(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外側針部(6.1)を被覆または露出するように、長手方向軸(L)に沿ってカートリッジキャリヤ(4)に対して可動であるスリーブ(8)をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の起動機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、薬剤送達デバイス用の改善された起動機構、およびそのような起動機構を含む改善された薬剤送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その目的は、請求項1に記載の起動機構、および請求項12に記載の薬剤送達デバイスによって達成される。
【0006】
従属請求項には、本発明の例示的な実施形態が示される。
【0007】
本発明によれば、薬剤送達デバイス用の起動機構が提供され、起動機構は、投与量の薬剤を含むカートリッジと、カートリッジを保持し、遠位キャリヤ部(distal carrier section)を含むカートリッジキャリヤと、カートリッジキャリヤの遠位端内に配置された中空の注射針、特に両頭針とを含む。注射針は、カートリッジキャリヤの内部に向けられた内側針部を含み、それにより、薬剤送達デバイスが初期位置にあるとき、内側針部はカートリッジから遠位方向に離間される(be spaced from)。起動機構は、カートリッジキャリヤの外部に向けられた注射針の外側針部を覆い、封止する取り外し可能な針キャップ(needle cap)をさらに含み、針キャップが取り外され、カートリッジが遠位方向に動かされると、遠位キャリヤ部が半径方向外側に変形することができるように、少なくとも遠位キャリヤ部は弾性材料から作られる。
【0008】
提供される薬剤送達デバイス用の起動機構は、カートリッジキャリヤにあらかじめ組み付けられた注射針によって、ブリスタ型ではない滅菌包装されたカートリッジの開封を可能にする。薬剤送達デバイスの初期位置は、薬剤送達デバイスが使用前に使用者に提供される位置であり、注射針およびカートリッジは、環境の影響を受けないように封止されている。動作位置では、注射針はカートリッジ内に収納された薬剤と流体連通する。カートリッジキャリヤの弾力のある設計によって、注射針を含むカートリッジキャリヤと係合させたカートリッジの解放が可能になる。
【0009】
例示的な実施形態において、遠位キャリヤ部は、半径方向内側の方向ならびに半径方向外側の方向に突出するキャリヤカラー(carrier collar)を含み、キャリヤカラーは、薬剤送達デバイスが初期位置にある限り、カートリッジを適所に保持するように提供される。キャリヤカラーの代わりに、半径方向内側の方向に突出し、薬剤送達デバイスが初期位置にあるとき、カートリッジを適所に保持するように適用されたいくつかの弾性アームを配置することができる。
【0010】
起動機構は、栓と係合して栓をカートリッジ内で変位させるように適用されたピストンロッドをさらに含む。栓は、カートリッジの空洞を近位で制限する。栓の変位によって、カートリッジ内に収納された薬剤が注射針を通して排出され、たとえば患者の皮膚などの注射部位に入る。栓と係合されたピストンロッドに力を加えることによって、カートリッジは遠位方向に動かされ、それによって、遠位キャリヤ部およびキャリヤカラーが、半径方向外側に変形を受ける。ピストンロッドは、自動的な薬剤の送達のためのボタンと連結すること、または手の力によって適用することが可能である。
【0011】
例示的な実施形態において、ピストンロッドは、遠位端に、対応して形成された栓ノッチ内に係合するように適用されたロッド先端を含む。したがって、ロッド先端および栓ノッチは、ピストンロッドと栓の間に、信頼性のある機械的係合のためのポジティブロッキング嵌め(positive locking fit)を確立する。
【0012】
初期位置において環境の影響に対する内側針部の封止を保証するために、カートリッジキャリヤは、キャリヤ封止ホイルを含み、それにより、例示的な実施形態では、薬剤送達デバイスが初期位置にあるとき、ピストンロッドはキャリヤ封止ホイルから離間される。キャリヤ封止ホイルは、ピストンロッドのロッド先端によって穿孔することができる。
【0013】
例示的な実施形態において、キャリヤ封止ホイルは、開放された近位端全体に配置され、したがって、注射プロセスの開始前、内側針部の封止を保証する。代替的実施形態では、カートリッジが封止ホイルの封止領域の外部に位置するように、封止ホイルを注射針のさらに近くに配置することができる。この場合、カートリッジは、カートリッジのフランジ上に配置された穿孔アダプタを含むことができる。穿孔アダプタは、ピストンロッドの穿孔機能に代わるものである。さらなる代替的実施形態では、キャリヤ封止ホイルは、コルク(cork)の中に配置された穿孔可能な封止膜として設計され、それにより、コルクはカートリッジキャリヤの近位端を制限する。これにより、キャリヤ封止ホイルの配置に関して最後の組立工程が簡単になる。
【0014】
例示的な実施形態では、キャリヤカラーの内径は、カートリッジの最大外径より小さく、キャリヤカラーはカートリッジ肩部と係合し、薬剤送達デバイスが初期位置にあるとき、カートリッジのカートリッジキャリヤに対する遠位方向の動きを制限する。注射プロセスが始まるまでカートリッジが封止された状態のままになるように、キャリヤカラーは、注射プロセスが開始される前、カートリッジを適所に保持する。
【0015】
一方において、弾性のキャリヤカラーは、取り外し可能な針キャップによって適所に保持され、それにより、薬剤送達デバイスが初期位置にあるとき、遠位キャリヤ部の半径方向外側の変形を制限するために、針キャップの近位の内面が遠位キャリヤ部の外面にぴったりと合うようになる。針キャップを取り外すことによって、遠位キャリヤ部が、カートリッジの遠位への動きによって半径方向外側に変形することが可能になる。
【0016】
さらなる例示的な実施形態では、遠位キャリヤ部の壁厚は、キャリヤカラーを除くカートリッジキャリヤの残りの部分の壁厚に比べて小さい。遠位キャリヤ部の壁厚を小さくすることによって、カートリッジキャリヤのこの部分の変形をカートリッジキャリヤの残りの部分に比べて容易にすることが可能になる。したがって、カートリッジは解放されるが、同時にカートリッジキャリヤの残りの部分によって依然として案内される。
【0017】
針キャップは、初期位置において外側針部を囲む第1の間隙を含むことができ、カートリッジキャリヤの遠位端に関連付けられ、かつ軸方向において遠位方向に突出するキャリヤ突出部の半径方向外側の面が、少なくとも遠位で第1の間隙の近位の半径方向の面によって囲まれる。結果として、外側針部が針キャップおよびキャリヤ突出部によって完全に囲まれ、したがって、外側針部は、針キャップが取り外されるまで環境の影響を受けないように封止される。
【0018】
例示的な実施形態において、起動機構は、外側針部を露出または被覆するように、長手方向軸に沿って近位および/または遠位方向に可動であるスリーブをさらに含むことができる。外側針部を覆うことによって、使用者が注射針に触れること、および注射針を目にすることがないようにし、したがって、使用者が保護される。
【0019】
さらに、これまでに記載したような起動機構を含む薬剤送達デバイスが提供される。薬剤送達デバイスは、手動による針の挿入および手動による薬剤の送達、ならびに自動的な針の挿入および/または自動的な薬剤の送達に適している。特に、薬剤送達デバイスは、スリーブまたはボタンによってトリガされる自動注射器における使用に適している。
【0020】
本発明のさらなる適用範囲は、以下に示す詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の例示的な実施形態を示すが、この詳細な説明から当業者には本発明の趣旨および範囲内での様々な変更および修正が明らかになるため、例示のためにのみ示されるものであることを理解すべきである。
【0021】
本明細書において以下に示す詳細な説明および添付図面は、例示のためにのみ示され、したがって、本発明を限定するものではないが、それらから本発明がさらに十分に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
すべての図において、対応する部材には同じ参照符号が付けられている。
【0024】
本出願では、用語「近位部/端」を使用するとき、これは、薬剤送達デバイスの使用の下で患者の薬剤送達部位から最も遠くに位置する薬剤送達デバイスの部分/端、またはその構成要素の部分/端を指す。それに対応して、用語「遠位部/端」を使用するとき、これは、薬剤送達デバイスの使用の下で患者の薬剤送達部位まで最も近くに位置する薬剤送達デバイスの部分/端、またはその構成要素の部分/端を指す。
【0025】
例示のために、
図1〜3ではすべて、x、yおよびz座標によるデカルト座標系(cartesian coordinate system)が示される。
【0026】
図1は、本発明による薬剤送達デバイス1の例示的な実施形態の概略的な長手方向の断面図を示し、薬剤送達デバイス1は初期位置P1にある。
【0027】
本出願の文脈において、薬剤送達デバイス1の初期位置P1は、注射プロセスの開始前、薬剤送達デバイス1が使用前に使用者に提供される位置である。
【0028】
薬剤送達デバイス1は、投与量の薬剤を含む空洞を形成するカートリッジ2を含む。カートリッジ2は、円筒形の主本体部(main body section)2.1および首部2.2を含む。首部2.2は、主本体部2.1の遠位端に配置され、カートリッジフランジ2.2.1を含む。
【0029】
首部2.2に向かって細くなるカートリッジ肩部2.1.1が、主本体部2.1を首部2.2と連結する。首部2.2の開放端全体に配置されるカートリッジ封止要素2.3、たとえば流体を通さない膜またはホイルを保持するために、カートリッジのフランジ2.2.1全体にキャップが提供される。さらに、薬剤送達デバイス1が初期位置P1にあるとき、カートリッジ2内の主本体部分(main body portion)2.1の近位端に、栓3が配設される。栓3は、近位方向Pにおいてカートリッジ2の空洞を制限し、遠位面および近位面を含む。
【0030】
カートリッジ2は、実質的に円筒形をした中空のカートリッジキャリヤ4の中に保持され、カートリッジキャリヤ4は、周方向のキャリヤリブ4.1を含む。キャリヤリブ4.1は、近位で内面上に配置され、カートリッジ2と係合して長手方向軸Lに沿ったカートリッジキャリヤ4に対する近位方向Pにおける動きを制限するように半径方向内側の方向に突出する。あるいは、カートリッジキャリヤ4の半径方向内側の面の外周に沿って、1つより多いキャリヤリブ4.1を均一または不均一な分布で配置することができる。
【0031】
さらに、カートリッジキャリヤ4は、半径方向外側の面に関して、周方向の壁厚を小さくした遠位キャリヤ部4.2を含む。特に、遠位キャリヤ部4.2の外径は、カートリッジキャリヤ4の残りの部分の外径より小さく、遠位キャリヤ部4.2の内径は、カートリッジキャリヤ4の残りの部分の内径と一致する。
【0032】
遠位キャリヤ部4.2は、半径方向外側の方向ならびに半径方向内側の方向に突出するキャリヤカラー4.2.1を含む。特に、キャリヤカラー4.2.1の外径は、例ではカートリッジキャリヤ4の最大外径であるカートリッジキャリヤ4の残りの部分の外径と一致し、キャリヤカラー4.2.1の内径は、カートリッジキャリヤ4の内径より小さい。遠位のカラー4.2.1は、遠位キャリヤ部4.2の外周のまわり全体に(completely)配置される。
【0033】
キャリヤカラー4.2.1は、カートリッジ2のカートリッジ肩部2.1.1を支持するように提供され、カートリッジ2が、長手方向軸Lに沿ってカートリッジキャリヤ4に対して遠位方向Dに動くのを妨げる。あるいは、遠位のカラー4.2.1の代わりに、いくつかの弾性アームを提供することができ、弾性アームは、遠位キャリヤ部4.2の外周のまわりに周方向に互いに離間して配置される。
【0034】
少なくとも遠位キャリヤ部4.2は、弾性材料、特にポリプロピレンまたはポリエチレンのような光透過性プラスチックから作られ、それによって、遠位キャリヤ部4.2を半径方向外側に変形させることが可能になる。したがって、カートリッジ2は、
図3に示すようにカートリッジフランジ2.2.1の遠位端がカートリッジキャリヤ4の遠位端の内側底面に当接するまで、遠位方向Dにさらに動くことができる。あるいは、カートリッジキャリヤ4全体を弾性材料から作ることができる。
【0035】
初期位置P1におけるカートリッジ2の遠位の封止を保証するために、薬剤送達デバイス1が初期位置P1にあるとき、中空の注射針6の上に取り付けられた取り外し可能な針キャップ5によって、遠位キャリヤ部4.2が半径方向外側に変形しないようにする。
【0036】
針キャップ5は、カートリッジキャリヤ4の外部に向けられた注射針6の外側針部6.1を覆い、封止する。注射針6は、カートリッジキャリヤ4の遠位端を通して配置されるようにカートリッジキャリヤ4の中に受け入れられ、それにより、カートリッジキャリヤ4の遠位端は、注射針6を受けるための開口部と共に、遠位方向Dに向かって方向付けられたキャリヤ突出部4.3を含む。内側針部6.2が、カートリッジキャリヤ4の内部に向けられる。
【0037】
薬剤送達デバイス1が初期位置P1にあるとき、内側針部6.2は、カートリッジ2の遠位端から遠位に離間される。内側針部6.2は、カートリッジキャリヤ4の開放された近位端全体に配置されたキャリヤ封止ホイル4.4によって、環境の影響を受けないように封止される。キャリヤ封止ホイル4.4は、カートリッジ封止要素2.3と同等な流体を通さない膜として、または代替的なコンプライアントなホイルもしくは膜として設計することができる。さらに、キャリヤ封止ホイル4.4は、カートリッジキャリヤ4の近位端を制限するコルクの中に配置された穿孔可能な封止膜として設計することができる。
【0038】
外側針部6.1を封止するために、針キャップ5の内部寸法は、外側針部6.1の寸法、ならびにカートリッジキャリヤ4の遠位端および遠位キャリヤ部4.2の寸法に対応して設計される。このために、針キャップ5は、第1の間隙5.1および第2の間隙5.2を含み、第1の間隙5.1は外側針部6.1を囲む。外側針部6.1が完全に囲まれ、したがって封止されるように、第1の間隙5.1の近位の半径方向の面は、キャリヤ突出部4.3の半径方向外側の面に直接接するように適用される。第2の間隙5.2は、第1の間隙5.1に近位方向Pにおいて直接適合する。第2の間隙5.2は、カートリッジキャリヤ4の最大外径に対応し、したがって、第2の間隙5.2の半径方向の面は、カートリッジキャリヤ4の最大外径に関して、カートリッジキャリヤ4の半径方向外側の面にぴったりと合う。
【0039】
薬剤送達デバイス1は、薬剤送達デバイス1の使用中、栓3と係合してカートリッジ2の中に変位させるように配置されたピストンロッド7をさらに含む。したがって、栓3は栓ノッチ3.1を含み、栓ノッチ3.1は、近位面内に配置され、ピストンロッド7と栓3の間にポジティブロッキング嵌めを実現するように、遠位方向Dに向けられたピストンロッド7のロッド先端7.1に対応する。
【0040】
薬剤送達デバイス1が初期位置P1にある限り、ピストンロッド7は、栓3から近位方向Pに離間される。ピストンロッド7は、示されていない本体またはハウジングに取り付けることができる。例示的な一実施形態では、ピストンロッド7を本体またはハウジングと一体形成することができる。他の例示的な実施形態では、ピストンロッド7を、たとえばラッチによって本体またはハウジングに固定することができる。
【0041】
さらに、薬剤送達デバイス1はスリーブ8を含み、スリーブ8は、カートリッジ2およびカートリッジキャリヤ4をスリーブ8内で中央に置き、薬剤送達デバイス1が初期位置P1にあるとき、注射針6を覆い、使用者が注射針6に触れること、および注射針6を目にすることがないように適用される。スリーブ8は、遠位方向Dおよび/または近位方向Pにおける相対運動を可能にするように、本体またはハウジングに摺動可能に連結することができる。
【0042】
図2は、初期位置P1と
図3に示す動作位置P2との間にある薬剤送達デバイス1の例示的な実施形態の概略的な長手方向の断面図を示している。ピストンロッド7のロッド先端7.1によってキャリヤ封止ホイル4.4が穿孔されるように、針キャップ5は取り外され、ピストンロッド7はカートリッジキャリヤ4に対して遠位方向Dに動かされている。カートリッジ2は、依然として
図1に示す位置に保持されている。
【0043】
示されていない代替的実施形態では、封止ホイル4.4がカートリッジ2から遠位に離間して配置され、それにより、カートリッジ2は、カートリッジ2のフランジ2.2.1上に配置された穿孔アダプタを備える。穿孔アダプタは、ピストンロッド7の穿孔機能に代わるものである。
【0044】
ピストンロッド7と栓3の係合、およびピストンロッド7に遠位方向Dに加えられる力によって、
図3に示すように、カートリッジフランジ2.2.1がカートリッジキャリヤ4の遠位端の内側底面に当接するまで、カートリッジ2は遠位方向Dに動く。
【0045】
図3は、注射プロセス開始時の動作位置P2における薬剤送達デバイス1の例示的な実施形態の概略的な長手方向の断面図を示している。
【0046】
カートリッジフランジ2.2.1は、カートリッジキャリヤ4の遠位端の内側底面に当接している。カートリッジ2の動きによって、キャリヤカラー4.2.1を含む弾性の遠位キャリヤ部4.2は半径方向外側の方向に変形を受け、したがって、遠位部4.2の断面はもはや円形ではない。遠位部4.2の変形に必要な力は、材料の弾性および遠位キャリヤ部4.2の幾何学的形状によって決まる。
【0047】
内側針部6.2は、カートリッジ封止要素2.3を穿孔し、したがって、カートリッジ2内に収納された薬剤と流体連通している。
【0048】
薬剤の注射部位への放出を開始するためには、ピストンロッド7に遠位方向Dに力を加えることによって、ピストンロッド7が栓3をカートリッジ2内で変位させなければならない。
【0049】
本出願の文脈において、薬剤送達デバイス1は、手動による針の挿入および手動による薬剤の送達を伴う手動デバイスとして使用することができる。さらに、薬剤送達デバイス1は、注射の力を調節するために自動的な針の挿入および/または自動的な薬剤の送達を伴う自動注射器としての使用に適している。特に、薬剤送達デバイス1は、スリーブまたはボタンによってトリガされる自動注射器における使用に適している。
【0050】
注射プロセスを実施するために、以下の例示的な方法に従って薬剤送達デバイス1を動作させることができる。
【0051】
薬剤送達デバイス1から針キャップ5が取り外される。
【0052】
ピストンロッド7に遠位方向Dに力を加えることによって、ロッド先端7.1が栓ノッチ3.1と係合するまで、ピストンロッド7が遠位方向Dに動き、それによって、
図2に示すように、キャリヤ封止ホイル4.4がロッド先端7.1によって穿孔される。
【0053】
カートリッジ2を遠位方向Dに動かすために必要な力は、栓3をカートリッジ2内で遠位方向Dに動かすために必要な力より小さいため、ピストンロッド7がさらに遠位方向Dに動くと、カートリッジ2の遠位への動きが生じる。
【0054】
カートリッジ2の遠位への動きによって、遠位部4.2が半径方向外側に変形し、したがって、カートリッジキャリヤ4の内径が増大する。カートリッジ2は、キャリヤカラー4.2.1を通過し、カートリッジフランジ2.2.1がカートリッジキャリヤ4の内側底面に当接するまで遠位に動く。同時に、注射針6がカートリッジ封止要素2.3を穿孔し、したがって、カートリッジ2内に収納された薬剤と流体連通する。
【0055】
ここで、栓3をカートリッジ2内で遠位方向Dに変位させるために必要な力は、カートリッジ2を遠位方向Dに動かすために必要な力より小さい。栓3のカートリッジ2に対する遠位への動きによって、薬剤が注射針6を通して放出され、注射部位に入る。栓3の遠位面がカートリッジ2の内部でカートリッジ肩部2.1.1に当接すると、薬剤の放出が止まる。その後、薬剤送達デバイス1を注射部位から取り外し、それによって、針の安全機構を起動し、たとえばスリーブ8の遠位への動きによって、注射針6を覆うことができる。
【0056】
説明した実施形態において、薬剤送達デバイス1は、手動による針の挿入および手動による薬剤の送達を備えることができる。さらに、薬剤送達デバイス1は、注射の力を調節するために、自動的な針の挿入および/または自動的な薬剤の送達を備えることが可能である。
【0057】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0058】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0059】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0060】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0061】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0062】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0063】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0064】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0065】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0066】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0067】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0068】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0069】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0070】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0071】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0072】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0073】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0074】
本明細書に記載される装置、方法および/またはシステム、ならびに実施形態の様々な構成要素の変更(追加および/または削除)は、そのような変更およびそのすべての等価物を包含する本発明の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく行うことが可能であることが当業者には理解されるであろう。