特許第6819062号(P6819062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6819062熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにイミド樹脂及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819062
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにイミド樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/06 20060101AFI20210114BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20210114BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20210114BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20210114BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20210114BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20210114BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20210114BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20210114BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20210114BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   C08G73/06
   C08L79/08 B
   C08K3/00
   C08L63/00 Z
   C08L21/00
   C08J5/24
   B32B5/02 Z
   B32B27/34
   H01L23/14 R
   H05K1/03 610N
【請求項の数】17
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-63895(P2016-63895)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-178991(P2017-178991A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100193976
【弁理士】
【氏名又は名称】澤山 要介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄麻
(72)【発明者】
【氏名】大橋 健一
(72)【発明者】
【氏名】森田 高示
(72)【発明者】
【氏名】野本 周司
(72)【発明者】
【氏名】高根沢 伸
(72)【発明者】
【氏名】土川 信次
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎太郎
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/099133(WO,A1)
【文献】 特開2014−019758(JP,A)
【文献】 特開平02−135227(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/089922(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00−73/26
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−3/40
C08J 5/24
H01L 23/00−23/56
H05K 1/00−1/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物(B)と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(C)と、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D)と、を含有する熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、下記一般式(I)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(E)を含有する、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(I)中、Rは各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基を示し、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数を示し、xとyの和は5である。)
【請求項3】
1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(A)由来の構造と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物(B)由来の構造と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(C)由来の構造と、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D)由来の構造と、を含有するイミド樹脂。
【請求項4】
さらに、下記一般式(I)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(E)由来の構造を含有する、請求項3に記載のイミド樹脂。
【化2】

(一般式(I)中、Rは各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基を示し、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数を示し、xとyの和は5である。)
【請求項5】
1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物(B)と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(C)と、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D)と、を反応させるイミド樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分と、前記(D)成分と、下記一般式(I)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(E)と、を反応させる、請求項5に記載のイミド樹脂の製造方法。
【化3】

(一般式(I)中、Rは各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基を示し、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数を示し、xとyの和は5である。)
【請求項7】
請求項3又は4に記載のイミド樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、熱可塑性エラストマ(F)を含有する、請求項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、エポキシ樹脂を含有する、請求項7又は8に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、無機充填材(H)を含有する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
さらに、硬化促進剤(I)を含有する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグ。
【請求項13】
請求項7〜11のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を含有する樹脂付フィルム。
【請求項14】
請求項12に記載のプリプレグの硬化物を含有する積層板。
【請求項15】
請求項13に記載の樹脂付フィルムの硬化物を含有する積層板。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の積層板を含有するプリント配線板。
【請求項17】
請求項16に記載のプリント配線板を含有する半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体パッケージ及びプリント配線板用に好適な熱硬化性樹脂組成物、該熱硬化性樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにイミド樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化及び高性能化の流れに伴い、プリント配線板では配線密度の高度化及び高集積化が進展しており、これに伴って、プリント配線板用の積層板には、耐熱性の向上等による信頼性向上の要求が強まっている。このような用途、特に半導体パッケージ基板用途においては、優れた耐熱性及び低熱膨張性を兼備することが要求される。
【0003】
プリント配線板用の積層板としては、エポキシ樹脂を主剤とした樹脂組成物とガラスクロスとを含むプリプレグを硬化及び一体成形化したものが一般的である。
エポキシ樹脂は、絶縁性、耐熱性、コスト等のバランスに優れるが、近年のプリント配線板の高密度実装及び高多層化構成に伴う耐熱性向上への要請に対応するには、さらなる改良が必要となる。
【0004】
さらに、特に近年、半導体パッケージ基板では、小型化及び薄型化に伴い、部品実装時及びパッケージ組み立て時において、チップと基板との熱膨張率の差に起因した反りが大きな課題となっている。このため、半導体パッケージ基板用途の積層板には、良好な低熱膨張性が求められているが、エポキシ樹脂は熱膨張率が大きいため、芳香環を有するエポキシ樹脂の選択及びシリカ等の無機充填材の高充填化によって低熱膨張性化を図っている(例えば、特許文献1参照)。しかし、無機充填材の充填量を増やすことは、吸湿による絶縁信頼性の低下、樹脂と配線層との密着不足、プレス成形不良等を起こすことが知られており、無機充填材の高充填化のみによる低熱膨張性化には限界があった。
【0005】
また、耐熱性に優れる材料として、ポリビスマレイミド樹脂がプリント配線板用の積層板材料に広く使用されている。しかし、ポリビスマレイミド樹脂は銅箔接着強度等の接着性に難点があり、低熱膨張性も十分ではない。
ポリビスマレイミド樹脂の低熱膨張性化を目的として、シロキサンで変性した変性イミド樹脂を含有する樹脂組成物が検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−148343号公報
【特許文献2】特開2014−129521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、シロキサン変性イミド樹脂は、低熱膨張性に優れるものの、接着性については、さらなる改善が望まれている。
本発明は、こうした現状に鑑み、銅箔接着性、低熱膨張性、低硬化収縮性、耐熱性(はんだ耐熱性)、弾性率及び成形性に優れる熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにこれらに用いられるイミド樹脂及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、マレイミド樹脂と併用するアミン化合物として、一級アミノ基を有する特定のシロキサン化合物、芳香族アミン化合物及び脂肪族アミン化合物を用いることにより、上記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、プリント配線板、半導体パッケージ、イミド樹脂及びその製造方法を提供するものである。
【0010】
[1]1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物(B)と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(C)と、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D)と、を含有する熱硬化性樹脂組成物。
[2]さらに、下記一般式(I)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(E)を含有する、上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0011】
【化1】
(一般式(I)中、Rは各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基を示し、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数を示し、xとyの和は5である。)
[3]1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(A)由来の構造と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物(B)由来の構造と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(C)由来の構造と、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D)由来の構造と、を含有するイミド樹脂。
[4]さらに、前記一般式(I)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(E)由来の構造を含有する、上記[3]に記載のイミド樹脂。
[5]1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物(B)と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(C)と、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D)と、を反応させるイミド樹脂の製造方法。
[6]前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分と、前記(D)成分と、前記一般式(I)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(E)と、を反応させる、上記[5]に記載のイミド樹脂の製造方法。
[7]上記[3]又は[4]に記載のイミド樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物。
[8]さらに、熱可塑性エラストマ(F)を含有する、上記[1]、[2]又は[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[9]さらに、エポキシ樹脂を含有する、上記[1]、[2]、[7]又は[8]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[10]さらに、無機充填材(H)を含有する、上記[1]、[2]、[7]〜[9]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[11]さらに、硬化促進剤(I)を含有する、上記[1]、[2]、[7]〜[10]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[12]上記[1]、[2]、[7]〜[11]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグ。
[13]上記[1]、[2]、[7]〜[11]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有する樹脂付フィルム。
[14]上記[12]に記載のプリプレグの硬化物を含有する積層板。
[15]上記[13]に記載の樹脂付フィルムの硬化物を含有する積層板。
[16]上記[14]又は[15]に記載の積層板を含有するプリント配線板。
[17]上記[16]に記載のプリント配線板を含有する半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、銅箔接着性、低熱膨張性、低硬化収縮性、耐熱性(はんだ耐熱性)、弾性率及び成形性に優れる熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ、並びにイミド樹脂及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明は、下記[1]及び[2]の熱硬化性樹脂組成物を開示するものである。
[1]1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物(B)と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物と、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D)と、を含有する熱硬化性樹脂組成物。
[2]1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(A)由来の構造と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物(B)由来の構造と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(C)由来の構造と、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D)由来の構造と、を含有するイミド樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物。
以下、上記[1]の熱硬化性樹脂組成物を「第一の熱硬化性樹脂組成物」と称し、上記[2]の熱硬化性樹脂組成物を「第二の熱硬化性樹脂組成物」と称する。
なお、単に「熱硬化性樹脂組成物」と称する場合は「第一の熱硬化性樹脂組成物」及び「第二の熱硬化性樹脂組成物」の両者を指すものとする。
【0014】
<第一の熱硬化性樹脂組成物>
第一の熱硬化性樹脂組成物は、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(A)(以下、「芳香族アミン化合物(A)」又は「(A)成分」とも称する)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物(B)(以下、「脂肪族アミン化合物(B)」又は「(B)成分」とも称する)と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(C)(以下、「シロキサン化合物(C)」又は「(C)成分」とも称する)と、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D)(以下、「マレイミド化合物(D)」又は「(D)成分」とも称する)を含有する熱硬化性樹脂組成物である。
【0015】
(1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(A))
芳香族アミン化合物(A)は、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物であれば特に限定されない。
本明細書中、芳香族アミン化合物とは、芳香族炭化水素基の炭素原子に直接結合する一級アミノ基を有する化合物を意味する。
芳香族アミン化合物(A)は、1分子中に2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物が好ましく、下記一般式(1)で表される化合物がより好ましい。
【0016】
【化2】
(式中、A11は、下記一般式(1−1)又は(1−2)で表される基である。)
【0017】
【化3】
(式中、R11は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。pは0〜4の整数である。)
【0018】
【化4】
(式中、R12及びR13は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A12は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基、単結合又は下記一般式(1−3)で表される基である。q及びrは各々独立に0〜4の整数である。)
【0019】
【化5】
(式中、R14及びR15は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A13は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。s及びtは各々独立に0〜4の整数である。)
【0020】
前記一般式(1−1)中、R11が表す脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。また、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
以上の中でも、R11としては炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基が好ましい。
pは0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは2である。pが2以上の整数である場合、複数のR11同士は同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
前記一般式(1−2)中、R12及びR13が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R11の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基及びエチル基、さらに好ましくはエチル基である。
12が表す炭素数1〜5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2−ジメチレン基、1,3−トリメチレン基、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、銅箔接着性、低熱膨張性、低硬化収縮性、耐熱性(はんだ耐熱性)、弾性率及び成形性の観点から、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
12が表す炭素数2〜5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、銅箔接着性、低熱膨張性、低硬化収縮性、耐熱性(はんだ耐熱性)、弾性率及び成形性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
12としては、上記選択肢の中でも、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述のとおりである。
q及びrは各々独立に0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は2である。q又はrが2以上の整数である場合、複数のR12同士又はR13同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
前記一般式(1−3)中、R14及びR15が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R12及びR13の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
13が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基としては、A12が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
13としては、上記選択肢の中でも、好ましくは炭素数2〜5のアルキリデン基であり、より好ましいものは前述のとおりである。
s及びtは0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。s又はtが2以上の整数である場合、複数のR14同士又はR15同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(1−3)は、下記一般式(1−3’)で表されることが好ましい。
【0023】
【化6】
(一般式(1−3’)中のA13、R14、R15、s及びtは、一般式(1−3)中のものと同じである。)
【0024】
なお、前記一般式(1)中、A11としては、銅箔接着性、低熱膨張性、低硬化収縮性、耐熱性(はんだ耐熱性)、弾性率及び成形性の観点から、前記一般式(1−2)で表される基であることが好ましく、下記一般式(1−2’)で表される基であることがより好ましい。
【0025】
【化7】
(一般式(1−2’)中のA12、R12、R13、q及びrは、一般式(1−2)中のものと同じである。)
【0026】
前記一般式(1)中のA11は、銅箔接着性、低熱膨張性、低硬化収縮性、耐熱性(はんだ耐熱性)、弾性率及び成形性の観点から、下記式のいずれかで表される基であることがさらに好ましい。
【0027】
【化8】
【0028】
芳香族アミン化合物(A)の具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3−メチル−1,4−ジアミノベンゼン、2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、ベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
これらの中でも、例えば、反応性が高く、より高耐熱性化できる点から、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましく、安価であること及び溶剤への溶解性の点から、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。さらに、低熱膨張性及び誘電特性の点から、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。また、高弾性率化できるp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3−メチル−1,4−ジアミノベンゼン、2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼンも好ましい。
【0030】
(1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物(B))
脂肪族アミン化合物(B)は、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物であれば特に限定されない。
本明細書中、脂肪族アミン化合物とは、脂肪族炭化水素基の炭素原子に直接結合する一級アミノ基を有する化合物を意味する。なお、前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。
脂肪族アミン化合物(B)は、下記一般式(2)で表される構造を含有することが好ましい。
【0031】
【化9】
(式中、R21及びR22は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示し、nは、1〜20の整数を示す。)
【0032】
21及びR22が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
前記炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、これらの中でも、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
nは、高弾性率化の観点から、1〜20の整数であり、低硬化収縮化の観点から、2〜10が好ましく、低熱膨張性化の観点から、3〜7がより好ましい。
【0033】
また、脂肪族アミン化合物(B)は、下記一般式(2−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0034】
【化10】
(一般式(2−1)中、R21、R22及びnは、前記一般式(2)と同様である。)
【0035】
脂肪族アミン化合物(B)の炭素数は、2〜20が好ましく、5〜15がより好ましく7〜12がさらに好ましい。
【0036】
脂肪族アミン化合物(B)は、1分子中に2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物が好ましい。
脂肪族アミン化合物(B)の具体例としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4’−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾ−ル、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、より優れた成形性を得る観点から、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0037】
(分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(C))
シロキサン化合物(C)は、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物であれば特に限定されないが、下記一般式(3)で表される構造を含有することが好ましい。
【0038】
【化11】
(式中、R31及びR32は、各々独立に、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、mは、2〜100の整数を示す。)
【0039】
31及びR32が表すアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がさらに好ましい。
31及びR32が表すアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。
31及びR32が表す置換フェニル基における置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、これらの中でも、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、前記と同様のものが好ましく挙げられる。
31及びR32が表す基の中でも、他の樹脂との溶解性の観点から、フェニル基又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
mは、低熱膨張性化の観点から、1〜100の整数であり、相溶性及び高弾性率化の観点から、2〜50の整数であることが好ましい。
【0040】
また、シロキサン化合物(C)は、下記一般式(3−1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0041】
【化12】
(式中、R31、R32、R33及びR34は、各々独立に、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、R35及びR36は、各々独立に、2価の有機基を示す。m’は1〜100の整数を示す。)
【0042】
31、32、R33及びR34が表すアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基は、前記一般式(3)におけるR31及びR32と同様である。
35又はR36が表す2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、−O−又はこれらが組み合わされた2価の連結基等が挙げられる。これらの中でも、アルキレン基、アリーレン基が好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
m’は、低熱膨張性化の観点から、1〜100の整数であり、相溶性及び高弾性率化の観点から、2〜50の整数であることが好ましい。
【0043】
シロキサン化合物(C)としては、分子末端に2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物が好ましい。
シロキサン化合物(C)は、市販品を用いることができ、例えば、「KF−8010」(アミノ基の官能基当量430)、「X−22−161A」(アミノ基の官能基当量800)、「X−22−161B」(アミノ基の官能基当量1500)、「KF−8012」(アミノ基の官能基当量2200)、「KF−8008」(アミノ基の官能基当量5700)、「X−22−9409」(アミノ基の官能基当量700)、「X−22−1660B−3」(アミノ基の官能基当量2200)(以上、信越化学工業株式会社製)、「BY−16−853U」(アミノ基の官能基当量460)、「BY−16−853」(アミノ基の官能基当量650)、「BY−16−853B」(アミノ基の官能基当量2200)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、「XF42−C5742」(アミノ基の官能基当量1280)、「XF42−C6252」(アミノ基の官能基当量1255)、「XF42−C5379」(アミノ基の官能基当量745)(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる(アミノ基の官能基当量の単位はg/molである。)。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、例えば、合成時の反応性が高く、低熱膨張化できる点から、「X−22−161A」、「X−22−161B」、「KF−8012」、「X−22−1660B−3」、「XF42−C5379」、「XF42−C6252」、「XF42−C5742」が好ましく、相溶性に優れ、高弾性率化できる点から、「X−22−161A」、「X−22−161B」、「XF42−C6252」、「XF42−C5742」がより好ましく、安価である点から、「XF42−C6252」、「XF42−C5742」がさらに好ましい。
【0044】
(1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D))
マレイミド化合物(D)は、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D)であれば特に限定されないが、1分子中に2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましく、下記一般式(4)で表される化合物がより好ましい。
【0045】
【化13】
(式中、A41は、下記一般式(4−1)、(4−2)、(4−3)又は(4−4)で表される基である。)
【0046】
【化14】
(式中、R41は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。p2は0〜4の整数である。)
【0047】
【化15】
(式中、R42及びR43は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A42は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基、単結合又は下記一般式(4−5)で表される基である。q2及びr2は各々独立に0〜4の整数である。)
【0048】
【化16】
(式中、R44及びR45は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A43は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。s2及びt2は各々独立に0〜4の整数である。)
【0049】
【化17】
(式中、n2は1〜10の整数である。)
【0050】
【化18】
(式中、R46及びR47は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基である。u2は1〜8の整数である。)
【0051】
前記一般式(4−1)中、R41が表す脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。また、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
以上の中でも、R41としては炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基が好ましい。
p2は0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。p2が2以上の整数である場合、複数のR41同士は同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
前記一般式(4−2)中、R42及びR43が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R41の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基及びエチル基、さらに好ましくはエチル基である。
42が表す炭素数1〜5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2−ジメチレン基、1,3−トリメチレン基、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、銅箔接着性、低熱膨張性、低硬化収縮性、耐熱性(はんだ耐熱性)、弾性率及び成形性の観点から、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
42が表す炭素数2〜5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、銅箔接着性、低熱膨張性、低硬化収縮性、耐熱性(はんだ耐熱性)、弾性率及び成形性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
42としては、上記選択肢の中でも、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述のとおりである。
q2及びr2は各々独立に0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は2である。q2又はr2が2以上の整数である場合、複数のR42同士又はR43同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
前記一般式(4−5)中、R44及びR45が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R42及びR43の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
43が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基としては、A42が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
43としては、上記選択肢の中でも、好ましくは炭素数2〜5のアルキリデン基であり、より好ましいものは前述のとおりである。
s2及びt2は0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。s2又はt2が2以上の整数である場合、複数のR44同士又はR45同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(4−5)は、下記一般式(4−5’)で表されることが好ましい。
【0054】
【化19】
(一般式(4−5’)中のA43、R44、R45、s2及びt2は、一般式(4−5)中のものと同じである。)
【0055】
前記一般式(4−3)中、n2は、1〜10の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3である。
前記一般式(4−4)中、R46及びR47が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記一般式(4−1)中のR41の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
u2は1〜8の整数であり、好ましくは1〜3、より好ましくは1である。
【0056】
なお、前記一般式(4)中、A41としては、耐熱性、接着性、ガラス転移温度(Tg)、低熱膨張性、弾性率、低硬化収縮性及び高周波特性の観点から、前記一般式(4−2)で表される基であることが好ましく、下記一般式(4−2’)で表される基であることがより好ましい。
【0057】
【化20】
(一般式(4−2’)中のA42、R42、R43、q2及びr2は、一般式(4−2)中のものと同じである。)
【0058】
前記一般式(4)中のA41としては、銅箔接着性、低熱膨張性、低硬化収縮性、耐熱性(はんだ耐熱性)、弾性率及び成形性の観点から、下記式のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0059】
【化21】
【0060】
マレイミド化合物(D)の具体例としては、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、例えば、反応性が高く、より高耐熱性化できる点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンが好ましく、溶剤への溶解性の点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンがより好ましい。
【0061】
(第一の熱硬化性樹脂組成物中における各成分の含有量)
第一の熱硬化性樹脂組成物中における芳香族アミン化合物(A)と脂肪族アミン化合物(B)の含有量は、銅箔接着性の点から、例えば、0.1≦[芳香族アミン化合物(A)のモル数]/[脂肪族アミン化合物(B)のモル数]≦10であることが好ましく、0.15≦[芳香族アミン化合物(A)のモル数]/[脂肪族アミン化合物(B)のモル数]≦5であることが好ましい。
また、第一の熱硬化性樹脂組成物中、芳香族アミン化合物(A)と脂肪族アミン化合物(B)の合計含有量は、銅箔接着性及び成形性の観点から、上記関係を維持しつつ、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、1〜30質量部が好ましく、2〜20質量部がより好ましく、3〜10質量部がより好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂成分」とは、主に、芳香族アミン化合物(A)、脂肪族アミン化合物(B)、シロキサン化合物(C)及びマレイミド化合物(D)であり、熱硬化性樹脂組成物が、酸性置換基を有するアミン化合物(E)、熱可塑性エラストマ(F)、熱硬化性樹脂(G)、その他の樹脂成分等の少なくともいずれかを含有する場合はこれらも含む。
また、「固形分」とは、水、溶媒等の揮発する物質を除いた不揮発分のことであり、「固形分換算樹脂成分の総和」とは、熱硬化性樹脂組成物中における樹脂成分の合計量を固形分換算した量である。
【0062】
第一の熱硬化性樹脂組成物中、シロキサン化合物(C)の含有量は、銅箔接着性及び耐薬品性の観点から、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、1〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。
第一の熱硬化性樹脂組成物中、マレイミド化合物(D)の含有量は、低熱膨張性及び高弾性率の観点から、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、30〜99質量部が好ましく、40〜80質量部がより好ましい。
【0063】
(酸性置換基を有するアミン化合物(E))
第一の熱硬化性樹脂組成物は、さらに、下記一般式(I)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(E)を含有することが好ましい。
【0064】
【化22】
(一般式(I)中、Rは各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基を示し、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数を示し、xとyの和は5である。)
【0065】
酸性置換基を有するアミン化合物(E)の具体例としては、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、例えば、溶解性及び合成の収率の点から、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸及び3,5−ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の点から、m−アミノフェノール及びp−アミノフェノールがより好ましい。
【0066】
第一の熱硬化性樹脂組成物が、酸性置換基を有するアミン化合物(E)を含有する場合、その含有量は、低熱膨張性の点から、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、0.5〜30質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部がさらに好ましい。
【0067】
<第二の熱硬化性樹脂組成物>
次に、本発明の第二の熱硬化性樹脂組成物について説明する。
第二の熱硬化性樹脂組成物は、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する芳香族アミン化合物(A)由来の構造と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する脂肪族アミン化合物(B)由来の構造と、分子末端に少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(C)由来の構造と、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(D)由来の構造と、を含有するイミド樹脂(以下、単に「変性イミド樹脂(J)」とも称する)を含有する熱硬化性樹脂組成物である。
【0068】
(変性イミド樹脂(J))
変性イミド樹脂(J)は、前記(A)成分由来の構造と、前記(B)成分由来の構造と、前記(C)成分由来の構造と、前記(D)成分由来の構造と、を含有するものである。
【0069】
変性イミド樹脂(J)中の芳香族アミン化合物(A)由来の構造と脂肪族アミン化合物(B)由来の構造の含有量は、銅箔接着性の点から、例えば、0.1≦[芳香族アミン化合物(A)由来の構造のモル数]/[脂肪族アミン化合物(B)由来の構造のモル数]≦10.0であることが好ましく、0.15≦[芳香族アミン化合物(A)由来の構造のモル数]/[脂肪族アミン化合物(B)由来の構造のモル数]≦5であることが好ましい。
また、変性イミド樹脂(J)中の芳香族アミン化合物(A)由来の構造と脂肪族アミン化合物(B)由来の構造の合計含有量は、銅箔接着性及び成形性の観点から、上記関係を維持しつつ、1〜40質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましく、4〜15質量%がより好ましい。
変性イミド樹脂(J)中のシロキサン化合物(C)由来の構造の含有量は、銅箔接着性及び耐薬品性の観点から、1〜40質量%が好ましく、6〜25質量%がより好ましい。
変性イミド樹脂(J)中のマレイミド化合物(D)由来の構造の含有量は、低熱膨張性及び高弾性率の観点から、40〜90質量%が好ましく、50〜85質量%がより好ましい。
【0070】
また、変性イミド樹脂(J)は、さらに、前記一般式(I)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(E)由来の構造を含有することが好ましい。
すなわち、変性イミド樹脂(J)は、前記(A)成分由来の構造と、前記(B)成分由来の構造と、前記(C)成分由来の構造と、前記(D)成分由来の構造と、前記酸性置換基を有するアミン化合物(E)成分由来の構造と、を含有するものであることが好ましい。
【0071】
変性イミド樹脂(J)が、酸性置換基を有するアミン化合物(E)由来の構造を含有する場合、その含有量は、低熱膨張性の点から、変性イミド樹脂(J)中、0.5〜40質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1.5〜4質量%がさらに好ましい。
【0072】
第二の熱硬化性樹脂組成物中における変性イミド樹脂(J)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、50〜100質量部が好ましく、60〜90質量部がより好ましく、70〜85質量部がさらに好ましい。変性イミド樹脂(J)の含有量を50質量部以上とすることにより、優れた銅箔接着性、低熱膨張性、低硬化収縮性、耐熱性(はんだ耐熱性)、弾性率及び成形性が得られる。
【0073】
また、第二の熱硬化性樹脂組成物の質量を基準として、第二の熱硬化性樹脂組成物中に含まれる芳香族アミン化合物(A)由来の構造、脂肪族アミン化合物(B)由来の構造、シロキサン化合物(C)由来の構造、マレイミド化合物(D)由来の構造、酸性置換基を有するアミン化合物(E)由来の構造の好適な含有量を表すと以下のとおりとなる。
第二の熱硬化性樹脂組成物中、芳香族アミン化合物(A)由来の構造と脂肪族アミン化合物(B)由来の構造の合計含有量は、銅箔接着性及び成形性の観点から、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、1〜30質量部が好ましく、2〜20質量部がより好ましく、3〜10質量部がさらに好ましい。
第二の熱硬化性樹脂組成物中、シロキサン化合物(C)由来の構造の含有量は、銅箔接着性及び耐薬品性の観点から、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、1〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。
第二の熱硬化性樹脂組成物中、マレイミド化合物(D)由来の構造の含有量は、低熱膨張性及び高弾性率の観点から、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、30〜99質量部が好ましく、40〜80質量部がより好ましい。
第二の熱硬化性樹脂組成物が、酸性置換基を有するアミン化合物(E)由来の構造を含有する場合、酸性置換基を有するアミン化合物(E)由来の構造の含有量は、低熱膨張性の点から、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、0.5〜30質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部がさらに好ましい。
【0074】
次に、変性イミド樹脂(J)の製造方法について説明する。
【0075】
(変性イミド樹脂(J)の製造方法)
変性イミド樹脂(J)は、芳香族アミン化合物(A)、脂肪族アミン化合物(B)、シロキサン化合物(C)、マレイミド化合物(D)、及び必要により酸性置換基を有するアミン化合物(E)を反応(以下、該反応を単に「プレ反応」とも称する)させることにより製造することができる。このプレ反応により、変性イミド樹脂(J)の分子量を制御することができ、さらに低硬化収縮性及び低熱膨張性を向上させることができる。
以下、プレ反応の諸条件について説明する。
【0076】
前記プレ反応における各成分の使用量は、例えば、マレイミド化合物(D)のマレイミド基数〔(D)成分の使用量/(D)成分のマレイミド基当量〕が、芳香族アミン化合物(A)、脂肪族アミン化合物(B)及びシロキサン化合物(C)の一級アミノ基数の総量〔((A)成分の使用量/(A)成分の一級アミン当量)+((B)成分の使用量/(B)成分の一級アミン当量)+((C)成分の使用量/(C)成分の一級アミノ基当量)〕の2.0〜10.0倍になる範囲であることが好ましい。2.0倍以上にすることにより、ゲル化することなく優れた耐熱性が得られ、また、10.0倍以下とすることにより、優れた有機溶媒への溶解性及び耐熱性が得られる。
【0077】
さらに、前記プレ反応におけるマレイミド化合物(D)の使用量は、上記のような関係を維持しつつ、シロキサン化合物(C)100質量部に対して、50〜3000質量部が好ましく、100〜1500質量部がより好ましい。50質量部以上とすることにより優れた耐熱性が得られ、また、3000質量部以下とすることにより低熱膨張性を良好に保つことができる。
【0078】
また、変性イミド樹脂(J)が、酸性置換基を有するアミン化合物(E)由来の構造を含有する場合、前記プレ反応における各成分の使用量は、マレイミド化合物(D)のマレイミド基数〔(D)成分の使用量/(D)成分のマレイミド基当量〕が、芳香族アミン化合物(A)、脂肪族アミン化合物(B)、シロキサン化合物(C)及び酸性置換基を有するアミン化合物(E)の一級アミノ基数の総量〔((A)成分の使用量/(A)成分の一級アミン当量)+((B)成分の使用量/(B)成分の一級アミン当量)+((C)成分の使用量/(C)成分の一級アミノ基当量)+((E)成分の使用量/(E)成分の一級アミン当量)〕の2.0〜10.0倍になる範囲であることが好ましい。2.0倍以上にすることにより、ゲル化及び耐熱性の低下が抑制可能であり、また、10.0倍以下とすることにより有機溶媒への溶解性及び耐熱性の低下が抑制可能である。
【0079】
変性イミド樹脂(J)が、酸性置換基を有するアミン化合物(E)由来の構造を含有する場合、その含有量は、上記のような関係を維持しつつ、シロキサン化合物(C)100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、3〜30質量部がより好ましい。1質量部以上とすることにより良好な耐熱性が得られ、また、100質量部以下とすることにより低熱膨張性を良好に保つことができる。
【0080】
前記プレ反応は、有機溶媒中で加熱保温しながら行うことが好ましい。
反応温度は、例えば、70〜150℃が好ましく、100〜130℃がより好ましい。反応時間は、例えば、0.1〜10時間が好ましく、1〜6時間がより好ましい。
【0081】
前記プレ反応で使用される有機溶媒は、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチルエステル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの有機溶媒の中でも、例えば、溶解性の点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ及びγ−ブチロラクトンが好ましく、低毒性であること及び揮発性が高く残溶剤として残りにくい点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びジメチルアセトアミドが好ましい。
【0082】
有機溶媒の使用量は、例えば、前記プレ反応の各原料成分の総和100質量部に対して、25〜2000質量部が好ましく、40〜1000質量部がより好ましく、40〜500質量部がさらに好ましい。有機溶媒の使用量を25質量部以上とすることにより、良好な溶解性が得られ、また、2000質量部以下とすることにより、十分な反応速度が得られる。
【0083】
前記プレ反応には任意に反応触媒を使用することができる。反応触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒;リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド等のアルカリ金属アミドなどが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0084】
第2の熱硬化性樹脂組成物は、変性イミド樹脂(J)とは別に、さらに芳香族アミン化合物(A)、脂肪族アミン化合物(B)、シロキサン化合物(C)、マレイミド化合物(D)及び酸性置換基を有するアミン化合物(E)からなる群から選ばれる1種以上を含有していてもよい。この場合、各成分と各成分由来の構造単位との合計含有量が、前記第二の熱硬化性樹脂組成物の質量を基準とする各成分由来の構造単位の含有量の範囲となることが好ましい。
【0085】
次に、本発明の第一の熱硬化性樹脂組成物及び第二の熱硬化性樹脂組成物が、必要により含有することができるその他の成分について説明する。
【0086】
<その他の成分>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、良好な熱硬化反応性を有するが、必要により、硬化剤及び/又は重合開始剤を含有することで、耐熱性、接着性及び機械強度をより向上させることができる。
【0087】
(重合開始剤)
前記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、アシル過酸化物、ハイドロパーオキサイド、ケトン過酸化物、t−ブチル基を有する有機過酸化物、クミル基を有する過酸化物等の有機過酸化物などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0088】
(熱可塑性エラストマ(F))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに、熱可塑性エラストマ(F)を含有していてもよい。
熱可塑性エラストマ(F)としては、例えば、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、アクリル系エラストマ、シロキサン系エラストマ、これらの誘導体等が挙げられる。これらは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分とからなり立っており、一般に前者が耐熱性及び強度に、後者が柔軟性及び強靭性に寄与している。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、例えば、耐熱性及び絶縁信頼性の点から、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ポリアミド系エラストマ及びシロキサン系エラストマが好ましく、誘電特性の点から、スチレン系エラストマ及びオレフィン系エラストマがより好ましい。
【0089】
熱可塑性エラストマ(F)は、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものを用いることができる。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等が挙げられる。これらの反応性官能基を分子末端又は分子鎖中に有することにより、樹脂への相溶性が向上し、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化時に発生する内部応力をより効果的に低減することができる。
【0090】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が熱可塑性エラストマ(F)を含有する場合、熱可塑性エラストマ(F)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、0.1〜50質量部が好ましく、2〜30質量部がより好ましい。熱可塑性エラストマ(F)の含有量を前記範囲内とすることにより、成形性に優れ、硬化物の低硬化収縮性、低熱膨張性及び優れた誘電特性を効果的に発現することができる。
【0091】
(エポキシ樹脂及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱硬化性樹脂(G))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱硬化性樹脂(G)(以下、単に「熱硬化性樹脂(G)」とも称する)を含有していてもよい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物及びこれらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、耐熱性及び難燃性の点から、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
シアネート樹脂としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、耐熱性及び難燃性の点から、ノボラック型シアネート樹脂が好ましい。
【0092】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂(G)を含有する場合、熱硬化性樹脂(G)の含有量は、耐熱性及び耐薬品性の点から、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、1〜50質量部が好ましく、8〜30質量部がより好ましい。
【0093】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂(G)を含有する場合、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて熱硬化性樹脂(G)の硬化剤を含有していてもよい。
硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、アミノトリアジンノボラック樹脂等の多官能フェノール化合物;ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等のアミン化合物;無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0094】
(無機充填材(H))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに、無機充填材(H)を含有していてもよい。
無機充填材(H)としては、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、ガラス粉、中空ガラスビーズ等が挙げられる。ガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が好ましく挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、例えば、誘電特性、耐熱性及び低熱膨張性の点から、シリカが好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカ等が挙げられる。乾式法シリカとしてはさらに、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)等が挙げられる。これらの中でも、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性から、球状シリカが好ましく、溶融球状シリカがより好ましい。
【0095】
無機充填材(H)としてシリカを用いる場合、その平均粒子径は0.1〜10μmが好ましく、0.3〜8μmがより好ましい。シリカの平均粒子径を0.1μm以上にすることで、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保つことができ、さらに10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らし粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0096】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が無機充填材(H)を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、20〜300質量部が好ましく、50〜250質量部がより好ましい。無機充填材(H)の含有量を、前記範囲にすることで、熱硬化性樹脂組成物の成形性と低熱膨張性を良好に保つことができる。
【0097】
また、熱硬化性樹脂組成物に無機充填材(H)を配合するに際しては、例えば、該無機充填材(H)をシラン系、チタネート系等のカップリング剤、シリコーンオリゴマー等の表面処理剤で前処理又はインテグラルブレンド処理することも好ましい。
【0098】
(硬化促進剤(I))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに、硬化促進剤(I)を含有していてもよい。
硬化促進剤(I)としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;イミダゾール類及びその誘導体;ホスフィン類及びホスホニウム塩等の有機リン系化合物;第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、例えば、硬化促進効果と保存安定性の点から、ナフテン酸亜鉛、イミダゾール誘導体、ホスホニウム塩が好ましい。
【0099】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤(I)を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分換算樹脂成分の総和100質量部当たり、0.01〜3.0質量部が好ましく、0.05〜1.5質量部がより好ましい。硬化促進剤(I)の含有量を前記範囲にすることで、硬化促進効果と保存安定性を良好に保つことができる。
【0100】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、その目的に反しない範囲内で、任意に公知の熱可塑性樹脂、有機充填材、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、接着性向上剤等を含有していてもよい。
【0101】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0102】
有機充填材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等よりなる樹脂フィラー;アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、共役ジエン系樹脂等よりなるゴム状態のコア層と、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、シアン化ビニル系樹脂等よりなるガラス状態のシェル層を持つコアシェル構造の樹脂フィラーなどが挙げられる。
【0103】
難燃剤としては、例えば、臭素、塩素等を含有する含ハロゲン系難燃剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、赤リン等のリン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤;三酸化アンチモン等の無機系難燃剤が挙げられる。
【0104】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系及びヒンダードアミン系の酸化防止剤が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンジルケタール系及びチオキサントン系の光重合開始剤が挙げられる。蛍光増白剤としては、例えば、スチルベン誘導体の蛍光増白剤が挙げられる。接着性向上剤としては、例えば、尿素シラン等の尿素化合物;シラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤などが挙げられる。
【0105】
(有機溶媒)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、取り扱いを容易にする観点及び後述するプリプレグ又は樹脂付フィルムを製造し易くする観点から、有機溶媒を含有させてワニスの状態にすることが好ましい。
ワニスの作製に用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中で、例えば、溶解性の点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、低毒性である点から、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
ワニス中における熱硬化性樹脂組成物の固形分含有量は、例えば、ワニス全体の40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましい。ワニス中の熱硬化性樹脂組成物の固形分含有量を前記範囲内とすることにより、塗工性を良好に保ち、熱硬化性樹脂組成物が適量付着したプリプレグ及び樹脂付フィルムを得ることができる。
【0106】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を含有するものである。
本発明のプリプレグは、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸する方法又は基材に含浸もしくは吹付けた後、押出し等の方法で塗工する方法[以下、これらの方法をまとめて、「含浸又は塗工」と表記することがある。]により製造することができる。具体的には、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工した後、例えば、加熱等により半硬化(Bステージ化)することにより、基材と半硬化(Bステージ化)した熱硬化性樹脂組成物とを含有する本発明のプリプレグを製造することができる。
【0107】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸する方法は、特に限定されないが、例えば、基材を前記ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、含浸性の観点から、基材をワニスに浸漬する方法が好ましい。
【0108】
本発明のプリプレグに用いられる基材としては、例えば、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維及びこれらの混合物などが挙げられる。他の用途では、例えば、繊維強化基材であれば、炭素繊維を用いることが可能である。
これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有する。基材の材質及び形状は、目的とする成形物の用途及び性能により選択すればよく、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。
基材は、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性、耐湿性及び加工性の面から好適である。
基材の厚さは、例えば、約0.03〜0.5mmの範囲とすることができる。
【0109】
本発明のプリプレグは、例えば、該基材に対する熱硬化性樹脂組成物の固形分付着量が、乾燥後のプリプレグに対する熱硬化性樹脂組成物の含有率で、20〜90質量%が好ましい。
本発明のプリプレグは、例えば、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物の固形分付着量が前記範囲内となるように、本発明の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸又は塗工した後、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、製造することができる。
【0110】
[樹脂付フィルム]
本発明の樹脂付フィルムは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を含有するものである。
本発明の樹脂付フィルムは、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を支持体上に層形成してなるものである。
層形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、本発明で得られる熱硬化性樹脂組成物をワニスの状態にした後、各種コーターを用いて支持体であるフィルムに塗布し、更に加熱、熱風吹きつけ等により乾燥することによってワニス中の有機溶媒を揮発させるとともに、熱硬化性樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)させて、支持体上に本発明の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層を形成することにより製造することができる。
このようにして得られる本発明の樹脂付フィルムは、支持体と、該支持体の一方の面に本発明の熱硬化性樹脂組成物から形成された半硬化状態の樹脂組成物層とを有するものである。ただし、この半硬化状態は、熱硬化性樹脂組成物を硬化する際に、熱硬化性樹脂組成物と回路パターン基板との接着力が確保される状態であり、また、回路パターン基板の埋めこみ性(流動性)が確保される状態であることが望ましい。
【0111】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を支持体に塗布した後の乾燥条件は、例えば、樹脂組成物層への有機溶媒の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となる条件とすることができる。乾燥条件は、ワニス中の有機溶媒量、有機溶媒の沸点等によっても異なるが、例えば、30〜60質量%の有機溶媒を含有するワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。また、乾燥条件は、予め簡単な実験により適宜、好適な条件を設定することが好ましい。
【0112】
樹脂付フィルムにおける樹脂組成物層の厚さは、通常、回路基板が有する導体層の厚さ以上とすることが好ましい。導体層の厚さは、例えば、5〜70μmであり、プリント配線板の軽薄短小化の観点から、5〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。したがって、樹脂組成物層の厚さは、例えば、5μm以上とすることができ、また、例えば、80μm以下であり、薄型化の観点からは、好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下の範囲で、前記導体層の厚さ以上の厚さとしてもよい。
【0113】
本発明の樹脂付フィルムにおける支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ともいう)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等からなるフィルム;離型紙;銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などが挙げられる。これらの支持体及び後述する保護フィルムには、マット処理、コロナ処理、離型処理等を施してもよい。
支持体の厚さは、例えば、10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
樹脂組成物層の支持体が密着していない面には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムを積層することにより、異物混入を防止することができる。保護フィルムの厚さは、例えば、1〜40μmである。
樹脂付フィルムは、ロール状に巻き取って貯蔵することもできる。
【0114】
[積層板]
本発明の積層板は、本発明のプリプレグの硬化物及び/又は本発明の樹脂付フィルムの硬化物を含有するものである。
以下、本発明の積層板の製造方法について詳述する。なお、本発明の積層板中における、本発明のプリプレグの硬化物又は樹脂付フィルムの硬化物からなる層を「絶縁樹脂層」と称することがある。
【0115】
本発明の樹脂付フィルムを用いて積層板を形成する方法としては、例えば、本発明の樹脂付フィルムを、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする方法が挙げられる。
回路基板に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また、導体層と絶縁層とを交互に積層してなる積層板及び該積層板から製造されるプリント配線板において、該プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっているものも、ここでいう回路基板に含まれる。なお、導体層の表面には、黒化処理等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0116】
上記ラミネートにおいて、樹脂付フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて樹脂付フィルム及び回路基板をプレヒートし、樹脂付フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。
本発明の樹脂付フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネート条件は、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは0.1〜1.1MPaとし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
【0117】
樹脂付フィルムを回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却してから、支持体を剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより回路基板に絶縁樹脂層を形成することができる。熱硬化の条件は、樹脂付フィルムの樹脂組成物層中の樹脂成分の種類、含有量等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、150〜220℃で20〜180分の範囲で選択され、好ましくは160〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
【0118】
樹脂組成物層の硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、絶縁樹脂層の形成後に剥離し、次いで、必要に応じて回路基板上に形成された絶縁樹脂層に穴開けを行って、ビアホール、スルーホール等を形成してもよい。
穴開けは、例えば、ドリル、レーザ、プラズマ又はこれらを組み合わせた方法により行うことができる。これらの中でも、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ等のレーザによる穴開けが一般的な方法である。
【0119】
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁樹脂層上に導体層を形成してもよい。乾式メッキとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式メッキの場合は、まず、硬化した絶縁樹脂層の表面を、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理し、凸凹のアンカーを形成する。酸化剤としては、特に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)が好ましく用いられる。次いで、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせた方法で導体層を形成する。また、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法等を用いることができる。
【0120】
次に、本発明のプリプレグを用いた本発明の積層板の製造方法について説明する。
本発明の積層板は、本発明のプリプレグを積層成形して製造することができる。この場合、本発明の積層板は、本発明のプリプレグを硬化してなる絶縁樹脂層を含有するものとなる。
例えば、本発明のプリプレグを、1〜20枚重ね、その片面又は両面に、銅、アルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより積層板を製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用積層板で用いられるものであれば特に制限されない。
成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用して、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の条件で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組み合せ、積層成形して、本発明の積層板を製造することもできる。
【0121】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の積層板を含有するものである。
本発明のプリント配線板は、本発明の積層板における絶縁樹脂層の片面又は両面に配置された導体層(金属箔)を回路加工して製造することができる。
具体的には、まず、本発明の積層板の導体層を通常のエッチング法によって配線加工し、次に、本発明のプリプレグを介して配線加工した積層板を複数積層し、加熱プレス加工することによって一括して多層化する。その後、ドリル加工又はレーザ加工によるスルーホール又はブラインドビアホールの形成と、メッキ又は導電性ペーストによる層間配線の形成を経て、本発明のプリント配線板を製造することができる。
【0122】
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板に半導体を搭載してなるものである。本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等を搭載して製造することができる。
【実施例】
【0123】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、各例で得られた銅張積層板を用いて、ガラス転移温度、熱膨張率、銅箔接着性、銅付きはんだ耐熱性、曲げ弾性率及び成形性を以下の方法で測定し、評価した。
【0124】
(1)ガラス転移温度(Tg)
各例で得た銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた縦5mm(X方向)、横5mm(Y方向)、厚さ0.4mm(Z方向)の評価基板を作製し、TMA試験装置(TAインスツルメント社製、商品名:Q400)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。熱機械分析は、前記装置に評価基板をX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の条件で連続して2回行い、2回目の熱膨張曲線の異なる接線の交点で示されるガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0125】
(2)熱膨張率
各例で得た銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた縦5mm(X方向)、横5mm(Y方向)、厚さ0.4mm(Z方向)の評価基板を作製し、TMA試験装置(TAインスツルメント社製、商品名:Q400)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。熱機械分析は、前記装置に評価基板をX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の条件で連続して2回行い、2回目の分析における30℃から100℃までの平均熱膨張率を算出し、これを熱膨張率(線膨張率)の値とした。
【0126】
(3)銅箔接着性(銅箔ピール強度)
各例で得た銅張積層板を、外層銅箔上に3mm幅のレジストを形成した後、銅エッチング液に浸漬することにより、ピール強度測定部として3mm幅の外層銅箔を有する評価基板を作製した。接着強度測定部の銅箔の一端を、銅箔と基板との界面で剥がしてつかみ具でつかみ、引張り試験機(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフS−100)を用いて、垂直方向に引っ張り速度50mm/分、室温中で引き剥がしたときの荷重を測定した。
【0127】
(4)銅付きはんだ耐熱性
各例で得た銅張積層板から25mm角の評価基板を作製し、該評価基板を温度288℃のはんだ浴に10分間フロートし、評価基板の外観を目視にて観察して、銅付きはんだ耐熱性を評価した。
【0128】
(5)曲げ弾性率
各例で得た銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた25mm×50mmの評価基板を作製し、株式会社オリエンテック製の5トンテンシロンを用い、クロスヘッド速度1mm/min、スパン間距離20mmで測定した。
【0129】
(6)成形性
各例で得たプリプレグを2枚重ね、その両面に厚さ12μmの銅箔を配置し、多段真空プレスを用いて圧力3.0MPa、温度250℃の条件で85分間プレスすることで銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板の銅箔をエッチングにより取り除き、硬化後のプリプレグの外観を目視により観察して、成形性を評価した。
【0130】
[変性イミド樹脂の製造]
製造実施例1
(変性イミド樹脂1の製造)
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積1リットルの反応容器に、3,3’−ジエチルー4,4’−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬株式会社製、商品名:KAYAHARD A−A)16.23g、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)1.44g、両末端アミノ変性シロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、アミノ基の官能基当量1280g/mol、商品名:XF42−C5742)47.99g、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン248.39g(大和化成工業株式会社製、商品名:BMI−4000)、p−アミノフェノール(関東化学株式会社製)5.94g、プロピレングリコールモノメチルエーテル459.43gを投入し、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、変性イミド樹脂1含有溶液(樹脂成分の含有量:60質量%)を得た。
【0131】
製造実施例2〜6、製造比較例1〜2
(変性イミド樹脂2〜8の製造)
製造実施例1において、各原料の使用量を表1に示すとおりに変えた以外は、製造実施例1と同様にして、変性イミド樹脂2〜8含有溶液(樹脂成分の含有量:60質量%)を各々得た。
【0132】
製造比較例3
(変性イミド樹脂9の製造)
製造実施例1において、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬株式会社製、商品名:KAYAHARD A−A)を使用せず、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミンに代えてジ−p−アミノ安息香酸ポリテトラメチレンオキシド(イハラケミカル株式会社製、商品名:エラスマー1000P)を使用し、各原料の使用量を表1に示すとおりに変えた以外は、製造実施例1と同様にして、変性イミド樹脂9含有溶液(樹脂成分の含有量:60質量%)を得た。
【0133】
【表1】
【0134】
実施例1〜6、比較例1〜3
(銅張積層板の製造)
表2に示す各成分及びメチルエチルケトンを混合して固形分65質量%のワニスを得た。
上記ワニスを厚さ0.1mmのSガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分間加熱乾燥して熱硬化性樹脂組成物の固形分含有量が45質量%のプリプレグを得た。次に、このプリプレグを4枚重ね、厚さ12μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力3.0MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。得られた銅張積層板の評価結果を表2に示す。
【0135】
【表2】
【0136】
各例で使用した原料は以下のとおりである。
【0137】
芳香族アミン化合物(A)
・KAYAHARD A−A:3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン[日本化薬株式会社製、商品名]
【0138】
脂肪族アミン化合物(B)
・2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン[東京化成工業株式会社製]
・エラスマー1000P:ジ−p−アミノ安息香酸ポリテトラメチレンオキシド[イハラケミカル株式会社製、商品名]
【0139】
シロキサン化合物(C)
・XF42−C5742:両末端アミン変性シロキサン[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名]
【0140】
マレイミド化合物(D)
・BMI−4000:2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン[大和化成工業株式会社製、商品名]
【0141】
酸性置換基を有するアミン化合物(E)
・p−アミノフェノール[関東化学株式会社製]
【0142】
熱可塑性エラストマ(F)
・タフテックM1913:カルボン酸変性水添スチレン−ブタジエン共重合樹脂[旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名]
【0143】
熱硬化性樹脂(G)
・HP−9540−P02:ナフトール型エポキシ樹脂[DIC株式会社製、商品名]
【0144】
無機充填材(H)
・SC2050−KNK:溶融球状シリカ[株式会社アドマテックス製、平均粒径0.5μm、商品名]
・KEMGARD2200:モリブデン酸亜鉛[シャーウィン・ウィリアムス社製、商品名]
【0145】
硬化促進剤(I)
・TBP2:p−ベンゾキノンとトリ−n−ブチルホスフィンの付加反応物[黒金化成株式会社製、商品名]
【0146】
表2から明らかなように、本発明の実施例1〜6で得られた銅張積層板は、ガラス転移温度、熱膨張率、銅箔接着性、銅付はんだ耐熱性、弾性率及び成形性の全てに優れている。一方、比較例1及び3は、ガラス転移温度、熱膨張率、銅箔接着性、銅付はんだ耐熱性、弾性率、成形性の全てを満たすものはなく、いずれかの特性に劣っていた。また、比較例2は、成形不良のため、評価基板を作製することができず、ガラス転移温度、熱膨張率、銅付はんだ耐熱性及び弾性率を測定することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の熱硬化性樹脂組成物並びに該熱硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグ及び樹脂付フィルムの硬化物を含有する積層板は、優れた銅箔接着性、低熱膨張性、低硬化収縮性、耐熱性(はんだ耐熱性)、弾性率及び成形性を有し、高集積化された半導体パッケージや電子機器用プリント配線板として有用である。