(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係るシリカ系膜形成組成物は、膜形成工程において膜表面に欠陥(ディフェクト)が発生し、膜の平坦性が低いため、素子の収率および信頼性が低かった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、膜のディフェクト発生を最小化するシリカ系膜形成用組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記シリカ系膜形成用組成物を用いてシリカ系膜を製造する方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、前記方法により製造されたシリカ系膜を含む電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、以下の構成を有するシリカ系膜形成組成物、シリカ系膜の製造方法およびこれによって製造されたシリカ系膜を含む電子素子により達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
1.ポリシラザン、ポリシロキサザンまたはこれらの組み合わせを含むケイ素含有化合物と、1種または2種以上の溶媒と、を含み、濁度増加速度が0.13以下であるシリカ系膜形成用組成物:
ただし、前記濁度増加速度は、下記の関係式1で定義され、前記ゲル化時間は、温度23℃±2℃、相対湿度50%±10%で測定された値である。
【0008】
【数1】
【0009】
2.前記ポリシラザンは、下記の化学式1で表される部分を含む、上記1.に記載のシリカ系膜形成用組成物:
【0010】
【化1】
【0011】
前記化学式1中、R
1〜R
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルコキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基およびヒドロキシ基からなる群より選択され、前記「*」は連結地点を意味する。
【0012】
3.前記ポリシロキサザンは、下記の化学式1に表示される部分および下記の化学式2で表される部分を含む、上記1.または2.に記載のシリカ系膜形成用組成物:
【0013】
【化2】
【0014】
前記化学式1および化学式2のR
1〜R
7は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルコキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基およびヒドロキシ基からなる群より選択され、前記「*」は連結地点を意味する。
【0015】
4.前記溶媒は、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、インデン、ジエチルベンゼンおよびメチルナフタレンからなる群より選択される少なくとも一つを含む、上記1.〜3.のいずれかに記載のシリカ系膜形成用組成物。
【0016】
5.前記組成物は、濁度増加速度が0.125以下である、上記1.〜4.のいずれかに記載のシリカ系膜形成用組成物。
【0017】
6.基板上に上記1.〜5.のいずれかに記載のシリカ系膜形成用組成物を塗布する段階と、前記シリカ系膜形成用組成物が塗布された基板を乾燥する段階と、150℃以上の不活性気体を含む雰囲気下で硬化する段階と、を含むシリカ系膜の製造方法。
【0018】
7.前記シリカ系膜形成用組成物を塗布する段階は、スピンオンコーティング方法により行われる、上記6.に記載のシリカ系膜の製造方法。
【0019】
8.上記1.〜5.のいずれかに記載の組成物から製造されるシリカ系膜を含む電子素子。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、保存安定性に優れる、および/または膜形成の初期および時間経過後においてディフェクト水準が良好である、シリカ系膜形成用組成物が提供される。また、当該シリカ系膜形成用組成物を用いることで、製造収率および性能の良好な電子素子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるよう、詳細に説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0022】
本明細書で別途の定義がない限り、「置換された」とは、化合物中の水素原子がハロゲン原子(F、Br、ClまたはI)、ヒドロキシ基、C1〜C30(好ましくはC1〜C20)のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C1〜C30(好ましくはC1〜C20)のアルキル基、C2〜C30のアルケニル基、C2〜C16のアルキニル基、C6〜C30のアリール基、C7〜C30のアリールアルキル基、C1〜C4のオキシアルキル基、C1〜C30のヘテロアルキル基、C7〜C13のヘテロアリールアルキル基、C3〜C30(好ましくはC3〜C15)のシクロアルキル基、C3〜C15のシクロアルケニル基、C6〜C15のシクロアルキニル基およびC2〜C30のヘテロシクロアルキル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されたことを意味する。
【0023】
また、本明細書で別途の定義がない限り、「ヘテロ」とは、N、O、SおよびPから選択されたヘテロ原子を1〜3個含有したものを意味する。
【0024】
また、本明細書で「*」は、同一または異なる原子または化学式と連結される部分を意味する。
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係るシリカ系膜形成用組成物について説明する。
【0026】
本発明の一実施形態に係るシリカ系膜形成用組成物は、ポリシラザン、ポリシロキサザンまたはこれらの組み合わせを含むケイ素含有化合物と、溶媒とを含み、濁度増加速度が0.13以下である。当該構成により、膜が大気中の水分や微粒子(Particle)と反応してゲル化しにくくなり、膜形成時におけるディフェクトの発生が抑制され、電子素子の製造収率および性能を向上させることができると考えられる。なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
【0027】
前記組成物の濁度増加速度は、下記の関係式1に基づいて計算される。
【0029】
前記ゲル化時間は、温度23℃±2℃、相対湿度50%±10%で測定された値である。前記ゲル化時間は、好ましくは30時間以上である。
【0030】
前記組成物の濁度増加速度が前記範囲である場合、保存安定性に優れ、膜形成時にディフェクト水準に優れて、デバイスの製造収率および性能を向上させることができる。より好ましくは、濁度増加速度は0.125以下である。濁度増加速度の下限は、低ければ低いほど良いので0以上が好ましく、0.01以上がより好ましい。なお、濁度増加速度は、ケイ素含有化合物の重量平均分子量、膜形成に用いる溶媒種、および固形分濃度によって制御でき、それぞれについて好ましくは下記のとおりである。
【0031】
以下、各成分について具体的に説明する。
【0032】
(ポリシラザン)
本発明のシリカ系膜形成用組成物に含まれるポリシラザンは、好ましくは、下記の化学式1で表される部分を含む。
【0034】
前記化学式1中、R
1〜R
3は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルコキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基およびヒドロキシ基からなる群より選択される。ただし、前記「*」は連結地点を意味する。
【0035】
非置換のC1〜C30のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソアミル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などの直鎖状または分岐状のものが挙げられる。
【0036】
非置換のC3〜C30のシクロアルキル基は、環状のアルキル基であって、その具体的な例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
【0037】
非置換のC6〜C30のアリール基は、一つ以上の芳香族環を含むC6〜C30炭素環芳香族系を有する1価(monovalent)基を意味する。なお、アリール基が2以上の環を含む場合には、前記2以上の環は、互いに融合されてもよい。具体的には、非置換のC6〜C30アリール基としては、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アントリル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、エチル−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基などを挙げることができる。
【0038】
非置換のC7〜C30のアリールアルキル基は、前記定義されたようなアリール基で水素原子のうち一部が低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基など)に置換された1価基を意味し、例としては、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。前記アリールアルキル基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基が置換可能である。
【0039】
非置換のC1〜C30のヘテロアルキル基は、前記アルキル基の主鎖内の炭素原子のうち一つ以上、好ましくは、1〜5個の炭素原子が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子のようなヘテロ原子で置換された1価基を意味し、メトキシメチル基、エトキシメチル基、イソプロポキシメチル基などが挙げられる。
【0040】
非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基は、N、O、PまたはSのうち選択された1個以上のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである一つ以上の環からなる系を有する炭素数2〜30の1価基を意味し、例としては、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルフォリノ基、チオモルフォリノ基などが挙げられる。
【0041】
非置換のC2〜C30のアルケニル基は、上記非置換のC1〜C30アルキル基の中間か最末端に、一つ以上の炭素二重結合を含んでいるものを意味し、エテニル基、プロフェニル基またはブテニル基などが挙げられる。
【0042】
非置換のC1〜C30のアルコキシ基は、−OA(ただし、Aは、前述のような非置換のC1〜C30アルキル基)の化学式を有し、メトキシ基、エトキシ基またはイソプロピルオキシ基などが挙げられる。
【0043】
前記ポリシラザンは、多様な方法により製造されてもよく、例えばハロシランとアンモニアとを反応させて製造することができる。前記ハロシランとしては、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、ジクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、クロロトリエトキシシラン、クロロトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロエチルトリエトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロエチルトリメトキシシラン、およびクロロフェニルトリメトキシシラン等のクロロシランが好ましく、ジクロロシランが特に好ましい。
【0044】
ポリシラザンの重量平均分子量は、500〜30,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましい。なお、本明細書において、「重量平均分子量」は、ポリスチレンを標準物質とするゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)により測定した値を採用するものとする。
【0045】
(ポリシロキサザン)
本発明のシリカ系膜形成用組成物に含まれるポリシロキサザンは、下記の化学式1に表示される部分および下記の化学式2で表される部分を含む。
【0047】
前記化学式1および化学式2中、R
1〜R
7は、水素原子、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルコキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基およびヒドロキシ基からなる群より選択される。ただし、前記「*」は連結地点を意味する。各置換基の定義については、上記と同義なので省略する。
【0048】
前記ポリシロキサザンは、その構造内にケイ素−窒素(Si−N)結合部分以外に、ケイ素−酸素−ケイ素(Si−O−Si)結合部分を含み、当該ケイ素−酸素−ケイ素(Si−O−Si)結合部分は熱処理による硬化時に応力を緩和させて収縮を減らすことができる。
【0049】
ひいては、前記シリカ系膜形成用組成物に含まれる前記ポリシラザンまたはポリシロキサザンは、末端部に下記の化学式3で表される部分を有することができる。
【0051】
前記化学式3で表される部分は、末端部が水素でキャッピングされている構造であり、これは前記ポリシラザンまたはポリシロキサザンの構造中に、Si−H結合の全体量に対して15〜35重量%で含まれてもよい。前記化学式3の部分がポリシラザンまたはポリシロキサザン構造中に前記範囲で含まれる場合、熱処理時に酸化反応が十分に起こりながらも熱処理時にSiH
3部分がSiH
4になって飛散されることを防止することによって収縮を抑制し、これによりクラックの発生を防止することができる。
【0052】
前記ケイ素含有化合物は、前記シリカ系膜形成用組成物の全体量に対して0.1〜50重量%で含まれることが好ましく、5〜30重量%で含まれることがより好ましい。前記範囲で含まれる場合、適切な粘度を維持することができ、膜形成時に間隙(void)なしに平坦で均一に形成され得る。
【0053】
(溶媒)
前記シリカ系膜形成用組成物に含まれる溶媒は、好ましくは、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、インデン、ジエチルベンゼンおよびメチルナフタレンからなる群より選択される少なくとも一つを含む。さらに好ましくは、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、およびジエチルベンゼンのうち少なくとも一つを含む。本発明の好ましい一実施形態は、ポリシラザンと上記の溶媒を組み合わせたシリカ系膜形成用組成物である。
【0054】
(熱酸発生剤)
前記シリカ系膜形成用組成物は、熱酸発生剤(thermal acid generator、TAG)をさらに含むことができる。
【0055】
熱酸発生剤は、前記シリカ系膜形成用組成物の現像性を改善するための添加剤であり、前記組成物に含まれているケイ素含有化合物が比較的低い温度で現像され得るようにする。
【0056】
前記熱酸発生剤は、熱により酸(H
+)を発生可能な化合物であれば特に限定されないが、90℃以上で活性化して十分な酸を発生し、揮発性が低いものを選択することができる。
【0057】
前記熱酸発生剤は、例えば、ニトロベンジルトシレート、ニトロベンジルベンゼンスルホネート、フェノールスルホネートおよびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0058】
前記熱酸発生剤は、シリカ系膜形成用組成物の全体量に対して0.01〜25重量%で含まれてもよく、前記範囲で含まれる場合、比較的低い温度で前記化合物が現像されると同時にコーティング性を改善することができる。
【0059】
(界面活性剤)
前記シリカ系膜形成用組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。
【0060】
界面活性剤は、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352(株式会社トーケムプロドクツ製)、メガファックF171、F173(大日本インキ株式会社製)、フローラッドFC430、FC431(住友スリーエム株式会社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子株式会社製)などのフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社製)などと、その他シリコン系界面活性剤が挙げられる。上記の界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
界面活性剤は、シリカ系膜形成用組成物の全体量に対して0.001〜10重量%で含まれてもよく、前記範囲で含まれる場合、溶液の分散性を改善すると同時に膜形成時に膜厚の均一性を高めることができる。
【0062】
前記シリカ系膜形成用組成物は、前記ケイ素含有化合物および前記成分が溶媒に溶解された溶液形態であってもよい。
【0063】
本発明の他の実施形態によれば、基板上に上述したシリカ系膜形成用組成物を塗布する段階と、前記シリカ系膜形成用組成物が塗布された基板を乾燥する段階と、150℃以上の不活性気体を含む雰囲気下で硬化する段階とを含むシリカ系膜製造方法を提供する。前記不活性気体としては、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の希ガスまたは窒素が好ましい。
【0064】
例えば、前記シリカ系膜形成用組成物を塗布する段階は、スピンオンコーティング方法のような溶液工程により行ってもよい。
【0065】
前記基板は、例えば、半導体、液晶などのデバイス基板であってもよいが、これに限定されない。
【0066】
本発明の他の実施形態によれば、上述した方法により製造されたシリカ系膜を含む電子素子を提供する。前記電子素子は、例えば、LCDやLEDなどのようなディスプレイ素子、または半導体素子であってもよく、前記シリカ系膜は、前記電子素子に含まれている絶縁膜であってもよい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を通じて上述した本発明の実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、単に説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0068】
シリカ系膜形成用組成物の製造
[比較例1]
容量2Lの攪拌機および温度制御装置付きの反応器の内部を、乾燥窒素で置換した。そして、乾燥ピリジン1,500gを反応器に投入した後、これを0℃に維持した。次に、ジクロロシラン100gを1時間かけて徐々に注入した。そして、攪拌しながらここにアンモニア70gを3時間かけて徐々に注入した。次に、乾燥窒素を30分間注入して反応器内に残存するアンモニアを除去した。得られた白色のスラリー状の生成物を、乾燥窒素雰囲気中で1μmのテフロン材質の濾過器を用いて濾過して、濾液1,000gを得た。ここに、乾燥キシレン1,000gを添加した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒をピリジンからキシレンに置換する操作を計3回繰り返しながら、固形分濃度を30重量%に調整し、ポアサイズ0.03μmのテフロン材質の濾過器で濾過した。濾液に乾燥ピリジン300gを投入し、重量平均分子量が8,000になるまで100℃に加熱した。ここに、乾燥ジブチルエーテル1,000gを添加した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒をキシレンからジブチルエーテルに置換する操作を3回繰り返しながら、固形分を20重量%に調整してポリシラザン溶液を得た。溶液内のポリシラザンの重量平均分子量は8,000であった。本明細書内のポリシラザンの重量平均分子量および多分散度は、それぞれWaters社製のGPC(PLC Pump 1515、RI Detector 2414)および標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。前記過程を経て得られたポリシラザン溶液を濾過して、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0069】
[比較例2]
比較例1と同様な過程を経てポリシラザンの重量平均分子量が23,000になるまで加熱した。以降、溶媒としてジブチルエーテルを用いて、比較例1と同様な溶媒置換の操作を経て得られたポリシラザン溶液を濾過して、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0070】
[比較例3]
比較例1のジブチルエーテルをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに変更した以外は比較例1と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0071】
[比較例4]
比較例2のジブチルエーテルをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに変更した以外は比較例2と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0072】
[実施例1]
比較例1のジブチルエーテルをデカヒドロナフタレンに変更した以外は比較例1と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0073】
[実施例2]
比較例2のジブチルエーテルをデカヒドロナフタレンに変更した以外は比較例2と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0074】
[実施例3]
比較例1のジブチルエーテルをテトラヒドロナフタレンに変更した以外は比較例1と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0075】
[実施例4]
比較例2のジブチルエーテルをテトラヒドロナフタレンに変更した以外は比較例2と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0076】
[実施例5]
比較例1のジブチルエーテルをジエチルベンゼンに変更した以外は比較例1と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0077】
[実施例6]
比較例2のジブチルエーテルをジエチルベンゼンに変更した以外は比較例2と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0078】
[実施例7]
比較例1のジブチルエーテルをインデンに変更した以外は比較例1と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0079】
[実施例8]
比較例2のジブチルエーテルをインデンに変更した以外は比較例2と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0080】
[実施例9]
比較例1のジブチルエーテルをトリメチルベンゼンに変更した以外は比較例1と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0081】
[実施例10]
比較例2のジブチルエーテルをトリメチルベンゼンに変更した以外は比較例2と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0082】
[実施例11]
比較例1のジブチルエーテルをメチルナフタレンに変更した以外は比較例1と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0083】
[実施例12]
比較例2のジブチルエーテルをメチルナフタレンに変更した以外は比較例1と同様にして、シリカ系膜形成用組成物を製造した。
【0084】
[濁度測定方法]
比較例1〜4および実施例1〜12で製造された組成物を30mLの各バイアルに20gずつ満たし、温度23±2℃、相対湿度50±10%のクリーンルームに放置して濁度を測定した。濁度測定はHACH社製の2100Nを用いて測定した。
【0085】
[ゲル化時間測定方法]
比較例1〜4および実施例1〜12で製造された組成物が満たされた前記30mLのバイアルを温度23±2℃、相対湿度50±10%のクリーンルームに放置し、各バイアルを45゜に5分間傾けて組成物の流動性の有無を肉眼で毎時間確認し、流動性が無くなった時間をゲル化時間と定めた。
【0086】
前記測定方法で導き出された比較例1〜4および実施例1〜12のそれぞれの濁度値およびゲル化時間を基に下記の式により濁度増加速度値を算出し、その結果値を表1に示した。
【0087】
【数3】
【0088】
【表1】
【0089】
表1から、実施例1〜12のシリカ系膜形成用組成物は、比較例1〜4のシリカ系膜形成用組成物に比べて、ゲル化時間および濁度増加速度が顕著に優れていることを確認できる。この結果から、シリカ系膜形成用組成物に用いられる溶媒に応じてゲル化時間が異なり、所定の溶媒を用いた実施例1〜12によるシリカ系膜形成用組成物の場合、ゲル化時間が増加して保存安定性に優れていることが分かる。
【0090】
評価2:膜特性の評価
[絶縁膜のディフェクト数の測定方法]
比較例1〜4および実施例1〜12で製造された組成物をそれぞれ3ccずつ取って、直径8インチのウエハーの上に1500rpmで20秒間スピン塗布した後、ホットプレートで150℃で3分間硬化して膜を形成した。前記形成した膜をSP1(Surf Scan SP−1、KLA社製)を用いて表3に記載のディフェクト水準に基づいて評価した結果を下記表2に示した。
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
表2および3から、実施例1〜12のシリカ系膜形成用組成物から作製した膜は、比較例1〜4によるシリカ系膜形成用組成物から作製した膜と比較して、初期のディフェクト水準が高く、時間が経過してもディフェクト水準が良好に維持されていることを確認できる。
【0094】
以上で本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。