特許第6816702号(P6816702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6816702-半導体封止用樹脂組成物及び半導体装置 図000021
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816702
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】半導体封止用樹脂組成物及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20210107BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210107BHJP
   C08K 5/5445 20060101ALI20210107BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20210107BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20210107BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08K3/36
   C08K5/5445
   C08K5/544
   H01L23/30 R
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-207850(P2017-207850)
(22)【出願日】2017年10月27日
(65)【公開番号】特開2019-77840(P2019-77840A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 将一
(72)【発明者】
【氏名】川村 訓史
(72)【発明者】
【氏名】金田 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】横田 竜平
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−251048(JP,A)
【文献】 特開2004−307649(JP,A)
【文献】 特開2015−044939(JP,A)
【文献】 特開2011−102267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00−101/16
C08K3/00−13/08
H01L23/29−23/31
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)成分
(A)エポキシ樹脂、
(B)シリカ類、及び
(C)下記式(1)
【化1】
(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基であり、R2,R3,R4,R5,R6は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれ、互いに同じあるいは異なっていても良い。)
で表される有機ケイ素化合物
を必須成分とする半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】
上記(C)成分が、式(1)で表される有機ケイ素化合物に加えて、下記式(2)
【化2】
(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
で表される有機ケイ素化合物を含む請求項1記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
上記(A)〜(C)成分に加えて、下記の(D)及び(E)成分、
(D)硬化剤
(E)硬化促進剤
を含む請求項1又は2記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項記載の半導体封止用樹脂組成物を封止材として用いた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用樹脂組成物及び該樹脂組成物で封止された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体デバイスは、樹脂封止型のダイオード、トランジスター、IC、LSI、超LSIが主流であるが、エポキシ樹脂は他の熱硬化性樹脂に比べ成形性、接着性、電気特性、機械特性、耐湿特性等に優れているため、エポキシ樹脂及び無機充填剤を含有する樹脂組成物で半導体デバイスを封止することが一般的である。また最近では、パワーデバイスや高周波対応デバイスの封止材として、シアネートエステル樹脂やビスマレイミド樹脂の如く熱安定性が高く、低誘電の樹脂材料を用いることも検討されている。
【0003】
樹脂組成物で半導体デバイスを封止する封止方式としては、樹脂組成物を加熱し溶融させながら金型内に注入するトランスファー成形が一般的に用いられている。この場合、デバイス内部にボイドがないことやデバイスのワイヤー変形が少ないことが求められる。また、封止後のデバイスは外部からの物理的な衝撃や熱衝撃から内部の半導体やワイヤーを保護する必要がある。
【0004】
これらの要求特性を満たすため、熱硬化性樹脂と無機充填剤との界面の濡れ性を改善するため、事前に表面処理をする手法が用いられる。例えば、特開平9−57749号公報には、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランで表面処理をした無機充填剤を含有することにより、エポキシ樹脂組成物の反応性を高め、硬化物の剛性を高くするため離型性能も良好になる技術が提案されている。
【0005】
また、特開2002−241585号公報には、撹拌している無機充填材にシランカップリング剤、或いはそのアルコール溶液等を噴霧し、更に撹拌を行った後、室温に放置したり、或いは加熱したりすることにより、表面処理した無機充填材を得る方法などの技術が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記技術では、用いられるN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランは加水分解速度が遅く、無機充填剤表面と反応させるためには室温で24〜48時間で反応させること、或いは、50〜80℃の高温で1〜4時間反応させるなどの事前処理が必要となる。このため、このような事前処理のための工程を余分に設ける必要があり、生産時間が長くなり生産性低下の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−57749号公報
【特許文献2】特開2002−241585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、短時間で熱硬化性樹脂との親和性が高い無機充填剤を調製し、流動性及び耐衝撃特性に優れた樹脂組成物及び該樹脂組成物で封止された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(A)熱硬化性樹脂、(B)無機充填剤及び(C)特定式で表される有機ケイ素化合物を必須成分として含む半導体封止用樹脂組成物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成したものである。
【0010】
従って、本発明は、下記の半導体封止用樹脂組成物及び半導体装置を提供する。
1.下記(A)〜(C)成分
(A)エポキシ樹脂、
(B)シリカ類、及び
(C)下記式(1)
【化1】
(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基であり、R2,R3,R4,R5,R6は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれ、互いに同じあるいは異なっていても良い。)
で表される有機ケイ素化合物
を必須成分とする半導体封止用樹脂組成物。
2.上記(C)成分が、式(1)で表される有機ケイ素化合物に加えて、下記式(2)
【化2】
(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
で表される有機ケイ素化合物を含む1記載の半導体封止用樹脂組成物。
.上記(A)〜(C)成分に加えて、下記の(D)及び(E)成分、
(D)硬化剤
(E)硬化促進剤
を含む1又は2記載の半導体封止用樹脂組成物。
.1〜のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物を封止材として用いた半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、短時間で熱硬化性樹脂との親和性が高い無機充填剤を調製することができ、流動性及び耐衝撃特性に優れるものであり、半導体装置の封止材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例において、破壊靱性値を求めるために測定した、3点曲げ試験に用いた試験片の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の半導体封止用樹脂組成物について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、下記(A)〜(C)成分
(A)熱硬化性樹脂、
(B)無機充填剤、及び
(C)下記式(1)
【化3】
(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基であり、R2,R3,R4,R5,R6は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれ、互いに同じあるいは異なっていても良い。)
で表される有機ケイ素化合物
を必須成分とすることを特徴とする。ここで、(A)〜(C)成分について詳述する。
【0015】
[(A)熱硬化性樹脂]
(A)熱硬化性樹脂は、半導体封止用樹脂として好適なものであることが好ましい。例えば、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン型樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。中でも、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0016】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート化合物、モノアリルジグリシジルイソシアネート化合物が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。
【0017】
また、エポキシ樹脂として、アルケニル基含有エポキシ化合物と下記平均式(3)で表されるハイドロジェンオルガノポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により得られる共重合化合物を用いることができる。
【化4】
(式中、Rは、置換または非置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、aは0.01≦a≦1、bは1≦b≦3、1.01≦a+b<4である)
【0018】
上記アルケニル基含有エポキシ化合物については、例えば、アルケニル基含有フェノール樹脂をエピクロロヒドリンでエポキシ化したり、従来公知のエポキシ化合物に2−アリルフェノールを部分的に反応させたりすることにより得ることができる。このようなエポキシ化合物は、例えば、下記平均式(4)で表すことができる。
【化5】
【0019】
上記式(4)において、R7aは、アルケニル基を有し、且つ、炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜5の脂肪族1価炭化水素基であり、R7bは、グリシジルオキシ基または−OCH2CH(OH)CH2OR’で示される基(前記式におけるR’はアルケニル基を有する炭素数3〜10、好ましくは炭素数3〜5の1価炭化水素基である。)であり、kは1であり、kは0または1であり、xは1〜30の正数であり、yは1〜3の正数である。
【0020】
上記平均式(4)で表されるエポキシ化合物としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
【化6】
(上記式において、x及びyは、1<x<10、1<y<3で示される正数である。)
【0021】
上記平均式(3)で表されるハイドロジェンオルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも1個のSiH基を有する。上記平均式(3)において、Rは炭素数1〜10、好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。なお、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換してもよい。Rとして好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。
【0022】
上記平均式(3)で示されるオルガノポリシロキサンは、直鎖状、環状、及び分岐状のいずれでもよい。例えば、下記式(a)〜(c)で表すことができる。
【0023】
【化7】
【0024】
上記式(a)において、Rは互いに独立に、上記と同じであり、R9は水素原子または上記Rの選択肢から選ばれる基であり、R8は下記に示す基である。n1は5〜200の整数であり、n2は0〜2の整数であり、n3は0〜10の整数である。なお、上記平均式(3)で示されるオルガノポリシロキサンは、その式中の少なくとも1個が水素原子である。
【化8】
(式中、R及びR9は上述の通りであり、n5は1〜10の整数である。但し、上記式(a)の化合物は1分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合した水素原子を有する。)
【0025】
【化9】
【0026】
上記式(b)において、Rは上記の通りであり、n6は1〜10の整数であり、n7は1又は2である。
【0027】
【化10】
【0028】
上記式(c)において、R及びR9は上記の通りであり、rは0〜3の整数であり、R10は水素原子、または酸素原子を有してよい炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、上記式(c)の化合物は1分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合した水素原子を有する。
【0029】
上記ハイドロジェンオルガノポリシロキサンとしては、両末端ハイドロジェンメチルポリシロキサン、両末端ハイドロジェンメチルフェニルポリシロキサンなどが好適である。例えば、以下の化合物が好ましい。
【0030】
【化11】
(式中、nは20〜100の整数である。)
【化12】
(式中、mは1〜10の整数であり、nは10〜100の整数である。)
【0031】
[シアネートエステル樹脂]
シアネートエステル樹脂としては、例えば、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ジ(4−シアナトフェニル)チオエーテル、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、2−tert−ブチル−1,4−ジシアナトベンゼン、2,4−ジメチル−1,3−ジシアナトベンゼン、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ジシアナトベンゼン、テトラメチル−1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、2,2’−ジシアナトビフェニル、4,4’−ジシアナトビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアナトビフェニル、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,5−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、ビス(4−シアナトフェニル)メタン;2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル;4,4’−(1,3−フェニレンジイソピロピリデン)ジフェニルシアネート、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナト−フェニル)ホスフィン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、フェノールノボラック型シアネート、クレゾールノボラック型シアネート、ジシクロペンタジエンノボラック型シアネート、フェニルアラルキル型シアネートエステル、ビフェニルアラルキル型シアネートエステル、ナフタレンアラルキル型シアネートエステルなどが挙げられる。中でも、フェノールノボラック型シアネート、ジシクロペンタジエンノボラック型シアネート、フェニルアラルキル型シアネートエステル、ビフェニルアラルキル型シアネートエステルなどが好ましく用いられる。これらのシアネートエステル化合物は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0032】
[ビスマレイミド樹脂]
ビスマレイミド樹脂としては、N,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド等が挙げられる。中でもN,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミドが好ましい。
【0033】
[(B)無機充填剤]
(B)成分の無機充填剤としては、半導体封止用樹脂組成物として好適なものが用いられ、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、球状クリストバライト、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維等が挙げられる。
【0034】
これらの中では、シリカやクリストバライトのような表面にシラノール基がある無機充填剤が好適である。これら無機充填剤の平均粒子径や形状は、成形性及び流動性の面から平均粒子径が3〜40μmが望ましく、5〜30μmが特に望ましい。なお、本発明において、平均粒子径とは、レーザー回折法による粒度分布測定における累積体積基準平均値(又はメジアン径)を指すものとする。
【0035】
(B)成分の無機充填剤の配合量については、上記(A)熱硬化性樹脂の総量100質量部に対して、300〜2,000質量部とすることが好ましく、特に600〜1,800質量部であることが好適である。この(B)成分の配合量が300質量部以上であれば、樹脂組成物全体に対する樹脂量が少なくなるため、線膨張係数が大きくなり過ぎず、パッケージの熱ストレスが抑制される。一方、2,000質量部を超えると、流動性の低下による未充填やワイヤー変形、弾性率向上による熱ストレスの増加などが懸念される。
【0036】
[(C)有機ケイ素化合物]
本発明の(C)成分は、下記式(1)
【化13】
で表される有機ケイ素化合物であり、上記(B)無機充填剤の表面に存在する水酸基などの活性水素と速やかに反応し、無機充填剤と(A)熱硬化性樹脂との親和性を向上させる作用を有するものである。
【0037】
上記式(1)において、R1は炭素数1〜3のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であり、好ましくはメチル基である。また、R2,R3,R4,R5,R6は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれ、互いに同じあるいは異なっていても良い。これらのR2〜R6の炭素数1〜3のアルキル基としての具体例は上記R1の例示と同じである。
【0038】
上記式(1)で表される有機ケイ素化合物の製造方法は、例えば、下記式(2)
【化14】
(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシシランを、アルカリ金属アルコキシドのような塩基性化合物存在下で加熱することによって得ることができる。
【0039】
また、上記式(1)で表される有機ケイ素化合物を、上記式(2)で表される有機ケイ素化合物(アルコキシシラン)との混合物として使用してもよく、この場合は、式(2)で示されるアルコキシシランは、上記混合物中の含有量が30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0〜10質量%であり、更に好ましくは0.01〜8質量%である。
【0040】
(C)成分の配合量は、(B)成分の無機充填剤100質量部に対し、好ましくは0.05〜5.0質量部であり、より好ましくは0.1〜1.0質量部、更に好ましくは0.2〜0.5質量部である。
【0041】
また、本発明の半導体封止用樹脂組成物は、以下に詳述する(D)硬化剤、(E)硬化促進剤を含むことが好ましい。
【0042】
[(D)硬化剤]
本発明における(D)硬化剤は、上記(A)成分である熱硬化性樹脂と反応して硬化物を得るために用いられる。この硬化剤として具体的には、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤等が挙げられる。フェノール樹脂系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。酸無水物系硬化剤としては、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2、3−ジカルボン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ピロメリット酸二無水物、マレイン化アロオシメン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラビスベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物等が挙げられる。また、アミン系硬化剤としては、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン等の芳香族ジアミノジフェニルメタン化合物、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン等が挙げられる。これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。
【0043】
(D)硬化剤の配合量としては、(A)熱硬化性樹脂中の反応性官能基1モルに対して、硬化剤の反応性官能基0.1〜2モル、好ましくは0.3〜1.2モルに相当する量である。
【0044】
[(E)硬化促進剤]
本発明における(E)硬化促進剤は、上記(A)成分と(D)成分との硬化反応を促進させるものである。この硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレートなどのリン系化合物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などの第3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、過酸化物、尿素化合物、サリチル酸等を使用することができる。
【0045】
(E)硬化促進剤の配合量としては、(A)熱硬化性樹脂中の反応性官能基1モルに対し0.0001〜0.1モルである。
【0046】
[その他の成分]
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、更に必要に応じて、離型剤、難燃剤、イオントラップ剤、接着性付与剤、顔料など各種の添加剤を配合することができる。
【0047】
離型剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えば、カルナバワックス、ライスワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、モンタン酸、モンタン酸と飽和アルコール、2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−エタノール、エチレングリコール、グリセリン等とのエステル化合物等のワックス;ステアリン酸、ステアリン酸エステル、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体等が挙げられ、これら1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
難燃剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えば、ホスファゼン化合物、シリコーン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモンなどが挙げられ、これら1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
イオントラップ剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス化合物、希土類酸化物等が使用でき、これら1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
接着性付与剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これら1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
[半導体封止用樹脂組成物の製造方法]
本発明の半導体封止用樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はないが、上記(A)〜(C)成分を混合する工程において、最初に(B)及び(C)の2成分を混合する第1混合工程と、次いで(A)成分を加えて混合する第2混合工程とを含むことが好適である。このように2段階で各成分を混合することによって、上記式(1)で示される有機ケイ素化合物が無機充填剤表面の反応性官能基(シラノールなど)と効率よく反応し、該有機ケイ素化合物による表面処理効果が一段と向上するため、処理された無機充填剤の上記熱硬化性樹脂に対する濡れ性が大幅に改善され、得られる樹脂組成物の流動性や耐衝撃性等が良好となるものである。上記の第1混合工程及び第2混合工程については、以下に詳述する。
【0052】
[第1混合工程]
第1混合工程は、最初に(B)及び(C)の2成分を混合する工程である。これら(B)及び(C)の2成分を混合する際、(B)及び(C)成分のみを混合してもよいが、有機ケイ素化合物が無機充填剤と接触する前に加水分解してしまうのを抑えたり、無機充填剤に有機ケイ素化合物を均一に分散させたりすることを目的として、有機ケイ素化合物を有機溶剤で希釈して用いてもよい。
【0053】
上記の有機溶剤としては、上記(A)及び(C)成分と反応しないものであることが好ましく、具体的には、ヘキサン、ペンタン、オクタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合溶剤として用いることができる。中でも、溶剤中の水分量が少なく、入手も容易であるヘキサン、トルエンなどを用いることが好ましい。
【0054】
第1混合工程に用いる装置としては、その処理量などに応じて適宜選択することができる。例えば、ヘンシェルミキサーやバーチカルミキサー、ロッキングミキサー、コンクリートミキサー、ミキサコミキサー、レディーゲミキサー、ボールミルなどが挙げられる。
【0055】
第1混合工程の混合条件としては、温度を10〜50℃とすることが好ましく、より好ましくは15〜30℃である。また、混合時間を2〜20分間とすることが好ましく、より好ましくは3〜10分間である。
【0056】
これらの条件下で上記有機ケイ素化合物を用いて無機充填剤の表面処理を行うことができるが、この表面処理の具体的な方法については、例えば、無機充填剤を撹拌しながら一流体スプレーないしは二流体スプレーで噴霧する方法が挙げられる。
【0057】
この第1混合工程の終了後、次の第2混合工程に移るまでの時間については、1時間以内であることが好ましく、より好ましくは20分以内である。これら2つの工程の間が1時間以内であれば、製造時間を短縮することができるため好適である。
【0058】
[第2混合工程]
第2混合工程は、上記第1混合工程に次いで、更に(A)成分を加えて混合する工程である。この第2混合工程に用いる装置としては、その処理量などに応じて適宜選択することができ、上記第1混合工程と同じものであっても違っていてもよいが、同じ装置を使うと、前工程で製造した処理済の無機充填剤をロスなく次工程に用いることができるため好ましい。なお、同じ装置を使う場合は、第2混合工程を行う前に、ヘラなどで装置内壁面に付着した無機充填剤を掻き落とす作業を追加してもよい。
【0059】
第2混合工程の混合条件としては、温度を15〜30℃とすることが好ましく、より好ましくは20〜25℃である。また、混合時間を2〜20分間とすることが好ましく、より好ましくは3〜15分間である。
【0060】
第2混合工程においては、上記(A)成分に加えて、(D)硬化剤や(E)硬化促進剤などその他の成分を添加し、一緒に混合してもよい。
【0061】
このように、第1混合工程及び第2混合工程を経て得られた熱硬化性樹脂組成物を、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して半導体封止用樹脂組成物として得ることができる。
【0062】
このようにして得られる本発明の半導体封止用樹脂組成物は、各種の半導体装置の封止用として有効に利用できる。この場合、本発明の半導体封止用樹脂組成物を用いて半導体装置を封止する最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法が挙げられる。なお、本発明の半導体封止用樹脂組成物の成形温度は、150〜260℃で30〜180秒、後硬化は150〜260℃で2〜16時間行うことが望ましい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0064】
[実施例1]
第1混合工程として、20Lヘンシェルミキサー内に溶融球状シリカ(平均粒径15μm、比表面積3.0g/m2、(株)龍森製)5,000gを秤量し、1,500rpmで撹拌しながら、下記式(5)で表される2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン(信越化学工業(株)製)を15g、2流体スプレーで噴霧した。噴霧後、ヘンシェルミキサー壁面付着物を樹脂製ヘラで掻き落とし、1,500rpmで3分間撹拌した。
【化15】
【0065】
次いで、第2混合工程として、上記処理済シリカが入ったヘンシェルミキサー内に、エポキシ樹脂NC−3000(日本化薬(株)製)623.1g、フェノール系硬化剤MEHC−7851SS(明和化成(株)製)465.1g、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(北興化学(株)製)21.8gを添加し、3,000rpmで3分間撹拌した。撹拌した混合物は熱ロールで溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して樹脂組成物No.1を得た。
【0066】
[実施例2]
実施例1において、第1混合工程終了後に混合物を25℃で20分放置した以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂組成物No.2を得た。
【0067】
[実施例3]
実施例1において、第1混合工程終了後に混合物を25℃で1時間放置した以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂組成物No.3を得た。
【0068】
[実施例4]
第1混合工程として、20Lヘンシェルミキサー内に溶融球状シリカ(平均粒径15μm、比表面積3.0g/m2、(株)龍森製)5,000gを秤量し、1,500rpmで撹拌しながら、上記式(5)で表される2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン(信越化学工業(株)製)を14.85gと、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)0.15gとの混合物を2流体スプレーで噴霧した。噴霧後、ヘンシェルミキサー壁面付着物を樹脂製ヘラで掻き落とし、1,500rpmで3分間撹拌した。
【0069】
次いで、第2混合工程として、上記処理済シリカが入ったヘンシェルミキサー内に、エポキシ樹脂NC−3000(日本化薬(株)製)623.1g、フェノール系硬化剤MEHC−7851SS(明和化成(株)製)465.1g、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(北興化学(株)製)21.8gを添加し、3,000rpmで3分間撹拌した。撹拌した混合物は熱ロールで溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して樹脂組成物No.4を得た。
【0070】
[比較例1]
第1混合工程として、20Lヘンシェルミキサー内に溶融球状シリカ(平均粒径15μm、比表面積3.0g/m2、(株)龍森製)5,000gを秤量し、1,500rpmで撹拌しながら、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)を15g、2流体スプレーで噴霧した。噴霧後、ヘンシェルミキサー壁面付着物を樹脂製ヘラで掻き落とし、1,500rpmで3分間撹拌した。
【0071】
次いで、第2混合工程として、上記処理済シリカが入ったヘンシェルミキサー内に、エポキシ樹脂NC−3000(日本化薬(株)製)623.1g、MEHC−7851SS(明和化成(株)製)465.1g、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(北興化学(株)製)21.8gを添加し、3,000rpmで3分間撹拌した。撹拌した混合物は熱ロールで溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して樹脂組成物No.5を得た。
【0072】
[比較例2]
20Lヘンシェルミキサー内に溶融球状シリカ(平均粒径15μm、比表面積3.0g/m2、(株)龍森製)5,000gを秤量し、次いでエポキシ樹脂NC−3000(日本化薬(株)製)623.1g、MEHC−7851SS(明和化成(株)製)465.1g、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(北興化学(株)製)21.8gを添加し、3,000rpmで3分間撹拌した。撹拌した混合物は熱ロールで溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して樹脂組成物No.6を得た。
【0073】
上記の樹脂組成物No.1〜No.6について、下記(イ)及び(ロ)の物性値を測定した。その結果を表1に示す。
【0074】
(イ)スパイラルフロー
EMMI66−1規格に準じた金型を使用して、成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で樹脂材料の流動長を測定した。
【0075】
(ロ)破壊靱性値 K1C
ASTM E399規格に基づいて、各組成物を175℃×120秒間、成形圧6.9MPaの条件でトランスファー成形し、次いで180℃×4時間ポストキュアして、図1に示すような切欠き加工を施した3点曲げ試験片を作成した。オートグラフを用いて260℃で該試験片の破壊試験を行い、下記式によって、破壊強度(Pc)から破壊靱性値(K1C)の値を求めた。
【0076】
【数1】
【0077】
【表1】
【0078】
以上の結果より、本実施例1〜4では、(C)成分と(B)成分の無機充填剤表面との反応速度が速くなり、無機充填剤の表面処理後の室温放置や加熱処理などの工程が不要である。また、本実施例では、(C)成分で処理された(B)無機充填剤は、(A)熱硬化性樹脂との反応性も良好であり、流動性及び耐衝撃特性に優れる組成物を与える。
一方、比較例1,2は、(C)成分として上記式(1)で示される有機ケイ素化合物を使用しない例であり、表1に示すように、破壊靱性値が小さくなり耐衝撃性が悪くなることが分かる。
図1