(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
波長590nmにおける前記光学異方性層の面内レターデーションRe(A590)、及び、波長590nmにおける前記光学異方性層の厚み方向のレターデーションRth(A590)が、下記式(2)及び(3):
Re(A590)≦10nm (2)
−200nm≦Rth(A590)≦−50nm (3)
を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学異方性層。
波長450nmにおける前記光学異方性層の厚み方向のレターデーションRth(A450)、波長550nmにおける前記光学異方性層の厚み方向のレターデーションRth(A550)、及び、波長650nmにおける前記光学異方性層の厚み方向のレターデーションRth(A650)が、下記式(4)及び(5):
0.50<Rth(A450)/Rth(A550)<1.00 (4)
1.00≦Rth(A650)/Rth(A550)<1.25 (5)
を満たす、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学異方性層。
前記位相差層が、波長450nmにおける前記位相差層の面内レターデーションRe(B450)、波長550nmにおける前記位相差層の面内レターデーションRe(B550)、及び、波長650nmにおける前記位相差層の面内レターデーションRe(B650)が、下記式(6)及び(7):
0.75<Re(B450)/Re(B550)<1.00 (6)
1.01<Re(B650)/Re(B550)<1.25 (7)
を満たす、請求項7に記載の光学異方性積層体。
波長590nmにおける前記位相差層の面内レターデーションRe(B590)、波長590nmにおける前記光学異方性層の面内レターデーションRe(A590)、及び、波長590nmにおける前記光学異方性層の厚み方向のレターデーションRth(A590)が、下記式(8)、(9)及び(10):
110nm≦Re(B590)≦170nm (8)
Re(A590)≦10nm (9)
−200nm≦Rth(A590)≦−50nm (10)
を満たす、請求項7又は8に記載の光学異方性積層体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、ある面の正面方向とは、別に断らない限り、当該面の法線方向を意味し、具体的には前記面の極角0°且つ方位角0°の方向を指す。
【0013】
以下の説明において、ある面の傾斜方向とは、別に断らない限り、当該面に平行でも垂直でもない方向を意味し、具体的には前記面の極角が0°より大きく90°より小さい範囲の方向を指す。
【0014】
以下の説明において、別に断らない限り、ある層の面内レターデーションReは、Re=(nx−ny)×dで表される値を示し、また、ある層の厚み方向のレターデーションRthとは、Rth=[{(nx+ny)/2}−nz]×dで表される値を示す。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表し、nzは、層の厚み方向の屈折率を表し、dは、層の厚みを表す。
【0015】
以下の説明において、別に断らない限り、屈折率の測定波長は、590nmである。
【0016】
以下の説明において、「長尺」のものとは、幅に対して、通常5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
【0017】
以下の説明において、「偏光板」及び「波長板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0018】
以下の説明において、別に断らない限り、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」及びこれらの混合物を包含する用語である。
【0019】
以下の説明において、要素の方向が「平行」及び「垂直」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0020】
以下の説明において、正の固有複屈折値を有する樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂を意味する。また、負の固有複屈折値を有する樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなる樹脂を意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。
【0021】
〔1.光学異方性層〕
本発明の光学異方性層は、特定の重合体と、メソゲン骨格を有する化合物とを含む。光学異方性層が含むかかる特定の重合体を、以下、適宜「ポジC重合体」ということがある。また、光学異方性層が含むメソゲン骨格を有する化合物を、以下、適宜「メソゲン化合物」ということがある。
【0022】
〔1.1.ポジC重合体〕
ポジC重合体は、当該ポジC重合体の溶液を用いた塗工法によりポジC重合体の膜を形成した場合に、その膜の屈折率nx(P)、ny(P)及びnz(P)が、nz(P)>nx(P)≧ny(P)を満たす重合体である。ここで、nx(P)は、前記膜の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny(P)は、前記膜の前記面内方向であって前記nxの方向に垂直な方向の屈折率を表し、nz(P)は、前記膜の厚み方向の屈折率を表す。このようなポジC重合体を、特定のメソゲン化合物と組み合わせて用いることにより、配向膜を用いることなく製造可能で、且つ単位厚み当たりのRthが小さいポジティブCプレートとして用いられる光学異方性層を実現できる。
【0023】
ある重合体が、ポジC重合体に該当するか否かは、下記の方法によって確認できる。
まず、試料としての重合体を、メチルエチルケトン(MEK)、1,3−ジオキソラン、N−メチルピロリドン(NMP)等の溶媒に、重合体の濃度が10重量%〜20重量%になるように加え、室温にて溶解させて、重合体溶液を得る。
この重合体溶液を、樹脂からなる未延伸フィルム上に、アプリケーターを用いて塗工して、重合体溶液の層を形成する。その後、85℃オーブンで10分ほど乾燥させて、溶媒を蒸発させることにより、厚み10μm程度の重合体膜を得る。
そして、この重合体膜の屈折率nx(P)、屈折率ny(P)及び屈折率nz(P)が、nz(P)>nx(P)≧ny(P)を満たすか否かを評価し、満たす場合に、その試料としての重合体は、ポジC重合体に該当すると判定できる。
【0024】
屈折率nx(P)と屈折率ny(P)とは、値が同じであるか近いことが好ましい。具体的には、屈折率nx(P)と屈折率ny(P)の差nx(P)−ny(P)は、好ましくは0.00000〜0.00100、より好ましくは0.00000〜0.00050、特に好ましくは0.00000〜0.00020である。屈折率差nx(P)−ny(P)が前記の範囲内の値であると、ポジティブCフィルムとして有用な光学異方性層を容易に得ることができる。
【0025】
ポジC重合体としては、前記の式nz(P)>nx(P)≧ny(P)を満たす屈折率を有する任意の重合体を用いうる。中でも、ポジC重合体としては、ポリビニルカルバゾール、ポリフマル酸エステル、セルロース誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる重合体が好ましい。かかる重合体をポジC重合体として用いることにより、単位厚み当たりのRthが小さい光学異方性層を、容易に得ることができる。
【0026】
ポジC重合体の具体例としては、ポリ(9−ビニルカルバゾール);フマル酸ジイソプロピルとアクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチルとの共重合体;及びフマル酸ジイソプロピルとケイ皮酸エステルとの共重合体が挙げられる。
また、ポジC重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0027】
光学異方性層の全固形分におけるポジC重合体の比率は、好ましくは40重量%以上、より好ましくは45重量%以上、特に好ましくは50重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下である。ポジC重合体の比率がかかる範囲内であることにより、所望の層内構造を有し、且つ単位厚み当たりのRthが小さい光学異方性層を容易に得ることができる。
【0028】
〔1.2.メソゲン化合物〕
メソゲン化合物即ちメソゲン骨格を有する化合物におけるメソゲン骨格とは、その引力及び斥力的相互作用の異方性によって、低分子量又は高分子量の物質中で、液晶相の発生に本質的に寄与する分子骨格を意味する。メソゲン骨格を含有するメソゲン化合物は、それ自身では、必ずしも液晶相への相転移を生じうる液晶性を有していなくてもよい。よって、メソゲン化合物は、単独で液晶相への相転移を生じうる液晶化合物であってもよく、単独では液晶相への相転移を生じない非液晶化合物であってもよい。メソゲン骨格の例としては、剛直な棒状又は円盤状の形状のユニットが挙げられる。メソゲン骨格については、Pure Appl.Chem.2001、73巻(5号)、888頁およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁を参照しうる。
【0029】
光学異方性層において、メソゲン化合物は、その配向状態が固定されていてもよく、固定されていなくてもよい。例えば、メソゲン化合物は、重合によって、メソゲン骨格の配向状態が固定されている重合体であってもよい。通常、重合により、メソゲン化合物は、そのメソゲン化合物の配向状態を維持したまま重合体となりうるので、前記の重合により、メソゲン化合物の配向状態が固定される。よって、用語「配向状態が固定されている」メソゲン化合物には、メソゲン化合物の重合体が包含される。即ち、本願において、光学異方性層が「メソゲン化合物を含む」とは、光学異方性層内に、以下に例示するもの等のメソゲン化合物の分子が存在する場合に加えて、光学異方性層内に、以下に例示するもの等のメソゲン化合物が重合することによって構成された、メソゲン骨格を有する重合単位を含む重合体が存在する場合をも包含する。したがって、メソゲン化合物が液晶性を有する液晶化合物である場合、この液晶化合物は、光学異方性層において、液晶相を呈していてもよく、配向状態が固定化されることによって液晶相を呈していなくてもよい。
【0030】
光学異方性層におけるメソゲン化合物は、液晶化合物であってもよく、非液晶メソゲン化合物であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。ここで、非液晶メソゲン化合物とは、単独では液晶性を示さないメソゲン化合物であって、且つ、下記の特定の要件を満たすものをいう。即ち、ホモジニアス配向した場合に順波長分散性の面内レターデーションを示す評価用液晶化合物に、メソゲン化合物を、評価用液晶化合物及びメソゲン化合物の合計100重量部に対して30重量部〜70重量部の少なくともいずれかの割合で混合した混合物(以下、適宜「評価用混合物」ということがある。)が、液晶性を示す場合、当該メソゲン化合物は、当該特定の要件を満たす非液晶メソゲン化合物である。メソゲン化合物として液晶化合物及び/又は非液晶メソゲン化合物を採用し、これをポジC重合体と組み合わせて用いることにより、配向膜を用いることなく製造可能で、且つ単位厚み当たりのRthが小さい光学異方性層を実現できる。
【0031】
光学異方性層におけるメソゲン化合物は、より好ましくは、逆波長分散液晶化合物、逆波長非液晶メソゲン化合物、又はこれらの組み合わせとしうる。ここで、逆波長分散液晶化合物とは、液晶性を示し、且つ、ホモジニアス配向した場合に逆波長分散性の面内レターデーションを示すメソゲン化合物を意味する。また、逆波長非液晶メソゲン化合物とは、単独では液晶性を示さないメソゲン化合物であって、その評価用混合物が、液晶性を示し、且つ、評価用混合物がホモジニアス配向した場合にメソゲン化合物が逆波長分散性の面内レターデーションを示すものを意味する。このような逆波長分散液晶化合物及び逆波長非液晶メソゲン化合物からなる群より選ばれるメソゲン化合物を、ポジC重合体と組み合わせて用いることにより、配向膜を用いることなく製造可能で、単位厚み当たりのRthが小さく、且つRthが逆波長分散性を示す、ポジティブCプレートとして用いられる光学異方性層を実現できる。
【0032】
逆波長分散液晶化合物は、ホモジニアス配向した場合に、逆波長分散性の面内レターデーションを示す。ここで、液晶化合物をホモジニアス配向させる、とは、当該液晶化合物を含む層を形成し、その層における液晶化合物の分子のメソゲン骨格の長軸方向を、前記層の面に平行なある一の方向に配向させることをいう。液晶化合物が配向方向の異なる複数種類のメソゲン骨格を含む場合は、それらのうち最も長い種類のメソゲンが配向する方向が、前記の配向方向となる。液晶化合物がホモジニアス配向しているか否か、及びその配向方向は、AxoScan(Axometrics社製)に代表されるような位相差計を用いた遅相軸方向の測定と、遅相軸方向における入射角毎のレターデーション分布の測定とにより確認しうる。
【0033】
また、面内レターデーションReが逆波長分散性を示す、とは、波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(450)及びRe(550)が、Re(450)/Re(550)<1.00を満たすことをいう。
【0034】
よって、逆波長分散液晶化合物を含む液晶層を形成し、その液晶層における液晶化合物の分子のメソゲン骨格の長軸方向を、前記液晶層の面に平行なある一の方向に配向させた場合には、その液晶層の波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(L450)及びRe(L550)は、通常、Re(L450)/Re(L550)<1.00を満たす。
【0035】
さらに、波長450nm、550nm及び650nmにおける前記の液晶層の面内レターデーションRe(L450)、Re(L550)及びRe(L650)は、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、Re(L450)<Re(L550)≦Re(L650)を満たすことがより好ましい。
【0036】
逆波長分散液晶化合物等のメソゲン化合物としては、例えば、当該化合物の分子中に、主鎖メソゲン骨格と、前記主鎖メソゲン骨格に結合した側鎖メソゲン骨格とを含む化合物を用いうる。主鎖メソゲン骨格及び側鎖メソゲン骨格を含むメソゲン化合物は、それが配向した状態において、側鎖メソゲン骨格が主鎖メソゲン骨格と異なる方向に配向しうる。このような場合、複屈折は主鎖メソゲン骨格に対応する屈折率と側鎖メソゲン骨格に対応する屈折率との差として発現するので、結果として、当該メソゲン化合物は、ホモジニアス配向した場合に、逆波長分散性の面内レターデーションを示すことができる。
【0037】
例えば主鎖メソゲン骨格及び側鎖メソゲン骨格を有する前記化合物のように、逆波長分散液晶化合物は、通常、一般的な順波長分散液晶化合物の立体形状とは異なる特異的な立体形状を有する。ここで、「順波長分散液晶化合物」とは、ホモジニアス配向した場合に、順波長分散性の面内レターデーションを示しうる液晶化合物をいう。また、順波長分散性の面内レターデーションとは、測定波長が大きいほど面内レターデーションが小さくなる面内レターデーションを表す。逆波長分散液晶化合物がこのように特異的な立体形状を有することが、本発明の効果が得られる一因になっているものと推察される。
【0038】
さらに、メソゲン化合物は、重合性を有することが好ましい。よって、メソゲン化合物は、重合性基を有することが好ましい。このように重合性を有するメソゲン化合物を用いれば、重合によってメソゲン化合物の配向状態を容易に固定することが可能である。そのため、安定な光学特性を有する光学異方性層を容易に得ることができる。
【0039】
逆波長分散液晶化合物等の液晶化合物のCN点は、好ましくは25℃以上、より好ましくは45℃以上、特に好ましくは60℃以上であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、特に好ましくは100℃以下である。ここで、「CN点」とは、結晶−ネマチック相転移温度のことをいう。前記の範囲にCN点を有する液晶化合物を用いることにより、光学異方性層を容易に製造することが可能である。
【0040】
メソゲン化合物の分子量は、単量体である場合は、好ましくは300以上、より好ましくは700以上、特に好ましくは1000以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。メソゲン化合物が前記のような分子量を有することにより、光学異方性層を形成するための塗工液の塗工性を特に良好にできる。
【0041】
メソゲン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0042】
メソゲン化合物のうちの特に好ましい態様である、逆波長分散液晶化合物等の液晶化合物としては、例えば特開2014−123134号公報に記載されたものなどが挙げられるが、特に好適な具体例としては、下記式(I)で表される化合物のうち、液晶性を示す化合物が挙げられる。以下の説明において、式(I)で表される化合物を、適宜「化合物(I)」ということがある。
【0044】
化合物(I)は、通常、下記式で表すように、基−Y
5−A
4−Y
3−(A
2−Y
1)
n−A
1−(Y
2−A
3)
m−Y
4−A
5−Y
6−からなる主鎖メソゲン骨格1a、及び、基>A
1−C(Q
1)=N−N(A
x)A
yからなる側鎖メソゲン骨格1bの2つのメソゲン骨格を含む。また、これらの主鎖メソゲン骨格1a及び側鎖メソゲン骨格1bは、互いに交差している。上記の主鎖メソゲン骨格1a及び側鎖メソゲン骨格1bをあわせて1つのメソゲン骨格とすることもできるが、本発明では、2つのメソゲン骨格に分けて表記する。
【0046】
主鎖メソゲン骨格1aの長軸方向における屈折率をn1、側鎖メソゲン骨格1bの長軸方向における屈折率をn2とする。この際、屈折率n1の絶対値及び波長分散性は、通常、主鎖メソゲン骨格1aの分子構造に依存する。また、屈折率n2の絶対値及び波長分散性は、通常、側鎖メソゲン骨格1bの分子構造に依存する。ここで、液晶相において化合物(I)は、通常、主鎖メソゲン骨格1aの長軸方向を回転軸として回転運動を行うので、ここでいう屈折率n1及びn2とは、回転体としての屈折率を表している。
【0047】
主鎖メソゲン骨格1a及び側鎖メソゲン骨格1bの分子構造に由来して、屈折率n1の絶対値は屈折率n2の絶対値より大きい。さらに、屈折率n1及びn2は、通常、順波長分散性を示す。ここで、順波長分散性の屈折率とは、測定波長が大きいほど当該屈折率の絶対値が小さくなる屈折率を表す。主鎖メソゲン骨格1aの屈折率n1は、順波長分散性を有するので、長波長で測定した屈折率n1は、短波長で測定した屈折率n1より小さくなる。ただし、屈折率n1の順波長分散性は小さいので、これらの差は小さい。これに対し、側鎖メソゲン骨格1bの屈折率n2は、順波長分散性が大きいので、長波長で測定した屈折率n2は、短波長で測定した屈折率n2よりも小さく、且つそれらの差は大きい。そのため、測定波長が短いと屈折率n1と屈折率n2との差Δnは小さく、測定波長が長いと屈折率n1と屈折率n2との差Δnが大きくなる。このようにして、主鎖メソゲン骨格1a及び側鎖メソゲン骨格1bに由来して、化合物(I)は、ホモジニアス配向した場合に、逆波長分散性の面内レターデーションを示しうる。
【0048】
前記式(I)において、Y
1〜Y
8は、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−、−C(=O)−NR
1−、−O−C(=O)−NR
1−、−NR
1−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−NR
1−、−O−NR
1−、又は、−NR
1−O−を表す。
【0049】
ここで、R
1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0050】
化合物(I)においては、Y
1〜Y
8は、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−であることが好ましい。
【0051】
前記式(I)において、G
1及びG
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の二価の脂肪族基を表す。前記脂肪族基には、1つの脂肪族基当たり1以上の−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
2−C(=O)−、−C(=O)−NR
2−、−NR
2−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、R
2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0052】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、G
1及びG
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する二価の脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基〔−(CH
2)
10−〕等の、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、テトラメチレン基〔−(CH
2)
4−〕、ヘキサメチレン基〔−(CH
2)
6−〕、オクタメチレン基〔−(CH
2)
8−〕、及び、デカメチレン基〔−(CH
2)
10−〕が特に好ましい。
【0053】
前記式(I)において、Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
なかでも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、Z
1及びZ
2としては、それぞれ独立して、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、又は、CH
2=C(CH
3)−CH
2−CH
2−が好ましく、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、又は、CH
2=C(Cl)−がより好ましく、CH
2=CH−が特に好ましい。
【0054】
前記式(I)において、A
xは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。「芳香環」は、Huckel則に従う広義の芳香族性を有する環状構造、すなわち、π電子を(4n+2)個有する環状共役構造、及びチオフェン、フラン、ベンゾチアゾール等に代表される、硫黄、酸素、窒素等のヘテロ原子の孤立電子対がπ電子系に関与して芳香族性を示す環状構造を意味する。
【0055】
前記式(I)において、A
yは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R
3、−SO
2−R
4、−C(=S)NH−R
9、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。ここで、R
3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。R
4は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。R
9は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数5〜20の芳香族基を表す。A
x及びA
yが有する芳香環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。A
x及びA
yの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する。
【0056】
前記式(I)において、A
1は、置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。
【0057】
前記式(I)において、A
2及びA
3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。
【0058】
前記式(I)において、A
4及びA
5は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。
【0059】
前記式(I)において、Q
1は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
【0060】
前記式(I)において、mは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0061】
化合物(I)としては、例えば、国際公開第2014/069515号、国際公開第2015/064581号などに記載された化合物が挙げられる。
【0062】
上述した液晶化合物の中でも、本発明の所望の効果を顕著に発揮する観点から、当該液晶化合物の分子中に、ベンゾチアゾール環を含有するものが好ましく、特に、側鎖メソゲンにベンゾチアゾール環を有するものが好ましい。ここで、ベンゾチアゾール環とは、下記式(II)に示す構造の環構造を示す。
【0064】
化合物(I)は、液晶性を有する液晶性化合物である場合もあり、単独では液晶性を示さない非液晶メソゲン化合物である場合もあり、従って上記一般式に該当するもののうち所望の性質を有するものを適宜選択しうる。化合物(I)の好ましい具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0066】
化合物(I)は、例えば、国際公開第2012/147904号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
【0067】
メソゲン化合物の他の好ましい例としては、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。以下の説明において、下記式(II)で表される化合物を、適宜「化合物(II)」ということがある。化合物(II)は、液晶性を有する液晶性化合物である場合もあり、単独では液晶性を示さない非液晶メソゲン化合物である場合もあり、従って上記一般式に該当するもののうち所望の性質を有するものを適宜選択しうる。式(II)の説明に用いられる記号は、式(I)の説明に用いられる記号と同一の記号であっても、式(I)の説明に用いられる記号とは別のものを表す。
【0069】
ここで、式(II)中、cおよびdは、それぞれ独立して、0また1であり、1が好ましい。
【0070】
そして、式(II)中、Ar
2は、下記式(III−1)〜式(III−4)で示される2価の基の何れかである。
【0072】
式(III−1)〜式(III−4)中、Raは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、または、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基である。式(III−1)〜式(III−4)のそれぞれにおいて、Raが複数存在する場合、これらの置換基は同一であっても、相異なっていてもよい。
【0073】
Raのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0074】
Raの炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0075】
Raの炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、sec−ブチルスルフィニル基、tert−ブチルスルフィニル基、ペンチルスルフィニル基、ヘキシル基スルフィニル等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルスルフィニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルフィニル基がより好ましく、メチルスルフィニル基が特に好ましい。
【0076】
Raの炭素数1〜6のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルスルホニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルホニル基がより好ましく、メチルスルホニル基が特に好ましい。
【0077】
Raの炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0078】
Raの炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0079】
Raの炭素数1〜6のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルチオ基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルチオ基がより好ましく、メチルチオ基が特に好ましい。
【0080】
Raの炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−イソブチルアミノ基、N−sec−ブチルアミノ基、N−tert−ブチルアミノ基、N−ペンチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基等が挙げられ、炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基が好ましく、炭素数1〜2のN−アルキルアミノ基がより好ましく、N−メチルアミノ基が特に好ましい。
【0081】
Raの炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基としては、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−ジイソブチルアミノ基、N,N−ジペンチルアミノ基、N,N−ジヘキシルアミノ基等が挙げられ、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルアミノ基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルアミノ基がより好ましく、N,N−ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0082】
Raの炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基としては、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−プロピルスルファモイル基、N−イソプロピルスルファモイル基、N−ブチルスルファモイル基、N−イソブチルスルファモイル基、N−sec−ブチルスルファモイル基、N−tert−ブチルスルファモイル基、N−ペンチルスルファモイル基、N−ヘキシルスルファモイル基等が挙げられ、炭素数1〜4のN−アルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数1〜2のN−アルキルスルファモイル基がより好ましく、N−メチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0083】
Raの炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−メチル−N−エチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N,N−ジイソプロピルスルファモイル基、N,N−ジブチルスルファモイル基、N,N−ジイソブチルスルファモイル基、N,N−ジペンチルスルファモイル基、N,N−ジヘキシルスルファモイル基等が挙げられ、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルスルファモイル基がより好ましく、N,N−ジメチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0084】
そして、Raは、ハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、メチルスルホニル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルチオ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチルスルファモイル基またはN,N−ジメチルスルファモイル基であることが好ましい。
【0085】
式(III−1)〜式(III−4)中、D
1およびD
2は、それぞれ独立して、−CR
41R
42−、−S−、−NR
41−、−C(=O)−、または、−O−である。ここで、R
41およびR
42は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。式(III−2)で表される基において2つ存在するD
1は、同一であっても、相異なっていてもよい。R
41およびR
42における炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0086】
そして、D
1は、−S−、−C(=O)−、−NH−、−N(CH
3)−であることが好ましく、D
2は、−S−、−C(=O)−であることが好ましい。
【0087】
式(III−1)〜式(III−4)中、AaおよびAbは、それぞれ独立して、置換されていてもよい芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基である。
【0088】
AaおよびAbにおける芳香族炭化水素環基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
AaおよびAbにおける芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾフリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも一つ含み、炭素数4〜20の芳香族複素環基が挙げられ、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基が好ましい。
【0089】
AaおよびAbにおける芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基は、一つ以上の置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜2のアルキルスルホニル基、炭素数1〜2のフルオロアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキルチオ基、炭素数1〜2のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜2のアルキルスルファモイル基が好ましい。Aa及びAbのそれぞれにおいて、置換基が2以上存在する場合は、それらは同一であっても相異なっていてもよい。
【0090】
AaおよびAbの置換基のハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、および炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、Raとして前記したものと同様のものが挙げられる。
【0091】
そして、AaおよびAbは、それぞれ独立して、以下の式(A−1)〜式(A−7)で表されるいずれかの基であることが好ましい。
【0093】
式(A−1)〜式(A−7)中、Z
2は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、または炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基を表す。
a
1は、0〜5の整数、a
2は、0〜4の整数、b
1は、0〜3の整数、b
2は、0〜2の整数を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【0094】
Z
2のハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、および炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、Raとして前記したものと同様のものが挙げられる。
そして、Z
2としては、ハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホン基、カルボキシル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルチオ基、N,N−ジメチルアミノ基又はN−メチルアミノ基が好ましい。
【0095】
またAaおよびAbは、それぞれ独立して、式(A−1)、式(A−3)又は(A−4)で表される基であることが、化合物(II)の光学的な特性やコストの点で特に好ましい。
【0096】
上述した式(III−1)〜式(III−4)中、pは、0〜6の整数であり、0または1であることが好ましい。
【0097】
そして、上述した式(II)中、Ar
2は、下記式(Ar−1)〜(Ar−4)で表される2価の基であることがより好ましい。
【0099】
式(Ar−1)〜式(Ar−4)中、Ra、D
1、Z
2、q、a
1、a
2およびb
1は、上記と同じ意味を表す。
【0100】
ここで、Ar
2の具体例を以下の式(ar−1)〜式(ar−94)に示す。
【0112】
上述した式(II)中、Z
21およびZ
22は、それぞれ独立して、単結合、−O−CH
2−、−CH
2−O−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−S−、−S−C(=O)−、−NR
51−C(=O)−、−C(=O)−NR
51−、−CF
2−O−、−O−CF
2−、−CH
2−CH
2−、−CF
2−CF
2−、−O−CH
2−CH
2−O−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−O−C(=O)−、−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH=CH−、−N=CH−、−CH=N−、−N=C(CH
3)−、−C(CH
3)=N−、−N=N−、または、−C≡C−である。R
51は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。中でも、Z
21は、−C(=O)−O−であることが好ましく、Z
22は、−O−C(=O)−であることが好ましい。
【0113】
上述した式(II)中、A
21およびA
22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい芳香族基である。中でも、A
21およびA
22は、置換基を有していてもよい環状脂肪族基であることが好ましい。
【0114】
置換基を有していてもよい環状脂肪族基は、無置換の2価の環状脂肪族基、または、置換基を有する2価の環状脂肪族基である。そして、2価の環状脂肪族基は、炭素数が通常は5〜20である、環状構造を有する2価の脂肪族基である。
A
21およびA
22の2価の環状脂肪族基の具体例としては、シクロペンタン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイル、1,4−シクロヘプタン−1,4−ジイル、シクロオクタン−1,5−ジイル等の炭素数5〜20のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン−1,5−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル等の炭素数5〜20のビシクロアルカンジイル基等が挙げられる。
【0115】
また、置換基を有していてもよい芳香族基は、無置換の2価の芳香族基、または、置換基を有する2価の芳香族基である。そして、2価の芳香族基は、炭素数が通常は2〜20である、芳香環構造を有する2価の芳香族基である。
A
21およびA
22の2価の芳香族基の具体例としては、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、4,4’−ビフェニレン基等の、炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素環基;フラン−2,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ピラジン−2,5−ジイル等の、炭素数2〜20の2価の芳香族複素環基;等が挙げられる。
【0116】
更に、A
21およびA
22の2価の環状脂肪族基および2価の芳香族基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;等が挙げられる。前記環状脂肪族基および芳香族基は、上述した置換基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい。置換基を複数有する場合は、これらの置換基は同一でも相異なっていてもよい。
【0117】
上述した式(II)中、cおよび/またはdが1の場合、Y
21およびY
22は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−NR
61−C(=O)−、−C(=O)−NR
61−、−O−C(=O)−O−、−NR
61−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NR
61−、または、−NR
61−C(=O)−NR
62−であり、ここで、R
61およびR
62は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。中でも、Y
21およびY
22は、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)−O−、または、−O−C(=O)−であることが好ましい。
前記R
61およびR
62の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0118】
また、cおよび/またはdが1の場合、B
21およびB
22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい芳香族基である。中でも、B
21およびB
22は置換基を有していてもよい芳香族基であることが好ましい。
【0119】
ここで、置換基を有していてもよい環状脂肪族基は、無置換の2価の環状脂肪族基、または、置換基を有する2価の環状脂肪族基である。そして、2価の環状脂肪族基は、炭素数が通常は5〜20である、環状構造を有する2価の脂肪族基である。
B
21およびB
22の2価の環状脂肪族基の具体例としては、化合物(II)のA
21およびA
22の2価の環状脂肪族基として例示したものと同じものが挙げられる。
【0120】
また、置換基を有していてもよい芳香族基は、無置換の2価の芳香族基、または、置換基を有する2価の芳香族基である。そして、2価の芳香族基は、炭素数が通常は2〜20である、芳香環構造を有する2価の芳香族基である。
B
21およびB
22の2価の芳香族基の具体例としては、化合物(II)のA
21およびA
22の2価の芳香族基として例示したものと同じものが挙げられる。
【0121】
更に、B
21およびB
22の2価の環状脂肪族基および2価の芳香族基の置換基としては、化合物(II)のA
21およびA
22の2価の環状脂肪族基および2価の芳香族基の置換基として例示したものと同じものが挙げられる。
【0122】
上述した式(II)中、Y
23およびY
24は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−NR
63−C(=O)−、−C(=O)−NR
63−、−O−C(=O)−O−、−NR
63−C(=O)−O−、−O−C(=O)−NR
63−、または、−NR
63−C(=O)−NR
64−であり、ここで、R
63およびR
64は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。中でも、Y
23およびY
24は、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)−O−、または、−O−C(=O)−であることが好ましい。
R
63およびR
64の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0123】
上述した式(II)中、L
11およびL
12は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、および、炭素数1〜20のアルキレン基に含まれるメチレン基(−CH
2−)の少なくとも一つが−O−または−C(=O)−に置換された基の何れかの有機基である。ここで、L
11およびL
12の有機基に含まれる水素原子は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれる1つ以上の置換基により置換されていてもよい。「炭素数1〜20のアルキレン基に含まれるメチレン基(−CH
2−)の少なくとも一つが−O−または−C(=O)−に置換された基」において、−O−は、アルキレン基中の連続したメチレン基を置換しない(すなわち、−O−O−の構造を形成しない)ことが好ましく、−C(=O)−は、アルキレン基中の連続したメチレン基を置換しない(すなわち、−C(=O)−C(=O)−の構造を形成しない)ことが好ましい。
ここで、L
11およびL
12の有機基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基がより好ましく、無置換の炭素数2〜12のアルキレン基が更に好ましく、−(CH
2)
y−で表される基(式中、yは2〜12の整数を表し、好ましくは2〜8の整数を表す。)が特に好ましい。
【0124】
上述した式(II)中、P
3およびP
4は、それぞれ、水素原子または重合性基である。そしてP
3およびP
4のうち少なくとも1つは重合性基である必要があり、P
3およびP
4の双方が重合性基であることが好ましい。
ここで、P
3およびP
4の重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基等のCH
2=CR
p−C(=O)−O−で表される基(R
pは、水素原子、メチル基、または塩素原子を表す。)、ビニル基、p−スチルベン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基などが例示される。中でも、CH
2=CR
p−C(=O)−O−で表される基が好ましく、CH
2=CH−C(=O)−O−(アクリロイルオキシ基)、CH
2=C(CH
3)−C(=O)−O−(メタクリロイルオキシ基)がより好ましく、アクリロイルオキシ基がさらに好ましい。化合物(II)中に2つのR
pが存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0125】
逆波長分散性に優れる光学異方性層等を得る観点からは、化合物(II)は、Ar
2を中心として左右が概ね対称な構造を有することが好ましい。具体的には、化合物(II)では、P
3−L
11−Y
23−[B
21−Y
21]
c−A
21−Z
21−(*)と、(*)−Z
22−A
22−[Y
22−B
22]
d−Y
24−L
12−P
4とがAr
2に結合する側(*)を対称中心とした対称構造を有することが好ましい。
「(*)を対称中心とした対称構造を有する」とは、例えば、−C(=O)−O−(*)と(*)−O−C(=O)−や、−O−(*)と(*)−O−や、−O−C(=O)−(*)と(*)−C(=O)−O−などの構造を有することを意味する。
【0126】
液晶化合物は、逆波長分散液晶化合物に限られず、順波長分散液晶化合物であってもよい。順波長分散液晶化合物の例としては、例えば、評価用液晶化合物として下記に例示した、式(E1)及び(E2)に示す構造を有する化合物が挙げられる。
【0127】
次に、逆波長非液晶メソゲン化合物について説明する。
逆波長非液晶メソゲン化合物は、単独では液晶性を示さないメソゲン化合物であるが、逆波長非液晶メソゲン化合物と評価用液晶化合物とを特定の混合割合で混合した評価用混合物は液晶性を示す。評価用液晶化合物としては、ホモジニアス配向した場合に順波長分散性の面内レターデーションを示す液晶化合物である順波長分散液晶化合物を用いる。評価用液晶化合物として順波長分散液晶化合物を用いることにより、評価用混合物をホモジニアス配向させた場合の逆波長メソゲン化合物の面内レターデーションの波長分散性の評価を容易に行うことができる。中でも、評価用液晶化合物としては、100℃において液晶相となりうる棒状構造を有する液晶化合物が好ましい。特に好ましい評価用液晶化合物の具体例としては、下記式(E1)に示す構造を有する順波長分散液晶化合物「LC242」、下記式(E2)に示す構造を有する順波長分散液晶化合物等が挙げられる。下記の式において、Meはメチル基を表す。
【0130】
また、前記の評価用混合物を得るために評価用液晶化合物と混合する逆波長非液晶メソゲン化合物の混合割合は、評価用液晶化合物及び逆波長非液晶メソゲン化合物の合計100重量部に対して、通常、30重量部〜70重量部の少なくともいずれかである。よって、評価用液晶化合物及び逆波長非液晶メソゲン化合物の合計100重量部に対して逆波長非液晶メソゲン化合物を30重量部〜70重量部の範囲に含まれる少なくとも一の混合割合で混合して、液晶性を示す評価用混合物が得られる限り、評価用液晶化合物及び逆波長非液晶メソゲン化合物の合計100重量部に対して逆波長非液晶メソゲン化合物を30重量部〜70重量部の範囲に含まれる別の混合割合で混合して得た混合物が、液晶性を示さなくてもよい。
【0131】
評価用混合物が液晶性を示すことは、下記の方法によって確認しうる。
基材上に評価用混合物を塗工及び乾燥させて、基材及び評価用混合物の層を備えるサンプルフィルムを得る。このサンプルフィルムをホットステージ上に設置する。偏光顕微鏡によってサンプルフィルムを観察しながら、サンプルフィルムを昇温させる。評価用混合物の層の液晶相への相転移が観察された場合、評価用混合物が液晶性を示すと判定できる。
【0132】
また、前記の評価用混合物をホモジニアス配向させた場合に、その評価用混合物中の逆波長非液晶メソゲン化合物は、逆波長分散性の面内レターデーションを示す。ここで、評価用混合物をホモジニアス配向させる、とは、当該評価用混合物の層を形成し、その層における評価用液晶化合物をホモジニアス配向させることをいう。よって、ホモジニアス配向した評価用混合物において、評価用液晶化合物の分子のメソゲン骨格の長軸方向は、通常、前記層の面に平行なある一の方向に配向している。
【0133】
また、ホモジニアス配向した評価用混合物中の非液晶メソゲン化合物が逆波長分散性の面内レターデーションを示す、とは、評価用混合物に含まれる非液晶メソゲン化合物の波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(450)及びRe(550)が、Re(450)/Re(550)<1.00を満たすことをいう。
【0134】
ただし、評価用混合物の層において、非液晶メソゲン化合物の面内レターデーションだけを選択的に測定することは、難しい。そこで、評価用液晶化合物が順波長分散液晶化合物であることを利用して、下記の確認方法により、評価用混合物中の非液晶メソゲン化合物が逆波長分散性の面内レターデーションを示すことを確認しうる。
順波長分散液晶化合物としての評価用液晶化合物を含む液晶層を形成し、その液晶層において評価用液晶化合物をホモジニアス配向させる。そして、その液晶層の波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(X450)及びRe(X550)の比Re(X450)/Re(X550)を測定する。
また、前記の評価用液晶化合物及び非液晶メソゲン化合物を含む評価用混合物の層を形成し、その評価用混合物の層において評価用混合物をホモジニアス配向させる。そして、その評価用混合物の層の波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(Y450)及びRe(Y550)の比Re(Y450)/Re(Y550)を測定する。
測定の結果、非液晶メソゲン化合物を含まない液晶層のレターデーション比Re(X450)/Re(X550)よりも、非液晶メソゲン化合物を含む評価用混合物の層のレターデーション比Re(Y450)/Re(Y550)が小さい場合、その非液晶メソゲン化合物は、逆波長分散性の面内レターデーションを示すと判定できる。
また、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、前記の確認方法において、液晶層の波長550nm及び650nmにおける面内レターデーションRe(X550)及びRe(X650)の比Re(X650)/Re(X550)よりも、評価用混合物の層の波長550nm及び650nmにおける面内レターデーションRe(Y550)及びRe(Y650)の比Re(Y650)/Re(Y550)の方が、大きいことが好ましい。
【0135】
逆波長非液晶メソゲン化合物としては、例えば、当該逆波長非液晶メソゲン化合物の分子中に、主鎖メソゲン骨格と、前記主鎖メソゲン骨格に結合した側鎖メソゲン骨格とを含む化合物を用いうる。
【0136】
さらに、逆波長非液晶メソゲン化合物は、重合性を有することが好ましい。よって、逆波長非液晶メソゲン化合物は、重合性基を有することが好ましい。このように重合性を有する逆波長非液晶メソゲン化合物を用いれば、重合によって逆波長非液晶メソゲン化合物の配向状態を容易に固定することが可能である。そのため、安定な光学特性を有する光学異方性層を容易に得ることができる。
【0137】
逆波長非液晶メソゲン化合物の分子量は、単量体である場合は、好ましくは300以上、より好ましくは700以上、特に好ましくは1000以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。逆波長非液晶メソゲン化合物が前記のような分子量を有することにより、光学異方性層を形成するための塗工液の塗工性を特に良好にできる。
【0138】
前記の逆波長非液晶メソゲン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0139】
逆波長非液晶メソゲン化合物としては、例えば前記式(I)で表される化合物のうち、液晶性を示さない化合物が挙げられる。中でも好ましい逆波長非液晶メソゲン化合物としては、下記の化合物が挙げられる。
【0141】
上述したメソゲン化合物の中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、当該メソゲン化合物の分子中に、ベンゾチアゾール環(下記式(10A)の環);並びに、シクロヘキシル環(下記式(10B)の環)及びフェニル環(下記式(10C)の環)の組み合わせ;からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものが好ましい。
【0143】
光学異方性層の全固形分におけるメソゲン化合物の比率は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは55重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。メソゲン化合物の比率が、前記範囲の下限値以上であることにより、光学異方性層のRthの波長分散性を逆分散性に近づけ易くでき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、光学異方性層において、メソゲン化合物を均一に分散させたり、光学異方性層の機械的強度を高くしたりできる。
【0144】
〔1.3.任意の成分〕
光学異方性層は、ポジC重合体及びメソゲン化合物に組み合わせて、更に、任意の成分を含みうる。例えば、下記に説明する塗工液の任意成分のうちの固形分に相当するものは、光学異方性層において任意成分として含有されうる。
【0145】
〔1.4.光学異方性層の層内構造〕
本発明の光学異方性層は、その内部に、メソゲン化合物の断面楕円状の形状を有する領域を有する。ここで、「断面楕円状」の形状とは、ある平面で切断した場合にその断面が楕円(円を含む)の形状となる立体形状であり、その例としては、楕円体(球を含む)、及び楕円体が変形した形状が挙げられる。
【0146】
本発明の光学異方性層において、かかる断面楕円状の形状を有する領域は、光学異方性層を厚み方向で切断した断面において、1μm×1μmあたり1個以上存在する。かかる断面楕円状の形状を有する領域の密度は、光学異方性層を、その厚み方向に平行な方向に切断し、断面を、TEM(透過型電子顕微鏡)にて観察することにより求めうる。より具体的には、断面において、最大径が0.03μm以上の楕円領域を計数し、1μm×1μm当たりの個数を計算することにより、かかる個数を求めうる。また、かかる楕円領域がメソゲン化合物により構成される領域であることは、断面の元素分析等の任意の方法により確認しうる。
【0147】
本発明の光学異方性層を厚み方向で切断した断面においては、メソゲン化合物の楕円領域の最大径の平均値が、特定の範囲内の値である。かかる断面における楕円領域の最大径は、メソゲン化合物の立体的な領域の最大径とは一致はしないものの、かかる立体的な領域の最大径の程度を表す指標として用いうる。かかる最大径の平均値は、0.13μm以上、好ましくは0.15μmであり、かつ0.50μm以下、好ましくは0.30μm以下である。本発明者が見出したところによると、楕円領域の最大径の平均値がかかる範囲内であることにより、光学異方性層の単位厚み当たりのRthの値を特に小さくすることができ、したがって、光学異方性層を、ポジティブCフィルムとして良好な光学的性能を有するものとすることができる。楕円領域の最大径の平均値は、上に述べたTEM観察において、個々の楕円領域の最大径を測定し、さらにそれらの平均値を計算することにより求めうる。
【0148】
〔1.5.光学異方性層の光学特性〕
本発明の光学異方性層は、上に述べた特定の構成を採用することにより、そのRthの発現性が高いものとすることができる。即ち、単位厚み当たりのRthの値を小さくすることができる。具体的には、Rth(A590)/d(即ち波長590nmにおける(nx+ny)/2−nzの値)が、式(1)を満たすことが好ましい。
−20.0×10
−3<Rth(A590)/d<−8.0×10
−3 (1)
Rth(A590)/dは、より好ましくは−16.0×10
−3〜−10.0×10
−3としうる。
【0149】
波長590nmにおける光学異方性層の面内レターデーションRe(A590)は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
Re(A590)≦10nm (2)
即ち、Re(A590)は、好ましくは0nm〜10nmである。式(2)におけるRe(A590)は、より好ましくは0nm〜5nm、特に好ましくは0nm〜2nmである。Re(A590)が前記の範囲内であることにより、光学異方性層をポジティブCフィルムとして有用に用いることができる。例えば、有用な光学補償等の機能を発現することができ、かつ、光学異方性層を画像表示装置に設ける場合の光学設計をシンプルにすることができ、かつ、他の位相差フィルムとの貼合時に貼り合せ方向の調整を不要にできる。
【0150】
波長590nmにおける光学異方性層の厚み方向のレターデーションRth(A590)は、下記式(3)を満たすことが好ましい。
−200nm≦Rth(A590)≦−50nm (3)
式(3)におけるRth(A590)は、好ましくは−200nm以上、より好ましくは−130nm以上、特に好ましくは−100nm以上であり、好ましくは−50nm以下、より好ましくは−60nm以下、特に好ましくは−70nm以下である。Rth(A590)が前記の範囲内であることにより、光学異方性層を、ポジティブCフィルムとして有用に用いることができる。例えば、かかる光学異方性層を、円偏光板に組み込んで画像表示装置に適用した場合に、画像表示装置の表示面の傾斜方向において、外光の反射を抑制し、反射光の色味変化を小さくしたり、画像を表示する光が偏光サングラスを透過できるようにしたりできる。さらに、画像表示装置が液晶表示装置である場合には、通常は、視野角を広げることができる。そのため、画像表示装置の表示面を傾斜方向から見た場合に、画像の視認性を高めることができる。
【0151】
光学異方性層は、その屈折率nx(A)、ny(A)及びnz(A)が、nz(A)>nx(A)≧ny(A)を満たす。ここで、nx(A)は、光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny(A)は、光学異方性層の前記面内方向であって前記nx(A)の方向に垂直な方向の屈折率を表し、nz(A)は、光学異方性層の厚み方向の屈折率を表す。このような光学異方性層を円偏光板に組み込んで画像表示装置に適用した場合に、画像表示装置の表示面の傾斜方向において、外光の反射を抑制したり、画像を表示する光が偏光サングラスを透過できるようにしたりできる。さらに、画像表示装置が液晶表示装置である場合には、通常、視野角を広げることができる。そのため、画像表示装置の表示面を傾斜方向から見た場合に、画像の視認性を高めることができる。
【0152】
光学異方性層の屈折率nx(A)と屈折率ny(A)とは、値が同じであるか近いことが好ましい。具体的には、屈折率nx(A)と屈折率ny(A)の差nx(A)−ny(A)は、好ましくは0.00000〜0.00100、より好ましくは0.00000〜0.00050、特に好ましくは0.00000〜0.00020である。屈折率差nx(A)−ny(A)が前記の範囲に収まることにより、光学異方性層を画像表示装置に設ける場合の光学設計をシンプルにすることができ、かつ他の位相差フィルムとの貼合時に貼り合せ方向の調整を不要にできる。
【0153】
波長450nmにおける光学異方性層の厚み方向のレターデーションRth(A450)、波長550nmにおける光学異方性層の厚み方向のレターデーションRth(A550)、及び、波長650nmにおける光学異方性層の厚み方向のレターデーションRth(A650)は、下記式(4)及び(5)を満たすことが好ましい。
0.50<Rth(A450)/Rth(A550)<1.00 (4)
1.00≦Rth(A650)/Rth(A550)<1.25 (5)
【0154】
式(4)におけるRth(A450)/Rth(A550)は、好ましくは0.50超、より好ましくは0.60超、さらにより好ましくは0.65超であり、また、好ましくは1.00未満、好ましくは0.90未満、より好ましくは0.85未満である。
【0155】
式(5)におけるRth(A650)/Rth(A550)は、好ましくは1.00以上、より好ましくは1.01以上、さらにより好ましくは1.02以上であり、好ましくは1.25未満、より好ましくは1.15未満、さらにより好ましくは1.10未満である。
【0156】
式(4)及び式(5)を満たすRth(A450)、Rth(A550)及びRth(A650)を有する光学異方性層は、その厚み方向のレターデーションRthが逆波長分散性を示す。このように厚み方向のレターデーションRthが逆波長分散性を示す光学異方性層は、円偏光板に組み込んで画像表示装置に適用した場合に、画像表示装置の表示面の傾斜方向において、外光の反射を抑制したり、画像を表示する光に偏光サングラスを透過させたりする機能を、広い波長範囲において発揮できる。さらに、画像表示装置が液晶表示装置である場合には、通常、視野角を効果的に広げることができる。そのため、表示面に表示される画像の視認性を、特に効果的に向上させることができる。そのような光学異方性層は、メソゲン化合物の一部又は全部として、逆波長分散液晶化合物、逆波長非液晶メソゲン化合物、又はこれらの組み合わせを採用することにより製造しうる。
【0157】
光学異方性層の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。
【0158】
光学異方性層のヘイズは、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらにより好ましくは2.0%未満、特に好ましくは1.0%以下であり、理想的には0%である。ここで、測定装置は、ヘイズガードII(株式会社 東洋精機製作所製)を用い、各サンプル3箇所測定し、それから求めた平均値を採用しうる。
【0159】
光学異方性層の厚みは、所望のレターデーションが得られるように、適切に調整しうる。光学異方性層の具体的な厚みは、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは3.0μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
【0160】
〔1.6.光学異方性層の製造方法〕
本発明の光学異方性層は、ポジC重合体と、メソゲン化合物と、溶媒とを含む塗工液を支持面上に塗工し、乾燥させることを含む製造方法により製造しうる。
より具体的には、光学異方性層は、ポジC重合体と、メソゲン化合物と、溶媒とを含む塗工液を用意する工程と;この塗工液を支持面上に塗工して、塗工液層を得る工程と;塗工液層を乾燥させる工程と;を含む製造方法によって、製造しうる。
【0161】
塗工液を用意する工程では、通常、ポジC重合体、メソゲン化合物及び溶媒を混合して、塗工液を得る。塗工液の全固形分におけるポジC重合体及びメソゲン化合物の比率は、光学異方性層におけるポジC重合体及びメソゲン化合物の比率と同様の範囲に調整しうる。
【0162】
溶媒としては、通常、有機溶媒を用いる。溶媒の種類を適宜選択することにより、上に述べた特定の層内構造を有する光学異方性層を容易に形成することができる。具体的には、溶媒として、特定の有機溶媒A及び有機溶媒Bを混合した混合溶媒を採用すると、特定の層内構造を容易に形成することができる。
【0163】
ここで、有機溶媒Aは、ポジC重合体とメソゲン化合物との両方に対して溶解性が良好であり、且つその沸点が70℃〜101℃、好ましくは75〜85℃である溶媒である。また、有機溶媒Bは、ポジC重合体に対して溶解性が良好であり、メソゲン化合物に対して溶解性が不良であり、且つその沸点が101℃〜150℃、好ましくは110〜130℃である溶媒である。ここでの溶解性とは、溶媒(有機溶媒A又はB)と、溶質(ポジC重合体又はメソゲン化合物)とを混合して溶質含有割合12重量%の溶液を調製し、25℃で1日撹拌した後、かかる溶液の沈殿物の有無及びヘイズ値を評価することにより判定する。ヘイズ値は、当該溶液を1cmの石英セルに入れて測定する。測定された値から、石英セルのみのヘイズ値を差し引くことにより、溶液のヘイズ値を求めうる。沈殿物が無く、且つ、ヘイズ値が80%以下である場合は溶解性が良好であると判定する。一方、沈殿物が有るか、又は、ヘイズが80%超である場合は溶解性が不良であると判定する。
【0164】
有機溶媒Aの例としては、1,3−ジオキソラン、MEK、1,4−ジオキサンが挙げられる。これらの溶媒のうち、共に用いるポジC重合体及びメソゲン化合物に対する溶解性が所望のものを、適宜選択して用いうる。これらの中でも、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサンが好ましく、1,3−ジオキソランが特に好ましい。
【0165】
有機溶媒Bの例としては、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−プロピル等のエステル構造を含む有機溶媒;MIBK(メチルイソブチルケトン)、2−ペンタノン等のケトン構造を含む有機溶媒;シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル構造を含む有機溶媒;並びにトルエン等の芳香環構造を含む有機溶媒が挙げられる。これらの溶媒のうち、共に用いるポジC重合体及びメソゲン化合物に対する溶解性が所望のものを、適宜選択して用いうる。これらの中でも、エステル構造を含む有機溶媒及びケトン構造を含む有機溶媒が好ましい。より具体的には、酢酸n−ブチル、MIBK、2−ペンタノン、酢酸イソブチル、酢酸n−プロピル及びシクロペンチルメチルエーテルが好ましい。
【0166】
有機溶媒Aと有機溶媒Bとの比率は、所望の層内構造が得られるよう適宜調整しうる。具体的には、有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計における有機溶媒Bの比率は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上であり、好ましくは35重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。有機溶媒A及び有機溶媒Bとして、上に述べた特定の溶解性及び沸点を有するものを採用し、且つ有機溶媒Aと有機溶媒Bとの比率をかかる範囲内とすることにより、特定の層内構造を容易に形成することができる。
【0167】
塗工液における溶媒の割合は、塗工液の固形分濃度を所望の範囲にできるように調整しうる。塗工液の固形分濃度は、好ましくは6重量%以上、より好ましくは8重量%以上、特に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは18重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。塗工液の固形分とは、塗工液を、乾燥の工程において乾燥させた場合に残留する成分のことをいう。塗工液の固形分濃度を前記の範囲に収めることにより、所望の光学特性を有する光学異方性層を容易に形成できる。
【0168】
光学異方性層を形成するための塗工液は、ポジC重合体、メソゲン化合物及び溶媒に組み合わせて、任意の成分を含んでいてもよい。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0169】
塗工液は、例えば、任意の成分として、可塑剤を含みうる。可塑剤としては、リン酸トリフェニル、グリセリルトリアセテート等が挙げられる。また、可塑剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0170】
可塑剤の量は、ポジC重合体100重量部に対して、好ましくは2重量部以上、より好ましくは5重量部以上、特に好ましくは8重量部以上であり、好ましくは15重量部以下、より好ましくは12重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。可塑剤の量を前記の範囲に調整することにより、光学異方性層の脆化を抑制して、機械的強度を高めることができる。
【0171】
塗工液は、例えば、任意の成分として、重合開始剤を含みうる。重合開始剤の種類は、塗工液中の重合性化合物が有する重合性基の種類に応じて適宜選択しうる。ここで、重合性化合物とは、重合性を有する化合物の総称である。中でも、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などが挙げられる。市販の光重合開始剤の具体的な例としては、BASF社製の、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure184、商品名:Irgacure369、品名:Irgacure651、商品名:Irgacure819、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure379、商品名:Irgacure379EG、及び商品名:Irgacure OXE02;ADEKA社製の、商品名:アデカオプトマーN1919等が挙げられる。また、重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0172】
重合開始剤の量は、重合性化合物100重量部に対し、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。
【0173】
塗工液は、任意の成分として、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等の任意の添加剤を含みうる。かかる任意の添加剤の割合は、ポジC重合体100重量部に対し、好ましくは、各々0.1重量部〜20重量部である。
【0174】
前記のような塗工液を用意した後で、この塗工液を支持面上に塗工して、塗工液層を得る工程を行う。支持面としては、塗工液層を支持できる任意の面を用いうる。この支持面としては、光学異方性層の面状態を良好にする観点から、通常、凹部及び凸部の無い平坦面を用いる。前記の支持面としては、長尺の基材の表面を用いることが好ましい。長尺の基材を用いる場合、連続的に搬送される基材上に、塗工液を連続的に塗工することが可能である。よって、長尺の基材を用いることにより、光学異方性層を連続的に製造できるので、生産性を向上させることが可能である。
【0175】
塗工液を基材上に塗工する場合、基材に適度の張力(通常、100N/m〜500N/m)を掛けて、基材の搬送ばたつきを少なくし、平面性を維持したまま塗工することが好ましい。平面性とは、基材の幅方向および搬送方向に垂直な上下方向の振れ量であり、理想的には0mmであるが、通常、1mm以下である。
【0176】
基材としては、通常、基材フィルムを用いる。基材フィルムとしては、光学的な積層体の基材として用いうるフィルムを、適切に選択して用いうる。中でも、基材フィルム及び光学異方性層を備える複層フィルムを光学フィルムとして利用可能にして、基材フィルムからの光学異方性層の剥離を不要にする観点から、基材フィルムとしては透明なフィルムが好ましい。具体的には、基材フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。
【0177】
基材フィルムの材料は、特に限定されず、種々の樹脂を用いうる。樹脂の例としては、各種の重合体を含む樹脂が挙げられる。当該重合体としては、脂環式構造含有重合体、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、UV透過アクリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ重合体、ポリスチレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、脂環式構造含有重合体及びセルロースエステルが好ましく、脂環式構造含有重合体がより好ましい。
【0178】
脂環式構造含有重合体は、繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、通常は非晶質の重合体である。脂環式構造含有重合体としては、主鎖中に脂環式構造を含有する重合体及び側鎖に脂環式構造を含有する重合体のいずれも用いうる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
1つの脂環式構造の繰り返し単位を構成する炭素数に特に制限はないが、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、特に好ましくは6個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。
【0179】
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されうるが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位を前記のように多くすることにより、基材フィルムの耐熱性を高くできる。
【0180】
脂環式構造含有重合体は、例えば、(1)ノルボルネン重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性の観点から、ノルボルネン重合体がより好ましい。
【0181】
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネンモノマーの開環重合体、ノルボルネンモノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物;ノルボルネンモノマーの付加重合体、ノルボルネンモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネンモノマーの開環重合体水素添加物が特に好ましい。
【0182】
上記の脂環式構造含有重合体は、例えば特開2002−321302号公報等に開示されている公知の重合体から選ばれる。
【0183】
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃〜250℃の範囲である。ガラス転移温度がこのような範囲にある脂環式構造含有重合体は、高温下での使用における変形及び応力を生じ難く、耐久性に優れる。
【0184】
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは25,000〜80,000、さらにより好ましくは25,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、基材フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(樹脂が溶解しない場合にはトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)により、ポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の値で測定しうる。
【0185】
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3.5以下である。
【0186】
基材フィルムの材質として脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いた場合の、基材フィルムの厚みは、生産性の向上、薄型化及び軽量化を容易にする観点から、好ましくは1μm〜1000μm、より好ましくは5μm〜300μm、特に好ましくは30μm〜100μmである。
【0187】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、脂環式構造含有重合体のみからなってもよいが、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含んでもよい。脂環式構造含有重合体を含む樹脂中の、脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
脂環式構造含有重合体を含む樹脂の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア1420」、「ゼオノア1420R」を挙げうる。
【0188】
基材フィルムの他の例としては、基材フィルムとして市販されているフィルムが挙げられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルを主な成分とするフィルム(例えば、商品名「コスモシャインA4100」、東洋紡株式会社製)が挙げられる。
【0189】
塗工液の塗工方法の例としては、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。塗工される塗工液の厚みは、光学異方性層に求められる所望の厚さに応じて適切に設定しうる。
【0190】
塗工液を支持面上に塗工して塗工液層を得た後で、塗工液層を乾燥させる工程を行う。塗工液層の乾燥により、塗工液層から溶媒が除去されて、光学異方性層が得られる。乾燥は、オーブン等の加熱装置において、塗工液層を加熱することにより行いうる。加熱温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、好ましくは110℃以下、より好ましくは95℃以下である。加熱時間は、好ましくは2分以上、より好ましくは4分以上であり、好ましくは10分以下、より好ましくは8分以下である。
【0191】
加熱工程は、塗工工程の直後に行うことが、光学異方性層の白濁の抑制の観点から好ましい。但し、製造ラインの設計上の要請から、塗工装置と加熱装置とを近接させることができず、加熱工程と塗工工程との間に時間的な間隔がある場合でも、塗工液として上に述べた特定の組成の塗工液を採用した場合は、白濁を抑制することができる。具体的には、塗工工程終了後加熱工程開始までの間に、塗工液が室温にて風乾される時間が存在していてもよく、かかる風乾の時間は、好ましくは0〜180秒、より好ましくは0〜90秒、さらにより好ましくは0〜60秒としうる。塗工工程終了後加熱工程開始までの時間をこの範囲内とし、且つ塗工液として上に述べた特定の組成の塗工液を採用することにより、白濁の発生を効果的に抑制しながら、Rth値の小さい光学異方性層を製造しうる。
【0192】
上述した光学異方性層の製造方法は、ポジC重合体及びメソゲン化合物を組み合わせて含む塗工液を塗工し、乾燥するというシンプルな操作によって、光学異方性層を製造できる。そのため、特許文献1に記載の方法では必要な配向膜が不要である。したがって、逆波長分散液晶と配向膜との相性の調整、配向膜の形成、といった操作が必要ないので、光学異方性層を容易に製造できる。
【0193】
さらに、ポジC重合体及びメソゲン化合物を組み合わせて含む塗工液は、乾燥の際、空気の揺らぎの影響による、メソゲン化合物の配向ムラの発生を抑制できる。そのため、面内方向の広い範囲において配向状態が均一な光学異方性層を容易に得ることができるので、面状態に優れる光学異方性層を得やすい。よって、光学異方性層の配向ムラに起因する白濁を抑制することが可能である。
【0194】
光学異方性層の製造方法は、上述した工程に加えて、更に任意の工程を含みうる。例えば、光学異方性層の製造方法は、乾燥後に得られた光学異方性層において、メソゲン化合物の配向状態を固定する工程を行ってもよい。この工程では、通常、メソゲン化合物を重合させることにより、メソゲン化合物の配向状態を固定する。
【0195】
メソゲン化合物の重合は、重合性化合物及び重合開始剤等の、塗工液が含む成分の性質に適合した方法を適切に選択しうる。例えば、光を照射する方法が好ましい。ここで、照射される光には、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光が含まれうる。なかでも、操作が簡便なことから、紫外線を照射する方法が好ましい。紫外線照射強度は、好ましくは0.1mW/cm
2〜1000mW/cm
2の範囲、より好ましくは0.5mW/cm
2〜600mW/cm
2の範囲である。紫外線照射時間は、好ましくは1秒〜300秒の範囲、より好ましくは5秒〜100秒の範囲である。紫外線積算光量(mJ/cm
2)は、紫外線照射強度(mW/cm
2)×照射時間(秒)で求められる。紫外線照射光源としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、低圧水銀灯を用いることができる。メソゲン化合物の重合は、窒素雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下で行ったほうが、残留モノマー割合が低減される傾向にあるので、好ましい。
【0196】
また、光学異方性層の製造方法は、例えば、光学異方性層を基材から剥離する工程を含んでいてもよい。
【0197】
〔2.光学異方性積層体〕
本発明の光学異方性層の用途は、特に限定されず、ポジティブCフィルムとしての光学的性質が求められる種々の用途に用いうる。好ましい例として、以下に説明する本発明の光学異方性積層体の構成要素として用いうる。
本発明の光学異方性積層体は、前記本発明の光学異方性層と、位相差層とを備える。
【0198】
〔2.1.光学異方性積層体における光学異方性層〕
光学異方性積層体の光学異方性層としては、上述したものを用いる。ただし、光学異方性積層体においては、波長590nmにおける光学異方性層の面内レターデーションRe(A590)、及び、波長590nmにおける光学異方性層の厚み方向のレターデーションRth(A590)が、下記式(9)及び(10)を満たすことが好ましい。
Re(A590)≦10nm (9)
−200nm≦Rth(A590)≦−50nm (10)
【0199】
式(9)におけるRe(A590)は、好ましくは0nm〜10nm、より好ましくは0nm〜5nm、特に好ましくは0nm〜2nmである。Re(A590)が前記の範囲であることにより、光学異方性層をポジティブCフィルムとして有用に用いることができる。例えば、有用な光学補償等の機能を発現することができ、かつ、光学異方性積層体を画像表示装置に設ける場合の光学設計をシンプルにすることができる。
【0200】
式(10)におけるRth(A590)は、好ましくは−200nm以上、より好ましくは−130nm以上であり、好ましくは−100nm以下、より好ましくは−60nm以下、特に好ましくは−70nm以下である。Rth(A590)が前記の範囲内であることにより、光学異方性層を、ポジティブCフィルムとして有用に用いることができる。例えば、かかる光学異方性層を備えた光学異方性積層体を、円偏光板に組み込んで画像表示装置に適用した場合に、画像表示装置の表示面の傾斜方向において、外光の反射を抑制したり、画像を表示する光が偏光サングラスを透過させたりする機能を、効果的に発揮できる。そのため、画像表示装置の表示面を傾斜方向から見た場合に、画像の視認性を効果的に高めることができる。
【0201】
〔2.2.光学異方性積層体における位相差層〕
〔2.2.1.位相差層の光学特性〕
位相差層は、その屈折率nx(B)、ny(B)及びnz(B)が、nx(B)>ny(B)≧nz(B)を満たす層である。ここで、nx(B)は、位相差層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny(B)は、位相差層の面内方向であって前記nx(B)の方向に垂直な方向の屈折率を表し、nz(B)は、位相差層の厚み方向の屈折率を表す。このような位相差層を備える光学異方性積層体は、直線偏光子と組み合わせることによって円偏光板を製造できる。この円偏光板は、画像表示装置の表示面に設けることにより、表示面を正面方向から見た場合に、外光の反射を抑制したり、画像を表示する光が偏光サングラスを透過できるようにしたりできるので、画像の視認性を高めることが可能である。
【0202】
位相差層の屈折率ny(B)と屈折率nz(B)とは、値が同じであるか近いことが好ましい。具体的には、屈折率ny(B)と屈折率nz(B)の差の絶対値|ny(B)−nz(B)|は、好ましくは0.00000〜0.00100、より好ましくは0.00000〜0.00050、特に好ましくは0.00000〜0.00020である。屈折率差の絶対値|ny(B)−nz(B)|が前記の範囲であることにより、光学異方性積層体を画像表示装置に設ける場合の光学設計をシンプルにすることができる。
【0203】
波長590nmにおける位相差層の面内レターデーションRe(B590)は、下記式(8)を満たすことが好ましい。
110nm≦Re(B590)≦170nm (8)
【0204】
式(8)におけるRe(B590)は、好ましくは110nm以上、より好ましくは120nm以上、特に好ましくは130nm以上であり、好ましくは170nm以下、より好ましくは160nm以下、特に好ましくは150nm以下である。このようなRe(B590)を有する位相差層を備えた光学異方性積層体は、直線偏光子と組み合わせて円偏光板を得ることができる。この円偏光板を画像表示装置の表示面に設けることにより、表示面を正面方向から見た場合に、外光の反射を抑制したり、画像を表示する光が偏光サングラスを透過できるようにしたりできるので、画像の視認性を高めることが可能である。
【0205】
波長450nmにおける位相差層の面内レターデーションRe(B450)、波長550nmにおける位相差層の面内レターデーションRe(B550)、及び、波長650nmにおける位相差層の面内レターデーションRe(B650)は、下記の式(6)及び(7)を満たすことが好ましい。
0.75<Re(B450)/Re(B550)<1.00 (6)
1.01<Re(B650)/Re(B550)<1.25 (7)
【0206】
式(6)におけるRe(B450)/Re(B550)は、好ましくは0.75より大きく、より好ましくは0.78より大きく、特に好ましくは0.80より大きく、また、好ましくは1.00未満、より好ましくは0.95未満、特に好ましくは0.90未満である。
【0207】
式(7)におけるRe(B650)/Re(B550)は、好ましくは1.01より大きく、好ましくは1.02より大きく、特に好ましくは1.04より大きく、また、好ましくは1.25未満、より好ましくは1.22未満、特に好ましくは1.19未満である。
【0208】
式(6)及び式(7)を満たす面内レターデーションRe(B450)、Re(B550)及びRe(B650)を有する位相差層は、その面内レターデーションReが逆波長分散性を示す。このように面内レターデーションReが逆波長分散性を示す位相差層を備える光学異方性積層体は、円偏光板に組み込んで画像表示装置に適用した場合に、画像表示装置の表示面の正面方向において、外光の反射を抑制したり、画像を表示する光に偏光サングラスを透過させたりする機能を、広い波長範囲において発揮できる。そのため、表示面に表示される画像の視認性を、特に効果的に向上させることができる。
【0209】
位相差層の面内の遅相軸方向は、任意であり、光学異方性積層体の用途に応じて任意に設定しうる。中でも、光学異方性積層体が長尺のフィルムである場合、位相差層の遅相軸とフィルム幅方向とがなす角度は、0°超90°未満であることが好ましい。また、ある態様において、位相差層の面内の遅相軸とフィルム幅方向とがなす角度は、好ましくは15°±5°、22.5°±5°、45°±5°、又は75°±5°、より好ましくは15°±4°、22.5°±4°、45°±4°、又は75°±4°、さらにより好ましくは15°±3°、22.5°±3°、45°±3°、又は75°±3°といった特定の範囲としうる。このような角度関係を有することにより、長尺の直線偏光子に光学異方性積層体をロールツーロールで貼り合わせて、円偏光板の効率的な製造が可能となる。
【0210】
位相差層の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。また、位相差層のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。
【0211】
〔2.2.2.位相差層としての延伸フィルム層〕
前記のような位相差層としては、延伸フィルム層を用いうる。位相差層として延伸フィルム層を用いる場合、当該延伸フィルム層は、光学異方性層の製造方法において説明した基材フィルムの材料である樹脂を含みうる。このような樹脂を含むフィルム層は、延伸処理を施すことにより、レターデーション等の光学特性を発現しうる。中でも、前記の延伸フィルム層は、脂環式構造含有重合体を含むことが好ましい。
【0212】
位相差層としての延伸フィルム層の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは13μm以上、特に好ましくは15μm以上であり、好ましくは60μm以下、より好ましくは58μm以下、特に好ましくは55μm以下である。延伸フィルム層の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより所望のレターデーションの発現ができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより薄膜化ができる。
【0213】
〔2.2.3.位相差層としての液晶層〕
前記のような位相差層の材料としては、位相差層用の液晶化合物(以下、適宜「位相差層用液晶化合物」ということがある。)を含む液晶層を用いうる。位相差層において、位相差用液晶化合物は、その配向状態が固定されていてもよく、固定されていなくてもよい。この際、位相差層用液晶化合物としては、ホモジニアス配向した前記の逆波長分散液晶化合物を用いることが好ましい。これにより、光学異方性層の項において説明したのと同様の利点を、位相差層においても得ることができる。位相差用液晶化合物の好ましい例としては、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。以下の説明において、式(II)で表される化合物を、適宜「化合物(II)」ということがある。位相差用液晶化合物としては、化合物(II)のうち、所望の位相差を与えるものを適宜選択して用いうる。
【0215】
前記式(II)において、Y
1〜Y
8、G
1、G
2、Z
1、Z
2、A
x、A
y、A
1〜A
5、Q
1、及びmは、式(I)における意味と同様の意味を表す。よって、式(II)で表される液晶化合物は、式(I)で表される液晶化合物と同様の化合物を表す。
【0216】
位相差層としての液晶層の厚みは、特に限定されず、レターデーションなどの特性を所望の範囲とできるように適切に調整しうる。液晶層の具体的な厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
【0217】
〔2.3.光学異方性積層体における任意の層〕
光学異方性積層体は、光学異方性層及び位相差層に組み合わせて、更に任意の層を備えうる。任意の層としては、例えば、接着層、ハードコート層、防眩層、帯電防止層、防汚層等が挙げられる。
【0218】
〔3.偏光板〕
本発明の偏光板は、直線偏光子と、上述した光学異方性層又は光学異方性積層体とを備える。このような偏光板は、画像表示装置に設けることにより、画像表示装置を傾斜方向から見た場合の画像の視認性を高めることができる。
【0219】
直線偏光子としては、液晶表示装置、及びその他の光学装置等の装置に用いられている既知の直線偏光子を用いうる。直線偏光子の例としては、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるフィルム;ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるフィルム;が挙げられる。また、直線偏光子の他の例としては、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの、偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうち、直線偏光子としては、ポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。
【0220】
直線偏光子に自然光を入射させると、一方の偏光だけが透過する。この直線偏光子の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。
また、直線偏光子の厚みは、好ましくは5μm〜80μmである。
【0221】
偏光板は、更に、直線偏光子と、光学異方性層又は光学異方性積層体とを貼り合わせるための、接着層を備えていてもよい。接着層としては、硬化性接着剤を硬化させてなる層を用いうる。硬化性接着剤としては、熱硬化性接着剤を用いてもよいが、光硬化性接着剤を用いることが好ましい。光硬化性接着剤としては、重合体又は反応性の単量体を含んだものを用いうる。また、接着剤は、必要に応じて溶媒、光重合開始剤、その他の添加剤等を含みうる。
【0222】
光硬化性接着剤は、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光を照射すると硬化しうる接着剤である。中でも、操作が簡便なことから、紫外線で硬化しうる接着剤が好ましい。
【0223】
接着層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。接着層の厚みを前記範囲内とすることにより、光学異方性層の光学的性質を損ねずに、良好な接着を達成しうる。
【0224】
また、偏光板が光学異方性積層体を備える場合、その偏光板は、円偏光板として機能しうる。このような円偏光板は、直線偏光子、光学異方性層及び位相差層を、この順で備えていてもよい。また、このような円偏光板は、直線偏光子、位相差層及び光学異方性層を、この順で備えていてもよい。
【0225】
前記のような円偏光板において、直線偏光子の偏光吸収軸に対して位相差層の遅相軸がなす角度は、45°またはそれに近い角度であることが好ましく、具体的には、好ましくは45°±5°、より好ましくは45°±4°、特に好ましくは45°±3°である。
【0226】
上述した偏光板は、更に、任意の層を含みうる。任意の層としては、例えば、偏光子保護フィルム層が挙げられる。偏光子保護フィルム層としては、任意の透明フィルム層を用いうる。中でも、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れる樹脂のフィルム層が好ましい。そのような樹脂としては、トリアセチルセルロース等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、鎖状オレフィン樹脂、環式オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。さらに、偏光板が含みうる任意の層としては、例えば、耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層、フィルムの滑り性を良くするマット層、反射抑制層、防汚層等が挙げられる。これらの任意の層は、1層だけを設けてもよく、2層以上を設けてもよい。
【0227】
偏光板は、直線偏光子と、光学異方性層又は光学異方性積層体とを、必要に応じて接着剤を用いて、貼り合わせることによって、製造しうる。
【0228】
〔4.画像表示装置〕
本発明の画像表示装置は、画像表示素子と、上述した本発明の偏光板とを備える。画像表示装置において、偏光板は、通常、画像表示素子の視認側に設けられる。この際、偏光板の向きは、その偏光板の用途に応じて任意に設定しうる。よって、画像表示装置は、光学異方性層又は光学異方性積層体と;偏光子と;画像表示素子と;を、この順に備えていてもよい。また、画像表示装置は、偏光子と;光学異方性層又は光学異方性積層体と;画像表示素子と;を、この順に備えていてもよい。
【0229】
画像表示装置としては、画像表示素子の種類に応じて様々なものがあるが、代表的な例としては、画像表示素子として液晶セルを備える液晶表示装置、及び、画像表示素子として有機EL素子を備える有機EL表示装置が挙げられる。
以下、画像表示装置の好ましい実施形態について、図面を示して説明する。
【0230】
図1は、本発明の第一実施形態に係る画像表示装置としての有機EL表示装置100を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、有機EL表示装置100は、画像表示素子としての有機EL素子110;位相差層121及び光学異方性層122を備える光学異方性積層体120;並びに、直線偏光子130を、この順に備える。
図1には、有機EL素子110側から位相差層121及び光学異方性層122がこの順に設けられた例を示したが、逆に、有機EL素子110側から光学異方性層122及び位相差層121がこの順に設けられていてもよい。
【0231】
有機EL表示装置100において、位相差層121は、直線偏光子130の偏光吸収軸に対して位相差層121の遅相軸がなす角度が、45°またはそれに近い角度(例えば、好ましくは45°±5°、より好ましくは45°±4°、特に好ましくは45°±3°)となるように設けられる。これにより、位相差層121と直線偏光子130との組み合わせによって、円偏光板の機能が発現して、外光の反射による表示面100Uのぎらつきを抑制できる。
【0232】
具体的には、装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが直線偏光子130を通過し、次にそれが位相差層121を含む光学異方性積層体120を通過することにより、円偏光となる。円偏光は、表示装置内の光を反射する構成要素(有機EL素子110中の反射電極(図示せず)等)により反射され、再び光学異方性積層体120を通過することにより、入射した直線偏光の振動方向と直交する振動方向を有する直線偏光となり、直線偏光子130を通過しなくなる。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。これにより、反射抑制の機能が達成される(有機EL表示装置における反射抑制の原理は、特開平9-127885号公報参照)。
【0233】
さらに、有機EL表示装置100は、光学異方性積層体120がポジティブCフィルムとして機能しうる光学異方性層122を備えるので、前記の反射抑制の機能を、表示面100Uの正面方向だけでなく、傾斜方向においても発揮できる。さらに、光学異方性層122は、その厚み方向のレターデーションRthが逆波長分散性を示すので、広い波長範囲の光の反射を抑制することが可能である。さらに、厚み方向のレターデーションが順波長分散性を示すポジティブCフィルムを用いた有機EL表示装置に比べて、表示面100Uの傾斜方向から見た場合の反射光の色味変化を抑制できる。したがって、有機EL表示装置100は、表示面100Uの正面方向及び傾斜方向の両方において外光の反射を効果的に抑制して、画像の視認性を高めることが可能である。
【0234】
図2は、本発明の第二実施形態に係る画像表示装置としての有機EL表示装置200を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、有機EL表示装置200は、画像表示素子としての有機EL素子210;λ/4波長板220;直線偏光子230;並びに、位相差層241及び光学異方性層242を備える光学異方性積層体240;を、この順に備える。
図2には、有機EL素子210側から位相差層241及び光学異方性層242がこの順に設けられた例を示したが、逆に、有機EL素子210側から光学異方性層242及び位相差層241がこの順に設けられていてもよい。
【0235】
λ/4波長板220としては、直線偏光子230を透過した直線偏光を円偏光に変換しうる部材を用いうる。このようなλ/4波長板220としては、例えば、位相差層241が有しうる面内レターデーションReの範囲と同様の範囲の面内レターデーションReを有するフィルムを用いうる。また、λ/4波長板220は、直線偏光子230の偏光吸収軸に対してλ/4波長板220の遅相軸がなす角度が、45°またはそれに近い角度(例えば、好ましくは45°±5°、より好ましくは45°±4°、特に好ましくは45°±3°)となるように設けられる。これにより、λ/4波長板220と直線偏光子230との組み合わせによって、円偏光板の機能が発現して、外光の反射による表示面200Uのぎらつきを抑制できる。
【0236】
また、有機EL表示装置200において、位相差層241は、直線偏光子230の偏光吸収軸に対して位相差層241の遅相軸がなす角度が、45°またはそれに近い角度(例えば、好ましくは45°±5°、より好ましくは45°±4°、特に好ましくは45°±3°)となるように設けられる。
【0237】
このような有機EL表示装置200においては、有機EL素子210から発せられ、λ/4波長板220、直線偏光子230及び光学異方性積層体240を通過した光によって、画像が表示される。よって、画像を表示する光は、直線偏光子230を通過した時点では直線偏光であるが、位相差層241を含む光学異方性積層体240を通過することによって、円偏光に変換される。したがって、前記の有機EL表示装置200では、円偏光によって画像が表示されるので、偏光サングラスを通して表示面200Uを見た場合に、画像を視認することが可能である。
【0238】
さらに、有機EL表示装置200は、光学異方性積層体240がポジティブCフィルムとして機能しうる光学異方性層242を備えるので、画像を表示する光は、表示面200Uの正面方向だけでなく、傾斜方向においても、偏光サングラスを透過できる。さらに、光学異方性層242は、その厚み方向のレターデーションRthが逆波長分散性を示すので、広い波長範囲の光が、偏光サングラスを透過できる。したがって、有機EL表示装置200は、表示面200Uの正面方向及び傾斜方向の両方において、偏光サングラスを通した画像の視認性を高めることが可能である。
【0239】
前記の有機EL素子110及び210は、透明電極層、発光層及び電極層をこの順に備え、透明電極層及び電極層から電圧を印加されることにより発光層が光を生じうる。有機発光層を構成する材料の例としては、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、およびポリビニルカルバゾール系の材料を挙げることができる。また、発光層は、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を有していてもよい。さらに、有機EL素子110及び210は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、等電位面形成層、電荷発生層等の機能層を備えていてもよい。
【0240】
図3は、本発明の第三実施形態に係る画像表示装置としての液晶表示装置300を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、液晶表示装置300は、光源310;光源側直線偏光子320;画像表示素子としての液晶セル330;視認側直線偏光子340;並びに、位相差層351及び光学異方性層352を備える光学異方性積層体350;を、この順に備える。
図3には、液晶セル330側から位相差層351及び光学異方性層352がこの順に設けられた例を示したが、逆に、液晶セル330側から光学異方性層352及び位相差層351がこの順に設けられていてもよい。
【0241】
液晶表示装置300において、位相差層351は、視認側直線偏光子340の偏光吸収軸に対して位相差層351の遅相軸がなす角度が、45°またはそれに近い角度(例えば、好ましくは45°±5°、より好ましくは45°±4°、特に好ましくは45°±3°)となるように設けられる。
【0242】
このような液晶表示装置300においては、光源310から発せられ、光源側直線偏光子320、液晶セル330、視認側直線偏光子340、及び光学異方性積層体350を通過した光によって、画像が表示される。よって、画像を表示する光は、視認側直線偏光子340を通過した時点では直線偏光であるが、位相差層351を含む光学異方性積層体350を通過することによって、円偏光に変換される。したがって、前記の液晶表示装置300では、円偏光によって画像が表示されるので、偏光サングラスを通して表示面300Uを見た場合に、画像を視認することが可能である。
【0243】
さらに、液晶表示装置300は、光学異方性積層体350がポジティブCフィルムとして機能しうる光学異方性層352を備えるので、画像を表示する光は、表示面300Uの正面方向だけでなく、傾斜方向においても、偏光サングラスを透過できる。さらに、光学異方性層352は、その厚み方向のレターデーションRthが逆波長分散性を示すので、広い波長範囲の光が、偏光サングラスを透過できる。したがって、液晶表示装置300は、表示面300Uの正面方向及び傾斜方向の両方において、偏光サングラスを通した画像の視認性を高めることが可能である。
【0244】
液晶セル330は、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなど、任意のモードの液晶セルを用いうる。中でも、IPSモードの液晶セル330は、光学異方性層352によって視野角を効果的に広くでき、更には表示面300Uを傾斜方向から見たときのコントラスト及び色味変化に改善効果があることから、好ましい。
【実施例】
【0245】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0246】
〔評価方法〕
〔溶解性〕
溶媒(有機溶媒A又はB)と、溶質(ポジC重合体又はメソゲン化合物)とを混合して溶質含有割合12重量%の溶液を調製した。溶液を、25℃で1日撹拌した後、かかる溶液の沈殿物の有無及びヘイズ値を評価した。ヘイズ値は、当該溶液を1cmの石英セルに入れて測定した。測定機器としては、ヘイズガードII(株式会社東洋精機製作所製)を用いた。測定された値から、石英セルのみのヘイズ値を差し引くことにより、溶液のヘイズ値を求めた。沈殿物が無く、且つ、ヘイズ値が80%以下である場合は溶解性が良好であると判定した。一方、沈殿物が有るか、又は、ヘイズが80%超である場合は溶解性が不良であると判定した。
【0247】
〔レターデーション及び屈折率の測定、及び、それらの逆波長分散性の評価〕
基材フィルム等の支持体上に形成された、測定対象の層のレターデーション及び逆波長分散特性は、下記の方法で測定した。
【0248】
測定対象の層を、粘着剤付スライドガラス(粘着剤は、日東電工社製「CS9621T」)に貼り合せた。その後、支持体を剥離し、スライドガラス及び測定対象の層を備えるサンプルを得た。このサンプルを、位相差計(Axometrics社製)のステージに設置して、測定対象の層の面内レターデーションReの波長分散を測定した。ここで、面内レターデーションReの波長分散とは、波長毎の面内レターデーションReを表すグラフであり、例えば、横軸を波長、縦軸を面内レターデーションReとした座標においてグラフとして示される。こうして得られた測定対象の層の面内レターデーションReの波長分散から、波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける測定対象の層の面内レターデーションRe(450)、Re(550)、Re(590)及びRe(650)を求めた。
【0249】
また、測定対象の層の遅相軸を回転軸として、ステージを40°傾けて、測定対象の層の厚み方向に対して40°の角度をなす傾斜方向での測定対象の層のレターデーションRe40の波長分散を測定した。ここで、レターデーションRe40の波長分散とは、波長毎のレターデーションRe40を表すグラフであり、例えば、横軸を波長、縦軸を面内レターデーションRe40とした座標においてグラフとして示される。
【0250】
さらに、プリズムカプラ(Metricon社製)を用いて、測定対象の層の、面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率nx、前記面内方向であって前記nxの方向に垂直な方向の屈折率ny、及び、厚み方向の屈折率nzを、波長407nm、532nm及び633nmで測定し、コーシーフィッティングすることにより、屈折率nx、ny及びnzの波長分散を得た。ここで、屈折率の波長分散とは、波長毎の屈折率を表すグラフであり、例えば、横軸を波長、縦軸を屈折率とした座標においてグラフとして示される。
【0251】
その後、レターデーションRe40及び屈折率の波長分散のデータを基に、測定対象の層の厚み方向のレターデーションRthの波長分散を計算した。ここで、厚み方向のレターデーションRthの波長分散とは、波長毎の厚み方向のレターデーションRthを表すグラフであり、例えば、横軸を波長、縦軸を厚み方向のレターデーションRthとした座標においてグラフとして示される。そして、こうして求められた測定対象の層の厚み方向のレターデーションRthの波長分散から、波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける測定対象の層の厚み方向のレターデーションRth(450)、Rth(550)、Rth(590)及びRth(650)を求めた。
【0252】
〔厚み〕
基材フィルム等の支持体上に形成された測定対象の層の厚みは、膜厚測定装置(フィルメトリクス社製「フィルメトリクス」)を用いて、測定した。
【0253】
〔楕円領域の密度、及び楕円領域の最大径の平均値の測定〕
光学異方性層を、その厚み方向に平行な方向に切断した断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。断面において、最大径が0.03μm以上の楕円領域を計数し、1μm×1μm当たりの個数を計算し、楕円領域の密度を求めた。また、観察された楕円領域の最大径の平均値を計算した。かかる楕円領域がメソゲン化合物により構成される領域であることは、断面の元素分析等の任意の方法により確認した。
【0254】
〔実施例1〕
液晶化合物50重量部、及びポジC重合体50重量部を、固形分濃度が12%となるように、混合溶媒に溶解させ、塗工液を調製した。
液晶化合物としては、下記式(IA)で表される構造を有する光重合性の逆波長分散液晶化合物IA(CN点は96℃)を用いた。ポジC重合体としては、下記式(P1)で表される重合単位及び下記式(P2)で表される重合単位を有するポリフマル酸エステル(フマル酸ジイソプロピルとケイ皮酸エステルの共重合体、式中Rはイソプロピル基、重合単位の数m及びnの比率m:n=85:15、分子量72,000)を用いた。混合溶媒としては、1,3−ジオキソラン(有機溶媒A、沸点77℃、化合物IAに対する溶解性良好、ポジC重合体に対する溶解性良好)80重量%及びMIBK(有機溶媒B、沸点117℃、化合物IAに対する溶解性不良、ポジC重合体に対する溶解性良好)20重量%の混合物を用いた。
【0255】
【化26】
【0256】
【化27】
【0257】
【化28】
【0258】
基材フィルムとして、PETフィルム(東洋紡社製「コスモシャインA4100」、厚み100μm)を用意した。基材フィルムの面上に、塗工液を、アプリケーターを用いて塗工して、塗工液層を形成した。塗工液層の厚みは、得られる光学異方性層の厚みが10〜11μm程度になるように調整した。
【0259】
その後、塗工液層を、室温で1分間風乾した。続いて、塗工液層を、85℃オーブンで10分ほど乾燥させて、塗工液層中の溶媒を蒸発させた。これにより、基材フィルム上に形成された光学異方性層を得た。得られた光学異方性層について、楕円領域の密度、楕円領域の最大径の平均、厚み、Re(590)、Rth(590)Rth(450)/Rth(550)及びRth(650)/Rth(550)を評価した。
【0260】
〔実施例2〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、光学異方性層の製造、並びに評価を行った。
・有機溶媒Bの種類を、MIBKから酢酸n−ブチル(沸点126℃、化合物IAに対する溶解性不良、ポジC重合体に対する溶解性良好)に変更した。
【0261】
〔比較例1〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、光学異方性層の製造、並びに評価を行った。
・混合溶媒の代わりに、1,3−ジオキソラン(有機溶媒A)100重量%のみからなる溶媒を用いた。
【0262】
〔比較例2〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、光学異方性層の製造、並びに評価を行った。
・混合溶媒の代わりに、1,3−ジオキソラン(有機溶媒A)100重量%のみからなる溶媒を用いた。
・液晶化合物の割合を40重量部、ポジC重合体の割合を60重量部に変更した。
【0263】
実施例及び比較例の結果を、表1に示す。
【0264】
【表1】
【0265】
実施例及び比較例の結果から明らかな通り、層内構造が、本発明の要件を満たす本願実施例においては、ポジティブCフィルムとして有用に用いうる、比較例に比べてRthの値が顕著に小さい光学異方性層が、容易な製造方法により製造できることが分かる。
【0266】
〔参考例1:液晶化合物IAの波長分散性の確認〕
液晶化合物IA 100重量部、光重合開始剤(BASF社製「Irgacure379EG」)3重量部、及び界面活性剤(DIC社製「メガファックF−562」)0.3重量部を混合し、更に、希釈溶媒としてシクロペンタノン及び1,3−ジオキソランの混合溶媒(重量比シクロペンタノン:1,3−ジオキソラン=4:6)を、固形分が22重量%になるように加え、50℃に加温し溶解させた。得られた混合物を、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して、液晶組成物を得た。
【0267】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる未延伸フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」)を用意した。この未延伸フィルムにラビング処理を施すことにより、配向基材を用意した。
【0268】
前記の配向基材上に、液晶組成物をバーコーターで塗工し、液晶組成物の層を形成した。液晶組成物の層の厚みは、硬化後に得られる光学異方性層の厚みが2.3μm程度になるように調整した。
【0269】
その後、液晶組成物の層を、110℃オーブンで4分ほど乾燥させて、液晶組成物中の溶媒を蒸発させると同時に、液晶組成物に含まれる逆波長分散液晶化合物をホモジニアス配向させた。
【0270】
その後、液晶組成物の層に、紫外線照射装置を用いて、紫外線を照射した。この紫外線の照射は、窒素雰囲気下において、SUS板に配向基材をテープで固定した状態で行った。紫外線の照射により液晶組成物の層を硬化させて、光学異方性層及び配向基材を備える試料フィルムを得た。
【0271】
この試料フィルムについて、位相差計(Axometrics社製)により、面内レターデーションの波長分散を測定した。配向基材は、面内レターデーションを有さないので、前記の測定によって得られる面内レターデーションは、光学異方性層の面内レターデーションを示す。測定の結果、波長450nm、550nm及び650nmにおける面内レターデーションRe(450)、Re(550)及びRe(650)は、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていた。よって、液晶化合物IAが、ホモジニアス配向した場合に逆波長分散性の面内レターデーションを示すものであることが確認された。
【0272】
〔参考例2:液晶化合物IBの波長分散性の確認〕
液晶化合物IAの代わりに、液晶化合物IBを用いた以外は参考例2と同じ操作により、試料フィルムを得て波長分散を測定した。
【0273】
測定の結果、波長450nm、550nm及び650nmにおける面内レターデーションRe(450)、Re(550)及びRe(650)は、Re(450)>Re(550)>Re(650)を満たしていた。よって、液晶化合物IBが、ホモジニアス配向した場合に順波長分散性の面内レターデーションを示すものであることが確認された。
【0274】
〔参考例3:ポリフマル酸エステルがポジC重合体に該当することの確認〕
ポリフマル酸エステルを、1,3−ジオキソランに、固形分濃度が12重量%となるように加え、室温にて溶解させて、重合体溶液を得た。
【0275】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる未延伸フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」)を用意した。この未延伸フィルム上に、前記の重合体溶液を、アプリケーターを用いて塗工して、重合体溶液の層を形成した。その後、85℃オーブンで10分ほど乾燥させて、溶媒を蒸発させることにより、厚み10μm程度の重合体膜と未延伸フィルムとを備える試料フィルムを得た。
【0276】
この試料フィルムを位相差計(Axometrics社製)のステージに設置し、測定波長590nmにおいて試料フィルムの面内レターデーションRe0を測定した。支持体フィルムは光学的に等方性のフィルムであるので、測定される面内レターデーションRe0は、重合体膜の面内レターデーションRe0を表す。測定の結果、面内レターデーションRe0はRe0≦1nmであったので、nx(P)≧ny(P)を満たすと確認できた。
【0277】
その後、重合体膜の遅相軸をステージの回転軸としてステージを40°傾けて、試料フィルムの厚み方向に対して40°の角度をなす傾斜方向でのレターデーションRe40を測定した。そして、この測定により、重合体膜の遅相軸方向を測定した。「遅相軸方向」が「ステージの回転軸」と垂直であれば、nz(P)>nx(P)であると判定でき、逆に、「遅相軸方向」が「ステージの回転軸」と平行であれば、ny(P)>nz(P)であると判定できる。測定の結果、遅相軸方向は、ステージの回転軸に垂直であったため、重合体膜の屈折率nx(P)及びnz(P)はnz(P)>nx(P)を満たすと判定できた。
【0278】
したがって、ポリフマル酸エステルは、その溶液を用いた塗工法により重合体膜を形成した場合に、その重合体膜の屈折率がnz(P)>nx(P)≧ny(P)を満たすことが確認された。したがって、ポリフマル酸エステルは、ポジC重合体に該当することが確認された。