(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の有機チタン化合物は、オルガノポリシロキサンに類似した構造を含む加水分解性基、すなわち、下記構造式(1)で示される加水分解性基を分子中に少なくとも1つ含有することで、従来の有機チタン化合物と同等の硬化性を有する湿気硬化型組成物の触媒となり得る新規有機チタン化合物である。
−O−E−Si(R)
3 (1)
(式中、Eは炭素原子数1〜4のアルキレン基であり、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基である。)
【0014】
すなわち、本発明の新規有機チタン化合物は、上記構造式(1)で示される加水分解性基としてトリアルキルシリル基を分子内に少なくとも1つ含むものであることを特徴とする有機チタン化合物である。
【0015】
上記の有機チタン化合物としては、下記一般式(2)で示されるチタンアルコキシドと、下記一般式(3)で示されるエチルアセトアセテートを配位子とするチタンキレート、下記一般式(4)で示されるアセチルアセトネートを配位子とするチタンキレート、下記一般式(5)で示されるオクチレングリコレートを配位子とするチタンキレートを用いることができる。
Ti[OR
1]
x1[OR
2]
y1 (2)
Ti[C
6H
9O
3]
x2[OR
2]
y2 (3)
Ti[C
5H
7O
2]
x2[OR
2]
y2 (4)
Ti[C
8H
17O
2]
x2[OR
2]
y2 (5)
[式中、R
1は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。R
2は下記一般式(6)
−E−Si(R)
3 (6)
(式中、E、Rは上記の通りである。)
で示されるトリアルキルシリル置換アルキル基である。x1は平均値0〜3であり、y1は平均値1〜4であり、且つx1+y1は4である。x2は平均値1〜3であり、y2は平均値1〜3であり、且つx2+y2は4である。]
【0016】
これらの新規有機チタン化合物は、湿気硬化型組成物の硬化触媒用として使用されることを目的として開発した。これらの新規有機チタン化合物を含む湿気硬化型組成物は、湿気にて良好に硬化し、エラストマー体を形成する。該湿気硬化型組成物は、一般に分子中に珪素と結合したヒドロキシル基又はアルコキシ基を2個以上有する高分子材料と、オルガノオキシシラン硬化剤を含有させた混合物に上記の有機チタン化合物を含有させることで得ることができる。このようにして得ることができた湿気硬化型組成物は、空気中の湿気にて良好に硬化し、フィラーを含まない湿気硬化型オルガノポリシロキサン組成物の場合は、高い透明性を有する弾性固体物を得ることができ、光学特性が優れることから電気電子部品等に好適に用いられる。また、上記湿気硬化型組成物にフィラーを含有する場合は、未硬化時の粘度調整や流動性の調整が可能になる他、湿気硬化型組成物を硬化させた際に得られる弾性固体物においては、機械的特性や耐薬品性を向上させることができるため、建築用のシーラントや自動車用のオイルシール等として好適に使用される。
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
[新規有機チタン化合物]
本発明の有機チタン化合物は、下記構造式(1)で示される加水分解性基を分子中に少なくとも1つ含む有機チタン化合物である。
−O−E−Si(R)
3 (1)
(式中、Eは炭素原子数1〜4のアルキレン基であり、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基である。)
【0018】
ここで、上記構造式(1)において、Eは炭素原子数1〜4のアルキレン基であり、より好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)などの炭素原子数1〜3の中から選ばれたものであり、各Eは同一であっても異なっていてもよい。
また、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの炭素原子数1〜3の中から選ばれたものであり、各Rは同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
本発明の有機チタン化合物は、上記構造式(1)で示される加水分解性基を分子内に含むことで、フィラーを含まない湿気硬化型オルガノポリシロキサン組成物の触媒として使用した場合、該有機チタン化合物の加水分解性基中のトリアルキルシリル基により、主剤であるオルガノポリシロキサン中への分散性が向上し、高い透明性を有する弾性固体物を得ることができる。
【0020】
上記構造式(1)で示される加水分解性基の具体例としては、トリメチルシリルメトキシ基、トリエチルシリルメトキシ基、トリプロピルシリルメトキシ基、トリブチルシリルメトキシ基、トリメチルシリルエトキシ基、トリエチルシリルエトキシ基、トリプロピルシリルエトキシ基、トリブチルシリルエトキシ基、トリメチルシリルプロポキシ基、トリエチルシリルプロポキシ基、トリプロピルシリルプロポキシ基、トリブチルシリルプロポキシ基、トリメチルシリルブトキシ基、トリエチルシリルブトキシ基、トリプロピルシリルブトキシ基、トリブチルシリルブトキシ基、トリイソプロピルシリルメトキシ基、トリイソプロピルシリルエトキシ基、トリイソプロピルシリルプロポキシ基、トリイソプロピルシリルブトキシ基、トリ(tert−ブチル)シリルメトキシ基、トリ(tert−ブチル)シリルエトキシ基、トリ(tert−ブチル)シリルプロポキシ基、トリ(tert−ブチル)シリルブトキシ基等が挙げられる。これらの中でも特に、Eがメチレン基、エチレン基であり、Rがメチル基、エチル基である構造式(1)、すなわちトリメチルシリルメトキシ基、トリエチルシリルメトキシ基、トリメチルシリルエトキシ基、トリエチルシリルエトキシ基が好ましい。
【0021】
上記構造式(1)で示される加水分解性基を分子中に少なくとも1つ含む有機チタン化合物としては、下記一般式(2)、(3)、(4)又は(5)のいずれかで示される有機チタン化合物が挙げられる。
Ti[OR
1]
x1[OR
2]
y1 (2)
Ti[C
6H
9O
3]
x2[OR
2]
y2 (3)
Ti[C
5H
7O
2]
x2[OR
2]
y2 (4)
Ti[C
8H
17O
2]
x2[OR
2]
y2 (5)
[式中、R
1は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。R
2は下記一般式(6)
−E−Si(R)
3 (6)
(式中、E、Rは上記の通りである。)
で示されるトリアルキルシリル置換アルキル基である。x1は平均値0〜3であり、y1は平均値1〜4であり、且つx1+y1は4である。x2は平均値1〜3であり、y2は平均値1〜3であり、且つx2+y2は4である。]
【0022】
ここで、上記一般式(2)において、R
1は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基などが挙げられ、これらの中でもイソプロピル基又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のような炭素原子数1〜4の1価の直鎖脂肪族炭化水素基(直鎖状アルキル基)であることが特に好ましい。
【0023】
上記一般式(2)〜(5)において、R
2は下記一般式(6)で示されるトリアルキルシリル置換アルキル基である。
−E−Si(R)
3 (6)
(式中、E、Rは上記と同じであり、上記と同様のものが例示できる。)
【0024】
上記に示す有機チタン化合物は、一般式(6)で示されるトリアルキルシリル基を含む加水分解性基を分子内に含むことで、上記一般式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される有機チタン化合物を、フィラーを含まない湿気硬化型オルガノポリシロキサン組成物の触媒として使用する際、加水分解性基中のトリアルキルシリル基によりオルガノポリシロキサン中への分散性が向上し、高い透明性を有する弾性固体物を得ることができる。
【0025】
上記一般式(6)で示されるトリアルキルシリル置換アルキル基の具体例としては、トリメチルシリルメチル基、トリエチルシリルメチル基、トリプロピルシリルメチル基、トリブチルシリルメチル基、トリメチルシリルエチル基、トリエチルシリルエチル基、トリプロピルシリルエチル基、トリブチルシリルエチル基、トリメチルシリルプロピル基、トリエチルシリルプロピル基、トリプロピルシリルプロピル基、トリブチルシリルプロピル基、トリメチルシリルブチル基、トリエチルシリルブチル基、トリプロピルシリルブチル基、トリブチルシリルブチル基、トリイソプロピルシリルメチル基、トリイソプロピルシリルエチル基、トリイソプロピルシリルプロピル基、トリイソプロピルシリルブチル基、トリ(tert−ブチル)シリルメチル基、トリ(tert−ブチル)シリルエチル基、トリ(tert−ブチル)シリルプロピル基、トリ(tert−ブチル)シリルブチル基等が挙げられる。これらの中でも特に、Eがメチレン基、エチレン基であり、Rがメチル基、エチル基である一般式(6)、すなわちトリメチルシリルメチル基、トリエチルシリルメチル基、トリメチルシリルエチル基、トリエチルシリルエチル基が好ましい。
【0026】
上記一般式(2)において、x1は平均値0〜3であり、y1は平均値1〜4であり、且つx1+y1は4である。ここで、x1とy1のより好ましい値は、x1は平均値0〜2、y1は平均値2〜4の範囲内、すなわち、R
2である一般式(6)で示されるトリアルキルシリル基を含む加水分解性基が多いほど、フィラーを含まない湿気硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化触媒として使用した場合、高い透明性を有する弾性固体物を得ることが可能となる。
また、上記一般式(3)、(4)及び(5)において、x2は平均値1〜3であり、y2は平均値1〜3であり、且つx2+y2は4である。ここで、x2とy2のより好ましい値は、x2は平均値1〜2、y2は平均値2〜3の範囲内のものがよい。その理由は前述の通りである。
【0027】
一般式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される有機チタン化合物において、一般式(2)で示される有機チタン触媒はチタンアルコキシドであり、また、一般式(3)で示される有機チタン触媒はエチルアセトアセテート[C
6H
9O
3(すなわち、
CH3C(=O)CHC(=O)OC
2H
5)]配位子とするチタンキレートであり、一般式(4)で示される有機チタン触媒はアセチルアセトネート[C
5H
7O
2(すなわち、CH
3C(=O)CHC(=O)CH
3)]を配位子とするチタンキレートであり、一般式(5)で示される有機チタン触媒はオクチレングリコレート[C
8H
17O
2(すなわち、HO(CH
2)
8O)]を配位子とするチタンキレートである。これらの有機チタン化合物は1種単独でも、構造が異なる2種以上の有機チタン化合物を組み合わせて使用してもよい。またそれらの部分加水分解物も対象となる。
【0028】
[新規有機チタン化合物の製造方法]
一般式(2)で示される有機チタン化合物は、テトラクロロチタンと構造式(1)の骨格を有するアルコールとの反応により得ることができる。
ここで、構造式(1)の骨格を有するアルコールとしては、下記式(7)で示されるものが挙げられる。
H−O−E−Si(R)
3 (7)
(式中、E、Rは上記と同じであり、上記と同様のものが例示できる。)
【0029】
テトラクロロチタンと、構造式(1)の骨格を有するアルコールとの反応割合は、テトラクロロチタン1モルに対して構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールを1モル以上10モル以下の量を添加して反応させることで、一般式(2)で示される有機チタン触媒を得ることができる。なお、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールが余剰となった場合は、減圧下にて余剰分の該アルコールを除去することが望ましい。
【0030】
上記の反応条件は特に指定しないが、反応温度は0〜100℃、より好ましくは10〜80℃の温度範囲にて反応することが好ましい。しかしながら、反応が激しい場合は、反応液が凝固しない温度にて反応する必要があり、またテトラクロロチタンと、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールとの反応が非常に遅い場合は、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールの沸点以下の温度であれば上記温度範囲以上の温度にて反応してもよい。反応中は、テトラクロロチタン及び反応生成物は湿気にて加水分解するため、湿気を遮断した条件にて反応を進行させる必要がある。そのため窒素シール等の手段にて湿気を遮断した雰囲気下での反応が必要となる。
反応時間についても特に指定しないが、テトラクロロチタンと、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールとの反応液をガスクロマトグラフィー分析等の手段にて反応の進行状況を追跡し、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールが減少していることを確認しながら反応の終了時間を決定することができる。この時、テトラクロロチタンと構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールとの反応時間が短すぎると、テトラクロロチタンと、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールとの反応生成物の収量が減少することがある。また逆にテトラクロロチタンと、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールとの反応時間が長すぎると、反応器中に湿気が混入する確率が増えるため、反応生成物が加水分解し、オリゴマー体が増加し、粘度上昇等の不具合が起こる可能性が高くなる。
【0031】
また、一般式(2)で示される有機チタン化合物は、テトライソプロポキシチタン等のチタンアルコキシドと、構造式(1)の骨格を有するアルコールとのエステル交換反応によっても得ることが可能である。チタンアルコキシドと相当するアルコールとのエステル交換反応による生成においては、反応が可逆のため、チタンアルコキシドから発生するアルコールを除去しながら目的物を合成することが必要となる。除去する工程は、種々存在するが、一般的にはチタンアルコキシドから発生するアルコールの沸点以上の温度にて反応を進行させたり、真空下にてチタンアルコキシドから発生するアルコールを除去する方法が知られている。
【0032】
ここで、チタンアルコキシドとしては、Ti[OR
1]
4(式中、R
1は上記と同じである。)で示されるものが挙げられる。
また、構造式(1)の骨格を有するアルコールとしては、上記式(7)で示されるものが挙げられる。
【0033】
チタンアルコキシドと、構造式(1)の骨格を有するアルコールとの反応割合は、チタンアルコキシド1モルに対し、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールを1モル以上10モル以下の量を添加して反応させることで、一般式(2)で示される有機チタン触媒を得ることができる。なお、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールが余剰となった場合は、減圧下にて余剰分の該アルコールを除去することが望ましい。
【0034】
上記エステル交換反応の反応条件は、特に指定しないが、反応温度は40〜120℃、より好ましくは60〜100℃の温度範囲にてエステル交換反応することが好ましい。これはチタンアルコキシドと構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールが反応し、チタンアルコキシドから発生するアルコールを除去する必要があるためである。ここで、チタンアルコキシドと、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールとの反応が非常に遅い場合は、構造式(1)の骨格を有するアルコールの沸点以下の温度であれば上記温度範囲以上の温度にて反応してもよい。反応中は、チタンアルコキシド及び反応生成物は湿気にて加水分解するため、湿気を遮断した条件にて反応を進行させる必要がある。そのため窒素シール等の手段にて湿気を遮断した雰囲気下での反応が必要となる。
反応時間についても特に指定しないが、チタンアルコキシドと、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールとの反応液をガスクロマトグラフィー分析等の手段にて反応の進行状況を追跡し、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールが減少していることを確認しながら反応の終了時間を決定ことができる。この時、チタンアルコキシドと構造式(1)の骨格を有するアルコールとのエステル交換反応時間が短すぎると、チタンアルコキシドと構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールとの反応生成物の収量が減少することがある。また逆にチタンアルコキシドと、構造式(1)の骨格を有する式(7)で示されるアルコールとの反応時間が長すぎると、反応器中に湿気が混入する確率が増えるため、反応生成物が加水分解し、オリゴマー体が増加し、粘度上昇等の不具合が起こる可能性が高くなる。
【0035】
一般式(3)、(4)又は(5)で示される有機チタン化合物は、前述で合成された一般式(2)で示されるチタンアルコキシドに、配位子となる化合物、一般式(3)であればアセト酢酸エチル[C
6H
10O
3(すなわち、CH
3C(=O)CH
2C(=O)OC
2H
5)]を、一般式(4)であればアセチルアセトン[C
5H
8O
2(すなわち、CH
3C(=O)CH
2C(=O)CH
3)]を、一般式(5)であればオクチレングリコール[C
8H
18O
2(すなわち、HO(CH
2)
8OH)]を反応させることで得ることが可能である。一般式(2)で示されるチタンアルコキシドに配位子が反応すると、チタンアルコキシドに結合していたアルコールが脱離する。脱離したアルコールを未除去としても、品質を低下させたりはしないが、有機チタン化合物の純度が低下するため、発生したアルコールは上記に記載したような除去工程により除去することがより好ましい。
【0036】
ここで、一般式(2)で示されるチタンアルコキシドと、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン又はオクチレングリコールとの反応割合は、一般式(2)で示されるチタンアルコキシド1モルに対し、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン又はオクチレングリコールを3モル以下の量を添加して反応させる必要がある。ここで、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン又はオクチレングリコールを3モルを超えて添加するとアセト酢酸エチル、アセチルアセトン又はオクチレングリコールが余剰となるため、あまり好ましくない。
【0037】
一般式(2)で示されるチタンアルコキシドと、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン又はオクチレングリコールとの反応条件は、特に指定しないが、反応温度は10〜140℃、より好ましくは20〜120℃の温度範囲にて反応することが好ましい。ここで、一般式(2)で示されるチタンアルコキシドと、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン又はオクチレングリコールとの反応が非常に遅い場合は、配位子となる化合物の沸点以下の温度であれば上記温度範囲以上の温度にて反応してもよい。反応中は、一般式(2)で示されるチタンアルコキシド及び反応生成物は湿気にて加水分解するため、湿気を遮断した条件にて反応を進行させる必要がある。そのため窒素シール等の手段にて湿気を遮断した雰囲気下での反応が必要となる。
反応時間についても特に指定しないが、一般式(2)で示されるチタンアルコキシドと、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン又はオクチレングリコールとの反応液をガスクロマトグラフィー分析等の手段にて反応の進行状況を追跡すると、反応副生成物であるチタンアルコキシドに結合していたアルコールが増加すると共に、配位子となる化合物が減少するため、どちらか一方のピーク面積がほぼ変わらなくなった時間を反応の終了時間とすることができる。この時、一般式(2)で示されるチタンアルコキシドと、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン又はオクチレングリコールとの反応時間が短すぎると、一般式(2)で示されるチタンアルコキシドと、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン又はオクチレングリコールとの反応生成物の収量が減少することがある。また逆に、一般式(2)で示されるチタンアルコキシドと、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン又はオクチレングリコールとの反応時間が長すぎると、反応器中に湿気が混入する確率が増えるため、反応生成物が加水分解し、オリゴマー体が増加し、粘度上昇等の不具合が起こる可能性が高くなる。
【0038】
[新規有機チタン化合物の利用方法]
前述した新規有機チタン化合物は、さまざまな塗料や表面改質などの用途に使用できるものであるが、特に湿気硬化型組成物の硬化触媒として使用した場合、その特徴を発揮することができる。その理由は、従来使用されていた有機チタン化合物と同等の硬化性を有し、かつフィラーを含有しない場合の湿気硬化型オルガノポリシロキサン組成物においては、加水分解性基中のトリアルキルシリル基によりオルガノポリシロキサン中への分散性が向上するため、硬化した際に高い透明性を有する弾性固体物を得ることができるからである。さらに、従来では使用する有機チタン化合物としてある種のチタンキレートを選択した場合、低温状態において固体状態になってしまうため、製造上取り扱いにくいが、本発明の有機チタン化合物は、加水分解性基中にトリアルキルシリル基を含むため低温においても液状の性状を維持することができ、結果として従来の有機チタン化合物と同等の硬化性を保持しながら取り扱いが容易な有機チタン化合物となる。
【0039】
[湿気硬化型組成物へ新規有機チタン化合物の適用]
本発明の有機チタン化合物は、湿気にて硬化することでエラストマー性状を与える湿気硬化型組成物の硬化触媒として使用される。係る湿気硬化型組成物は、分子中に珪素と結合したヒドロキシル基(シラノール基)又はアルコキシ基含有シリル基(例えば、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシアルキルシリル基、アルコキシジアルキルシリル基等)を2個以上有する高分子材料、好ましくは分子中に珪素と結合したヒドロキシル基(シラノール基)又はアルコキシ基含有シリル基(例えば、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシアルキルシリル基、アルコキシジアルキルシリル基等)を2個以上有するオルガノポリシロキサン(特には、上記シラノール基又はアルコキシ基含有シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン)と、オルガノオキシシラン硬化剤との混合物に、本発明の有機チタン化合物を使用することができる。
【0040】
分子中に珪素と結合したヒドロキシル基又はアルコキシ基を2個以上有する高分子材料としては、分子中に珪素と結合したヒドロキシル基(シラノール基)又はアルコキシ基含有シリル基(例えば、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシアルキルシリル基、アルコキシジアルキルシリル基等)を2個以上有するオルガノポリシロキサンが好ましく、特にフィラーを含有しない湿気硬化型組成物として用いる場合には、上記有機チタン化合物との分散性の点から、分子中に珪素と結合したヒドロキシル基(シラノール基)又はアルコキシ基含有シリル基(例えば、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシアルキルシリル基、アルコキシジアルキルシリル基等)を2個以上有するオルガノポリシロキサン(特には、上記シラノール基又はアルコキシ基含有シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン)を用いることが好ましい。
【0041】
該オルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(8)〜(12)で示されるオルガノポリシロキサンを例示することができる。
【化1】
(式中、R
3は炭素原子数1〜10の非置換もしくは置換の1価の飽和炭化水素基であり、aは10以上、好ましくは20〜2,000、より好ましくは30〜1,200の整数である。)
【化2】
(式中、aは上記の通りである。R
4はメチル基又はエチル基であり、メチル基が好ましい。R
5は炭素原子数1〜10の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。Yは酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、Nは独立に0又は1の整数である。)
【化3】
(式中、R
4、R
5、a、Y、Nは上記の通りである。Zはメチル基もしくは炭素原子数2〜5のアルケニル基である。)
【化4】
[式中、R
4、R
5、a、Y、Nは上記の通りである。また、bは1以上、好ましくは1〜10の整数である。また、R
6は下記一般式
【化5】
(式中、R
4、R
5、Y、Nは上記の通りである。)
で示される加水分解性基を含む基である。]
【化6】
(式中、R
4、R
5、R
6、a、b、Y、Z、Nは上記の通りである。)
【0042】
上記式(8)において、R
3は炭素原子数1〜10の非置換もしくは置換の1価の飽和炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換されたもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、フェニル基であることが好ましい。
上記式(9)〜(12)において、R
5は炭素原子数1〜10の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換されたもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、フェニル基であることが好ましい。
Yは酸素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)等が挙げられ、Yとしては、酸素原子、メチレン基、エチレン基、プロピレン基であることが好ましい。
Zはメチル基もしくは炭素原子数2〜5のアルケニル基であり、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられ、Zとしては、メチル基、ビニル基であることが好ましい。
【0043】
分子中に珪素と結合したヒドロキシル基又はアルコキシ基含有シリル基を2個以上有する高分子材料(特には、上記シラノール基又はアルコキシ基含有シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン)の23℃における粘度は、50〜200,000mPa・s、特に100〜50,000mPa・sであることが好ましい。粘度が低すぎると硬化するまでに大幅な時間が必要となったり、保存性が低下する場合があり、高すぎると塗布性や泡抜け性が低下し作業性が悪化する場合がある。なお、粘度は回転粘度計により測定できる。
【0044】
湿気硬化型組成物に使用されるオルガノオキシシラン硬化剤としては、下記一般式(13)で示される、アルコキシシラン等のオルガノオキシシランが例示できる。ここで、オルガノオキシシラン硬化剤は、一般式(13)のオルガノオキシシランが部分的に加水分解縮合した部分加水分解縮合物(すなわち、分子中に残存加水分解性基を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノシロキサンオリゴマー)も対象となる。
R
74-nSi(OR
8)
n (13)
(式中、R
7は炭素原子数1〜6のアルキル基、ビニル基又はハロゲン置換アルキル基であり、R
8は炭素原子数1〜4のアルキル基、アルケニル基又はアルコキシアルキル基である。また、nは2〜4の整数である。)
使用されるオルガノオキシシラン硬化剤(上記オルガノオキシシシラン又はその部分加水分解縮合物)は、湿気硬化型組成物を硬化させる際、架橋剤として作用するものである。
【0045】
上記一般式(13)のR
7は同一又は異種の炭素原子数1〜6のアルキル基、ビニル基又はハロゲン置換アルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ビニル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基などが例示でき、その中でも特にメチル基が好ましい。また、R
8は炭素原子数1〜4のアルキル基、アルケニル基又はアルコキシアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、プロペニル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などが例示でき、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。nは2〜4の整数であり、好ましくは3又は4であり、3が特に好ましい。
【0046】
上記オルガノオキシシラン硬化剤の具体例としては、エチルシリケート、プロピルシリケート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリプロペノキシシランなど、及びこれらの部分加水分解縮合物などが例示される。その中でも特にメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランを用いることが好ましい。
【0047】
このオルガノオキシシラン硬化剤は、上記オルガノオキシシシラン、この部分加水分解縮合で得られたシロキサンのいずれでもよいし、このシロキサンは、珪素原子にアルコキシ基を2個以上、特に3個以上有するものであれば、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、これらは1種類に限定されず、2種以上を使用してもよい。
【0048】
オルガノオキシシラン硬化剤の使用量は、分子中に珪素と結合したヒドロキシル基(シラノール基)又はアルコキシ基含有シリル基を2個以上有する高分子材料100質量部に対して0.1〜30質量部、特に0.5〜10質量部が好ましい。オルガノオキシシラン硬化剤の使用量が少なすぎると得られた組成物が経時で増粘したり、硬化してしまう場合があり、多すぎると硬化するまでに大幅な時間が必要となったり、硬化して得られる硬化物の機械的特性が悪化する場合がある。
【0049】
上記湿気硬化型組成物において、本発明の有機チタン化合物の配合量は、分子中に珪素と結合したヒドロキシル基(シラノール基)又はアルコキシ基含有シリル基を2個以上有する高分子材料100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましく、1〜5質量部が特に好ましい。有機チタン化合物の配合量が少なすぎると経時で硬化性が変化したり、最悪の場合は未硬化となる場合があり、多すぎると深部硬化性が低下したり、表面硬化性が速すぎて目的とする湿気硬化型組成物を得ることができない場合がある。
【0050】
上記に示す分子中に珪素と結合したヒドロキシル基(シラノール基)又はアルコキシ基含有シリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとオルガノオキシシラン硬化剤との混合物に有機チタン化合物を使用した湿気硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、新規有機チタン化合物の加水分解性基がオルガノポリシロキサン類似構造によることから、シリコーン成分との相溶性が向上し、充填剤を含まないものに至っては、透明性が高い弾性固体物を得ることができる。このような湿気硬化型組成物の弾性固体物は、光学特性が優れることから電気電子部品等に好適に用いられる。
【0051】
また、上記湿気硬化型組成物へ必要に応じてフィラーを含有させることが可能であり、フィラーを含有させることで、未硬化状態での湿気硬化型組成物においては、粘度の調整や流動性の調整が可能になる。フィラー含有湿気硬化型組成物を硬化させた際に得られる弾性固体物においては、機械的特性や耐薬品性を向上させることができるため、建築用のシーラントや自動車用のオイルシールとして好適に使用される。
【0052】
使用されるフィラーは、公知のものを使用することができる。例えば、煙霧質シリカ、湿式シリカ、沈降性シリカ、珪藻土、重質炭酸カルシウム、コロイド質炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛などが挙げられ、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。その中でも重質炭酸カルシウム、コロイド質炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛の使用が望ましい。またそれらフィラーの表面処理については限定されない。表面処理される場合の表面処理剤としては、ジクロロジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシラザンのような有機珪素化合物や、脂肪酸、樹脂酸、スルホン酸、パラフィン類等が例示される。
【0053】
フィラーを配合する場合の使用量は、分子中に珪素と結合したヒドロキシル基(シラノール基)又はアルコキシ基含有シリル基を2個以上有する高分子材料100質量部に対して0.1〜500質量部、特に0.5〜200質量部が好ましい。
【0054】
前述する湿気硬化型組成物には、任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、ゴム物性を調整するための末端未反応性ポリマーである可塑剤、着色するための顔料や染料、導電性や放熱性を付与するための金属粉、押し出し作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線吸収剤、防かび剤、耐熱性向上剤、難燃化剤などが挙げられ、その他各種の添加剤を加えてもよい。
【0055】
本発明の湿気硬化型組成物は、上記各成分、さらにはこれに上記各種添加剤の所定量を、乾燥雰囲気中において均一に混合することにより得ることができる。また、本発明の湿気硬化型組成物は、室温(23℃±10℃)で放置することにより硬化するが、その成形方法、硬化条件などは、組成物の種類に応じた公知の方法、条件を採用することができる。
【0056】
かくして得られる本発明の湿気硬化型組成物は、空気中の湿気により、室温で速やかに硬化して耐熱性、耐候性、低温特性、各種基材、特に金属に対する接着性に優れたゴム弾性体硬化物を形成する。また、本発明の湿気硬化型組成物は、特に保存安定性、硬化性に優れ、例えば12ヶ月間の貯蔵後も空気中に曝すと速やかに硬化して、上述のように優れた物性を持つ硬化物を与える。特に硬化時に毒性あるいは腐食性のガスを放出せず、この組成物を施した面に錆を生じさせることもない。特にこの湿気硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、充填剤を未配合とする場合、透明性が優れているため、電気電子部品用コーティング材や絶縁材、接着剤として有用であるほか、各種基材に対するシール剤、コーティング剤、被覆剤、離型処理剤として、また繊維処理剤としても広く使用することができ、具体的には、本発明の湿気硬化型組成物の硬化物を有する電気電子部品、該組成物の硬化物からなる建築用シーラント、該組成物の硬化物からなる自動車用オイルシール等を例示することができる。ここで、透明とは、物体の反対側や内部にあるものが明確に透けて見えること、ならびに波長による光の透過性が著しく低下しないことを意味する。
【実施例】
【0057】
以下、合成実施例、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、実施例中、粘度は23℃における回転粘度計による測定値であり、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」と「質量%」を表す。また、有機チタン化合物の金属含有量は、得られた有機チタン化合物を焼成し、その質量変化を測定して下記式により求めた。
金属含有量(%)=100×0.5994×{((焼成後質量)−(容器質量))
/((焼成前質量)−(容器質量))}
【0058】
[合成実施例1]
乾燥窒素にてシールし、温度計、エステルトラップ、冷却管、滴下ロートを備えた300mlの四つ口フラスコに、テトライソプロピルチタネートを28.4g(0.1モル)仕込み、トリメチルシリルメタノール41.7g(0.4モル)を攪拌しながら滴下した。その後、乾燥窒素通気として60℃で8時間反応を進行させた。エステルトラップ内に還流された透明液体をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、大部分のイソプロピルアルコールが還流されたことが確認された。その後、四つ口フラスコを真空条件とし、60℃で1時間の条件にて系内に含まれる余剰のアルコールを除去した。フラスコ内には透明な液体が残り、約41gの有機チタン化合物(1)(一般式(2)において、R
1=イソプロピル基、R
2=トリメチルシリル置換メチル基、x1=0、y1=4である有機チタン化合物)が得られた(収率;約89.1%)。得られた有機チタン化合物(1)の金属含有量は11.1%であった(理論値;10.4%)。
【0059】
[合成実施例2]
乾燥窒素にてシールし、温度計、エステルトラップ、冷却管、滴下ロートを備えた300mlの四つ口フラスコに、テトライソプロピルチタネートを28.4g(0.1モル)仕込み、攪拌しながらトリメチルシリルエタノール47.3g(0.4モル)を攪拌しながら滴下した。その後、乾燥窒素通気として60℃で8時間反応を進行させた。エステルトラップ内に還流された透明液体をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、大部分のイソプロピルアルコールが還流されたことが確認された。その後、四つ口フラスコを真空条件とし、60℃で1時間の条件にて系内に含まれる余剰のアルコールを除去した。フラスコ内には透明な液体が残り、約45gの有機チタン化合物(2)(一般式(2)において、R
1=イソプロピル基、R
2=トリメチルシリル置換エチル基、x1=0、y1=4である有機チタン化合物)が得られた(収率;約87.3%)。得られた有機チタン化合物(2)の金属含有量は10.1%であった(理論値;9.3%)。
【0060】
[合成実施例3]
乾燥窒素にてシールし、温度計、滴下ロートを備えた100mlの四つ口フラスコに、合成実施例1にて得た有機チタン化合物(1)を23g(約0.05モル)仕込み、攪拌しながらアセト酢酸エチル13.2g(0.1モル)を攪拌しながら滴下した。その後、60℃で8時間反応を進行させたのち、四つ口フラスコを真空条件とし、60℃で3時間の条件にて系内に含まれる余剰のアルコールを除去した。フラスコ内には褐色透明な液体が残り、約21gの有機チタン化合物(3)(一般式(3)において、R
2=トリメチルシリル置換メチル基、x2=2、y2=2である有機チタン化合物)が得られた(収率;約81.7%)。得られた有機チタン化合物(3)の金属含有量は9.5%であった(理論値;9.3%)。
【0061】
[合成実施例4]
乾燥窒素にてシールし、温度計、滴下ロートを備えた100mlの四つ口フラスコに、合成実施例2にて得た有機チタン化合物(2)を27.8g(約0.05モル)仕込み、攪拌しながらアセト酢酸エチル13.2g(0.1モル)を攪拌しながら滴下した。その後、60℃で8時間反応を進行させたのち、四つ口フラスコを真空条件とし、60℃で3時間の条件にて系内に含まれる余剰のアルコールを除去した。フラスコ内には黄色透明な液体が残り、約23gの有機チタン化合物(4)(一般式(3)において、R
2=トリメチルシリル置換エチル基、x2=2、y2=2である有機チタン化合物)が得られた(収率;約84.9%)。得られた有機チタン化合物(4)の金属含有量は9.0%であった(理論値;8.8%)。
【0062】
上記合成実施例1〜4にて得られた有機チタン化合物と、比較としてテトライソプロピルチタネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)を用い、以下の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
a.加水分解性評価;
有機チタン化合物を23℃/50%RH環境下にて曝し、24時間後の性状を目視確認した。
b.低温性状評価;
有機チタン化合物を密閉容器に充填し、−0℃環境下にて曝し、24時間後の性状を目視確認した。
【0063】
【表1】
【0064】
上記の表1の結果から明らかなように、上記で合成した有機チタン化合物は、加水分解性評価試験によりすべて固化していたことから、比較として使用した既存の有機チタン化合物同等の加水分解性能を有することが分かる。また、低温性状評価において、既存のチタンキレート、すなわちチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)は固体であるのに対し、合成したチタンキレート、すなわち上記合成実施例にて得られた有機チタン化合物(1)〜(4)は室温(23℃±10℃)において液体であった。このことから、冬場等の低温環境下においてもチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)のように性状変化を起こさないため、取り扱いが容易であることが分かる。
【0065】
[実施例1]
粘度1,000mPa・sの分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン100部に、メチルトリメトキシシラン5.0部と、有機チタン化合物(1)3.0部を添加し、湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物(1)を調製した。
【0066】
[実施例2]
粘度1,000mPa・sの分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン100部に、メチルトリメトキシシラン5.0部と、有機チタン化合物(2)3.0部を添加し、湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物(2)を調製した。
【0067】
[実施例3]
粘度1,000mPa・sの分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン100部に、メチルトリメトキシシラン5.0部と、有機チタン化合物(3)3.0部を添加し、湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物(3)を調製した。
【0068】
[実施例4]
粘度1,000mPa・sの分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン100部に、メチルトリメトキシシラン5.0部と、有機チタン化合物(4)3.0部を添加し、湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物(4)を調製した。
【0069】
[比較例1]
実施例1において、有機チタン化合物(1)の代わりに、テトライソプロピルチタネートを3.0部用いた以外は同様に行い、組成物(5)を調製した。
【0070】
[比較例2]
実施例1において、有機チタン化合物(1)の代わりに、テトラブチルチタネートを3.0部用いた以外は同様に行い、組成物(6)を調製した。
【0071】
[比較例3]
実施例1において、有機チタン化合物(1)の代わりに、テトラ(tert−ブチル)チタネートを3.0部用いた以外は同様に行い、組成物(7)を調製した。
【0072】
[比較例4]
実施例3において、有機チタン化合物(3)の代わりに、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)を3.0部用いた以外は同様に行い、組成物(8)を調製した。
【0073】
[比較例5]
実施例3において、有機チタン化合物(3)の代わりに、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)を3.0部用いた以外は同様に行い、組成物(9)を調製した。
【0074】
[比較例6]
実施例3において、有機チタン化合物(3)の代わりに、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトアセテート)を3.0部用いた以外は同様に行い、組成物(10)を調製した。
【0075】
上記実施例、比較例で得られた組成物のタックフリータイム、硬化物の硬さ及び透明性を下記に示す方法により測定し、評価した。
[試験方法]
上記実施例、比較例で調製された組成物は、JIS A5758に規定する方法に準じてタックフリータイム(指触乾燥時間)を測定した。
また上記実施例、比較例で調製された組成物を、厚さ約2mmの型枠に流し込み、23℃、50%RHで7日間養生して2mm厚のゴムシートを得た。得られたゴムシートを用いて、JIS K6249に準じてゴム硬度を測定した。なお、硬さは、JIS K6249のデュロメーターA硬度計を用いて測定した。
また、得られたゴムシートの透明性は、(株)日立ハイテクサイエンス製分光光度計U−3310を用い、500nm(A)及び800nm(B)の光透過率を測定し、その差が±5%以内であるものを「合格」と判定した。
下記に実施例1〜4、及び比較例1〜6の結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
[評価]
実施例1〜4の組成物は、本発明の要件を満たすものであり、良好な硬化性を有し、かつ組成物が硬化した硬化物の硬度も高く、良好なエラストマーとなっていることがわかる。また、800nmから500nmの光透過率差も1〜3%程度であるため、非常に透明性が高いことが分かる。
これに対し、比較例1〜6の組成物は、既存の有機チタン化合物を湿気硬化型組成物の触媒として使用している。比較例1〜4の組成物は、既存のチタンアルコキシドを触媒として使用した例であるが、硬化性を示すタックフリータイムは素早いものの、チタンアルコキシドの加水分解性が高く、加水分解後の化合物がオルガノポリシロキサンに溶解しにくいものに変化するため、800nmから500nmの光透過率差が5%以上となり透明性が劣る結果となっている。また、比較例5、6の組成物は、既存のチタンキレートを触媒として使用した例であるが、こちらを用いても加水分解後の化合物がオルガノポリシロキサンに溶解しにくいものに変化するため、800nmから500nmの光透過率差が5%以上となり、透明性が劣る結果となっている。上記の結果から、本発明の有効性が確認できる。