特許第6819589号(P6819589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6819589回転電機用コイル、回転電機用コイルの製造方法及びマイカテープ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819589
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】回転電機用コイル、回転電機用コイルの製造方法及びマイカテープ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/30 20060101AFI20210114BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20210114BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20210114BHJP
   H01B 17/60 20060101ALI20210114BHJP
   H01B 3/40 20060101ALI20210114BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20210114BHJP
   H01B 17/56 20060101ALI20210114BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   H02K3/30
   H02K15/12 D
   H01B7/00 303
   H01B17/60 B
   H01B3/40 M
   H01B13/00 517
   H01B17/56 A
   B32B27/18 Z
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-529891(P2017-529891)
(86)(22)【出願日】2016年7月15日
(86)【国際出願番号】JP2016071048
(87)【国際公開番号】WO2017014202
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-142943(P2015-142943)
(32)【優先日】2015年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴耶
(72)【発明者】
【氏名】室町 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】滝田 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】福島 敬二
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 由高
【審査官】 末續 礼子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/053374(WO,A1)
【文献】 特開平10−014183(JP,A)
【文献】 特開2007−294702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/30
B32B 27/18
H01B 3/40
H01B 7/00
H01B 13/00
H01B 17/56
H01B 17/60
H02K 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル導体と、前記コイル導体の外周に配置された絶縁層と、を有し、前記絶縁層はマイカテープの硬化物を含み、
前記マイカテープは、マイカと、補強材と、熱硬化性樹脂とを含み、示差走査熱量測定(DSC)により測定される、前記熱硬化性樹脂の硬化反応により生じる反応熱が−270J/g以下であり、硬化後のガラス転移温度(Tg)が155℃以上である、回転電機用コイル。
【請求項2】
前記マイカテープは無機充填材をさらに含む、請求項1に記載の回転電機用コイル。
【請求項3】
前記マイカテープに含まれる前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1又は請求項2に記載の回転電機用コイル。
【請求項4】
前記マイカテープは硬化促進剤をさらに含む、請求項3に記載の回転電機用コイル。
【請求項5】
前記無機充填材は窒化ホウ素及びアルミナから選択される少なくとも一方を含む、請求項2に記載の回転電機用コイル。
【請求項6】
前記コイル導体の外周に前記マイカテープを巻き付ける工程と、
前記コイル導体の外周に巻き付けられた前記マイカテープから絶縁層を形成する工程と、を有する、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の回転電機用コイルの製造方法。
【請求項7】
マイカと、補強材と、熱硬化性樹脂とを含み、示差走査熱量測定(DSC)により測定される、前記熱硬化性樹脂の硬化反応により生じる反応熱が−270J/g以下であり、硬化後のガラス転移温度(Tg)が155℃以上である、マイカテープ。
【請求項8】
無機充填材をさらに含む、請求項7に記載のマイカテープ。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項7又は請求項8に記載のマイカテープ。
【請求項10】
硬化促進剤をさらに含む、請求項9に記載のマイカテープ。
【請求項11】
前記無機充填材は窒化ホウ素及びアルミナから選択される少なくとも一方を含む、請求項8に記載のマイカテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機用コイル、回転電機用コイルの製造方法及びマイカテープに関する。
【背景技術】
【0002】
発電機、電動機等の回転電機に用いられるコイル(以下、単にコイルとも称する)は、一般にコイル導体と、コイル導体を外部環境から絶縁するためにコイル導体の外周に配置される絶縁層とを有している。絶縁層を形成する材料として、マイカと、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と、ガラスクロス等の補強材とを含むマイカテープが広く用いられている(例えば、国際公開第2015−053374号参照)。
【0003】
マイカテープは、半硬化状態の樹脂、補強材及びマイカが一体化した構造を有し、コイル導体等の導電体の周囲に巻き付けた後、プレス成形することで絶縁層と導電体の一体成形を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイカテープに求められる特性としては、電気絶縁性のほか、樹脂フロー性が良好であることが挙げられる。導電体に巻きつけた状態で適度な樹脂フローが生じることで、テープ同士がよく密着し、絶縁層中のボイドの発生が抑制される結果、絶縁耐圧の低下が抑制される。また、回転電機用コイルの用途によっては絶縁層が充分な耐熱性を有していることが求められる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、耐熱性及び電気絶縁性に優れる絶縁層を有する回転電機用コイル及びその製造方法を提供することを課題とする。本発明はまた、硬化後の耐熱性及び硬化前の樹脂フロー性に優れるマイカテープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>コイル導体と、前記コイル導体の外周に配置された絶縁層と、を有し、前記絶縁層はマイカテープの硬化物を含み、
前記マイカテープは、マイカと、補強材と、熱硬化性樹脂とを含み、示差走査熱量測定(DSC)により測定される、前記熱硬化性樹脂の硬化反応により生じる反応熱が−270J/g以下である、回転電機用コイル。
<2>前記マイカテープは無機充填材をさらに含む、<1>に記載の回転電機用コイル。
<3>前記マイカテープに含まれる前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、<1>又は<2>に記載の回転電機用コイル。
<4>前記マイカテープは硬化促進剤をさらに含む、<3>に記載の回転電機用コイル。
<5>前記マイカテープは硬化後のガラス転移温度(Tg)が155℃以上である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の回転電機用コイル。
<6>前記コイル導体の外周に前記マイカテープを巻き付ける工程と、
前記コイル導体の外周に巻き付けられた前記マイカテープから絶縁層を形成する工程と、を有する、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の回転電機用コイルの製造方法。
<7>マイカと、補強材と、熱硬化性樹脂とを含み、示差走査熱量測定(DSC)により測定される、前記熱硬化性樹脂の硬化反応により生じる反応熱が−270J/g以下であるマイカテープ。
<8>無機充填材をさらに含む、<7>に記載のマイカテープ。
<9>前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、<7>又は<8>に記載のマイカテープ。
<10>硬化促進剤をさらに含む、<9>に記載のマイカテープ。
<11>硬化後のガラス転移温度(Tg)が155℃以上である、<7>〜<10>のいずれか1項に記載のマイカテープ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐熱性及び電気絶縁性に優れる絶縁層を有する回転電機用コイル及びその製造方法が提供される。また、本発明によれば、硬化後の耐熱性及び硬化前の樹脂フロー性に優れるマイカテープが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係るマイカテープの断面を示す概略図である。
図2】樹脂の反応熱と、マイカテープ硬化物のガラス転移温度(Tg)との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0010】
<回転電機用コイル>
本実施形態の回転電機用コイルは、コイル導体と、前記コイル導体の外周に配置された絶縁層と、を有し、前記絶縁層はマイカテープの硬化物を含み、前記マイカテープは、マイカと、補強材と、熱硬化性樹脂と、を含み、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry、DSC)により測定される、前記熱硬化性樹脂の硬化反応により生じる反応熱(以下、樹脂の反応熱ともいう)が−270J/g以下である。
【0011】
本実施形態の回転電機用コイルは、耐熱性及び電気絶縁性に優れる絶縁層を有している。
【0012】
本実施形態のコイルの絶縁層の形成に用いられるマイカテープの詳細及び好ましい態様は、後述する本実施形態のマイカテープと同様である。また、本実施形態のコイルに用いられるコイル導体の材質、形状、大きさ等は特に制限されず、コイルの用途等に応じて選択できる。
【0013】
<回転電機用コイルの製造方法>
本実施形態の回転電機用コイルの製造方法は、コイル導体の外周にマイカテープを巻き付ける工程と、前記コイル導体の外周に巻き付けられた前記マイカテープから絶縁層を形成する工程と、を有する。
【0014】
コイル導体の外周にマイカテープを巻き付ける方法は特に制限されず、通常行われる方法を採用することができる。
【0015】
コイル導体の外周に巻き付けられた前記マイカテープから絶縁層を形成する方法は、特に制限されない。例えば、コイル導体にマイカテープを巻き付けた後にマイカテープを加圧しながら加熱(ヒートプレス)して、あらかじめマイカテープに含まれている樹脂成分をマイカテープの外に流出させて重なり合うマイカテープ間を埋めるようにし、これを硬化させて絶縁層を形成する方法(プリプレグマイカテープの場合)、及びコイル導体にマイカテープを巻きつけた後に真空加圧含浸法(Vacuum Pressure Impregnation、VPI)にて樹脂成分をマイカテープに含浸し、これを硬化させて絶縁層を形成する方法(ドライマイカテープの場合)が挙げられる。本発明の効果を充分に発揮する観点からは、前者の方法が好ましい。
【0016】
<マイカテープ>
本実施の形態のマイカテープは、マイカと、補強材と、熱硬化性樹脂と、を含み、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry、DSC)により測定される、前記熱硬化性樹脂の硬化反応により生じる反応熱が−270J/g以下である。
【0017】
本発明者らは検討の結果、樹脂の反応熱が−270J/g以下である条件を満たす場合は、当該条件を満たさない場合に比べ、マイカテープ中の熱硬化性樹脂を硬化させた後のガラス転移温度(Tg、以下「マイカテープ硬化物のTg」ともいう)が顕著に高いことを見出した。
【0018】
図2は樹脂の反応熱と、マイカテープ硬化物のTgとの相関関係を示す図である。図2によれば、樹脂の反応熱の絶対値が大きいほどマイカテープ硬化物のTgも高まる傾向が認められる。また、樹脂の反応熱が−250J/g〜−300J/gである場合にその傾向が顕著であることがわかる。さらに、樹脂の反応熱が−251J/gである場合と−270J/gである場合とを比較すると、マイカテープ硬化物のTgが111℃(−251J/g)から155℃(−270J/g)へと急激に上昇することが本発明者らの検討により明らかになった。
【0019】
樹脂の反応熱の絶対値が大きいほどマイカテープ硬化物のTgも高い傾向にあるのは、例えば、樹脂の反応熱の絶対値が大きい熱硬化性樹脂は硬化前の重合反応が進んでおらず分子量が小さいため、硬化反応の際の反応点の密度が高かったり、分子が動きやすく反応しやすいためと考えられる。しかしながら、樹脂の反応熱が−270J/g以下であるという条件を満たす場合は当該条件を満たさない場合に比べてガラス転移温度が顕著に上昇するという知見は、これまで報告されていない。
【0020】
さらに、本発明者らの検討の結果、マイカテープにおける樹脂の反応熱が−270J/g以下であるという条件を満たす場合は、当該条件を満たさない場合に比べ、マイカテープ中の熱硬化性樹脂の樹脂フロー性が顕著に向上することを見出した。熱硬化性樹脂の樹脂フロー性が良好であると、マイカテープを対象物に巻きつけた際にテープ同士の密着性に優れ、テープ内のボイドの発生が抑制され、良好な絶縁耐圧が実現される傾向にある。
【0021】
一般に、硬化前の熱硬化性樹脂の重合反応が進んでいない(すなわち、樹脂の反応熱の絶対値が大きい)ほど、粘度が低く樹脂フロー性に優れる傾向にあると考えられる。しかしながら、樹脂の反応熱が−270J/g以下であるという条件を満たす場合は当該条件を満たさない場合に比べて樹脂フロー性が顕著に向上するという知見は、これまで報告されていない。
【0022】
マイカテープ硬化物のTgを高くする観点からは、樹脂の反応熱は−280J/g以下であることが好ましく、−300J/g以下であることがより好ましく、−350J/g以下であることがさらに好ましい。
【0023】
マイカテープ硬化物のTgは、155℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましい。マイカテープ硬化物のTgが155℃以上であると、実用上充分な耐熱性が得られる傾向にある。
【0024】
本実施の形態において、樹脂の反応熱はDSCにより測定される値である。具体的には例えば、示差走査熱量測定装置(株式会社パーキンエルマー、DSC8000)を用いて測定される発熱ピークの面積から求められる値である。測定は、マイカテープから作製した質量10mgの試料を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/min、測定温度範囲30℃〜300℃の条件で行う。上記示差走査熱量測定装置を用いる場合は付属の解析ソフト(株式会社パーキンエルマー、Pyris Ver.11.1.1.0492)を使用し、発熱ピークのベースラインからの立ち上がりから再びベースラインと一致する裾までのピークの面積を算出して樹脂の反応熱が得られる。
【0025】
本実施の形態において、マイカテープ硬化物のガラス転移温度(Tg)は動的粘弾性の測定により得られる値である。具体的には、例えば、動的粘弾性装置(TA Instruments株式会社、RSA−G2 Solids Analyzer)を用いて測定して得られる。測定は、引張モードにて、昇温速度2℃/min、スパン間距離20mmの条件で行う。
【0026】
(マイカ)
本実施の形態におけるマイカは、特に制限されない。例えば、未焼成硬質マイカ、焼成硬質マイカ、未焼成軟質マイカ、焼成軟質マイカ、合成マイカ及びフレークマイカを用いることができる。価格及び入手のしやすさの観点からは、未焼成硬質マイカを用いることが好ましい。マイカは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。マイカを2種類以上併用する場合としては、例えば、種類の異なるマイカを2種以上併用する場合、同じ種類で平均粒子径が異なるマイカを2種以上併用する場合、並びに種類及び平均粒子径の異なるマイカを2種以上用いる場合が挙げられる。
【0027】
電気絶縁性向上の観点からは、マイカテープに含まれるマイカは、JIS標準篩を用いて篩い分けしたときに、粒子径が2.8mm以上であるマイカ片の割合が、マイカ片全体の45質量%未満であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
充分な絶縁破壊電界強度を確保する観点からは、マイカテープに含まれるマイカは、JIS標準篩を用いて篩い分けしたときに、粒子径が0.5mm以上であるマイカ片の割合が、マイカ片全体の40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
【0029】
前記JIS標準篩はJIS−Z−8801−1:2006に準拠し、ISO3310−1:2000に対応する。尚、ISO3310−1:2000を用いる場合には、JIS−Z−8801−1:2006と同様に篩い目の形状が正方形であるものを適用することが好ましい。
【0030】
マイカテープに含まれるマイカにおけるJIS標準篩を用いて篩い分けしたときの粒子径が2.8mm以上であるマイカ片の割合、及び粒子径が0.5mm以上であるマイカ片の割合は、例えば、以下のようにして確認することができる。
【0031】
マイカテープの裏打ち層(補強材)とマイカ層の界面に剃刀を差し込み、裏打ち層からマイカ層を剥離する。剥離したマイカ層1gをメチルエチルケトン100gに分散させ、10分間振とう後、8000回転/分(rpm)で5分間遠心分離する。上澄み液を除去して残った固形分に対して、メチルエチルケトン100gを加え、10分間振とう後、8000回転/分(rpm)で5分間遠心分離する。さらにもう一度、上澄み液を除去して残った固形分に対して、メチルエチルケトン100gを加え、10分間振とうした後、8000回転/分(rpm)で5分間遠心分離する。上澄み液を除去して残った固形分1gにメチルエチルケトン100gを加え、ミックスローターにて30分間分散させ、さらに10分間振とうする。その後、容器を振とうさせながら、目開き2.8mmから目開き0.5mmの順にJIS標準篩(JIS−Z−8801−1:2006、ISO3310−1:2000、東京スクリーン株式会社、試験用ふるい)で篩い分けする。
【0032】
篩い分けの結果、目開き2.8mm(又は0.5mm)の篩いの目を通過しなかったマイカ片を「粒子径が2.8mm(又は0.5mm)以上であるマイカ片」とし、篩い分けする前のマイカ片の全量中の「粒子径が2.8mm(又は0.5mm)以上であるマイカ片」の割合(質量%)を「JIS標準篩を用いて篩い分けしたときの粒子径が2.8mm(又は0.5mm)以上であるマイカ片の割合」とする。
【0033】
(補強材)
本実施の形態における補強材は、特に制限されない。例えば、無機材料又は有機材料の繊維で構成されるクロスが挙げられる。無機材料としてはガラスが挙げられる。有機材料としてはアラミド、ポリイミド、ポリエステル等の高分子が挙げられる。無機材料又は有機材料は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。有機材料として高分子材料を繊維の一部として用いる場合には、クロスの縦糸又は横糸のいずれか一方として、又はその両方として用いてもよい。ガラス繊維を用いたガラスクロスと有機高分子フィルムとを併用してもよい。補強材の厚みは特に制限されず、例えば、10μm〜100μmの範囲内から選択することができる。
【0034】
(熱硬化性樹脂)
本実施の形態における熱硬化性樹脂は、特に制限されない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、及びアクリル樹脂が挙げられる。硬化後の耐熱性及び硬化前の樹脂フロー性の観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
(その他の成分)
マイカテープは、上記した成分のほか、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、無機充填材、硬化剤、硬化促進剤、有機溶剤等が挙げられる。熱伝導率向上の観点からは、マイカテープは無機充填材を含むことが好ましい。成型性(硬化性)の観点からは、マイカテープは熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂と、硬化促進剤とを含むことが好ましい。本明細書において硬化促進剤とは、触媒作用により熱硬化性樹脂の硬化を促進する化合物を意味する。
【0036】
マイカテープが無機充填材を含む場合、その種類は特に制限されない。例えば、窒化ホウ素、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素及び水酸化アルミニウムが挙げられる。無機充填材を用いる場合は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。無機充填材を2種以上併用する場合としては、例えば、同じ成分で平均粒子径が異なる無機充填材を2種以上用いる場合、平均粒子径が同じで成分の異なる無機充填材を2種類以上用いる場合並びに平均粒子径及び種類の異なる無機充填材を2種類以上用いる場合が挙げられる。
【0037】
熱伝導性向上の観点からは、無機充填材は窒化ホウ素及びアルミナから選択される少なくとも1種が好ましく、窒化ホウ素がより好ましい。窒化ホウ素としては、六方晶窒化ホウ素(h−BN)、立方晶窒化ホウ素(c−BN)、ウルツ鉱型窒化ホウ素等が挙げられる。これらの中でも、六方晶窒化ホウ素(h−BN)が好ましい。窒化ホウ素は、鱗片状の一次粒子であってもよく、一次粒子が凝集されて形成される二次粒子であってもよい。
【0038】
窒化ホウ素の平均粒子径は、1μm〜40μmであることが好ましく、5μm〜20μmであることがより好ましく、5μm〜10μmであることがさらに好ましい。窒化ホウ素の平均粒子径が1μm以上であると、熱伝導率及び絶縁耐電圧がより向上する傾向がある。窒化ホウ素の平均粒子径が40μm以下であると、粒子の形状による熱伝導率の異方性が大きくなりすぎることを抑制できる。
【0039】
無機充填材の平均粒子径は、レーザー回折散乱方式粒度分布測定装置(マイクロトラック MT3000II、日機装株式会社)を用いることで測定可能である。具体的には、純水中に窒化ホウ素粉末を投入した後に、超音波分散機で分散して得られる分散液中の体積基準の粒子径分布を測定し、小径側からの累積が50%になるときの粒子径(D50)として求められる。
【0040】
マイカテープが無機充填材を含む場合、その含有率は特に制限されない。熱伝導性及び充填性の観点からは、マイカテープに含有される補強材とマイカを除いた不揮発成分の合計量に対して15体積%〜40体積%であることが好ましく、25体積%〜35体積%であることがより好ましい。
【0041】
マイカテープが硬化剤を含む場合、その種類は特に制限されない。例えば、ジシアンジアミド、芳香族ジアミン等のアミン硬化剤、及びフェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール樹脂硬化剤が挙げられる。硬化剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
マイカテープが硬化促進剤を含む場合、その種類は特に制限されない。例えば、2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール等のイミダゾール触媒、トリメチルアミン等の第3級アミン化合物、三フッ化ホウ素モノエチルアミン等のルイス酸のアミン錯体、及び有機ホスフィン化合物等の有機リン化合物が挙げられる。硬化促進剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
マイカテープが有機溶剤を含む場合、その種類は特に制限されない。例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、エタノール、アセトン及びシクロヘキサンノンが挙げられる。有機溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
ある実施態様では、樹脂組成物は、窒化ホウ素を20質量%〜40質量%、熱硬化性樹脂を10質量%〜40質量%、硬化促進剤を1質量%〜10質量%、有機溶剤を10質量%〜50質量%の割合で含む。
【0045】
(マイカテープの構成例)
以下、本実施の形態のマイカテープの構成の一例について、図面を参照して説明する。図中の各部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0046】
図1において、符号1は無機充填材を、2は補強材を、3は熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を、4はマイカをそれぞれ示す。補強材を含む部分(補強材含有層5)に含まれる樹脂組成物3と、マイカを含む部分(マイカ含有層6)に含まれる樹脂組成物3とは同じであってもよく、異なっていてもよい。マイカテープの製造効率の観点からは、同じであることが好ましい。マイカテープが無機充填材1を含む場合は、無機充填材1は実質的にマイカ含有層6には存在せず、実質的に補強材含有層5のみに存在することが好ましい。
【0047】
(マイカテープの製造方法)
本実施の形態のマイカテープの製造方法は、特に制限されない。例えば、本実施の形態のマイカテープは、補強材と、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物と、マイカとをこの順に配置して積層体を作製する工程と、前記積層体を乾燥する乾燥工程と、を含む方法によって製造することができる。
【0048】
上記製造方法において、補強材と、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物と、マイカとをこの順に配置して積層体を得る工程を実施する方法は、特に制限されない。例えば、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物をロールコーター等で補強材の片面に塗布し、その上にマイカペーパ等の所望の形状に加工されたマイカを配置して積層体を得る方法が挙げられる。また、樹脂組成物を補強材に塗布した後、マイカを配置する前に樹脂組成物中の揮発成分の少なくとも一部を除去するために乾燥させてもよく、樹脂組成物を乾燥させずにマイカを配置してもよい。
【0049】
積層体を乾燥する乾燥工程の方法は、特に制限されない。例えば、防爆型乾燥機等を用いて行うことができる。乾燥工程は70℃以上で行うことが好ましく、80℃以上で行うことがより好ましく、90℃以上で行うことがさらに好ましい。また、乾燥工程は140℃以下で行うことが好ましく、130℃以下で行うことがより好ましく、120℃以下で行うことがさらに好ましい。乾燥工程中の温度は一定であっても、変化してもよい。乾燥工程を行う時間は特に制限されず、例えば、1分〜60分であってよい。
【0050】
本実施形態のマイカテープは、例えば、回転電機コイル等に用いられるコイル導体等の被絶縁体の外周に設けられる絶縁層の形成に用いることができる。
【0051】
本実施形態のマイカテープを用いて絶縁層を形成する方法は特に制限されず、従来から公知の製造方法を適用することができる。例えば、被絶縁体にマイカテープを巻き付けた後にマイカテープを加圧しながら加熱(ヒートプレス)して、あらかじめマイカテープに含まれている樹脂成分をマイカテープの外に流出させて重なり合うマイカテープ間を埋めるようにし、これを硬化させて絶縁層を形成する方法(プリプレグマイカテープの場合)、被絶縁体にマイカテープを巻きつけた後に真空加圧含浸法(Vacuum Pressure Impregnation、VPI)にて樹脂成分をマイカテープに含浸し、これを硬化させて絶縁層を形成する方法(ドライマイカテープの場合)などが挙げられる。本発明の効果を充分に発揮する観点からは、前者の方法が好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、本実施の形態について実施例をもとに説明するが、本実施の形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
(樹脂組成物の調製)
熱硬化性樹脂としてエポキシノボラック樹脂(ダウ・ケミカル日本株式会社、商品名「D.E.N.438」(「D.E.N.」は、登録商標)、以下の実施例及び比較例において同じ)36.7質量%と、硬化促進剤として三フッ化ホウ素モノエチルアミン(和光純薬工業株式会社、以下の実施例及び比較例において同じ)1.1質量%と、有機溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)(和光純薬工業株式会社、以下の実施例及び比較例において同じ)31.1質量%とを混合した。その後、窒化ホウ素(平均粒子径5μm、電気化学工業株式会社、商品名「SP−3」、以下の実施例及び比較例において同じ)を31.1質量%加え、さらに混合して樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物中の全不揮発成分中の窒化ホウ素の含有率は、31体積%であった。
【0054】
(マイカテープの作製)
前記で得た樹脂組成物をロールコーターで、補強材であるガラスクロス(日東紡績株式会社、商品名:WEA03G103)の片面に塗布した。次いで、単位面積当たりのマイカ量が180g/mであるマイカペーパを塗布面に配置して、マイカペーパと補強材とを樹脂組成物を介して貼り合わせ、積層体を作製した。
積層体の作製後、90℃で30分の熱風乾燥を行った。その後、幅30mmの帯状に切断し、マイカテープを得た。
【0055】
(マイカテープ硬化物の作製)
上記で得たマイカテープに対し、圧力10MPa、110℃で10分の加熱成形を行った。その後、圧力10MPa、170℃で60分の加熱成形を行い、マイカテープ硬化物を得た。
【0056】
(評価)
上記で得たマイカテープ及びマイカテープ硬化物について、以下の評価を行った。
【0057】
(樹脂フロー量)
マイカテープを幅30mm、長さ30mmに切断した試験片を3枚作製し、これらを重ねた上に200gの金属製角材を載せて110℃で5分間加熱した。加熱後、基材部分(補強材及びマイカペーパに相当)から流れ出したフロー樹脂部分を切り取り、加熱前の総質量に対する加熱後のフロー樹脂の質量から下記式により樹脂フロー量(質量%)を求めた。結果を表1に示す。
樹脂フロー量(質量%)=切り取ったフロー樹脂部分の質量/加熱前の試験片の総質量×100
【0058】
(樹脂の反応熱)
樹脂の反応熱を、以下のようにして測定した。
マイカテープを直径6mmの円形に複数切り抜いた。切り抜いた円形のテープを、総質量が10mgとなるように5枚重ねてアルミニウムサンプルパン(株式会社パーキンエルマー)に計り取った。
次いで、示差走査熱量測定装置(株式会社パーキンエルマー、DSC8000)を用いて反応熱を測定した。測定条件は窒素雰囲気下、昇温速度を10℃/min、測定温度範囲を30℃〜300℃とし、結果の解析には付属の解析ソフト(株式会社パーキンエルマー、Pyris Ver.11.1.1.0492)を使用し、発熱ピークのベースラインからの立ち上がりから再びベースラインと一致する裾までのピークの面積を算出した。結果を表1に示す。
【0059】
(ガラス転移温度)
作製したマイカテープ硬化物のガラス転移温度(Tg)を、動的粘弾性装置(TA Instruments株式会社、RSA−G2 Solids Analyzer)を用いて測定した。測定は、引張モードにて、昇温速度2℃/min、スパン間距離20mmの条件で行った。結果を表1に示す。
【0060】
(熱伝導率)
作製したマイカテープ硬化物の熱伝導率を、熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社、HC−110)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0061】
<実施例2>
(樹脂組成物の調製)
熱硬化性樹脂としてエポキシノボラック樹脂36.0質量%と、硬化促進剤として三フッ化ホウ素モノエチルアミン1.1質量%と、有機溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)40.2質量%とを混合した。その後、窒化ホウ素を22.7質量%加え、さらに混合して樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物中の全不揮発成分中の窒化ホウ素の含有率は、25体積%であった。
【0062】
(マイカテープ及びマイカテープ硬化物の作製)
上記で得た樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、マイカテープ及びマイカテープ硬化物を作製した。
【0063】
(評価)
上記で得たマイカテープ及びマイカテープ硬化物について、実施例1と同様にして樹脂フロー量、フロー樹脂中の窒化ホウ素含有量、樹脂の反応熱、マイカテープ硬化物のガラス転移温度、及びマイカテープ硬化物の熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
<実施例3>
(樹脂組成物の調製)
熱硬化性樹脂としてエポキシノボラック樹脂36.0質量%と、硬化促進剤として三フッ化ホウ素モノエチルアミン1.1質量%と、有機溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)40.2質量%とを混合した。その後、窒化ホウ素を22.7質量%加え、さらに混合して樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物中の全不揮発成分中の窒化ホウ素の含有率は、25体積%であった。
【0065】
(マイカテープ及びマイカテープ硬化物の作製)
上記で得た樹脂組成物を用いたことと、積層体の熱風乾燥を100℃で30分行ったこと以外は実施例1と同様にして、マイカテープ及びマイカテープ硬化物を作製した。
【0066】
(評価)
上記で得たマイカテープ及びマイカテープ硬化物について、実施例1と同様にして樹脂フロー量、フロー樹脂中の窒化ホウ素含有量、樹脂の反応熱、マイカテープ硬化物のガラス転移温度、及びマイカテープ硬化物の熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0067】
<実施例4>
(樹脂組成物の調製)
熱硬化性樹脂としてエポキシノボラック樹脂36.0質量%と、硬化促進剤として三フッ化ホウ素モノエチルアミン1.1質量%と、有機溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)40.2質量%とを混合した。その後、窒化ホウ素を22.7質量%加え、さらに混合して樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物中の全不揮発成分中の窒化ホウ素の含有率は、25体積%であった。
【0068】
(マイカテープ及びマイカテープ硬化物の作製)
上記で得た樹脂組成物を実施例1と同様にしてガラスクロスに塗布し、マイカペーパと貼り合わせて積層体を作製した。その後、得られた積層体をポリエチレン製フィルムで包装し、60℃で24時間保温した。その後、ポリエチレン製フィルムを剥離し、実施例1と同様にして積層体の熱風乾燥を行い、幅30mmに切断してマイカテープを得た。さらに、実施例1と同様にしてマイカテープ硬化物を作製した。
【0069】
(評価)
上記で得たマイカテープ及びマイカテープ硬化物について、実施例1と同様にして樹脂フロー量、フロー樹脂中の窒化ホウ素含有量、樹脂の反応熱、マイカテープ硬化物のガラス転移温度、及びマイカテープ硬化物の熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
<実施例5>
(樹脂組成物の調製)
熱硬化性樹脂としてエポキシノボラック樹脂36.0質量%と、硬化促進剤として三フッ化ホウ素モノエチルアミン1.1質量%と、有機溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)40.2質量%とを混合した。その後、窒化ホウ素を22.7質量%加え、さらに混合して樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物中の全不揮発成分中の窒化ホウ素の含有率は、25体積%であった。
【0071】
(マイカテープ及びマイカテープ硬化物の作製)
上記で得た樹脂組成物を実施例1と同様にしてガラスクロスに塗布し、マイカペーパと貼り合わせて積層体を作製した。その後、得られた積層体をポリエチレン製フィルムで包装し、60℃で48時間保温した。その後、ポリエチレン製フィルムを剥離し、実施例1と同様にして積層体の熱風乾燥を行い、幅30mmに切断してマイカテープを得た。さらに、実施例1と同様にしてマイカテープ硬化物を作製した。
【0072】
(評価)
上記で得たマイカテープ及びマイカテープ硬化物について、実施例1と同様にして樹脂フロー量、フロー樹脂中の窒化ホウ素含有量、樹脂の反応熱、マイカテープ硬化物のガラス転移温度、及びマイカテープ硬化物の熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
<比較例1>
(樹脂組成物の調製)
熱硬化性樹脂としてエポキシノボラック樹脂36.0質量%と、硬化促進剤として三フッ化ホウ素モノエチルアミン1.1質量%と、有機溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)40.2質量%とを混合した。その後、窒化ホウ素を22.7質量%加え、さらに混合して樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物中の全不揮発成分中の窒化ホウ素の含有率は、25体積%であった。
【0074】
(マイカテープ及びマイカテープ硬化物の作製)
上記で得た樹脂組成物を実施例1と同様にしてガラスクロスに塗布し、マイカペーパと貼り合わせて積層体を作製した。その後、得られた積層体をポリエチレン製フィルムで包装し、60℃で72時間保温した。その後、ポリエチレン製フィルムを剥離し、実施例1と同様にして積層体の熱風乾燥を行い、幅30mmに切断してマイカテープを得た。さらに、実施例1と同様にしてマイカテープ硬化物を作製した。
【0075】
(評価)
上記で得たマイカテープ及びマイカテープ硬化物について、実施例1と同様にして樹脂フロー量、フロー樹脂中の窒化ホウ素含有量、樹脂の反応熱、マイカテープ硬化物のガラス転移温度、及びマイカテープ硬化物の熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
<比較例2>
(樹脂組成物の調製)
熱硬化性樹脂としてエポキシノボラック樹脂36.0質量%と、硬化促進剤として三フッ化ホウ素モノエチルアミン1.1質量%と、有機溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)40.2質量%とを混合した。その後、窒化ホウ素を22.7質量%加え、さらに混合して樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物中の全不揮発成分中の窒化ホウ素の含有率は、25体積%であった。
【0077】
(マイカテープ及びマイカテープ硬化物の作製)
上記で得た樹脂組成物を実施例1と同様にしてガラスクロスに塗布し、マイカペーパと張り合わせて積層体を作製した。その後、得られた積層体をポリエチレン製フィルムで包装し、60℃で96時間保温した。その後、ポリエチレン製フィルムを剥離し、実施例1と同様にして積層体の熱風乾燥を行い、幅30mmに切断してマイカテープを得た。さらに、実施例1と同様にしてマイカテープ硬化物を作製した。
【0078】
(評価)
上記で得たマイカテープ及びマイカテープ硬化物について、実施例1と同様にして樹脂フロー量、フロー樹脂中の窒化ホウ素含有量、樹脂の反応熱、マイカテープ硬化物のガラス転移温度及びマイカテープ硬化物の熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、実施例1〜5のマイカテープは硬化前の樹脂フロー量が大きく、硬化後のガラス転移温度が高かった。
乾燥前に60℃で72時間保温した比較例1のマイカテープは、樹脂の反応熱が−251J/gであった。その結果、実施例のマイカテープに比べて樹脂フロー量が著しく低く、硬化後のTgも実用上充分とはいえない程度に低かった。
乾燥前に60℃で96時間保温した比較例2のマイカテープは、樹脂の反応熱が−200J/gであった。その結果、実施例のマイカテープに比べて樹脂フロー量が著しく低く、硬化後のTgも実用上充分とはいえない程度に低かった。
【0081】
以上の結果より、本実施形態のマイカテープは、硬化後の耐熱性と硬化前の樹脂フロー性とに優れていることがわかった。また、本実施形態のマイカテープを回転電機用コイルの製造に用いた場合、本実施形態のマイカテープから形成される絶縁層は、耐熱性と電気絶縁性に優れていると考えられる。
【符号の説明】
【0082】
1:無機充填材、2:補強材、3:樹脂組成物、4:マイカ、5:補強材含有層、6:マイカ含有層
図1
図2