【文献】
名古屋市の偽造防止印刷[online],偽造防止印刷.com,村瀬印刷会社,2016年10月17日,[2020年7月31日検索],インターネット,URL,https://web.archice.org/web/20161017120057/http://www.copy-boushi.com/
【文献】
偽造防止印刷[online],三共プリンテック株式会社,2016年12月27日,[2020年7月31日検索],インターネット,URL,https://web.archive.org/web/20161227022020/http://www.fpp-kyoto.com/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
個人情報が付与されるセキュリティ製品に対し、購入者のニーズに合わせた前記個人情報の開示レベルに対応した偽造防止技術を自由に付与することが可能なシステムであって、
少なくとも前記購入者が希望する前記セキュリティ製品の種類、前記開示レベル、前記偽造防止技術の1つ以上を含む条件を選択する条件入力手段と、前記購入者の個人情報を入力する個人情報入力手段と、前記購入者が希望した条件により作製された前記セキュリティ製品の完成データ又は製品イメージの画像データを受信する受信手段と、前記セキュリティ製品の購入に要する金額を送金する送金手段を有する購入者側システムと、
前記開示レベルに応じた複数の前記偽造防止技術に関する技術情報、前記購入者が入力した個人情報、製品のフォーマット情報及び前記購入者と製造者からの送信された各種データを格納する管理データベースと、前記購入者からの購入申込みを受け付けるための受付手段と、前記購入者が希望した内容の適正及び前記偽造防止技術の真偽を最終的に判断する判断手段と、前記購入者が希望した各種情報を基にセキュリティ製品の製造を製造者に依頼する発注手段と、前記製造者が作製した前記セキュリティ製品、前記完成データ又は前記製品イメージの画像データを前記購入者に発送又は発信する発行手段と、前記購入者からの発注から前記セキュリティ製品の発行に至るまでの費用の請求、入金及び前記製造者へ前記セキュリティ製品を製造するために要した費用の送金について、総合的に費用の管理を行う課金手段を有する管理者側システムと、
前記購入者が希望した前記セキュリティ製品の情報を前記管理者側システムの発注手段から受け取る受注手段と、前記管理者側システムからの発注情報に基づき前記セキュリティ製品を製造するための製造装置と、製造した前記セキュリティ製品、前記セキュリティ製品の完成データ又は製品イメージの画像データを前記管理者側システムに送るための発送手段と、前記セキュリティ製品を製造するために要した費用を受け取る入金手段を有する製造者側システムとが、
ネットワークを介して接続された可変情報活用システム。
前記セキュリティ製品に付与された偽造防止技術の開示レベルに対応した方法により情報を把握するための読取手段と、読み取った情報が正規の情報か否かを判断する判断手段を有する情報受理側システムを備えたことを特徴とする請求項1に記載の可変情報活用システム。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ性を必要とする印刷製品には、製品の授受行為のときに簡易的に人間の五感(主に、視覚)により、真正品か偽造品かを判別する第1認証レベルの偽造防止技術、レンチキュラーレンズ、拡大鏡及び紫外線ランプ等の簡易的な判別具を用いて真正品か偽造品かを判別する第2認証レベルの偽造防止技術、更には特殊な読取装置を用いて真正品か偽造品かを判別する第3認証レベルの偽造防止技術が、それぞれ製品の価値に合わせて付与されている。
【0003】
例えば、第1認証レベルの偽造防止技術としては、キャッシュカードや商品券又は旅行券等に付与されているホログラム、銀行券に代表されるすき入れ等がある。また、第2認証レベルの偽造防止技術としては、対象製品(商品)には確認できない模様などの情報が、コピー機により複写すると出現する複写防止技術及び肉眼では視認できない蛍光材料を混合した無色透明のインキにより形成された情報等に対して、紫外線を照射することで出現する蛍光印刷技術等がある。さらには、第3認証レベルの偽造防止技術として、バンクカードや銀行の通帳等に付与されている磁気による機械読取技術が代表される。
【0004】
前述した各認証レベルの異なる偽造防止技術は、その製品のセキュリティ性の高さに応じて付与されていることが一般的であり、偽造防止技術を付与するためには、製造側が持つノウハウを含め、高度な技術力を要するものであった。これは、偽造防止効果としては、非常に有用なノウハウともいえるが、個人単位のセキュリティ製品に付与するものではなく、比較的多量の製品に対し、同じ偽造防止技術を付与するものであった。
【0005】
近年、政府主導により始まったマイナンバーカードのような製品においては、カード情報にひもづけられる守るべき個人情報の社会的な価値が、人によって著しく異なる。このような状況において、個人ごとに偽造防止技術をカスタムメイドすることができることによって、目視では同じであるが偽造の困難性を差別化することが理想的である。これは、インダストリー4.0の思想にも共通する点がある。
【0006】
すなわち、個人情報の開示及びアクセスには、それぞれのカードに組み込まれた認証レベルに応じた真正確認の上なされ、カードの模倣・偽造によるなりすまし等に対する偽造防止レベルを顧客が選べることとなる。また、カード等の製品の製造に掛かるコストをカスタムメイドする顧客が追加で支払うことによって、製造側の製造単価の追加負担を生じさせないことにある
【0007】
このような中、近年では、個人単位で異なる情報、いわゆる個人情報が付与されるセキュリティ製品に対し、オンデマンド印刷による偽造防止技術の付与が可能となってきている。
【0008】
さらには、オンデマンド印刷により付与する偽造防止技術について、複数の偽造防止技術の中からユーザが選択してセキュリティ製品に付与することが可能な技術を本出願人は既に開示している(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この特許文献1記載の技術は、偽造防止技術のデータを複数記憶してあるデータ記憶部を少なくとも備えたセキュリティ印刷データ配信サーバと、利用者が使用するセキュリティ印刷物発行端末装置を備えた配信システムであって、一般的な家庭用のプリンタ等の簡易的な印刷装置で形成する模様等は、網点による模様の形成であり、近年では、偽造防止効果が低いことを課題とし、一般的なプリンタ等では形成困難な線画を用いた偽造防止技術を対象としている。
【0010】
したがって、セキュリティ印刷データ配信サーバの記憶部には、複数の線画データが記憶されており、利用者がこの中から自由に選択し、選択された線画データによる偽造防止技術がネットワークを介して個々の印刷物として発行されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
【0023】
図1は、本発明の可変情報活用システムの構成を示すブロック図である。本発明の可変情報活用システムは、購入者が希望する各種情報等、購入者側に備えられたパソコン等の購入者側システムと、購入者が選択可能なように、あらかじめ複数の各種情報を記憶及び管理し、更に購入者や製造者との受注及び発注を行うための管理者側システムと、管理者からの発注を受注し、購入者の希望した製品の設計や製造を行う製造者側システムと、購入者が実際にセキュリティ製品を使用する際に対応する側がセキュリティレベルを読み取る情報受理側システムが、インターネット等の通信回線を介して接続されて成る。
【0024】
以下、各々のシステムについて説明する。まず、購入者が希望するセキュリティ製品を注文するための購入者側システムについて説明する。
【0025】
購入者側システムは、基本構成は一般的なパソコン端末でよいが、希望するセキュリティ製品を印刷できるプリンタを備えていることが好ましい。仮にプリンタを備えていなくても、後述する製造者側システムにおいて完成品まで製造し、管理者側システムへ一旦納入し、その後、購入者へ発送することができる。
【0026】
購入者側システムは、セキュリティ製品の種類及びその種類に合った入場口、窓口業務及び空港の入国管理局や鑑定手続等の開示レベル、更には開示レベルに合った偽造防止技術を製造費用により選択する条件入力手段と、購入者の個人情報を入力する個人情報入力手段と、希望したセキュリティ製品のデータを受信する受信手段と、購入に要した金額を送金する送金手段を少なくとも備えている。
【0027】
条件入力手段で選択するセキュリティ製品の種類とは、購入者が購入したい製品のことであり、遊園地やコンサートの入場券のような比較的セキュリティレベルの低い(開示レベル1)製品から、商品券や住民票のような比較的セキュリティレベルの高い(開示レベル2)製品、更には、バンクカードや身分証、特に近年運用されている全個人に番号が付与されているマイナンバーカードのような非常にセキュリティレベルの高い(開示レベル3)製品のことである。具体的なセキュリティ製品の選択については、条件入力手段から個別の購入サイトに接続して選択する。
【0028】
例えば、購入者側システム(具体的にはパソコン)では、
図2に示すような購入を希望するセキュリティ製品のカテゴリが選択可能な画面を備えている。
図2に示すように、開示レベル別に購入可能なセキュリティ製品のカテゴリが表示されており、希望する製品のカテゴリの表示ボタンを選択する。なお、
図2に示したカテゴリは一例であって、これに限定されるものではない。希望するセキュリティ製品のカテゴリを選択すると、それぞれのカテゴリについて詳細となる種別が表示されている画面へと移行する。
【0029】
例えば、
図2における「購入種別選択画面」において、開示レベル1に相当する入場券のカテゴリを選択すると、
図3に示した入場券のカテゴリに入る複数のチケットが表示された「入場券選択画面」となる。購入者が希望するチケットの表示ボタンを選択すると、次の選択画面へと移行することとなるが、個別のチケットの全てを本システム内で管理することは困難であり、各チケットを取り扱っている企業も異なる。したがって、ここから先の手続では、インターネットを介してそれぞれの回線に入ることでもよい。
【0030】
希望する製品を最終的に選択した後、選択した製品に対応した開示レベルにより、付与する偽造防止技術を決定する。同じ開示レベルであっても、使用する材料費、工数等により付与する偽造防止技術が異なるため、購入者の予算により付与する偽造防止技術を選択することが可能である。
【0031】
図4は、付与する偽造防止技術を選択するための画面の一例である。同じ開示レベルにおいても、様々な偽造防止技術が存在するため、製造する偽造防止技術により製造費用が異なる。例えば、画線や網点の構成(例えば、太細、大小等)だけで形成可能な技術は低費用で製造可能ではあるが、特殊な機能性材料(例えば、パール顔料や磁性顔料等)を含有するインキを要する技術は、材料の価格に連動して高価格となる。そこで、購入者は、予算に応じて、低費用、中費用又は高費用の中から選択することができる。費用を選択すると、選択した費用に応じた偽造防止技術を管理者が決定する。
【0032】
購入者が希望する製品に関する条件の入力が完了すると、次に個人情報の入力へと進む。
図5は、購入者側システムにおける個人情報入力手段の入力画面の一例を示している。個人情報については、製品によって必要となる情報が異なるため、購入する製品により、記入しなくてもよい場合や、記入する項目が限定されることとなる。例えば、
図5では、購入に必要な情報としては、氏名、住所及び電話番号の三項目であるため、他の項目は記入できないように暗転した表示状態となっている。項目の全てに記入しなくてもよい場合には、項目の全てを暗転した状態としてもよいし、この画面をスキップして次の画面へと進めてもよい。
【0033】
本発明の特徴は、購入した製品を取り扱う際に、この個人情報をどこまで開示するかについて、購入者が開示レベルとして選択し、その開示レベルに対応した偽造防止技術が付与されるところにある。したがって、仮に全ての個人情報を入力したとしても、不用意に開示したくない個人情報については、
図6に示す個人情報確認画面において、各個人情報への開示レベルを項目別に指定することで、開示レベルに応じた偽造防止技術が付与されることとなる。
【0034】
受信手段は、購入者が希望した製品を画像データとして受け取る手段である。購入者側システムに製品を出力可能な機器(例えば、インクジェットプリンター。以下「IJP」という。)を備えていれば、完成した画像データを受け取り、出力機器により印刷することができる。仮に、出力機器を備えていない場合や、市販の出力機器では印刷できない偽造防止技術(例えば、機能性材料を有するインキを使用する偽造防止技術)を希望した場合は、希望した製品イメージの画像データを受信して、購入者側システムの図示しない画面上で確認することができる。なお、その場合、実際の製品は、後述する製造者側システムで作製したものを郵送などの輸送手段を利用して、購入者に送付することとなる。
【0035】
また、送金手段は、購入者が希望する製品に対する必要事項を全て記入すると、購入者側システムの図示しない画面上に製品の値段が表示されるので、支払に関する必要事項を記入する。
【0036】
次に、管理者側システムについて説明する。まず、管理者側システムは、開示レベルに応じた複数の偽造防止技術に関する技術情報、購入者が入力した各種情報、購入可能な複数の製品のフォーマット情報、本可変情報活用システムを構成している購入者側と製造者側の各システムから送信されてきた各種データ及び情報等を格納しておく管理データベースを備えている。この管理データベースは、通常は大容量を取り扱えるサーバであればよい。
【0037】
次に、受付手段は、購入者から送信された希望する製品及びその製品における各種情報の開示レベルや付与する偽造防止技術の情報を受け取る役割である。
【0038】
判断手段は、購入者が入力した希望する製品及び個人情報に対する各々の開示レベルの適性や、購入者の入力した各種情報に対して管理データベースに格納してあるフォーマット情報に照らし合わせて、製品の仕様を決定する。さらに、購入者が実際に製品を活用した際に情報受理側システムにおける読取結果に対する真偽の判断に対し、疑義が生じた場合には、管理者に最終的な判断を委ねられるため、その最終判断を行うものである。
【0039】
また、発注手段は、判断手段において決定した製品仕様と購入者の入力した各種情報を基に、製造者に製品の画像データ及び製品の製造自体を要望された場合には製品を製造するように注文する。
【0040】
発行手段は、製造者が製造した製品を発送してきた場合及び購入者が自己の出力機器により印刷するために画像データを送信してきた場合に、購入者に対して購入者が発注した製品を発行するものである。
【0041】
さらに、管理者側システムは、購入者からの購入希望に基づく一連の行為に対して、掛かる費用の請求から入金及び製造者への送金等、総合的に費用の管理を行う課金手段を備えている。
【0042】
次に、購入者が希望した製品とそれに付与する偽造防止技術に基づき、管理者からの発注により、実際に製品の設計から画像データの作製、製品や偽造防止技術の種類により購入者側のシステムでは印刷不可能な場合には、製造までを行う製造者側システムについて説明する。
【0043】
製造者側システムは、管理者側システムが、購入者の入力した各種情報を基に作製した製品仕様を、発注手段から製造者に発注された情報を受け取る受注手段を備えている。
【0044】
また、前述の発注手段から発注された仕様に基づき、付与する偽造防止技術を含めた製品の設計を行うための画像生成装置であったり、作製された画像データを基に出力又は印刷する印刷機及び穿孔を施したり基材の一部を除去したりするためのレーザ加工機等、様々な製品製造装置を備えている。なお、製造者は、一社に限るものではなく、本システムの運営に加入している企業であれば、複数社存在することも可能であり、全ての管理は、割り当てられた管理者が行うことができる。
【0045】
製造者は、製品の仕様に基づいて製造した画像データ又は実際の製品を管理者へ発送する手段を備えている。画像データの場合には、本システムにおいて管理者側システムとつながっている通信ネットワークを介して配信することで発送することができる。また、製品として製造した場合には、郵送に代表される輸送手段によって管理者へ発送する。
【0046】
以上は、購入者が希望する製品を作製して受け取るまでに必要な各システムのことであるが、本発明のシステムにより作製された製品は、そもそも、開示するレベルに応じてセキュリティ性を担保しようとするものであるため、実際に開示する(取り扱う)状況で、その効果を発揮しなければ意味がない。そこで、製品を取り扱う状況下で真偽を判別する際に必要となる情報受理側のシステム構成又は機能について説明する。
【0047】
開示レベル1に対応する偽造防止技術は、五感による真偽判別が行える第1認証レベルであり、開示レベル2に対応する偽造防止技術は、簡易な判別具を用いて真偽判別が行える第2認証レベルであるため、特に、特殊な読取装置を必要とするものではない。したがって、開示レベルの低い製品のみを取り扱う情報受理側となる情報受理側システムは、本可変情報活用システムにおいて、必須となるシステムではない。ただし、開示レベルの高い製品を取り扱う可能性のあるときは、秘匿されている情報を読み取らなければならないため、この情報受理側システムを備えていなければならない。
【0048】
この情報受理側システムは、機能性材料により秘匿されている情報を特殊な装置を用いて読み取らなければならないため、各種機能性材料に対応した読取手段を備えている。この読取手段は、機能性材料の機能により読取方法が異なるため、一つの読取装置で全ての機能に対応することは非常に困難である。したがって、管理者側では取り扱われる環境を把握した上で付与する偽造防止技術を決定することが好ましい。
【0049】
本発明では、ルーペ、レンチキュラーレンズ及び紫外線ランプ等の簡易な判別具も読取手段となる。また、偽造防止技術の読み取りにおいては当然のことであるが、磁気強度や赤外線及び/又は紫外線に対する波長を測定して真偽を行うための高度な機械読取装置も含まれる。
【0050】
また、機能性材料の機能に応じた読み取りを行った場合には、読み取った結果が正しい情報であるか否かを判断する判断手段を備えていてもよい。判断するための真偽判別の方法については、公知の画像マッチングや正規の域値内であるか否かの判断等、特に限定するものではない。第2認証レベルについては、簡易な判別具により読み取ることは可能ではあるが、特に真正の値との比較を行うものではなく、判別具により真正である画像が出現したことを肉眼で確認できればよいので、読取手段を備えていても、同時に判別手段も備えていなければならないことではない。
【0051】
読取手段の具体例としては、発光体を読み取るための分光測定器として、中赤外線領域の波長を読み取るためのフーリエ変換分光光度計(例えば、パーキンエルマー社製:Spectron One等)、紫外・可視光線を読み取るための紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光社製:V−770型)、テラヘルツ光線を読み取るためのテラヘルツ分光光度計(例えば、アドバンテスト社製:TAS7500S等)等、各種の機能性材料の特性に応じた読取装置があるので、公知のものを用いればよい。
【0052】
情報受理側システムについては、本発明における可変情報活用システムに必須のシステムではなく、例えば、目視による真偽判別が行えるような偽造防止技術が付与されている場合には、情報受理側システムを用いなくても真偽判別は可能である。
【0053】
購入者からの注文に対する費用の支払が管理者に行われると、管理者から製造者側システムの入金手段へ、製造に対する費用が支払われる。なお、入金の時期については、一括前払、頭金と残金の二度払又は製品との引換えなどの方法が選択可能であるが、特に限定はなく、適宜、管理者側で決定すればよい。
【0054】
以上、本可変情報活用システムを構成している各システムを説明した。次に、開示する範囲に応じた偽造防止技術について説明する。
【0055】
前述したように、本発明の特徴は、開示する範囲に応じて、開示したくない情報は開示レベルの高い偽造防止技術によって形成されているところにある。これにより、開示レベルの高い情報を、あえて開示レベルが低い範囲で開示しなくても済む。そこで、開示レベルに応じた偽造防止技術の例を次段落以降で説明する。ただし、以下に示すこれらの技術に限定されるものではなく、開示レベルが等しい真偽判別方法を備えた技術であれば、特に限定はない。
【0056】
まず、劇場、遊園地、コンサート等の入場券やレンタルショップ、スーパーや各種店舗の会員証等に向くとされる開示レベル1に対応する技術について説明する。
【0057】
開示レベル1は、製品を取り扱う状況が窓口や店頭のような、人の行き来が多く、人目に付き易い環境のため、短時間で取り扱わなければならないことから、簡便に真偽判別が行われる技術であることが求められる。したがって、五感による真偽判別が可能となる第1認証レベルが該当する。
【0058】
第1認証レベルの具体例としては、透過光下の観察で出現する透かし模様や、製品を傾けて観察することで画像及び/又は色が変化するホログラムがある。ただし、いずれの技術も購入者側システムの出力機器では印刷又は貼付することはできず、更には、掛かる費用も、中費用から高費用となる。
【0059】
特殊なインキを必要とせず、購入者側システムの出力機器を用いて、安価に製造可能な技術として、本出願人は、基材の凹凸領域に、第1の色材から成る第1の要素が配置された凹部を複数有する第1の画像部と、第1の色材から成り、かつ、単位面積当たりの色材の転移量が第1の要素と異なる第2の要素が配置された凹部を複数有する第2の画像部により、平滑性を異ならせることで基材を傾けて観察すると光沢差によって潜像模様が確認できる印刷物を出願している(例えば、特開2013−230641号公報参照)。
【0060】
また、近年のIJPにおいて、インクに紫外線硬化型のUV−IJPを用いることで、隆起状の画線又は網点を基材上に形成可能となることから、これまで、凹版印刷方式による画線の盛りを利用し、規則的な向きに複数配列した凹版画線から成る模様領域と、模様領域の凹版画線とは異なる角度に配列した複数の凹版画線から成る背景領域により形成された凹版模様が、斜めから観察すると、模様領域が潜像として確認できる特公昭56−19273号公報記載に類似する技術を、従来の凹版印刷を用いずに形成可能となっている。
【0061】
以上の第1認証レベルに限らず、他にも五感を用いて真偽判別する技術は多数存在している。これらの技術は、購入者の予算や出力機器の状況に合わせて適宜選択すればよく、特に限定はない。
【0062】
次に、様々な店舗で使用可能な商品券や、近年はコンビニエンスストアの出力器でも取得可能となった住民票のような、比較的セキュリティレベルの高い開示レベル2に対応する技術について説明する。
【0063】
この開示レベル2に対応する技術については、前述した第1認証レベルの技術のように、五感による判別ではなく、簡易的な判別具等を用いることで、初めて真正か否かが判定できる第2認証レベルの技術である。
【0064】
第2認証レベルの具体例としては、既に全国各地のコンビニエンスストアの出力器により交付されることが可能となった住民票などの帳票類に付与することを可能としている、本出願人が出願した特許第3544536号公報に記載の技術が挙げられる。本技術は、一般的なY(イエロー)、M(マゼンタ)及びC(シアン)インキにより可視光源下で確認できる画像を形成し、同じ網点領域内に赤外線を吸収する特性の材料を含有したインキにより赤外線光源下で確認できる画像を形成するもので、可視光源下で確認できる画像が、赤外線光源下では全く異なる画像となって確認できる技術である。したがって、本技術は、赤外波長領域で画像を確認可能な機器(例えば、赤外線カメラ等)を必要とするが、可視画像内に赤外波長領域のみで確認できる画像が存在していることを把握することも困難であるとともに、同様の画像を形成することは極めて困難であるため、偽造を防止する効果は高い。
【0065】
また、他には、コピー機により牽制模様が出現する複写防止技術がある。この複写防止技術は、コピー機が市場に流通を開始した頃から開発された歴史を持っており、今までに数多くの複写防止技術が開発されてきているが、基本的には、コピー機の解像度を利用し、コピー機で再現可能な網点、画線等の要素の面積率と、コピー機では再現不可能な要素の面積率を用いて可視画像内に複写牽制模様を形成したものであり、様々なセキュリティ製品に付与されている。
【0066】
ただし、コピー機自体が高度化されるにつれ、併せて複写防止技術も高度化された技術が開発されてきている。例えば、本出願人が出願した特許第5692673号公報記載の技術においては、基材上に面積率の異なる印刷要素を用いて四つの画像部を形成し、その四つの画像部を様々組み合わせながら可視画像と潜像画像を形成するもので、各領域は、有色インキから成る印刷要素と光沢性又は光輝性インキから成る印刷要素が交互に配列された偽造防止用印刷物である。本技術は、印刷要素の面積率を異ならせたときに生じる可視画像内での違和感を光沢性又は光輝性インキにより解消したものである。
【0067】
さらには、本出願人は、万線フィルタやレンチキュラーレンズの簡易的な判別具を合わせると模様が切り替わる技術を出願している(例えば、特許第4635160号公報参照)。本技術は、二つの異なる方向に沿って、それぞれ中心を境に二種類の画線を配置(合計四種類の画線)し、それぞれがネガポジの関係にあることで、一つの方向に対する画線に一つの不可視画像が形成され、もう一つの方向に対する画線に別の不可視画像が形成されることを特徴としている。
【0068】
以上の第2認証レベルに限らず、他にも簡易的な判別具を用いて真偽判別する技術は多数存在している。購入者の予算や出力機器の状況に合わせて適宜選択すればよく、特に限定はない。
【0069】
イベント入場券のように、プレミアがついて不当に高値で転売されたり、偽造券が出回ったりすることを抑えるために、前述の第1認証レベル及び第2認証レベルのみならず、次に説明する第3認証レベルも有効となる。
【0070】
最後に、バンクカードや身分証、特に近年運用されているマイナンバーカードのような非常にセキュリティレベルの高い開示レベル3に対応する技術について説明する。
【0071】
この開示レベル3に対応する技術については、前述した第2認証レベルの技術のように、判別用の機器を必要とするものではあるが、例えば、単純に画像の有り無しを判別具により確認するものではなく、特殊な機器を用いて真正の情報と比較して判定する第3認証レベルの技術であり、鑑定要素とする技術である。
【0072】
第3認証レベルの具体例として、本出願人は、特定の波長の励起光を照射して、蛍光発光ピークとりん光ピークを確認することで真偽判別を行うことが可能な印刷物を出願している(例えば、特許第5610121号公報)。本技術は、少なくとも一以上の発光体Xと、少なくとも一以上の発光体Yから成る残光性発光組成物であって、発光体Yは、励起光停止後における残光時間が発光体Xよりも短く、発光体Xの残光時間は、10ms以上1s未満であり、励起光照射時における発光色と、励起光停止後における残光色が異なることを特徴としている。
【0073】
なお、特許第5610121号公報記載の技術は、励起光を照射して蛍光発光ピークとりん光ピークを確認して真偽判別を行う第3認証レベルとして実施することでもよいが、単純にUVライトを照射して、蛍光発光状態及び残光状態を確認することも可能であり、真偽判別の状況により、第2認証レベルとして実施することも可能である。情報の開示レベルに合わせて、情報を付与することができる用途の広い技術である。
【0074】
また、本出願人は、発光強度及び耐酸性が低い問題点を解消するために、赤外線により励起し、励起光より波長の短い光線を放出する発光材料に関する発光体を出願している(例えば、特許第5610153号公報)。本技術は、母体にアルカリ土類金属又は亜鉛と、タングステン又はモリブデン酸から成る塩を主に使用し、励起スペクトルにおいて一つのピーク波長を有し、発光スペクトルが所定の三つの波長領域内のいずれか一つの波長領域に、少なくとも一つのピーク波長を有している。
【0075】
本技術は、励起スペクトルにおけるピーク波長と、発光スペクトルにおけるピーク波長を読み取って真偽判別する第3認証レベルとしての使用でもよいが、含有する材料により、レーザ装置からの赤外線の照射距離及び照射領域によって、異なる色の発光を確認することができるため、第2認証レベルとしても実施することが可能である。したがって、本技術も、情報の開示レベルに合わせて、情報を付与することができる用途の広い技術である。
【0076】
さらには、本出願人は、公知の磁気センサ等の測定方法に加えて、垂直磁界を印加して磁束の変化を検知する方法を用いることで確実な真偽判別が行える印刷物を出願している(例えば、特許第3814692号公報)。本技術は、磁気方向性が異なる少なくとも2種類の磁気インキを、少なくとも2か所の異なる位置に印刷し、磁気インキ部分の磁束変化を検出することで、真正な印刷物の磁気インキの磁気質の違いと、規定位置とが照合されて真偽判別を行う技術である。
【0077】
以上、第3認証レベルの具体例を幾つか記載したところであるが、あくまでも一例であって、特殊な読取装置を用いて読み取った情報と真正の情報を比較して判別する技術は、他にも多数存在しており、特に限定はない。
【0078】
ただし、前述の本出願人が出願した特許第5610121号公報や特許第5610153号公報記載の技術のように、第3認証レベルでありながらも、認証方法を変更することで第2認証レベルとして使用することを可能とする偽造防止技術を使用することは、特に、近年運用が開始されたマイナンバーカードのように、一つのカードに付与された情報を、様々な場面で使用又は認証するような製品においては、開示レベルに合わせて、情報を開示することができるため、より有効な技術となる。
【0079】
今後、多くの公的な手続にマイナンバーが使用されることが想定されるが、単に番号を提供しただけでは、マイナンバーにひもづけされている複数の個人情報群のうち、必要とする情報のみを開示することになる。官公庁等をはじめとした窓口でしか扱えないシステムにあっては、本発明によって発行された製品の読み取りにおいて、更に高度な機能性材料を読み取れるよう、認証装置を配備することによって、不正使用や予期しない開示を防ぐよう強化することを可能としている。すなわち、セキュリティ性を必要とする印刷製品の偽造・模造を防ぐことは、使用者に大きな安心感を与え、ひいてはマイナンバーカードシステムなどの新規社会システムの普及にもつながることが期待できる。
【0080】
図7は、本発明を具体的に説明するためのイメージ図である。例に、バンクカードをセキュリティ製品(1)として説明する。
図7(a)は、バンクカードの模式図である。バンクカード(1)は、プラスチック基材(2)上の全面に水玉模様が印刷されており、その中に、銀行名や各種個人情報が印刷されている。
【0081】
各種個人情報については、所持人の氏名が第1認証レベルにより印刷されている開示レベル1の領域(3)、所持人の顔写真(5)が第2認証レベルにより印刷されている開示レベル2の領域(4)と発行番号(10)が第3認証レベルにより印刷されている開示レベル3の領域(6)を有している。したがって、本バンクカード(1)は、1枚のカードに複数の開示レベルに該当する個人情報を有している。
【0082】
具体的には、開示レベル1の領域(3)に、UV−IJPで印刷されている所持人の氏名が盛り上がっており、触感によりその状態を判別することが可能となっている。
【0083】
また、開示レベル2の領域(4)は、可視光源下では
図7(a)に示すように、所持人の顔写真(5)が視認できるが、
図7(b)に示すように、観察者(8)が簡易的な赤外線カメラ(9)を通して観察すると、所持人の個人情報(住所及び電話番号)(7)が確認できる。この開示レベル2の領域(4)は、例えば、前述した特許第3544536号公報記載の技術を用いることで形成することが可能である。
【0084】
開示レベル3の領域(6)は、可視光源下では
図7(a)に示すように、カードの有効期限が視認できるが、
図7(c)に示すように、開示レベル3の領域(6)には、他に最も秘匿性が高い発行番号(10)が形成されている。この発行番号(10)は、可視光源下では確認できないが、特別な読取装置を用いることで確認することができる。
【0085】
この開示レベル3の領域(6)に形成されている発行番号(10)は、前述した第3認証レベルのいずれかを用いることで形成することができるが、いずれの技術も情報を認証する情報受理側システムの読取装置と適合していなければならないため、技術に合わせた読取装置又は読取装置に合わせた技術の選定をしなければならない。これらは、管理者側において一括して管理することで、運用が可能となる。