(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0014】
本実施形態のワニスの水洗方法は、両親媒性化合物を含有するワニスを水の中に添加して攪拌する工程と、攪拌後の混合溶液を水層と油層とに分離して水層を除去する、又は、水層と乳化層と油層とに分離して水層及び乳化層を除去する工程と、を有する。
【0015】
[両親媒性化合物]
本実施形態の両親媒性化合物とは、分子内に疎水性構造と親水性構造とを併せ持つ化合物である。両親媒性化合物としては、例えば、イミド化合物、アミド化合物、マレイミド化合物、エステル化合物、フェノール化合物、アクリル化合物、ウレタン化合物等が挙げられる。中でも、(a)マレイミド基、(b)少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基、及び、(c)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物(以下、「(A1)成分」ということがある)は、当該化合物を含むワニスに水を添加すると乳化しやすく、分離が困難であるため、本実施形態の水洗方法により水洗することが好ましい。更に、下記一般式(1)で表される少なくとも2つのイミド結合を有するマレイミド化合物(以下、「(A2)成分」ということがある)は、疎水性構造と親水性構造の繰り返し単位から構成されるため、当該化合物を含むワニスに水を添加すると乳化しやすく、分離が困難であるため、本実施形態の水洗方法により水洗することが好ましい。
【化2】
[式(1)中、R及びQは各々独立に、置換又は非置換の炭素数1〜100の脂肪族基、置換又は非置換の芳香族基、置換又は非置換のヘテロ芳香族基、或いは、置換又は非置換のケイ素数1〜100のシロキサン部位を示し、nは1〜100の整数を示す。]
【0016】
以下、(A1)成分について説明する。なお、(A1)成分を構成する(a)マレイミド基を構造(a)、(b)少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基を構造(b)、(c)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を構造(c)ということがある。
【0017】
(a)マレイミド基は特に限定されず、一般的なマレイミド基である。(a)マレイミド基は芳香環に結合していても、脂肪族鎖に結合していてもよいが、脂肪族鎖に結合していてもよい。
【0018】
(b)少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基としては特に限定されないが、例えば、下記式(I)で表される基が挙げられる。
【0020】
式(I)中、R
1は4価の有機基を示す。R
1は4価の有機基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数1〜100の炭化水素基であってもよく、炭素数2〜50の炭化水素基であってもよく、炭素数4〜30の炭化水素基であってもよい。
【0021】
R
1は、置換又は非置換のシロキサン部位であってもよい。シロキサン部位としては、例えば、ジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサン等に由来する構造が挙げられる。
【0022】
R
1が置換されている場合、置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロ環基、置換ヘテロ環基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、アミド基、−C(O)H、−NR
xC(O)−N(R
x)
2、−OC(O)−N(R
x)
2、アシル基、オキシアシル基、カルボキシル基、カルバメート基、スルホンアミド基等が挙げられる。ここで、R
xは水素原子又はアルキル基を示す。これらの置換基は目的、用途等に合わせて、1種類又は2種類以上を選択できる。
【0023】
R
1としては、例えば、1分子中に2個以上の無水物環を有する酸無水物の4価の残基、すなわち、酸無水物から酸無水物基(−C(=O)OC(=O)−)を2個除いた4価の基が好ましい。酸無水物としては、後述するような化合物が例示できる。
【0024】
R
1は芳香族であってもよく、無水ピロメリット酸から2つの酸無水物基を取り除いた基であってもよい。すなわち、構造(b)は下記式(III)で表される基であってもよい。
【0026】
構造(b)は、(A1)成分中に複数存在してもよい。その場合、構造(b)は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。(A1)成分中の構造(b)の数は、2〜40であってもよく、2〜20であってもよく、2〜10であってもよい。
【0027】
構造(b)は、下記式(IV)又は下記式(V)で表される基であってもよい。
【0030】
構造(c)は特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。また、飽和又は不飽和の2価の炭化水素基の炭素数は、8〜100であってもよい。構造(c)は、炭素数8〜100の分岐を有していてもよいアルキレン基であってもよく、炭素数10〜70の分岐を有していてもよいアルキレン基であってもよく、炭素数15〜50の分岐を有していてもよいアルキレン基であってもよい。
【0031】
構造(c)としては、例えば、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基等のアルキレン基;ベンジレン基、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基;フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、ベンジルプロピレン基、ナフチレンメチレン基、ナフチレンエチレン基等のアリーレンアルキレン基;フェニレンジメチレン基、フェニレンジエチレン基等のアリーレンジアルキレン基などが挙げられる。
【0032】
構造(c)は、下記式(II)で表される基であってもよい。
【0034】
式(II)中、R
2及びR
3は各々独立に炭素数4〜50のアルキレン基を示す。R
2及びR
3は各々独立に、炭素数5〜25のアルキレン基であってもよく、炭素数6〜10のアルキレン基であってもよく、炭素数7〜10のアルキレン基であってもよい。
【0035】
式(II)中、R
4は炭素数4〜50のアルキル基を示す。R
4は炭素数5〜25のアルキル基であってもよく、炭素数6〜10のアルキル基であってもよく、炭素数7〜10のアルキル基であってもよい。
【0036】
式(II)中、R
5は炭素数2〜50のアルキル基を示す。R
5は炭素数3〜25のアルキル基であってもよく、炭素数4〜10のアルキル基であってもよく、炭素数5〜8のアルキル基であってもよい。
【0037】
構造(c)は、(A1)成分中に複数存在してもよい。その場合、構造(c)はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、(A1)成分中に2〜40の構造(c)が存在してもよく、2〜20の構造(c)が存在してもよく、2〜10の構造(c)が存在してもよい。
【0038】
次に、(A2)成分について説明する。(A2)成分は上記一般式(1)で表されるマレイミド化合物であり、分子内に少なくとも2つのイミド結合を有する。式(1)中、R及びQは各々独立に、置換又は非置換の炭素数1〜100の脂肪族基、置換又は非置換の芳香族基、置換又は非置換のヘテロ芳香族基、或いは、置換又は非置換のケイ素数1〜100のシロキサン部位を示すが、Rは上述の構造(c)と同じものであってもよく、Qは上述のR
1と同じものであってもよい。また、nは1〜10の整数であってもよい。
【0039】
(A1)成分及び(A2)成分としてより具体的には、下記式(XII−1)〜(XII−3)で表される化合物が挙げられる。式(XII−1)〜(XII−3)において、nは1〜10の整数を示す。
【0041】
(A1)成分及び(A2)成分の分子量は特に限定されない。(A1)成分及び(A2)成分の重量平均分子量(Mw)の下限値は、500、1000、1500又は1700であってもよい。また、(A1)成分及び(A2)成分のMwの上限値は、10000、9000、7000又は5000であってもよい。(A1)成分及び(A2)成分のMwは、500〜10000であってもよく、1000〜9000であってもよく、1500〜9000であってもよく、1500〜7000であってもよく、1700〜5000であってもよい。
【0042】
(A1)成分及び(A2)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0043】
なお、GPCの測定条件は下記のとおりである。
ポンプ:L−6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
検出器:L−3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラムオーブン:L−655A−52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
ガードカラム及びカラム:TSK Guardcolumn HHR−L+TSKgel G4000HHR+TSKgel G2000HHR[すべて東ソー株式会社製、商品名]
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
【0044】
(A1)成分及び(A2)成分を製造する方法は限定されない。(A1)成分及び(A2)成分は、例えば、酸無水物とジアミンとを反応させてアミン末端化合物を合成した後、該アミン末端化合物を過剰の無水マレイン酸と反応させることで作製してもよい。
【0045】
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの酸無水物は目的、用途等に合わせて、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。なお、前述のとおり、上記式(I)のR
1として、上記に挙げられるような酸無水物に由来する4価の有機基を用いることができる。酸無水物は、無水ピロメリット酸であってもよい。
【0046】
ジアミンとしては、例えば、ダイマージアミン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、ポリオキシアルキレンジアミン、[3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)]シクロヘキセン等が挙げられる。これらは目的、用途等に合わせて、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
(A1)成分及び(A2)成分の合成は、通常、溶媒中で触媒として酸を用いて行われる。溶媒としては、後述するワニス溶媒と同様の溶媒が用いられる。酸としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、10−カンファースルホン酸、蟻酸、酢酸、無水酢酸、マレイン酸、塩酸等が挙げられる。これらの中でも、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、10−カンファースルホン酸、塩酸等の強酸が好適に用いられる。
【0048】
触媒として用いられる酸(酸化合物)は、合成終了後、洗浄により除去する必要がある。本実施形態の水洗方法によれば、合成終了後に残存する上記酸を十分に且つ効率的に除去することができる。また、(A1)成分及び(A2)成分の合成時に過剰な無水マレイン酸を使用するが、本実施形態の水洗方法によれば、反応余りの無水マレイン酸(マレイン酸化合物)を十分に且つ効率的に除去することができる。
【0049】
[ワニス溶媒]
本実施形態の水洗方法において、両親媒性化合物を含有するワニスに使用する溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系溶媒、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の疎水性ケトン類、及び、原油蒸留時に得られる石油系溶媒などが挙げられる。これらの中でも、分離時間、及び脱溶の容易さの観点から、トルエン、キシレンを使用することが好ましい。
【0050】
[ワニス濃度]
本実施形態の水洗方法において、両親媒性化合物を含有するワニス中の両親媒性化合物の濃度は、ワニス全量を基準として5〜90質量%であることが好ましい。ワニス濃度が5質量%以上であると、溶媒の必要量が大きくなり過ぎず、溶媒コストを抑制することができる。ワニス濃度が90質量%以下であると、酸化合物及びイオン性不純物の除去効率が向上する傾向がある。酸化合物及びイオン性不純物の除去効率、及びコストの観点から、ワニス濃度は、20〜80質量%であることがより好ましく、30〜70質量%であることが更に好ましい。
【0051】
ワニス中の両親媒性化合物の濃度は、加熱等によりワニスから溶媒を除去する前後の質量を比較することで算出することができる。例えば、両親媒性化合物を含有するワニス1gを重さZ
1gのアルミシャーレにとり、所定の温度で所定の時間加熱後のアルミシャーレ(残存した両親媒性化合物を含む)の重さがZ
2gであったとき、ワニスの濃度は下記の式で求められる。
ワニス濃度=(Z
1+1−Z
2)×100 (質量%)
ここで、加熱温度及び加熱時間は、両親媒性化合物を残存させたまま溶媒を十分に除去できる温度及び時間であればよい。
【0052】
[ワニスのイオン性不純物濃度]
本実施形態の水洗方法において、洗浄前のワニスのイオン性不純物濃度は、1000質量ppmを上回っていてもよい。1000質量ppmを上回るイオン性不純物を含有するワニスを本実施形態の水洗方法により水洗することで、イオン性不純物濃度を大幅に低減することができる。ここで、イオン性不純物としては、両親媒性化合物の合成時に使用される触媒に由来するイオンが挙げられ、例えば、硫黄(S)イオン、フッ素(F)イオン、塩素(Cl)イオン等が挙げられる。また、ワニスの洗浄に食塩水等のイオン性水溶液を用いた場合、洗浄後のワニスには、ナトリウム(Na)イオン、塩素(Cl)イオン等のイオン性水溶液に由来するイオン性不純物が混入しやすい。本実施形態の水洗方法においては、ワニスの洗浄に水を用いているため、イオン性不純物の混入を抑制でき、洗浄後のワニスのイオン性不純物濃度を十分に低減することができる。
【0053】
洗浄後のワニスのイオン性不純物濃度は、50質量ppm以下であることが好ましく、30質量ppm以下であることがより好ましく、10質量ppm未満であることが特に好ましい。洗浄後のワニスのイオン性不純物濃度が50質量ppm以下であることで、当該ワニスを層間絶縁材料に用いた場合の絶縁信頼性の低下を抑制することができる。
【0054】
ワニスのイオン性不純物濃度は、ワニスを脱溶して、得られた両親媒性化合物を酸分解(マイクロウェーブ法)により前処理し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)にて、両親媒性化合物中のイオン濃度を測定することで求めることができる。
【0055】
[ワニスと水の使用量]
本実施形態の水洗方法において、両親媒性化合物を含有するワニスの量をA(単位:質量部)、水の量をB(単位:質量部)としたとき、0.1≦A/B≦1.0を満たすことが好ましい。A/B≦1.0とすることで、ワニスを添加した水が乳化し過ぎることを防ぎ、混合溶液を油層、乳化層及び水層、又は、油層及び水層に分離するまでに要する時間を短縮(例えば静置時間を3時間以下に短縮)することができる。そのため、製造コストを抑制し、また収率も向上させることができる。A/B≧0.1とすることで、水の必要量を抑制し、廃水コストを低減することができる。分離時間、及び廃水コストの観点から、A/Bは、0.3≦A/B≦0.8を満たすことがより好ましく、0.5≦A/B≦0.7を満たすことが更に好ましい。
【0056】
[水の種類]
本実施形態の水洗方法に使用する水としては特に限定されないが、例えば、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水、水道水、工業用水等を用いることができる。これらの中でも、洗浄後のワニスのイオン性不純物濃度をより低減する観点から、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水を用いることが好ましい。
【0057】
また、本実施形態の水洗方法に使用する水のイオン性不純物濃度は、300質量ppm以下であることが好ましく、100質量ppm以下であることがより好ましい。イオン性不純物濃度が上記上限値以下である水を用いることで、洗浄後のワニスのイオン性不純物濃度をより低減することができる。水のイオン性不純物濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)にて、水中のイオン濃度を測定することで求めることができる。
【0058】
[水の温度]
本実施形態の水洗方法において、ワニスを添加する際の水の温度は、50〜100℃であることが好ましい。水の温度が50℃以上であると、酸化合物及びイオン性不純物の除去効率が向上し、収率も向上する傾向がある。酸化合物及びイオン性不純物の除去効率の観点から、水の温度は70〜100℃であることがより好ましい。
【0059】
水の温度は、ワニスを添加した後も上記範囲内の温度を維持することが好ましい。すなわち、ワニスを水の中に添加後、上記範囲内の温度を維持して混合溶液を攪拌することが好ましい。混合溶液を静置して、油層、乳化層及び水層、又は、油層及び水層に分離する際には、混合溶液の温度は50〜100℃とすることが好ましい。
【0060】
[ワニスと水の添加順序]
本実施形態の水洗方法は、水の中に、両親媒性化合物を含有するワニスを添加することで実施する。ワニスを添加する際に、水は攪拌していることが好ましい。攪拌中のワニスの中に水を添加してしまうと、水の全て又は大部分が乳化してしまい、水とワニスとの混合溶液を油層、乳化層及び水層に分離するまでに長時間(例えば3時間を超える静置時間)を要してしまうため、製造コストが上がり、また収率も低下する恐れがある。これに対し、攪拌中の水の中にワニスを添加した場合、水の乳化を大幅に抑制することができ、水とワニスとの混合溶液を短時間で油層、乳化層及び水層の3層、又は、油層及び水層の2層に分離することができる。
【0061】
[ワニスと水の混合攪拌時間]
本実施形態の水洗方法において、水の中に、両親媒性化合物を含有するワニスを添加した後、酸化合物及びイオン性不純物の水層及び/又は乳化層への移行を促進するため、5分〜2時間攪拌することが好ましい。攪拌時間を5分以上とすることで、酸化合物及びイオン性不純物の除去効率を向上させることができる。攪拌時間を2時間以下とすることで、工程時間が長くなることを防ぎ、製造コストを低減することができる。酸化合物及びイオン性不純物の除去効率、及びコストの観点から、攪拌時間は20分〜1時間であることがより好ましい。
【0062】
[攪拌条件]
本実施形態の水洗方法において、ワニスを添加する前の水の攪拌、及び、添加後の水とワニスとの混合溶液の攪拌は、平羽根タービン、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼等を用いて行うことができる。攪拌は、回転数10rpm以上の条件で行うことが好ましい。回転数を10rpm以上とすることで、混合溶液を油層、乳化層及び水層、又は、油層及び水層に分離するまでに要する時間を短縮(例えば静置時間を3時間以下に短縮)することができる。そのため、製造コストを抑制し、また、収率を向上させることができる。分離時間、及び廃水コストの観点から、回転数20rpm以上の条件で行うことがより好ましい。
【0063】
[ワニスと水の混合溶液の静置時間]
本実施形態の水洗方法では、両親媒性化合物を含有するワニスと水とを攪拌した後、混合溶液を静置して、水層、乳化層及び油層の3層、又は、水層及び油層の2層に分離させる必要がある。静置時間は5分〜2時間であることが好ましい。静置時間を5分以上とすることで、十分に分離させることができ、収率の低下を抑制することができる。静置時間を2時間以下とすることで、工程時間が長くなることを防ぎ、製造コストを低減することができる。収率、及びコストの観点から、静置時間は20分〜1時間であることがより好ましい。
【0064】
[酸化合物及びイオン性不純物の除去]
水とワニスの混合溶液を静置して水層、乳化層及び油層の3層、又は、水層及び油層の2層に分離させた後、3層に分離した場合は水層及び乳化層を、2層に分離した場合は水層を除去することで、ワニス中の酸化合物及びイオン性不純物を除去することができる。分離した水層及び乳化層、又は水層は、容器下に抜き出し弁が付いている場合は、そこから除去することができる。また、抜き出し弁が付いていない場合は、容器底から、ポンプにより、水層及び乳化層、又は水層を汲み上げることにより、それらを除去することができる。
【0065】
[洗浄回数]
両親媒性化合物を含有するワニスを水の中に添加して攪拌する工程、並びに、攪拌後の混合溶液を水層と油層とに分離して水層を除去する、又は、水層と乳化層と油層とに分離して水層及び乳化層を除去する工程を含む一連の洗浄工程は、複数回繰り返し行うことができる。一連の洗浄工程の繰り返し回数(洗浄回数)は、2〜5回であることが好ましく、2〜3回であることがより好ましい。洗浄回数が2回以上であることで、酸化合物及びイオン性不純物の除去効率を向上させることができる。洗浄回数が5回以下であることで、収率の低下を抑制し、またコストを低減することができる。
【0066】
一連の洗浄工程を繰り返し行う場合、各洗浄工程における上記A/Bの値は、0.1≦A/B≦1.0を常に満たすことが好ましく、0.3≦A/B≦0.8を常に満たすことがより好ましく、0.5≦A/B≦0.7を常に満たすことが更に好ましい。上記条件を満たすように、各洗浄工程において毎回濃度調整を行うことが好ましい。
【0067】
[洗浄総時間]
本実施形態の水洗方法において、全ての洗浄工程に要する時間を合計した洗浄総時間は、1〜10時間であることが好ましく、1〜5時間であることがより好ましい。本実施形態の水洗方法によれば、洗浄総時間を短縮しつつ、十分な酸化合物及びイオン性不純物の除去効率を得ることができる。
【0068】
[樹脂酸価]
本実施形態の水洗方法により洗浄した後の両親媒性化合物は、樹脂酸価が0〜10mgKOH/gとなっていることが好ましく、0〜8mgKOH/gとなっていることがより好ましい。樹脂酸価が10mgKOH/g以下であることで、酸化合物が十分に除去されているといえる。
【0069】
樹脂酸価は、洗浄後のワニスにフェノールフタレイン溶液を加え、水酸化カリウムエタノール溶液を、溶液が赤くなるまで滴下した時の滴下量から求めることができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1〜4)
還流冷却器、水分捕捉器付きの5Lフラスコに、トルエン(和光純薬(株)製)2280.0g、Priamine 1075(商品名、クローダジャパン(株)製、ダイマージアミン)516.6gを加え、攪拌羽根で攪拌させた。そこにメタンスルホン酸46.3g(和光純薬(株)製)を少しずつ添加した。オイルバスを使用して、フラスコ内を50℃に加熱した後、無水ピロメリット酸(和光純薬(株)製)136.6gを添加した。フラスコ内を115℃に加熱し、トルエンを10時間還流させた。イミド基の脱水閉環反応により、水22.6gが回収された。フラスコ内温度を40℃まで空冷し、無水マレイン酸(和光純薬(株)製)79.4gを添加した。フラスコ内を115℃に加熱し、トルエンを20時間還流させた。マレイミド基の脱水閉環反応により、水12.1gが回収された。フラスコ内温度を40℃まで空冷し、両親媒性化合物として下記一般式(2)で表される少なくとも2つのイミド結合を有するマレイミド化合物を含有するワニスを得た。ワニス中のイオン性不純物(Sイオン)の含有量は1000質量ppm(検出上限)を超えていた。
【化11】
[式中、nは1〜10の整数を示す。]
【0072】
合成終了後のワニスをトルエンで希釈又は還流により濃縮し、上記マレイミド化合物の濃度を30質量%又は70質量%に調整した。濃度調整後のワニス1kgを、回転数35rpmで攪拌中の純水(1.5kg又は2.0kg、温度:70℃又は90℃)の中に添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を0.2〜0.4時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。3層の内、下層及び中間層である水層及び乳化層を除去し、油層(上層)であるトルエン溶液のみを回収した。その後、得られたトルエン溶液0.97kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%又は70.0質量%に調整したもの)を、回転数35rpmで攪拌中の純水(1.5kg又は2.0kg、温度:70℃又は90℃)の中に添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を0.2〜0.4時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。水層及び乳化層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。再び、得られたトルエン溶液0.95kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%又は70.0質量%に調整したもの)を、回転数35rpmで攪拌中の純水(1.5kg又は2.0kg、温度:70℃又は90℃)の中に添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を0.2〜0.4時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。水層及び乳化層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。これにより、洗浄されたワニスを得た。洗浄回数は合計3回であった。各実施例の洗浄時の具体的条件は表1に示す。
【0073】
(実施例5)
還流冷却器、水分捕捉器付きの5Lフラスコに、トルエン(和光純薬(株)製)2280.0g、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジアミン(Boc Sciences社製)609.5gを加え、攪拌羽根で攪拌させた。そこにメタンスルホン酸50.0g(和光純薬(株)製)を少しずつ添加した。フラスコ内温度を40℃まで空冷し、無水マレイン酸(和光純薬(株)製)906.1gを添加した。フラスコ内を115℃に加熱し、トルエンを20時間還流させた。マレイミド基の脱水閉環反応により、水138.6gが回収された。フラスコ内温度を40℃まで空冷し、両親媒性化合物として下記一般式(3)で表される脂肪族マレイミド化合物を含有するワニスを得た。ワニス中のイオン性不純物(Sイオン)の含有量は1000質量ppm(検出上限)を超えていた。
【化12】
【0074】
合成終了後のワニスをトルエンで希釈し、上記マレイミド化合物の濃度を30質量%に調整した。濃度調整後のワニス1kgを、回転数35rpmで攪拌中の純水(2.0kg、温度:90℃)の中に添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を0.2時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。3層の内、下層及び中間層である水層及び乳化層を除去し、油層(上層)であるトルエン溶液のみを回収した。その後、得られたトルエン溶液0.98kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%に調整したもの)を、回転数35rpmで攪拌中の純水(1.96kg、温度:90℃)の中に添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を0.2時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。水層及び乳化層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。再び、得られたトルエン溶液0.96kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%に調整したもの)を、回転数35rpmで攪拌中の純水(1.92kg、温度:90℃)の中に添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を0.2時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。水層及び乳化層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。これにより、洗浄されたワニスを得た。洗浄回数は合計3回であった。
【0075】
(比較例1)
実施例1〜4と同様の方法で、上記一般式(2)で表される少なくとも2つのイミド結合を有するマレイミド化合物を含有するワニスを得た。このワニスをトルエンで希釈し、上記マレイミド化合物の濃度を30質量%に調整した。濃度調整後のワニス1kgを、120gのシリカゲルを充填したガラスフリット漏斗でろ過した。これにより、洗浄されたワニスを得た。溶液のろ過が完全に完了するまでに24時間を要した。
【0076】
(比較例2)
実施例1〜4と同様の方法で、上記一般式(2)で表される少なくとも2つのイミド結合を有するマレイミド化合物を含有するワニスを得た。このワニスをトルエンで希釈し、上記マレイミド化合物の濃度を30質量%に調整した。回転数35rpmで攪拌中のワニス1kg(温度:90℃)に、飽和食塩水2.0kg(温度:90℃)を添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を0.2時間静置させ、水層及び油層の2層に分離させた。2層の内、下層の水層を除去し、油層(上層)であるトルエン溶液のみを回収した。その後、得られたトルエン溶液0.97kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%に調整したもの)を回転数35rpmで攪拌させ、そこに90℃の飽和食塩水2.0kg(温度:90℃)を添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を0.2時間静置させ、水層及び油層の2層に分離させた。2層の内、下層の水層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。再び、得られたトルエン溶液0.97kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%に調整したもの)を回転数35rpmで攪拌させ、そこに90℃の飽和食塩水2.0kg(温度:90℃)を添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を0.2時間静置させ、水層及び油層の2層に分離させた。2層の内、下層の水層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。これにより、洗浄されたワニスを得た。洗浄回数は合計3回であった。
【0077】
(比較例3)
実施例1〜4と同様の方法で、上記一般式(2)で表される少なくとも2つのイミド結合を有するマレイミド化合物を含有するワニスを得た。このワニスをトルエンで希釈し、上記マレイミド化合物の濃度を30質量%に調整した。濃度調整後のワニス1kgを、回転数35rpmで攪拌中のエタノール水溶液2.0kg(濃度:30質量%、温度:80℃)の中に添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を1時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。3層の内、下層及び中間層である水層及び乳化層を除去し、油層(上層)であるトルエン溶液のみを回収した。その後、得られたトルエン溶液0.89kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%に調整したもの)を、回転数35rpmで攪拌中のエタノール水溶液2.0kg(濃度:30質量%、温度:80℃)の中に添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を1時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。3層の内、下層及び中間層である水層及び乳化層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。再び、得られたトルエン溶液0.77kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%に調整したもの)を、回転数35rpmで攪拌中のエタノール水溶液2.0kg(濃度:30質量%、温度:80℃)の中に添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を1時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。3層の内、下層及び中間層である水層及び乳化層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。これにより、洗浄されたワニスを得た。洗浄回数は合計3回であった。
【0078】
(比較例4)
実施例1〜4と同様の方法で、上記一般式(2)で表される少なくとも2つのイミド結合を有するマレイミド化合物を含有するワニスを得た。このワニスをトルエンで希釈し、上記マレイミド化合物の濃度を30質量%に調整した。回転数35rpmで攪拌中のワニス1kgに、90℃の純水2.0kgを添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を12時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。3層の内、下層及び中間層である水層及び乳化層を除去し、油層(上層)であるトルエン溶液のみを回収した。その後、得られたトルエン溶液0.88kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%に調整したもの)を回転数35rpmで攪拌させ、そこに90℃の純水2.0kgを添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を12時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。3層の内、下層及び中間層である水層及び乳化層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。再び、得られたトルエン溶液0.76kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%に調整したもの)を回転数35rpmで攪拌させ、そこに90℃の純水2.0kgを添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を12時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。3層の内、下層及び中間層である水層及び乳化層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。これにより、洗浄されたワニスを得た。洗浄回数は合計3回であった。
【0079】
(比較例5)
実施例5と同様の方法で、上記一般式(3)で表される脂肪族マレイミド化合物を含有するワニスを得た。このワニスをトルエンで希釈し、上記マレイミド化合物の濃度を30質量%に調整した。回転数35rpmで攪拌中のワニス1kgに、90℃の純水2.0kgを添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま、0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を12時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。3層の内、下層及び中間層である水層及び乳化層を除去し、油層(上層)であるトルエン溶液のみを回収した。その後、得られたトルエン溶液0.88kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%に調整したもの)を回転数35rpmで攪拌させ、そこに90℃の純水2.0kgを添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を12時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。水層及び乳化層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。再び、得られたトルエン溶液0.76kg(上記マレイミド化合物の濃度を30.0質量%に調整したもの)を回転数35rpmで攪拌させ、そこに90℃の純水2.0kgを添加し、攪拌回転数及び溶液温度を維持したまま0.3時間攪拌した。その後、溶液温度を維持したまま、混合溶液を12時間静置させ、水層、乳化層及び油層の3層に分離させた。水層及び乳化層を除去し、油層であるトルエン溶液のみを回収した。これにより、洗浄されたワニスを得た。洗浄回数は合計3回であった。
【0080】
<評価方法>
(ワニスの濃度測定方法)
両親媒性化合物を含有するワニス1gを重さZ
1gのアルミシャーレにとり、155℃で1時間加熱後のアルミシャーレ(残存した両親媒性化合物を含む)の重さがZ
2gであったとき、ワニスの濃度は下記の式で求められる。結果を表1及び表2に示す。
ワニス濃度=(Z
1+1−Z
2)×100 (質量%)
【0081】
(樹脂酸価の測定方法)
両親媒性化合物の濃度を30質量%に調整したワニス1gに、トルエン1g及び2−プロパノール1gを加え、攪拌した。そこにフェノールフタレイン溶液を1滴加え、濃度0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液を、溶液が赤くなるまで滴下した。滴下量がXmLのとき、樹脂酸価は下記の式で求められる。結果を表1及び表2に示す。
樹脂酸価=(X×5.61)/0.3 (mgKOH/g)
【0082】
(収率の算出方法)
洗浄前の両親媒性化合物を含有するワニスの量がX
1g、濃度がY
1質量%で、洗浄後に得られた両親媒性化合物を含有するワニスの量がX
2g、濃度がY
2質量%のとき、収率は下記の式で求められる。結果を表1及び表2に示す。
収率={(X
2×Y
2)/(X
1×Y
1)}×100 (%)
【0083】
(イオン性不純物濃度の測定)
洗浄後に得られたマレイミド化合物を含有するワニスを脱溶して、得られたマレイミド化合物を酸分解(マイクロウェーブ法)により前処理し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)にて、マレイミド化合物中のイオン濃度を測定した。測定器には日立ハイテクサイエンス製SPS5100を用いた。結果を表1及び表2に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表1及び表2中、A、B、B2及びB3の意味はそれぞれ以下の通りである。
A:両親媒性化合物を含有するワニスの質量
B:水の質量
B2:飽和食塩水の質量
B3:エタノール水溶液(濃度30質量%)の質量
【0087】
比較例1、4及び5は、洗浄総時間が24時間以上となった。比較例1及び2は、洗浄後のワニスのイオン性不純物濃度が低減できていなかった。比較例3は、エタノールにマレイミド化合物の一部が溶解してしまったため、収率が70%を下回った。また、比較例1及び3〜5はいずれも、洗浄後の樹脂酸価が10.0mgKOH/gを上回っており、収率も比較例3〜5では70%を下回っていた。これらに対して、実施例1〜5はいずれも、洗浄総時間が3時間以内と短く、洗浄後の樹脂酸価が7.0mgKOH/gを下回っており、収率も70%を上回っており、イオン性不純物の混入が観測されなかった。