(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イオン交換基を有する含フッ素ポリマーのイオン交換容量が、式(u1)で表される構成単位を有し、式(u2)で表される構成単位を有しない場合、0.5〜1.8ミリ当量/g乾燥樹脂であり、式(u2)で表される構成単位を有する場合、0.5〜2.8ミリ当量/g乾燥樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状組成物の製造方法。
請求項1〜6のいずれか一項に記載の液状組成物の製造方法によって液状組成物を調製し、前記液状組成物と触媒とを混合して触媒層形成用塗工液を調製する、触媒層形成用塗工液の製造方法。
触媒層を有するアノードと、触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された固体高分子電解質膜と、を備えた固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を製造する方法であって、
請求項7に記載の触媒層形成用塗工液の製造方法によって触媒層形成用塗工液を調製し、該塗工液を用いて前記カソードおよび前記アノードのいずれか一方または両方の触媒層を形成する、膜電極接合体の製造方法。
触媒層を有するアノードと、触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された固体高分子電解質膜と、を備えた固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を製造する方法であって、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の液状組成物の製造方法によって液状組成物を調製し、該液状組成物を用いて前記固体高分子電解質膜を形成する、膜電極接合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書においては、式(u1)で表される構成単位を、単位(u1)と記す。
式(m1)で表される化合物を、化合物(m1)と記す。他の式で表される構成単位および化合物もこれに準じて記す。
【0012】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「構成単位」とは、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに由来する単位を意味し、重合反応によって直接形成された単位のほか、ポリマーを処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位のことも意味する。
「イオン交換基」とは、該基に含まれる陽イオンの一部が他の陽イオンに交換しうる基を意味し、H
+、一価の金属カチオン、アンモニウムイオン等を有する基を意味する。イオン交換基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンメチド基等が挙げられる。
「スルホン酸基」は、−SO
3−H
+および−SO
3−M
+(ただし、M
+は、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。)を包含する。
「液状組成物の粘度」は、温度25℃、ずり速度10s
−1の条件で測定される粘度である。
【0013】
<液状組成物>
本発明の製造方法で得られる液状組成物は、後述するイオン交換基を有する含フッ素ポリマー(以下、含フッ素ポリマー(H)とも記す。)と液状媒体とを含むものであり、液状媒体中に、含フッ素ポリマー(H)が分散したものである。液状組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて含フッ素ポリマー(H)および液状媒体以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0014】
液状組成物の粘度は、300〜500000mPa・sが好ましく、500〜500000mPa・sがより好ましく、700〜100000mPa・sがさらに好ましい。液状組成物の粘度が前記範囲の下限値以上であれば、触媒層や固体高分子電解質膜を形成するときに割れが生じにくい。液状組成物の粘度が前記範囲の上限値以下であれば、液状組成物を塗布しやすい。
【0015】
含フッ素ポリマー(H)は、−SO
2F基を有する含フッ素ポリマー(以下、含フッ素ポリマー(F)とも記す。)の−SO
2F基をイオン交換基に変換して得られるものである。
−SO
2F基から変換されるイオン交換基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンメチド基等が挙げられる。
イオン交換基には、陽イオンがH
+である酸型と、陽イオンが金属イオン、アンモニウムイオン等である塩型とがある。固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、膜電極接合体とも記す。)の触媒層や固体高分子電解質膜においては、通常、酸型のイオン交換基を有する含フッ素ポリマー(H)が用いられる。
【0016】
含フッ素ポリマー(H)としては、耐久性の点から、炭素原子に共有結合する水素原子がすべてフッ素原子に置換されたペルフルオロカーボンポリマーが好ましい。
含フッ素ポリマー(H)としては、本発明の効果が充分に発揮されやすい点から、下記の含フッ素ポリマー(H1)が好ましい。
【0017】
含フッ素ポリマー(H1)は、下記の単位(u’1)および下記の単位(u’2)のいずれか一方または両方と、テトラフルオロエチレン(以下、TFEとも記す。)に由来する構成単位(以下、TFE単位とも記す。)とを有する。
【0020】
ただし、Q
1は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Y
1は、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、sは、0または1であり、R
f1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、X
1は、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、aは、X
1が酸素原子の場合0であり、X
1が窒素原子の場合1であり、X
1が炭素原子の場合2であり、Z
+は、H
+、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。
Q
1が単結合の場合は、CFY
1の炭素原子とSO
2の硫黄原子とが直接結合していることを意味する。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
【0021】
Q
1のペルフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、含フッ素ポリマー(H1)のイオン交換容量の低下が抑えられ、プロトン伝導性の低下が抑えられる。
【0022】
R
f1のペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。ペルフルオロアルキル基の炭素数は1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。ペルフルオロアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基等が好ましい。
【0023】
−SO
2X
1(SO
2R
f1)
a−Z
+としては、−SO
3−Z
+、−SO
2N(SO
2R
f1)
−Z
+、または−SO
2C(SO
2R
f1)
2−Z
+が挙げられる。
Y
1としては、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
【0024】
単位(u’1)としては、含フッ素ポリマー(H1)の製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、下記の単位(u’1−1)〜(u’1−4)が好ましい。
【0028】
ただし、Q
21は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Q
22は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Y
2は、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、tは、0または1であり、R
f2は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、X
2は、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、bは、X
2が酸素原子の場合0であり、X
2が窒素原子の場合1であり、X
2が炭素原子の場合2であり、Z
+は、H
+、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。Q
21が単結合の場合は、CY
2の炭素原子とSO
2の硫黄原子とが直接結合していることを意味する。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
【0029】
Q
21、Q
22のペルフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、原料の含フッ素モノマーの沸点が低くなり、蒸留精製が容易となる。また、炭素数が6以下であれば、含フッ素ポリマー(H1)のイオン交換容量の低下が抑えられ、プロトン伝導性の低下が抑えられる。
【0030】
Q
22は、エーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。この場合は、Q
22が単結合である場合に比べ、長期にわたって固体高分子形燃料電池を運転した際に、発電性能の安定性に優れる。
Q
21、Q
22の少なくとも一方は、エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基を有する含フッ素モノマーは、フッ素ガスによるフッ素化反応を経ずに合成できるため、収率が良好で、製造が容易である。
【0031】
R
f2のペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。ペルフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。ペルフルオロアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基等が好ましい。
単位(u’2)が2つ以上のR
f2を有する場合、R
f2は、それぞれ同じ基であってもよく、それぞれ異なる基であってもよい。
【0032】
−SO
2X
2(SO
2R
f2)
b−Z
+としては、−SO
3−Z
+、−SO
2N(SO
2R
f2)
−Z
+、または−SO
2C(SO
2R
f2)
2−Z
+が挙げられる。
Y
2としては、フッ素原子、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖のペルフルオロアルキル基が好ましい。
【0033】
単位(u’2)としては、含フッ素ポリマー(H1)の製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(u’2−1)〜(u’2−3)が好ましい。
【0035】
TFE単位は、含フッ素ポリマー(H1)に機械的強度および化学的な耐久性を付与する。
【0036】
含フッ素ポリマー(H1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において後述する他のモノマーに由来する構成単位(以下、他の単位とも記す。)をさらに有していてもよい。
含フッ素ポリマー(H1)は、単位(u’1)、単位(u’2)および他の単位を、それぞれ1種ずつ有していてもよく、それぞれ2種以上有していてもよい。
各構成単位の割合は、含フッ素ポリマー(H1)のイオン交換容量が好ましい範囲となるように、適宜調整すればよい。
【0037】
含フッ素ポリマー(H1)のイオン交換容量は、単位(u’1)を有し、単位(u’2)を有しない場合、0.5〜1.8ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.9〜1.5ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましい。イオン交換容量が前記範囲の下限値以上であれば、プロトン伝導性が高くなるため、充分な電池出力を得ることができる。イオン交換容量が前記範囲の上限値以下であれば、分子量の高いポリマーの合成が容易であり、また、含フッ素ポリマー(H1)が過度に水で膨潤しないため、機械的強度を保持できる。
【0038】
含フッ素ポリマー(H1)のイオン交換容量は、単位(u’2)を有する場合、0.5〜2.8ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.9〜2.2ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましい。イオン交換容量が前記範囲の下限値以上であれば、プロトン伝導性が高くなるため、充分な電池出力を得ることができる。イオン交換容量が前記範囲の上限値以下であれば、分子量の高いポリマーの合成が容易であり、また、含フッ素ポリマー(H1)が過度に水で膨潤しないため、機械的強度を保持できる。
【0039】
液状媒体としては、水酸基を有する有機溶媒と水との混合溶媒が挙げられる。
水酸基を有する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール等が挙げられる。水酸基を有する有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
水の割合は、混合溶媒(100質量%)のうち、10〜99質量%が好ましく、40〜99質量%がより好ましい。水の割合を増やすことにより、混合溶媒に対する含フッ素ポリマー(H)の分散性を向上できる。
水酸基を有する有機溶媒の割合は、混合溶媒(100質量%)のうち、1〜90質量%が好ましく、1〜60質量%がより好ましい。含フッ素ポリマー(H)の割合は、液状組成物(100質量%)のうち、1〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
【0041】
<液状組成物の製造方法>
本発明の液状組成物の製造方法は、−SO
2F基を有する含フッ素ポリマー(F)を熱処理する工程と;含フッ素ポリマー(F)の−SO
2F基をイオン交換基に変換して含フッ素ポリマー(H)を得る工程と;含フッ素ポリマー(H)と液状媒体とを混合して液状組成物を調製する工程とを有する。
【0042】
本発明の液状組成物の製造方法としては、具体的には、下記の方法(α)または方法(β)が挙げられる。
【0043】
方法(α)は、−SO
2F基を有する含フッ素ポリマー(F)を110〜130℃に45分以上保持して、110〜130℃に保持した−SO
2F基を有する含フッ素ポリマー(F)を110℃未満に冷却し、110℃未満に冷却した−SO
2F基を有する含フッ素ポリマー(F)の−SO
2F基をイオン交換基に変換してイオン交換基を有する含フッ素ポリマー(H)を得て、イオン交換基を有する含フッ素ポリマー(H)と液状媒体とを混合する液状組成物の製造方法である。
【0044】
方法(β)は、130℃超320℃以下の−SO
2F基を有する含フッ素ポリマー(F)を冷却する際に、少なくとも110〜130℃の温度領域では45℃/分以下の冷却速度で冷却し、110℃未満に冷却した−SO
2F基を有する含フッ素ポリマー(F)の−SO
2F基をイオン交換基に変換してイオン交換基を有する含フッ素ポリマー(H)を得て、イオン交換基を有する含フッ素ポリマー(H)と液状媒体とを混合する液状組成物の製造方法である。
【0045】
含フッ素ポリマー(F)は、含フッ素ポリマー(H)の前駆体である。
含フッ素ポリマー(F)としては、耐久性の高い含フッ素ポリマー(H)を得る点から、炭素原子に共有結合する水素原子がすべてフッ素原子に置換されたペルフルオロカーボンポリマーが好ましい。
含フッ素ポリマー(F)としては、本発明の効果が充分に発揮されやすい点から、下記の含フッ素ポリマー(F1)が好ましい。
【0046】
含フッ素ポリマー(F1)は、単位(u1)および単位(u2)のいずれか一方または両方と、TFE単位とを有する。
【0049】
Q
1、Y
1、sは、単位(u’1)におけるQ
1、Y
1、sの定義と同じであり、好ましい形態も同じである。
単位(u1)としては、含フッ素ポリマー(F1)の製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(u1−1)〜(u1−4)が好ましい。
【0053】
Q
21、Q
22、Y
2、tは、単位(u’2)におけるQ
21、Q
22、Y
2、tの定義と同じであり、好ましい形態も同じである。
単位(u2)としては、含フッ素ポリマー(F1)の製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、下記の単位(u2−1)〜(u2−3)が好ましい。
【0055】
TFE単位:
TFE単位は、含フッ素ポリマー(F1)に機械的強度および化学的な耐久性を付与する。
【0056】
含フッ素ポリマー(F1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において後述する他のモノマーに由来する他の単位をさらに有していてもよい。
【0057】
含フッ素ポリマー(F1)は、単位(u1)、単位(u2)および他の単位を、それぞれ1種ずつ有していてもよく、それぞれ2種以上有していてもよい。
各構成単位の割合は、含フッ素ポリマー(H1)のイオン交換容量が好ましい範囲となるように、適宜調整すればよい。
【0058】
(含フッ素ポリマー(F1)の製造方法)
含フッ素ポリマー(F1)は、化合物(m1)および化合物(m2)のいずれか一方または両方と、TFEと、必要に応じて他のモノマーとを重合することによって得ることができる。
【0061】
Q
1、Y
1、sは、単位(u1)におけるQ
1、Y
1、sの定義と同じであり、好ましい形態も同じである。
化合物(m1)としては、化合物(m1−1)〜(m1−4)が好ましい。
【0063】
化合物(m1)は、たとえば、D.J.Vaugham著,”Du Pont Inovation”,第43巻、第3号,1973年、p.10に記載の方法、米国特許第4358412号明細書の実施例に記載の方法等、公知の合成方法によって製造できる。
【0066】
Q
21、Q
22、Y
2、tは、単位(u2)におけるQ
21、Q
22、Y
2、tの定義と同じであり、好ましい形態も同じである。
化合物(m2)としては、化合物(m2−1)〜(m2−3)が好ましい。
【0068】
化合物(m2)は、たとえば、国際公開第2007/013533号に記載の方法等、公知の合成方法によって製造できる。
【0069】
他のモノマーとしては、たとえば、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレンン、ペルフルオロα−オレフィン類(ヘキサフルオロプロピレン等)、(ペルフルオロアルキル)エチレン類((ペルフルオロブチル)エチレン等)、(ペルフルオロアルキル)プロペン類(3−ペルフルオロオクチル−1−プロペン等)、ペルフルオロビニルエーテル類(ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキルビニルエーテル)等)等が挙げられる。
【0070】
重合法としては、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法が挙げられる。また、液体または超臨界の二酸化炭素中にて重合を行ってもよい。
重合は、ラジカルが生起する条件で行われる。ラジカルを生起させる方法としては、紫外線、γ線、電子線等の放射線を照射する方法、ラジカル開始剤を添加する方法等が挙げられる。
【0071】
得られた含フッ素ポリマー(F)は、未反応モノマー、重合媒体等と分離して回収される。回収された含フッ素ポリマー(F)は、そのまま、下記する方法(α)または方法(β)の含フッ素ポリマー(F)を熱処理する工程に用いてもよい。また、ペレット化した後、またはペレットを粉砕して粉体とした後に、下記する方法(α)または方法(β)の含フッ素ポリマー(F)を熱処理する工程に用いてもよい。
また、含フッ素ポリマー(F)のTQ値は、150〜350℃が好ましく、200〜320℃がより好ましい。TQ値が前記範囲の下限値以上であれば耐久性が良好な触媒層を形成できる。TQ値が前記範囲の上限値以下であれば液状組成物を調製しやすい。
【0072】
(熱処理方法(α))
本発明の含フッ素ポリマー(F)の熱処理においては、含フッ素ポリマー(F)を110〜130℃の温度領域にできるだけ滞留させるように該温度領域において保持または徐冷することに特徴がある。
【0073】
方法(α)においては、含フッ素ポリマー(F)を110〜130℃に保持する時間は、45分以上であり、45〜240分が好ましく、50〜120分がより好ましい。保持時間が前記範囲の下限値以上であれば、乾燥時の割れが抑えられた固体高分子電解質膜を形成できる液状組成物を調製できる含フッ素ポリマー(H)が生成する。保持時間が前記範囲の上限値以下であれば、熱処理の時間を短縮できるため、生産性がよくなる。
【0074】
110〜130℃に保持した後の含フッ素ポリマー(F)は、110℃未満に冷却し、冷却後の含フッ素ポリマー(F)の取扱性の点から、60℃以下に冷却されることが好ましく、40℃以下がより好ましい。冷却する下限の温度は取扱性の点から0℃以上であるのが好ましく、10℃以上であるのがより好ましい。
含フッ素ポリマー(F)の110〜130℃の温度領域から110℃未満へ冷却するときの速度は、乾燥時の割れが抑えられた固体高分子電解質膜を形成できる液状組成物を調製できる含フッ素ポリマー(H)が生成しやすいため、2〜400℃/分が好ましく、5〜200℃/分がより好ましい。
含フッ素ポリマー(F)の110〜130℃の温度領域での冷却速度は、乾燥時の割れが抑えられた固体高分子電解質膜を形成できる液状組成物を調製できる含フッ素ポリマー(H)が生成しやすいため、0.01〜0.5℃/分以下であり、0.05〜0.4℃以下がより好ましい。ここで、冷却速度は、110〜130℃の温度領域における、同じ温度で保持されている時間も考慮した平均速度である。
【0075】
−SO
2F基をイオン交換基に変換する方法としては、国際公開第2011/013578号に記載の方法が挙げられる。たとえば、−SO
2F基を酸型のスルホン酸基(−SO
3−H
+基)に変換する方法としては、含フッ素ポリマー(F)の−SO
2F基を塩基と接触させて加水分解して塩型のスルホン酸基とし、塩型のスルホン酸基を酸と接触させて酸型化して酸型のスルホン酸基に変換する方法が挙げられる。
【0076】
含フッ素ポリマー(H)と液状媒体とを混合し、撹拌することによって、含フッ素ポリマー(H)が液状媒体中に分散した液状組成物を調製できる。
液状組成物の調製方法については、たとえば、特公平4−35226号公報、特表2001−504872号公報、特開2005−82749号公報、国際公開第2006/38928号、特開2004−519296号公報等に記載の調製方法に基づいて調製できる。
具体的な液状組成物の調製方法としては、大気圧下、またはオートクレーブ等で密閉した状態下において、液状媒体中の含フッ素ポリマー(H)に撹拌等のせん断を加える方法が挙げられる。必要に応じて、超音波等のせん断を付与してもよい。
また、含フッ素ポリマー(H)と液状媒体とを混合した混合液を撹拌等のせん断を加えて液状組成物にする場合、含フッ素ポリマー(H)に液状媒体を一度に全部加えた混合液に撹拌等のせん断を加えてもよいし、また、含フッ素ポリマー(H)に液状媒体を複数回に分けて混合し、その合間に撹拌等のせん断を加えてもよい。たとえば、含フッ素ポリマー(H)に水酸基を有する有機溶媒の一部と水の一部を加えた混合液に撹拌等のせん断を加え、その後に、その混合液に残りの液状媒体を加えて再度撹拌等のせん断を加えるようにしてもよい。また、含フッ素ポリマー(H)に水酸基を有する有機溶媒のみを加えて撹拌等のせん断を加え、その後に水のみを加えて再度、撹拌等のせん断を加えるようにしてもよい。
【0077】
液状組成物の調製の際の温度は、80〜180℃が好ましく、100〜130℃がより好ましい。時間は、1〜48時間が好ましく、2〜24時間がより好ましい。
せん断速度は、10〜1000s
−1が好ましく、50〜600s
−1がより好ましい。
【0078】
(熱処理方法(β))
方法(β)においては、含フッ素ポリマー(F)を一旦130℃超320℃以下に加熱し、これを冷却する際に、少なくとも110〜130℃の温度領域では45℃/分以下の冷却速度で冷却する。
含フッ素ポリマー(F)を一旦130℃超320℃以下に加熱することによって、含フッ素ポリマー(F)を110〜130℃に滞留させる時間を短縮することができる。
【0079】
含フッ素ポリマー(F)の加熱温度は、130℃超320℃以下であり、160〜300℃が好ましく、180〜300℃がより好ましい。加熱温度が前記下限値以上であれば、含フッ素ポリマー(F)を110〜130℃に滞留させる時間を短縮することができる。加熱温度が前記上限値以下であれば、含フッ素ポリマー(F)の劣化が抑えられる。
【0080】
含フッ素ポリマー(F)の110〜130℃の温度領域での冷却速度は、45℃/分以下であり、40℃以下がより好ましく、0.2〜40℃/分がさらに好ましい。冷却速度が前記範囲の上限値以下であれば、乾燥時の割れが抑えられた固体高分子電解質膜を形成できる液状組成物を調製できる含フッ素ポリマー(H)が生成する。冷却速度が前記範囲の下限値以上であれば、熱処理の時間を短縮できる。ここで、冷却速度は、110〜130℃の温度領域における、同じ温度で保持されている時間も考慮した平均速度である。冷却速度は、110〜130℃の温度領域において、平均の速度が45℃/分以下であればよく、該温度領域の間に、冷却速度が45℃/分を超える温度領域があってもよい。例えば、一旦130℃超320℃以下に加熱し、これを冷却する際に、120℃で30分間保持した後、50℃/分以上の速度で冷却した場合であっても、方法(β)に該当する。
【0081】
110〜130℃に保持した後の含フッ素ポリマー(F)は、110℃未満に冷却される。冷却後の含フッ素ポリマー(F)の取扱性の点から、60℃以下に冷却されることが好ましく、40℃以下がより好ましい。冷却する下限の温度は取扱性の点から0℃以上であるのが好ましく、10℃以上であるのがより好ましい。
【0082】
含フッ素ポリマー(F)の−SO
2F基をイオン交換基に変換する方法、および液状組成物の調製方法については、上述した方法(α)の場合と同様であり、好ましい形態も同様である。
【0083】
以上説明した本発明の液状組成物の製造方法にあっては、含フッ素ポリマー(F)を110〜130℃の温度領域で所定時間以上保持または所定の冷却速度以下で徐冷しているため、該含フッ素ポリマー(F)の−SO
2F基をイオン交換基に変換した含フッ素ポリマー(H)を液状媒体に分散させた際に、乾燥時の割れが抑えられた固体高分子電解質膜を形成できる液状組成物を調製できる含フッ素ポリマー(H)が生成する。
【0084】
<触媒層形成用塗工液>
本発明の製造方法で得られる触媒層形成用塗工液は、含フッ素ポリマー(H)と、触媒と、液状媒体とを含むものであり、液状媒体中に、含フッ素ポリマー(H)および触媒が分散したものである。触媒層形成用塗工液は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて含フッ素ポリマー(H)、触媒および液状媒体以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0085】
触媒としては、カーボン担体に白金または白金合金を担持した担持触媒が挙げられる。
カーボン担体としては、カーボンブラック粉末が挙げられる。
触媒層形成用塗工液の液状媒体は、液状組成物に含まれていた液状媒体と、後述する触媒の分散液に含まれていた液状媒体との混合物となる。
【0086】
触媒層形成用塗工液中の固形分濃度は、触媒層形成用塗工液の粘度が塗布に適した粘度となるように、適宜調整すればよい。
触媒層形成用塗工液中の含フッ素ポリマー(H)と触媒との質量比は、触媒層に要求される性能等に応じて適宜調整すればよい。
【0087】
<触媒層形成用塗工液の製造方法>
本発明の触媒層形成用塗工液の製造方法は、上述した方法(α)または方法(β)の液状組成物を調整する工程の後、該液状組成物と触媒とを混合して触媒層形成用塗工液を調製する工程を有する。
【0088】
触媒層形成用塗工液は、たとえば、本発明における液状組成物と、触媒の分散液とを混合し、撹拌することにより調製できる。触媒層形成用塗工液は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて含フッ素ポリマー(H)、触媒および液状媒体以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0089】
触媒の分散液は、触媒を液状媒体に分散させたものである。
触媒の分散液に含まれる液状媒体としては、水、有機溶媒等が挙げられ、水と水酸基を有する有機溶媒とを含む混合溶媒が好ましい。
【0090】
触媒層形成用塗工液の調製方法としては、公知の方法が挙げられる。具体的には、ホモジナイザ、ホモミキサ等の撹拌機、高速回転ジェット流、摩砕機等による高速回転を利用する方法;高圧乳化装置等の高圧をかけて狭い部分から塗工液を押出すことで塗工液にせん弾力を付与する方法;超音波等の高エネルギー与え液状媒体中に分散質を分散させる方法;ビーズミル等によりビーズ同士の衝突により液状媒体中に分散質を分散させる方法等が挙げられる。
調製の際の塗工液の温度は、5〜50℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。
【0091】
以上説明した本発明の触媒層形成用塗工液の製造方法にあっては、乾燥時の割れが抑えられた塗膜を形成できる液状組成物と、触媒とを混合しているため、乾燥時の割れが抑えられた触媒層を形成できる触媒層形成用塗工液を製造できる。
【0092】
<膜電極接合体>
図1は、膜電極接合体の一例を示す模式断面図である。膜電極接合体10は、触媒層11およびガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11およびガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に、触媒層11に接した状態で配置される固体高分子電解質膜15とを具備する。
【0093】
触媒層は、触媒と、イオン交換基を有するポリマーとを含む層である。
イオン交換基を有するポリマーとしては、化学的な耐久性に優れる点から、含フッ素ポリマー(H)が好ましく、イオン交換基を有するペルフルオロポリマーがより好ましく、含フッ素ポリマー(H1)がさらに好ましい。
【0094】
ガス拡散層は、触媒層に均一にガスを拡散させる機能および集電体としての機能を有する。ガス拡散層としては、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等が挙げられる。ガス拡散層は、ポリテトラフルオロエチレン等によって撥水化処理されていることが好ましい。
【0095】
図2に示すように、膜電極接合体10は、触媒層11とガス拡散層12との間にカーボン層16を有してもよい。カーボン層を配置することにより、触媒層の表面のガス拡散性が向上し、固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく向上する。
カーボン層は、カーボンと非イオン性含フッ素ポリマーとを含む層である。カーボンとしては、カーボン粒子、カーボンファイバー等が挙げられ、繊維径1〜1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。非イオン性含フッ素ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0096】
固体高分子電解質膜は、イオン交換基を有するポリマーを含む膜である。イオン交換基を有するポリマーとしては、含フッ素ポリマー(H)が挙げられ、イオン交換基を有するペルフルオロポリマーが好ましく、含フッ素ポリマー(H1)がより好ましい。
【0097】
固体高分子電解質膜は、補強材で補強されていてもよい。補強材としては、多孔体、繊維、織布、不織布等が挙げられる。補強材の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
【0098】
固体高分子電解質膜は、耐久性をさらに向上させるために、セリウムおよびマンガンからなる群から選ばれる1種以上の原子を含んでいてもよい。セリウム、マンガンは、固体高分子電解質膜の劣化を引き起こす原因物質である過酸化水素を分解する。セリウム、マンガンは、イオンとして固体高分子電解質膜中に存在することが好ましく、イオンとして存在すれば固体高分子電解質膜中でどのような状態で存在してもかまわない。
【0099】
<膜電極接合体の製造方法>
膜電極接合体がカーボン層を有しない場合、膜電極接合体は、たとえば、下記の方法にて製造される。
・固体高分子電解質膜上に触媒層を形成して膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層で挟み込む方法。
・ガス拡散層上に触媒層を形成して電極(アノード、カソード)とし、固体高分子電解質膜を該電極で挟み込む方法。
【0100】
膜電極接合体がカーボン層を有する場合、膜電極接合体は、たとえば、下記の方法にて製造される。
・基材フィルム上に、カーボンおよび非イオン性含フッ素ポリマーを含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層を形成し、カーボン層上に触媒層を形成し、触媒層と固体高分子電解質膜とを貼り合わせ、基材フィルムを剥離して、カーボン層を有する膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層で挟み込む方法。
・ガス拡散層上に、カーボンおよび非イオン性含フッ素ポリマーを含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層を形成し、固体高分子電解質膜上に触媒層を形成した膜触媒層接合体を、カーボン層を有するガス拡散層で挟み込む方法。
【0101】
(膜電極接合体の製造方法の第1の実施形態)
本発明の膜電極接合体の製造方法の第1の実施形態は、上述した触媒層形成用塗工液を調整する工程の後、該触媒層形成用塗工液を用いてカソードおよびアノードのいずれか一方または両方の触媒層を形成する工程を有する。
【0102】
触媒層の形成方法としては、下記の方法が挙げられる。
・触媒層形成用塗工液を、固体高分子電解質膜、ガス拡散層、またはカーボン層上に塗布し、乾燥させる方法。
・触媒層形成用塗工液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させて触媒層を形成し、該触媒層を固体高分子電解質膜上に転写する方法。
【0103】
(膜電極接合体の製造方法の第2の実施形態)
本発明の膜電極接合体の製造方法の第2の実施形態は、上述した上述した方法(α)または方法(β)の液状組成物を調整する工程の後、該液状組成物を用いて固体高分子電解質膜を形成する工程を有する。
固体高分子電解質膜は、たとえば、液状組成物を基材フィルムまたは触媒層上に塗布し、乾燥させる方法(キャスト法)により形成できる。
【0104】
固体高分子電解質膜を安定化させるために、アニール処理を行うことが好ましい。アニール処理の温度は、130〜200℃が好ましい。アニール処理の温度が130℃以上であれば、含フッ素ポリマー(H)が過度に含水しなくなる。アニール処理の温度が200℃以下であれば、イオン交換基の熱分解が抑えられる。
【0105】
以上説明した本発明の膜電極接合体の製造方法にあっては、触媒層や固体高分子電解質膜の形成に本発明における液状組成物を用いているため、乾燥時の割れが抑えられた触媒層や固体高分子電解質膜を形成できる。
【0106】
<固体高分子形燃料電池>
膜電極接合体の両面に、ガスの流路となる溝が形成されたセパレータを配置することにより、固体高分子形燃料電池が得られる。
セパレータとしては、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂を混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
該固体高分子形燃料電池においては、カソードに酸素を含むガス、アノードに水素を含むガスを供給することにより、発電が行われる。また、アノードにメタノールを供給して発電を行うメタノール燃料電池にも、膜電極接合体を適用できる。
【実施例】
【0107】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。なお、例1〜12は実施例であり、例13〜22は比較例である。
(TQ値)
TQ値(単位:℃)は、含フッ素ポリマー(F)の分子量および軟化温度の指標である。長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件で、フローテスタ(島津製作所社製、CFT−500D)を用い、含フッ素ポリマー(F)の押出し量を測定し、押出し量が100mm
3/秒となる温度をTQ値として求めた。
【0108】
(触媒層の割れ)
触媒層形成用塗工液を塗布し、乾燥させる際の触媒層を観察し下記の基準で評価した。
◎(優) :触媒層が割れなく形成され、触媒層から光が抜けてこない。
〇(良) :触媒層の割れが極微少なため、触媒層から僅かに光が抜けてくる。
×(不可):触媒層の割れが大きく、基材から触媒層が脱落する。
【0109】
(含フッ素ポリマー(F))
含フッ素ポリマー(F)の各構成単位の割合は、
19F−NMRにより求めた。また、イオン交換容量は、
19F−NMRにより求めた各構成単位の割合から、加水分解後の含フッ素ポリマー(H)とした場合の値を算出した。
(熱処理方法)
以下に示す実施例においては、最初に、得られた含フッ素ポリマー(F)を加熱し、一定時間保持した。この時の温度を「初期加熱温度」、時間を「初期保持時間」として表1に示した。次いで、加熱された含フッ素ポリマーを1段階または2段階で冷却した。1段階目の冷却速度を「1次冷却速度」、2段階目の冷却速度を「2次冷却速度」とし、1段階目と2段階目の間に一定温度で保持する工程を行った場合には、その温度を「中間保持温度」、その時間を「中間保持時間」として表1に示した。また、110−130℃の温度領域における保持時間と、冷却速度についてもそれぞれ表1に示した。
含フッ素ポリマー(F1−1):
化合物(m1−1)とTFEの各構成単位の割合は、化合物(m1−1)/TFE=18/82(モル比)であり、TQ値は、220℃であった。イオン交換容量は、1.1ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
【0110】
含フッ素ポリマー(F1−2):
化合物(m1−1)とTFEの各構成単位の割合は、化合物(m1−1)/TFE=23/77(モル比)であり、TQ値は、232℃であった。イオン交換容量は、1.26ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
含フッ素ポリマー(F2−1):
化合物(m1−1)、化合物(m2−2)とTFEの各構成単位の割合は、化合物(m1−1)/化合物(m2−2)/TFE=8/9/83(モル比)であり、TQ値は、245℃であった。イオン交換容量は、1.52ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
含フッ素ポリマー(F2−2):
化合物(m2−2)とTFEの各構成単位の割合は、化合物(m2−2)/TFE=20/80(モル比)であり、TQ値は、240℃であった。イオン交換容量は、1.95ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
【0111】
【化14】
【化15】
【0112】
(例1)
含フッ素ポリマー(F1−1)を300℃のオーブンに入れ、該温度で60分間保持した。オーブンの設定を変更し、含フッ素ポリマー(F1−1)を冷却速度40℃/分にて、25℃に冷却した。
【0113】
粉砕した含フッ素ポリマー(F1−1)の100gに、濃度48質量%の水酸化カリウム水溶液の150g、メタノールの98g、超純水の220gを加え、撹拌しながら内温が90℃になるまで昇温し、±3℃で温度コントロールしながら、16時間保持した。その後、水酸化カリウムを含む液を排出し、塩型の含フッ素ポリマーを得た。
塩型の含フッ素ポリマーに、3Nの硫酸の450gを加え、85℃に昇温し、5時間撹拌した後、排水した。次いで、超純水の450gを加え、90℃に昇温し、1時間撹拌した後、排水する操作を合計で10回繰り返し、10回目の排水のpHが6以上であることを確認した。窒素ガスを導入しながら乾燥し、酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)を得た。
【0114】
酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)の22gに、超純水の24gを加え、撹拌した。撹拌しながらエタノールの36gを加えた。内温が105℃になるように昇温し、105℃で4時間撹拌した後、冷却した。冷却した後、フィルタを用いてろ過し、液状組成物を得た。
【0115】
カーボン担体(比表面積:800m
2/g)に白金が触媒全質量の50質量%含まれるように担持された触媒(田中貴金属工業社製)の10gに、蒸留水の50gを加え、10分間超音波を照射し、触媒の分散液を調製した。これに、液状組成物の15gを加え、さらにエタノールの100gを加え、固形分濃度を8質量%、酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)とカーボン担体の質量比(ポリマー/カーボン担体)を0.8として、触媒層形成用塗工液を得た。
【0116】
触媒層形成用塗工液をエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体からなるシート(旭硝子社製、アフレックス(登録商標)100N、厚さ:100μm)に、白金量が0.2mg/cm
2の触媒層が形成されるように塗布し、80℃で10分間乾燥し、触媒層を形成した。結果を表1に示す。なお、以下の例についても、同様に、結果を表1に示す。
【0117】
(例2)
含フッ素ポリマー(F1−1)を200℃のオーブンに入れ、該温度で180分間保持した。オーブンの設定を変更し、含フッ素ポリマー(F1−1)を冷却速度5℃/分にて、25℃に冷却した。
例1と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0118】
(例3)
含フッ素ポリマー(F1−1)を130℃のオーブンに入れ、該温度で60分間保持した。オーブンの設定を変更し、含フッ素ポリマー(F1−1)を5℃/分の速度で120℃に冷却し、該温度で30分間保持した。含フッ素ポリマー(F1−1)をオーブンから取り出し、100℃/分の速度で25℃に冷却した。
例1と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0119】
(例4)
含フッ素ポリマー(F1−1)を125℃のオーブンに入れ、該温度で60分間保持した。含フッ素ポリマー(F1−1)をオーブンから取り出し、100℃/分の速度にて、25℃に冷却した。
例1と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0120】
(例5)
含フッ素ポリマー(F1−1)を240℃のオーブンに入れ、該温度で180分間保持した。オーブンの設定を変更し、含フッ素ポリマー(F1−1)を25℃/分の速度で110℃に冷却し、該温度で30分間保持した。含フッ素ポリマー(F1−1)をオーブンから取り出し、100℃/分の速度にて、25℃に冷却した。
【0121】
例1と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0122】
(例6)
含フッ素ポリマー(F1−1)を240℃のオーブンに入れ、該温度で180分間保持した。オーブンの設定を変更し、含フッ素ポリマー(F1−1)を50℃/分の速度で130℃に冷却した。引き続き、オーブンの設定を変更し、含フッ素ポリマー(F1−1)を冷却速度40℃/分にて、25℃に冷却した。
例1と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0123】
(例7)
含フッ素ポリマー(F1−1)を含フッ素ポリマー(F1−2)に変更し、初期加熱温度を240℃から250℃に変更し、中間保持温度を110℃から120℃に変更した以外は、例5と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−2)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0124】
(例8)
含フッ素ポリマー(F1−1)を含フッ素ポリマー(F1−2)に変更し、初期加熱温度を125℃から120℃に変更した以外は、例4と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−2)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0125】
(例9)
含フッ素ポリマー(F2−1)を250℃のオーブンに入れ、該温度で180分間保持した。オーブンの設定を変更し、含フッ素ポリマー(F2−1)を25℃/分の速度で120℃に冷却し、該温度で30分間保持した。含フッ素ポリマー(F2−1)をオーブンから取り出し、100℃/分の速度にて、25℃に冷却した。
含フッ素ポリマー(F2−1)を用いた以外は、例1と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H2−1)を得た。
超純水の32gとエタノールの32gの混合液に撹拌しながら酸型の含フッ素ポリマー(H2−1)の22gを加えた。内温が120℃になるように昇温し、120℃で6時間撹拌した後、超純水の12gを窒素にて圧入して、さらに2時間撹拌を続けた後、冷却した。冷却した後、フィルタを用いてろ過し、液状組成物を得た。
カーボン担体(比表面積:800m
2/g)に白金が触媒全質量の50質量%含まれるように担持された触媒(田中貴金属工業社製)の10gに、蒸留水の46gを加え、10分間超音波を照射し、触媒の分散液を調製した。これに、液状組成物の18gを加え、さらにエタノールの99gを加え、固形分濃度を8質量%、酸型の含フッ素ポリマー(H2−1)とカーボン担体の質量比(ポリマー/カーボン担体)を0.8として、触媒層形成用塗工液を得た。例1と同様にして触媒層を形成した。
【0126】
(例10)
含フッ素ポリマー(F2−1)を120℃のオーブンに入れ、該温度で60分間保持した。含フッ素ポリマー(F2−1)をオーブンから取り出し、100℃/分の速度にて、25℃に冷却した。
例9と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H2−1)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0127】
(例11)
含フッ素ポリマー(F2−2)を用いた以外は例9と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H2−2)を得た。
超純水の37gとエタノールの37gの混合液に撹拌しながら酸型の含フッ素ポリマー(H2−2)の22gを加えた。内温が110℃になるように昇温し、110℃で6時間撹拌した後、超純水の51gを窒素にて圧入して、さらに2時間撹拌を続けた後、冷却した。冷却した後、フィルタを用いてろ過し、液状組成物を得た。
カーボン担体(比表面積:800m
2/g)に白金が触媒全質量の50質量%含まれるように担持された触媒(田中貴金属工業社製)の10gに、蒸留水の38gを加え、10分間超音波を照射し、触媒の分散液を調製した。これに、液状組成物の27gを加え、さらにエタノールの100gを加え、固形分濃度を8質量%、酸型の含フッ素ポリマー(H2−2)とカーボン担体の質量比(ポリマー/カーボン担体)を0.8として、触媒層形成用塗工液を得た。例1と同様にして触媒層を形成した。
【0128】
(例12)
含フッ素ポリマー(F2−2)を用いた以外は例10と同様の熱処理を行った。
次いで、例11と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H2−2)を得て、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0129】
(例13)
含フッ素ポリマー(F1−1)を押出機に投入し、200℃で30分間保持した。溶融状態の含フッ素ポリマー(F1−1)をφ4mmの孔のある200℃に加熱された金型から押し出し、押出速度より幾分速い速度で引っ張り、400℃/分の速度で急冷した後、ペレタイザで切断して、断面の直径が1〜3mm、長さが5〜20mmである含フッ素ポリマー(F1−1)のペレットを得た。
【0130】
含フッ素ポリマー(F1−1)のペレットを用いた以外は、例1と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0131】
(例14)
含フッ素ポリマー(F1−1)を200℃のオーブンに入れ、該温度で180分間保持した。オーブンの設定を変更し、含フッ素ポリマー(F1−1)を冷却速度50℃/分にて、25℃に冷却した。
【0132】
例1と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0133】
(例15)
含フッ素ポリマー(F1−1)を240℃のオーブンに入れ、該温度で180分間保持した。オーブンの設定を変更し、含フッ素ポリマー(F1−1)を25℃/分の速度で150℃に冷却し、該温度で30分間保持した。含フッ素ポリマー(F1−1)をオーブンから取り出し、冷却速度100℃/分にて、25℃に冷却した。
例1と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0134】
(例16)
含フッ素ポリマー(F1−1)を150℃のオーブンに入れ、該温度で60分間保持した。含フッ素ポリマー(F1−1)をオーブンから取り出し、冷却速度100℃/分にて、25℃に冷却した。
例1と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−1)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0135】
(例17)
含フッ素ポリマー(F1−2)を240℃のオーブンに入れ、該温度で180分間保持した。オーブンの設定を変更し、含フッ素ポリマー(F1−2)を5℃/分の速度で140℃に冷却し、該温度で10分間保持した。含フッ素ポリマー(F1−2)をオーブンから取り出し、冷却速度100℃/分にて、25℃に冷却した。
【0136】
例1と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−2)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0137】
(例18)
含フッ素ポリマー(F1−1)を含フッ素ポリマー(F1−2)に変更した以外は、例13と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H1−2)を得て、次いで、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
(例19)
含フッ素ポリマー(F2−1)を用いた以外は例15と同様の熱処理を行った。次いで、例9と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H2−1)を得て、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
(例20)
含フッ素ポリマー(F2−1)を用いた以外は例13と同様の熱処理を行った。次いで、例9と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H2−1)を得て、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
(例21)
含フッ素ポリマー(F2−2)を用いた以外は例15と同様の熱処理を行った。次いで、例11と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H2−2)を得て、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
(例22)
含フッ素ポリマー(F2−2)を用いた以外は例13と同様の熱処理を行った。
次いで、例11と同様にして酸型の含フッ素ポリマー(H2−2)を得て、液状組成物および触媒層形成用塗工液を得て、触媒層を形成した。
【0138】
【表1】
【0139】
例1〜12は、含フッ素ポリマー(F)を110〜130℃の温度領域で所定時間以上保持または所定の冷却速度以下で徐冷しているため、該含フッ素ポリマー(F)の−SO
2F基をイオン交換基に変換した含フッ素ポリマー(H)を液状媒体に分散させた液状組成物を用いて形成された触媒層は、乾燥時の割れが抑えられた。
例13〜22は、含フッ素ポリマー(F)を110〜130℃の温度領域で所定時間以上保持または所定速度以下で徐冷していないため、該含フッ素ポリマー(F)の−SO
2F基をイオン交換基に変換した含フッ素ポリマー(H)を液状媒体に分散させた液状組成物を用いて形成された触媒層は、乾燥時の割れが発生しやすかった。