CL1´にシフトした場合に、第2のPD比PDT2及び第2の制御目標値PDTを用いて温度制御(ステップS8)を実行していた。すなわち、制御装置3は、当該温度制御により第1の光フィルタ63aの透過特性を基準温度(目標温度)での曲線CLに戻し、当該曲線CLを用いて波長調整制御(ステップS6)を実行していた。
これに対して本実施の形態2では、制御装置3Aは、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度が基準温度(目標温度)からずれ、第1の光フィルタ63aの透過特性が曲線CLから曲線CL1´にシフトした場合に、当該シフトした曲線CL1´を用いて波長調整制御(ステップS6A)を実行する。すなわち、制御装置3Aは、透過特性情報、温度依存性情報、及び最新の第1,第2のPD比PDT,PDT2から波長のシフト量Δλ1を算出するとともに、当該波長のシフト量Δλ1及びスロープ情報から補正値CVを算出し、当該補正値CVにより第1の制御目標値PDTを補正して補正制御目標値PDT´を生成する(ステップS8A)。そして、制御装置3Aは、当該補正制御目標値PDT´を用いて波長調整制御(ステップS6A)を実行する。これにより、レーザ光L1の波長は、目標波長TWに制御される。
【0066】
以上説明した本実施の形態2のようにシフトした曲線CL1´を用いて波長調整制御を実行した場合であっても、上述した実施の形態1と同様の効果を奏する。
なお、本実施の形態2においては、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度が基準温度(目標温度)からずれることでシフトした透過特性を用いて波長調整制御を実行するため、例えば第1,第2の光フィルタ63a,64aが基準温度(目標温度)から大きくずれ、温度調整が困難となる場合であってもレーザ光L1の波長を目標波長TWに制御することができる。また、上述した実施の形態1においては、ステップS8において第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度を制御するため、当該温度変化が収束するまでの時間はこれらの時定数に左右されるが、本実施の形態2においては第1の制御目標値PDTを補正する制御を行うため、上述の時定数の影響を低減することができる。このため、レーザ光L1の波長が目標波長TWに収束するのに必要な時間を短縮することができる。
【0067】
(その他の実施形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態1,2によってのみ限定されるべきものではない。
図12は、本実施の形態1,2の変形例を示す図である。
上述した実施の形態1,2では、第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過特性は、基準温度(目標温度)において、位相差が略「0」となるように設計されていたが、これに限らない。第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過特性における温度依存性が互いに異なっていれば、基準温度(目標温度)において、第1の光フィルタ63aの透過特性(曲線CL1(
図12))と第2の光フィルタ64aの透過特性(曲線CL2(
図12))とが例えばπ/2の位相差を有するように設計しても構わない。すなわち、このように位相差を設けておくことで、第1の光フィルタ63aの透過特性(曲線CL1)の不感帯と、第2の光フィルタ64aの透過特性(曲線CL2)の不感帯とが互いに重ならないものとなる。このため、波長調整制御(ステップS8,S8A)を実行する際に、第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過特性(曲線CL1,CL2)のうち、目標波長TWが不感帯に位置しない透過特性を用いれば、レーザ光L1の波長を良好に目標波長TWに制御することができる。また、第1,第2の光フィルタ63a,64aの透過特性における温度依存性が互いに異なっているため、製造誤差等により、基準温度(目標温度)において位相差が所望の位相差(例えばπ/2)となっていない場合であっても、第1,第2の光フィルタ63a,64aの温度を制御することで、位相差を所望の位相差(例えばπ/2)に設定することができる。
また、光フィルタの数は、2つに限らず、3つ以上であっても構わない。この際、3つ以上の光フィルタの透過特性における温度依存性が互いに異なっていれば、基準温度(目標温度)において、3つの光フィルタの透過特性における位相差が略「0」となるように設計してもよく、あるいは、例えばπ/N(N=光フィルタの数)の位相差を有するように設計しても構わない。
【0068】
上述した実施の形態1,2では、本発明に係る第1,第2の光フィルタとして、リング共振器型光フィルタ63a,64aを採用してきたが、これに限らない。入射する光の波長に対して周期的な透過特性を有する光フィルタであれば、エタロン等のその他の光フィルタを本発明に係る第1,第2の光フィルタとして採用しても構わない。また、本発明に係る第1,第2の光フィルタの一方をリング共振器型光フィルタで構成し、他方をエタロンで構成しても構わない。
【0069】
上述した実施の形態1,2において、本発明に係る第1,第2の光フィルタ及び第1,第2の受光素子を配設する位置は、上述した実施の形態1,2で説明した位置に限らない。例えば、波長可変光源部4から出力されたレーザ光L1を2つのレーザ光に分岐し、一方のレーザ光を半導体光増幅器5に出力する光分岐部を設ける。そして、本発明に係る第1,第2の光フィルタ及び第1,第2の受光素子として、光分岐部にて分岐された他方のレーザ光を受ける位置に配設しても構わない。
【0070】
また、制御装置3,3Aによる波長制御方法を示すフローは、上述した実施の形態1,2において説明したフローチャート(
図7,
図10)における処理の順序に限らず、矛盾のない範囲で変更しても構わない。例えば、
図7において、ステップS6とステップS7,S8とを並列に実行しても構わない。なお、上述した実施の形態1,2自体を適宜組み合わせて実施するようにしても構わない。例えば、上述した実施の形態1にて、ステップS7の代わりに第2のPD比と第2の制御目標値との差が所定の範囲内か否かを判断し、当該範囲内でないと判断した場合にはステップS8を実行し、当該範囲内であると判断した場合には上述した実施の形態2で説明したステップS8Aを実行するようにしてもよい。