特許第6818305号(P6818305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6818305非天然型立体構造を形成した抗体に親和性を示すポリペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818305
(24)【登録日】2021年1月5日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】非天然型立体構造を形成した抗体に親和性を示すポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20210107BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20210107BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20210107BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20210107BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20210107BHJP
   C07K 17/00 20060101ALI20210107BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20210107BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20210107BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20210107BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20210107BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20210107BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210107BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20210107BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20210107BHJP
【FI】
   C07K7/06ZNA
   C07K7/08
   C07K14/00
   C07K19/00
   C07K1/22
   C07K17/00
   C12N15/11 Z
   C12N15/62 Z
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12N7/01
   !C07K16/00
【請求項の数】20
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2018-537385(P2018-537385)
(86)(22)【出願日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】JP2017031315
(87)【国際公開番号】WO2018043629
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2019年9月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-170867(P2016-170867)
(32)【優先日】2016年9月1日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、経済産業省、委託事業「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発(国際基準に適合した次世代抗体医薬等の製造技術)」(A4バイオメディカル)産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】本田 真也
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/115229(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/054030(WO,A1)
【文献】 特開2004−187563(JP,A)
【文献】 特表2013−528567(JP,A)
【文献】 特開2004−217573(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133342(WO,A1)
【文献】 SAKAMOTO K, et al.,J. Biol. Chem.,Vol.284, No.15 (2009),p.9986-9993
【文献】 FEIGE M J, et al.,J. Mol. Biol.,Vol.399 (2010),p.719-730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 7/01
C12N 15/09−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1:
P-Q-[EW]-I-[RT]-L-[IT]-[IL]-[NT]-[YW] (1)
(式中[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGの非天然型立体構造を形成しているCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2〜3:
PQEIRLILNW (配列番号2)
PQWITLTITY (配列番号3)
のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または 配列番号2〜3のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGの非天然型立体構造を形成しているCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド。
【請求項3】
下記式2:
Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-[EW]-I-[RT]-L-[IT]-[IL]-[NT]-[YW] (2)
(式中[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンG の非天然型立体構造を形成しているCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド。
【請求項4】
配列番号5〜6及び36〜41:
YDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号5)
YDPETGTWPQWITLTITY (配列番号6)
HNFTLPLWMYYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号36)
RFPLMFGPSWYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号37)
RFYVLLDSSWYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号38)
VSKFYPLWTRYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号39)
VFLVLMGPEFYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号40)
FLLFCPRSLCYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号41)
のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
配列番号5〜6及び36-41のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個若しくは個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンG の非天然型立体構造を形成しているCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド。
【請求項5】
下記式3:
P-N-S-G-G-G-G-S-Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-[EW]-I-[RT]-L-[IT]-[IL]-[NT]-[YW] (配列番号7) (3)(式中[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGの非天然型立体構造を形成しているCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド。
【請求項6】
配列番号8又は9:
PNSGGGGSYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号8)
PNSGGGGSYDPETGTWPQWITLTITY (配列番号9)いずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
配列番号8又は9のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGの非天然型立体構造を形成しているCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリペプチドのアミノ末端あるいはカルボキシル末端あるいは両末端に第2のポリペプチドを伸張した連結型ポリペプチドであって、免疫グロブリンGの非天然型立体構造を形成しているCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリペプチドのアミノ末端あるいはカルボキシル末端あるいは両末端にタンパク質を結合した融合タンパク質であって、免疫グロブリンGの非天然型立体構造を形成しているCH1-CLドメインに親和性を示すタンパク質。
【請求項9】
配列番号14、15及び42〜46のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる、請求項8に記載のタンパク質。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチドあるいは請求項8又は9に記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項11】
配列番号17、18及び47〜51のいずれかで表される塩基配列からなる、請求項10に記載の核酸。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の核酸を含有する組換えベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の組換えベクターが導入された形質転換体。
【請求項14】
請求項10又は11に記載の核酸を含有する組換えファージ又は組換えウイルス。
【請求項15】
請求項1〜7に記載のポリペプチド、及び請求項8又は9に記載のタンパク質のいずれかに有機化合物あるいは無機化合物あるいは有機化合物と無機化合物の両方が結合した修飾ポリペプチド又は修飾タンパク質であって、免疫グロブリンG の非天然型立体構造を形成しているCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド又はタンパク質。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチド、請求項8又は9に記載のタンパク質、又は請求項15に記載のポリペプチドもしくはタンパク質が、水不溶性の固相支持体に固定化されていることを特徴とする、固定化ポリペプチド又は固定化タンパク質。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチド、請求項8又は9に記載のタンパク質、請求項10又は11に記載の核酸、請求項12に記載の組換えベクター、請求項13に記載の形質転換体、請求項14に記載の組換えファージ又は組換えウイルス、請求項15に記載のポリペプチド又はタンパク質、請求項16に記載の固定化ポリペプチド又は固定化タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つを含む、免疫グロブリンG のCH1-CLドメインを部分として含み当該CH1-CLドメインが非天然型立体構造を形成しているタンパク質を検出、精製、固定化又は除去するためのキット。
【請求項18】
免疫グロブリンG のCH1-CLドメインを部分として含み当該CH1-CLドメインが非天然型立体構造を形成しているタンパク質を検出するための方法であって、
(1) 該CH1-CLドメイン含有タンパク質の混入が疑われる被検試料を、請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチド、請求項8〜9のいずれかに記載のタンパク質、請求項13に記載の形質転換体、請求項14に記載の組換えファージ若しくは組換えウイルス、請求項15に記載のポリペプチドもしくはタンパク質、又は請求項16に記載の固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と接触させる工程、及び
(2) 該CH1-CLドメイン含有タンパク質と、ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質との間で結合が生じたか否かを判定する工程、
を含む方法。
【請求項19】
免疫グロブリンG のCH1-CLドメインを部分として含み当該CH1-CLドメインが非天然型立体構造を形成しているタンパク質を精製するための方法であって、
(1) 該CH1-CLドメイン含有タンパク質を含む試料を請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチド、請求項8又は9に記載のタンパク質、請求項13に記載の形質転換体、請求項14に記載の組換えファージ若しくは組換えウイルス、請求項15に記載のポリペプチドもしくはタンパク質、又は請求項16に記載の固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と接触させて、該CH1-CLドメイン含有タンパク質を、ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と結合させる工程、及び
(2) ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と結合した該CH1-CLドメイン含有タンパク質を試料から回収する工程、
を含む方法。
【請求項20】
免疫グロブリンG のCH1-CLドメインを部分として含み当該CH1-CLドメインが非天然型立体構造を形成しているタンパク質を除去するための方法であって、
(1) 該CH1-CLドメイン含有タンパク質を含む試料を請求項1〜のいずれかに記載のポリペプチド、請求項8又は9に記載のタンパク質、請求項13に記載の形質転換体、請求項14に記載の組換えファージ若しくは組換えウイルス、請求項15に記載のポリペプチドもしくはタンパク質、又は請求項16に記載の固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と接触させて、該CH1-CLドメイン含有タンパク質を、ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と結合させる工程、及び
(2) ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と結合した該CH1-CLドメイン含有タンパク質を試料から除去する工程、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、日本特許出願2016−170867(2016年9月1日出願)に基づく優先権を主張しており、この内容は本明細書に参照として取り込まれる。
[技術分野]
本発明は、例えば免疫グロブリンG (IgG) あるいはそのFab領域など、抗体のCH1-CLドメインを含有するタンパク質の内、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質に特異的に親和性を示すポリペプチド、及びそれら親和性ポリペプチドを用いる該タンパク質の検出、固定化、又は除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体を治療用途に利用する、いわゆる抗体医薬品は、年間売り上げが300億ドルを超え、バイオ医薬品のなかで最大規模、医薬品産業全体の中でも最も急速な成長を遂げているセグメントである。現在まで、23種のフルサイズのモノクローナル抗体が上市され、その中のいくつかはすでに年間売上10億ドル超のブロックバスターとなっている。1995年から2007年までの間に治験が開始された医薬品候補のモノクローナル抗体は3倍以上に増加しており、その数はさらに伸び続けている(非特許文献1)。
【0003】
また、抗体の臨床応用が進むにつれて、より組織移行性の高い抗体分子、より製造コストが低減された抗体分子の形態として、Fab領域等の低分子化抗体も次世代型抗体の開発として進められ(非特許文献2)、2015年現在、3件のFab領域が治療用抗体としてFDAに承認されている。こうした低分子化抗体は高分子量IgG型抗体の欠点を相補する形で今後も開発が進められると予想されている。
【0004】
このような抗体医薬品市場の成長と拡大に伴って、抗体に対して親和性を有する分子の創製、改良に関する研究開発が盛んに行われている。これは、そのような分子が、抗体等の研究、製造、及び分析に有用であるからで、特に抗体医薬品製造時のアフィニティ精製、及び品質管理において大きな需要が見込まれるからである。
【0005】
現在、抗体親和性ポリペプチドに関して様々なアプローチの研究開発が行われており、以下にそのいくつかを例示する。
【0006】
鈴木らは、7残基若しくは12残基の線状ペプチドを繊維状バクテリオファージM13に提示したファージライブラリを用い、ヒトIgGのFc領域に親和性を有するポリペプチドを複数同定し、Fc領域に対する親和性の有無を酵素結合免疫吸着法 (ELISA) によって測定した (特許文献1)。彼らは同定した複数の配列から共通配列を抽出したペプチドを作製し、ヒトIgGに対する結合のほか、ウマ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ヤギ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、マウスに由来するIgGのFc領域に対する親和性をELISAによって確認した。
【0007】
DeLanoらは、ジスルフィド結合によって環状化したXaai Cys Xaaj Cys Xaak (式中i j kはi+j+k=18をみたす整数) で表される環状ペプチドを繊維状バクテリオファージM13に提示したファージライブラリを用い、ヒトIgGに対する結合について黄色ブドウ球菌由来プロテインAと競合反応する20残基の環状ペプチドを複数取得した。彼らはさらに、これらのペプチドから共通配列を抽出した13残基の環状ペプチドFc-IIIを作製し、プロテインAとの競合反応においてKi = 100 nMの競合阻害能を示すことを見出すとともに (非特許文献3)、IgGの抗原結合部位であるFab断片とFc-IIIを融合化することにより、ラビットを用いた実験においてin vivoでのFab半減期を改善できることを開示した (特許文献2)。またDiasらは、この環状ペプチドFc-IIIにD体及びL体のPro残基を用いてさらなる環状化を導入したFcBP-2を作製し、IgGに対する親和性 (Fc-IIIの結合解離定数KD = 185 nM) をKD =2 nMまで高めることに成功した (非特許文献4)。
【0008】
Fassinaらは、Lys残基による枝分かれ構造を有する (Arg Thr Xaa)4 Lys2 Lys Glyで表される合成テトラポリペプチドライブラリをスクリーニングし、プロテインAと競合するプロテインAミメティック (PAM) ペプチドを作製した (非特許文献5)。PAMペプチドの一つTG19318はラビットIgGに対してKD = 300 nMの親和性を有しており、さらにこれを固定化したアフィニティクロマトグラフィーによって、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジの血清中に含まれるIgGを精製できることを示した(非特許文献6)。
【0009】
Ehrlichらは、鈴木らの手法と同様に、7残基若しくは12残基の線状ペプチドを繊維状バクテリオファージM13に提示したファージライブラリを用い、ヒト型化IgGをペプシン消化して得られるpFc’断片に親和性を示すペプチドを単離した (非特許文献7)。
【0010】
Krookらは、10残基長の線状ペプチドを繊維状バクテリオファージM13に提示したファージライブラリを用い、ヒトIgGのFc領域に親和性を示すペプチドを作製した。彼らはELISAによってこのペプチドがヒト及びブタ由来のIgGに対して強い親和性を示すことを確認した (非特許文献8)。
【0011】
Verdolivaらは、Lys残基による枝分かれ構造とCys残基による環状化を導入した(Cys Xaa3)2 Lys Glyによって表される合成ペプチドライブラリをマウスモノクローナルIgGに対してスクリーニングし、ヒンジ領域近傍に親和性を示すペプチドFcRMを作製した。彼らはさらにこのFcRMを固定化したアフィニティクロマトグラフィーを構築し、マウス及びヒト由来IgGの精製を報告した (非特許文献9)。
【0012】
渡邊らは、10残基微小タンパク質シニョリンと無作為アミノ酸配列を含む人工タンパク質ライブラリ (特許文献3) を用いてヒトIgGのFc領域に低親和性を示す線状ペプチドの高親和化を図り、環状構造を持つことなくその親和性を40,600倍向上させ、KD = 1.6 nM の高親和性を示す54残基のポリペプチドAF.p17を作製した (特許文献4)(非特許文献10)。
【0013】
坂本らは、Cys Xaa7-10 Cysで表される環状ペプチドをT7バクテリオファージに提示したファージライブラリを用い、ヒトIgGのFc領域に親和性を示すペプチドを作製した(非特許文献11)。彼らが作製したペプチドは、天然型立体構造を有するFc領域ではなく、酸処理によって生じた非天然型立体構造を形成したFc領域を認識する点において、これまで作製された上記のIgG親和性ペプチドと異なっている。伊藤らは、このペプチドを用いてヒト抗体医薬、免疫グロブリン製剤、IgG試薬に含まれる酸処理によって生じた非天然型立体構造の含有率を調査できることを開示した (特許文献5)。
【0014】
渡邊らは、10残基微小タンパク質シニョリンを含む人工タンパク質ライブラリ (特許文献3) を用いてヒトIgGのFc領域に親和性を示す25残基の人工タンパク質AF.2A1を作製した(非特許文献12)。AF.2A1は、酸処理、熱処理、還元剤処理等で生じる非天然型立体構造を形成したFc領域に特異的な高親和性を示し、Fc領域の天然型立体構造と非天然型立体構造を厳密に識別した (特許文献4)。
【0015】
以上のように、複数のIgG親和性ペプチドが開発されているが、それらの分子多様性は十分とは言えない。IgGは、重鎖 (Heavy chain) と軽鎖 (Light chain) のヘテロ四量体として構成され、重鎖はVH、CH1、CH2、CH3の4種類、軽鎖はVL、CLの2種類、合計6種類のドメインから構成される複雑な構造を有しているためである。抗体等の検出、精製、固定化、分析、又は除去等の実施には、それぞれの利用状況に適した特性を有する抗体親和性分子が必要である。具体的には、抗体及び抗体ドメインを含むタンパク質のどの部位に結合するか、分子認識の特異性はどの程度か、アミノ酸配列の違いのみならず立体構造変化の違いを識別できるか、親和性の強度はどの程度か、溶液条件の変化等で結合/解離を制御できるか、溶解性や安定性はどうか、大量生産可能か、など点において適切な特性を有する抗体親和性分子が必要である。
【0016】
抗体医薬品市場の拡大に伴い、抗体分子を対象とした分析技術及び分離精製技術のさらなる高度化が強く望まれてきている。
【0017】
分析技術に関しては、今後の高度化が強く望まれる技術として特に(1)糖鎖付加を含む各種の翻訳後修飾に伴う分子不均一性に関する分析技術、(2)抗体の立体構造の変化に伴う分子不均一性に関する分析技術、(3)会合体・凝集体形成に伴う分子不均一性に関する分析技術、の3領域の開発が期待されている (非特許文献13)。抗体分子は各種の物理的あるいは化学的ストレスによって、通常の天然型立体構造とは異なるalternatively folded state (AFS) と呼ばれる非天然型立体構造を形成することが報告されている(非特許文献14) (非特許文献15)。このような非天然型立体構造は抗体の活性の喪失を招くだけでなく、タンパク質凝集の原因ともなり得る。その結果として、薬効の低下のみならず、免疫原性の惹起による副作用の原因となるリスクが示唆されており (非特許文献16)、抗体の非天然型立体構造の分析技術は、抗体医薬品の品質管理を実施する上で必要不可欠の技術としてその発展が求められている (非特許文献17)。
【0018】
タンパク質の分子形状あるいは立体構造を明らかにすることのできる分析技術としては、X線結晶構造解析、核磁気共鳴、電子顕微鏡、分析超遠心、等電点電気泳動、動的光散乱、円偏光二色性スペクトル、液体クロマトグラフィーなどが挙げられる (非特許文献17)。各々の分析技術には解析精度や測定スループットの迅速性、検出感度などそれぞれ優位点があるが、一般に、解析精度とスループット性はトレードオフの関係にあり、両者をともに満足する分光学的手法とクロマトグラフィー法はない。例えば、原子レベル精度の立体構造情報を与えることのできるX線結晶構造解析や核磁気共鳴では数か月オーダーの解析時間を必要とする。また、数分で測定が完了できる動的光散乱や液体クロマトグラフィーでは分子構造の微細な変化や微量の混入が検出できない。このため、分析技術における解析精度とスループット性の両立に係る課題の解決が求められている。
【0019】
一方、抗体の分離精製技術として、抗体に特異的な親和性を有する分子を結合リガンドとして用いるアフィニティクロマトグラフィー技術が用いられている。この用途の結合リガンドとしては、プロテインAやプロテインGなどの細菌由来の天然タンパク質、あるいは人工的に作出された抗体親和性分子が用いられている。これらの親和性分子により抗体の結合・回収が可能となるが、多くは抗体のFc領域の天然型立体構造又は非天然型立体構造に親和性を示すものであり (特許文献1〜5) (非特許文献3〜12)、抗体Fab領域の定常領域部分であるCH1-CLドメインの天然型立体構造と非天然型立体構造を特異的に識別できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2004-187563号公報
【特許文献2】国際公開番号WO2001/045746号明細書
【特許文献3】国際公開番号WO2014/103203号明細書
【特許文献4】国際公開番号WO2014/115229号明細書
【特許文献5】国際公開番号WO2008/054030号明細書
【特許文献6】特表2011-517690号公報
【非特許文献】
【0021】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、例えばIgGあるいはFab領域など、抗体のCH1-CLドメインを含有するタンパク質の内、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質に特異的な親和性を有し、該タンパク質の検出、固定化、又は除去に好適に使用できる新規なポリペプチドを提供することで、抗体の研究、製造、及び品質管理など産業で利用可能な親和性ポリペプチドの分子多様性を拡大し、それにより該タンパク質の検出、固定化、あるいは除去方法の多様性を拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ある特定のアミノ酸配列パターンを有する短いポリペプチドが、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに特異的な親和性を有することを見い出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。なお、本明細書においては、「ペプチド」と「ポリペプチド」と「タンパク質」との用語は互換的に用いられる。
【0024】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 下記式1:
P-Q-x-I-x-L-x-[IL]-[NT]-[YW] (配列番号1) (1)
(式中、xは任意のアミノ酸残基を表す。[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド。なお、以下特記しない限り、付加される「数個」のアミノ酸残基とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1個〜5個のアミノ酸残基を意味する。
【0025】
上記[1]は、P-Q-[DNEQHFYW]-I-[RKHSTY]-L-[GAVLIPSTY]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドであってもよい。
【0026】
上記[1]において、式1は、P-Q-[EW]-I-[RT]-L-[IT]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドであってもよい。
【0027】
[2] 配列番号2〜3:
PQEIRLILNW (配列番号2)
PQWITLTITY (配列番号3)
のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または 配列番号2〜3のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個のアミノ酸残基が、付加、削除、置換又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンG のCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドである、[1]に記載のポリペプチド。なお、アミノ酸残基の置換は保存的アミノ酸置換であることが好ましい。
【0028】
[3] 下記式2:
Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-x-I-x-L-x-[IL]-[NT]-[YW] (配列番号4) (2)
(式中、xは任意のアミノ酸残基を表す。[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンG のCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド。
【0029】
上記[3]は、Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-[DNEQHFYW]-I-[RKHSTY]-L-[GAVLIPSTY]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドであってもよい。
【0030】
上記[3]は、Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-[EW]-I-[RT]-L-[IT]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドであってもよい。
【0031】
[4] 配列番号5〜6及び36〜41:
YDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号5)
YDPETGTWPQWITLTITY (配列番号6)
HNFTLPLWMYYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号36)
RFPLMFGPSWYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号37)
RFYVLLDSSWYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号38)
VSKFYPLWTRYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号39)
VFLVLMGPEFYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号40)
FLLFCPRSLCYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号41)
のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または 配列番号5〜6及び36〜41のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個若しくは2個のアミノ酸残基が、付加、削除、置換又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンG のCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドである、[3]に記載のポリペプチド。なお、アミノ酸残基の置換は保存的アミノ酸置換であることが好ましい。
【0032】
[5] 下記式3:
P-N-S-G-G-G-G-S-Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-x-I-x-L-x-[IL]-[NT]-[YW] (配列番号7)
(式中、xは任意のアミノ酸残基を表す。[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド。
【0033】
上記[5]は、P-N-S-G-G-G-G-S-Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-[DNEQHFYW]-I-[RKHSTY]-L-[GAVLIPSTY]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドであってもよい。
【0034】
上記[5]は、P-N-S-G-G-G-G-S-Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-[EW]-I-[RT]-L-[IT]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドであってもよい。「数個」の意義については上記[7]と同様(後述の説明参照)とすることができる。
【0035】
[6] 配列番号8〜9:
PNSGGGGSYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号8)
PNSGGGGSYDPETGTWPQWITLTITY (配列番号9)
PNSGGGGSYDPETGTWAQEIRLILNW (配列番号10)
PNSGGGGSYDPETGTWPAEIRLILNW (配列番号11)
PNSGGGGSYDPETGTWPQEIRLIANW (配列番号12)
のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または 配列番号8〜12のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸残基が、付加、削除、置換又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドである、[5]に記載のポリペプチド。なお、アミノ酸残基の置換は保存的アミノ酸置換であることが好ましい。
【0036】
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載のポリペプチドのアミノ末端あるいはカルボキシル末端あるいは両末端に第2のポリペプチドを伸張した連結型ポリペプチドであって、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド。
【0037】
[8] [1]〜[6]のいずれかに記載のポリペプチドのアミノ末端あるいはカルボキシル末端あるいは両末端にタンパク質を結合した融合タンパク質であって、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示すタンパク質。
【0038】
[9] 配列番号13〜15及び42〜46:
MSDKIIHLTDDSFDTDVLKADGAILVDFWAEWCGPCKMIAPILDEIADEYQGKLTVAKLNIDQNPGTAPKYGIRGIPTLLLFKNGEVAATKVGALSKGQLKEFLDANLAGSGSGHTSGGGGSNNNPPTPTPSSGSGHHHHHHSAALEVLFQGPGYQDPNSGGGGSYDPETGTWPQAQKKEIQT (配列番号13)
MSDKIIHLTDDSFDTDVLKADGAILVDFWAEWCGPCKMIAPILDEIADEYQGKLTVAKLNIDQNPGTAPKYGIRGIPTLLLFKNGEVAATKVGALSKGQLKEFLDANLAGSGSGHTSGGGGSNNNPPTPTPSSGSGHHHHHHSAALEVLFQGPGYQDPNSGGGGSYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号14)
MSDKIIHLTDDSFDTDVLKADGAILVDFWAEWCGPCKMIAPILDEIADEYQGKLTVAKLNIDQNPGTAPKYGIRGIPTLLLFKNGEVAATKVGALSKGQLKEFLDANLAGSGSGHTSGGGGSNNNPPTPTPSSGSGHHHHHHSAALEVLFQGPGYQDPNSGGGGSYDPETGTWPQWITLTITY (配列番号15)
MSDKIIHLTDDSFDTDVLKADGAILVDFWAEWCGPCKMIAPILDEIADEYQGKLTVAKLNIDQNPGTAPKYGIRGIPTLLLFKNGEVAATKVGALSKGQLKEFLDANLAGSGSGHTSGGGGSNNNPPTPTPSSGSGHHHHHHSAALEVLFQGPGYQDPNSGGGGSHNFTLPLWMYYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号42)
MSDKIIHLTDDSFDTDVLKADGAILVDFWAEWCGPCKMIAPILDEIADEYQGKLTVAKLNIDQNPGTAPKYGIRGIPTLLLFKNGEVAATKVGALSKGQLKEFLDANLAGSGSGHTSGGGGSNNNPPTPTPSSGSGHHHHHHSAALEVLFQGPGYQDPNSGGGGSRFPLMFGPSWYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号43)
MSDKIIHLTDDSFDTDVLKADGAILVDFWAEWCGPCKMIAPILDEIADEYQGKLTVAKLNIDQNPGTAPKYGIRGIPTLLLFKNGEVAATKVGALSKGQLKEFLDANLAGSGSGHTSGGGGSNNNPPTPTPSSGSGHHHHHHSAALEVLFQGPGYQDPNSGGGGSRFYVLLDSSWYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号44)
MSDKIIHLTDDSFDTDVLKADGAILVDFWAEWCGPCKMIAPILDEIADEYQGKLTVAKLNIDQNPGTAPKYGIRGIPTLLLFKNGEVAATKVGALSKGQLKEFLDANLAGSGSGHTSGGGGSNNNPPTPTPSSGSGHHHHHHSAALEVLFQGPGYQDPNSGGGGSVSKFYPLWTRYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号45)
MSDKIIHLTDDSFDTDVLKADGAILVDFWAEWCGPCKMIAPILDEIADEYQGKLTVAKLNIDQNPGTAPKYGIRGIPTLLLFKNGEVAATKVGALSKGQLKEFLDANLAGSGSGHTSGGGGSNNNPPTPTPSSGSGHHHHHHSAALEVLFQGPGYQDPNSGGGGSVFLVLMGPEFYDPETGTWPQEIRLILNW (配列番号46)
のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる、[13]に記載のタンパク質。
【0039】
[10] [1]〜[7]のいずれかに記載のポリペプチドあるいは[8]又は[9]タンパク質をコードする核酸。
【0040】
[11] 配列番号16〜18及び47〜51:
ATGAGCGATAAAATTATTCACCTGACTGACGACAGTTTTGACACGGATGTACTCAAAGCGGACGGGGCGATCCTCGTCGATTTCTGGGCAGAGTGGTGCGGTCCGTGCAAAATGATCGCCCCGATTCTGGATGAAATCGCTGACGAATATCAGGGCAAACTGACCGTTGCAAAACTGAACATCGATCAAAACCCTGGCACTGCGCCGAAATATGGCATCCGTGGTATCCCGACTCTGCTGCTGTTCAAAAACGGTGAAGTGGCGGCAACCAAAGTGGGTGCACTGTCTAAAGGTCAGTTGAAAGAGTTCCTCGACGCTAACCTGGCCGGTTCTGGTTCTGGCCATACTAGTGGTGGTGGCGGTTCTAATAACAATCCTCCTACTCCTACTCCATCTAGTGGTTCTGGTCATCACCATCACCATCACTCCGCGGCTCTTGAAGTCCTCTTTCAGGGACCCGGGTACCAGGATCCGAATTCGGGAGGAGGGGGATCATACGACCCCGAGACGGGCACGTGGCCACAAGCACAGAAAAAAGAGATACAAACA (配列番号16)
ATGAGCGATAAAATTATTCACCTGACTGACGACAGTTTTGACACGGATGTACTCAAAGCGGACGGGGCGATCCTCGTCGATTTCTGGGCAGAGTGGTGCGGTCCGTGCAAAATGATCGCCCCGATTCTGGATGAAATCGCTGACGAATATCAGGGCAAACTGACCGTTGCAAAACTGAACATCGATCAAAACCCTGGCACTGCGCCGAAATATGGCATCCGTGGTATCCCGACTCTGCTGCTGTTCAAAAACGGTGAAGTGGCGGCAACCAAAGTGGGTGCACTGTCTAAAGGTCAGTTGAAAGAGTTCCTCGACGCTAACCTGGCCGGTTCTGGTTCTGGCCATACTAGTGGTGGTGGCGGTTCTAATAACAATCCTCCTACTCCTACTCCATCTAGTGGTTCTGGTCATCACCATCACCATCACTCCGCGGCTCTTGAAGTCCTCTTTCAGGGACCCGGGTACCAGGATCCGAATTCGGGAGGAGGGGGATCATACGACCCCGAGACGGGCACGTGGCCACAGGAAATTAGACTAATACTTAATTGG(配列番号17)
ATGAGCGATAAAATTATTCACCTGACTGACGACAGTTTTGACACGGATGTACTCAAAGCGGACGGGGCGATCCTCGTCGATTTCTGGGCAGAGTGGTGCGGTCCGTGCAAAATGATCGCCCCGATTCTGGATGAAATCGCTGACGAATATCAGGGCAAACTGACCGTTGCAAAACTGAACATCGATCAAAACCCTGGCACTGCGCCGAAATATGGCATCCGTGGTATCCCGACTCTGCTGCTGTTCAAAAACGGTGAAGTGGCGGCAACCAAAGTGGGTGCACTGTCTAAAGGTCAGTTGAAAGAGTTCCTCGACGCTAACCTGGCCGGTTCTGGTTCTGGCCATACTAGTGGTGGTGGCGGTTCTAATAACAATCCTCCTACTCCTACTCCATCTAGTGGTTCTGGTCATCACCATCACCATCACTCCGCGGCTCTTGAAGTCCTCTTTCAGGGACCCGGGTACCAGGATCCGAATTCGGGAGGAGGGGGATCATACGACCCCGAGACGGGCACGTGGCCGCAGTGGATAACTCTTACGATAACGTAT (配列番号18)
ATGAGCGATAAAATTATTCACCTGACTGACGACAGTTTTGACACGGATGTACTCAAAGCGGACGGGGCGATCCTCGTCGATTTCTGGGCAGAGTGGTGCGGTCCGTGCAAAATGATCGCCCCGATTCTGGATGAAATCGCTGACGAATATCAGGGCAAACTGACCGTTGCAAAACTGAACATCGATCAAAACCCTGGCACTGCGCCGAAATATGGCATCCGTGGTATCCCGACTCTGCTGCTGTTCAAAAACGGTGAAGTGGCGGCAACCAAAGTGGGTGCACTGTCTAAAGGTCAGTTGAAAGAGTTCCTCGACGCTAACCTGGCCGGTTCTGGTTCTGGCCATACTAGTGGTGGTGGCGGTTCTAATAACAATCCTCCTACTCCTACTCCATCTAGTGGTTCTGGTCATCACCATCACCATCACTCCGCGGCTCTTGAAGTCCTCTTTCAGGGACCCGGGTACCAGGATCCGAATTCGGGAGGAGGGGGATCACATAATTTTACTCTTCCTCTGTGGATGTATTACGACCCCGAGACGGGCACGTGGCCGCAGGAAATTCGCCTGATTCTGAACTGG (配列番号47)
ATGAGCGATAAAATTATTCACCTGACTGACGACAGTTTTGACACGGATGTACTCAAAGCGGACGGGGCGATCCTCGTCGATTTCTGGGCAGAGTGGTGCGGTCCGTGCAAAATGATCGCCCCGATTCTGGATGAAATCGCTGACGAATATCAGGGCAAACTGACCGTTGCAAAACTGAACATCGATCAAAACCCTGGCACTGCGCCGAAATATGGCATCCGTGGTATCCCGACTCTGCTGCTGTTCAAAAACGGTGAAGTGGCGGCAACCAAAGTGGGTGCACTGTCTAAAGGTCAGTTGAAAGAGTTCCTCGACGCTAACCTGGCCGGTTCTGGTTCTGGCCATACTAGTGGTGGTGGCGGTTCTAATAACAATCCTCCTACTCCTACTCCATCTAGTGGTTCTGGTCATCACCATCACCATCACTCCGCGGCTCTTGAAGTCCTCTTTCAGGGACCCGGGTACCAGGATCCGAATTCGGGAGGAGGGGGATCACGTTTTCCGTTGATGTTTGGGCCGTCTTGGTACGACCCCGAGACGGGCACGTGGCCGCAGGAAATTCGCCTGATTCTGAACTGG (配列番号48)
ATGAGCGATAAAATTATTCACCTGACTGACGACAGTTTTGACACGGATGTACTCAAAGCGGACGGGGCGATCCTCGTCGATTTCTGGGCAGAGTGGTGCGGTCCGTGCAAAATGATCGCCCCGATTCTGGATGAAATCGCTGACGAATATCAGGGCAAACTGACCGTTGCAAAACTGAACATCGATCAAAACCCTGGCACTGCGCCGAAATATGGCATCCGTGGTATCCCGACTCTGCTGCTGTTCAAAAACGGTGAAGTGGCGGCAACCAAAGTGGGTGCACTGTCTAAAGGTCAGTTGAAAGAGTTCCTCGACGCTAACCTGGCCGGTTCTGGTTCTGGCCATACTAGTGGTGGTGGCGGTTCTAATAACAATCCTCCTACTCCTACTCCATCTAGTGGTTCTGGTCATCACCATCACCATCACTCCGCGGCTCTTGAAGTCCTCTTTCAGGGACCCGGGTACCAGGATCCGAATTCGGGAGGAGGGGGATCACGGTTTTATGTTCTGCTGGATTCTTCTTGGTACGACCCCGAGACGGGCACGTGGCCGCAGGAAATTCGCCTGATTCTGAACTGG (配列番号49)
ATGAGCGATAAAATTATTCACCTGACTGACGACAGTTTTGACACGGATGTACTCAAAGCGGACGGGGCGATCCTCGTCGATTTCTGGGCAGAGTGGTGCGGTCCGTGCAAAATGATCGCCCCGATTCTGGATGAAATCGCTGACGAATATCAGGGCAAACTGACCGTTGCAAAACTGAACATCGATCAAAACCCTGGCACTGCGCCGAAATATGGCATCCGTGGTATCCCGACTCTGCTGCTGTTCAAAAACGGTGAAGTGGCGGCAACCAAAGTGGGTGCACTGTCTAAAGGTCAGTTGAAAGAGTTCCTCGACGCTAACCTGGCCGGTTCTGGTTCTGGCCATACTAGTGGTGGTGGCGGTTCTAATAACAATCCTCCTACTCCTACTCCATCTAGTGGTTCTGGTCATCACCATCACCATCACTCCGCGGCTCTTGAAGTCCTCTTTCAGGGACCCGGGTACCAGGATCCGAATTCGGGAGGAGGGGGATCAGTGAGTAAGTTTTATCCGCTGTGGACGCGGTACGACCCCGAGACGGGCACGTGGCCGCAGGAAATTCGCCTGATTCTGAACTGG (配列番号50)
ATGAGCGATAAAATTATTCACCTGACTGACGACAGTTTTGACACGGATGTACTCAAAGCGGACGGGGCGATCCTCGTCGATTTCTGGGCAGAGTGGTGCGGTCCGTGCAAAATGATCGCCCCGATTCTGGATGAAATCGCTGACGAATATCAGGGCAAACTGACCGTTGCAAAACTGAACATCGATCAAAACCCTGGCACTGCGCCGAAATATGGCATCCGTGGTATCCCGACTCTGCTGCTGTTCAAAAACGGTGAAGTGGCGGCAACCAAAGTGGGTGCACTGTCTAAAGGTCAGTTGAAAGAGTTCCTCGACGCTAACCTGGCCGGTTCTGGTTCTGGCCATACTAGTGGTGGTGGCGGTTCTAATAACAATCCTCCTACTCCTACTCCATCTAGTGGTTCTGGTCATCACCATCACCATCACTCCGCGGCTCTTGAAGTCCTCTTTCAGGGACCCGGGTACCAGGATCCGAATTCGGGAGGAGGGGGATCAGTGTTTCTTGTTTTGATGGGGCCTGAGTTTTACGACCCCGAGACGGGCACGTGGCCGCAGGAAATTCGCCTGATTCTGAACTGG (配列番号51)のいずれかで表される塩基配列からなる、[10]に記載の核酸。
【0041】
[12] [10]又は[11]に記載のいずれかの核酸を含有する組換えベクター。
[13] [12]に記載の組換えベクターが導入された形質転換体。
[14] [10]又は[11]に記載のいずれかの核酸を含有する組換えファージ又は組換えウイルス。
【0042】
[15] [1]〜[7]に記載のポリペプチド、及び[8]に記載のタンパク質のいずれかに有機化合物あるいは無機化合物あるいは有機化合物と無機化合物の両方が結合した修飾ポリペプチド又は修飾タンパク質であって、免疫グロブリンG のCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチド又はタンパク質。
【0043】
[16] [1]〜[7]のいずれかに記載のポリペプチド、[8]又は[9]に記載のタンパク質、又は[15]に記載のポリペプチドもしくはタンパク質が、水不溶性の固相支持体に固定化されていることを特徴とする、固定化ポリペプチド又は固定化タンパク質。
【0044】
[17] [1]〜[7]のいずれかに記載のポリペプチド、[8]又は[9]に記載のタンパク質、[10]又は[11]に記載の核酸、[12]に記載の組換えベクター、[13]に記載の形質転換体、[14]に記載の組換えファージ又は組換えウイルス、[15]に記載のポリペプチド又はタンパク質、[16]に記載の固定化ポリペプチド又は固定化タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つを含む、免疫グロブリンG のCH1-CLドメインを部分として含み当該CH1-CLドメインが非天然型立体構造を形成しているタンパク質を検出、精製、固定化又は除去するためのキット。
【0045】
[18] 免疫グロブリンG のCH1-CLドメインを部分として含み当該CH1-CLドメインが非天然型立体構造を形成しているタンパク質を検出するための方法であって、
(1) 該CH1-CLドメイン含有タンパク質の混入が疑われる被検試料を、[1]〜[7]のいずれかに記載のポリペプチド、[8]又は[9]に記載のタンパク質、[13]に記載の形質転換体、[14]に記載の組換えファージ若しくは組換えウイルス、[15]に記載のポリペプチドもしくはタンパク質、又は[16]に記載の固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と接触させる工程、及び
(2) 該CH1-CLドメイン含有タンパク質と、ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質との間で結合が生じたか否かを判定する工程、
を含む方法。
【0046】
[19] 免疫グロブリンG のCH1-CLドメインを部分として含み当該CH1-CLドメインが非天然型立体構造を形成しているタンパク質を精製するための方法であって、
(1) 該CH1-CLドメイン含有タンパク質を含む試料を[1]〜[7]のいずれかに記載のポリペプチド、[8]又は[9]に記載のタンパク質、[13]に記載の形質転換体、[14]に記載の組換えファージ若しくは組換えウイルス、[15]に記載のポリペプチドもしくはタンパク質、又は[16]に記載の固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と接触させて、該CH1-CLドメイン含有タンパク質を、ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と結合させる工程、及び
(2) ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と結合した該CH1-CLドメイン含有タンパク質を試料から回収する工程、
を含む方法。
【0047】
[20] 免疫グロブリンG のCH1-CLドメインを部分として含み当該CH1-CLドメインが非天然型立体構造を形成しているタンパク質を除去するための方法であって、
(1) 該CH1-CLドメイン含有タンパク質を含む試料を[1]〜[7]のいずれかに記載のポリペプチド、[8]又は[9]に記載のタンパク質、[13]に記載の形質転換体、[14]に記載の組換えファージ若しくは組換えウイルス、[15]に記載のポリペプチドもしくはタンパク質、又は[16]に記載の固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と接触させて、該CH1-CLドメイン含有タンパク質を、ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と結合させる工程、及び
(2) ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と結合した該CH1-CLドメイン含有タンパク質を試料から除去する工程、
を含む方法。
【0048】
アミノ酸残基の置換においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質に基づいて、次のような分類が確立している。
【0049】
疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、
親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、
脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、
水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、
硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、
カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、
塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、
芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)
(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)
あるアミノ酸配列に対する1又は数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドが、その生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci.
USA (1984) 81, 5662-5666、Zoller, M. J. and Smith, M., Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433、Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413)。すなわち、一般に、あるポリペプチドを構成するアミノ酸配列中、各群に分類されたアミノ酸は、相互に置換したときに、当該ポリペプチドの活性が維持される可能性が高いといわれている。本発明において、上記アミノ酸群の群内のアミノ酸間の置換を「保存的置換」あるいは「保存的アミノ酸置換」と言う。
【発明の効果】
【0050】
本発明のポリペプチドは、例えばIgGあるいはそのFab領域など、抗体のCH1-CLドメインを含有するタンパク質の内、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質に特異的な親和性を示し、その結果としてCH1-CLドメインの非天然型立体構造と天然型立体構造を識別できる。本発明のポリペプチドを利用して、あるいは非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質の検出、あるいは固定化などが可能となる。
【0051】
また、アミノ酸配列中に配列番号1を共通配列として含むポリペプチドAF.ab9 (配列番号8) は、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むFab領域とこれを含まないFc領域とを特異的に識別できることから、IgGのCH1-CLドメイン特異的な立体構造変化の検出が可能となる。
【0052】
さらに、アミノ酸配列中に配列番号1を共通配列として含むポリペプチドAF.ab9 (配列番号8) は、異なる酸性度を示す酸性緩衝液によって処理したIgGに対し、酸性度に依存的な結合応答の変化を示すことから、IgGあるいはFab領域などCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質の製造あるいは保管時における物理的あるいは化学的ストレスの程度に応じて生じる、立体構造の変化の度合いを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】精製したCH1-CLドメインの純度を、非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウム (SDS) ポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認した結果を示す。
図2-1】チオレドキシン融合タンパク質として調製した親和性ポリペプチドを含む融合タンパク質32クローン (5, 2.5μM) と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴によって評価した結果を示す。図の縦軸は検出値の強度(Resonance Unit)を表し、センサーチップに結合した分子の重量を反映した値となる。検出値の強度は、被験物の濃度や流速など複数の測定パラメータに依存するが、同一条件で測定した際の検出値の強度は概ね被験物間の親和性の高低に対応する。(なお、学術的には、得られた実験曲線を理論曲線でフィッティングして、平衡解離定数、解離速度定数、結合速度定数等を算出して比較することにより、はじめて正しく評価できる。以下、図3〜7につき同様。)複数のグラフ同士の間において単位は同一であり、同一の数値は同一の強度を示す。
図2-2】図2−2は図2−1の続きである。
図3】(A) 中性条件で保存したIgG (2, 1, 0.5, 0.25, 0.125μM) と、センサーチップに固定化したAF.ab9との親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(B) pH 2.0の酸性緩衝液で処理したIgG (2, 1, 0.5, 0.25, 0.125μM) と、センサーチップに固定化したAF.ab9との親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(C) 中性条件で保存したFab領域 (2, 1, 0.5, 0.25, 0.125μM) と、センサーチップに固定化したAF.ab9との親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(D) pH 2.0の酸性緩衝液で処理したFab領域 (2, 1, 0.5, 0.25, 0.125μM) と、センサーチップに固定化したAF.ab9との親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(E) 中性条件で保存したFc領域 (2, 1, 0.5, 0.25, 0.125μM) と、センサーチップに固定化したAF.ab9との親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(F) pH 2.0の酸性緩衝液で処理したFc領域 (2, 1, 0.5, 0.25, 0.125μM) と、センサーチップに固定化したAF.ab9との親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。図の縦軸は検出値の強度(Resonance Unit)を表し、センサーチップに結合した分子の重量を反映した値となる。検出値の強度は、被験物の濃度や流速など複数の測定パラメータに依存するが、同一条件で測定した際の検出値の強度は概ね被験物間の親和性の高低に対応する。複数のグラフ同士の間において単位は同一であり、同一の数値は同一の強度を示す。
図4】(A) pH4.0の酸性緩衝液で処理したIgG (2, 1, 0.5, 0.25, 0.125μM) と、センサーチップに固定化したAF.ab9との親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(B) pH 3.0の酸性緩衝液で処理したIgG (2, 1, 0.5, 0.25, 0.125μM)と、センサーチップに固定化したAF.ab9との親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(C) pH 2.0の酸性緩衝液で処理したIgG (2, 1, 0.5, 0.25, 0.125μM) と、センサーチップに固定化したAF.ab9との親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。図の縦軸は検出値の強度(Resonance Unit)を表し、センサーチップに結合した分子の重量を反映した値となる。検出値の強度は、被験物の濃度や流速など複数の測定パラメータに依存するが、同一条件で測定した際の検出値の強度は概ね被験物間の親和性の高低に対応する。複数のグラフ同士の間において単位は同一であり、同一の数値は同一の強度を示す。
図5】(A) AF.ab9 (4, 2, 1μM) と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(B) AF.ab9 arm (4, 2, 1μM) と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(C) AF.ab9 body (4, 2, 1μM) と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。図の縦軸は検出値の強度(Resonance Unit)を表し、センサーチップに結合した分子の重量を反映した値となる。検出値の強度は、被験物の濃度や流速など複数の測定パラメータに依存するが、同一条件で測定した際の検出値の強度は概ね被験物間の親和性の高低に対応する。複数のグラフ同士の間において単位は同一であり、同一の数値は同一の強度を示す。
図6】(A) AF.ab9 (50, 25, 12.5, 6.3, 3.2, 1.6μM) と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(B) AF.ab31 (50, 25, 12.5, 6.3, 3.2, 1.6μM) と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。図の縦軸は検出値の強度(Resonance Unit)を表し、センサーチップに結合した分子の重量を反映した値となる。検出値の強度は、被験物の濃度や流速など複数の測定パラメータに依存するが、同一条件で測定した際の検出値の強度は概ね被験物間の親和性の高低に対応する。複数のグラフ同士の間において単位は同一であり、同一の数値は同一の強度を示す。
図7】(A) AF.ab9 (64, 32, 16, 8, 4, 2 μM) と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(B) AF.ab9 P17A (64, 32, 16, 8, 4, 2 μM) と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(C) AF.ab9 Q18A (64, 32, 16, 8, 4, 2 μM) と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。(D) AF.ab9 L24A (64, 32, 16, 8, 4, 2 μM) と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴法によって評価した結果を示す。図の縦軸は検出値の強度(Resonance Unit)を表し、センサーチップに結合した分子の重量を反映した値となる。検出値の強度は、被験物の濃度や流速など複数の測定パラメータに依存するが、同一条件で測定した際の検出値の強度は概ね被験物間の親和性の高低に対応する。複数のグラフ同士の間において単位は同一であり、同一の数値は同一の強度を示す。
図8】(A) チオレドキシン融合タンパク質として調製した親和性ポリペプチドを含む融合タンパク質Trx_clone1_2 (配列番号42) と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴によって評価した結果を示す。濃度は10, 5, 2.5 nMに調整した。(B) チオレドキシン融合タンパク質として調製した親和性ポリペプチドを含む融合タンパク質Trx_clone2_2 (配列番号43)と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴によって評価した結果を示す。濃度は10, 5, 2.5 nMに調整した。(C) チオレドキシン融合タンパク質として調製した親和性ポリペプチドを含む融合タンパク質Trx_clone3_2 (配列番号44)と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴によって評価した結果を示す。濃度は10, 5, 2.5 nMに調整した。(D) チオレドキシン融合タンパク質として調製した親和性ポリペプチドを含む融合タンパク質Trx_clone13_2 (配列番号45)と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴によって評価した結果を示す。濃度は10, 5, 2.5 nMに調整した。(E) チオレドキシン融合タンパク質として調製した親和性ポリペプチドを含む融合タンパク質Trx_clone20_2 (配列番号46)と、センサーチップに固定化した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴によって評価した結果を示す。濃度は10, 5, 2.5 nMに調整した。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、例えばIgGあるいはそのFab領域など、抗体のCH1-CLドメインを含有するタンパク質の内、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質に特異的な親和性を示すポリペプチドと、それら親和性ポリペプチドを利用した、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質の検出、固定化、又は除去方法に関する。
【0055】
本明細書において「CH1-CLドメイン」とは、IgGの重鎖定常領域に含まれるCH1ドメインと、IgGの軽鎖定常領域であるCLドメインとを含む、タンパク質会合体を意味する。ここでCH1ドメインとは、イムノグロブリンフォールドとして固有の一ドメインからなる立体構造を形成しうる、IgG重鎖定常領域のN末端から100残基長程度のポリペプチド部分を意味する。CLドメインとは、イムノグロブリンフォールドとして固有の一ドメインからなる立体構造を形成しうる、IgG軽鎖定常領域のポリペプチド部分を意味する。CH1-CLドメインは、これのみで単独に存在してもよいし、あるいは、例えばIgGやFab領域のように、本発明のポリペプチドが親和性を示すものである限り、CH1-CLドメインがタンパク質の一部として包含されていてもよい。定常領域のアミノ酸配列は、生物種内、あるいは生物種間においても、相同性を示すことが知られている。例えば、ヒトIgGは重鎖のアミノ酸配列の違いからIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の4種類のサブクラスに分類されるが、それらのアミノ酸配列において、ヒトIgG1のCH1ドメイン (UniProtデータベース、アクセッション番号P01857)、ヒトIgG2 のCH1ドメイン (UniProtデータベース、アクセッション番号P01859)、ヒトIgG3のCH1ドメイン (UniProtデータベース、アクセッション番号P01860)、ヒトIgG4 のCH1ドメイン (UniProtデータベース、アクセッション番号P01861) は、いずれも90%程度の配列相同性を示す。ヒトIgG1のCH1ドメインは、マウスIgG1 のCH1ドメイン (UniProtデータベース、アクセッション番号P01868)、あるいはラットIgG1 のCH1ドメイン (UniProtデータベース、アクセッション番号P20759) に対し、アミノ酸配列にして65%程度の配列相同性を示す。後記実施例1では、ヒトIgG1に由来するCH1-CLドメインを用いた結果を例示しているが、本発明のポリペプチドが親和性を示すものである限り、これ以外のCH1-CLドメインも排除しない。また、本発明のポリペプチドが親和性を示すものである限り、上記のCH1-CLドメインのアミノ酸残基は改変(置換、欠損、付加及び/又は挿入)されていてもよい。すなわち、「CH1-CLドメイン」は、本発明のポリペプチドが親和性を示すものである限り、天然型のCH1-CLドメインおよび変異型のCH1-CLドメインの両方を含み得る。
【0056】
CH1-CLドメインの非天然型立体構造の形成は、後述の参照文献で示されるように、例えば立体構造の変化、及び/又は側鎖の修飾、及び/又は多量体の形成、及び/又はジスルフィド結合の開裂などを伴う。CH1-CLドメインが立体構造変化の結果として会合体の解離を伴う場合においても、本発明のポリペプチドが親和性を示すものである限り、この解離産物も非天然型立体構造から除外しない。
【0057】
本明細書において「非天然型立体構造」とは、例えば加熱、若しくは酸処理、若しくは撹拌、若しくはせん断、若しくはタンパク質変性剤処理、若しくはイオン強度の変化、若しくは光照射などによる物理的処理、又は、例えば還元剤、若しくは酸化剤、若しくは酸、若しくは塩基、若しくは酵素、若しくは触媒などによる化学的処理によって生じる、天然型立体構造とは異なる立体構造群の総称である。
【0058】
ここで酸処理とは、限定するものではないが、好ましくはpH4.0以下、より好ましくはpH 3.0以下の条件下に曝露されることを意味する。例えば、IgG及びIgGを構成するドメインは、pH2.0の酸性緩衝液で処理することによって通常の天然型立体構造とは異なるAlternatively folded state (AFS) と呼ばれる非天然型立体構造を形成することが報告されている (非特許文献14) (非特許文献15) (非特許文献18)。
【0059】
また、一般にタンパク質は、酸処理に加えて、他の物理的処理あるいは化学的処理による物理的あるいは化学的ストレスの結果として、立体構造の変性が生じることが知られている。最も一般的には、熱による変性、あるいは塩酸グアニジンなどの変性剤によって容易に立体構造の変性が生じることが知られており (非特許文献19)、例えばIgGのFc領域においては、75℃近辺で熱変性によるAFSの形成が報告されている (非特許文献20)。その他の化学的処理あるいは物理的処理として、還元剤処理、せん断や撹拌などの物理的衝撃が広く知られている。ここでの還元剤処理とは、分子内あるいは分子間のジスルフィド結合が部分的あるいは全てにわたって開裂されている状態を指す。より具体的には、還元剤 (ジチオトレイトール、βメルカプトエタノール、2-メルカプトエチルアミンなど) の添加によってジスルフィド結合が開裂した状態を指す。また、撹拌・せん断などの物理的衝撃とは、限定するものではないが、例えばIgG溶液を撹拌子を用いて700 rpmの速度で回転させることによってアミノ酸残基の酸化、タンパク質立体構造の変性、それによるタンパク質凝集を生じることが報告されている (非特許文献21) (非特許文献22)。後記実施例1の3)〜5)では、酸性緩衝液にて処理したIgG及びFab領域に対する親和性評価の結果を示しているが、本発明のポリペプチドが親和性を示す、CH1-CLドメインの非天然型立体構造の内、酸処理以外の処理によって生じる非天然型立体構造も排除しない。
【0060】
本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の好適な形態の一つは、配列番号1で示されるP-Q-x-I-x-L-x-[IL]-[NT]-[YW](式中、xは任意のアミノ酸残基を表す。[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)を共通配列として含むポリペプチドである。より好ましくは、配列番号2、3で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである。後記実施例1の5)節及び実施例2の1) 節に示すように、本発明のポリペプチドは、この共通配列 (配列番号1) を基に、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性が損なわれない範囲で数個、例えば1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1個〜5個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0061】
また、後記実施例1の5) 節及び実施例2の1) 節に示すように、本発明のポリペプチドは、この共通配列 (配列番号1) を基に、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性が損なわれない範囲で数個、例えば1〜6個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個又は2個のアミノ酸残基が削除、置換又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。たとえば、式1に示されるアミノ酸配列として、配列番号2〜3で示されるアミノ酸配列を挙げることができるが、これらのアミノ酸配列において、1〜3個、1個又は2個のアミノ酸が削除、置換又は挿入されたアミノ酸配列有するポリペプチドも非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性を有する限り、本発明に含まれる。
【0062】
式1においてxで示される部位はポリペプチドの機能に重要ではないため、配列番号2〜3において、当該部位を保存的アミノ酸置換したアミノ酸配列:P-Q-[DNEQHFYW]-I-[RKHSTY]-L-[GAVLIPSTY]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)を有するポリペプチド、とくにアミノ酸配列:P-Q-[EW]-I-[RT]-L-[IT]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)を有するポリペプチドにも同様の機能が期待できる。
【0063】
上記のアミノ酸配列を含むものであれば、ポリペプチド配列のアミノ酸残基数に制限は無い。また、後記実施例1の2) 節や実施例2の1) 節における、親和性ポリペプチドを提示するファージを用いた親和性選択の例に示されるように、該ポリペプチドをコードする核酸を用いて形質転換されることにより該ポリペプチドを表層に提示した組換えファージもCH1-CLドメインの非天然型立体構造に対する親和性を有する。すなわち本発明は、上記アミノ酸配列を有するポリペプチド、これを含む融合タンパク質、これらポリペプチド又は融合タンパク質をコードする核酸を有する形質転換体を含む。
【0064】
また、更に別の好ましい様態としては、配列番号4で示されるY-D-P-E-T-G-T-W-P-Q -x-I-x-L-x-[IL]-[NT]-[YW](式中、xは任意のアミノ酸残基を表す。[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)を共通配列として含むポリペプチドである。より好ましくは、配列番号5、6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである。後記実施例2の1) 節に示す配列番号36〜41で表されるポリペプチドのように、本発明のポリペプチドは、この共通配列 (配列番号4) を基に、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性が損なわれない範囲で数個、例えば1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1個〜5個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。式2に示されるアミノ酸配列として、配列番号5〜6で示されるアミノ酸配列を挙げることができるが、後記実施例1の5) 節及び実施例2の1) 節に示す配列番号36〜41で表されるポリペプチドのように、本発明のポリペプチドは、この共通配列 (配列番号4) を基に作成されたポリペプチドにおいて、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性が損なわれない範囲で数個、例えば1〜6個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個又は2個のアミノ酸残基が削除、置換又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。上記のアミノ酸配列を含むものであれば、ポリペプチド配列のアミノ酸残基数に制限は無い。
【0065】
式2において、xで示される部位はポリペプチドの機能に重要ではないため、配列番号5〜6及び36〜41において、当該部位を保存的アミノ酸置換したアミノ酸配列: Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-[DNEQHFYW]-I-[RKHSTY]-L-[GAVLIPSTY]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)を有するポリペプチド、とくにアミノ酸配列:Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-[EW]-I-[RT]-L-[IT]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)を有するポリペプチドにも同様の機能が期待できる。
【0066】
また、後記実施例1の2) 節や実施例2の1) 節における、ポリペプチドを提示するファージを用いた親和性選択に示されるように、該ポリペプチドをコードする核酸を用いて形質転換されることにより該ポリペプチドを表層に提示した組換えファージも非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性を有する。すなわち本発明は、上記アミノ酸配列を有するポリペプチド、これを含む融合タンパク質、これらポリペプチド又は融合タンパク質をコードする核酸を有する形質転換体を含む。
【0067】
また、更に別の好ましい様態としては、配列番号7で示されるP-N-S-G-G-G-G-S-Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-x-I-x-L-x-[IL]-[NT]-[YW](式中、xは任意のアミノ酸残基を表す。[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)を共通配列として含むポリペプチドである。より好ましくは、配列番号8、9で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである。後記実施例1の5) 節に示す配列番号10〜12で表されるポリペプチドのように、本発明のポリペプチドは、この共通配列 (配列番号7) を基に、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性が損なわれない範囲で数個、例えば1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1個〜5個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。また、後記実施例1の5) 節に示す配列番号10〜12で表されるポリペプチドのように、本発明のポリペプチドは、この共通配列 (配列番号7) を基に、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性が損なわれない範囲で数個、例えば1〜6個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個又は2個のアミノ酸残基が削除、置換又は挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。上記のアミノ酸配列を含むものであれば、ポリペプチド配列のアミノ酸残基数に制限は無い。
【0068】
式3において、xで示される部位はポリペプチドの機能に重要ではないため、配列番号8〜12において、当該部位を保存的アミノ酸置換したアミノ酸配列:たとえば、P-N-S-G-G-G-G-S-Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-[DNEQHFYW]-I-[RKHSTY]-L-[GAVLIPSTY]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)を有するポリペプチド、とくにアミノ酸配列:P-N-S-G-G-G-G-S-Y-D-P-E-T-G-T-W-P-Q-[EW]-I-[RT]-L-[IT]-[IL]-[NT]-[YW](式中、[ ]は[ ]内のアミノ酸残基のいずれか一つを表す)を有するポリペプチドにも同様の機能が期待できる。
【0069】
また、後記実施例1の2) 節や実施例2の1) 節における、ポリペプチドを提示するファージを用いた親和性選択に示されるように、該ポリペプチドをコードする核酸を用いて形質転換されることにより該ポリペプチドを表層に提示した組換えファージも非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性を有する。すなわち本発明は、上記アミノ酸配列を有するポリペプチド、これを含む融合タンパク質、これらポリペプチド又は融合タンパク質をコードする核酸を有する形質転換体を含む。
【0070】
本発明のポリペプチドは、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示す限り、そのアミノ末端あるいはカルボキシル末端あるいは両末端に第2のポリペプチドを伸張した連結型ポリペプチドであってもよい。そのような第2のポリペプチドとしては、たとえば、多価効果による親和性向上を目的として連結する本発明のポリペプチド、または多重特異性の付与を目的として連結する他の分子に親和性示すポリペプチド、またはポリペプチドの精製や検出を目的として連結するFLAGタグ、c-mycタグ、もしくはヒスチジンタグなどのタグポリペプチド、またはポリペプチドの構造安定化を目的として連結するロイシンジッパーもしくはβヘアピンなどの2次構造形成ポリペプチド、または細胞小器官への局在化や細胞外への分泌を促すことを目的として連結する小胞体シグナルペプチドなどのシグナルペプチド、または細胞表面への接着を目的として連結するRGDモチーフなどを含む接着性ポリペプチドを挙げることができる。ある機能性ポリペプチドに、これと同一または異なるポリペプチドを連結することで、機能向上または多機能化することは当該分野においてすでに知られている (非特許文献10、及び非特許文献33〜35)。
【0071】
あるいは、上述したように、本発明のポリペプチドは、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインに親和性を示す限り、そのアミノ末端あるいはカルボキシル末端あるいは両末端にタンパク質を結合した融合タンパク質であってもよい。融合させるタンパク質としては、たとえば、チオレドキシン、マルトース結合タンパク質、もしくはグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどポリペプチドの可溶性を高めるために用いられるタンパク質、またはペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、もしくは蛍光タンパク質など発色・発光・蛍光検出に用いられるタンパク質、または抗体、黄色ブドウ球菌プロテインA、もしくは連鎖球菌プロテインGなど親和性を有するタンパク質を挙げることができる。ある機能を有するポリペプチドに、タンパク質を結合することで、溶解度を向上または多機能化することは当該分野においてすでに知られている(非特許文献36〜38)。本発明の融合タンパク質の具体例としては、配列番号13〜15及び42〜46で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質を挙げることができ、各タンパク質はそれぞれ配列番号16〜18及び47〜51で示される核酸によりコードされる。
【0072】
さらに、本発明ポリペプチドおよび融合タンパク質は標識されていてもよい。すなわち本発明は、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性が損なわれない範囲で、上記のポリペプチド、融合タンパク質、又はこれらポリペプチド若しくは融合タンパク質をコードする核酸を有する形質転換体に対し、有機化合物あるいは無機化合物あるいは有機化合物と無機化合物の両方を結合させた修飾ポリペプチド又は修飾タンパク質又は修飾形質転換体を含む。上記有機化合物等を結合することで、下段に記す本発明の用途の一例である非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質の検出を効果的に行うことができる。用いる有機化合物等としては、ビオチン、フルオレセイン等の蛍光性有機化合物、安定同位体、リン酸基、アシル基、アミド基、エステル基、エポキシ基、ポリエチレングリコール (PEG)、脂質、糖鎖、核酸、量子ドット等の蛍光性無機化合物、金コロイドなどが好適(非特許文献23)であるが、技術的に適用可能な他のいかなる化合物も排除しない。
【0073】
本発明のポリペプチドの用途は、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質に対する親和性を利用する限りにおいて制限は無い。一般に、IgG親和性分子の用途として、IgGあるいはIgG由来ドメインを含有するタンパク質の検出 (特許文献5)、固定化 (非特許文献24)、分離精製 (非特許文献25)、除去 (特許文献6) がある。したがって、本発明のポリペプチドの用途として、上記IgG親和性分子を用いて実施されている用途を含む当業者に公知の用途の内、技術的に適用可能な全ての形態を含む。本発明のポリペプチドは、後記実施例1に示すように非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに特異的な親和性を示すことから、これを部分として含むタンパク質の検出、固定化、分離精製、除去に利用できる。後記実施例ではIgG、Fab領域、CH1-CLドメインについて、これらの非天然型立体構造の検出を挙げているが、これ以外の利用形態も排除しない。
【0074】
本発明においては、ポリペプチドの合成方法、および利用される形態に制限は無い。同定したポリペプチドの調製方法として、有機化学的に合成する方法 (非特許文献26) や、遺伝子組換えにより任意のタンパク質と連結した融合タンパク質の形態として発現させる方法 (非特許文献27) など多数の合成方法が報告されており、アミノ酸配列の特定されたポリペプチドの調製は既存の合成技術の適用によって容易に行う事ができる。後記実施例では有機化学的な合成による調製、融合タンパク質としての細胞発現による調製、該ポリペプチドをコードする核酸を用いて形質転換されることにより該ポリペプチドを表層に提示した組換えファージの例を示しているが、上記技術を含む他の方法も排除しない。
【0075】
本発明は、本発明のポリペプチドを固定化した固相担体にも関する。ここで好適な固相担体の例としては、限定するものではないが、ポリスチレンやポリエステルなどの樹脂、デキストランやアガロースなどの生体高分子化合物、金属やガラスなどの無機材料が挙げられる。これらの固相担体の形状は、粒子、プレート、膜、チップ、試験管など任意の形状で良い。またそれら固相担体へのポリペプチドの固定化方法は、共有結合法、物理吸着法、イオン結合法、分子間相互作用法によって行うことができる。後記実施例1では共有結合法による表面プラズモン共鳴測定装置のセンサーチップへの固定化を挙げているが、上に述べる通り、これ以外の支持担体、固定化方法も排除しない。本発明のポリペプチド、および融合タンパク質など該ポリペプチドを含む分子は、固相担体へ固定化することにより、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質の検出、固定化、あるいは除去として好適に使用できる。後記実施例では、配列番号8のポリペプチドを表面プラズモン共鳴測定装置のセンサーチップへ固定化することにより、非天然型立体構造を形成したCH1-CLを部分として含むIgG及びFab領域を検出した実施例を記載するが、固相担体の形態、固定化方法はこれに限定されるものではなく、磁性粒子などの粒子類、フィルター膜など、当業者に公知なタンパク質検出方法、固定化方法、あるいは除去方法に好適に適用できる。また、検出、固定化、除去の対象とする分子は、IgGあるいはFab領域のほか、サイトカインや酵素など任意のタンパク質とCH1-CLドメインを連結した融合タンパク質など、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質に適用することもできる。
【0076】
ポリペプチドの親和性を測定する方法としては、酵素結合免疫吸着法 (ELISA)、表面プラズモン共鳴法 (SPR)、等温滴定型熱量計 (ITC)、水晶振動子マイクロバランス (QCM)、原子間力顕微鏡 (AFM)(非特許文献28)、プルダウン法(非特許文献29)、電気泳動法(非特許文献30)、蛍光偏光度測定法(非特許文献31)などが挙げられる。後記実施例では表面プラズモン共鳴法の例を示しているが、上記技術を含む他の方法も排除しない。
【0077】
本明細書において親和性を示すとは、上記測定装置のいずれかを用いて結合信号/ノイズ比にして10倍以上の値を示す結合信号が得られることを意味する。
【0078】
本発明のポリペプチドおよび融合タンパク質を用いて、試料中の非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質を検出及び/又は除去することができる。
【0079】
被検試料中の非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質を検出するための方法は、次の工程を含むことができる:
(1) 被検試料を、本発明のポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と接触させる工程、及び(2) 被検試料と、ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質との間で結合が生じたか否かを判定する工程。
【0080】
上記結合が生じたか否かを判定する工程に用いる方法としては、ELISA、SPR、ITC、QCM、AFM、プルダウン法、電気泳動法、蛍光偏光度測定法、蛍光共鳴エネルギー移動法(FRET)、カラムクロマトグラフィー、イムノクロマトグラフィー法などが挙げられる。後記実施例ではSPRの例を示しているが、上記技術を含む技術的に適用可能な他の方法も排除しない。
【0081】
被検試料中の非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質を除去するための方法は、次の工程を含むことができる:
(1) 被検試料を、本発明のポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と接触させて、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質を、ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と結合させる工程、及び
(2) ポリペプチド、タンパク質、形質転換体、組換えファージ若しくは組換えウイルス、又は固定化ポリペプチド若しくは固定化タンパク質と結合した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質を試料から除去する工程。
【0082】
上記試料から回収する工程に用いる方法としては、アフィニティクロマトグラフィー法、アフィニティビーズ法、アフィニティフィルター法、免疫沈降法などが挙げられる。上記技術を含む技術的に適用可能な他の方法も排除しない。
【0083】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0084】
本実施例においては、まず、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドのアミノ酸配列をどのように特定したかを記し、次いで、配列番号7のアミノ酸配列を共通配列として含む配列番号8〜9のアミノ酸配列、及び配列番号1のアミノ酸配列を共通配列として含む配列番号2のアミノ酸配列、またこのアミノ酸配列に、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメイン (あるいは非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを部分として含むタンパク質) への親和性を失わない範囲で数個のアミノ酸残基が、付加、削除、置換又は挿入された合成ポリペプチド、あるいはこれらのアミノ酸配列を含む融合ポリペプチド (配列番号13〜15) の親和性を測定した例を示す。
【0085】
1) ヒトIgGの CH1-CLドメインの調製
親和性ポリペプチドのアミノ酸配列は、T7ファージを用いたファージ提示法に基づく親和性選択により特定した。本節では、親和性選択に用いた、ヒトIgG1由来CH1-CLドメインの調製例を示す。
【0086】
N末端にヒスチジン (His)6 タグを付加したCH1ドメインのアミノ酸配列 (配列番号19) をコードするDNA断片を、制限酵素NdeI/EcoRIで消化したpET-22b (Novagen) に導入した発現ベクターpET-CH1を作製した。同様に、N末端にヒスチジン (His)6 タグを付加したCLドメインのアミノ酸配列 (配列番号20) をコードするDNA断片を、制限酵素NdeI/EcoRIで消化したpET-22bベクターに導入した発現ベクターpET-CLを作製した。
【0087】
作製した発現ベクターをそれぞれ用いて大腸菌BL21(DE3)株(Novagen)をヒートショック法により形質転換し、終濃度100 μg/ml のアンピシリンを含むLB寒天培地にて37 ℃で一晩培養した。形質転換体を、終濃度100 μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地200 mlにて継代培養し、O.D.600 = 0.8の菌体密度で、終濃度1 mMのイソプロピル-β-D-ガラクトピラノシドによりタンパク質発現を誘導し、さらに12時間振盪培養した。菌体を7000 rpm、20分の遠心分離によって回収し、得られた菌体ペレットを、TBS緩衝液 (50 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, pH 7.4) で懸濁した。菌体をAstrason3000 (misonix) を用いて超音波破砕し、12000 rpm、30 分の遠心分離によって菌体内不溶性画分を回収した。回収画分を、タンパク質変性剤 (6 M グアニジン塩酸塩, 20 mM リン酸ナトリウム, 500 mM NaCl,pH7.4) により可溶化した。目的タンパク質を、His graviTrap (GE Healthcare)を用いて精製した。それぞれ得られたCH1ドメインとCLドメインを、終濃度25 μMとなるよう混合し、終濃度2.5 mMの2-メルカプトエタノールによってジスルフィド結合を切断した。これを、リフォールディング緩衝液 (20 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, 1 mM EDTA, pH 8.0) に対して37℃、6時間透析し、変性タンパク質のリフォールディングを行った。透析後、Superdex75 10/300 (GE Healthcare) を用いたゲルろ過クロマトグラフィーによりCH1ドメインとCLドメインからなるヘテロ二量体CH1-CLドメインを回収した。CH1-CLドメインの精製度を、非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウム (SDS) ポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認した (図1)。
【0088】
2) ファージ提示法による、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドの選択
本節では、ファージ提示ライブラリの構築と、該ライブラリを用いた、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性選択の例を示す。
【0089】
ファージ提示ライブラリは、特許文献3及び非特許文献12に記載される、微小タンパク質シニョリンと無作為アミノ酸配列と、を含むアミノ酸配列からなる、人工タンパク質ライブラリ (配列番号21〜24) を、バクテリオファージT7の外殻タンパク質g10との融合タンパク質として提示したものを用いた。具体的手順を以下に示す。無作為アミノ酸残基は、塩基配列NNK (NはA, G, C, Tのいずれか、KはG, Tのいずれか) によりコードした。この人工タンパク質ライブラリのアミノ酸配列をコードするDNA断片 (配列番号25〜28) に制限酵素EcoRI/HindIII消化部位を付加したDNA断片をポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) によって合成し、EcoRI、Hind IIIによる消化後、T7Select (登録商標) 10-3 vector (Novagen) に導入した。導入したベクターを用いてファージの試験管内パッケージングを行った。パッケージングにはT7Select (登録商標) Packaging Kit (Novagen) を用い、手順は添付の指示書に従った。パッケージング後のファージを、200 mlのLB培地でO.D.600 = 1.0 の菌体密度まで培養した大腸菌BLT5403株 (Novagen) に感染させ、6時間の振盪培養を行いファージを増幅した。培地上清を7000 rpm、20分間の遠心分離によって回収し、これに溶液量の1/6量の50% ポリエチレングリコール8000、1/10量の5M NaClを加え、4℃で一晩撹拌し、ファージを沈殿させた。沈殿物を12000 rpm、20分間の遠心分離によって回収し、TBS-T緩衝液 (20 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, 0.05% Tween20 (登録商標), pH 7.4) により可溶化した。可溶化溶液の凝集物を0.45 μm径のSyringe Driven filter unit (Millex) を用いて取り除き、これをファージ提示ライブラリ溶液とした。
【0090】
次いで、親和性選択において使用する、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを固定化した磁性ビーズの調製例を示す。1) 節にて調製したCH1-CLドメインを酸性緩衝液 (50 mM NaH2PO4, 100 mM NaCl, pH 1.0) に12時間透析して酸変性による天然型立体構造の形成を促した後、中性緩衝液 (50 mM NaH2PO4, 100 mM NaCl, pH7.4) に透析することで中和した。続いて、磁性ビーズであるDynabeads M-270 Carboxylic Acid (Invitrogen)100 μl (30 mg beads/ml) を25 mM MES pH 5.0を用いて洗浄し、氷上にて50 mg/mlのカルボジイミド塩酸塩と50 mg/mlのN-ヒドロキシスクシンイミドをそれぞれ50 μl加えて混合し、室温で30分撹拌した。その後、60 μgの非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを加え、更に30分間撹拌した。50 mM Tris-HCl (pH 7.4) で洗浄後、4℃で保存した。
【0091】
次いで、調製したファージ提示ライブラリとCH1-CLドメインを固定化した磁性ビーズを用いて、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドの選択を行った例を示す。非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを固定化した磁性ビーズをTBS-T緩衝液で2回洗浄し、その後ブロッキング剤SuperBlock (登録商標) T20 (TBS) Blocking Buffer (Thermo SCIENTIFIC) を1時間添加することで磁性ビーズ表面をブロッキングした。続いて、ファージ提示ライブラリ溶液を、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを固定化した磁性ビーズに加えて1時間混合し、親和性ポリペプチドを提示したファージを、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを固定化した磁性ビーズに結合させた。次に、磁気分離により、親和性ポリペプチド提示ファージと非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを固定化した磁性ビーズとの複合体を回収した。回収した複合体にSuperBlock (登録商標) T20 (TBS) Blocking Buffer (Thermo SCIENTIFIC) を1 ml添加し、10分間混合して再度磁気分離によって上清を除去し、ビーズを洗浄した。この洗浄操作を10回行い、磁気分離によって回収した複合体に1% (w/v) ドデシル硫酸ナトリウム (SDS) を含むTBS-T緩衝液を1 ml添加して10分間混合し、CH1-CLドメイン固定化磁性ビーズから親和性ポリペプチドを提示したファージを溶出した。溶出したファージを、200 ml LB培地にてO.D.600 = 1.0の菌体密度まで培養した大腸菌BLT5403株 (Novagen) に感染させ、4時間振とう培養した。培地上清を7000 rpm、20分間の遠心分離によって回収し、これ
に溶液量の1/6量の50% ポリエチレングリコール8000、1/10量の5M NaClを加え、4℃で一晩撹拌し、ファージを沈殿させた。沈殿物を12000 rpm、20分間の遠心分離によって回収し、TBS-T緩衝液 (20 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, 0.05% Tween20 (登録商標), pH 7.4) により可溶化した。可溶化溶液の凝集物を0.45 μm径のSyringe Driven filter unit (Millex) により取り除き、ファージ溶液を調製した。以上の選択工程を5回繰り返し、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドを提示したファージを濃縮した。
【0092】
3) 非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドの特定
本節では、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドのアミノ酸配列を決定した例を示す。
【0093】
前節の親和性選択によって濃縮された、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドを提示したファージ溶液を鋳型として、T7ファージゲノムに導入した人工タンパク質ライブラリ領域のDNAをPCRによって増幅した。PCRはKOD DNAポリメラーゼ (TOYOBO) を用い、反応条件は添付のマニュアルに従った。増幅したDNAをEcoRIとHindIIIで消化し、pET-48b (Invitrogen) のEcoRI / HindIII 部位で消化した領域に導入することで、人工タンパク質ライブラリ遺伝子の翻訳産物であるポリペプチドをチオレドキシンのC末端に連結した融合タンパク質として発現させる発現ベクターを構築した。構築した発現ベクターを用いて大腸菌BL21 (DE3) 株をヒートショック法により形質転換し、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上にて培養した。生じたコロニーから無作為に36クローンを単離し、700 μlのLB培地にて振盪培養し、O.D.600 = 1.0の菌体密度の段階で、終濃度1 mMのイソプロピル-β-チオガラクトピラノシドによって発現誘導を行い、37℃で12時間培養した。7000 rpmの遠心分離により菌体を回収し、TBS-T緩衝液によって菌体を懸濁した後、密閉式超音波処理装置Bioruptor (コスモバイオ) を用いて20分間超音波破砕を行った。破砕液を12000 rpmの遠心分離にかけ、上清を回収した後、His SpinTrap (GE Healthcare) を用いた金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによって粗精製し、親和性ポリペプチドを含むチオレドキシン融合タンパク質として調製した。
【0094】
続いて、単離精製したチオレドキシン融合タンパク質と、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴 (SPR) によって測定した例を示す。SPR測定装置としてBiacore T100 (GE Healthcare) を用いた。CH1-CLドメインを酸性緩衝液 (50 mM NaH2PO4, 100 mM NaCl, pH 2.0) に12時間透析して酸変性による非天然型立体構造の形成を促し、次いでHBS-T緩衝液 (10 mM HEPES, 150 mM NaCl, 0.05% Tween20 (登録商標), pH 7.4) に透析することで中和した。CH1-CLドメインをセンサーチップCM5 (GE Healthcare) にアミンカップリング法によって固定化した。精製した32種類のチオレドキシン融合タンパク質をHBS-T緩衝液によって5 μM, 2 μMに希釈した。ランニング緩衝液としてHBS-T緩衝液、再生溶液には100 mM Glycine-HCl pH2.0を用い、反応温度25℃でSPR測定を行った。計32クローンの、SPRセンサーグラムの結果を図2に示す。上記32クローンと非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性有無を表1に示す。8種のクローン (Clone 1, Clone 2, Clone 9, Clone 12, Clone 17, Clone 24, Clone 27, Clone 31) が、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示した (表1)。
【0095】
【表1】
【0096】
続いて、このSPR試験において、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示す8種のクローン (Clone 1, Clone 2, Clone 9, Clone 12, Clone 17, Clone 24, Clone 27, Clone 31) について、親和性ポリペプチドを含むチオレドキシン融合タンパク質のDNA配列をダイデオキシ法によりApplied Biosystems (登録商標) 3500ジェネティックアナライザを用いて解析し、これらのアミノ酸配列を決定した。8クローン中6クローンのアミノ酸配列は同一であり、最終的に3種類のアミノ酸配列 (配列番号13〜15) が、独立したアミノ酸配列として特定された。これらチオレドキシン融合タンパク質のアミノ酸配列の内、共通配列であるチオレドキシン (配列番号29)、リンカー領域 (配列番号30)、及び微小タンパク質シニョリン (配列番号31) の各アミノ酸配列を除いた領域を、親和性選択において無作為アミノ酸配列から選択された領域のアミノ酸配列として特定した (配列番号2〜3及び32)。これら3クローンのアミノ酸配列には高い相同性があり、プロリン残基、グルタミン残基、イソロイシン残基若しくはロイシン残基を共通に含むことが認められた。
【0097】
4) 非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドの特性解析
本節では、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドの特異性について特徴付けを行った例を示す。
【0098】
前節で特定したアミノ酸配列 (配列番号2) に8残基のリンカー配列 (Pro-Asn-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser) (配列番号30) と8残基のシニョリン配列 (Tyr-Asp-Pro-Glu-Thr-Gly-Thr-Trp) (配列番号31) を付加したポリペプチドAF.ab9 (配列番号8) を設計し、有機化学的に合成した。合成ポリペプチドの調製はGL Biochem (Shanghai) に委託した。AF.ab9をホウ酸緩衝液 (10 mM Borate-Na, 1M NaCl, pH 8.5) で溶解し、アミンカップリング法によりセンサーチップCM5 (GE Healthcare) に固定化した。
【0099】
続いて、天然型立体構造及び非天然型立体構造を有するヒトモノクローナルIgG、Fab領域、Fc領域を調製した。Fab領域、Fc領域は、ヒトモノクローナルIgGをPierce(登録商標)Fab Preparation Kit (Thermo SCIENTIFIC) を用いてパパイン消化後、MabSelect SuRe(GE Healthcare) を用いたアフィニティクロマトグラフィー、HiTrap DEAE (GE Healthcare) を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー、Superdex200 (GE Healthcare) を用いたゲルろ過クロマトグラフィーにより精製することで調製した。IgG、Fab領域、Fc領域をそれぞれ5 μMに希釈し、酸性緩衝液 (50 mM NaH2PO4, 100 mM NaCl, pH 2.0) に12時間透析して酸変性を促し、HBS-T緩衝液に透析することで中和した。
【0100】
酸処理を施した、あるいは酸処理を施さないIgG、Fab領域、Fc領域をそれぞれ2, 1, 0.5, 0.25, 0.125 μMに希釈し、Biacore T100 (GE Healthcare) を用いてAF.ab9に対する親和性を測定した (図3、表2)。酸処理IgG、酸処理抗体ドメイン、天然型IgG、又は天然型抗体ドメインと、AF.ab9との親和性有無を表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
CH1-CLドメインを含むIgG及びFab領域については、AF.ab9は酸処理を施さない天然型立体構造のIgG及びFab領域に対しては有意な結合レスポンスを示さず (図3 (A)、図3 (C))、酸処理を施した、即ち非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを含むIgG及びFab領域に対しては強い結合レスポンスを示した (図3 (B)、図3 (D))。このことは、AF.ab9がIgGおよびFab領域の天然型立体構造と非天然型立体構造を識別し、非天然型立体構造を形成したIgGおよび非天然型立体構造を形成したFab領域に親和性を示すことを示している。一方、CH1-CLドメインを含まないFc領域については、酸処理を施さない天然型立体構造を有するFc領域に対しては結合レスポンスを示さず (図3 (E))、酸処理を施したFc領域に対してもFab領域の非天然型構造に比べ結合レスポンスにして1/100以下の応答を示すに留まった (図3 (F))。既往の報告では、Fc領域に含まれるCH3ドメインはpH 2の酸処理とその後の中和処理により非天然型立体構造を形成することが観測されている (非特許文献18)。このことは、Fc領域もFab領域と同様に酸処理によって非天然型立体構造を形成することを示しており、更に、AF.ab9はFab領域とFc領域の非天然型立体構造の違いを特異的に識別することを示している。このことは、AF.ab9に含まれるアミノ酸配列が、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対して親和性選択されたポリペプチドであることと整合する。
【0103】
続いて、酸性度の異なる緩衝液で処理したIgGとAF.ab9との親和性を評価した例を示す。IgGをHBS緩衝液 (10 mM HEPES, 150 mM NaCl, pH 7.4) に溶解し、5 μMとした。酸性緩衝液としてリン酸ナトリウム緩衝液 (50 mM NaH2PO4, 100 mM NaCl) を、pH 2.0、pH 3.0、pH 4.0の3種類の酸性度に調整し、それぞれの緩衝液に対して、抗体を12時間透析した。透析後、HBS-T緩衝液に透析することで中和した。得られた酸処理IgGについて、AF.ab9との親和性をSPRによって測定した(図4、表2)。SPR試験は本節前述の条件に従った。SPR試験の結果、pH 4.0の緩衝液で処理したIgGに対しAF.ab9は有意な結合レスポンスを示さなかった(図4 (A))。これに対し、pH 3.0およびpH 2.0での酸処理IgGについては、明確な結合レスポンスと、そのpH依存的な結合シグナルの増加が認められた (図4 (B)、図4 (C))。この結果は、AF.ab9によって認識される非天然型立体構造が酸性度の上昇に従い増加すること、pH 4.0とpH 3.0 との間で、CH1-CLドメインの構造変化が顕著に生じていることを示唆している。CH1-CLドメインの酸変性については、CDスペクトルや蛍光スペクトルなど分光学的手法による解析の結果、pH 4.0とpH 3.0との間にCH1-CLドメインの明確な立体構造変化が生じることが報告されている (非特許文献32)。本実施例で示される結合レスポンスのpH依存性は、分光学的に実証された酸変性に伴う非天然型立体構造形成をAF.ab9が検出していることを示している。
【0104】
5) 本節では、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基が付加、削除、又は置換されたポリペプチドの親和性を測定した例を示す。
【0105】
AF.ab9は三つの領域、すなわち、8残基のリンカー領域 (配列番号30)、8残基の微小タンパク質シニョリンからなる領域 (配列番号31)、及び2) 節の親和性選択によって10残基の無作為アミノ酸配列から選択された領域から構成される。この構成要素の内、無作為アミノ酸配列から選択された領域が親和性に関与することを確かめるため、以下に示す3種のポリペプチド、AF.ab9 (配列番号8)、AF.ab9 body (配列番号33)、AF.ab9 arm (配列番号2) を有機化学的に合成した。ここで、AF.ab9 bodyは8残基リンカー領域と8残基微小タンパク質シニョリンからなる16残基のポリペプチド、AF.ab9 armは無作為アミノ酸配列から選択された領域からなる10残基ポリペプチドである。ポリペプチドの調製はGL Biochem (Shanghai) に委託した。ペプチドをHBS-T緩衝液に4, 2, 1 μMに希釈し、3) 節と同様の手法で調製した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性を、Biacore T100 (GE Healthcare) を用いて測定した(図5、表3)。測定条件は3) 節に従った。各種合成ペプチドと非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性有無を表3に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
AF.ab9、及びAF.ab9 armは、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性を示した (図5 (A)、図5 (B))。一方、リンカー領域とシニョリンからなるAF.ab9 bodyは、有意な親和性を示さなかった (図5 (C))。このことは、AF.ab9において親和性を示す領域は10残基の無作為アミノ酸配列から選択された領域であること、及び親和性ポリペプチドにリンカー領域など非親和性ポリペプチドを付加した場合においても非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインへの親和性は維持されることを示している。
【0108】
続いて、親和性ポリペプチドのアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換されたポリペプチドの親和性を測定した例、及び親和性選択によって選択された10残基アミノ酸配列の内、親和性選択で収斂を示したアミノ酸残基が親和性に与える影響を評価した例を示す。
【0109】
親和性選択によって特定されたアミノ酸配列の一つであるAF.ab31 (配列番号9) を、AF.ab9のアミノ酸残基が数個置換されたポリペプチドの例として選定し、これを有機化学的に合成した。ポリペプチドの調製はGL Biochem (Shanghai) に委託した。
【0110】
一方、機能に重要なアミノ酸残基を特定する方法として、一般に、対象残基をアラニン残基に置換した変異体解析 (アラニンスキャン) が用いられている。ここでは、親和性選択の結果特に配列の収斂を示した部位のアミノ酸残基についてアラニンスキャンを実施することで、該アミノ酸残基の親和性に対する影響を評価した。親和性選択で収斂を示した17位のプロリン残基 (Pro17)、18位のグルタミン残基 (Qln18)、24位のロイシン残基 (Leu24)をアラニン残基に置換した変異体AF.ab9 P17A (配列番号10)、AF.ab9 Q18A (配列番号11)、AF.ab9 L24A (配列番号12)を有機化学的に合成した。ポリペプチドの調製はGL Biochem (Shanghai) に委託した。
【0111】
3) 節と同様の手順に従って調製した非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインをセンサーチップCM5 (GE Healthcare) にアミンカップリング法により固定化し、AF.ab31、AF.ab9及びそのアラニン置換体との結合をBiacore T100により測定した(図6図7、表3)。
【0112】
AF.ab9の測定結果 (図6 (A)) と比較し、AF.ab31 (図6 (B)) は同程度以上の親和性を示した。この結果を踏まえ、AF.ab31とAF.ab9のアミノ酸配列から親和性に関与する共通配列について考察した。前述の親和性試験 (図5) の結果、親和性に関与する部分は、10残基の無作為アミノ酸配列に由来する領域であることが示されている。この領域においてAF.ab31とAF.ab9のアミノ酸配列を比較すると、17, 18, 20, 22位の4部位のアミノ酸残基が完全に一致、24, 25, 26位の3部位がそれぞれ疎水性アミノ酸残基 (ロイシン又はイソロイシン)、極性アミノ酸残基 (アスパラギン又はスレオニン)、極性芳香環アミノ酸残基 (トリプトファン又はチロシン) など類似の物性を示すアミノ酸残基として一致、19, 21, 23位の3部位が性質の異なるアミノ酸残基として置換されていた。この結果を基に、親和性を示しうる共通配列として、式1、2、及び3 (配列番号1、4、及び7) を導出した。
【0113】
AF.ab9の測定結果 (図7 (A)) と比較して、17位のプロリン残基と24位のロイシン残基をアラニン残基に置換した変異体AF.ab9 P17A、及びAF.ab9 L24Aでは結合レスポンスが減少したことから、これらの残基が非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性に重要であることが示唆された (図7 (B)、図7 (D))。一方、18位のグルタミン残基のアラニン残基への置換においては、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性が大きく減ずることはなかった (図7 (C))。
【実施例2】
【0114】
本実施例においては、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドとして、配列番号5のアミノ酸配列を共通配列として含む配列番号36〜41のアミノ酸配列を特定し、これらのアミノ酸配列を含む融合タンパク質のCH1-CLドメインに対する親和性を測定した例を示す。
【0115】
1) 本節では、ファージ提示ライブラリの構築と、該ライブラリを用いた、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性選択によって、親和性ポリペプチドのアミノ酸配列を特定した例を示す。ファージ提示ライブラリは、実施例1で特定したアミノ酸配列 (配列番号5) のN末端側に10アミノ酸残基の無作為アミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなる人工タンパク質ライブラリ (配列番号34) をバクテリオファージT7の外殻タンパク質g10との融合タンパク質として提示したものを用いた。具体的手順を以下に示す。無作為アミノ酸残基は、塩基配列NNK (NはA, G, C, Tのいずれか、KはG, Tのいずれか) によりコードした。この人工タンパク質ライブラリのアミノ酸配列をコードするDNA断片 (配列番号35) の5’末端に制限酵素EcoRI消化部位と(Gly)4-SerリンカーをコードするDNAを、3’末端に終止コドンとHindIII消化部位をそれぞれ付加したDNA断片をポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) によって合成し、EcoRI、Hind IIIによる消化後、T7Select (登録商標) 1-1 vector (Merck) に導入した。導入したベクターを用いてファージの試験管内パッケージングを行った。パッケージングにはT7Select (登録商標) Packaging Kit (Merck) を用い、手順は添付の指示書に従った。パッケージング後のファージを、200 mlのLB培地でO.D.600 = 1.0 の菌体密度まで培養した大腸菌BLT5403株 (Merck) に感染させ、6時間の振盪培養を行いファージを増幅した。培地上清を7000 rpm、20分間の遠心分離によって回収し、これに溶液量の1/6量の50% ポリエチレングリコール8000、1/10量の5M NaClを加え、4℃で一晩撹拌し、ファージを沈殿させた。沈殿物を12000 rpm、20分間の遠心分離によって回収し、TBS-T緩衝液 (20 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, 0.05% Tween20 (登録商標), pH 7.4) により可溶化した。可溶化溶液の凝集物を0.45 μm径のSyringe Driven filter unit (Millex) を用いて取り除き、これをファージ提示ライブラリ溶液とした。
【0116】
次いで、調製したファージ提示ライブラリを用いて、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドの選択を行った例を示す。CH1-CLドメインは、実施例1と同様の手順に従って調製した。調製したCH1-CLドメインに、Biotinamidohexanoic acid N-hydroxysuccinimide ester (SIGMA-ALDRICH) を用いて、アミノ基を介してビオチンを化学結合させた。CH1-CLドメインを酸性緩衝液 (50 mM NaH2PO4, 100 mM NaCl, pH 1.0) に12時間透析して酸変性による非天然型立体構造の形成を促し、次いで中性緩衝液 (50 mM NaH2PO4, 100 mM NaCl, pH 7.4) に透析することで中和した。非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを、磁性ビーズであるStreptavidin MagneSphere (登録商標) Paramagnetic Particles (Promega) に固定化した。固定化した磁性ビーズをTBS-T緩衝液で2回洗浄し、その後ブロッキング剤SuperBlock (登録商標) T20 (TBS) Blocking Buffer (Thermo SCIENTIFIC) を1時間添加することでを磁性ビーズ表面をブロッキングした。続いて、ファージ提示ライブラリ溶液を、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを固定化した磁性ビーズに加えて1時間混合し、親和性ポリペプチドを提示したファージを、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを固定化した磁性ビーズに結合させた。次に、磁気分離により親和性ポリペプチド提示ファージと非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインを固定化した磁性ビーズとの複合体を回収した。回収した複合体にSuperBlock (登録商標) T20 (TBS) Blocking Buffer (Thermo SCIENTIFIC) を1 ml添加し、10分間混合して再度磁気分離によって上清を除去し、ビーズを洗浄した。この洗浄操作を10回行い、磁気分離によって回収した複合体に1% (w/v) ドデシル硫酸ナトリウム (SDS) を含むTBS-T緩衝液を1 ml添加して10分間混合し、CH1-CLドメイン固定化磁性ビーズから親和性ポリペプチドを提示したファージを溶出した。溶出したファージを、200 ml LB培地にてO.D.600 = 1.0の菌体密度まで培養した大腸菌BLT5403株 (Merck) に感染させ、4時間振とう培養した。培地上清を7000 rpm、20分間の遠心分離によって回収し、これに溶液量の1/6量の50% ポリエチレングリコール8000、1/10量の5M NaClを加え、4℃で一晩撹拌し、ファージを沈殿させた。沈殿物を12000 rpm、20分間の遠心分離によって回収し、TBS-T緩衝液 (20 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, 0.05% Tween20 (登録商標), pH 7.4) により可溶化した。可溶化溶液の凝集物を0.45 μm径のSyringe Driven filter unit (Millex) により取り除き、ファージ溶液を調製した。以上の選択工程を6回繰り返し、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに親和性を示すポリペプチドを提示したファージを濃縮した。次いで、濃縮されたファージ集団からランダムに32クローン単離し、親和性ポリペプチド領域のアミノ酸配列をApplied Biosystems (登録商標) 3500ジェネティックアナライザを用いて解析した。単離したクローンの親和性ポリペプチドのアミノ酸配列には重複が認められ、独立のアミノ酸配列をもつ親和性ポリペプチドを6種類特定した (配列番号36〜41)。
【0117】
2) 本節では、前節で特定したアミノ酸配列からなる親和性ポリペプチドを融合した、チオレドキシン融合タンパク質の調製と、該チオレドキシン融合タンパク質を用いて、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインに対する親和性を測定した例を示す。
【0118】
前節で特定したアミノ酸配列からなる親和性ポリペプチド (配列番号36〜40) を提示するファージ溶液を鋳型として、親和性ポリペプチド領域をコードするDNA領域をPCRによって増幅した。PCRはKOD DNAポリメラーゼ (TOYOBO) を用い、反応条件は添付のマニュアルに従った。増幅したDNAをEcoRIとHindIIIで消化し、pET-48b (Merck) のEcoRI / HindIII 部位で消化した領域に導入することで、親和性ポリペプチドをチオレドキシンのC末端に連結した融合タンパク質として発現させる発現ベクターを構築した。構築した発現ベクターを用いて大腸菌BL21 (DE3) 株 (Merck) をヒートショック法により形質転換し、50 μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上にて培養した。200 mlの2×YT培地にて振盪培養し、O.D.600 = 1.0の菌体密度の段階で、終濃度1 mMのイソプロピル-β-チオガラクトピラノシドによって発現誘導を行い、37℃で12時間培養した。7000 rpmの遠心分離により菌体を回収し、TBS-T緩衝液によって菌体を懸濁した後、菌体を超音波破砕した。破砕液を12000 rpmの遠心分離にかけ、上清を回収した後、His SpinTrap (GE Healthcare) を用いた金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、親和性ポリペプチドを含むチオレドキシン融合タンパク質 (配列番号42〜46) として調製した。
【0119】
続いて、調製したチオレドキシン融合タンパク質と、非天然型立体構造を形成したCH1-CLドメインとの親和性を、表面プラズモン共鳴 (SPR) によって測定した例を示す。SPR測定装置としてBiacore T200 (GE Healthcare) を用いた。CH1-CLドメインを酸性緩衝液 (50 mM NaH2PO4, 100 mM NaCl, pH 1.0) に12時間透析して酸変性による非天然型立体構造の形成を促し、次いでHBS-T緩衝液 (10 mM HEPES, 150 mM NaCl, 0.05% Tween20 (登録商標), pH 7.4) に透析することで中和した。CH1-CLドメインをセンサーチップCM5 (GE Healthcare) にアミンカップリング法によって固定化した。調製したチオレドキシン融合タンパク質をアナライトとして用い、ランニング緩衝液としてHBS-T緩衝液、再生溶液には100 mM Glycine-HCl pH2.0を用い、反応温度25℃でSPR測定を行った。各チオレドキシン融合タンパク質 (配列番号42〜46) の、SPRセンサーグラムの結果を、それぞれ図8 (A)〜(E) に示す。測定データをBiacore T200 Evaluation Software (GE Healthcare) にて処理し、親和性を平衡解離定数KDとして算出した。結果を表4に示す。
【0120】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のポリペプチドは、免疫グロブリンGのCH1-CLドメインを部分として含み当該CH1-CLドメインが非天然型立体構造を形成しているタンパク質に特異的に親和性を示すことから、これらタンパク質の検出、固定化、又は除去に有用である。
【0122】
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
【配列表フリーテキスト】
【0123】
配列番号1:IgG 結合ペプチド
配列番号2:IgG 結合ペプチド
配列番号3:IgG 結合ペプチド
配列番号4:IgG 結合ペプチド
配列番号5:IgG 結合ペプチド
配列番号6:IgG 結合ペプチド
配列番号7:IgG 結合ペプチド
配列番号8:IgG 結合ペプチド
配列番号9:IgG 結合ペプチド
配列番号10:IgG 結合ペプチド
配列番号11:IgG 結合ペプチド
配列番号12:IgG 結合ペプチド
配列番号13:IgG 結合ペプチド
配列番号14:IgG 結合ペプチド
配列番号15:IgG 結合ペプチド
配列番号16:オリゴDNA
配列番号17:オリゴDNA
配列番号18:オリゴDNA
配列番号21:ペプチドライブラリー
配列番号22:ペプチドライブラリー
配列番号23:ペプチドライブラリー
配列番号24:ペプチドライブラリー
配列番号25:オリゴDNA
配列番号26:オリゴDNA
配列番号27:オリゴDNA
配列番号28:オリゴDNA
配列番号30:合成ペプチド
配列番号31:合成ペプチド
配列番号32:IgG 結合ペプチド
配列番号33:合成ペプチド
配列番号34:ペプチドライブラリー
配列番号35:オリゴDNA
配列番号36:IgG 結合ペプチド
配列番号37:IgG 結合ペプチド
配列番号38:IgG 結合ペプチド
配列番号39:IgG 結合ペプチド
配列番号40:IgG 結合ペプチド
配列番号41:IgG 結合ペプチド
配列番号42:IgG 結合ペプチド
配列番号43:IgG 結合ペプチド
配列番号44:IgG 結合ペプチド
配列番号45:IgG 結合ペプチド
配列番号46:IgG 結合ペプチド
配列番号47:オリゴDNA
配列番号48:オリゴDNA
配列番号49:オリゴDNA
配列番号50:オリゴDNA
配列番号51:オリゴDNA
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]