(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コレステリック樹脂層が、式(2)で表される化合物を含有する液晶組成物から形成されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコレステリック樹脂積層体の製造方法:
R3−C3−D3−C5−M−C6−D4−C4−R4 式(2)
但し式(2)において、
R3及びR4は、それぞれ独立して、(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表し、
D3及びD4は、それぞれ独立して、単結合、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表し、
C3〜C6は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−O−(C=O)−O−、−CH2−(C=O)−O−、及び−CH2O−(C=O)−からなる群より選択される基を表し、
Mは、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類からなる群から選択された互いに同一又は異なる2個〜4個の骨格が、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−O−(C=O)−O−、−CH2−(C=O)−O−、及び−CH2O−(C=O)−からなる群より選択される結合基によって結合された基を表し、
前記Mが有しうる置換基は、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1個〜10個のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R5、−O−C(=O)−R5、−C(=O)−O−R5、−O−C(=O)−O−R5、−NR5−C(=O)−R5、−C(=O)−NR5R7、または−O−C(=O)−NR5R7であり、R5及びR7は、水素原子又は炭素数1個〜10個のアルキル基を表し、R5及びR7がアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR6−C(=O)−、−C(=O)−NR6−、−NR6−、または−C(=O)−が介在していてもよく(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)、R6は、水素原子または炭素数1個〜6個のアルキル基を表し、
前記置換基を有してもよい炭素数1個〜10個のアルキル基における置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1個〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2個〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3個〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2個〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2個〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、又は炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を包含する。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を包含する。また、「(チオ)エポキシ」とは、エポキシ及びチオエポキシの両方を包含する。また、「イソ(チオ)シアネート」とは、イソシアネート及びイソチオシアネートの両方を包含する。
【0013】
〔1.コレステリック樹脂積層体の概要〕
本発明のコレステリック樹脂積層体は、基材、中間層、及びコレステリック樹脂層をこの順に備える。
図1は、本発明のコレステリック樹脂積層体の一例を概略的に示す断面図である。
図1において、コレステリック樹脂積層体100は、基材101と、コレステリック樹脂層103と、その間に介在する中間層122とを備える。
【0014】
〔2.基材〕
基材を構成する材料は、特に限定されず、その例としては、樹脂、金属、ガラス、及び紙が挙げられる。
コレステリック樹脂積層体の使用の態様において、基材が、コレステリック樹脂層より視認者側に位置する場合は、光透過性の材料を好ましく用いうる。光透過性の材料は、好ましくは基材の全光線透過率が70%以上となる材料である。
【0015】
コレステリック樹脂積層体の使用の態様において、基材が、コレステリック樹脂層より視認者側に位置し、且つコレステリック樹脂層において反射する円偏光成分を利用する場合には、基材を構成する材料としては、基材を透過する光の偏光が変化する度合いが少ない材料を好ましく用いうる。そのような材料の好ましい例としては、アセチルセルロース樹脂及びシクロオレフィン樹脂が挙げられる。入手のコスト及び中間層との親和性を容易に得られる観点からは、アセチルセルロース樹脂がより好ましい。アセチルセルロース樹脂のより具体的な例としては、トリアセチルセルロース樹脂が挙げられる。
【0016】
図1に示す例では、基材101は単一の材料からなる単層であるが、本発明における基材はこれに限られず、複数の層からなってもよく、その場合複数の層を構成する材料は互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、製造の容易さの観点からは、単層であることが好ましい。
【0017】
基材の厚みは、特に限定されず、コレステリック樹脂積層体の用途に応じて適宜設定しうる。基材の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上であり、一方好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下である。
【0018】
基材の成形方法の例としては、溶融成形法及び溶液流延法が挙げられる。溶融成形法の例としては、溶融押し出しにより成形する溶融押出法、並びに、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、及び延伸成形法が挙げられる。これらの方法の中でも、機械強度及び表面精度に優れた延伸前基材を得る観点から、溶融押出法、インフレーション成形法及びプレス成形法が好ましい。その中でも特に、残留溶媒の量を減らせること、並びに、効率よく簡単な製造が可能なことから、溶融押出法が特に好ましい。また、基材としては、市販品を適宜入手して使用しうる。
【0019】
基材の表面は、必要に応じて表面処理が施されたものであってもよい。例えば、基材の、中間層と接する側の面が、中間層の形成に先立ち、鹸化処理、コロナ処理等の処理を施しうる。かかる処理により、例えば中間層との親和性を高めることができる。
【0020】
〔3.コレステリック樹脂層〕
コレステリック樹脂層は、コレステリック規則性を有する固体の樹脂の層である。コレステリック規則性とは、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は光学的にカイラルな構造となる。
【0021】
コレステリック樹脂層は、通常円偏光分離機能を有する。すなわち、右円偏光及び左円偏光のうちの一方の円偏光を透過させ、他方の円偏光の一部又は全部を反射させる性質を有する。コレステリック樹脂層における反射は、円偏光を、そのキラリティを維持したまま反射する。
【0022】
円偏光分離機能を発揮する波長は、コレステリック樹脂層におけるらせん構造のピッチに依存する。らせん構造のピッチとは、らせん構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離である。このらせん構造のピッチの大きさを変えることによって、円偏光分離機能を発揮する波長を変えることができる。また、層内において、らせん構造のピッチの大きさが連続的に変化したコレステリック樹脂層を形成することにより、単一のコレステリック樹脂層により広帯域に亘る円偏光分離機能を得ることができる。コレステリック樹脂層は、好ましくは可視光波長領域の一部または全部の帯域の光について円偏光分離機能を有し、当該帯域において、選択的に円偏光を反射するものとしうる。
【0023】
コレステリック樹脂層は、樹脂層形成用の適切な支持体上に液晶組成物の層を塗布して、液晶組成物の層とし、この層を硬化することにより形成しうる。
【0024】
〔3.1.液晶組成物〕
液晶組成物は、液晶性化合物を含む流体状の材料である。ここで便宜上「液晶組成物」と称する材料は、2以上の物質の混合物のみならず、単一の物質からなる材料をも包含する。
【0025】
液晶性化合物としては、重合性を有する液晶性化合物が好ましい。重合性を有する液晶性化合物を含む液晶組成物は、その液晶性化合物を重合させることにより、容易に硬化させることができる。
【0026】
液晶性化合物としては、コレステリック液晶性化合物を用いうる。コレステリック液晶性化合物は、コレステリック液晶性を呈しうる化合物である。このようなコレステリック液晶性化合物を含む液晶組成物を用いることにより、支持体の面に液晶組成物の層を形成した場合に当該層において液晶性化合物がコレステリック液晶相を呈するので、これを硬化させることによりコレステリック樹脂層を製造することができる。具体的には、液晶性化合物をコレステリック液晶相を呈した状態で重合して液晶組成物の層を硬化させることによって、コレステリック規則性を呈したまま硬化した非液晶性のコレステリック樹脂層を得ることができる。
【0027】
上に述べた、らせん構造のピッチの大きさが連続的に変化したコレステリック樹脂層を形成しうる液晶組成物の例としては、下記式(1)で表される化合物、及び、特定の棒状液晶性化合物を含む液晶組成物が挙げられる。以下において、この特定の液晶組成物を、「液晶組成物(X)」という場合がある。
【0028】
R
1−A
1−B−A
2−R
2 (1)
式(1)において、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、任意の結合基が介在していてもよい(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基である。
【0029】
前記アルキル基及びアルキレンオキサイド基は、置換されていないか、若しくはハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい。さらに、前記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基は、炭素原子数1個〜2個のアルキル基、及びアルキレンオキサイド基と結合していてもよい。
【0030】
R
1及びR
2として好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0031】
また、R
1及びR
2の少なくとも一方は、反応性基であることが好ましい。R
1及びR
2の少なくとも一方として反応性基を有することにより、前記式(1)で表される化合物が硬化時にコレステリック樹脂層中に固定され、より強固な層を形成することができる。ここで反応性基とは、例えば、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、及びアミノ基を挙げることができる。
【0032】
式(1)において、A
1及びA
2はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。前記1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基は、置換されていないか、若しくはハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1個〜10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の置換基で1つ以上置換されていてもよい。A
1及びA
2のそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0033】
A
1及びA
2として特に好ましいものとしては、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基が挙げられる。これらの芳香環骨格は脂環式骨格と比較して比較的剛直であり、棒状液晶性化合物のメソゲンとの親和性が高く、配向均一性がより高くなる。
【0034】
式(1)において、Bは、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−O−(C=O)−O−、−CH
2−(C=O)−O−、及び−CH
2O−(C=O)−からなる群より選択される。
Bとして特に好ましいものとしては、単結合、−O−(C=O)−及び−CH=N−N=CH−が挙げられる。
【0035】
式(1)で表される化合物は、少なくとも一種類が液晶性を有することが好ましく、また、キラリティを有することが好ましい。また、式(1)で表される化合物は、複数の光学異性体を組み合わせて用いることが好ましい。例えば、複数種類のエナンチオマーの混合物、複数種類のジアステレオマーの混合物、又は、エナンチオマーとジアステレオマーとの混合物を用いてもよい。式(1)で表される化合物の少なくとも一種は、その融点が、50℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【0036】
式(1)で表される化合物が液晶性を有する場合には、屈折率異方性Δnが高いことが好ましい。屈折率異方性Δnが高い液晶性化合物を式(1)で表される化合物として用いることによって、それを含む液晶組成物の屈折率異方性Δnを向上させることができ、円偏光を反射可能な波長範囲が広いコレステリック樹脂層を作製することができる。式(1)で表される化合物の少なくとも一種の屈折率異方性Δnは、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。屈折率異方性Δnは大きいほど好ましいが、現実的には0.35以下である。ここで、屈折率異方性Δnは、セナルモン法により測定しうる。例えば、硬化した樹脂の層を光学顕微鏡(ECLIPSE E600POL(透過・反射タイプ)に鋭敏色板、λ/4波長板、セナルモンコンペンセータ、GIFフィルター546nmを装着、ニコン社製)を用いて消光位(θ)を観察することからレタデーション(Re)をRe=λ(546nm)×θ/180の計算式により算出し、別に求めた層の厚み(d)から計算式Δn=Re/dによりΔnを算出できる。
【0037】
式(1)で表される化合物として特に好ましい具体例としては、下記の化合物(A1)〜(A9)が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記化合物(A3)において、「*」はキラル中心を表す。
【0040】
液晶組成物(X)において前記の式(1)で表される化合物と組み合わせて用いる液晶性化合物としては、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有する棒状液晶性化合物を用いうる。この棒状液晶性化合物としては、例えば、式(2)で表される化合物を挙げることができる。
R
3−C
3−D
3−C
5−M−C
6−D
4−C
4−R
4 式(2)
【0041】
式(2)において、R
3及びR
4は、反応性基であり、それぞれ独立して、(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。これらの反応性基を有することにより、液晶組成物を硬化させた際に、強度の高いコレステリック樹脂層を得ることができる。例えば、鉛筆硬度(JIS K5400)で、通常HB以上、好ましくはH以上であるコレステリック樹脂層を得ることができる。強度をこのように高くすることにより、コレステリック樹脂層の表面に傷をつきにくくできるので、ハンドリング性を高めることができる。
【0042】
式(2)において、D
3及びD
4は、それぞれ独立して、単結合、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。
【0043】
式(2)において、C
3〜C
6は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−O−(C=O)−O−、−CH
2−(C=O)−O−、及び−CH
2O−(C=O)−からなる群より選択される基を表す。
【0044】
式(2)において、Mは、メソゲン基を表す。具体的には、Mは、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類からなる群から選択された互いに同一又は異なる2個〜4個の骨格が、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−O−(C=O)−O−、−CH
2−(C=O)−O−、及び−CH
2O−(C=O)−等の結合基によって結合された基を表す。
【0045】
前記メソゲン基Mが有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1個〜10個のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R
5、−O−C(=O)−R
5、−C(=O)−O−R
5、−O−C(=O)−O−R
5、−NR
5−C(=O)−R
5、−C(=O)−NR
5R
7、または−O−C(=O)−NR
5R
7が挙げられる。ここで、R
5及びR
7は、水素原子又は炭素数1個〜10個のアルキル基を表す。R
5及びR
7がアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
6−C(=O)−、−C(=O)−NR
6−、−NR
6−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、R
6は、水素原子または炭素数1個〜6個のアルキル基を表す。
【0046】
前記「置換基を有してもよい炭素数1個〜10個のアルキル基」における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1個〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2個〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3個〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2個〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2個〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
また、前記の棒状液晶性化合物は、非対称構造であることが好ましい。ここで非対称構造とは、式(2)において、メソゲン基Mを中心として、R
3−C
3−D
3−C
5−と−C
6−D
4−C
4−R
4が異なる構造のことをいう。棒状液晶性化合物として非対称構造のものを用いることにより、配向均一性をより高めることができる。
【0048】
棒状液晶性化合物の屈折率異方性Δnは、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。屈折率異方性Δnは大きいほど好ましいが、現実的には0.35以下である。屈折率異方性Δnが0.30以上の棒状液晶性化合物を用いると、棒状液晶性化合物の紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高い屈折率異方性Δnを有する棒状液晶性化合物を用いることにより、高い光学的性能(例えば、円偏光の選択反射性能)を有するコレステリック樹脂層を得ることができる。
【0049】
棒状液晶性化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物(B1)〜(B9)が挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
(式(1)で表される化合物の合計重量)/(棒状液晶性化合物の合計重量)で示される重量比は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.15以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.65以下、特に好ましくは0.45以下である。前記の重量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、液晶組成物の層において配向均一性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、配向均一性を高くできる。また、液晶組成物の液晶相の安定性を高くできる。さらに、液晶組成物の屈折率異方性Δnを高くできるので、例えば、円偏光の選択反射性能等のような所望の光学的性能を有するコレステリック樹脂層を安定して得ることができる。ここで、式(1)で表される化合物の合計重量とは、式(1)で表される化合物を1種類のみ用いた場合にはその重量を示し、2種類以上を用いた場合には合計の重量を示す。同様に、棒状液晶性化合物の合計重量とは、棒状液晶性化合物を1種類のみ用いた場合にはその重量を示し、2種類以上を用いた場合には合計の重量を示す。
【0052】
また、式(1)で表される化合物と棒状液晶性化合物とを組み合わせて用いる場合、式(1)で表される化合物の分子量が600未満であることが好ましく、棒状液晶性化合物の分子量が600以上であることが好ましい。これにより、式(1)で表される化合物が、それよりも分子量の大きい棒状液晶性化合物の隙間に入り込むことができるので、配向均一性を向上させることができる。
【0053】
液晶組成物(X)等の液晶組成物は、カイラル剤を含みうる。通常、コレステリック樹脂層のねじれ方向は、使用するカイラル剤の種類及び構造により適宜選択できる。カイラル剤の具体例としては、特開2005−289881号公報、特開2004−115414号公報、特開2003−66214号公報、特開2003-313187号公報、特開2003−342219号公報、特開2000−290315号公報、特開平6−072962号公報、米国特許第6468444号公報、国際公開第98/00428号、特開2007−176870号公報、等に掲載されるものを適宜使用することができ、例えばBASF社パリオカラーのLC756として入手できる。また、カイラル剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0054】
カイラル剤の量は、所望する光学的性能を低下させない範囲で任意に設定しうる。カイラル剤の具体的な量は、液晶組成物中で、通常1重量%〜60重量%である。
【0055】
コレステリック樹脂層は、その機械的強度の向上及び耐久性の向上のために、架橋構造を有する化合物の層であることが好ましい。そのようなコレステリック樹脂層を得るために、液晶組成物(X)等の液晶組成物は、架橋剤を含みうる。架橋剤は、例えば、液晶組成物の層の硬化時に反応したり、硬化後の熱処理によって反応を促進したり、湿気により自然に反応が進行したりすることによって、コレステリック樹脂層の架橋密度を高めることができる。架橋剤としては、例えば、紫外線、熱、湿気等で反応しうるものを用いうる。中でも、架橋剤としては、液晶性化合物の配向均一性を悪化させないものが好ましい。
【0056】
架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;が挙げられる。また、架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いてもよい。触媒を用いることにより、コレステリック樹脂層の強度及び耐久性向上に加えて、生産性を向上させることができる。
【0057】
架橋剤の量は、液晶組成物の層を硬化して得られるコレステリック樹脂層における架橋剤の量が0.1重量%〜15重量%となるようにすることが好ましい。架橋剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、架橋密度を効果的に高めることができる。また、上限値以下にすることにより、液晶組成物の層の安定性を高めることができる。
【0058】
液晶組成物(X)等の液晶組成物は、光重合開始剤を含みうる。光重合開始剤としては、例えば、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させうる化合物が使用できる。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナミックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp’−ジクロロベンゾフェノン、pp’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタレン、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて公知の光増感剤又は重合促進剤としての三級アミン化合物を用いて、硬化性をコントロールしてもよい。
【0059】
光重合開始剤の量は、液晶組成物中0.03重量%〜7重量%であることが好ましい。光重合開始剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合度を高くできるので、コレステリック樹脂層の機械的強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、液晶性化合物の配向を良好にできるので、液晶組成物の液晶相を安定にできる。
【0060】
液晶組成物(X)等の液晶組成物は、界面活性剤を含みうる。界面活性剤としては、例えば、配向を阻害しないものを適宜選択して使用しうる。このような界面活性剤としては、例えば、疎水基部分にシロキサン又はフッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に挙げられる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤の具体例としては、OMNOVA社のPolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652;ネオス社のフタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D;セイミケミカル社のサーフロンのKH−40;等を用いることができる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0061】
界面活性剤の量は、コレステリック樹脂層における界面活性剤の量が0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。界面活性剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、液晶組成物の空気界面における配向規制力を高くできるので、配向欠陥を防止できる。また、上限値以下にすることにより、過剰の界面活性剤が液晶分子間に入り込むことによる配向均一性の低下を防止できる。
【0062】
液晶組成物(X)等の液晶組成物は、必要に応じてさらに任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、溶媒;ポットライフ向上のための重合禁止剤;耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤及び光安定化剤;等を挙げることができる。また、これらの任意成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの任意の成分の量は、所望する光学的性能を低下させない範囲で任意に設定しうる。
【0063】
本発明において使用する液晶組成物の製造方法は、特に限定されず、上記各成分を混合することにより液晶組成物を製造しうる。
【0064】
〔3.2.コレステリック樹脂層の具体的な形成方法〕
上に述べた液晶組成物(X)等の液晶組成物を、コレステリック樹脂層形成用の適切な支持体上に塗布して、液晶組成物の層とし、この層を硬化することにより、コレステリック樹脂層を形成しうる。
【0065】
支持体は、特に限定されず、当該方法の実施に適した、任意の単層又は複層のフィルムを用いうる。支持体の材料の例としては、脂環式オレフィンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンなどの鎖状オレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、変性アクリルポリマー、エポキシ樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂などの合成樹脂が挙げられる。これらの中でも、容易に入手可能である点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが好ましい。
【0066】
液晶組成物の塗布に先立ち、支持体の表面に、配向規制力を付与する処理を施しうる。かかる処理の例としては、支持体表面のラビング処理、支持体のフィルムの延伸処理等が挙げられる。また、支持体の表面と液晶組成物との親和性を高めるための、コロナ処理等の表面処理を行ってもよい。
【0067】
支持体は、その表面に配向膜を有していてもよいが、配向膜を有さないことが好ましい。その場合、上に述べた材料で形成されたフィルムの表面に直接、配向規制力を付与するラビング処理等の処理を施し、液晶組成物の塗布を行う。配向膜を構成する材料は、通常は、上に述べたフィルムの材料よりも脆い材料であるため、配向膜を有する支持体を用いた場合、ラビング等の配向規制力を付与する操作により、配向膜が削れて微細な粒子が発生し、不良が発生する場合がある。配向膜への配向規制力の付与方法としてラビングによらない方法を採用すればそのような不良の発生は回避できるが、そのようなラビングによらない配向規制力の付与では、使用できる液晶性化合物及び配向の態様が大きく制限され、且つ操作が複雑となる。これに対し、本発明において、配向膜を有さない支持体を採用することにより、そのような不都合を回避することができる。
【0068】
液晶組成物の塗布は、既知の塗布方法により実施しうる。塗布方法の例としては、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、及びバーコーティング法が挙げられる。
【0069】
液晶組成物を塗布して液晶組成物の層を形成した後、硬化の工程を行う前に、必要に応じ配向処理を行いうる。配向処理は、例えば液晶組成物の層を50〜150℃で0.5〜10分間加温することにより行いうる。当該配向処理を施すことにより、液晶組成物中の液晶性化合物を良好に配向させることができる。
【0070】
液晶組成物の層の硬化の処理は、1回以上のエネルギー線照射と加温処理との組み合わせにより行いうる。加温条件は、具体的には例えば、温度40〜200℃、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは50〜140℃、時間は1秒〜3分、好ましくは5〜120秒としうる。エネルギー線の例としては、紫外線、可視光及びその他の電磁波が挙げられる。エネルギー線照射は、具体的には例えば波長200〜500nmの光を0.01秒〜3分照射することにより行いうる。
【0071】
ここで、0.01〜50mJ/cm
2の微弱な紫外線照射と加温とを複数回交互に繰り返すことにより、らせん構造のピッチの大きさを連続的に大きく変化させた、反射帯域の広いコレステリック樹脂層を得ることができる。上記の微弱な紫外線照射等による反射帯域の拡張を行った後に、50〜10,000mJ/cm
2といった比較的強い紫外線を照射し、液晶性化合物を完全に重合させ、コレステリック樹脂層とすることができる。上記の反射帯域の拡張及び強い紫外線の照射は、空気下で行ってもよく、又はその工程の一部又は全部を、酸素濃度を制御した雰囲気(例えば、窒素雰囲気下)中で行うこともできる。
【0072】
また、コレステリック樹脂層を形成した後、その表面にエンボス加工を行う場合には、この時点で液晶性化合物を完全に重合させず、エンボス加工を行った後に追加の紫外線照射を行い、液晶性化合物を完全に重合させることができる。
【0073】
本発明において、配向膜等の他の層上へのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化の工程は、1回に限られず、塗布及び硬化を複数回繰り返し2層以上のコレステリック樹脂層を形成することもできる。ただし、液晶組成物(X)等の液晶組成物を用いることにより、1回のみのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化によっても、良好に配向したΔnが0.18以上の棒状液晶性化合物を含み、かつ5μm以上といった厚みのコレステリック樹脂層を容易に形成することができる。
【0074】
本発明において、コレステリック樹脂層の厚みは、十分な反射率を得る上で0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。また、膜の透明性を得る上で20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。なお、コレステリック樹脂層の厚みは、本発明の表示媒体が有するコレステリック樹脂層が2以上の層である場合は、各層の厚みの合計を、コレステリック樹脂層が1層である場合にはその厚みをさす。
【0075】
〔4.中間層〕
本発明のコレステリック樹脂積層体は、基材及びコレステリック樹脂層の間に中間層が介在することにより、コレステリック樹脂積層体の使用中の色の経時変化を低減しうる。特定の理論に拘束されるものでは無いが、その理由としては、例えば以下のことが考えられる。コレステリック樹脂層中には、重合していない単量体成分が存在する場合があり、コレステリック樹脂積層体の使用に際してコレステリック樹脂層が加熱されると、かかる単量体成分が層内を移動し、さらには他の層へ移行し、その濃度が変動する場合がある。そのような変動が生じると、コレステリック樹脂層中のらせん構造のピッチが変動し、反射帯域中心波長のシフトが発生しうる。ここで、基材及びコレステリック樹脂層の間に中間層が介在することにより、かかる単量体成分の移行が抑制され、それによりコレステリック樹脂積層体の使用中の色の経時変化を低減しうる。
【0076】
中間層を構成する材料としては、基材及びコレステリック樹脂層の間に介在し、これらと結合しうる材料を適宜選択しうる。好ましい態様において、中間層は、下記(i)又は(ii)である。
中間層(i):ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール化合物若しくはこれらの混合物を含む層。
中間層(ii):ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール化合物若しくはこれらの混合物と、硬化剤とを含む材料の硬化物の層。
特に、中間層として、変性ポリビニルアルコール化合物と、硬化剤とを含む材料の硬化物の層を採用することが、所定以下の反射帯域中心波長の加熱変化の値を得る上で特に好ましい。
【0077】
中間層の材料としてポリビニルアルコールが用いられる場合、かかるポリビニルアルコールとしては、一般的な、ポリビニル酢酸の加水分解によって得られるものを用いうる。したがって、本願においてポリビニルアルコールは、そのような製造方法によって得られた、アセトキシ基(−OCOCH
3)を含むものをも包含する。
中間層の材料として変性ポリビニルアルコール化合物が用いられる場合、かかる変性ポリビニルアルコール化合物の例としては、ポリビニルアルコールの−OH基を、置換基で置換したものが挙げられる。置換基の例としては、アセトアセトキシ基(−OCOCH
2COCH
3)、4級アンモニウム塩化物基(−NR
3Cl、Rはアルキル基であって、各々のRにおいて独立に、炭素数は好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2)、スルホン酸ナトリウム基(−SO
3Z、ZはNa等のアルカリ金属)、エチレンオキサイド基(−(CH
2CH
2O)
X−H、Xは好ましくは1以上、より好ましくは1)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。変性ポリビニルアルコール化合物は、一分子のポリビニルアルコールが多数有する−OH基の一部が置換されたものであってもよく、全部が置換されたものであってもよい。
【0078】
変性ポリビニルアルコール化合物の特に好ましい例としては、ポリビニルアルコールの−OH基の一部が、アセトアセトキシ基で置換されたものが挙げられる。このような変性ポリビニルアルコール化合物としては、市販の製品(例えば、日本合成化学社製、商品名「ゴーゼネックスZ(商標)」が入手可能である。
【0079】
中間層(ii)の材料として硬化剤が用いられる場合、かかる硬化剤としては、ポリビニルアルコール及び/又は変性ポリビニルアルコール化合物を、より強固に硬化しうる材料を、適宜選択して用いうる。硬化剤の例としては、ポリビニルアルコール及び/又は変性ポリビニルアルコール化合物と反応して架橋構造を形成しうる架橋剤が挙げられる。ポリビニルアルコールの架橋剤の例としては、ホウ酸、並びにチタン及びジルコニウムなどの金属のアルコキシ化合物が挙げられる。アセトアセトキシ基変性ポリビニルアルコール化合物の架橋剤の例としては、アミン化合物、メチロール化合物、ジルコニウムなどの金属塩が挙げられる。架橋剤としてはまた、市販の製品(例えば、ポリビニルアルコールの−OH基の一部が、アセトアセトキシ基で置換された変性ポリビニルアルコール化合物の硬化剤としての、日本合成化学社製、商品名「セーフリンクSPM−01」及び「セーフリンクSPM−02」)が入手可能である。このような硬化剤を用いることにより、中間層をより強固に硬化させ、その結果、得られるコレステリック樹脂積層体の耐熱性及び耐湿性を高めることができる。
【0080】
中間層は、上に述べた材料に加えて、任意の材料を含みうる。任意の材料の例としては、紫外線吸収剤、着色剤、及び帯電防止剤が挙げられる。中間層におけるこれらの任意成分の割合は、本発明の効果を過度に損ねない範囲で、適宜調整しうる。
【0081】
中間層の厚みは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、一方好ましくは100μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、さらにより好ましくは5μm以下である。中間層の厚みが前記下限以上であることにより、高温環境下におけるコレステリック樹脂層の変色を良好に抑制することができる。また、中間層の厚みが前記上限以下であることにより、高温環境下における各層の膨張量の差による基材またはコレステリック樹脂層のひび割れや破断を抑制することができる。
【0082】
〔5.コレステリック樹脂積層体の製造方法/中間層の形成方法〕
本発明のコレステリック樹脂積層体は、基材及びコレステリック樹脂層を形成し、さらにこれらの間に中間層を形成することにより、好ましく製造しうる。
好ましい態様において、中間層は、接着剤を硬化させてなる接着層である。したがって、本発明のコレステリック樹脂積層体は、基材及びコレステリック樹脂層を、接着剤を用いて接着することにより製造しうる。具体的には、本発明のコレステリック樹脂積層体は、基材及びコレステリック樹脂層を、接着剤の層を介して重ね合わせ、接着剤の層を硬化させ中間層を形成することにより製造しうる。
【0083】
中間層が中間層(i)である場合は、下記接着剤(i)を用いて中間層を形成しうる。また、中間層が中間層(ii)である場合は、下記接着剤(i)を用いて中間層を形成しうる。
接着剤(i):ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール化合物若しくはこれらの混合物を含む材料。
接着剤(ii):ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール化合物若しくはこれらの混合物と、硬化剤とを含む材料。
特に、接着剤として、変性ポリビニルアルコール化合物と、硬化剤とを含む材料を用いることが、所定以下の反射帯域中心波長の加熱変化の値を得る上で特に好ましい。
【0084】
接着剤は、上に述べた接着剤(i)又は(ii)の成分に加えて、任意の成分を含みうる。接着剤の成分の具体例としては、上に述べた中間層の材料と同様のものが挙げられる。
【0085】
接着剤は、さらに、溶媒を含みうる。かかる溶媒は、特に限定されず、他の成分の溶解及び製造工程における使用に適したものを適宜選定しうる。接着剤が、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール化合物若しくはこれらの混合物を含む場合は、これらの溶解に適した溶媒として、水を用いることが好ましい。
【0086】
接着剤中の固形分(溶媒以外の成分の割合)の割合は、他の成分の溶解及び製造工程における使用に適した範囲に適宜調整することができ、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、一方好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。
【0087】
接着剤が、上に述べた接着剤(ii)である場合、硬化剤の割合は、ポリビニルアルコール及び/又は変性ポリビニルアルコール化合物100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上であり、一方好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。硬化剤の割合が前記範囲内であることにより、強固な効果を、効率的に達成しうる。
【0088】
図1に示したコレステリック樹脂積層体100を製造する方法の具体例を、
図2〜
図4を参照して説明する。
図2〜
図4は、
図1に示したコレステリック樹脂積層体100の製造工程における複層物を概略的に示す断面図である。
【0089】
この例においては、まず、支持体111と、支持体111上に形成されたコレステリック樹脂層103とからなる複層物110を用意する。次に、
図2に示す通り、複層物110の、コレステリック樹脂層103側の表面110U上に、接着剤を塗布し、液体状態の接着剤の層121を形成する。次に、
図3に示す通り、接着剤の層121の上に基材101を重ね合わせ、(支持体111)/(コレステリック樹脂層103)/(接着剤の層121)/(基材101)の層構成を有する複層物120を得る。続いて、必要に応じて複層物120をラミネーターに通す等して加圧処理する。その後、液体状態の接着剤の層121を硬化させ、
図4に示す通り、(支持体111)/(コレステリック樹脂層103)/(中間層122)/(基材101)の層構成を有する複層物130を得る。さらに、複層物130から、支持体111を剥離することにより、
図1に示すコレステリック樹脂積層体100を得ることができる。
【0090】
接着剤を硬化させる条件は、用いる接着剤に適する条件を適宜設定しうる。
例えば、接着剤として接着剤(i)を用いる場合、接着剤の層を含む積層体を乾燥処理することにより、接着剤中の溶媒の全部又は一部を揮発させ、接着剤を硬化させることができる。
【0091】
接着剤として接着剤(ii)を用いる場合、硬化剤の反応に適した条件で処理することにより、接着剤を硬化させることができる。加熱により硬化剤の反応が促進する場合は、接着剤(i)の場合と同様の乾燥処理により、溶媒の揮発及び架橋反応等の反応を進行させ、接着剤を硬化させることができる。また、硬化剤として、紫外光等のエネルギー線を受けることにより硬化が進行するものを用いた場合は、そのようなエネルギー線の照射により、接着剤の硬化を達成しうる。接着剤として、接着剤(ii)等の、硬化剤を含む材料を用いることにより、得られるコレステリック樹脂積層体の耐熱性及び耐湿性等の物性を向上させることができる。
【0092】
〔6.反射帯域中心波長〕
本発明のコレステリック樹脂積層体は、130℃において8時間加熱した前後におけるコレステリック樹脂層の反射帯域中心波長の差が50nm以下である。
【0093】
コレステリック樹脂層の反射帯域中心波長は、コレステリック樹脂層の分光反射率を測定し、かかる測定結果に基づいて求めることができる。分光反射率の測定は、分光光度計(例えば日本分光(株)製、製品名「V−550」)を用いて行いうる。また、通常はコレステリック樹脂積層体のうち選択反射特性を有するのはコレステリック樹脂層のみであり、その場合コレステリック樹脂積層体全層を分光反射率の測定に供し、それによりコレステリック樹脂層の分光反射率を求めうる。
【0094】
分光反射率は、通常、横軸に波長、縦軸に当該波長における反射率をプロットしたグラフとして得られる。コレステリック樹脂層の反射帯域は、通常、かかるグラフにおいて、幅のあるピークとして示される。反射帯域中心波長λsは、かかるグラフにおいて、最大の反射率Rmaxの30%の反射率を示す2つの波長のうちの短波長側の波長λ1及び長波長側の波長λ2から、式λs=(λ1+λ2)/2により求めうる。
【0095】
図5は、コレステリック樹脂層の分光反射率の測定結果の一例と、それに基づき反射帯域中心波長を求める計算を模式的に示すグラフである。
図5において、分光反射率の測定結果は、曲線51で示される。分光反射率の最大値Rmaxの30%の反射率R30は、線52で示される水準となる。曲線51と線52との交点の、横軸上の値がλ1及びλ2となり、それらの平均が、反射帯域中心波長λsとなる。
【0096】
さらに、コレステリック樹脂積層体を、130℃において8時間加熱し、加熱後の反射帯域中心波長λtを同様に求める。加熱前後の、反射帯域中心波長の差Δλstは、式Δλst=|λs−λt|により求めうる。
差Δλstの値は、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下である。差Δλstの値の下限は特に限定されず、理想的には0nmである。
【0097】
このような、加熱前後における反射帯域中心波長の差が少ないコレステリック樹脂積層体は、中間層の材料を適宜選択することにより得ることができる。具体的には、上に挙げた中間層(i)又は中間層(ii)を用いることにより、加熱前後における反射帯域中心波長の差が少ないコレステリック樹脂積層体を得ることができる。
【0098】
コレステリック樹脂積層体は、円偏光分離機能を可視光のなるべく広い波長帯域において有するものが、表示媒体、加飾用材料等の用途に用いる上で好ましい。具体的には、加熱前の状態において、λ2−λ1で示される反射帯域の広さが50nm以上であることが好ましい。
【0099】
〔7.コレステリック樹脂積層体の用途〕
本発明のコレステリック樹脂積層体の用途は任意であり、光学的性質及びそれによる色や光沢等の意匠的な特徴を生かし、反射材、真正性識別用表示媒体、加飾用の材料等の製品の構成要素として用いうる。これらのうち、反射材、表示媒体及び加飾用材料について、それぞれ本発明の反射材、表示媒体及び加飾用材料として、以下において説明する。
【0100】
〔7.1.反射材〕
本発明の反射材は、前記本発明のコレステリック樹脂積層体を備える。具体的には、コレステリック樹脂積層体を適当な寸法に裁断し、そのまま反射材として用いうる他、コレステリック樹脂積層体を、適当な接着剤を介して他の部材に貼合し、それにより反射材を構成してもよい。反射材の用途は、特に限定されず、例えば、コレステリック樹脂層として赤外領域又は紫外領域に反射帯域を有するものを形成し、それを用いて赤外線反射材又は紫外線反射剤としうる。本発明の反射材は、前記本発明のコレステリック樹脂積層体を備えるため、高温の使用環境下において好適に用いうる。
【0101】
〔7.2.表示媒体〕
本発明の表示媒体は前記本発明のコレステリック樹脂積層体を備える。
表示媒体の例としては、物品の表面に情報を表示するために、物品の表面に設ける媒体が挙げられる。より具体的な例としては、コレステリック樹脂層を含む積層体が容易に複製できない性質を利用した、偽造防止用表示媒体、及びセキュリティ用表示媒体が挙げられる。偽造防止用表示媒体としては、例えば、真正性識別用のラベル、シールなどが挙げられる。セキュリティ用表示媒体としては、例えば、金券、商品券、チケット、証明書、セキュリティカード等の認証媒体等が挙げられる。
【0102】
好ましくは、本発明の表示媒体は、コレステリック樹脂積層体を、観察のしかたにより視認される像が異なる態様で備える。その具体的な例を、
図6〜
図8を参照して説明する。
【0103】
図6〜
図7は、
図1に示したコレステリック樹脂積層体を用いて、本発明の表示媒体の一例を製造する工程を概略的に示す断面図である。この例においては、ホログラムエンボス及び下地画像を有し、観察のしかたによってそれらの視認のされかたが異なる表示媒体を製造している。まず、
図1に示したコレステリック樹脂積層体100のコレステリック樹脂層103側の表面に、
図6に示す通り、エンボス型141を押し当て、それにより、コレステリック樹脂層103の表面に凹凸形状を付与し、凹凸コレステリック樹脂層106とする。凹凸形状の具体的な形状は特に限定されないが、光に照らされた際に凹凸形状が回折格子として機能する微細な凹凸構造を設けることにより、ホログラム像を表示できる表示媒体を得ることができる。
【0104】
その後、必要に応じて、凹凸コレステリック樹脂層106中に存在する未反応の単量体を紫外線照射等により硬化させ、より硬度の高い状態とする。さらにその後、
図7に示す通り、凹凸コレステリック樹脂層106の表面に、下地画像層142を形成する。下地画像層の形成は、印刷等の既知の手段を用いて行うことができ、それにより、基材101側から観察した際に画像が視認できる下地画像層を形成することができる。これにより、基材101、中間層122、凹凸コレステリック樹脂層106及び下地画像層142をこの順に備える表示媒体140を得ることができる。表示媒体140には、さらにその下地画像層142側の表面に、接着層、追加の基材層等の任意の層を形成し、それを介して物品の表面に設けることができる。
【0105】
図8は、
図6〜
図7で示した製造工程で得られた表示媒体140の使用の態様を概略的に示す断面図である。
図8において、表示媒体140の基材101側の面に、矢印A81で示す方向に非偏光が入射した場合、凹凸コレステリック樹脂層106の反射帯域においては、右円偏光及び左円偏光のうちの一方が凹凸コレステリック樹脂層106において反射され、矢印A82aに示す態様で出射する。一方、残余の光は、下地画像層142の表面において反射され、矢印A82bに示す態様で出射する。したがって、例えば凹凸コレステリック樹脂層106が右円偏光を選択的に反射する層である場合、右円偏光のみを透過するフィルターを介して表示媒体140を観察すると、ホログラムエンボスにより形成される像が観察され、左円偏光のみを透過するフィルターを介して表示媒体140を観察すると、下地画像の像が観察される。したがって、このような像の差異が観察された場合、表示媒体は本発明の構成要素を有する真正なものであると判断することができ、このような像の差異が観察されない場合、表示媒体は、電子印刷などにより作成された、本発明の表示媒体の構成を有しない非真正なものであると判断することができる。
【0106】
〔7.3.加飾用材料〕
本発明の加飾用材料は前記本発明のコレステリック樹脂積層体を備える。具体的には、コレステリック樹脂積層体を適当な寸法に裁断し、そのまま加飾用材料として用いうる他、コレステリック樹脂積層体を、適当な接着剤を介して他の部材に貼合し、それにより加飾用材料を構成してもよい。本発明の加飾用材料による加飾の対象となる物品としては、例えば、装飾品、文具、家具、自動車(内外装)、家電、パーソナルコンピューター、化粧品パッケージ等が挙げられる。本発明の加飾用材料により得る意匠的な効果は特に限定されず、コレステリック樹脂層の持つ外観を生かした任意のものとしうる。例えば、金属を用いずに金属調の光沢を付与することができるので、金属の使用が好ましくない用途においても金属調の意匠的効果を得ることができる。また、上に述べた表示媒体と同様に、コレステリック樹脂層上にホログラムエンボスを形成し、ホログラムの意匠的効果を得ることもできる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0108】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。
以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
【0109】
〔評価方法〕
〔反射帯域中心波長〕
実施例及び比較例で作製したコレステリック樹脂積層体の分光反射率を、分光光度計(日本分光(株)製、製品名「V−550」)を用いて行った。得られた分光反射率のグラフにおいて、最大の反射率Rmaxの30%の反射率を示す2つの波長のうちの短波長側の波長λ1及び長波長側の波長λ2から、式λs=(λ1+λ2)/2により、反射帯域中心波長を求めた。
【0110】
〔コレステリック樹脂層の色及びその変化〕
コレステリック樹脂層の色は、白色蛍光灯の照明下で、コレステリック樹脂層表面の法線方向から目視観察することにより評価した。
加熱処理による色の変化は、加熱処理前後で色の変化が認識できない場合は「なし」、色の変化があったが変化後の色が変化後の色と同系統の色であった場合は「わずか」、それ以外の色の変化があった場合は「大」と評価した。
【0111】
(製造例1:コレステリック樹脂層1)
表1に示す配合割合で各成分を混合して、コレステリック液晶組成物を調製した。
表1中の化合物(1)及び(2)は、それぞれ下記の構造を有する化合物である。化合物(1)は国際公開第WO2009/041512号に、また化合物(2)は特開平11−100575号公報に記載された方法に従い製造したものを使用した。
【0112】
【化3】
【0113】
【化4】
【0114】
支持体としてポリエステルフィルム(東洋紡製、コスモシャインA4100、膜厚100μm、片面に易接着処理面を有する)を用意した。この支持体の易接着処理面とは反対側の面をラビング処理した後、この面にコレステリック液晶組成物を♯5のワイヤーバーを使用して塗布し、液晶組成物の層を形成した。層を100℃で5分間配向処理し、当該層に対して窒素雰囲気下で3000mJ/cm
2の紫外線を照射して、厚み0.9μmのコレステリック樹脂層1を形成し、(支持体)/(コレステリック樹脂層1)の層構成を有する複層物1を得た。得られた複層物1のλ2−λ1の値は102nmであった。
【0115】
(製造例2:コレステリック樹脂層2)
コレステリック液晶組成物の配合割合を表1に示す通り変更した他は、製造例1と同様にして、支持体上に厚み1.0μmのコレステリック樹脂層2を形成し、(支持体)/(コレステリック樹脂層2)の層構成を有する複層物2を得た。得られた複層物2のλ2−λ1の値は63nmであった。
【0116】
【表1】
【0117】
(実施例1)
中間層を形成するための接着剤として、ポリビニルアルコール5重量%及び水95重量%からなる水溶液1を用意した。また、基材として、鹸化処理した厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムを用意した。
製造例1で得られた複層物1のコレステリック樹脂層1側の表面に、接着剤を塗布し、その上に基材を載せて重ね合わせ、複層物を得た。この複層物をラミネーターに通して加圧した後、60℃で2分間乾燥し、接着剤の層を硬化させて中間層とした。これにより、(支持体)/(コレステリック樹脂層1)/(中間層)/(基材)の層構成を有する複層物を得た。
その後、この複層物から、支持体を剥離した。これにより、(コレステリック樹脂層1)/(中間層)/(基材)の層構成を有するコレステリック樹脂積層体1を得た。中間層の厚みは0.9μmであった。
得られたコレステリック樹脂積層体1のコレステリック樹脂層1の色は、わずかに赤みかかった金色であった。コレステリック樹脂層1の反射帯域中心波長は619nmであった。
【0118】
次に、このコレステリック樹脂積層体1を130℃下で8時間加熱処理した後、再びコレステリック樹脂層1の色及び反射帯域中心波長を観察した。コレステリック樹脂層1の色は金色であり、加熱処理による色の変化は「わずか」と評価された。反射帯域中心波長は591nmであった。
【0119】
(実施例2)
中間層を形成するための接着剤として、変性ポリビニルアルコール化合物(日本合成化学工業製、商品名「ゴーセネックスZ−200」、ポリビニルアルコールの−OH基の一部をアセトアセトキシ基で置換したもの)5重量%及び水95重量%からなる水溶液2を用意した。接着剤として、水溶液1に代えてこの水溶液2を用いた他は、実施例1と同様にして、(コレステリック樹脂層1)/(中間層)/(基材)の層構成を有するコレステリック樹脂積層体2を得た。中間層の厚みは1.0μmであった。
得られたコレステリック樹脂積層体2のコレステリック樹脂層1の色は、わずかに赤みかかった金色であった。コレステリック樹脂層1の反射帯域中心波長は620nmであった。
次に、このコレステリック樹脂積層体2を130℃下で8時間加熱処理した後、再びコレステリック樹脂層1の色及び反射帯域中心波長を観察した。コレステリック樹脂層1の色は金色であり、加熱処理による色の変化は「わずか」と評価された。反射帯域中心波長は602nmであった。
【0120】
(実施例3)
中間層を形成するための接着剤として、変性ポリビニルアルコール化合物(日本合成化学工業製、商品名「ゴーセネックスZ−200」、ポリビニルアルコールの−OH基の一部をアセトアセトキシ基で置換したもの)5重量%、硬化剤(日本合成化学工業製、商品名「セーフリンクSPM−01」、7%水溶液)4重量%及び水91重量%からなる水溶液3を用意した。接着剤として、水溶液1に代えてこの水溶液3を用いた他は、実施例1と同様にして、(コレステリック樹脂層1)/(中間層)/(基材)の層構成を有するコレステリック樹脂積層体3を得た。中間層の厚みは0.9μmであった。
得られたコレステリック樹脂積層体3のコレステリック樹脂層1の色は、わずかに赤みかかった金色であった。コレステリック樹脂層1の反射帯域中心波長は618nmであった。
【0121】
次に、このコレステリック樹脂積層体3を130℃下で8時間加熱処理した後、再びコレステリック樹脂層1の色及び反射帯域中心波長を観察した。コレステリック樹脂層1の色は金色であり、加熱処理による色の変化は「なし」と評価された。反射帯域中心波長は613nmであった。
【0122】
(実施例4)
複層物1の代わりに、製造例2で得た複層物2を使用した他は、実施例3と同様にして、(コレステリック樹脂層2)/(中間層)/(基材)の層構成を有するコレステリック樹脂積層体4を得た。中間層の厚みは1.1μmであった。
得られたコレステリック樹脂積層体4のコレステリック樹脂層2の色は、赤色であった。コレステリック樹脂層1の反射帯域中心波長は626nmであった。
【0123】
次に、このコレステリック樹脂積層体4を130℃下で8時間加熱処理した後、再びコレステリック樹脂層2の色及び反射帯域中心波長を観察した。コレステリック樹脂層2の色は赤色であり、加熱処理による色の変化は「なし」と評価された。反射帯域中心波長は619nmであった。
【0124】
(比較例1)
製造例1で得られた(支持体)/(コレステリック樹脂層1)の層構成を有する複層物1をそのまま、実施例1〜4で得られたコレステリック樹脂積層体と同様に評価した。複層物1のコレステリック樹脂層1の色は、わずかに赤みかかった金色であった。コレステリック樹脂層1の反射帯域中心波長は617nmであった。
【0125】
次に、この複層物1を130℃下で8時間加熱処理した後、再びコレステリック樹脂層1の色及び反射帯域中心波長を観察した。コレステリック樹脂層1の色は緑色に変っており、加熱処理による色の変化は「大」と評価された。反射帯域中心波長は536nmであった。
【0126】
(比較例2)
製造例2で得られた(支持体)/(コレステリック樹脂層2)の層構成を有する複層物2をそのまま、実施例1〜4で得られたコレステリック樹脂積層体と同様に評価した。複層物2のコレステリック樹脂層2の色は、赤色であった。コレステリック樹脂層2の反射帯域中心波長は628nmであった。
【0127】
次に、この複層物2を130℃下で8時間加熱処理した後、再びコレステリック樹脂層2の色及び反射帯域中心波長を観察した。コレステリック樹脂層1の色は緑色に変っており、加熱処理による色の変化は「大」と評価された。反射帯域中心波長は543nmであった。
【0128】
(比較例3)
中間層を形成するための接着剤として、アクリレート系紫外線硬化型接着剤(東亜合成化学性、アロニックスLCR0634)を用意した。また、基材として、実施例1で用いたものと同様の、鹸化処理した厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムを用意した。
製造例1で得られた複層物1のコレステリック樹脂層1側の表面に、接着剤を塗布し、その上に基材を載せて重ね合わせ、複層物を得た。この複層物をラミネーターに通して加圧した後、基材側に3000mJ/cm
2の紫外線を照射して、接着剤を硬化させた。
その後、この複層物から、支持体を剥離した。これにより、(コレステリック樹脂層1)/(中間層)/(基材)の層構成を有するコレステリック樹脂積層体5を得た。中間層の厚みは3.6μmであった。
得られたコレステリック樹脂積層体5のコレステリック樹脂層1の色は、わずかに赤みかかった金色であった。コレステリック樹脂層1の反射帯域中心波長は619nmであった。
【0129】
次に、このコレステリック樹脂積層体5を130℃下で8時間加熱処理した後、再びコレステリック樹脂層1の色及び反射帯域中心波長を観察した。コレステリック樹脂層1の色は緑色に変っており、加熱処理による色の変化は「大」と評価された。反射帯域中心波長は534nmであった。
【0130】
(比較例4)
複層物1の代わりに、製造例2で得た複層物2を使用した他は、比較例3と同様にして、(コレステリック樹脂層2)/(中間層)/(基材)の層構成を有するコレステリック樹脂積層体6を得た。中間層の厚みは3.8μmであった。
得られたコレステリック積層体6のコレステリック樹脂層2の色は、赤色であった。コレステリック樹脂層1の反射帯域中心波長は629nmであった。
次に、このコレステリック樹脂積層体6を130℃下で8時間加熱処理した後、再びコレステリック樹脂層2の色及び反射帯域中心波長を観察した。コレステリック樹脂層2の色は緑色に変っており、加熱処理による色の変化は「大」と評価された。反射帯域中心波長は539nmであった。
【0131】
(比較例5)
中間層を形成するための接着剤として、2液性エポキシ系接着剤(セメダイン製、1500番、主剤及び硬化剤からなる)を用意した。また、基材として、実施例1で用いたものと同様の、鹸化処理した厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムを用意した。
製造例1で得られた複層物1のコレステリック樹脂層1側の表面に、主剤と硬化剤を同量混合した接着剤を塗布し、その上に基材を載せて重ね合わせ、複層物を得た。この複層物をラミネーターに通して加圧した後、40℃下10時間加熱処理して、接着剤を硬化させた。
その後、この複層物から、支持体を剥離した。これにより、(コレステリック樹脂層1)/(中間層)/(基材)の層構成を有するコレステリック樹脂積層体7を得た。中間層の厚みは約10μmであった。
得られたコレステリック積層体7のコレステリック樹脂層1の色は、わずかに赤みかかった金色であった。コレステリック樹脂層1の反射帯域中心波長は618nmであった。
【0132】
次に、このコレステリック樹脂積層体7を130℃下で8時間加熱処理した後、再びコレステリック樹脂層1の色及び反射帯域中心波長を観察した。コレステリック樹脂層1の色は緑色に変っており、加熱処理による色の変化は「大」と評価された。反射帯域中心波長は552nmであった。
【0133】
実施例及び比較例の結果を、表2及び表3にまとめて示す。
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
表2及び表3の結果から明らかな通り、中間層の材料を適宜選択し、本発明の要件を満たすよう構成した実施例1〜4においては、加熱処理による色の変化が少なく、比較例に比べて、加熱処理による経時的な色の変化が少なく、従って、使用中の色の経時変化が少ないコレステリック樹脂積層体を得ることができたことが分かる。