特許第6816728号(P6816728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816728
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】重合体ラテックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/07 20060101AFI20210107BHJP
   C08J 5/02 20060101ALI20210107BHJP
   C08F 36/08 20060101ALI20210107BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   C08J3/07CEQ
   C08J5/02CEQ
   C08F36/08
   C08F297/04
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-565511(P2017-565511)
(86)(22)【出願日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】JP2017002701
(87)【国際公開番号】WO2017135144
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2019年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-18709(P2016-18709)
(32)【優先日】2016年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀岳
(72)【発明者】
【氏名】小出村 順司
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/099501(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/157034(WO,A1)
【文献】 特開2015-193685(JP,A)
【文献】 特表2009-533501(JP,A)
【文献】 特公昭39-20430(JP,B1)
【文献】 国際公開第2010/098008(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2960293(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1826236(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28;99/00
C08J 5/00− 5/24
C08F 36/08
C08F 297/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量分布が1.0〜2.6である合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が、有機溶媒中に溶解してなる重合体溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、乳化液を得る乳化工程を備える重合体ラテックスの製造方法であって、
前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として、有機溶媒中に溶解させることにより、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合に、固形分濃度が10〜60重量%の範囲となるものを用いることを特徴とする重合体ラテックスの製造方法。
【請求項2】
前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として、n−ヘキサン中に溶解させることにより、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合に、固形分濃度が10〜60重量%の範囲となるものを用いる請求項1に記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項3】
有機溶媒中において、単量体を重合することで、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を得る重合工程をさらに備え、
前記乳化工程における前記重合体溶液として、前記重合工程により得られた重合体溶液を、凝固させずに用いることを特徴とする請求項1または2に記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項4】
前記単量体の重合を、アルキルリチウム重合触媒を用いて行う請求項3に記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項5】
前記乳化液中の有機溶媒を除去する溶媒除去工程と、
前記有機溶媒を除去した乳化液に対して、遠心分離を行うことで、前記乳化液を濃縮する遠心分離工程をさらに備える請求項1〜4のいずれかに記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項6】
前記界面活性剤が、ロジン酸ナトリウムおよび/またはロジン酸カリウムである請求項1〜5のいずれかに記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られた重合体ラテックスに、架橋剤を添加する工程を備えるラテックス組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性に優れ、かつ、引張強度の高いディップ成形体を与えることのできる重合体ラテックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ゴムのラテックスを含有するラテックス組成物をディップ成形して、乳首、風船、手袋、バルーン、サック等の人体と接触して使用されるディップ成形体が得られることが知られている。しかしながら、天然ゴムのラテックスは、人体にアレルギーの症状を引き起こすような蛋白質を含有するため、生体粘膜または臓器と直接接触するディップ成形体としては問題がある場合があった。そのため、天然ゴムのラテックスではなく、合成ポリイソプレンやスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックスを用いる検討がされてきている(特許文献1)。
【0003】
たとえば、特許文献1には、合成ポリイソプレンなどのゴムを炭化水素溶媒中に溶解させるセメント形成工程と、得られたセメントをセッケン水溶液と一緒に乳化させて、水中油型乳化物を形成する工程と、炭化水素溶媒を除去し、0.5から2.0μmの範囲内に中央値の粒子サイズを有するゴムのラテックスを生成する工程とを備える人工ラテックスの製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献1の技術により得られる人工ラテックスを用いて得られるディップ成形体は、引張強度が十分でなく、そのため、引張強度のさらなる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5031821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、生産性に優れ、かつ、引張強度の高いディップ成形体を与えることのできる重合体ラテックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることにより、重合体ラテックスを製造する際に、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として、分子量分布が所定の範囲にあり、かつ、有機溶媒中に溶解させ、所定粘度の重合体溶液とした際における、固形分濃度が特定の範囲となるものを用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、分子量分布が1.0〜2.6である合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が、有機溶媒中に溶解してなる重合体溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、乳化液を得る乳化工程を備える重合体ラテックスの製造方法であって、
前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として、有機溶媒中に溶解させることにより、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合に、固形分濃度が10〜60重量%の範囲となるものを用いることを特徴とする重合体ラテックスの製造方法が提供される。
【0008】
本発明の重合体ラテックスの製造方法において、前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として、n−ヘキサン中に溶解させることにより、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合に、固形分濃度が10〜60重量%の範囲となるものを用いることが好ましい。
本発明の重合体ラテックスの製造方法において、有機溶媒中において、単量体を重合することで、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を得る重合工程をさらに備えるものとし、かつ、前記乳化工程における前記重合体溶液として、前記重合工程により得られた重合体溶液を、凝固させずに用いることが好ましい。また、前記単量体の重合を、アルキルリチウム重合触媒を用いて行うことが好ましい。
本発明の重合体ラテックスの製造方法は、前記乳化液中の有機溶媒を除去する溶媒除去工程と、前記有機溶媒を除去した乳化液に対して、遠心分離を行うことで、前記乳化液を濃縮する遠心分離工程をさらに備えることが好ましい。
本発明の重合体ラテックスの製造方法において、前記界面活性剤が、ロジン酸ナトリウムおよび/またはロジン酸カリウムであることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、前記製造方法により得られた重合体ラテックスに、架橋剤を添加する工程を備えるラテックス組成物の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、前記製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産性に優れ、かつ、引張強度の高いディップ成形体を与えることのできる重合体ラテックス、およびこのような重合体ラテックスを用いて得られ、高い引張強度を備えるディップ成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法は、分子量分布が1.0〜2.6である合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が、有機溶媒中に溶解してなる重合体溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、乳化液を得る乳化工程を備える重合体ラテックスの製造方法であって、
前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として、有機溶媒中に溶解させることにより、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合に、固形分濃度が10〜60重量%の範囲となるものを用いるものである。
【0012】
合成ポリイソプレンの重合体溶液
まず、本発明の製造方法で用いる、合成ポリイソプレンの重合体溶液について説明する。
本発明で用いる合成ポリイソプレンの重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンは、イソプレンの単独重合体であってもよいし、イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを共重合したものであってもよい。合成ポリイソプレン中のイソプレン単位の含有量は、柔軟で、引張強度に優れるディップ成形体が得られやすいことから、全単量体単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは100重量%(イソプレンの単独重合体)である。
【0013】
イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、ブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等のイソプレン以外の共役ジエン単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;スチレン、アルキルスチレン等のビニル芳香族単量体;(メタ)アクリル酸メチル(「アクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸メチル」の意味であり、以下、(メタ)アクリル酸エチルなども同様。)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;などが挙げられる。これらのイソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体は、1種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0014】
本発明においては、合成ポリイソプレンの重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンとしては、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.6であり、かつ、有機溶媒中に溶解させることにより、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における、固形分濃度が10〜60重量%の範囲となるものを用いる。
【0015】
本発明によれば、分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲とすることにより、合成ポリイソプレンを有機溶媒に溶解することで得られる重合体溶液の粘度の上昇を抑えながら、得られるディップ成形体の引張強度を適切に高めることができる。その一方で、分子量分布(Mw/Mn)が大きすぎると、得られるディップ成形体は引張強度に劣るものとなってしまう。分子量分布(Mw/Mn)は、1.0〜2.6であり、好ましくは1.0〜2.4、より好ましくは1.0〜2.2、最も好ましくは1.0〜1.5である。
【0016】
なお、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)と、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)とから求めることができる。
【0017】
加えて、本発明によれば、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における固形分濃度を上記範囲とした合成ポリイソプレンを用いることにより、高い生産性にて、重合体ラテックスを製造することが可能となる。具体的には、後述する乳化工程における乳化を良好に行うことができる温度は60℃であり、また、溶液粘度は、通常、20,000cps程度が上限であり、このような溶液粘度における、固形分濃度を10〜60重量%の範囲に調整することで、適切な生産レート(単位時間当たりの生産量)にて乳化を行うことができ、結果として、高い生産性にて重合体ラテックスの製造が可能となる。固形分濃度が10重量%未満であると、乳化を行う際における生産レート(単位時間当たりの生産量)が低下してしまい、生産性が低下してしまう。一方、固形分濃度が60重量%超であると、成形性が低下してしまい、ディップ成形などによる成形が困難となってしまう。温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における固形分濃度は、10〜60重量%の範囲であり、好ましくは15〜50重量%の範囲、より好ましくは20〜40重量%の範囲である。
【0018】
なお、合成ポリイソプレンの、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における固形分濃度は、重合体溶液中の有機溶媒量を調整することで、温度60℃における粘度が20,000cpsとした重合体溶液を調製し、調製した溶液の固形分濃度を測定することにより求めることができる。また、重合体溶液の粘度は、たとえば、B型粘度計を用いて測定することができる。
【0019】
また、この場合において、重合体溶液中に含有される有機溶媒としては、合成ポリイソプレンを溶解可能なものであればよいが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒;等を挙げることができる。これらのうち、脂環族炭化水素溶媒または脂肪族炭化水素溶媒が好ましく、n−ヘキサンおよびシクロヘキサンがより好ましく、n−ヘキサンが特に好ましい。
【0020】
なお、本発明の製造方法において、後述するように、合成ポリイソプレンの重合体溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、乳化液を得る際においては、実際に使用する合成ポリイソプレンの重合体溶液としては、温度60℃における粘度が20,000cpsであるものに特に限定されず、温度60℃における粘度が15,000程度とされたものなど、異なる粘度に調整されたものを用いてもよいが、合成ポリイソプレンの重合体溶液中の固形分濃度をより高くすることができ、これにより、乳化を行う際における生産レート(単位時間当たりの生産量)をより高めることができるという点より、温度60℃における粘度が20,000cps程度であるもの(たとえば、温度60℃における粘度が20,000cps±100cpsであるもの)を用いることが好ましい。
【0021】
なお、本発明の製造方法において、合成ポリイソプレンを、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.6であり、かつ、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における、固形分濃度が10〜60重量%の範囲とする方法としては、特に限定されないが、たとえば、重合触媒の使用量を調整する方法、重合温度を調整する方法などを適宜組み合わせることにより、制御することができる。
【0022】
本発明で用いる、合成ポリイソプレンの重合体溶液は、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム重合触媒を用いて、有機溶媒中で、イソプレンと、必要に応じて用いられる共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを含む単量体を溶液重合して得ることができる。特に、本発明によれば、上述したアルキルリチウム重合触媒を用いて重合を行うことにより、重合転化率を、好ましくは97重量%以上、より好ましくは99重量%以上とすることができ、これにより残留モノマー量を低減できるものであり、これにより、残留モノマーを除去するために、凝固および再溶解などの工程を経ることなく、得られた重合体溶液を直接、乳化した場合でも、得られる乳化液中の残留モノマー量を抑えることができるため、望ましい。
【0023】
また、重合触媒の使用量は、得られる合成ポリイソプレンを、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.6であり、かつ、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における、固形分濃度が10〜60重量%の範囲にあるものとするという観点より、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは0.0070〜0.085重量部、より好ましくは0.0076〜0.056重量部、さらに好ましくは0.0084〜0.042重量部である。
【0024】
有機溶媒としては、重合反応に対して不活性なものであればよいが、たとえば、上述した有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは250〜2000重量部、より好ましくは400〜1250重量部である。
【0025】
また、イソプレンと、必要に応じて用いられる共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを含む単量体を溶液重合する際の重合温度は、得られる合成ポリイソプレンを、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.6であり、かつ、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における、固形分濃度が10〜60重量%の範囲にあるものとするという観点より、好ましくは40〜80℃、より好ましくは45〜75℃である。
【0026】
本発明の製造方法においては、このようにしてイソプレンを含む単量体を溶液重合することで、合成ポリイソプレンの重合体溶液を得ることができるが、本発明の製造方法においては、このようにして溶液重合して得られる重合体溶液を、凝固させることなく、そのまま用いて、これを、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることが好ましい。一度、凝固等させてしまうと、凝固を行った際の熱履歴等により、合成ポリイソプレンの分子量分布(Mw/Mn)が大きくなり過ぎてしまい、結果として得られるディップ成形体が引張強度に劣るものとなるおそれがあるため、凝固させることなく、そのまま用いることが好ましい。なお、この場合において、たとえば、重合体溶液の粘度等を調整するために、有機溶媒を添加してもよい。
【0027】
合成ポリイソプレン中のイソプレン単位としては、イソプレンの結合状態により、シス結合単位、トランス結合単位、1,2−ビニル結合単位、3,4−ビニル結合単位の4種類が存在する。得られるディップ成形体の引張強度向上の観点から、合成ポリイソプレンに含まれるイソプレン単位中のシス結合単位の含有割合は、全イソプレン単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは72重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上である。
【0028】
合成ポリイソプレンの重量平均分子量(Mw)は、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における、固形分濃度が10〜60重量%の範囲とするという観点より、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、通常100,000〜1,500,000、好ましくは300,000〜1,200,000、より好ましくは400,000〜1,100,000、最も好ましくは500,000〜1,000,000である。
【0029】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液
次いで、本発明の製造方法で用いる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液について説明する。
本発明で用いるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に含まれる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体は、スチレンとイソプレンとのブロック共重合体であり、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体中のスチレン単位とイソプレン単位の含有割合は、「スチレン単位:イソプレン単位」の重量比で、通常1:99〜90:10、好ましくは3:97〜70:30、より好ましくは5:95〜50:50、さらに好ましくは10:90〜30:70の範囲である。
【0030】
本発明においては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に含まれる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体としては、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.6であり、かつ、有機溶媒中に溶解させることにより、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における、固形分濃度が10〜60重量%の範囲となるものを用いる。
【0031】
本発明によれば、分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲とすることにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を有機溶媒に溶解することで得られる重合体溶液の粘度の上昇を抑えながら、得られるディップ成形体の引張強度を適切に高めることができる。その一方で、分子量分布(Mw/Mn)が大きすぎると、得られるディップ成形体は引張強度に劣るものとなってしまう。分子量分布(Mw/Mn)は、1.0〜2.6であり、好ましくは1.0〜2.4、より好ましくは1.0〜2.2である。
【0032】
加えて、本発明によれば、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における固形分濃度を上記範囲としたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いることにより、上述した合成ポリイソプレンの場合と同様の理由により、高い生産性にて、重合体ラテックスを製造することが可能となる。固形分濃度が10重量%未満であると、乳化を行う際における生産レート(単位時間当たりの生産量)が低下してしまい、生産性が低下してしまう。一方、固形分濃度が60重量%超であると、成形性が低下してしまい、ディップ成形などによる成形が困難となってしまう。温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における固形分濃度は、10〜60重量%の範囲であり、好ましくは15〜57重量%の範囲、より好ましくは20〜55重量%の範囲である。なお、この場合おける有機溶媒としては、合成ポリイソプレンの場合と同様のものを用いることができる。
【0033】
なお、本発明の製造方法において、後述するように、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、乳化液を得る際においては、実際に使用するスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液としては、温度60℃における粘度が20,000cpsであるものに特に限定されず、温度60℃における粘度が15,000程度とされたものなど、異なる粘度に調整されたものを用いてもよいが、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液中の固形分濃度をより高くすることができ、これにより、乳化を行う際における生産レート(単位時間当たりの生産量)をより高めることができるという点より、温度60℃における粘度が20,000cps程度であるもの(たとえば、温度60℃における粘度が20,000cps±100cpsであるもの)を用いることが好ましい。
【0034】
また、本発明の製造方法において、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.6であり、かつ、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における、固形分濃度が10〜60重量%の範囲とする方法としては、特に限定されないが、上述した合成ポリイソプレンの場合と同様に、重合触媒の使用量を調整する方法、重合温度を調整する方法などを適宜組み合わせることにより、制御することができる。
【0035】
本発明で用いる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液は、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム重合触媒を用いて、有機溶媒中で、スチレンを含有する単量体、およびイソプレンを含有する単量体を溶液重合して得ることができる。特に、本発明によれば、上述したアルキルリチウム重合触媒を用いて重合を行うことにより、重合転化率を、好ましくは97重量%以上、より好ましくは99重量%以上とすることができ、これにより残留モノマー量を低減できるものであり、これにより、残留モノマーを除去するために、凝固および再溶解などの工程を経ることなく、得られた重合体溶液を直接、乳化した場合でも、得られる乳化液中の残留モノマー量を抑えることができるため、望ましい。
【0036】
また、重合触媒の使用量は、得られるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.6であり、かつ、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における、固形分濃度が10〜60重量%の範囲にあるものとするという観点より、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは0.030〜0.34重量部、より好ましくは0.038〜0.24重量部、さらに好ましくは0.044〜0.17重量部である。
【0037】
有機溶媒としては、重合反応に対して不活性なものであればよいが、たとえば、上述した有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは75〜570重量部、より好ましくは80〜400重量部である。
【0038】
また、スチレンを含有する単量体、およびイソプレンを含有する単量体を溶液重合する際の重合温度は、得られる合成ポリイソプレンを、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.6であり、かつ、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における、固形分濃度が10〜60重量%の範囲にあるものとするという観点より、好ましくは35〜80℃、より好ましくは40〜75℃である。
【0039】
本発明の製造方法においては、このようにしてスチレンを含有する単量体、およびイソプレンを含有する単量体を溶液重合することで、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を得ることができるが、本発明の製造方法においては、このようにして溶液重合して得られる重合体溶液を、凝固させることなく、そのまま用いて、これを、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることが好ましい。一度、凝固等させてしまうと、凝固を行った際の熱履歴等により、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が大きくなり過ぎてしまい、結果として得られるディップ成形体が引張強度に劣るものとなるおそれがあるため、凝固させることなく、そのまま用いることが好ましい。なお、この場合において、たとえば、重合体溶液の粘度等を調整するために、有機溶媒を添加してもよい。
【0040】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは50,000〜500,000、より好ましくは70,000〜400,000、さらに好ましくは100,000〜350,000である。
【0041】
乳化工程
本発明の製造方法における乳化工程は、上述した合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、乳化液を得る工程である。
【0042】
上述したように、本発明の製造方法における乳化工程においては、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液として、上記した重合方法により得られた重合体溶液を、凝固させることなく、そのまま用いて、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることが好ましい。これに対し、一度、凝固等させてしまうと、凝固を行った際の熱履歴等により、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が大きくなり過ぎてしまい、結果として得られるディップ成形体が引張強度に劣るものとなるおそれがあり、その一方で、凝固させることなく、そのまま用いて乳化させることにより、このような不具合の発生を有効に防止できるものである。
【0043】
また、本発明の製造方法における乳化工程においては、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液として、有機溶媒中に溶解させることにより、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合における、固形分濃度が10〜60重量%の範囲となるものを用いるものであるため、適切な生産レート(単位時間当たりの生産量)にて乳化を行うことができ、結果として、高い生産性にて重合体ラテックスを製造できるものである。
【0044】
本発明の製造方法における乳化工程において用いる界面活性剤としては、特に限定されないが、アニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。アニオン性界面活性剤としては、たとえば、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム、ロジン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のモノアルキルリン酸塩;等が挙げられる。
【0045】
これらアニオン性界面活性剤の中でも、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、脂肪酸塩およびアルキルベンゼンスルホン酸塩が特に好ましい。
【0046】
また、重合体ラテックスを製造する際における、凝集物の発生が抑制されることから、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用して用いることが好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩と、脂肪酸塩とを併用して用いることが特に好ましい。ここで、脂肪酸塩としては、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムが好ましく、また、アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸カリウムが好ましい。また、これらの界面活性剤は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0047】
さらに、本発明の製造方法においては、アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤を併用してもよく、このようなアニオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性の界面活性剤が挙げられる。
【0048】
また、ディップ成形する際に使用する凝固剤による凝固を阻害しない範囲であれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性界面活性剤も併用してもよい。
【0049】
界面活性剤の使用量は、重合体溶液中に含まれる合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部であり、より好ましくは0.5〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。なお、2種類以上の界面活性剤を用いる場合においては、これらの合計の使用量を上記範囲とすることが好ましい。界面活性剤の使用量が少なすぎると、乳化時に凝集物が多量に発生するおそれがあり、逆に多すぎると、発泡しやすくなり、得られるディップ成形体にピンホールが発生する可能性がある。
【0050】
本発明の製造方法における乳化工程において、使用する水の量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液(有機溶媒溶液)100重量部に対して、好ましくは10〜1,000重量部、より好ましくは30〜500重量部、最も好ましくは50〜100重量部である。使用する水の種類としては、硬水、軟水、イオン交換水、蒸留水、ゼオライトウォーターなどが挙げられ、軟水、イオン交換水および蒸留水が好ましい。
【0051】
合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を、界面活性剤の存在下、水中で乳化する際には、一般に乳化機または分散機として市販されている乳化装置を特に限定されず使用できる。合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に、界面活性剤を添加する方法としては、特に限定されず、予め、水もしくは合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液のいずれか、あるいは両方に添加してもよいし、乳化操作を行っている最中に、乳化液に添加してもよく、一括添加しても、分割添加してもよい。
【0052】
乳化装置としては、たとえば、商品名「ホモジナイザー」(IKA社製)、商品名「ポリトロン」(キネマティカ社製)、商品名「TKオートホモミキサー」(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機;商品名「TKパイプラインホモミキサー」(特殊機化工業社製)、商品名「コロイドミル」(神鋼パンテック社製)、商品名「スラッシャー」(日本コークス工業社製)、商品名「トリゴナル湿式微粉砕機」(三井三池化工機社製)、商品名「キャビトロン」(ユーロテック社製)、商品名「マイルダー」(太平洋機工社製)、商品名「ファインフローミル」(太平洋機工社製)等の連続式乳化機;商品名「マイクロフルイダイザー」(みずほ工業社製)、商品名「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、商品名「APVガウリン」(ガウリン社製)等の高圧乳化機;商品名「膜乳化機」(冷化工業社製)等の膜乳化機;商品名「バイブロミキサー」(冷化工業社製)等の振動式乳化機;商品名「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等の超音波乳化機;等を用いることができる。なお、乳化装置による乳化操作の条件は、特に限定されず、所望の分散状態になるように、処理温度、処理時間などを適宜選定すればよい。
【0053】
また、本発明の製造方法においては、乳化工程において得られた乳化液から、有機溶媒を除去することが望ましい。乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、乳化液中における、有機溶媒(好ましくは脂肪族炭化水素溶媒)の含有量を500重量ppm以下とすることのできる方法が好ましく、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
【0054】
このようにして得られる、重合体ラテックスには、ラテックスの分野で通常配合される、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、キレート化剤、酸素捕捉剤、分散剤、老化防止剤等の添加剤を配合してもよい。
【0055】
pH調整剤としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
【0056】
また、必要に応じ、重合体ラテックスの固形分濃度を上げるために、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を施してもよいが、重合体ラテックス中の界面活性剤の残留量を調整することができるという観点より、遠心分離を行うことが好ましい。
【0057】
重合体ラテックスを遠心分離機にかける場合、重合体ラテックスの機械的安定性の向上のため、予めpH調整剤を添加して重合体ラテックスのpHを7以上としておくことが好ましく、pHを9以上としておくことがより好ましい。pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
【0058】
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機を用いて、遠心力を、好ましくは4,000〜5,000G、遠心分離前の重合体ラテックスの固形分濃度を、好ましくは2〜15重量%、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500〜2000Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03〜1.6MPaの条件にて実施することが好ましい。
【0059】
本発明の製造方法により製造される重合体ラテックスの体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜3μm、さらに好ましくは1〜2μmである。体積平均粒子径を上記範囲とすることにより、ラテックス粘度が適度なものとなり取り扱いやすくなるとともに、重合体ラテックスを貯蔵した際に、ラテックス表面に皮膜が生成することを抑制できる。
【0060】
本発明の製造方法により製造される重合体ラテックスの固形分濃度は、好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜70重量%である。固形分濃度を上記範囲とすることにより、重合体ラテックスを貯蔵した際における重合体粒子の分離を抑制することができるとともに、重合体粒子同士が凝集して粗大凝集物が発生することを抑制できる。
【0061】
また、本発明の製造方法により製造される重合体ラテックス中における界面活性剤の合計含有量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。界面活性剤の合計含有量が上記範囲にある場合に、泡立ちの発生が抑制され、引張強度に優れ、ピンホールの発生が無いディップ成形体が得られやすい。
【0062】
本発明の製造方法により製造される重合体ラテックスの粘度は、通常1〜1000mPa・s、好ましくは30〜500mPa・s、より好ましくは50〜400mPa・s、さらに好ましくは100〜300mPa・sである。重合体ラテックスの粘度は、たとえば、B形粘度計を用い、常温(25℃)にて測定することができる。重合体ラテックスの粘度が上記範囲にあることで、ディップ成形をより適切に行うことができる。
【0063】
ラテックス組成物
本発明のラテックス組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックスに、架橋剤を添加してなるものである。
【0064】
架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、カプロラクタム・ジスルフィド(N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2))、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
架橋剤の含有量は、特に限定されないが、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜3重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
【0066】
また、本発明のラテックス組成物は、さらに架橋促進剤を含有することが好ましい。
架橋促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられるが、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、2ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
架橋促進剤の含有量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜2重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
【0068】
また、本発明のラテックス組成物は、さらに酸化亜鉛を含有することが好ましい。
酸化亜鉛の含有量は、特に限定されないが、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜2重量部である。酸化亜鉛の含有量を上記範囲とすることにより、乳化安定性を良好なものとしながら、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
【0069】
本発明のラテックス組成物には、さらに、老化防止剤;分散剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤;等の配合剤を必要に応じて配合することができる。
【0070】
老化防止剤としては、2,6−ジ−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,2’−メチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、などの硫黄原子を含有しないフェノール系老化防止剤;2,2’−チオビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールなどのチオビスフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’―(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5−ジ−(t−アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの老化防止剤は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0071】
老化防止剤の含有量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0072】
本発明のラテックス組成物の調製方法は、特に限定されないが、たとえば、ボールミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックスに、架橋剤、および必要に応じて配合される各種配合剤を混合する方法や、上記の分散機を用いて、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックス以外の配合成分の水性分散液を調製した後、該水性分散液を合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックスに混合する方法などが挙げられる。
【0073】
本発明のラテックス組成物は、pHが7以上であることが好ましく、pHが7〜13の範囲であることがより好ましく、pHが8〜12の範囲であることがさらに好ましい。また、ラテックス組成物の固形分濃度は、15〜65重量%の範囲にあることが好ましい。
【0074】
本発明のラテックス組成物は、得られるディップ成形体の機械的特性をより高めるという観点より、ディップ成形に供する前に、熟成(前架橋)させることが好ましい。前架橋する時間は、特に限定されず、前架橋の温度にも依存するが、好ましくは1〜14日間であり、より好ましくは1〜7日間である。なお、前架橋の温度は、好ましくは20〜40℃である。
そして、前架橋した後、ディップ成形に供されるまで、好ましくは10〜30℃の温度で貯蔵することが好ましい。高温のまま貯蔵すると、得られるディップ成形体の引張強度が低下する場合がある。
【0075】
ディップ成形体
本発明のディップ成形体は、本発明のラテックス組成物をディップ成形して得られる。ディップ成形は、ラテックス組成物に型を浸漬し、型の表面に当該組成物を沈着させ、次に型を当該組成物から引き上げ、その後、型の表面に沈着した当該組成物を乾燥させる方法である。なお、ラテックス組成物に浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。また、型をラテックス組成物に浸漬する前、または、型をラテックス組成物から引き上げた後、必要に応じて凝固剤を使用できる。
【0076】
凝固剤の使用方法の具体例としては、ラテックス組成物に浸漬する前の型を凝固剤の溶液に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法(アノード凝着浸漬法)、ラテックス組成物を沈着させた型を凝固剤溶液に浸漬する方法(ティーグ凝着浸漬法)などがあるが、厚みムラの少ないディップ成形体が得られる点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
【0077】
凝固剤の具体例としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;などの水溶性多価金属塩である。なかでも、カルシウム塩が好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。これらの水溶性多価金属塩は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0078】
凝固剤は、好ましくは水溶液の状態で使用する。この水溶液は、さらにメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒やノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。凝固剤の濃度は、水溶性多価金属塩の種類によっても異なるが、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
【0079】
型をラテックス組成物から引き上げた後、通常、加熱して型上に形成された沈着物を乾燥させる。乾燥条件は適宜選択すればよい。
【0080】
次いで、加熱して、型上に形成された沈着物を架橋させる。
架橋時の加熱条件は、特に限定されないが、好ましくは60〜150℃、より好ましくは100〜130℃の加熱温度で、好ましくは10〜120分の加熱時間である。
加熱の方法は、特に限定されないが、オーブンの中で温風で加熱する方法、赤外線を照射して加熱する方法などがある。
【0081】
また、ラテックス組成物を沈着させた型を加熱する前あるいは加熱した後に、水溶性不純物(たとえば、余剰の界面活性剤や凝固剤)を除去するために、型を水または温水で洗浄することが好ましい。用いる温水としては好ましくは40℃〜80℃であり、より好ましくは50℃〜70℃である。
【0082】
架橋後のディップ成形体は、型から脱着される。脱着方法の具体例は、手で型から剥がす方法、水圧または圧縮空気圧力により剥がす方法等が挙げられる。架橋途中のディップ成形体が脱着に対する十分な強度を有していれば、架橋途中で脱着し、引き続き、その後の架橋を継続してもよい。
【0083】
本発明のディップ成形体は、上記本発明の製造方法により得られる合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体ラテックスを用いて得られるものであるため、引張強度に優れるものであり、手袋として特に好適に用いることができる。ディップ成形体が手袋である場合、ディップ成形体同士の接触面における密着を防止し、着脱の際の滑りをよくするために、タルク、炭酸カルシウムなどの無機微粒子または澱粉粒子などの有機微粒子を手袋表面に散布したり、微粒子を含有するエラストマー層を手袋表面に形成したり、手袋の表面層を塩素化したりしてもよい。
【0084】
また、本発明のディップ成形体は、上記手袋の他にも、哺乳瓶用乳首、スポイト、チューブ、水枕、バルーンサック、カテーテル、コンドームなどの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具;加圧成形用バック、ガス貯蔵用バックなどの工業用品;指サックなどにも用いることができる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
【0086】
重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンまたはスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の固形分濃度が0.1重量%となるように、テトラヒドロフランで希釈し、この溶液について、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析を行い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0087】
温度60℃における粘度が20,000cpsとなる時の固形分濃度
重合体溶液について、温度60℃における粘度が20,000cpsとなる時の、固形分濃度を、以下の方法により求めた。
まず、得られた重合体溶液について、下記方法に従って、粘度測定を行った。次いで、得られた溶液粘度の測定結果に基づいて、重合体溶液の、温度60℃における粘度を20,000cpsとするのに必要となる、n−ヘキサン量を求め、重合体溶液に対し、求めた量だけn−ヘキサンを添加し、再度、粘度測定を行うという操作を繰り返すことで、温度60℃における粘度が20,000cpsとなる重合体溶液を得た。
そして、得られた温度60℃における粘度が20,000cpsとなる重合体溶液について、下記方法に従って、固形分濃度を測定することで、温度60℃における粘度が20,000cpsとなる時の固形分濃度を求めた。
なお、重合体溶液の温度60℃における粘度が20,000cpsを下回る場合は、エバポレーターにて溶媒を蒸発させ、温度60℃における粘度が20,000cps以上になったことを確認してから上記操作を実施した。
(重合体溶液の粘度測定)
B型粘度計 型式BH(東京計器社製)を使用して測定を行った。具体的には、300mLのガラスビーカーに、重合体溶液200mLを入れ、これを60℃に加温し、次いで、ロータNo.1〜6の任意のロータを、ロータに刻印されている線まで浸漬させて、粘度測定を行った。
(重合体溶液中の固形分濃度)
アルミ皿(重量:X1)に、重合体溶液2gを精秤し(重量:X2)、これをオーブン(「DK83」、YAMATO社製)で105℃、20分乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、重合体溶液中の固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3−X1)×100/X2
【0088】
重合体ラテックスの体積平均粒子径
重合体ラテックス中に含まれる粒子の体積平均粒子径は、光散乱回折粒子測定装置(「LS−230」、コールター社製)を用いて測定した。
【0089】
ディップ成形体の引張強度
ディップ成形体の引張強度は、ASTM D412に基づいて測定した。具体的には、ディップ成形体をダンベル(Die−C)で打ち抜き、測定用試験片を作製し、得られた試験片をテンシロン万能試験機(オリエンテック社製「RTC−1225A」)で引張速度500mm/minで引っ張り、破断直前の引張強度(単位:MPa)を測定した。
【0090】
実施例1
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の製造)
乾燥され、窒素置換された撹拌付きオートクレープに、n−ヘキサン1150部とイソプレン100部を仕込んだ。オートクレーブ内の温度を60℃にし、撹拌しながら、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液0.1105部を加えて1時間反応させた。重合反応率は99%であった。得られた反応液に、重合停止剤としてメタノール0.0831部を添加し、反応を停止させることで、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)を得た。
得られた重合体溶液(A−1)中に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が510,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.0であった。
【0091】
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の濃度調整)
上記にて得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)について、上記方法にしたがい、温度60℃における粘度が20,000cpsとなるように濃度調整を行うことで、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−1)を得た。なお、合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−1)中の固形分濃度(合成ポリイソプレンの含有量)は、28重量%であった。
【0092】
(乳化工程)
ロジン酸ナトリウム10部と水を混合し、温度60℃のロジン酸ナトリウム濃度1.5重量%のアニオン性界面活性剤水溶液を調製した。そして、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−1)と、アニオン性界面活性剤水溶液とを、重量比で1:1.5となるように、商品名「マルチラインミキサーMS26−MMR−5.5L」(佐竹化学機械工業株式会社製)を用いて混合し、続いて、商品名「マイルダーMDN310」(太平洋機工株式会社製)を用い4100rpmで混合および乳化を行うことで、乳化液(C−1)を得た。また、その際、合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−1)とアニオン性界面活性剤水溶液の合計のフィード流速は2,000kg/hr、温度は60℃、背圧(ゲージ圧)は0.5MPaとした。
なお、この際において、乳化液中に含有される粒子の最大粒子径が32μm以下となるまでの時間を乳化時間tとし、算出した乳化時間tに基づいて、乳化を行った。最大粒子径は、乳化液に対して、光散乱回折粒子測定装置((「LS−230」、コールター社製)を用いて、粒度分布の測定を行い、体積粒子径の頻度の大きい方から0.05%となる粒子径を、最大粒子径とした。実施例1では、乳化時間tは43分であった。
【0093】
次いで、上記にて得られた乳化液(C−1)を、−0.01〜−0.09MPa(ゲージ圧)の減圧下で80℃に加温し、n−ヘキサンを留去した。また、この際に、消泡剤として、商品名「SM5515」(東レ・ダウコーニング社製)を用い、乳化液中の合成ポリイソプレンに対して300重量ppmの量になるよう、噴霧しながら連続添加を行った。なお、n−ヘキサンを留去する際には、乳化液(C−1)がタンクの容積の70体積%以下になるように調整し、かつ、攪拌翼として3段の傾斜パドル翼を用い、60rpmでゆっくり攪拌を実施した。
【0094】
そして、n−ヘキサンの留去が完了した後、n−ヘキサン留去後の乳化液(C−1)を、連続遠心分離機(商品名「SRG510」、アルファラバル社製)を用いて、4,000〜5,000Gで遠心分離を行い、軽液としての固形分濃度56重量%の合成ポリイソプレンのラテックス(D−1)を得た。なお、遠心分離の際の条件は、遠心分離前の乳化液の固形分濃度10重量%、連続遠心分離時の流速は1300kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)は1.5MPaとした。
【0095】
得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−1)は、体積平均粒子径が1.5μm、pH=10、B形粘度計で測定した粘度が210mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり2.0部であった。また、合成ポリイソプレンのラテックス(D−1)中に、凝集物は観察されなかった。
【0096】
(ラテックス組成物の調製)
上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−1)を攪拌しながら、ラテックス中の合成ポリイソプレン100部に対して、固形分換算で1部になるように濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ソーダを添加した。そして、得られた混合物を攪拌しながら、混合物中の合成ポリイソプレン100部に対して、固形分換算で、酸化亜鉛1.5部、硫黄1.5部、老化防止剤(商品名:Wingstay L、グッドイヤー社製)3部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛0.3部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛0.5部、およびメルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩0.7部を、水分散液の状態で添加した後、水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを10.5に調整することで、ラテックス組成物を得た。
次いで、得られたラテックス組成物を、30℃に調整された恒温水槽で48時間熟成した。
【0097】
(ディップ成形体の製造)
市販のセラミック製手型(シンコー社製)を洗浄し、70℃のオーブン内で予備加熱した後、18重量%の硝酸カルシウムおよび0.05重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン109P」、花王社製)からなる凝固剤水溶液に5秒間浸漬し、取り出した。次いで、凝固剤で被覆された手型を70℃のオーブン内で30分以上乾燥した。
次いで、凝固剤で被覆された手型をオーブンから取り出し、上記にて得られた熟成後のラテックス組成物に10秒間浸漬した。その後、室温で10分間風乾してから、この手型を60℃の温水中に5分間浸漬し、次いで、フィルム状の合成ポリイソプレンで被覆された手型を130℃のオーブン内に置いて、30分間加熱することで、架橋を行った。次いで、架橋されたフィルムで被覆された手型を室温まで冷却した後、タルクを散布してから手型から剥離することで、ディップ成形体(手袋)を得た。そして、得られたディップ成形体(手袋)について、上記方法に従って、引張強度を測定した。結果を表1に示す。
【0098】
実施例2
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の製造)
イソプレンを重合する際における、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液の量を0.1483部に、重合停止剤としてのメタノールの量を0.1112部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−2)を得た。
得られた重合体溶液(A−2)中に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が380,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.4であった。
【0099】
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の濃度調整)
上記にて得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−2)について、上記方法にしたがい、温度60℃における粘度が20,000cpsとなるように濃度調整を行うことで、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−2)を得た。なお、合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−2)中の固形分濃度(合成ポリイソプレンの含有量)は、34重量%であった。
【0100】
(乳化工程)
次いで、得られた、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、乳化液(C−2)を得た。なお、実施例2においても、乳化液中に含有される粒子の最大粒子径が32μm以下となるまでの時間を乳化時間tとし、算出した乳化時間tに基づいて、乳化を行った。実施例2では、乳化時間tは40分であった。
【0101】
次いで、得られた乳化液(C−2)について、実施例1と同様にして、n−ヘキサンの留去および遠心分離を行うことで、合成ポリイソプレンのラテックス(D−2)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−2)は、固形分濃度が56重量%、pH=10.1、B形粘度計で測定した粘度が180mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり1.9部であった。また、合成ポリイソプレンのラテックス(D−2)中に、凝集物は観察されなかった。
【0102】
(ラテックス組成物の調製、ディップ成形体の製造)
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
実施例3
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の製造)
イソプレンを重合する際における、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液の量を0.0687部に、重合停止剤としてのメタノールの量を0.0515部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−3)を得た。
得られた重合体溶液(A−3)中に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が820,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.2であった。
【0104】
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の濃度調整)
上記にて得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−3)について、上記方法にしたがい、温度60℃における粘度が20,000cpsとなるように濃度調整を行うことで、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−3)を得た。なお、合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−3)中の固形分濃度(合成ポリイソプレンの含有量)は、19重量%であった。
【0105】
(乳化工程)
次いで、得られた、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、乳化液(C−3)を得た。なお、実施例3においても、乳化液中に含有される粒子の最大粒子径が32μm以下となるまでの時間を乳化時間tとし、算出した乳化時間tに基づいて、乳化を行った。実施例3では、乳化時間tは46分であった。
【0106】
次いで、得られた乳化液(C−3)について、実施例1と同様にして、n−ヘキサンの留去および遠心分離を行うことで、合成ポリイソプレンのラテックス(D−3)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−3)は、固形分濃度が56重量%、pH=10.1、B形粘度計で測定した粘度が250mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり2.2部であった。また、合成ポリイソプレンのラテックス(D−3)中に、凝集物は観察されなかった。
【0107】
(ラテックス組成物の調製、ディップ成形体の製造)
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
実施例4
(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液の製造)
乾燥され、窒素置換された撹拌付きオートクレープに、n−ヘキサン300部とスチレン15部およびN,N,N’,N’−テトラメチルエタン−1,2−ジアミン0.0017部を仕込んだ。オートクレーブ内の温度を60℃にし、撹拌しながら、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液0.2036部を加えて20分間反応させた。つぎに、イソプレン85部をオートクレーブ内に1時間連続添加した。連続添加後、15分間反応させた。つぎに、ジメチルジクロロシラン0.0308部を加えて30分間反応させた。重合反応率は99%であった。得られた反応液に、重合停止剤としてメタノール0.0153部を添加し、反応を停止させることで、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液(A−4)を得た。
得られた重合体溶液(A−4)中に含まれる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体は、重量平均分子量(Mw)が250,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.1であった。
【0109】
(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液の濃度調整)
上記にて得られたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液(A−4)について、上記方法にしたがい、温度60℃における粘度が20,000cpsとなるように濃度調整を行うことで、温度60℃における粘度が20,000cpsであるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液(B−4)を得た。なお、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液(B−4)中の固形分濃度(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の含有量)は、52重量%であった。
【0110】
(乳化工程)
次いで、得られた、温度60℃における粘度が20,000cpsであるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液(B−4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、乳化液(C−4)を得た。なお、実施例4においても、乳化液中に含有される粒子の最大粒子径が32μm以下となるまでの時間を乳化時間tとし、算出した乳化時間tに基づいて、乳化を行った。実施例4では、乳化時間tは33分であった。
【0111】
次いで、得られた乳化液(C−4)について、実施例1と同様にして、n−ヘキサンの留去および遠心分離を行うことで、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックス(D−4)を得た。得られたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックス(D−4)は、固形分濃度が56重量%、pH=9.9、B形粘度計で測定した粘度が140mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体100部あたり1.9部であった。また、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックス(D−4)中に、凝集物は観察されなかった。
【0112】
(ラテックス組成物の調製、ディップ成形体の製造)
また、上記にて得られたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックス(D−4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
比較例1
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の製造)
イソプレンを重合する際における、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液の量を0.2562部に、重合停止剤としてのメタノールの量を0.1920部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−5)を得た。
得られた重合体溶液(A−5)中に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が220,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.0であった。
【0114】
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の濃度調整)
上記にて得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−5)について、上記方法にしたがい、温度60℃における粘度が20,000cpsとなるように濃度調整を行うことで、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−5)を得た。なお、合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−5)中の固形分濃度(合成ポリイソプレンの含有量)は、62重量%であった。
【0115】
(乳化工程)
次いで、得られた、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−5)を使用した以外は、実施例1と同様にして、乳化液(C−5)を得た。なお、比較例1においても、乳化液中に含有される粒子の最大粒子径が32μm以下となるまでの時間を乳化時間tとし、算出した乳化時間tに基づいて、乳化を行った。比較例1では、乳化時間tは29分であった。
【0116】
次いで、得られた乳化液(C−5)について、実施例1と同様にして、n−ヘキサンの留去および遠心分離を行うことで、合成ポリイソプレンのラテックス(D−5)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−5)は、固形分濃度が56重量%、pH=10.1、B形粘度計で測定した粘度が150mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり2.2部であった。
【0117】
(ラテックス組成物の調製、ディップ成形体の製造)
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−5)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、比較例1においては、成形性に極めて劣るものであり、引張強度の評価ができるようなディップ成形体を得ることができなかった。
【0118】
比較例2
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の製造)
イソプレンを重合する際における、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液の量を0.0466部に、重合停止剤としてのメタノールの量を0.0349部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−6)を得た。
得られた重合体溶液(A−6)中に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が1,210,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.0であった。
【0119】
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の濃度調整)
上記にて得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−6)について、上記方法にしたがい、温度60℃における粘度が20,000cpsとなるように濃度調整を行うことで、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−6)を得た。なお、合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−6)中の固形分濃度(合成ポリイソプレンの含有量)は、8重量%であった。
【0120】
(乳化工程)
次いで、得られた、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンの重合体溶液(B−6)を使用した以外は、実施例1と同様にして、乳化液(C−6)を得た。なお、比較例2においても、乳化液中に含有される粒子の最大粒子径が32μm以下となるまでの時間を乳化時間tとし、算出した乳化時間tに基づいて、乳化を行った。比較例2では、乳化時間tは50分であった。
【0121】
次いで、得られた乳化液(C−6)について、実施例1と同様にして、n−ヘキサンの留去および遠心分離を行うことで、合成ポリイソプレンのラテックス(D−6)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−6)は、固形分濃度が56重量%、pH=10、B形粘度計で測定した粘度が400mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり1.9部であった。
【0122】
(ラテックス組成物の調製、ディップ成形体の製造)
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−6)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
比較例3
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の製造、凝固、および再溶解)
イソプレンを重合する際における、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液の量を0.0376部に、重合停止剤としてのメタノールの量を0.0282部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−7)を得た。
得られた(A−7)についてスチームにより、凝固を行い、得られた凝固物について、150℃〜200℃の条件で乾燥を行うことにより、固形状の合成ポリイソプレン(E−7)を得た。
そして、得られた合成ポリイソプレン(E−7)をn−ヘキサンと混合し、攪拌しながら温度を60℃に昇温して溶解させることで、合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(F−7)を調製した。
得られたn−ヘキサン溶液(F−7)に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が1,500,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.2であった。
【0124】
(合成ポリイソプレンの重合体溶液の濃度調整)
上記にて得られた合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(F−7)について、上記方法にしたがい、温度60℃における粘度が20,000cpsとなるように濃度調整を行うことで、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(G−7)を得た。なお、合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(G−7)中の固形分濃度(合成ポリイソプレンの含有量)は、6重量%であった。
【0125】
(乳化工程)
次いで、得られた、温度60℃における粘度が20,000cpsである合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(G−7)を使用した以外は、実施例1と同様にして、乳化液(C−7)を得た。なお、比較例3においても、乳化液中に含有される粒子の最大粒子径が32μm以下となるまでの時間を乳化時間tとし、算出した乳化時間tに基づいて、乳化を行った。比較例3では、乳化時間tは51分であった。
【0126】
次いで、得られた乳化液(C−7)について、実施例1と同様にして、n−ヘキサンの留去および遠心分離を行うことで、合成ポリイソプレンのラテックス(D−7)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−7)は、固形分濃度が56重量%、pH=10.2、B形粘度計で測定した粘度が440mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり2.0部であった。
【0127】
(ラテックス組成物の調製、ディップ成形体の製造)
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(D−7)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
*1)表1中、「直接乳化」は、単量体を溶液重合することで得られた重合体溶液について、凝固させることなく、直接、乳化を行うことにより、製造を行ったことを示している。また、「溶解後乳化」は、単量体を溶液重合することで得られた重合体溶液について、一度、凝固および乾燥を行い、得られた固形物を再度、有機溶媒に溶解させた後に、乳化を行うことにより、製造を行ったことを示している。
*2)重合体ラテックスの生産性は、実施例1〜4、比較例1〜3において求めた乳化時間tおよび重合体溶液の固形分濃度から、実施例2の生産レート(単位時間当たりの生産量)を1,000kg/hrとした場合における、生産レートを計算し、これを生産性として示した。
【0129】
表1より、重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として、分子量分布が1.0〜2.6であり、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合に、固形分濃度が10〜60重量%の範囲となるものを用い、これを界面活性剤の存在下に、水中で乳化させた場合には、重合体ラテックスの生産性が高く(生産レートが高く)、しかも、引張強度の高いディップ成形体を与えるものであった(実施例1〜4)。
【0130】
一方、重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合に、固形分濃度が60重量%を超えるものを用いた場合には、得られるラテックス組成物は、成形性に極めて劣るものであり、引張強度の評価ができるようなディップ成形体を得ることができなかった(比較例1)。
また、重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として、温度60℃における粘度が20,000cpsである重合体溶液とした場合に、固形分濃度が10重量%未満のものを用いた場合には、重合体ラテックスの生産性に劣る(生産レートが低い)ものであった(比較例2)。
さらに、重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として、分子量分布が2.6を超えるものを用いた場合には、得られるディップ成形体は引張強度に劣るものであった(比較例3)。