特許第6819250号(P6819250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6819250熱線遮蔽微粒子および熱線遮蔽微粒子分散液
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  • 特許6819250-熱線遮蔽微粒子および熱線遮蔽微粒子分散液 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819250
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】熱線遮蔽微粒子および熱線遮蔽微粒子分散液
(51)【国際特許分類】
   C01G 41/00 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   C01G41/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-235149(P2016-235149)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-105705(P2017-105705A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2019年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-235975(P2015-235975)
(32)【優先日】2015年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】岡田 美香
(72)【発明者】
【氏名】足立 健治
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−229388(JP,A)
【文献】 特開2005−226008(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/080859(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/20819(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/121844(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 41/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱線遮蔽機能を有する複合タングステン酸化物微粒子であって、当該複合タングステン酸化物微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が85%であるときに、波長800〜900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上60%以下であり、且つ、波長1200〜1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、且つ、波長2100nmにおける透過率が22%以下であること
前記複合タングステン酸化物微粒子が六方晶系の結晶構造を有することと、
前記複合タングステン酸化物微粒子の粉体色が、L*a*b*表色系において、L*が30以上55以下、a*が−6.0以上−0.5以下、b*が−10以上0以下であることを特徴とする熱線遮蔽微粒子。
【請求項2】
前記複合タングステン酸化物微粒子が一般式MxWOy(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、Baから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)であることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽微粒子。
【請求項3】
前記複合タングステン酸化物微粒子が六方晶系の結晶構造を有し、c軸の格子定数が7.56Å以上8.82Å以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱線遮蔽微粒子。
【請求項4】
前記熱線遮蔽微粒子の粒子径が1nm以上800nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子が、液状媒体中に分散して含有されている分散液であって、前記液状媒体が水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状プラスチック用可塑剤、またはこれらの混合物から選択される熱線遮蔽微粒子分散液。
【請求項6】
前記液状媒体中に含有されている熱線遮蔽微粒子の含有量が、0.01質量%以上80質量%以下である請求項5に記載の熱線遮蔽微粒子分散液。
【請求項7】
タングステン酸と、Cs、Rb、K、Tl、Baから選択される1種類以上の元素の水酸化物粉末とを、所定の割合で混合して混合粉末を得、
当該混合粉末を、不活性ガスをキャリアーとした0.1〜0.5%のHガス供給下で加熱して還元処理を行い、Cs、Rb、K、Tl、Baから選択される1種類以上の元素を含み、六方晶系の結晶構造を有する複合タングステン酸化物粉末を得ることを特徴とする熱線遮蔽微粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項7で得られた熱線遮蔽微粒子を、液状の媒体に分散させて熱線遮蔽微粒子分散液を得る分散工程を有することを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散液の製造方法。
【請求項9】
さらに、紫外線吸収剤、HALS、酸化防止剤から選択される1種類以上を含有することを特徴とする請求項5または6に記載の熱線遮蔽微粒子分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光透過性が良好で、且つ優れた熱線遮蔽機能を有しながら、所定の波長を有する近赤外光を透過する熱線遮蔽微粒子および熱線遮蔽微粒子分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
良好な可視光透過率を有し透明性を保ちながら日射透過率を低下させる熱線遮蔽技術として、これまでさまざまな技術が提案されてきた。なかでも、導電性微粒子、導電性微粒子の分散体、および、合わせ透明基材を用いた熱線遮蔽技術は、その他の技術と比較して熱線遮蔽特性に優れ低コストであり電波透過性があり、さらに耐候性が高い等のメリットがある。
【0003】
例えば特許文献1には、酸化錫微粉末を分散状態で含有させた透明樹脂や、酸化錫微粉末を分散状態で含有させた透明合成樹脂をシートまたはフィルムに成形したものを、透明合成樹脂基材に積層してなる赤外線吸収性合成樹脂成形品が提案されている。
【0004】
特許文献2には、少なくとも2枚の対向する板ガラスの間に、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moといった金属、当該金属の酸化物、当該金属の窒化物、当該金属の硫化物、当該金属へのSbやFのドープ物、または、これらの混合物を分散させた中間層を、挟み込んだ合わせガラスが提案されている。
【0005】
また、出願人は特許文献3にて、窒化チタン微粒子、ホウ化ランタン微粒子のうち少なくとも1種を分散した選択透過膜用塗布液や選択透過膜を開示している。
【0006】
しかし、特許文献1〜3に開示されている赤外線吸収性合成樹脂成形品等の熱線遮蔽構造体には、いずれも高い可視光透過率が求められたときの熱線遮蔽性能が十分でない、という問題点が存在した。例えば、特許文献1〜3に開示されている熱線遮蔽構造体の持つ熱線遮蔽性能の具体的な数値の例として、JIS R 3106に基づいて算出される可視光透過率(本発明において、単に「可視光透過率」と記載する場合がある。)が70%のとき、同じくJIS R 3106に基づいて算出される日射透過率(本発明において、単に「日射透過率」と記載する場合がある。)は、50%を超えてしまっていた。
【0007】
そこで出願人は、赤外線遮蔽材料微粒子が媒体中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、前記赤外線遮蔽材料微粒子が、一般式M(但し、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子を含有し、当該複合タングステン酸化物微粒子が六方晶、正方晶、または立方晶の結晶構造を有する微粒子のいずれか1種類以上を含み、前記赤外線遮蔽材料微粒子の粒子径が1nm以上800nm以下であることを特徴とする熱線遮蔽分散体を、特許文献4として開示した。
【0008】
特許文献4に開示したように、前記一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽分散体は高い熱線遮蔽性能を示し、可視光透過率が70%のときの日射透過率は50%を下回るまでに改善された。とりわけ元素MとしてCsやRb、Tlなど特定の元素から選択される少なくとも1種類を採用し、結晶構造を六方晶とした複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽微粒子分散体は卓越した熱線遮蔽性能を示し、可視光透過率が70%のときの日射透過率は37%を下回るまでに改善された。
【0009】
また、出願人は一般式MWO(但し、0.001≦a≦1.0、2.2≦c≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素)で示され、且つ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子を含有し、前記一般式MWOで示される複合タングステン酸化物の粉体色がL表色系で評価したとき、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15であることを特徴とする紫外・近赤外光遮蔽分散体を、文献5として開示した。
【0010】
特許文献5では、前記一般式MWOで表される複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを一定の割合で併用することで所定の可視光透過性を有しながら、近赤外線遮蔽特性と同時に紫外線遮蔽特性とを有し、意匠性に優れ彩度の低いブロンズ色調を有する紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体を得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平2−136230号公報
【特許文献2】特開平8−259279号公報
【特許文献3】特開平11−181336号公報
【特許文献4】国際公開番号WO2005/037932公報
【特許文献5】特開2008−231164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子や、それを用いた熱線遮蔽分散体、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽ガラス、熱線遮蔽微粒子分散体や合わせ透明基材が、市場での使用範囲を拡大した結果、新たな課題が見出された。
その課題は、前記一般式Mで記載された複合タングステン酸化物微粒子、当該複合タングステン酸化物微粒子を含有した熱線遮蔽フィルムや熱線遮蔽ガラス、当該複合タングステン酸化物微粒子を含有した分散体や熱線遮蔽合わせ透明基材を、窓材等の構造体に適用した場合、当該窓材等を通過する光において、波長700〜1200nmの近赤外光の透過率も大きく低下してしまうことである。
当該波長領域の近赤外光は人間の眼に対してほぼ不可視であり、また安価な近赤外LED等の光源により発振が可能であることから、近赤外光を用いた通信、撮像機器、センサー等に広く利用されている。ところが、前記一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子を用いた窓材等の構造体、熱線遮蔽体や熱線遮蔽基材、分散体や合わせ透明基材等の構造体は、当該波長領域の近赤外光も、熱線と伴に強く吸収してしまう。
この結果、前記一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子を用いた窓材等の構造体、熱線遮蔽フィルムや熱線遮蔽ガラス、分散体や合わせ透明基材を介しての、近赤外光を用いた通信、撮像機器、センサー等の使用が制限される事態になる場合も生じていた。
【0013】
例えば、特許文献4に記載された複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽フィルムを一般住宅の窓に貼りつけた場合、室内に置かれた赤外線発振機と室外に置かれた赤外線受信機からなる侵入探知装置の間の近赤外光による通信が妨害され、装置は正常に動作しなかった。
【0014】
上記課題が存在するにも関わらず、複合タングステン酸化物微粒子などを用いた熱線遮蔽フィルムや窓材等の構造体、分散体や熱線遮蔽合わせ透明基材は熱線を大きくカットする能力が高く、熱線遮蔽を望まれる市場分野においては使用が拡大した。しかし、このような熱線遮蔽フィルムや窓材等の構造体、分散体や熱線遮蔽合わせ透明基材を用いた場合は、近赤外光を用いる無線通信、撮像機器、センサー等を使用することが出来ないものであった。
【0015】
加えて、前記一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子や、それを用いた熱線遮蔽分散体、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽ガラス、熱線遮蔽微粒子分散体や合わせ透明基材は、波長2100nmの熱線の遮蔽が充分ではなかった。
【0016】
例えば、特許文献4に記載された複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽フィルムを一般住宅の窓に貼りつけた場合、室内で肌にジリジリとした暑さを感じた。
【0017】
本発明は、上述の状況の下で成されたものである。そして、その解決しようとする課題は、窓材等の構造体に適用された場合に、熱線遮蔽特性を発揮し、肌へのジリジリ感を抑制すると伴に、当該構造体、当該熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラス、当該分散体や合わせ透明基材を介した近赤外光を用いる通信機器、撮像機器、センサー等の使用を可能とする、熱線遮蔽微粒子、および、当該熱線遮蔽微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決する為、さまざまな検討を行った。
例えば、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽ガラス、熱線遮蔽分散体および熱線遮蔽合わせ透明基材を介した場合であっても、近赤外光を用いる通信機器、撮像機器、センサー等の使用を可能とするには、波長800〜900nmの領域における近赤外光の透過率を向上させれば良いと考えられた。そして、当該波長領域における近赤外光の透過率を単に向上させるだけであれば、複合タングステン酸化物微粒子の膜中濃度、熱線遮蔽フィルムや熱線遮蔽ガラスにおける複合タングステン酸化物微粒子の濃度、熱線遮蔽分散体や熱線遮蔽合わせ透明基材における複合タングステン酸化物微粒子の膜中濃度を適宜減少させればよい、とも考えられた。
しかし、複合タングステン酸化物微粒子の濃度、熱線遮蔽分散体や熱線遮蔽合わせ透明基材における複合タングステン酸化物微粒子の膜中濃度を減少させた場合、波長1200〜1800nmの領域をボトムとする熱線吸収能力も同時に低下し、熱線遮蔽効果を低下させることになり、肌へのジリジリ感も感じることになってしまう。
【0019】
ここで、太陽光が、肌へのジリジリ感を与えるのは、波長1500〜2100nmの熱線の影響が大きいためであると考えられる(例えば、尾関義一ほか、自動車技術会学術講演会前刷集 No.33−99、13(1999)参照。これは、人間の皮膚の持つ吸光度が、波長700〜1200nmの近赤外光に対しては小さい一方で、波長1500〜2100nmの熱線に対しては大きい為であると考えられる。
【0020】
以上の知見を基に、本発明者らは種々研究を重ねた結果、前記一般式MWOで表される複合タングステン酸化物微粒子を製造する為の熱処理(焼成)の工程において、還元状態を所定の範囲内に制御することで、波長1200〜1800nmの領域をボトムとする熱線吸収能力は保持したまま、波長800〜900nmの吸収を制御し、波長2100nmの領域における吸収能力が向上した複合タングステン酸化物微粒子を得ることが出来るとの知見を得たものである。
【0021】
しかしながら、波長800〜900nmの領域に近赤外光の透過率を向上させた複合タングステン酸化物微粒子は、熱線遮蔽微粒子の分散体における熱線遮蔽性能の評価基準として従来用いられていた指標(例えば、JIS R 3106で評価される可視光透過率に対する日射透過率。)を用いて評価した場合、従来の技術に係る複合タングステン酸化物と比較して劣るのではないか、とも懸念された。
そこで、当該観点から、熱処理の際の還元状態を制御して製造した複合タングステン酸化物微粒子についてさらに検討した。
【0022】
そして、上述した、熱処理の際の還元状態を制御することによって波長800〜900nmの近赤外光の透過率を向上させた複合タングステン酸化物微粒子は、従来の技術に係る複合タングステン酸化物微粒子と比較して、熱線遮蔽微粒子としての性能において劣るものではないことが知見された。
これは、波長800〜900nmの近赤外光の透過率を向上させた複合タングステン酸化物微粒子において、可視光での透過率も大きくなる。従って、単位面積当たりの複合タングステン酸化物微粒子の濃度をより高く設定することが可能となる。このより高い濃度設定の結果、波長1500〜2100nmの熱線の透過を抑制できるためである。
【0023】
以上の検討の結果、本発明者らは、熱線遮蔽機能を有する複合タングステン酸化物微粒子であって、当該複合タングステン酸化物微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が85%であるときに、波長800〜900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上60%以下であり、且つ、波長1200〜1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、且つ、波長2100nmにおける透過率が22%以下であることを特徴とする熱線遮蔽微粒子に想到し本発明を完成した。
【0024】
さらに、本発明者らは、上述の本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽材料、熱線遮蔽フィルムや熱線遮蔽ガラス、熱線遮蔽分散体や合わせ透明基材においても、熱線遮蔽体としての性能において劣るものではなく、肌へのジリジリ感を抑制する観点からも、従来の技術に係る複合タングステン酸化物微粒子と同等であることも知見した。
【0025】
すなわち、上述の課題を解決する第1の発明は、
熱線遮蔽機能を有する複合タングステン酸化物微粒子であって、当該複合タングステン酸化物微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が85%であるときに、波長800〜900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上60%以下であり、且つ、波長1200〜1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、且つ、波長2100nmにおける透過率が22%以下であること
前記複合タングステン酸化物微粒子が六方晶系の結晶構造を有することと、
前記複合タングステン酸化物微粒子の粉体色が、L*a*b*表色系において、L*が30以上55以下、a*が−6.0以上−0.5以下、b*が−10以上0以下であることを特徴とする熱線遮蔽微粒子である。
第2の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が一般式MxWOy(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、Baから選択される1種類以上の元素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)であることを特徴とする第1の発明に記載の熱線遮蔽微粒子である。
第3の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が六方晶系の結晶構造を有し、c軸の格子定数が7.56Å以上8.82Å以下であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の熱線遮蔽微粒子である。
第4の発明は、
前記熱線遮蔽微粒子の粒子径が1nm以上800nm以下であることを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子である。
第5の発明は、
第1から第4の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子が、液状媒体中に分散して含有されている分散液であって、前記液状媒体が水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状プラスチック用可塑剤、またはこれらの混合物から選択される熱線遮蔽微粒子分散液である。
第6の発明は、
前記液状媒体中に含有されている熱線遮蔽微粒子の含有量が、0.01質量%以上80質量%以下である第5の発明に記載の熱線遮蔽微粒子分散液である。
第7の発明は、
タングステン酸と、Cs、Rb、K、Tl、Baから選択される1種類以上の元素の水酸化物粉末とを、所定の割合で混合して混合粉末を得、
当該混合粉末を、不活性ガスをキャリアーとした0.1〜0.5%のHガス供給下で加熱して還元処理を行い、Cs、Rb、K、Tl、Baから選択される1種類以上の元素
を含み、六方晶系の結晶構造を有する複合タングステン酸化物粉末を得ることを特徴とする熱線遮蔽微粒子の製造方法である。
第8の発明は、
第7の発明で得られた熱線遮蔽微粒子を、液状の媒体に分散させて熱線遮蔽微粒子分散液を得る分散工程を有することを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散液の製造方法である。
第9の発明は、
さらに、紫外線吸収剤、HALS、酸化防止剤から選択される1種類以上を含有することを特徴とする第5または第6の発明に記載の熱線遮蔽微粒子分散液である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る熱線遮蔽微粒子や熱線遮蔽微粒子分散液を用いた構造体、当該熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラス、当該分散体や合わせ透明基材は、熱線遮蔽特性を発揮し、肌へのジリジリ感を抑制すると伴に、これら構造体等が介在した場合であっても、近赤外光を用いた通信機器、撮像機器、センサー等の使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液の波長毎の透過率プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について、[a]熱線遮蔽微粒子、[b]熱線遮蔽微粒子の製造方法、[c]熱線遮蔽微粒子分散液、[d]熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽ガラス製造に好ましい熱線遮蔽微粒子含有分散液とその製造方法、の順に説明する。
【0029】
[a]熱線遮蔽微粒子
(複合タングステン酸化物微粒子)
本発明に係る熱線遮蔽微粒子は、複合タングステン酸化物微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が85%のときに、波長800〜900nmにおける透過率の平均値が30%以上60%以下であり、且つ、波長1200〜1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、且つ、波長2100nmの透過率が22%以下である複合タングステン酸化物微粒子である。
そして、一般式MWOで表記したとき、元素MはCs、Rb、K、Tl、Baから選択される1種類以上の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素である。そして、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0を満たす複合タングステン酸化物微粒子である。
さらに、六方晶系の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子であって、c軸の格子定数が7.56Å以上8.82Å以下であることを特徴とする熱線遮蔽微粒子である。
【0030】
元素Mの添加量は、xの値は0.18以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.18以上0.33以下である。xの値が0.18以上0.33以下であれば六方結晶単相が得やすく、熱線吸収効果が十分に発現するためである。六方晶以外に、正方晶やM0.36WO3.18(Cs1135)で示される斜方晶が析出することがあるが、これらの析出物は熱線吸収効果に影響しない。
【0031】
また、yの値は、2.2≦y≦3.0であることが好ましく、更に好ましくは2.7≦y≦3.0である。また、複合タングステン酸化物において酸素の一部が他の元素で置換されていても構わない。当該他の元素としては、例えば、窒素や硫黄、ハロゲン等が挙げられる。
【0032】
本発明にかかる複合タングステン酸化物微粒子の粒子径は、当該複合タングステン酸化物微粒子や、その分散液を用いて製造される熱線遮蔽膜/熱線遮蔽基材の使用目的によって適宜選定することができるが、1nm以上800nmであることが好ましい。これは粒子径が800nm以下であれば、本発明にかかる複合タングステン酸化物微粒子による強力な近赤外吸収を発揮でき、また粒子径が1nm以上であれば、工業的な製造が容易であるからである。
【0033】
熱線遮蔽膜を透明性が求められる用途に使用する場合は、当該複合タングステン酸化物微粒子が40nm以下の分散粒子径を有していることが好ましい。当該複合タングステン酸化物微粒子が40nmよりも小さい分散粒子径を有していれば、微粒子のミー散乱およびレイリー散乱による光の散乱が十分に抑制され、可視光波長領域の視認性を保持し、同時に効率よく透明性を保持することが出来るからである。自動車の風防など特に透明性が求められる用途に使用する場合は、さらに散乱を抑制するため、複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径を30nm以下、好ましくは25nm以下とするのが良い。
【0034】
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子が、波長1200〜1800nmをボトムとし波長1200〜1500nmの熱線吸収能力を担保したまま、波長800〜900nmの領域における近赤外光の透過率が向上し、波長2100nmの熱線吸収能力を担保している理由は、複合タングステン酸化物微粒子の電子構造、および、電子構造に由来する光吸収機構に起因するものと考えている。
【0035】
本発明に係る一般式MWOで表記される複合タングステン酸化物微粒子において、元素MはCs、Rb、K、Tl、Baから選択される1種類以上の元素のうちから選択される1種類以上の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素である。そして、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0を満たす、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子である。
【0036】
元素Mの添加量であるxの値は0.18以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.18以上0.33以下である。xの値が0.18以上0.33以下であれば六方結晶単相が得やすく、熱線吸収効果が十分に発現するためである。六方晶以外に、正方晶やM0.36WO3.18(Cs1135)で示される斜方晶が析出することがあるが、これらの析出物は熱線吸収効果に影響しない。
【0037】
(複合タングステン酸化物微粒子の製造における熱処理条件)
本発明者らは、以下に説明する〈熱処理条件1〜4〉の4水準の熱処理条件を用いた以外は、後述する実施例3と同様にして複合タングステン酸化物微粒子を製造した。
【0038】
〈熱処理条件1〉
ガスをキャリアーとした0.3%Hガス供給下で500℃の温度で30分の加熱還元処理を行った後、Nガス雰囲気下で800℃の温度で1時間焼成をおこなった。
【0039】
〈熱処理条件2〉
後述する実施例1に係る熱処理と同様である。
ガスをキャリアーとした0.3%Hガス供給下で500℃の温度で4時間の加熱還元処理を行った後、Nガス雰囲気下で800℃の温度で1時間焼成をおこなった。
【0040】
〈熱処理条件3〉
後述する実施例3に係る熱処理と同様である。
ガスをキャリアーとした0.3%Hガス供給下で500℃の温度で6時間の加熱還元処理を行った後、Nガス雰囲気下で800℃の温度で1時間焼成をおこなった。
【0041】
〈熱処理条件4〉
後述する比較例1に係る熱処理と同様である。
ガスをキャリアーとした5%Hガス供給下で550℃の温度で1時間の加熱還元処理を行った後、Nガス雰囲気下で800℃の温度で1時間焼成をおこなった。
【0042】
上述した〈熱処理条件1〜4〉の4水準の熱処理条件を施して作製したセシウムタングステンブロンズを用いた以外は、後述する実施例1と同様の操作をおこなって、試料1〜4に係る熱線遮蔽微粒子分散液を得た。
【0043】
各熱線遮蔽微粒子分散液試料内にある、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子(セシウムタングステンブロンズ微粒子)の平均分散粒子径を測定したところ20〜30nmの範囲にあった。
【0044】
〈熱処理条件1〜4のまとめ〉
本発明者らは、複合タングステン酸化物微粒子を製造する際の熱処理において、温度条件、雰囲気条件を制御することにより、還元処理を弱い方へ制御して、複合タングステン酸化物粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が85%のときに、波長800〜900nmにおける透過率の平均値が30%以上60%以下であり、且つ、波長1200〜1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、且つ、波長2100nmにおける透過率が22%以下である複合タングステン酸化物粒子を得ることができた。
当該複合タングステン酸化物微粒子は、六方晶系の結晶構造を有し、c軸の格子定数が7.56Å以上8.82Å以下であった。
また、当該複合タングステン酸化物微粒子は、可視光領域における透過率が増大するので、熱線遮蔽膜中の複合タングステン酸化物微粒子濃度を、若干高くすることが可能である。
【0045】
そして、上述した本発明に係る複合タングステン酸化物粒子の透過率プロファイルの形を、従来の技術に係る複合タングステン酸化物微粒子の透過プロファイルと比較すると、次の(1)−(3)の特長を有するものである。
(1)本発明に係る複合タングステン酸化物粒子は、可視光透過バンドの領域が近赤外光の領域である波長800〜900nmの領域にまで広がっており、当該波長領域においても高い透過率を持つものである。
(2)本発明に係る複合タングステン酸化物粒子は、波長1200〜1500nmの領域において透過率の値がほぼ一定である。
(3)本発明に係る複合タングステン酸化物粒子は、波長2100nmにおいても熱線遮蔽性能を有する。
【0046】
[b]熱線遮蔽微粒子の製造方法
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン化合物出発原料を還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
【0047】
まず、タングステン化合物出発原料について説明する。
本発明にかかるタングステン化合物出発原料は、タングステン、元素Mそれぞれの単体もしくは化合物を含有する混合物である。タングステン原料としてはタングステン酸粉末、三酸化タングステン粉末、二酸化タングステン粉末、酸化タングステンの水和物粉末、六塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、または、六塩化タングステン粉末をアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末、から選ばれたいずれか1種類以上であることが好ましい。元素Mの原料としては、元素M単体、元素Mの塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、炭酸塩、タングステン酸塩、水酸化物等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0048】
上述したタングステン化合物出発原料を秤量し、0.1≦x≦0.5を満たす所定量をもって配合し混合する。このとき、タングステン、元素Mに係るそれぞれの原料ができるだけ均一に、可能ならば分子レベルで均一混合していることが好ましい。したがって前述の各原料は溶液の形で混合することがもっとも好ましく、各原料が水や有機溶剤等の溶媒に溶解可能であることが好ましい。
各原料が水や有機溶剤等の溶媒に可溶であれば、各原料と溶媒を十分に混合したのち溶媒を揮発させることで、本発明にかかるタングステン化合物出発原料を製造することができる。もっとも各原料に可溶な溶媒がなくとも、各原料をボールミル等の公知の手段で十分に均一に混合することで、本発明にかかるタングステン化合物出発原料を製造することができる。
【0049】
次に、還元性ガス雰囲気中における熱処理について説明する。出発原料を300℃以上900℃以下で熱処理することが好ましく、500〜800℃以下がより好ましく、500〜600℃以下がさらに好ましい。300℃以上であれば本発明にかかる六方晶構造を持つ複合タングステン酸化物の生成反応が進行し、900℃以下であれば六方晶以外の構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子や金属タングステンといった意図しない副反応物が生成し難く好ましい。
【0050】
この時の還元性ガスは、特に限定されないが、Hが好ましい。そして、還元性ガスとしてHを用いる場合は、還元性雰囲気の組成として、例えば、Ar、N等の不活性ガスにHを体積比で2.0%以下混合することが好ましく、より好ましくは0.1〜0.8%混合、さらに好ましくは0.1〜0.5%混合したものである。Hが体積比で0.1%〜0.8%であれば、還元状態を本発明に適した条件に制御しつつ、効率よく還元を進めることができる。還元温度および還元時間、還元性ガスの種類と濃度といった条件は、試料の量に応じて適宜選択することができる。
必要に応じて、還元性ガス雰囲気中にて還元処理を行った後、不活性ガス雰囲気中にて熱処理を行ってもよい。この場合の不活性ガス雰囲気中での熱処理は400℃以上1200℃以下の温度で行うことが好ましい。
この結果、六方晶系の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子を得ることが出来る。当該複合タングステン酸化物微粒子のc軸の格子定数は7.56Å以上8.82Å以下であることが好ましく、7.56Å以上7.61Å以下であることがより好ましい。また、当該複合タングステン酸化物微粒子の粉体色は、L表色系において、Lが30〜55、aが−6.0〜−0.5、bが−10〜−0である。
【0051】
本発明に係る熱線遮蔽微粒子が表面処理され、Si、Ti、Zr、Alから選択される1種類以上を含有する化合物、好ましくは酸化物で被覆されていることは、耐候性向上の観点から好ましい。当該表面処理を行うには、Si、Ti、Zr、Alから選択される1種類以上を含有する有機化合物を用いて、公知の表面処理を行えばよい。例えば、本発明に係る熱線遮蔽微粒子と有機ケイ素化合物とを混合し、加水分解処理を行えばよい。
【0052】
[c]熱線遮蔽微粒子分散液
本発明に係る熱線遮蔽微粒子を液状の媒体中に分散させることで、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液を製造することができる。当該熱線遮蔽微粒子分散液は、その他従来の近赤外線を強く吸収する材料、例えば特許文献4で示された複合タングステン酸化物が用いられていたさまざまな分野において、従来の複合タングステン酸化物微粒子の分散液と同様に用いることができる。
【0053】
以下、[1]熱線遮蔽微粒子分散液の製造方法、[2]熱線遮蔽微粒子分散液の使用例、の順に記載する。なお、本発明において、熱線遮蔽微粒子分散液を単に「分散液」と記載する場合がある。
【0054】
[1]熱線遮蔽微粒子分散液の製造方法
本発明に係る熱線遮蔽微粒子および所望により適量の分散剤、カップリング剤、界面活性剤等を、液状の媒体へ添加し分散処理を行うことで、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液を得ることができる。当該熱線遮蔽微粒子分散液の媒体には、熱線遮蔽微粒子の分散性を保つための機能と、熱線遮蔽微粒子分散液を塗布する際に塗布欠陥を生じさせないための機能が要求される。
以下、熱線遮蔽微粒子分散液における熱線遮蔽微粒子以外の成分、各種添加剤について(1)媒体、(2)分散剤、カップリング剤、(3)紫外線吸収剤、(4)光安定化剤、(5)酸化防止剤、(6)熱線遮蔽微粒子分散液の特性、の順に説明する。
【0055】
(1)媒体
媒体としては水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状のプラスチック用可塑剤あるいはこれらの混合物を選択し熱線遮蔽分散液を製造することができる。上記の要求を満たす有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系など、種々のものを選択することが可能である。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;3−メチル−メトキシ−プロピオネートなどのエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレンクロライド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。これらの中でも極性の低い有機溶剤が好ましく、特に、イソプロピルアルコール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチルなどがより好ましい。これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
液状の樹脂としては、メタクリル酸メチル等が好ましい。液状のプラスチック用可塑剤としては、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤や、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤などが好ましい例として挙げられる。なかでもトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサオネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサオネートは、加水分解性が低い為、さらに好ましい。
【0057】
(2)分散剤、カップリング剤
分散剤、カップリング剤、界面活性剤は用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有することが好ましい。これらの官能基は、複合タングステン酸化物微粒子の表面に吸着し、複合タングステン酸化物微粒子の凝集を防ぎ、熱線遮蔽膜中でも本発明に係る熱線遮蔽微粒子を均一に分散させる効果を持つ。
【0058】
好適に用いることのできる分散剤としては、リン酸エステル化合物、高分子系分散剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、等があるが、これらに限定されるものではない。高分子系分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤、アクリル・ブロックコポリマー系高分子分散剤、ポリエーテル類分散剤、ポリエステル系高分子分散剤などが挙げられる。
【0059】
当該分散剤の添加量は、熱線遮蔽微粒子100重量部に対し10重量部〜1000重量部の範囲であることが望ましく、より好ましくは20重量部〜200重量部の範囲である。分散剤添加量が上記範囲にあれば、熱線遮蔽微粒子が液中で凝集を起こすことがなく、分散安定性が保たれる。
【0060】
本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液には、分散剤やカップリング剤、界面活性剤に加えて、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、着色剤(顔料や染料など)、帯電防止剤などの添加剤等が含まれていてもよい。
【0061】
(3)紫外線吸収剤
本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液が、さらに紫外線吸収剤を含有することで、紫外領域の光をさらにカットすることが可能となり、温度上昇の抑止効果を高めることができる。また、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液が紫外線吸収剤を含有することで、当該熱線遮蔽微粒子分散液を用いて作製した線遮蔽フィルムを貼付した窓を有する自動車車内や建造物内部の、人間や内装などに対する紫外線の影響である、日焼けや家具、内装の劣化などを抑制できる。
【0062】
また、本発明に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物粒子および/または酸化タングステン粒子を含むコーティング膜は、強力な紫外線の長期暴露により透過率が低下する光着色現象を生じることがある。しかしながら、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液が紫外線吸収剤を含有することでも、光着色現象の発生を抑制することができる。
【0063】
当該紫外線吸収剤は特に限定されるものではなく、熱線遮蔽微粒子分散液の可視光透過率等に与える影響や、紫外線吸収能、耐久性等に応じて任意に選択することができる。紫外線吸収剤としては例えば、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリチル酸化合物、トリアジン化合物、ベンゾトリアゾリル化合物、ベンゾイル化合物等の有機紫外線吸収剤や、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機紫外線吸収剤等が挙げられる。特に紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物から選択される1種類以上を含有することが好ましい。これは、ベンゾトリアゾール化合物およびベンゾフェノン化合物は、紫外線を十分に吸収するだけの濃度を添加した場合でも熱線遮蔽微粒子分散液の可視光透過率を非常に高くすることができ、かつ強力な紫外線の長期暴露に対する耐久性が高いためである。
【0064】
また、紫外線吸収剤は例えば以下の化学式1および/または化学式2で示される化合物を含有することがより好ましい。
【0065】
【化1】
【0066】
【化2】
【0067】
本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液における紫外線吸収剤の含有量は特に限定されるものではなく、要求される可視光透過率や、紫外線遮蔽能等に応じて任意に選択することができる。尤も、熱線遮蔽微粒子分散液中の紫外線吸収剤の含有量(含有率)は、例えば、0.02質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。これは紫外線吸収剤の含有量が0.02質量%以上であれば、複合タングステン酸化物粒子で吸収しきれない紫外領域の光を十分に吸収することができるためである。また含有量が5.0質量%以下であれば、熱線遮蔽微粒子分散液中で紫外線吸収剤が析出することをより確実に防止し、熱線遮蔽微粒子分散液の透明性や、意匠性に大きな影響を与えないためである。
【0068】
(4)光安定化剤
また、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液は、さらにヒンダードアミン系光安定化剤(本発明において、単に「HALS」と記載する場合がある。)を含有することもできる。
上述したように、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液や線遮蔽フィルム等において、紫外線吸収剤を含有することで紫外線吸収能力を高めることができる。しかし本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液や線遮蔽フィルム等が実用される環境や、紫外線吸収剤の種類によっては、長時間の使用に伴って紫外線吸収剤が劣化し、紫外線吸収能力が低下してしまう場合がある。これに対して、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液がHALSを含有することで、紫外線吸収剤の劣化を防止し、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液や線遮蔽フィルム等の紫外線吸収能力の維持に寄与することができる。
【0069】
また上述したように、本発明に係る線遮蔽フィルムにおいては、強力な紫外線の長期暴露により透過率が低下する光着色現象を生じることがある。そこで、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液にHALSを含有させて、線遮蔽フィルムを作製することで、紫外線吸収剤やアミノ基を有する金属カップリング剤を添加した場合と同様に、光着色現象の発生を抑制することができる。
【0070】
尚、本発明に係る線遮蔽フィルムにおいてHALSを含有することによる、光着色現象を抑制する効果は、アミノ基を有する金属カップリング剤の添加による光着色現象を抑制する効果とは、明確に異なる機構に基づくものである。
この為、HALSをさらに添加することによる光着色現象を抑制する効果と、アミノ基を有する金属カップリング剤を添加したことによる光着色現象を抑制する効果とは相反するものではなく、むしろ相乗的に働く。
さらにHALSにおいては、それ自体が紫外線の吸収能力をもつ化合物である場合がある。この場合、当該化合物の添加によって、前述した紫外線吸収剤の添加による効果と、HALSの添加による効果とを、兼ね備えることができる。
【0071】
尤も、添加するHALSの種類としては、特に限定されるものではなく、熱線遮蔽微粒子分散液の可視光透過率等に与える影響や、紫外線吸収剤との相性、紫外線に対する耐久性等、に応じて任意に選択することができる。
【0072】
HALSの具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケード、1−[2−[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed {1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed {2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノール]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル等を、好適に用いることができる。
【0073】
本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液における、HALSの含有量は特に限定されるものではなく、熱線遮蔽微粒子分散液に要求される可視光透過率や耐候性等に応じて任意に選択することができる。熱線遮蔽微粒子分散液中のHALSの含有量(含有率)は例えば、0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。これは熱線遮蔽微粒子分散液中におけるHALSの含有量が0.05質量%以上であれば、HALSの添加による効果を熱線遮蔽微粒子分散液で十分に発揮することができる為である。また含有量が5.0質量%以下であれば、熱線遮蔽微粒子分散液中でHALSが析出することをより確実に防ぐことができ、熱線遮蔽微粒子分散液の透明性や意匠性に大きな影響を与えないためである。
【0074】
(5)酸化防止剤
また、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液は、さらに酸化防止剤(抗酸化剤)を含有することもできる。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液が酸化防止剤を含有することで、熱線遮蔽微粒子分散液に含有される他の添加剤、例えば複合タングステン酸化物、酸化タングステン、分散剤、カップリング剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、HALS等の酸化劣化が抑制され、本発明に係る線遮蔽フィルム等の耐候性をさらに向上させることができる。
【0075】
ここで、酸化防止剤としては特に限定されるものではなく、熱線遮蔽微粒子分散液の可視光透過率等に与える影響や、所望する耐候性等に応じて任意に選択することができる。
例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等を好適に用いることができる。
【0076】
酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等を好適に用いることができる。
【0077】
本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液における酸化防止剤の含有量は特に限定されるものではなく、熱線遮蔽微粒子分散液に要求される可視光透過率や耐候性等に応じて任意に選択することができる。尤も、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液の酸化防止剤の含有量(含有率)は例えば、0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。これは酸化防止剤の含有量が0.05質量%以上であれば、酸化防止剤の添加による効果を熱線遮蔽微粒子分散液中で十分に発揮することができる為である。また含有量が5.0質量%以下であれば、熱線遮蔽微粒子分散液中で酸化防止剤が析出することをより確実に防ぐことができ、熱線遮蔽微粒子分散液の透明性や意匠性に大きな影響を与えない為である。
【0078】
(6)熱線遮蔽微粒子分散液の特性
以上説明したように本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液は、透明性と近赤外線遮蔽能とが高いことが好ましい。そして、熱線遮蔽微粒子分散液の透明性と、近赤外線遮蔽能すなわち遮熱特性とは、それぞれ、可視光透過率と、波長1200〜1500nmの範囲における透過率の平均値と、波長2100nmの透過率とにより評価を行うことができる。
【0079】
本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液において、熱線遮蔽微粒子の分散処理方法は、当該熱線遮蔽微粒子が均一に液状媒体中へ分散する方法であれば公知の方法から任意に選択でき、たとえばビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることができる。
均一な熱線遮蔽微粒子分散液を得るために、各種添加剤や分散剤を添加したり、pH調整したりしても良い。
【0080】
上述した熱線遮蔽微粒子分散液中における熱線遮蔽微粒子の含有量は0.01質量%〜50質量%であることが好ましい。0.01質量%以上であれば後述するコーティング膜やプラスチック成型体などの製造に好適に用いることができ、50質量%以下であれば工業的な生産が容易である。さらに好ましくは1質量%以上35質量%以下である。
【0081】
このような熱線遮蔽微粒子を液体媒体中に分散させた本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液は、適当な透明容器に入れ、分光光度計を用いて、光の透過率を波長の関数として測定することができる。本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液は、熱線遮蔽微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が85%(本発明に係る実施例において、単に「可視光透過率が85%」と記載する場合がある。)のときに、波長800〜900nmにおける近赤外光の透過率が30%以上60%以下であり、且つ、波長1200〜1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、且つ、波長2100nmの透過率が22%以下である。
尚、当該測定において、熱線遮蔽微粒子分散液に含まれる熱線遮蔽微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率を85%に調整することは、その分散溶媒または分散溶媒と相溶性を有する適宜な溶媒で希釈することにより、容易になされる。
【0082】
上述した本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液の光の透過率プロファイルは、特許文献4、特許文献5で示された複合タングステン酸化物微粒子を用いた場合の光の透過プロファイルに比べて、波長1200〜1500nmの範囲の透過率を大きく上げることなく、波長800〜900nm範囲の近赤外光の透過率を有し、波長2100nmの熱線吸収能力が向上したものである。
【0083】
[2]熱線遮蔽微粒子分散液の使用例
本発明に係る熱線遮蔽微粒子または熱線遮蔽微粒子分散液を、固体状の媒体へ分散することで、分散粉やマスターバッチ、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽プラスチック成形体などを製造することができる。
【0084】
一般的な使用方法の例として、本発明にかかる熱線遮蔽微粒子分散液を用いた熱線遮蔽フィルムの製造方法について述べる。前述した熱線遮蔽微粒子分散液をプラスチックあるいはモノマーと混合して塗布液を作製し、公知の方法で基材上にコーティング膜を形成することで、熱線遮蔽フィルムを作製することができる。
【0085】
上記コーティング膜の媒体は、例えば、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂等が目的に応じて選定可能である。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独使用であっても混合使用であっても良い。また、金属アルコキシドを用いたバインダーの利用も可能である。上記金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが代表的である。これら金属アルコキシドを用いたバインダーは、加熱等により加水分解・縮重合させることで、酸化物膜を形成することが可能である。
【0086】
上記基材としては上述したようにフィルムでも良いが、所望によってはボードでも良く、形状は限定されない。透明基材材料としては、PET、アクリル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ふっ素樹脂等が、各種目的に応じて使用可能である。また、樹脂以外ではガラスを用いることができる。
【0087】
[d]熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽ガラス製造に好ましい熱線遮蔽微粒子含有分散液とその製造方法
本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液は、熱線遮蔽微粒子を液状の媒体中に分散させたものである。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液は、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子と、所望により適量の分散剤と、カップリング剤と、界面活性剤、各所添加剤等とを、液状の媒体へ添加し分散処理を行い、当該微粒子を液状の媒体へ分散し、分散液とすることで得ることができる。
【0088】
本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液の媒体には、微粒子の分散性を保つための機能と、分散液を塗布する際に塗布欠陥を生じさせないための機能が要求される。
具体的には、水、有機溶媒、液状のプラスチックモノマーやプラスチック用可塑剤あるいはこれらの混合物を選択することができる。尤も、フィルム上やガラス上にコーティングを形成するためには、媒体として低沸点の有機溶媒を選択することが好ましい。これは、媒体が低沸点の有機溶媒であると、コーティング後の乾燥工程で容易に取り除くことが出来、コーティング膜の特性、例えば硬度や透明性などを損なうことがないからである。
【0089】
上記の要求を満たす有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系など、種々のものを選択することが可能である。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;3−メチル−メトキシ−プロピオネートなどのエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレンクロライド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。
尤も、これらの中でも極性の低い有機溶剤が好ましく、特に、イソプロピルアルコール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチルなどがより好ましい。これらの溶媒を、1種または2種以上で組み合わせて用いることができる。
【0090】
本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液において、分散剤、カップリング剤、界面活性剤は、用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を、官能基として有しているものであることが好ましい。これらの官能基は熱線遮蔽微粒子の表面に吸着し、当該熱線遮蔽微粒子の凝集を防ぐことで、後述する透明フィルム基材または透明ガラス基材から選択される透明基材上のコーティング層中において、当該熱線遮蔽微粒子を均一に分散させる効果を発揮する。
【0091】
分散剤としては特に限定されるものではなく任意に選択することができる。尤も、分散剤は、高分子分散剤であることが好ましく、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリスチレン系、脂肪族系から選択されるいずれかの主鎖、または、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリスチレン系、脂肪族系から選択される2種類以上の単位構造が共重合した主鎖を有する分散剤であることが好ましい。
【0092】
また、分散剤は、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、りん酸基、または、エポキシ基から選択される1種類以上を官能基として有することが好ましい。上述のいずれかの官能基を有する分散剤は、複合タングステン酸化物粒子および/または酸化タングステン粒子の表面に吸着し、複合タングステン酸化物粒子および/または酸化タングステン粒子の凝集をより確実に防ぐことができる。このため、粘着剤層で複合タングステン酸化物粒子および/または酸化タングステン粒子をより均一に分散させることができるため、好適に用いることができる。
【0093】
さらに本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液へ、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などの金属カップリング剤を添加し、分散剤として用いることもできる。
【0094】
当該分散剤の添加量は、複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対し10重量部〜1000重量部の範囲であることが望ましく、より好ましくは20重量部〜200重量部の範囲である。分散剤添加量が上記範囲にあれば、複合タングステン酸化物微粒子が液中で凝集を起こすことがなく、分散安定性が保たれる。
【0095】
分散処理の方法は当該微粒子が均一に液状媒体中へ分散する方法であれば公知の方法から任意に選択でき、たとえばビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることができる。
均一な熱線遮蔽微粒子分散液を得るために、各種添加剤や分散剤を添加したり、pH調整したりしても良い。
【0096】
上述した有機溶媒分散液中における熱線遮蔽微粒子の含有量は、0.01質量%〜50質量%であることが好ましい。熱線遮蔽微粒子の含有量が0.01質量%以上であれば、後述する透明フィルム基材または透明ガラス基材から選択される透明基材上のコーティング層や、プラスチック成型体などの製造に好適な熱線遮蔽微粒子分散体を得ることが出来る。一方、熱線遮蔽微粒子の含有量が50質量%以下であれば、熱線遮蔽微粒子分散体の工業的な生産が容易である。当該観点から、さらに好ましい有機溶媒分散液中における熱線遮蔽微粒子の含有量は、1質量%以上35質量%以下である。
【0097】
また、有機溶媒分散液中の熱線遮蔽微粒子は、平均分散粒子径が40nm以下で分散していることが好ましい。熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径が40nm以下であれば、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散体を用いて製造された熱線遮蔽膜におけるヘイズ等の光学特性が、より好ましく向上するからである。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
実施例1〜3および比較例1において、熱線遮蔽微粒子の粉体色は日立製作所(株)製の分光光度計U−4100を用いて測定し、L表色系で評価した。
また、実施例1〜3および比較例1において、熱線遮蔽微粒子分散液の波長300〜2100nmの光に対する透過率は、分光光度計用セル(ジーエルサイエンス株式会社製、型番:S10−SQ−1、材質:合成石英、光路長:1mm)に分散液を保持して、日立製作所(株)製の分光光度計U−4100を用いて測定した。
当該測定の際、分散液の溶媒(メチルイソブチルケトン)を、上述のセルに満たした状態で透過率を測定し、透過率測定のベースラインを求めた。この結果、以下に説明する分光透過率、および可視光透過率は、分光光度計用セル表面の光反射や、溶媒の光吸収による寄与が除外され、熱線遮蔽微粒子による光吸収のみが算出されることとなる。
【0100】
具体的には、以下の手順で、可視光透過率が85%の場合の透過率を求めることができる。
まず、メチルイソブチルケトンで満たした上記分光光度計用セルの透過率T1(λ)を測定する。次に熱線吸収微粒子を含む分散液で満たした上記分光光度計用セルの透過率T2(λ)を測定する。そして、式2に示すようにT2(λ)をT1(λ)で除算する。
T3(λ)=100×T2(λ)/T1(λ)・・・・・・・式2
ここでT3(λ)は、基材の吸収および反射の影響を除いた、熱線吸収微粒子としての透過率曲線である。尚、λは波長を意味する。
【0101】
従って、ランベルト・ベールの式により、可視光透過率が85%のときの透過率曲線T4(λ)を、式3により計算することができる。
T4(λ)=100×(T3(λ)/100)^a・・・・・・式3
尚、「^」は累乗を意味する数学記号であり、A^Bは「AのB乗」を意味する。また、「a」は実数値をとる変数である。aの具体的な値は、T4(λ)をもとにJIS R 3106で算出される可視光透過率が85%となるように決定される。
【0102】
また、熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布計を用いて測定した。
熱線遮蔽微粒子の平均粒子径は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布計を用いて測定した。
【0103】
[実施例1](Cs0.30WOのMIBK分散液)
タングステン酸(HWO)と水酸化セシウム(CsOH)の各粉末を、Cs/W(モル比)=0.30/1.00相当となる割合で秤量したのちメノウ乳鉢で十分混合して混合粉末とした。当該混合粉末を、Nガスをキャリアーとした0.3%Hガス供給下で加熱し500℃の温度で4時間の還元処理を行った後、Nガス雰囲気下で800℃、1時間焼成して、六方晶を有し、a軸の格子定数が7.4131Å、c軸の格子定数が7.5885Åで、粉体色が、L表色系において、Lが41.86、aが−2.90、bが−6.76であるセシウムタングステンブロンズ粉末(以下、「粉末A」と略称する。)を得た。当該測定結果を表1に記載した。
粉末A20質量%、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤)(以下、「分散剤a」と略称する。)10質量%、メチルイソブチルケトン70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液A」と略称する)を得た。ここで、分散液A内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ25nmであった。
【0104】
分散液Aを適宜MIBKで希釈して10mm厚の矩形容器に入れ、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した時の透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は45.5%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は12.8%、波長2100nmの透過率は15.5となった。これは以下の比較例1に示す従来方法で作製したセシウムタングステンブロンズに比べて、可視光透過バンドが明らかに広がっており、波長2100nmの熱線遮蔽性能が向上していることが確認された。粉末Aの粉体色の測定結果を表1に、透過率の測定結果を表2および図1に記載した。
【0105】
[実施例2](Cs0.20WOのMIBK分散液)
タングステン酸(HWO)と水酸化セシウム(CsOH)の各粉末を、Cs/W(モル比)=0.20/1.00相当となる割合で秤量したのちメノウ乳鉢で十分混合して混合粉末とした。当該混合粉末を、Nガスをキャリアーとした0.8%Hガス供給下で加熱し550℃の温度で20分の還元処理を行った後、Nガス雰囲気下で800℃、1時間焼成して、六方晶を有し、a軸の格子定数が7.4143Å、c軸の格子定数が7.5766Åで、粉体色が、L表色系において、Lが47.55、aが−5.17、bが−6.07であるセシウムタングステンブロンズ粉末(以下、「粉末B」と略称する。)を得た。当該測定結果を表1に記載した。
粉末B20質量%、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤)(以下、分散剤bと記載する。)10質量%、メチルイソブチルケトン70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液B」と略称する。)を得た。ここで、分散液B内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ23nmであった。
【0106】
分散液Bを用いた以外は実施例1と同様にして、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した時の透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は55.7%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は18.3%、波長2100nmの透過率は18.5%となった。これは以下の比較例1に示す従来方法で作製したセシウムタングステンブロンズに比べて、可視光透過バンドが明らかに広がっており、波長2100nmの熱線遮蔽性能が向上していることが確認された。粉末Bの粉体色の測定結果を表1に、透過率の測定結果を表2および図1に記載した。
【0107】
[実施例3](Cs0.33WOのMIBK分散液)
タングステン酸(HWO)と水酸化セシウム(CsOH)の各粉末を、Cs/W(モル比)=0.33/1.00相当となる割合で秤量したのちメノウ乳鉢で十分混合して混合粉末とした。当該混合粉末を、Nガスをキャリアーとした0.3%Hガス供給下で加熱し500℃の温度で6時間の還元処理を行った後、Nガス雰囲気下で800℃、1時間焼成して、六方晶を有し、a軸の格子定数が7.4097Å、c軸の格子定数が7.6033Åで、粉体色が、L表色系において、Lが39.58、aが−1.63、bが−7.33であるセシウムタングステンブロンズ粉末(以下、「粉末C」と略称する。)を得た。当該測定結果を表1に記載した。
粉末C20質量%、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤)(以下、分散剤cと記載する。)10質量%、メチルイソブチルケトン70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液C」と略称する。)を得た。ここで、分散液C内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ25nmであった。
【0108】
分散液Cを用いた以外は実施例1と同様にして、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した時の透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は33.4%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は11.6%、波長2100nmの透過率は21.4%となった。これは以下の比較例1に示す従来方法で作製したセシウムタングステンブロンズに比べて、可視光透過バンドが明らかに広がっており、波長2100nmの熱線遮蔽性能が向上していることが確認された。粉末Cの粉体色の測定結果を表1に、透過率の測定結果を表2および図1に記載した。
【0109】
[実施例4](Cs0.33WOのMIBK分散液)
粉末C100質量部に、ベンゾトリアゾール化合物を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF製、TINUVIN384−2)を1質量部、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物を含むアミノエーテル系HALS(BASF製、TINUVIN123)を1質量部、酸化防止剤として、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含むヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF製、商品名IRGANOX1135)を1質量部となるように秤量した。これらを、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液D」と略称する。)を得た。ここで、分散液D内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ25nmであった。
【0110】
分散液Dを用いた以外は実施例1と同様にして、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した時の透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は34.2%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は10.4%、波長2100nmの透過率は21.2%となった。これは以下の比較例1に示す従来方法で作製したセシウムタングステンブロンズに比べて、可視光透過バンドが明らかに広がっており、波長2100nmの熱線遮蔽性能が向上していることが確認された。透過率の測定結果を表2および図1に記載した。
【0111】
[比較例1](Cs0.33WOのMIBK分散液)
ガスをキャリアーとした5%Hガス供給下で加熱し550℃の温度で1時間の還元処理を行った後、Nガス雰囲気下で800℃、1時間焼成した以外は実施例3と同様にして、六方晶を有し、a軸の格子定数が7.4080Å、c軸の格子定数が7.6111Åで、粉体色が、L表色系において、Lが36.11、aが0.52、bが−5.54である比較例1に係るセシウムタングステンブロンズ粉末(以下、「粉末E」と略称する。)を得た。当該測定結果を表1に記載した。
この粉末を分散剤と溶媒と共にペイントシェーカーを用いて分散液(以下、「分散液E」と略称する。)を作製したところ、その平均分散粒子径は23nmであった。
そして、分散液Eの可視光透過率が85%になるように希釈率を調整し、分散液Eの分光透過率を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は26.0%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は13.3%、波長2100nmの透過率は24.4%となった。
以上より、実施例1〜3に比べて波長800〜900nmにおける透過率の平均値が低く、波長2100nmの透過率の透過率が高いことが確認された。粉末Eの粉体色の測定結果を表1に、透過率の測定結果を表2および図1に記載した。
【0112】
[実施例1〜4および比較例1の評価]
実施例1〜4に係る熱線遮蔽微粒子おいては、従来の複合タングステン酸化物微粒子である比較例1と比較して、可視光透過率が85%のとき、波長800〜900nmの近赤外光の透過率の平均値が高く、波長1200〜1500nm、波長2100nmの透過率が低い。この結果から、複合タングステン酸化物微粒子が発揮する高い遮熱特性を担保しながら、波長800〜900nmの近赤外光では高い透過率が得られ、肌へのジリジリ感が減少することが判明した。
【0113】
【表1】
【表2】
図1