(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物とホルムアルデヒドとを、2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物1モルに対し0.2〜2.0モルのアルカリ触媒の存在下で反応させ、得られた反応生成物とエピハロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂(a1)、不飽和モノカルボン酸(a2)、不飽和モノカルボン酸無水物(a3)、及びジカルボン酸無水物(a4)を必須の原料として反応させて得られるものである請求項1記載の不飽和基含有アルカリ現像性樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の不飽和基含有アルカリ現像性樹脂は、下記構造式(1)
【0018】
【化3】
[式中Xは下記構造式(2−1)〜(2−3)
【0019】
【化4】
{式中R
2は水素原子又はメチル基であり、R
3は炭素原子数1〜10の炭化水素基である。}
の何れかで表される構造部位である。式中R
1はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかであり、nは1〜4の整数、mは1〜5の整数である。]
で表される分子構造を有する化合物(α)を含有し、樹脂中に存在するXのうち少なくとも一つが前記構造式(2−1)で表される構造部位であり、少なくとも一つが前記構造式(2−2)で表される構造部位であることを特徴とする。
【0020】
式中R
1はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかである。前記アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。中でも、耐熱性に優れる不飽和基含有アルカリ現像性樹脂となることから、R
1は水素原子であることが好ましい。
【0021】
前記R
3は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、その具体構造は特に限定されず、直鎖のアルキレン基、分岐構造を有するアルキレン基、二重結合を有するもの、三重結合を有するもの、脂環構造を有するもの、芳香環構造を有するもの、いずれの構造でも良い。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、シクロへキシレン基、テトラヒドロフェニレン基、キシリレン基等が挙げられる。
【0022】
前記化合物(α)を含有する本発明の不飽和基含有アルカリ現像性樹脂を製造する方法は特に限定されないが、例えば、2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物とホルムアルデヒドとを、2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物1モルに対し0.2〜2.0モルのアルカリ触媒の存在下で反応させ、得られた反応生成物とエピハロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂(a1)、(メタ)アクリル酸(a2)、(メタ)アクリル酸無水物(a3)、及びジカルボン酸無水物(a4)を必須の原料として反応させる方法により得ることができる。
【0023】
前記製造方法につき詳述するに、まず、2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物とホルムアルデヒドとを、2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物1モルに対し0.2〜2.0モルのアルカリ触媒の存在下で反応させて、下記構造式(3)
【0024】
【化5】
式中R
1はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかであり、nは1〜4の整数、mは1〜5の整数である。]
で表される分子構造を有する化合物(α’)を含有するフェノール樹脂中間体を得る。
【0025】
前記2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物は、2,7−ジヒドロキシナフタレンや2,7−ジヒドロキシナフタレンの芳香核上にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を一つ乃至複数有する各種の化合物が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、耐熱性に優れる不飽和基含有アルカリ現像性樹脂が得られることから、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
【0026】
ホルムアルデヒドは何れの形態のものを用いても良く、水溶液の状態であるホルマリン溶液でも、固形状態であるパラホルムアルデヒドでも良い。ホルムアルデヒドの仕込み量は特に限定されないが、2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物1モルに対してホルムアルデヒドが0.6〜2.0モルの範囲となる割合であることが好ましく、0.6〜1.5モルの範囲となる割合であることがより好ましい。
【0027】
前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、金属ナトリウム、金属リチウム等のアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0028】
2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物とホルムアルデヒドとの反応は、例えば、20〜150℃程度の温度条件下、1〜10時間程度反応させる方法により行うことができる。該反応は必要に応じて有機溶剤中で行っても良い。有機溶剤の選択は、2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物、ホルムアルデヒド、及び生成物である前記化合物(α’)の溶解性や、反応温度条件により適宜選択されるが、例えば、メチルセロソルブ、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。有機溶剤の使用量は、反応効率が良好となることから、2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物及びホルムアルデヒドの合計質量に対し0.1〜5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0029】
2,7−ジヒドロキシナフタレン化合物とホルムアルデヒドとの反応終了後は、中和或いは水洗処理を行い、前記化合物(α’)を含有するフェノール樹脂中間体を得る。必要に応じて精密濾過等の精製処理を行っても良い。
【0030】
続くフェノール樹脂中間体とエピハロヒドリンとの反応は公知慣用の方法にて行うことができ、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ触媒の存在下、20〜120℃程度の温度条件で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。前記アルカリ触媒の添加量は、前記フェノール樹脂中間体中のフェノール性水酸基1モルに対し0.9〜2.0モルの範囲であることが好ましい。また、エピハロヒドリンの仕込み量は、前記フェノール樹脂中間体中のフェノール性水酸基1モルに対し、2〜10モルの範囲であることが好ましい。該反応は必要に応じて有機溶剤中で行っても良い。反応終了後は、反応生成物を水洗後、加熱減圧条件下で未反応のエピハロヒドリンや有機溶剤等を除去し、前記エポキシ樹脂(a1)を得る。エポキシ樹脂(a1)のエポキシ当量は、150〜300g/当量の範囲であることが好ましい。
【0031】
前記エポキシ樹脂(a1)、(メタ)アクリル酸(a2)、(メタ)アクリル酸無水物(a3)及びジカルボン酸無水物(a4)を必須の原料として反応させる方法は特に限定されず、例えば、これら全てを一括で反応させる方法でも、順次反応させる方法でも、どちらでも良い。中でも、反応の制御が容易であることから、まず前記エポキシ樹脂(a1)、(メタ)アクリル酸(a2)、(メタ)アクリル酸無水物(a3)を反応させ、次いで、前記ジカルボン酸無水物(a4)を反応させる方法が好ましい。該反応は、例えば、前記エポキシ樹脂(a1)、(メタ)アクリル酸(a2)、及び(メタ)アクリル酸無水物(a3)を、有機溶媒中、エステル化反応触媒と、酸化防止剤、重合禁止剤との存在下で、100〜150℃の温度範囲で5〜12時間程度反応させた後、反応系中にジカルボン酸無水物(a4)を加え、90〜120℃の温度範囲で1〜5時間程度反応させる方法により行うことができる。
【0032】
前記エポキシ樹脂(a1)、(メタ)アクリル酸(a2)、及び(メタ)アクリル酸無水物(a3)の反応割合は、エポキシ樹脂(a1)中のエポキシ基1モルに対し、(メタ)アクリル酸(a2)と(メタ)アクリル酸無水物(a3)とを合計で0.9〜1.1モルの範囲で用いることが好ましい。
【0033】
また、得られる不飽和基含有アルカリ現像性樹脂の現像性と、硬化物における耐熱性及び誘電特性とのバランスに優れることから、(メタ)アクリル酸(a2)と(メタ)アクリル酸無水物(a3)とのモル比[(a2)/(a3)]の値が、0.3〜2.0の範囲であることがより好ましい。
【0034】
前記有機溶剤の選択は、各原料及び生成物である化合物(α)の溶解性や、反応温度条件により適宜選択されるが、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。有機溶剤の使用量は、反応効率が良好となることから、前記エポキシ樹脂(a1)、(メタ)アクリル酸(a2)、(メタ)アクリル酸無水物(a3)及びジカルボン酸無水物(a4)の合計質量に対し0.1〜5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0035】
前記エステル化反応触媒は、例えば、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。触媒の添加量は、前記エポキシ樹脂(a1)、(メタ)アクリル酸(a2)、(メタ)アクリル酸無水物(a3)及びジカルボン酸無水物(a4)の合計質量に対し0.05〜5質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0036】
前記ジカルボン酸無水物(a4)は、一分子中に二つのカルボキシ基を有する化合物の酸無水物であれば、いずれのものも利用できる。具体的にはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。ジカルボン酸無水物(D)はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、硬化物における耐熱性に優れる(メタ)アクリレート樹脂となる点では、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等、分子構造中に環状構造を有する化合物の酸無水物が好ましい。また、現像性に優れる(メタ)アクリレート樹脂となる点では、コハク酸無水物が好ましい。
【0037】
前記ジカルボン酸無水物(a4)の反応割合は、前記(メタ)アクリル酸(a2)1モルに対し、0.9〜1.1モルの範囲で用いることが好ましい。
【0038】
このようにして得られる不飽和基含有アルカリ現像性樹脂は、前記構造式(1)で表される分子構造を有する化合物(α)の他、下記構造式(4)
【0039】
【化6】
[式中Xは下記構造式(2−1)〜(2−3)
【0040】
【化7】
{式中R
2は水素原子又はメチル基であり、R
3は炭素原子数1〜10の炭化水素基である。}
の何れかで表される構造部位である。式中R
1はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子の何れかであり、nは1〜4の整数、mは1〜5の整数である。]
で表される化合物(β)や、オリゴマー成分(γ)を含有していても良い。なお、前記オリゴマー成分(γ)とは、不飽和基含有アルカリ現像性樹脂の製造工程で副生する、前記化合物(α)や(β)よりも大きい分子量を有する成分の総称であり、ジヒドロキシナフタレンノボラック構造を有するものや、エポキシの開環反応等により副生した成分、ジカルボン酸無水物(a4)により架橋した成分等を含む。
【0041】
不飽和基含有アルカリ現像性樹脂がこれらの成分を含有する場合の各成分の含有量は、不飽和基含有アルカリ現像性樹脂100質量部中、前記化合物(α)を5質量部以上含有することが好ましく、5〜20質量部の範囲で含有することがより好ましい。更に、不飽和基含有アルカリ現像性樹脂100質量部中、前記化合物(β)を15〜50質量部の範囲で含有することが好ましく、前記オリゴマー成分(γ)を30〜80質量部の範囲で含有することが好ましい。
【0042】
本発明の不飽和基含有アルカリ現像性樹脂の酸価は、耐熱性と現像性とのバランスに優れるものとなることから40〜90mgKOH/gの範囲であることが好ましい。なお、本願発明において不飽和基含有アルカリ現像性樹脂の酸価はJIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
【0043】
本発明の不飽和基含有アルカリ現像性樹脂は、分子構造中に重合性の(メタ)アクリロイル基を有することから、例えば、光重合開始剤を添加することにより光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物として利用することができる。
【0044】
前記光重合開始剤は、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。
【0045】
これら光重合開始剤の市販品は、例えば、「イルガキュア−184」、「イルガキュア−149」、「イルガキュア−261」、「イルガキュア−369」、「イルガキュア−500」、「イルガキュア−651」、「イルガキュア−754」、「イルガキュア−784」、「イルガキュア−819」、「イルガキュア−907」、「イルガキュア−1116」、「イルガキュア−1664」、「イルガキュア−1700」、「イルガキュア−1800」、「イルガキュア−1850」、「イルガキュア−2959」、「イルガキュア−4043」、「ダロキュア−1173」(チバスペシャルティーケミカルズ社製)、「ルシリンTPO」(ビーエーエスエフ社製)、「カヤキュア−DETX」、「カヤキュア−MBP」、「カヤキュア−DMBI」、「カヤキュア−EPA」、「カヤキュア−OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア−10」、「バイキュア−55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア−PDO」、「クオンタキュア−ITX」、「クオンタキュア−EPD」(ワードブレンキンソップ社製)等が挙げられる。
【0046】
前記光重合開始剤の添加量は、例えば、光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物100質量部に対し、1〜20質量部の範囲で用いる。
【0047】
本発明の光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物は、前記本発明の不飽和基含有アルカリ現像性樹脂以外の樹脂成分を含有しても良い。該樹脂成分は、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸、ジカルボン酸無水物、必要に応じて不飽和モノカルボン酸無水物等を反応させて得られるような、樹脂中にカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する樹脂、各種の(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
【0048】
本発明の光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物は、この他、無機微粒子やポリマー微粒子、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、難燃剤、保存安定化剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0049】
本発明の不飽和基含有アルカリ現像性樹脂は、高い現像性を有し、硬化物における耐熱性と誘電特性とに優れることから、ソルダーレジスト用途に好適に用いることができる。
【0050】
本発明のソルダーレジスト用樹脂材料は、例えば、前記不飽和基含有アルカリ現像性樹脂、光重合開始剤及び各種の添加剤に加え、硬化剤、硬化促進剤、有機溶媒等の各成分を含んでなる。
【0051】
前記硬化剤は、前記不飽和基含有アルカリ現像性樹脂中のカルボキシ基と反応し得る官能基を有するものであれば特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。ここで用いるエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらのエポキシ樹脂の中でも、硬化物における耐熱性に優れることから、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、軟化点が50〜120℃の範囲であるものが特に好ましい。
【0052】
前記硬化促進剤は、前記硬化剤の硬化反応を促進するものであり、前記硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合には、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。硬化促進剤の添加量は、例えば、前記硬化剤100質量部に対し1〜10質量部の範囲で用いる。
【0053】
前記有機溶媒は、前記不飽和基含有アルカリ現像性樹脂や硬化剤等の各種成分を溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0054】
本発明のソルダーレジスト用樹脂材料を用いてレジスト部材を得る方法は、例えば、前記ソルダーレジスト用樹脂材料を基材上に塗布し、60〜100℃程度の温度範囲で有機溶剤を揮発乾燥させた後、所望のパターンが形成されたフォトマスクを通して紫外線や電子線等にて露光させ、アルカリ水溶液にて未露光部を現像し、更に140〜180℃程度の温度範囲で加熱硬化させる方法が挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例および比較例をもって本発明をより詳しく説明する。
なお、実施例で得た不飽和基含有アルカリ現像性樹脂のGPCチャートは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)にて測定した。
【0056】
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G5000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0057】
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0058】
本願実施例において不飽和基含有アルカリ現像性樹脂の酸価はJIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定した。
【0059】
製造例1 エポキシ樹脂(a1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレンを240質量部(1.50モル)、37質量%ホルムアルデヒド水溶液85質量部(1.05モル)、イソプロピルアルコール376質量部、48%水酸化カリウム水溶液88質量部(0.75モル)を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、75℃に昇温し2時間攪拌した。反応終了後、第1リン酸ソーダ108質量部を添加して中和した後、イソプロピルアルコールを減圧下除去し、メチルイソブチルケトン480質量部を加えた。得られた有機層を水200質量部で3回水洗を繰り返した後に、メチルイソブチルケトンを加熱減圧下に除去して水酸基当量は84g/当量のフェノール樹脂中間体245質量部を得た。次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られたフェノール樹脂中間体84質量部(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン463質量部(5.0モル)、n−ブタノール53質量部を仕込み溶解させた。50℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部(1.10モル)を3時間要して添加し、その後更に50℃で1時間反応させた。反応終了後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。得られた粗生成物にメチルイソブチルケトン300質量部とn−ブタノール50質量部とを加え溶解させた。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水100質量部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のエポキシ樹脂(a1)126質量部を得た。エポキシ樹脂(a1)の軟化点は95℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は9.0dPa・s、エポキシ当量は172g/当量であった。C13NMRチャートにて203ppm付近にカルボニル基の存在を示すピークを確認した。また、MSスペクトルにて下記構造式で表される化合物の存在を示す512のピークを確認した。
【0060】
【化8】
【0061】
実施例1 不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(1)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート144質量部を入れ、先で得たエポキシ樹脂(a1)344質量部を溶解し、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン1.4質量部、熱重合禁止剤としてメトキノン0.3質量部加えた後、アクリル酸75質量部、無水メタクリル酸(純度94質量%)157質量部、トリフェニルフォスフィン2.9質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間エステル化反応を行なった。その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート171質量部、テトラヒドロ無水フタル酸158質量部を加え110℃で5時間反応し、不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(1)溶液(固形分70質量%)を得た。不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(1)の固形分酸価は80mgKOH/gであった。不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(1)のGPCチャート図を
図1に示す。
【0062】
実施例2 不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(2)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート149質量部を入れ、先で得たエポキシ樹脂(a1)344質量部を溶解し、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン1.5質量部、熱重合禁止剤としてメトキノン0.3質量部加えた後、アクリル酸59質量部、無水メタクリル酸(純度94質量%)193質量部、トリフェニルフォスフィン3.0質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間エステル化反応を行なった。その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート160質量部、テトラヒドロ無水フタル酸125質量部を加え110℃で5時間反応し、不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(2)溶液(固形分70質量%)を得た。不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(2)の固形分酸価は65mgKOH/gであった。不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(2)のGPCチャート図を
図2に示す。
【0063】
実施例3 不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(3)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート154質量部を入れ、先で得たエポキシ樹脂(a1)344質量部を溶解し、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン1.5質量部、熱重合禁止剤としてメトキノン0.3質量部加えた後、アクリル酸45質量部、無水メタクリル酸(純度94質量%)226質量部、トリフェニルフォスフィン3.1質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間エステル化反応を行なった。その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート150質量部、テトラヒドロ無水フタル酸94質量部を加え110℃で5時間反応し、不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(3)溶液(固形分70質量%)を得た。不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(3)の固形分酸価は50mgKOH/gであった。
【0064】
実施例4 不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(4)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート146質量部を入れ、先で得たエポキシ樹脂(a1)344質量部を溶解し、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン1.5質量部、熱重合禁止剤としてメトキノン0.3質量部加えた後、アクリル酸69質量部、無水メタクリル酸(純度94質量%)170質量部、トリフェニルフォスフィン2.9質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間エステル化反応を行なった。その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート145質量部、無水コハク酸96質量部を加え110℃で5時間反応し、不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(4)溶液(固形分70質量%)を得た。不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(4)の固形分酸価は80mgKOH/gであった。
【0065】
実施例5 不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(5)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート150質量部を入れ、先で得たエポキシ樹脂(a1)344質量部を溶解し、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン1.5質量部、熱重合禁止剤としてメトキノン0.3質量部加えた後、アクリル酸56質量部、無水メタクリル酸(純度94質量%)200質量部、トリフェニルフォスフィン3.0質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間エステル化反応を行なった。その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート141質量部、無水コハク酸78質量部を加え110℃で5時間反応し、不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(5)溶液(固形分70質量%)を得た。不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(5)の固形分酸価は65mgKOH/gであった。不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(5)のGPCチャート図を
図3に示す。
【0066】
実施例6 不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(6)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート154質量部を入れ、先で得たエポキシ樹脂(a1)344質量部を溶解し、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン1.5質量部、熱重合禁止剤としてメトキノン0.3質量部加えた後、アクリル酸43質量部、無水メタクリル酸(純度94質量%)229質量部、トリフェニルフォスフィン3.0質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間エステル化反応を行なった。その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート136質量部、無水コハク酸60質量部を加え110℃で5時間反応し、不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(5)溶液(固形分70質量%)を得た。不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(5)の固形分酸価は50mgKOH/gであった。
【0067】
比較製造例1 不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(1’)の製造
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート157質量部を入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製『EPICLON N−695』エポキシ当量215g/当量)430質量部を溶解し、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン1.6質量部、熱重合禁止剤としてハイドロキノン0.3質量部を加えた後、アクリル酸101質量部、無水メタクリル酸(純度94質量%)98質量部、トリフェニルフォスフィン3.1質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で8時間反応させた。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート280質量部、テトラヒドロ無水フタル酸182質量部を加え110℃で2.5時間反応させ、不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(1’)溶液(固形分65質量%)を得た。不飽和基含有アルカリ現像性樹脂(1’)の固形分酸価は85mgKOH/gであった。
【0068】
実施例7〜12及び比較例1
下記要領で光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物を調整し、硬化物の耐熱性と、光感度、乾燥管理幅を評価した。結果を表1に示す。
【0069】
◆耐熱性の評価
・光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物の調整
先で得た不飽和基含有アルカリ現像性樹脂溶液100質量部、硬化剤としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製『EPICLON N−680』)24質量部、光重合開始剤として2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製『イルガキュア907』)5.0質量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5質量部、有機溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート13質量部を配合し光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物を得た。
【0070】
・硬化物の作成
ガラス基材上に先で得た光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物を152μmのアプリケーターで塗布し、80℃で30分間乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて1000mJ/cm
2の紫外線を照射した後、200℃で1時間加熱して、硬化物をガラス基材から剥離し、硬化物を得た。
【0071】
・ガラス転移温度(Tg)の測定
硬化物から6mm×35mmの試験片を切り出し、粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」、引張り法:周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
【0072】
◆光感度、乾燥管理幅の評価
・光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物の調整
先で得た不飽和基含有アルカリ現像性樹脂溶液、硬化剤としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製『EPICLON N−680』)24質量部、光重合開始剤として2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製『イルガキュア907』)5.0質量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5質量部、有機溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート13質量部、顔料としてフタロシアニングリーン0.65質量部を配合し、ロールミルにより混錬して光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物を得た。
【0073】
・光感度の測定
ガラス基材の上に先で得た光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物を50μmのアプリケーターで塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、コダック社製のステップタブレットNo.2を介し、メタルハライドランプを用いて1000mJ/cm
2の紫外線を照射した。これを1質量%の炭酸ナトリウム水溶液で180秒現像し、残存した段数で評価した。残存段数が多いほど光感度が高い。
【0074】
・乾燥管理幅の測定
ガラス基材の上に先で得た光硬化型アルカリ現像性樹脂組成物を50μmのアプリケーターで塗布し、80℃での乾燥時間がそれぞれ30分、40分、50分、60分であるサンプルを作成した。これらを1質量%の炭酸ナトリウム水溶液で180秒現像し、残渣が残らなかったサンプルの80℃乾燥時間を乾燥管理幅として評価した。乾燥管理幅が長いほどアルカリ現像性に優れる。
【0075】
【表1】