(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816400
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】投入シュート及び投入方法
(51)【国際特許分類】
B65G 11/20 20060101AFI20210107BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20210107BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
B65G11/20 Z
C22B23/00 102
C22B3/44 101A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-153071(P2016-153071)
(22)【出願日】2016年8月3日
(65)【公開番号】特開2018-20886(P2018-20886A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】粟田 雅也
【審査官】
小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−211908(JP,A)
【文献】
実開平05−056245(JP,U)
【文献】
実開昭58−121895(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 11/00−11/20
B65B 39/00
C22B 3/44
C22B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールミルにボールを投入する投入シュートであって、
上面側に開口部が設けられ、底面側には放出部が設けられた第1のシュート部と、
前記第1のシュート部の前記放出部に設けられ、前記ボールの放出量を調整可能な開閉部と、
前記開閉部の下方に設けられ、その底面側には前記放出部から放出された前記ボールを前記ボールミル内へと導入する投入口を有する第2のシュート部とを備え、
前記開閉部は、前記放出部を塞ぐ仕切弁と、吊り上げ可能な吊部と、緩衝装置と、高さ調節装置を備え、前記仕切弁と連動して上下する前記吊り上げ可能な吊部と、前記仕切弁と前記吊部の間に設けられる前記緩衝装置と、前記吊部と吊り上げ装置の間に設けられる前記高さ調節装置により前記仕切弁の開度を調節しながら開閉可能である投入シュート。
【請求項2】
前記第1のシュート部は、1000L以上の容積を有し、前記第2のシュート部の容積は、前記第1のシュート部の容積の0.5倍以上1倍以下である請求項1に記載の投入シュート。
【請求項3】
前記ボールミルは、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬法における石灰石スラリーの製造に用いられ、前記ボールは鉄製である請求項1又は請求項2に記載の投入シュート。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の投入シュートを用いた投入方法であって、
前記投入シュートにボールを投入する充填工程と、
前記ボールが投入された前記投入シュートをボールミルまで運搬する運搬工程と、
前記ボールミルにおいて前記ボールを投入する投入工程とを有する投入方法。
【請求項5】
前記充填工程において、
前記投入シュートを窪地又は段差地の下段に載置して前記ボールの投入を行う請求項4に記載の投入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールミルにボールを投入する投入シュート及び投入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ニッケル酸化鉱石からニッケル、コバルト等の有価金属を回収する湿式製錬法として、HPAL(High Pressure Acid Leaching)法等の硫酸浸出法が行われている。このようなHPALプラントでは、粉径+1.4mm以下に篩別されスラリー化された鉱石に高圧下で硫酸を添加することにより、ニッケル・コバルトなどの有価金属を浸出している。
【0003】
この浸出液には、鉄や亜鉛などの不純物が含まれているため、各中和工程にて浸出液のpH調整を行った後、固液分離している。固液分離によって得られた液は、続いて硫化水素(H
2S)ガスと反応させ、有価金属を回収する。また、有価金属を回収した残りの液については、重金属等の不純物が除去できるpHになるまで中和し、テーリングダムへ送液している。
【0004】
例えば、特許文献1には、原料鉱石を解砕し、所定の分級点で分級してオーバーサイズの鉱石粒子を除去し、アンダーサイズの鉱石粒子からなる粗鉱石スラリーを得る解砕・分級工程と、解砕・分級工程にて得られた粗鉱石スラリーの粒度を測定する粒度測定工程と、粗鉱石スラリーを固液分離装置に装入し、粗鉱石スラリーに含まれる水分を分離除去して鉱石成分を濃縮する鉱石スラリー濃縮工程とを有する鉱石スラリーの製造方法及び金属製錬方法が記載されている。
【0005】
HPAL法等の各中和工程にて浸出液のpHを調整するために、石灰石スラリー(石灰石を細かく粉砕し水と混合させたもの)が使用されているが、HPALプラントには、この石灰石スラリーを製造するための設備がある。石灰石スラリーの製造工程は、原料を投入するためのシュート、搬送コンベア、ロールクラッシャー(1次粉砕機)、ボールミル(2次粉砕機)、石灰石スラリー貯蔵タンク、石灰石スラリー送液ポンプなどの設備から構成されている。
【0006】
スラリーの製造工程におけるボールミルは、水平方向に延在した略円筒型の容器であり、鉄製ボール、石灰石、水を入れて水平軸を中心に回転させることによって石灰石を粉砕し、石灰石スラリーを製造する設備である。石灰石と水については連続的に供給・排出されているが、鉄製ボールについては内部に一定量投入された状態であり、定期的に摩耗分を補充する。シェルの内面にはゴム製のライナーあるいはリフターが設置されており、石灰石の粉砕における重要な部品であるが、これらは摩耗するため定期的に更新する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−95998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したゴム製のライナーあるいはリフター等の部品を交換するためには、内部に投入しているボールを取り出し、部品の交換後再投入する必要があるが、このボールの投入は、従来はボールの入ったドラム缶(ガロン缶)を、移動式クレーンで吊り上げることにより行われてきた。
【0009】
しかしながら、当該作業はドラム缶1缶分のボールを投入するのに約15分、100缶分のボールを投入するためには約25時間必要だったため、ボールの投入時間の短縮は大きな課題であった。また、高所となるボールミルの上部で重量物であるボールを投入するため、当該作業方法の改善が必要であった。
【0010】
特許文献1には、ボールミル用のボールの投入時間の短縮や効率的な投入方法については記載されていない。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、短時間で、効率的かつ安全にボールミルにボールを投入できる投入シュート及び投入方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、ボールミルにボールを投入する投入シュートであって、上面側に開口部が設けられ、底面側には放出部が設けられた第1のシュート部と、第1のシュート部の放出部に設けられ、ボールの放出量を調整可能な開閉部と、開閉部の下方に設けられ、その底面側には放出部から放出されたボールをボールミル内へと導入する投入口を有する第2のシュート部とを備え、開閉部は、放出部を塞ぐ仕切弁と、
吊り上げ可能な吊部と、緩衝装置と、高さ調節装置を備え、仕切弁
と連動して上下する吊り上げ可能な吊部と、
仕切弁と吊部の間に設けられる緩衝装置と、
吊部と吊り上げ装置の間に設けられる高さ調節装
置により仕切弁の開度を調節しながら開閉可能である。
【0013】
本発明の一態様によれば、シュートを2段構成とすることで、まず第1のシュート部に一定量のボールを充填した状態で運搬し、その後、第2のシュート部を通してボールミル内にボールを投入することができるため、短時間で、効率的かつ安全にボールを投入できる。
【0015】
このように、投入シュートの仕切弁と吊部を連動させることで、吊り上げ、運搬時には開閉部を「閉」状態とし、投入シュートをボールミルに載置した後に「開」状態とすることができるため効率的かつ安全である。
【0016】
また、本発明の一態様では、第1のシュート部は、1000L以上の容積を有し、第2のシュート部の容積は、第1のシュート部の容積の0.5倍以上1倍以下であるとしてもよい。
【0017】
第1のシュート部の容量を大きくとることにより、あらかじめ一定量以上のボールを充填して運搬することができるため、効率的である。
【0018】
また、本発明の一態様では、ボールミルは、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬法における石灰石スラリーの製造に用いられ、ボールは鉄製であってもよい。
【0019】
例えば、HPALプラントでのスラリー製造時のボールミルへの鉄製ボールの投入のように大量の投入物を投入するような場合には、本発明の一態様に係る投入シュートを好適に用いることができる。
【0020】
本発明の他の態様は、上述した投入シュートを用いた投入方法であって、投入シュートにボールを投入する充填工程と、ボールが投入された投入シュートをボールミルまで運搬する運搬工程と、ボールミルにおいてボールを投入する投入工程とを有する。
【0021】
このように、本発明の一態様に係る投入シュートを用いることで、あらかじめ一定量のボールを投入シュートに充填した後に、ボールミルに運搬して投入することができるため、効率的かつ安全である。
【0022】
また、このとき、本発明の他の態様では、充填工程において、投入シュートを窪地又は段差地の下段に載置してボールの投入を行ってもよい。
【0023】
投入シュートを作業地よりも低く載置することで、ボールを充填する際にボールが入った容器を高く持ち上げる必要がなく、比較的容易にボールを充填することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、短時間で、効率的かつ安全にボールミルにボールを投入できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る投入シュートを示す斜視図である。
【
図2】(A)は、開閉部が「閉」状態の時の本発明の実施の一形態に係る投入シュートの構成を示す断面図であり、(B)は、開閉部が「開」状態の時の本発明の実施の一形態に係る投入シュートの構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施の一形態に係る投入方法のプロセスの概略を示す工程図である。
【
図4】本発明の実施の一形態に係る投入方法を示す概略図である。
【
図5】比較例となる従来の投入方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.投入シュート
2.投入方法
2−1.充填工程
2−2.運搬工程
2−3.投入工程
【0027】
<1.投入シュート>
図1は、本発明の実施の一形態に係る投入シュートを示す斜視図であり、
図2(A)は、開閉部が「閉」状態の時の本発明の実施の一形態に係る投入シュートの構成を示す断面図であり、
図2(B)は、開閉部が「開」状態の時の本発明の実施の一形態に係る投入シュートの構成を示す断面図である。本発明の一実施形態は、ボールミル30にボール20を投入する投入シュート10であって、上面側に開口部11が設けられ、底面側には放出部13が設けられた第1のシュート部12と、第1のシュート部12の放出部13に設けられ、ボール20の放出量を調整可能な開閉部14と、開閉部14の下方に設けられ、その底面側には放出部13から放出されたボール20をボールミル30内へと導入する投入口16を有する第2のシュート部15とを備える。
【0028】
このような投入シュート10は、例えば上述したHPALプラントのボールミル30において、鉄製ボール20を投入する際に用いられ、鉄製ボール20の投入時間を短縮することができ、容易な操作によって(時間当たり投入量を制御しつつ、詰まりにくく)安全に鉄製ボール20を投入できる。また、投入シュート10に備えられた開閉部(仕切弁14)は、鉄製ボール20の切出量を調節することで、直径によって選別しながら異なるサイズの鉄製ボール20を投入できる。このとき、小径の鉄製ボール20を先に、大径の鉄製ボール20を先に投入することができ、その結果、鉄製ボール20の落下で生じる衝撃からボールミル30の内壁面を守ることができる。
【0029】
本発明の実施の一形態に係る投入シュート10は、第1のシュート部12と第2のシュート部15を備える2段構成となっているところに特徴がある。第1のシュート部12は十分な量のボール20を貯留できる容量を備えていることが好ましい。第2のシュート部15は第1のシュート部12から放出されたボール20をボールミル30のボール受払口34(
図4参照)へ集約する役割がある。また、第1のシュート部12の放出部13には開閉部14が設けられており、これを徐々に開くことにより第1のシュート部12に貯留されていたボール20を第2のシュート部15を通してボールミル30内に投入することが可能となる。
【0030】
開閉部14は、自動又は手動を問わず、シャッター弁のようなものでも良いが、放出部を塞ぐ仕切弁を備え、該仕切弁は、吊り上げ可能な吊部と連動して上下することにより開閉可能であるとすることが好ましい。このように、投入シュート10の仕切弁14と吊部17を連動させることで、投入シュート10を吊り上げ、運搬する時には開閉部14を「閉」状態とし、ボールミル30のボール受払口34に載置した後に「開」状態とすることができるため効率的かつ安全である。吊部17の形状としては、鉤状や環状など、公知の形状を使用することができる。
【0031】
仕切弁14と吊部17は、例えば鉛直軸18等で接続されることにより連動して上下する。このように仕切弁14と吊部17を連動させることにより、運搬時には投入シュート10の吊部17は吊り上げ装置31(
図4参照。例えば、クレーン)のフック部32により、吊り上げられた状態にあるため、「閉」状態を保つことができる。投入シュート10がボールミル30のボール受払口34に載置された後には、吊部17を吊り上げる力を弱めることにより、仕切弁14がボール20の重さや自重により、下へと下がり、ボール20が第2のシュート部15へと放出され、第2のシュート部15の投入口16からボールミル30内へと投入される。
【0032】
また、第2のシュート部15の投入口16は、下方に突き出した構成とすることができる。このようにすることで、投入シュート10をボールミル30のボール受払口34に載置した際に、投入口16の下端がボール受払口34内に挿入され、投入シュート10をより安定した状態でボールミル30上に載置することができる。また、投入口16の下端はボール受払口34に接する大きさとすることができる。このようにすることで、投入シュート10内のボール20が偏ったり、吊り上げ装置31が吊部17を斜めに吊り上げたりした場合にも、投入シュート10が動くのを抑制できる。
【0033】
吊部17とフック部32の間には、例えばチェーンブロックのような高さ調節装置33が備えられていてもよい。チェーンブロックのような高さ調節装置33を用いることにより、開閉部14を「閉」状態から「開」状態へと徐々に調整しながら移行することができるため、ボール20が一気に排出されて投入口16で詰まるのを防止することができる。
【0034】
また、投入シュート10の仕切弁14と吊部17とを連結する鉛直軸18には、例えばスプリングのような緩衝装置19や、ストッパーのような係止装置21を備えるようにしてもよい。緩衝装置19は、ボール20の重みまたは重みの増減によって仕切弁14が急激に上昇または下降しないように、仕切弁14の位置を安定させる役割を果たす。係止装置21は、仕切弁14の位置を固定するもので、運搬中に上下方向の加減速やボールの片寄りが生じて仕切弁14に荷重がかかっても、仕切弁14が下がらないように確実に係止しておくことができる。
【0035】
また、投入シュート10の上面は、ボール20が投入できるよう開口部11となっているが、作業者35が投入シュート10の上面に登って作業できるように梯子や足場36を設置できるような構成にしておくこともできる。さらに、第1のシュート部12や第2のシュート部15の強度を増すために周囲(例えば、四方又は八方)に柱22または支えの梁を設けて、柱22または支えの梁で投入シュート10を固定するようにしてもよい。
【0036】
ボール20の材質は、アルミナ、天然ケイ石、鉄芯入りナイロン、ジルコニアなどを用いることも可能であるが、HPALプラントのように大規模なボールミルの場合には、鉄製ボールが好ましい。HPALプラントの石灰石スラリー製造時には大量の鉄製ボールを投入する必要があるため、本発明の一態様に係る投入シュート10を好適に用いることができる。
【0037】
ボールミル用のボールとして鉄製ボールを用いる場合、ボールの直径は、20mm〜110mmのものを使用することが好ましい。直径20mm未満の場合には、ボールミル30からの産出スラリーにボールが混入するおそれがあり、その際は懸濁している原材料との分離が難しい。直径が110mmを超えるような鉄製ボールは、嵩張る割に衝突回数が少なく、原材料の粉砕が非効率となる。鉄製ボールは使用に伴って摩耗し、大きさに個体差を生じる。摩耗した鉄製ボールは、摩耗があまり進んでいなければ再利用することができるが、粉砕能力が低下しているので、新品と混ぜて使用することが好ましい。摩耗した鉄製ボールは、ボールミル30内のゴム製のライナーあるいはリフター37を交換する際に回収することができる。そのあと、直径が著しく小さいボール(たとえば、直径20mm未満のもの)を取り除くことが好ましい。摩耗した鉄製ボールを新規の鉄製ボールと混ぜて投入する場合は、大きさのばらつきが大きいので、密に充填された状態から投入作業に移ることになる。このとき、本発明の一態様に係る投入シュート10では、仕切弁等の開閉部14の開度調整を行うことができるため、安全かつ直径の異なるサイズの鉄製ボールを同時に投入することができる。
【0038】
第1のシュート部12には、ボール20を一時的に貯蔵する役割もあるため、第1のシュート部12の容積は第2のシュート部15の容積よりも大きいことが好ましい。ボールミル用の鉄製ボールの場合には、200Lドラム缶(55ガロン缶)5つ分程度のボールが一度に投入できるようにするため、第1のシュート部12は、1000L以上の容積を有することが好ましい。また、第2のシュート部15でボール20が詰まることなく放出できるようにするために、第2のシュート部15の容積は、第1のシュート部12の容積の0.5倍以上であることが好ましい。第1のシュート部12の容量を大きくとることにより、あらかじめ一定量以上のボール20を充填して運搬することができるため、効率的である。ただし、ボール20を第1のシュート部12に充填する際に転倒を防ぎ、第1のシュート部12の全体が第2のシュート部15より上にある姿勢を保ちやすくするため、第2のシュート部15の容積は、第1のシュート部12の容積の1倍以下であることが好ましい。
【0039】
以上、ボールミル用のボールを投入する投入シュートについて説明したが、本発明の実施の一形態に係る投入シュートは必ずしも石灰石の粉砕用のボールの投入のみに限定されるものではない。例えば、ボールミルのボールと同様に球状の投入物や、粒状の投入物であれば同様に本発明の実施の一形態に係る投入シュートを適用することができる。あるいは、プラント等における他の原料のスラリーの製造時に用いてもよい。
【0040】
<2.投入方法>
図3に、本発明の実施の一形態に係る投入方法のプロセスの概略を示す工程図を示す。また、
図4に、本発明の実施の一形態に係る投入方法を示す概略図を示す。なお、
図4では、HPALプラントのボールミルへの鉄製ボールの投入の例を表しているが、この場合に限定されるものではない。本発明の一実施形態は、上述した本発明の実施の一形態に係る投入シュートを用いた投入方法であって、投入シュートにボールを投入する充填工程S1と、ボールが投入された投入シュートをボールミルまで運搬する運搬工程S2と、ボールミルにおいてボールを放出する投入工程S3とを有する。
【0041】
図5は、比較例となる従来の投入方法を示す概略図である。従来の投入方法において、例えばHPALプラントのボールミル40のような大規模な設備に鉄製ボールのような投入物20を投入する場合、ボール20が入った容器44(200Lドラム缶、55ガロン缶等)を1つ(1缶)ずつボールミル40の上部に設けられたボール受払口46まで運搬して作業者45等により投入していた。また、この時ドラム缶のような円筒状の容器44を保持するため、主巻フック42と補巻フック43のようにフックが複数必要となり、また、容器44のバランスを保った状態で安全にボールを投入する必要があるため、投入には時間がかかっていた。
【0042】
そこで、本発明の一態様に係る投入方法では、上述した本発明に係る投入シュート10を用い、あらかじめ一定量のボール20を投入シュート10に充填した後に、ボールミル30のボール受払口34に運搬して投入する。これにより、本発明の一態様に係る投入方法では、効率的かつ安全にボール20を投入することができる。以下、各工程を順にそれぞれ説明する。
【0043】
(2−1.充填工程)
充填工程S1では、投入シュート10にボール20を投入する。
【0044】
投入されたボール20は、本発明の実施の一形態に係る投入シュート10の第1のシュート部12に貯留される。なお、充填工程S1では、投入シュート10の開閉部14は「閉」状態にしておく。「閉」状態にするには、吊り上げ装置31で吊部17を吊り上げるほか、係止装置21で仕切弁14の位置を固定すればよい。本発明の実施の一形態に係る投入シュート10は、第1のシュート部12に十分な量のボール20を貯留できるため、ボールミル30のボール受払口34にボール20の入った容器を1つずつ運搬する必要がなくその分の時間を短縮することができる。
【0045】
充填工程S1においては、投入シュート10の上面が、作業地よりも低くなるようにすることが好ましい。例えば、段差となっている場所の下の段や窪地などに投入シュート10を載置してボール20を充填することが考えられる。投入シュート10を作業地よりも低く載置しておくことで、ボール20を充填する際にボールが入った容器を高く持ち上げる必要がなく、より簡易に投入シュート10の上面に設けられた開口部11にボール20を投入しやすくなる。
【0046】
いったん使用した鉄製ボールを再利用する場合は、ボールミル30の下に投入シュート10を置いて、ボールミル30を傾転させ、下に開口させたボール受払口34から投入シュート10へボール20を転がし落とすことによって充填することができる。この後、開閉部14をわずかに開くことによって、直径が著しく小さいボール20を放出部13および投入口16から下方へ取り除いてもよい。
【0047】
(2−2.運搬工程)
運搬工程S2では、ボール20が投入された投入シュート10をボールミル30まで運搬する。
【0048】
運搬工程S2では、例えばクレーンなどのような吊り上げ装置31を用いて投入シュート10を持ち上げ、ボールミル30のボール受払口34まで運搬する。仕切弁14を投入シュート10の吊部17と連動させている場合には、吊部17を吊り上げ装置31のフック部32に掛けて吊り上げることで、仕切弁14を「閉」状態のままで保つことができる。
【0049】
(2−3.投入工程)
投入工程S3では、ボールミル30においてボール20を投入する。
【0050】
投入工程S3では、開閉部14を「閉」状態から「開」状態へ移行することによって、第1シュート部12に貯蔵されたボール20を第2のシュート部15を通してボールミル30のボール受払口34に投入する。仕切弁14の開度を調節することにより、ボール20の切出量を調節することができ、直径の異なるサイズのボール20を順次投入することもできる。仕切弁14を全開にすると、ボール20が勢いよく第1のシュート部12から第2のシュート部15に排出されるため、第2のシュート部15の放出口16で詰まる恐れがある。そこで、例えば、仕切弁14と第1のシュート部12の隙間の大きさが、投入するボール20の直径より大きく、投入口16の大きさより小さくなる弁の開度とすることにより、詰まりなくスムーズに投入することが可能となる。
【0051】
この仕切弁14の操作方法は、仕切弁14の軸の末端に設置されたチェーンブロック33を作業者35が操作することにより、開閉するようにしてもよいし、自動又は遠隔操作で行うようにしてもよい。また、投入シュート10の上部には作業用の足場36を設置することができる、作業者35がその場で操作を行えば、投入の状況を具体的に把握しながら作業を行うことができる。なお、投入工程S3で投入されたボール20の量が十分でない場合には、投入シュート10をボールミル30から下ろし、再度、充填工程S1から同様の作業を繰り返す。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
実施例1では、本発明に係る投入シュートを使用して、ドラム缶100缶分の鉄製ボールをボールミルに投入した。本発明に係る投入シュートでは、1度にドラム缶5つ分の鉄製ボールを投入することができたため、ドラム缶5つ分の鉄製ボールを投入シュートに投入する毎に投入シュートをボールミルへと移動させ、そこからボールミル内へ鉄製ボールを投入する作業を繰り返した。その結果、ドラム缶1缶当たりの鉄製ボールを投入するのに要した時間は、約10分であり、100缶分の投入作業には約17時間を要した。
【0054】
(比較例1)
比較例1では、本発明に係る投入シュートを使用せず、従来の方法(
図5参照)で投入作業を実施した。すなわち、ドラム缶を1つずつボールミルへと移動させ、ドラム缶からボールミルへ直接、鉄製ボールを投入した。その結果、ドラム缶1缶当たりの鉄製ボールを投入するのに要した時間は、約15分であり、100缶分の投入作業には約25時間を要した。
【0055】
このように、従来の比較例1では、100缶分の鉄製ボールを投入するのに25時間を要したが、本発明にかかる投入シュートを用いた実施例1では、約17時間で投入することができ、投入時間を約2/3に短縮することができた。
【0056】
これらの結果より、本発明の実施の一形態に係る投入シュート及び投入方法を適用することにより短時間で、効率的かつ安全にボールミル用ボールを投入できることが分かる。
【符号の説明】
【0057】
10 投入シュート、11 開口部、12 第1のシュート部、13 放出部、14 開閉部(仕切弁)、15 第2のシュート部、16 投入口、17 吊部、18 鉛直軸、19 緩衝装置、20 (鉄製)ボール、21 係止装置、22 柱、30、40 ボールミル、31、41 吊り上げ装置、32 フック部、33 高さ調節装置(チェーンブロック)、34 ボール受払口、35、45 作業者、36 足場、37 ライナーあるいはリフター、42 主巻フック、43 補巻フック、44 容器、46 ボール受払口