【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明する。
【0069】
[実施例1]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,900W、アルゴンガス流量を17sccm、窒素ガス流量を40sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
【0070】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス、二酸化炭素ガス及びメタンガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccm、二酸化炭素ガス流量を15sccm、メタンガス流量を5sccmで一定として、600秒間放電させて、ハーフトーン位相シフト膜上に、単層のCrOC層からなるクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
【0071】
クロム含有膜の膜厚は57nmであり、クロム含有膜の組成をX線光電分光法(XPS)で分析した結果、Cr:O:C=47:24:29(原子比)であった。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.43%(光学濃度ODは2.37)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.09である。なお、上記と同様の方法で成膜したクロム含有膜について、その表面粗さを、原子間力顕微鏡(AFM)により、測定したところ、二乗平均平方根粗さ(RMS)が0.63nm、1μm角の範囲での最大高低差(Rmax)が4.7nmと良好で、欠陥検査時に感度を上げても、乱反射が起きずに検査感度の低下を起こすことのない膜であることが確認された。
【0072】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を40sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO
2膜をスパッタリングにより成膜して、透明基板上に、光学膜、クロム含有膜及びハードマスク膜を順に形成した第4の態様のフォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
【0073】
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
【0074】
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。上記と同様の方法で形成したクロム含有膜のパターンについて、TEMによる断面観察を実施した。200nmラインアンドスペース(L&S)パターンの断面観察像を
図5に示す。その結果、ハードマスク膜のパターンとほぼ同じ幅で、クロム含有膜のパターンが形成されており、サイドエッチングが抑制されており、垂直性の高い断面形状が得られていることが確認された。
【0075】
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
【0076】
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの所定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
【0077】
得られたフォトマス
クのハーフトーン位相シフト膜のパターンの線幅を評価したところ、ハーフトーン位相シフト膜の線幅は200nmに形成されており、寸法精度が良好であった。
【0078】
[実施例2]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,900W、アルゴンガス流量を17sccm、窒素ガス流量を40sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
【0079】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス、二酸化炭素ガス及びメタンガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccm、二酸化炭素ガス流量を15sccm、メタンガス流量を5sccmで一定として、550秒間放電させて、厚さ52nmのCrOC層を形成し、CrOC層の形成から連続して、アルゴンガス、窒素ガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccm、窒素ガス流量を27sccm、酸素ガス流量を15sccmで一定として、62秒間放電させて、厚さ5nmのCrON層を形成して、ハーフトーン位相シフト膜上に、
CrOC層とCrON層の2層からなるクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
【0080】
クロム含有膜全体の膜厚は57nmであり、クロム含有膜の組成をX線光電分光法(XPS)で分析した結果、CrOC層はCr:O:C=47:24:29(原子比)、CrON層はCr:O:N=41:49:10(原子比)であった。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.46%(光学濃度ODは2.34)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.06である。なお、上記と同様の方法で成膜したクロム含有膜について、その表面粗さを、原子間力顕微鏡(AFM)により、測定したところ、二乗平均平方根粗さ(RMS)が0.50nm、1μm角の範囲での最大高低差(Rmax)が4.3nmと良好で、欠陥検査時に感度を上げても、乱反射が起きずに検査感度の低下を起こすことのない膜であることが確認された。
【0081】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を40sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO
2膜をスパッタリングにより成膜して、透明基板上に、光学膜、クロム含有膜及びハードマスク膜を順に形成した第4の態様のフォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
【0082】
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
【0083】
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。上記と同様の方法で形成したクロム含有膜のパターンについて、TEMによる断面観察を実施した。200nmラインアンドスペース(L&S)パターンの断面観察像を
図6に示す。その結果、ハードマスク膜のパターンとほぼ同じ幅で、クロム含有膜のパターンが形成されており、サイドエッチングが抑制されており、垂直性の高い断面形状が得られていることが確認された。
【0084】
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
【0085】
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの所定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
【0086】
得られたフォトマス
クのハーフトーン位相シフト膜のパターンの線幅を評価したところ、ハーフトーン位相シフト膜の線幅は200nmに形成されており、寸法精度が良好であった。
【0087】
[実施例3]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,900W、アルゴンガス流量を17sccm、窒素ガス流量を40sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
【0088】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス、二酸化炭素ガス及びメタンガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccm、二酸化炭素ガス流量を15sccm、メタンガス流量を5sccmで一定として、594秒間放電させて、厚さ56nmのCrOC層を形成し、CrOC層の形成から連続して、アルゴンガス、窒素ガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccm、窒素ガス流量を27sccm、酸素ガス流量を15sccmで一定として、22秒間放電させて、厚さ2nmのCrON層を形成して、ハーフトーン位相シフト膜上に、
CrOC層とCrON層の2層からなるクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
【0089】
クロム含有膜全体の膜厚は58nmであり、クロム含有膜の組成をX線光電分光法(XPS)で分析した結果、CrOC層はCr:O:C=47:24:29(原子比)、CrON層はCr:O:N=41:49:10(原子比)であった。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.42%(光学濃度ODは2.38)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.10である。なお、上記と同様の方法で成膜したクロム含有膜について、その表面粗さを、原子間力顕微鏡(AFM)により、測定したところ、二乗平均平方根粗さ(RMS)が0.46nm、1μm角の範囲での最大高低差(Rmax)が4.1nmと良好で、欠陥検査時に感度を上げても、乱反射が起きずに検査感度の低下を起こすことのない膜であることが確認された。
【0090】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を40sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO
2膜をスパッタリングにより成膜して、透明基板上に、光学膜、クロム含有膜及びハードマスク膜を順に形成した第4の態様のフォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
【0091】
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
【0092】
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。上記と同様の方法で形成したクロム含有膜のパターンについて、TEMによる断面観察を実施した。200nmラインアンドスペース(L&S)パターンの断面観察像を
図7に示す。その結果、ハードマスク膜のパターンとほぼ同じ幅で、クロム含有膜のパターンが形成されており、サイドエッチングが抑制されており、垂直性の高い断面形状が得られていることが確認された。
【0093】
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
【0094】
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの所定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
【0095】
得られたフォトマス
クのハーフトーン位相シフト膜のパターンの線幅を評価したところ、ハーフトーン位相シフト膜の線幅は200nmに形成されており、寸法精度が良好であった。
【0096】
[比較例1]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,900W、アルゴンガス流量を17sccm、窒素ガス流量を40sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
【0097】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び二酸化炭素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccm、二酸化炭素ガス流量を20sccmで一定として、400秒間放電させて、ハーフトーン位相シフト膜上に、単層のCrOC層からなるクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
【0098】
クロム含有膜の膜厚は49nmであり、クロム含有膜の組成をX線光電分光法(XPS)で分析した結果、Cr:O:C=57:22:21(原子比)であった。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.41%(光学濃度ODは2.39)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.11である。なお、上記と同様の方法で成膜したクロム含有膜について、その表面粗さを、原子間力顕微鏡(AFM)により、測定したところ、二乗平均平方根粗さ(RMS)が1.29nm、1μm角の範囲での最大高低差(Rmax)が9.22nmで、欠陥検査時に感度を上げようとすると、表面の荒れにより乱反射が発生してしまうため、検査感度を上げることができない膜であることが確認された。
【0099】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を40sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO
2膜をスパッタリングにより成膜して、透明基板上に、光学膜、クロム含有膜及びハードマスク膜を順に形成した第4の態様のフォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
【0100】
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
【0101】
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。上記と同様の方法で形成したクロム含有膜のパターンについて、TEMによる断面観察を実施した。200nmラインアンドスペース(L&S)パターンの断面観察像を
図8に示す。その結果、ハードマスク膜のパターンの幅より細く、クロム含有膜のパターンが形成されており、特に、ハードマスク膜側でパターンの幅が狭く、透明基板側に向かって、パターンの幅が広がるテーパー形状であることが確認された。また、透明基板側のクロム含有膜のパターンの幅は、ほぼハードマスク膜のパターン幅と同じであった。更に、クロム含有膜の表面が凸状になっている部分があり、表面が荒れていることも観察された。
【0102】
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
【0103】
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの所定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
【0104】
得られたフォトマス
クのハーフトーン位相シフト膜のパターンの線幅を評価したところ、ハーフトーン位相シフト膜の線幅は200nmに形成されており、寸法精度は良好であった。しかし、表面の荒れが欠陥検査感度を落としてしまうため、このフォトマスクブランクは、先端向けフォトマスクブランクとしては適さないものであった。
【0105】
[比較例2]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,900W、アルゴンガス流量を17sccm、窒素ガス流量を40sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
【0106】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス、二酸化炭素ガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccm、二酸化炭素ガス流量を5sccm、酸素ガス流量を15sccmで一定として、262秒間放電させて、ハーフトーン位相シフト膜上に、単層のCrOC層からなるクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
【0107】
クロム含有膜の膜厚は49nmであり、クロム含有膜の組成をX線光電分光法(XPS)で分析した結果、Cr:O:
C=62:30:8(原子比)であった。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.43%(光学濃度ODは2.37)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.09である。なお、上記と同様の方法で成膜したクロム含有膜について、その表面粗さを、原子間力顕微鏡(AFM)により、測定したところ、二乗平均平方根粗さ(RMS)が0.36nm、1μm角の範囲での最大高低差(Rmax)が7.86nmと良好で、欠陥検査時に感度を上げても、乱反射が起きずに検査感度の低下を起こすことのない膜であることが確認された。
【0108】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を40sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO
2膜をスパッタリングにより成膜して、透明基板上に、光学膜、クロム含有膜及びハードマスク膜を順に形成した第4の態様のフォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
【0109】
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
【0110】
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。上記と同様の方法で形成したクロム含有膜のパターンについて、TEMによる断面観察を実施した。200nmラインアンドスペース(L&S)パターンの断面観察像を
図9に示す。その結果、ハードマスク膜のパターンの幅より細く、クロム含有膜のパターンが形成されており、特に、ハードマスク膜側でパターンの幅が狭く、透明基板側に向かって、パターンの幅が広がるテーパー形状で、かつクロム含有膜のサイドエッチングが大きいことが確認された。
【0111】
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
【0112】
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの所定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
【0113】
得られたフォトマス
クのハーフトーン位相シフト膜のパターンの線幅を評価したところ、ハーフトーン位相シフト膜の線幅は200nmからずれており、寸法精度が劣っていた。
【0114】
以上、実施例により本発明について説明したが、上記実施例は、本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。この実施例を種々変形することは、本発明の範囲内にあり、更に、本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは、上記記載から自明である。