(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のバランスウェイトおよびクランクシャフトの実施の形態について説明する。
【0011】
<クランクシャフトの構成>
まず、本実施形態のクランクシャフトの構成について説明する。
図1に、本実施形態のクランクシャフトの前面図を示す。
図2に、
図1のII−II方向断面図を示す。
図1、
図2に示すように、本実施形態のクランクシャフト1は、直列4気筒のエンジン用のクランクシャフトである。クランクシャフト1は、5つの回転軸2と、4つのピン3と、8つのアーム4と、を備えている。クランクシャフト1の左側には、プーリ(図略)が配置されている。クランクシャフト1の右側には、フライホイール(図略)が配置されている。回転軸2は、左右方向に延在している。5つの回転軸2は、各々、軸受5により、自身の軸周りに回転可能に支持されている。
【0012】
ピン3は、左右方向に延在している。ピン3には、軸受(図略)を介して、コンロッド(図略)が装着されている。ピン3には、上側から、ピストン(図略)の質量、コンロッドの質量、燃焼室(図略)からの燃焼荷重が加わる。左側または右側(軸方向)から見て、左から1番目、4番目の2つのピン3と、左から2番目、3番目の2つのピン3と、は逆位相である。すなわち、左から1番目、4番目の2つのピン3と、左から2番目、3番目の2つのピン3と、は回転軸2の軸心Oに対して、180°ずれて配置されている。
【0013】
アーム4は、回転軸2とピン3との間に介在している。アーム4は、ショルダー40と、カウンターウェイト41と、を備えている。ショルダー40は、任意のピン3の左右両側に配置されている。
【0014】
カウンターウェイト41は、ウェイト本体410と、マス部411と、ばね部412と、を備えている。ウェイト本体410は、金属製であって、回転軸2の軸心Oを挟んで、ショルダー40の径方向(回転軸2の軸方向に対する径方向)反対側に配置されている。マス部411は、金属製であって、ショルダー40の径方向外側に配置されている。ばね部412は、エラストマー製であって、径方向内側のウェイト本体410と、径方向外側のマス部411と、を径方向に連結している。ばね部412と、ウェイト本体410およびマス部411と、は架橋接着されている。ばね部412を形成する材料(エラストマー)は、ウェイト本体410およびマス部411を形成する材料(金属)よりも、ヤング率が小さい。このため、ばね部412は、ウェイト本体410およびマス部411よりも、径方向のばね定数が小さい。
【0015】
<作用効果>
次に、本実施形態のクランクシャフトの作用効果について説明する。まず、クランクシャフト1の回転慣性釣合率について説明する。回転慣性釣合率とは、回転軸2の軸心Oを中心とする、上下方向(軸心Oを挟んで、ショルダー40と、カウンターウェイト41と、が並ぶ方向)の慣性力の釣合率である。
図1に示す単一のスパン(任意の単一の気筒に対応する部分)Sについて考えると、回転慣性釣合率(スパン回転慣性釣合率)Bは以下の式(1)から導かれる。
B=(Mc1×Rc1)+(Mc2×Rc2)/{(Ms1×Rs1)+(Ms2×Rs2)+(Mp×Rp)}×100 ・・・式(1)
なお、Rpは、ピン3の重心Gpと、軸心Oと、の間の径方向距離である。Rs1は、ピン3の左側のショルダー40の重心Gs1と、軸心Oと、の間の径方向距離である。Rc1は、ピン3の左側のカウンターウェイト41の重心Gc1と、軸心Oと、の間の径方向距離である。Rs2は、ピン3の右側のショルダー40の重心Gs2と、軸心Oと、の間の径方向距離である。Rc2は、ピン3の右側のカウンターウェイト41の重心Gc2と、軸心Oと、の間の径方向距離である。Mpは、ピン3の質量とコンロッドの大端部質量との合計質量である。Ms1は、ピン3の左側のショルダー40の質量である。Mc1は、ピン3の左側のカウンターウェイト41の質量である。Ms2は、ピン3の右側のショルダー40の質量である。Mc2は、ピン3の右側のカウンターウェイト41の質量である。式(1)の分子は、回転軸2に対して下向きに加わる慣性力に対応している。式(1)の分母は、回転軸2に対して上向きに加わる慣性力に対応している。ピン3には、上側から、ピストンの質量、コンロッドの質量、燃焼室からの燃焼荷重が加わる。このため、理想的な回転慣性釣合率Bは100%であるものの、実際の回転慣性釣合率Bは、ピン3に加わる荷重を考慮して、ガソリンエンジンでは60〜80%程度に設定されることが多い。
【0016】
図3(a)に、従来のクランクシャフトの単一のスパンの前面図を示す。
図3(b)に、同クランクシャフトのカウンターウェイトを小型化した場合の単一のスパンの前面図を示す。
図4(a)に、本実施形態のクランクシャフトの静止状態における単一のスパンの前面図を示す。
図4(b)に、同クランクシャフトの回転状態における単一のスパンの前面図を示す。
【0017】
図3(a)、
図3(b)に示すように(
図1参照)、従来のクランクシャフト1aは、本実施形態のクランクシャフト1と同様に、5つの回転軸2aと、4つのピン3aと、8つのアーム4aと、を備えている。アーム4aは、ショルダー40aと、カウンターウェイト41aと、を備えている。従来のクランクシャフト1aは、金属製の一体物である。
【0018】
図3(a)、
図3(b)、式(1)に示すように、従来のクランクシャフト1aの場合、カウンターウェイト41aを、径方向長さL1a分だけ、軽量化(小型化)すると、質量Mc1、Mc2が小さくなる。また、重心Gc1、Gc2が径方向内側に移動する。すなわち、径方向距離Rc1、Rc2が短くなる。このため、上向きの慣性力(式(1)の分母に対応)に対して、下向きの慣性力(式(1)の分子に対応)が小さくなってしまう。したがって、回転慣性釣合率Bが低下してしまう。よって、軸受5aに加わる荷重が大きくなってしまう。
【0019】
これに対して、
図4(a)、
図4(b)に示すように、本実施形態のクランクシャフト1のカウンターウェイト41は、
図3(a)に示す従来のクランクシャフト1aのカウンターウェイト41aに対して軽量化(小型化)されている。この点については、
図3(b)に示すクランクシャフト1a同様である。
【0020】
しかしながら、本実施形態のクランクシャフト1のカウンターウェイト41は、
図3(a)に示すカウンターウェイト41aのような金属製の一体物ではない。本実施形態のクランクシャフト1のカウンターウェイト41は、マス部411、ばね部412を備えている。
図4(a)、
図4(b)に示すように、回転状態において、ばね部412は、クランクシャフト1の回転に伴う慣性力により、径方向外側に伸張する。このため、回転状態において、マス部411を、径方向長さL1分だけ、径方向外側に移動させることができる。したがって、カウンターウェイト41の重心Gc1、Gc2を、径方向外側に移動させることができる。
【0021】
このように、本実施形態のクランクシャフト1によると、回転状態において、式(1)に示す質量Mc1、Mc2の軽量化分を、径方向距離Rc1、Rc2を伸張させることにより、相殺することができる。このため、軸受荷重の増加を抑えながら、カウンターウェイト41を軽量化(小型化)することができる。したがって、クランクシャフト1を軽量化しながら、従来のクランクシャフト1a同等の回転慣性釣合率Bを維持することができる。
【0022】
また、従来のカウンターウェイト41a同等の質量のカウンターウェイト41を配置すると、回転状態において、重心Gc1、Gc2を、より径方向外側に移動させることができる。このため、エンジンの回転数が高い高回転領域において、クランクシャフト1の回転バランスを向上させることができる。つまりは、従来と同等質量で軸受への負荷を低減することも可能である。
【0023】
また、ばね部412は、エラストマー製である。このため、ばね部412が金属製の場合(この場合も、本願の権利範囲に含まれる)と比較して、材料固有の物性であるヤング率を利用することにより、簡単に、ばね部412を径方向に弾性的に変形させることができる。
【0024】
エンジンの回転数が低い低回転領域(例えば、0rpm超過2000rpm以下)においては、クランクシャフト1の回転数も低い。このため、低回転領域において、軸受5に加わる荷重の大部分を占めるのは、慣性力ではなく、燃焼室の燃焼荷重である。この点、本実施形態のクランクシャフト1によると、
図4(a)に示すように、カウンターウェイト41を軽量化することができる。このため、低回転領域において、軸受5に加わる荷重を小さくすることができる。
【0025】
一方、エンジンの回転数が高い高回転領域(例えば、4000rpm以上レッドゾーン未満)においては、クランクシャフト1の回転数も高い。このため、高回転領域において、軸受5に加わる荷重の大部分を占めるのは、燃焼室の燃焼荷重ではなく、慣性力である。この点、本実施形態のクランクシャフト1によると、
図4(b)に示すように、マス部411を径方向外側に移動させることができる。このため、従来のクランクシャフト1a同等の回転慣性釣合率Bを維持することができる。
【0026】
また、
図4(a)、
図4(b)に示すように、ウェイト本体410、マス部411、ばね部412の左右方向長さ(軸方向長さ)L2は同一である。すなわち、マス部411、ばね部412は、ウェイト本体410の左右方向長さL2内に収まっている。このため、マス部411、ばね部412がウェイト本体410から左右方向に突出している場合と比較して、カウンターウェイト41の回転抵抗が小さくなる。例えば、クランクシャフト1がオイルパンに溜まったオイルを撹拌しながら回転している場合は、撹拌抵抗が小さくなる。
【0027】
また、カウンターウェイト41の小型化により、
図2に実線で示す静止状態において、マス部411と、最寄りの隣接部材90(
図2に一点鎖線ハッチングで示す)と、の間には隙間Cが確保されている。隙間Cは、ばね部412の伸び代である。このため、
図2に点線で示す回転状態において、隣接部材90にマス部411が干渉しにくい。
【0028】
また、ウェイト本体410とばね部412とは接着されている。並びに、マス部411とばね部412とは接着されている。すなわち、ウェイト本体410とばね部412とマス部411とは一体化されている。このため、ウェイト本体410、ばね部412、マス部411のうち少なくとも一つが別体化されている場合と比較して(この場合も、本願の権利範囲に含まれる)、カウンターウェイト41の部品点数を少なくすることができる。
【0029】
<その他>
以上、本発明のバランスウェイトおよびクランクシャフトの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0030】
図5(a)〜(c)に、その他の実施形態(その1〜その3)のクランクシャフトの径方向断面図を示す。なお、
図2と対応する部位については、同じ符号で示す。
図5(a)に示すように、径方向のばね定数が異なる複数のばね部412a、412bを、積層して配置してもよい。こうすると、回転数の変化(慣性力の変化)に応じて、段階的にマス部411を移動させることができる。
図5(b)に示すように、ばね部412の径方向内面、径方向外面に、釘状(茸状)のアンカー部412cを形成してもよい。こうすると、ウェイト本体410から、ばね部412が脱落しにくい。また、ばね部412から、マス部411が脱落しにくい。
図5(c)に示すように、ウェイト本体410とマス部411との間に空間Sを配置してもよい。こうすると、ばね部412(空間Sを含む)の径方向のばね定数を小さくすることができる。
【0031】
マス部411の材質は特に限定しない。好ましくは、マス部411を形成する材料は、ウェイト本体410を形成する材料よりも、密度が高い方がよい。例えば、鋳鉄製のウェイト本体410に対して、タングステン製のマス部411を配置してもよい。こうすると、マス部411を形成する材料が、ウェイト本体410を形成する材料と、密度が同じ場合と比較して、同じ質量を確保しながら、よりマス部411を小型化することができる。具体的には、マス部411を径方向に薄肉化することができる。このため、ばね部412の伸び代(
図2の隙間C)を、大きくすることができる。したがって、回転状態において、カウンターウェイト41の重心Gc1、Gc2を、径方向外側に大きく移動させることができる。
【0032】
クランクシャフト1の種類は特に限定しない。
図1に示すように、フルカウンターウェイトタイプ(全てのアーム4がカウンターウェイト41を備えるタイプ)のクランクシャフト1を用いてもよい。また、セミカウンターウェイトタイプ(一部のアーム4だけがカウンターウェイト41を備えるタイプ)のクランクシャフトを用いてもよい。また、クランクシャフト1に対して、カウンターウェイト41が着脱可能であってもよい。
【0033】
ばね部412の材質は特に限定しない。エラストマー(ゴム、TPE(熱可塑性エラストマー))、樹脂、金属などであってもよい。径方向に弾性的に変形すればよい。ばね部412の材質(物性)により、弾性を確保してもよい。例えば、ばね部412を、エラストマー製などとしてもよい。ばね部412の構造により、弾性を確保してもよい。例えば、ばね部412を、コイルばね、板ばねなどとしてもよい。
【0034】
ウェイト本体410とばね部412との接合構造は特に限定しない。溶接、接着などにより、ウェイト本体410とばね部412とを接合してもよい。また、接合具(ボルト、ナット、クリップ、クランプ、両面テープなど)を用いてもよい。ウェイト本体410が金属製であってばね部412がエラストマー製の場合は、例えば、加硫接着、架橋接着、接着剤などにより、ウェイト本体410とばね部412とを接合してもよい。また、接合面を粗面化する(例えば、凹凸形状を付与する)ことにより、接合面積を広くしてもよい。ウェイト本体410が金属製であってばね部412が樹脂製の場合は、例えば、インサート成形、接着剤などにより、ウェイト本体410とばね部412とを接合してもよい。また、接合面を粗面化することにより、接合面積を広くしてもよい。マス部411とばね部412との接合構造についても同様である。
【0035】
単一のクランクシャフト1の複数のカウンターウェイト41間において、マス部411、ばね部412が共通でなくてもよい。例えば、クランクシャフト1のうち、特に回転慣性釣合率Bが低下しやすい部分に、密度が高いマス部411を配置してもよい。また、当該部分に、径方向のばね定数が小さいばね部412を配置してもよい。
【0036】
本発明のバランスウェイトを配置する回転軸の種類は特に限定しない。例えば、クランクシャフト、エキセントリックシャフト、バランスシャフトなどであってもよい。エンジンの用途(クランクシャフト1の用途)は特に限定しない。車両用の他、船舶用、航空機用のエンジンであってもよい。また、ピストンのストローク方向(上記実施形態の場合は上下方向)は、特に限定しない。ストローク方向は、例えば、上下方向に対して±30°、±45°、±60°、±90°傾斜した方向などであってもよい。すなわち、エンジンの種類は、直列型、V型、水平対向型などであってもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明のクランクシャフトについて行ったCAE(Computer−Aided Engineering)解析について説明する。
【0038】
<解析1>
解析1においては、
図1に示すクランクシャフト1を、実施例1として用いた。また、
図3(a)に示す従来のクランクシャフト1aを、比較例として用いた。実施例1、比較例は、いずれも、直列4気筒の2リッターガソリンエンジン用のクランクシャフトである。実施例1の全てのカウンターウェイト41には、本発明のバランスウェイトが採用されている。すなわち、全てのカウンターウェイト41は、各々、ウェイト本体410、マス部411、ばね部412を備えている。ばね部412のヤング率は11.9MPa(シリコ−ンゴム相当)とした。実施例1のばね部412以外の部分は、鋳鉄製とした。比較例の全てのカウンターウェイト41aは、一体物であって、ウェイト本体、マス部、ばね部に分かれていない。比較例は鋳鉄製とした。実施例1、比較例の質量は、共に13.41kgとした。実施例1、比較例の静止状態における回転慣性釣合率Bは、共に65%とした。
【0039】
図6に、任意の軸受に加わる1サイクル分の軸受荷重の模式図を示す。解析1においては、実施例1、比較例の各々について、5つの軸受5、5aに加わる軸受荷重を解析した。また、
図6にハッチングで示すように、1サイクル分(クランクシャフト1の2回転分)の軸受荷重(絶対値)の総計値を、評価指標とした。なお、総計値が小さい方が、軸受荷重が小さいため、回転バランスが良好である。解析に用いたエンジン回転数は、2000rpm、4000rpm、6000rpmの3条件とした。また、解析に用いた荷重の方向は、垂直軸方向(
図1における上下方向)、水平軸方向(
図1における前後方向)とした。なお、コンロッドの質量、ピストンの質量、燃焼室の燃焼荷重等のデータについては、実機のエンジンの計測データを用いた。
【0040】
以下、
図1に示すように、5つの軸受5、5aを、左側(プーリ側)から順に、♯1J〜♯5Jと定義する。並びに、8つのカウンターウェイト41、41aを、左側から順に、♯1C〜♯8Cと定義する。
【0041】
以降に示すグラフの縦軸の軸受荷重は、任意単位(Aは自然数)である。
図7(a)に、解析1における軸受♯1Jの垂直軸方向の軸受荷重の総計値(
図6参照)を示す。
図7(b)に、解析1における軸受♯1Jの水平軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図8(a)に、解析1における軸受♯2Jの垂直軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図8(b)に、解析1における軸受♯2Jの水平軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図9(a)に、解析1における軸受♯3Jの垂直軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図9(b)に、解析1における軸受♯3Jの水平軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図10(a)に、解析1における軸受♯4Jの垂直軸方向の軸受荷の総計値重を示す。
図10(b)に、解析1における軸受♯4Jの水平軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図11(a)に、解析1における軸受♯5Jの垂直軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図11(b)に、解析1における軸受♯5Jの水平軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
【0042】
図7(a)〜
図11(b)に示すように、本発明のバランスウェイトを全てのカウンターウェイト♯1C〜♯8Cに採用した場合、軸受♯1J、♯3J、♯5Jにおいて、かつエンジン回転数4000rpm、6000rpmにおいて、比較例よりも実施例1の方が、軸受荷重の総計値が小さくなることが判った。すなわち、軸受荷重低減効果が大きいことが判った。
【0043】
エンジン回転数2000rpmにおいて、軸受荷重低減効果が小さいのは、以下の理由による。すなわち、エンジンの回転数が低い低回転領域においては、クランクシャフト1の回転数も低い。このため、慣性力も小さい。したがって、低回転領域において、軸受5に加わる荷重の大部分を占めるのは、慣性力ではなく、燃焼室の燃焼荷重だからである。
【0044】
軸受♯2J、♯4Jにおいて、軸受荷重低減効果が小さいのは、以下の理由による。すなわち、
図1に示すように、軸受♯2Jに着目すると、隣接する一対のカウンターウェイト♯2C、♯3Cが、互いに逆位相に(180°離間して)配置されている。このため、カウンターウェイト♯2C、♯3Cから加わる慣性力は、互いに相殺される。したがって、
図8(a)、
図8(b)に示すように、本来的に、軸受荷重の総計値が小さい。また、エンジン回転数の変化に伴う、軸受荷重の総計値の変化が小さい。このため、軸受荷重低減効果が小さくなる。
図10(a)、
図10(b)に示すように、軸受♯4Jについても同様である。
【0045】
特に、軸受♯3Jにおいて軸受荷重低減効果が大きいのは、以下の理由による。すなわち、
図1に示すように、軸受♯3Jに着目すると、隣接する一対のカウンターウェイト♯4C、♯5Cが、互いに同位相に配置されている。このため、カウンターウェイト♯4C、♯5Cから加わる慣性力は、大きくなる。したがって、
図9(a)、
図9(b)に示すように、本来的に、軸受荷重の総計値が大きい。また、エンジン回転数の変化に伴う、軸受荷重の総計値の変化が大きい。このため、軸受荷重低減効果が大きくなる。このように、本発明のバランスウェイトは、同位相の一対のカウンターウェイト間に配置される軸受の軸受荷重低減用として、好適である。
【0046】
また、比較例の場合、エンジン回転数0rpm、6000rpmにおける回転慣性釣合率Bは、共に65%だった。一方、実施例1の場合、エンジン回転数0rpmにおける回転慣性釣合率Bが65%だったのに対して、6000rpmにおける回転慣性釣合率Bは、70%だった。このように、実施例1、比較例の質量が同じ場合、比較例よりも実施例1の方が、回転慣性釣合率Bが向上することが判った。逆に言えば、実施例1、比較例の6000rpmにおける回転慣性釣合率Bが同じ場合、比較例よりも実施例1の方が、軽量化可能であることが判った。具体的には、実施例1、比較例の6000rpmにおける回転慣性釣合率Bが同じ場合、実施例1の質量を、−0.26kg(=13.15kg−13.41kg)軽量化できることが判った。
【0047】
<解析2>
実施例2と実施例1との相違点は、
図1に示す軸受♯3Jの左右方向両側のカウンターウェイト♯4C、♯5Cだけに、本発明のバランスウェイトが採用されている点である。
図12(a)に、解析2における軸受♯1Jの垂直軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図12(b)に、解析2における軸受♯1Jの水平軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図13(a)に、解析2における軸受♯3Jの垂直軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図13(b)に、解析2における軸受♯3Jの水平軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図14(a)に、解析2における軸受♯5Jの垂直軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図14(b)に、解析2における軸受♯5Jの水平軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
【0048】
図12(a)〜
図14(b)に示すように、本発明のバランスウェイトを2つのカウンターウェイト♯4C、♯5Cに採用した場合、二つのカウンターウェイト♯4C、♯5Cの間の軸受♯3Jにおいて、かつエンジン回転数4000rpm、6000rpmにおいて、比較例よりも実施例2の方が、軸受荷重の総計値が小さくなることが判った。また、二つのカウンターウェイト♯4C、♯5Cから離間した軸受♯1J、♯5Jにおいて、かつエンジン回転数4000rpm、6000rpmにおいて、比較例よりも実施例2の方が、軸受荷重の総計値が小さくなることが判った。
【0049】
また、比較例の場合、エンジン回転数0rpm、6000rpmにおける回転慣性釣合率Bは、共に65%だった。一方、実施例2の場合、エンジン回転数0rpmにおける回転慣性釣合率Bが65%だったのに対して、6000rpmにおける回転慣性釣合率Bは、75%だった。このように、実施例2、比較例の質量が同じ場合、比較例よりも実施例2の方が、回転慣性釣合率Bが向上することが判った。逆に言えば、実施例2、比較例の6000rpmにおける回転慣性釣合率Bが同じ場合、比較例よりも実施例2の方が、軽量化可能であることが判った。
【0050】
<解析3>
実施例3と実施例1との相違点は、
図1に示すカウンターウェイト♯1C、♯4C、♯5C、♯8Cだけに、本発明のバランスウェイトが採用されている点である。
図15(a)に、解析3における軸受♯1Jの垂直軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図15(b)に、解析3における軸受♯1Jの水平軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図16(a)に、解析3における軸受♯3Jの垂直軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図16(b)に、解析3における軸受♯3Jの水平軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図17(a)に、解析3における軸受♯5Jの垂直軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
図17(b)に、解析3における軸受♯5Jの水平軸方向の軸受荷重の総計値を示す。
【0051】
図15(a)〜
図17(b)に示すように、本発明のバランスウェイトを4つのカウンターウェイト♯1C、♯4C、♯5C、♯8Cに採用した場合、これらのカウンターウェイト♯1C、♯4C、♯5C、♯8Cに近接する軸受♯1J、♯3J、♯5Jにおいて、かつエンジン回転数4000rpm、6000rpmにおいて、比較例よりも実施例3の方が、軸受荷重の総計値が小さくなることが判った。
【0052】
<解析4>
実施例4と実施例1との相違点は、マス部411の材質を、鋳鉄からタングステンに変更した点である。すなわち、マス部411を高密度化した点である。実施例4、比較例の6000rpmにおける回転慣性釣合率Bが同じ場合、比較例よりも実施例4の方が、軽量化可能であることが判った。具体的には、実施例4、比較例の6000rpmにおける回転慣性釣合率Bが同じ場合、実施例4の質量を、−0.58kg(=12.83−13.41kg)軽量化できることが判った。